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2026.10.16

電磁接触器 選定|AC-3定格・協調・サーマルリレーとタイ工場のRFP

電磁接触器 選定|AC-3定格・協調・サーマルリレーとタイ工場のRFP

導入:A数だけで決めた接触器が工場を止める

コンベヤやポンプのモーター起動回路で、電磁接触器 選定を「モーターのkWとA数に合う型式を表から引く作業」と考えていないでしょうか。次のような話は、タイの日系工場でもよく聞かれます。

  • 同じA数の接触器に替えたのに、しばらくして接点が溶着した。
  • 起動のたびにサーマルリレーが飛び、ラインが止まる。
  • 短絡事故のあと、遮断器だけでなく接触器とサーマルリレーまで交換になり、復旧に時間がかかった。
  • 乾季の午後に盤内が熱くなり、トリップが増えた。
  • 日本の200 V級の設計をそのまま持ち込んだら、定格表で読むべき列が変わっていた。

これらはどれも、型式表の「どの列を引くか」を決めないまま選んだことが一因になり得ます。本記事では、電磁接触器の選定は選定表から型式を引くだけでは決まらず、引く列を決めることが選定そのものだと考えます。具体的には、次の7つで決まると整理します。

  1. 使用カテゴリ(AC-1、AC-3、AC-4)と電圧の列
  2. 実際に納入されるモーターの全負荷電流と、起動と停止の頻度、電気的耐久性
  3. 過負荷リレー(サーマルリレー)のトリップクラスと整定
  4. 短絡保護機器との協調(Type 1 と Type 2)
  5. コイル(AC/DC、動作電圧範囲、消費電力、サージ)と補助接点
  6. 周囲温度と取付密度によるディレーティング
  7. 安全回路と組み合わせる場合のミラーコンタクトと機械的連動

そして発注側はこれをRFPに書き、FAT/SATで組合せ表の該当行、整定値、コイル電圧、盤内温度を確かめる、というのが本記事の立場です。

先にお断りしておきます。本記事は特定製品の推奨やランキングではありません。メーカーの定格や機能は、取得したカタログや技術資料の記載を、型式と条件を添えて紹介するだけです。後半の費用試算は、この記事のための仮の数字です。また、規格 IEC 60947-4-1 の本文は確認していません。規格の内容はメーカー資料の説明を通して書いています。

なぜ今、タイの工場で電磁接触器の選定を見直すのか

見直しのきっかけは、設備投資の動き、規格と製品の更新、そして電圧の違いの3つです。

まず投資の動きです。タイ投資委員会(BOI)の発表(PR No.117/2569、2026年7月23日)によると、2026年上半期(1〜6月)の投資奨励の申請は1,299件、約1.47兆バーツで、前年同期比37 %増でした。このうち「machinery, automation and robotics」の申請は82件、約131億バーツです。設備の更新と自動化を支援する Smart and Sustainable Industry 措置の申請も132件、約172億バーツありました。なお同じ期間の「承認」は1,300件、約1.31兆バーツで、申請とは別の数字です。新設や更新の盤が増えれば、接触器を選ぶ場面も増えます。

次に規格と製品です。2026年10月16日時点で、IEC Webstore には IEC 60947-4-1:2023(第5版)の2026年3月訂正版(corrigendum 1 を含む)が掲載されています。製品側でも動きがあります。三菱電機は、箱入電磁開閉器と箱入電磁接触器(MS-(2X)□形、S-(2X)□CZ形)の生産を2026年9月末日で終了すると案内していました(お知らせ No.214、2025年3月)。対象は箱入形で、開放形の MSO形や S-T形は対象外です。Schneider Electric は、TeSys Deca の LC1D115 と LC1D150 を2026年末に終息予定と FAQ で説明しています。2026年に入っても三菱電機の旧シリーズの変更通知が続いており、保守部品の型式を見直す機会は少なくありません。

最後に電圧です。地方電力公社(PEA)の営業所のサービス品質報告では、低圧系を「380/230 V」、220 V 系の基準を200〜240 V と表記しています。日本の200 V級で設計した盤をタイで使う場合、定格表の読む列が変わります。たとえば三菱電機 MS-T/N カタログ(2023年10月版、p.39)によると、S-T21 の AC-3級の定格容量は200〜220 V の列で4 kW、380〜440 V の列で7.5 kW です。同じ型式でも、列が変われば読める値が変わります。選定の入口は、この列の確認にあると本記事では考えます。

電磁接触器の選定で決める7つと確かめる1つ

導入で挙げた7項目を、もう一度選定の順に並べます。

  1. 使用カテゴリと電圧の列:AC-1、AC-3、AC-4 のどの責務で、どの電圧の列の定格使用電流を読むか。
  2. モーター全負荷電流と開閉頻度、電気的耐久性:納入されるモーターの銘板値で考え、起動回数と必要な寿命から型式を決める。
  3. 過負荷リレー:トリップクラスと整定値、補正。
  4. 短絡保護協調:Type 1 か Type 2 か。メーカーの組合せ表のどの行を使うか。
  5. コイルと補助接点:AC か DC か、電圧、消費電力、サージ対策、補助接点の数。
  6. 周囲温度と取付密度:盤内温度と取付間隔で定格の前提が満たされるか。
  7. 安全回路との組合せ:ミラーコンタクト、機械的インタロック。

そして確かめる1つが、RFPに書き、FAT/SATで確認することです。

なぜ「A数」だけでは決まらないのでしょうか。根拠は定格使用電流の定義にあります。三菱電機はカタログで、定格使用電流を「定格使用電圧において閉路容量、遮断容量、開閉頻度、開閉耐久性を満足する最大適用電流」と定義しています。Schneider Electric の技術資料(販売店サイト掲載)も、定格使用電流は定格使用電圧、開閉頻度と責務、使用カテゴリ、周囲温度を考慮して定まると説明しています。つまりA数は単独の値ではなく、電圧、カテゴリ、頻度、寿命、温度の条件付きの値です。

保護の考え方も確認しておきます。三菱電機はカタログの保護協調の項で、次の原則を挙げています。

  • サーマルリレーとノーヒューズ遮断器の合成動作特性は、モーターの熱特性の下側、始動特性と全負荷電流の上側にあること。
  • 拘束電流以下の過負荷では、サーマルリレーが先に動作すること。
  • 電磁開閉器の遮断能力を超える電流では、ノーヒューズ遮断器が動作すること。
  • 電磁開閉器の過負荷耐量以下で遮断器が動作することが望ましいこと。
  • 遮断器の動作特性は、電線の許容電流と時間の特性より下側にあること。

接触器、過負荷リレー、短絡保護機器は、1台ずつではなく組合せで働きます。制御盤全体の設計や発注の流れは、制御盤 設計|タイ工場の回路・熱・FAT発注実務 で扱っています。本記事はモーター起動回路の部品選定に絞ります。

電磁接触器 選定|AC-3定格・協調・サーマルリレーとタイ工場のRFP - figure 1

図1:電磁接触器の選定フローの概念図です。MOTOR LOAD LIST(モーター負荷一覧)、UTILIZATION CATEGORY(AC-1 / AC-3 / AC-4)、STARTS & DURABILITY(起動回数と耐久性)、OVERLOAD RELAY(トリップクラス、整定)、SHORT-CIRCUIT COORDINATION(Type 1 / Type 2)、COIL & AUX CONTACTS(コイルと補助接点)、AMBIENT & MOUNTING(周囲温度と取付)、SAFETY, RFP & FAT / SAT(安全回路、RFP と受入試験)の順に決めていきます。

用語の整理:電磁接触器、電磁開閉器、サーマルリレー、MMS

呼び方がメーカーや言語で違うため、先に整理します。

用語意味(出典の説明)各社の型式や呼称の例
電磁接触器(コンタクタ)主接点を電磁石の力で開閉する接触器(三菱電機の用語説明)富士電機 SC形(Magnetic contactor)、三菱電機 S-T/S-N形、Schneider Electric TeSys Deca LC1D(Contactor)、Siemens 3RT2(power contactor、motor contactor)
電磁開閉器(マグネットスイッチ)電磁接触器とサーマルリレーを組み合わせたもの(三菱電機)富士電機 SW形(Magnetic starter)、三菱電機 MS形(箱入)、MSO形(開放形)。英文資料では starter、load feeder などの語も使われます
サーマルリレー(熱動形保護継電器)バイメタルで過電流を検出し、電磁接触器を開路してモーターの焼損を防ぐ(三菱電機)富士電機 TR形、三菱電機 TH-T/N形、Schneider Electric LRD など、Siemens 3RU(熱動式)と 3RB(電子式)
MMS(マニュアルモータスタータ)モーター保護用の手動操作の開閉器。三菱電機は MMP-T がトリップクラス10と瞬時引外しを持つと説明しています三菱電機 MMP-T、Schneider Electric GV2、Siemens 3RV2

三菱電機は、欠相保護付きを「2E」(過負荷と拘束、欠相)、反相まで含む電子式を「3E」(過負荷と拘束、欠相、反相)と呼んでいます。現場で「マグネット」「マグネットスイッチ」と言うとき、接触器単体を指すのか、サーマルリレー付きの電磁開閉器を指すのかは人によって違います。RFPや見積では、電磁接触器か電磁開閉器かを型式で書き分けると誤解が減ります。

MMSと接触器(と過負荷リレー)を組み合わせて1回路にする構成もあります。本記事では、これを「MMS+接触器の組合せ」と説明的に呼びます。

規格の位置づけも書いておきます。低圧の接触器とモータースタータの規格は IEC 60947-4-1 です。2026年10月16日時点で IEC Webstore に掲載されているのは IEC 60947-4-1:2023(第5版、2026年3月訂正版)です。同ページの概要によると、適用範囲は電気機械式の接触器とスタータで、定格電圧は1,000 V AC/1,500 V DC 以下です。三菱電機のカタログのように、日本の JIS C 8201-4-1 の定格を併記しているものや、富士電機のカタログのように JIS 定格と IEC 定格を別表で載せているものもあります。

使用カテゴリ:AC-1とAC-3は同じ型式でも定格使用電流が違う

使用カテゴリの意味

使用カテゴリは、接触器がどんな責務で開閉するかの区分です。メーカー資料は次のように説明しています。

  • AC-1:三菱電機は「始動時の突入電流が殆どない電熱や抵抗負荷等の開閉責務」と説明し、耐久性試験は定格使用電流の1倍を閉路、遮断する条件だとしています。
  • AC-3:三菱電機は「モータの通常の始動・停止を行う開閉責務」と説明し、耐久性試験は定格使用電流の6倍閉路、1倍遮断の条件だとしています。Schneider Electric の技術資料は、AC-3 では投入時にモーター定格電流の約5〜7倍(about 5 to 7 times)の始動電流を閉路し、開放時は定格電流を遮断する、と一般的な説明をしています。
  • AC-4:三菱電機は、始動電流を開閉する責務(耐久性試験は6倍閉路、6倍遮断)で、AC-3級より過酷な開閉であり、インチングやプラッギングもこれに当たると説明しています。

ここでの倍率は、試験条件やメーカーの一般説明です。実際のモーターの始動電流は機種によって違うので、銘板やモーターメーカーのデータで確かめる必要があります。

同じ型式で列が変わる実例

次の表は、取得したカタログとデータシートの定格使用電流を、カテゴリと電圧の列ごとに並べたものです。メーカー間の比較ではなく、同じ型式の中で値がどう変わるかを見るための表です。

メーカー、資料型式AC-3級AC-4級AC-1級
富士電機 SC-NEXT カタログ(2024年11月 Ed10)p.12SC09XAC-3、AC-3e 200〜240 V 11 A、380〜440 V 9 A一覧表に欄なし20 A
同上SC18XAC-3、AC-3e 200〜240 V 18 A、380〜440 V 18 A一覧表に欄なし25 A
三菱電機 MS-T/N カタログ(2023年10月版)p.39S-T10200〜220 V 11 A、380〜440 V 7 A200〜220 V 8 A、380〜440 V 6 A200〜240 V 20 A、400〜440 V 11 A
同上S-T21200〜220 V 18(20) A、380〜440 V 18(20) A200〜220 V 18 A、380〜440 V 13 A200〜240 V 32 A、400〜440 V 32 A
同上S-T35200〜220 V 34(35) A、380〜440 V 32 A200〜220 V 26 A、380〜440 V 24 A200〜240 V 60 A、400〜440 V 60 A
同上S-T50200〜220 V 50 A、380〜440 V 48 A200〜220 V 35 A、380〜440 V 32 A200〜240 V 80 A、400〜440 V 80 A
Schneider Electric LC1D38FL データシート(販売店配信、2026年5月生成)LC1D38AC-3、AC-3e 38 A(440 V 以下、60 °C 未満)400 V で7.5 kW(kW表記)50 A(440 V 以下、60 °C 未満)

三菱電機の表の( )内は電磁接触器単体の値です。同社カタログの注記によると、S-T21 と S-T35 の( )内は接触器単体で使う場合の値で、サーマルリレー付きの電磁開閉器では( )の外の小さい方の値になります。S-T21 の AC-3級 200〜220 V の列なら、電磁開閉器では18 A、接触器単体では20 A です。

この表から読めることは3つあります。

  • 同じ S-T21 でも、AC-1級32 A、AC-3級18(20) A、AC-4級(380〜440 V)13 A と、列によって大きく違います。
  • 富士電機の SC09X も、AC-1 20 A に対し AC-3(200〜240 V)11 A です。
  • Schneider Electric の LC1D38 は、定格使用電流に「60 °C 未満」という周囲温度の条件が付いています。

AC-1 の大きな数字を見てモーター回路に使えば、定格を超えた責務で開閉することになります。モーターの直入れなら AC-3、インチングや逆相制動が多いなら AC-4 の列を読む、という区別が出発点です。

AC-3e の扱い

IEC Webstore の IEC 60947-4-1:2023 の概要には、変更点として「update of Annex C including rational about AC-3e」が挙がっています。富士電機の SC-NEXT カタログと Schneider Electric の LC1D38 データシートは、AC-3 と AC-3e を同じ値で併記しています。本記事で書けるのはここまでです。AC-3e の定義本文は確認していません。

同じモーター回路でも位置でカテゴリが変わる

三菱電機はカタログで、同社インバータの入力側に使う電磁接触器は AC-1級で選定しているとし、その電気的耐久性は50万回、モーター駆動中の非常停止に使う場合は25回になる、と説明しています。一方、インバータの出力側で商用運転に切り替える接触器は、モーターの定格電流に対し AC-3級の定格使用電流で選ぶとしています。同じモーターにつながる接触器でも、回路のどこに入れ、何を開閉するかでカテゴリが変わる例です。

電磁接触器 選定|AC-3定格・協調・サーマルリレーとタイ工場のRFP - figure 2

図2:三菱電機 S-T21 の定格使用電流(MS-T/N カタログ 2023年10月版 p.39)。AC-1(200〜240 V)32 A、AC-3(200〜220 V)18 A(電磁接触器単体では20 A)、AC-4(200〜220 V)18 A、AC-4(380〜440 V)13 A です。同じ型式でも、読む列で定格が違います。

モーター全負荷電流と起動:開閉頻度と電気的耐久性は別の値

全負荷電流は「納入されるモーターの銘板」で

設計の初期には、モーターのkWから概算の電流を見積もることがあります。しかし接触器と過負荷リレーの選定には、実際に納入されるモーターの銘板の全負荷電流を使うべきだと本記事では考えます。効率クラスが違えば、同じkWでも電流が違い得るからです。たとえば富士電機は、サーマルリレー TR65X の適用表で、標準効率(IE1)と高効率(IE3)のモーターの全負荷電流を別の列に載せています。メーカー自身が効率クラスで分けて示している以上、概算値で整定してしまうのは避けたいところです。

開閉頻度と電気的耐久性

接触器の仕様には、似た言葉の2つの値があります。

  • 開閉頻度:1時間あたりに開閉できる回数(回/時)。三菱電機は「規格に定められた条件の下で開閉できる1時間当たりの回数」と定義しています。
  • 電気的耐久性:主回路に通電した状態で、実用上使える開閉回数の目安(回)。三菱電機は開閉耐久性を「規格を参考にした条件の下で実用上使用できる開閉回数の目安(参考値)。使用環境により変化する」と定義しています。

つまり、開閉頻度は「どれだけ速く繰り返せるか」、電気的耐久性は「通算で何回もつか」の目安です。開閉頻度を満たしていても、通算の回数が耐久性を超えれば、接点の摩耗や溶着のおそれが高まります。

メーカー資料の値を、型式と条件付きで紹介します。

メーカー、資料型式と条件開閉頻度電気的耐久性
富士電機 SC-NEXT カタログ(2024年11月 Ed10)p.23SC09、SC12、SC20(AC-3、AC-3e、220 V)1,800回/時200万回
同上SC18(同条件)1,800回/時150万回
三菱電機 MS-T/N カタログ(2023年10月版)p.30T10〜T50 フレーム、AC-3級1,800回/時(T50 は1,200回/時)200万回(T20 の AC-3級 380 V 以上は100万回)
同上T10〜T50 フレーム、AC-4級300回/時3万回(T20 や大きいフレームの380 V 以上では少ない値になる注記あり)
同上T10〜T50 フレーム、AC-1級1,200回/時50万回
Schneider Electric LC1D38FL データシート(販売店配信)LC1D38、38 A AC-3(440 V 以下)最大3,600回/時(60 °C)1.4 M サイクル

同じAC-3の電気的耐久性でも、型式、電圧、メーカーで値が違います。富士電機はカタログの注記で、電気的耐久性は JIS の試験条件を想定した220 V での値で、使うモーターの特性や負荷条件で変わり、始動電流が高いと耐久性が下がって接点溶着が起こり得る、と説明しています。三菱電機も前述のとおり「参考値」と定義しています。電気的耐久性は約束された値ではなく、メーカーが条件付きで示す目安として読むのが妥当です。

必要な寿命で型式が変わる

富士電機は、直入れ始動(AC-3)で必要な電気的耐久性ごとに使う型式を示す適用表をカタログに載せています(p.27)。同表によると、380〜440 V、5.5 kW(13 A)のモーターでは、100万〜300万回なら SC18X、400万回なら SC20X(D)、500万回なら SC32X です。200〜240 V、3.7 kW(17.4 A)のモーターでは、100万回なら SC18X、200万回なら SC20X(D)、300〜400万回なら SC26X(D)、500万回なら SC38X(D) です。

ここから分かるのは、「kWに合う最小の型式」と「必要な寿命に合う型式」は別だということです。1日に何度も起動と停止を繰り返す搬送設備では、年間の開閉回数を見積もり、期待寿命から型式を決める考え方が必要になります。

周囲温度、ON時間率、取付方向

Siemens は 3RT2 の取扱説明書(2014年10月版)で、3RT20 の機械的耐久性と寿命(Service life)が周囲温度で変わると示しています。S0〜S2 サイズでは、周囲温度60 °C 以下で機械的耐久性1,000万回、寿命20年、65 °C で500万回と15年、70 °C で100万回と10年です。同社は、この寿命の値はON時間率100 パーセントの条件で、50 パーセントなら値が2倍になると説明しています。

取付方向も効きます。富士電機は、横取付仕様(Z109)では機械的耐久性、電気的耐久性、開閉頻度が80 パーセントになると説明しています。

インチングと高頻度運転

インチングやプラッギングは AC-4 の責務で、始動電流を繰り返し開閉する高頻度の断続運転もそれに近い条件になります。三菱電機は、こうした用途では飽和リアクトル付きサーマルリレーで不要なトリップを避け、適切な保護ができる場合があるが、詳細な検討が必要だとしています。

過負荷リレーのトリップクラスと整定(サーマルリレー選定)

トリップクラスは「時間の帯」

トリップクラスは、過負荷リレーがどのくらいの時間で動作するかの区分です。三菱電機と Siemens は、IEC 60947-4-1 の規格値として次の表を資料に載せています。三菱電機の表は周囲温度20 °C、Siemens の表は冷態からの三相平衡負荷が条件です。

トリップクラス整定電流の7.2倍(冷態)での動作時間1.5倍(温態)での動作時間(三菱電機の表)
10A2秒を超え10秒以下2分未満
104秒を超え10秒以下4分未満
206秒を超え20秒以下8分未満
309秒を超え30秒以下12分未満

三菱電機の表では、整定電流の1.05倍で2時間不動作、1.2倍で2時間以内に動作することも規格値として示されています。Siemens の過負荷リレー参考マニュアル(2011年4月版)は、トリップクラスは7.2倍の電流で冷態から動作しなければならない時間の範囲だと説明しています。

注意したいのは、クラスの数字は1つの時間ではなく「帯」だということです。クラス10とクラス10A は帯の下限が違います。さらに Siemens は電子式の 3RB20/3RB21 について、許容差帯 E の場合はクラス10が5〜10秒と説明しており、熱動式とは帯が違います。同じ「クラス10」でも、方式とメーカーの資料で帯を確かめる必要があります。クラスの数字が大きいほど、動作までの許容時間が長い側の帯になります。

クラスの選び方

起動時間が長い負荷では、起動中に過負荷リレーが動作しやすくなります。本記事では、負荷の起動時間が、選んだクラスの帯の下限(クラス10なら4秒)より十分に短いかを確かめ、短くなければクラスを上げるか、メーカーが用意する別の特性の製品を検討するのが順序だと考えます。三菱電機は、始動時間の長いファンやブロワには飽和リアクトル付き(TH-□SR形)、許容拘束時間の短い水中モーターやコンプレッサモーターには速動特性(TH-□FS形)を挙げています。同社は選定の原則として、サーマルリレーの動作特性曲線がモーターの熱特性より下にあり、モーターの始動特性曲線より上にあることを挙げています。

型式ごとのクラスもメーカー資料で確かめます。たとえば三菱電機のカタログ(p.149)では、TH-T18、TH-T25、TH-T50 はトリップクラス10A、TH-N120〜N400 は10 とされています。

整定と補正

三菱電機は、整定値の補正について次の注意を挙げています。

  • サーマルリレーを電磁開閉器と組まずに単体で取り付ける場合は、求めた整定値を補正率で割る(例:TH-T25 は1.06、TH-T65 は1.05)。
  • 接続電線が標準より太いと最小動作電流が大きく、細いと小さくなるため、整定を補正する(例:TH-T18 で標準2 mm² に対し、1.25 mm² なら98 パーセント、2.5 mm² なら103 パーセント)。

また同社の TH-T形は全形名が周囲温度補償装置付きで、使用周囲温度は−10〜+40 °C(基準は20 °C、盤内は55 °C まで)とされています。

欠相保護

三相モーターでは欠相も問題になります。富士電機は TR形の動作特性で、欠相保護付きの不平衡条件(2極100 パーセント、1極90 パーセントで不動作、2極115 パーセント、1極0 パーセントで2時間以内に動作)を示しています。三菱電機は、欠相保護は3素子(2E)付きの TH-□KP形、反相と欠相の兼用は電子式モータ保護リレー(3E)の ET-□形としています。

短絡保護との協調:Type 1 と Type 2(電磁接触器の協調)

Type 1 と Type 2 の違い

短絡が起きたとき、遮断器やヒューズが電流を切るまでの間に、接触器や過負荷リレーも大きな電流を受けます。どこまでの損傷を許すかを決めるのが協調の種類です。

Siemens は 3RT2 の取扱説明書で、IEC 60947-4-1 は2種類の協調を区別しており、どちらでも短絡は確実に処理され、違いは短絡後の機器の損傷の程度だけだと説明しています。

  • Type 1:Siemens は、短絡を遮断したあと負荷回路が動作できなくなってもよく、接触器と過負荷リレーの損傷も許される、と説明しています。Schneider Electric の技術資料は、人や設備に危険を及ぼしてはならず、修理や部品交換なしに運転を再開できなくてもよい、と説明しています。
  • Type 2:Siemens は、短絡遮断後に過負荷リレーやその他の部分に損傷があってはならず、交換なしに運転を再開できる、と説明しています。ただし、接触器の接点の溶着は、大きな変形なく容易に分離できる場合に限り許される、としています。Schneider Electric も、接点溶着のおそれは許容され、その場合はメーカーが保守のための措置を示さなければならない、と説明しています。

Type 2 は「何も起きない」ことを意味するわけではありません。軽い溶着は起こり得て、その対処はメーカーの示す措置に従う、という前提で理解する必要があります。

Schneider Electric の技術資料は、協調なしの構成はスタータの規格などで認められていないと説明しています。同資料は Type 1 を、機器費用が低く運転の信頼性が要件でない場合の解とし、例に商業施設の空調を挙げています。Type 2 は、機械の停止時間と短絡後の保守を減らす解とし、例にエスカレーターを挙げています。

メーカーが試験した組合せ表

協調は計算だけで決まるものではありません。メーカーは試験した組合せを表にして公開しています。

  • Fuji Electric(富士電機):SC-NEXT カタログ p.30 で、IEC 規格に基づく短絡保護機器との協調表を公開しています。電磁開閉器の型式、サーマルの整定範囲、MCCB や漏電遮断器の型式、ヒューズの定格を Type 1 と Type 2 に分けて載せています。たとえば SW18X でヒータ15〜18 A の行は、Type 1 で短絡電流 r=3 kA、BW50SAG などの50 A、Type 2 でヒューズ63 A です。
  • Schneider Electric:技術資料(販売店サイト掲載)で、ヒューズと接触器とサーマルの組合せ、遮断器と接触器の組合せを Type 1 と Type 2 に分けて載せています。同資料は、同社の協調表が一般に50 kA 以上の電流 Iq に基づくと説明しています。LC1D38FL のデータシートには、690 V 以下で63 A gG のヒューズを Type 1、Type 2 の協調として記載しています。
  • Siemens:3RT2 の取扱説明書 p.310 で、3RT2535/2536 についてヒューズ gL/gG の定格を Type 1 で125 A/160 A、Type 2 で63 A/80 A と記載しています。

三菱電機については、MMP-T(MMS)と S-T を組み合わせると UL の短絡電流定格(SCCR)を拡大できるとカタログで説明しています。IEC の Type 1 や Type 2 の組合せ表については、今回取得したカタログの本文では確認できていません。

RFPでは「どの表のどの行か」を指定させる

Type 2 を求めるなら、同一メーカーが試験した組合せ表に載っている「短絡保護機器(MCCB、MMS、ヒューズ)+接触器+過負荷リレー」の組を使うことになります。本記事では、RFPに協調の種類を書くだけでなく、組合せ表の出典(資料名と版)と該当行(型式、整定範囲、r や Iq)を納入図書に含めさせることが要点だと考えます。短絡後の復旧の速さは、この1行で大きく変わり得ます。

コイルと補助接点:電圧範囲、消費電力、サージ

動作電圧範囲

コイルは、制御電源の電圧が多少変動しても確実に動作する必要があります。

  • Fuji Electric(富士電機):AC 操作形は85〜110 パーセント、DC 操作形は85〜110 パーセント(周囲温度55 °C)または80〜110 パーセント(40 °C)と説明しています。
  • Mitsubishi Electric(三菱電機):周囲温度40 °C(盤内温度55 °C)でコイルの定格電圧の85〜110 パーセントで支障なく動作すると説明しています。そのうえで、定格の100 パーセントを超える電圧を加え続けるとコイルの絶縁劣化が進み、機械的耐久性も下がるため、平均95〜100 パーセントで使うよう求めています。T65〜T100 などの AC操作DC励磁方式コイルは、接点が触れる時に電圧が定格の65 パーセントまで下がっても(最初の1〜2サイクル)支障なく動作する低電圧補償形だとしています。
  • Siemens:SIRIUS の接触器はすべて IEC の規格が定める0.85〜1.1倍の動作範囲を満たし、多くの機種は0.8〜1.1倍で動作すると説明しています。

モーター起動時の電圧低下や瞬時電圧低下でコイルが落ちると、ラインが止まります。電圧変動の実態を測る方法は、工場 電力品質監視 導入|瞬低・高調波を止まる設備と結ぶ で扱っています。

消費電力とPLCからの駆動

コイルの消費電力は、型式とコイル電圧で決まります。いくつか例を挙げます。

  • 三菱電機のカタログ(p.30)によると、AC 操作の S-T21/T25 のコイルは常時7 VA、投入瞬時75 VA です。
  • 同社の直流操作形 SD-T12〜T32 は、DC12 V/24 V コイルで2.2 W とされ、突入電流はないと説明しています。
  • 富士電機の SC-NEXT カタログ(p.22)によると、DC 操作の標準形 SC09XG〜18XG(24 V)は投入と保持がともに3.9(VA表記)、低消費形 SC09XG-L〜38XG-L は2.4です。同社は低消費形を24 V 専用としています。
  • Schneider Electric の LC1D38FL(110 V DC 低消費コイル)のデータシートは、投入と保持の電力を20 °C で2.4 W と記載しています。

省電力のコイルが使えるかどうかは、型式とコイル電圧で決まります。PLCのトランジスタ出力で直接駆動するなら、DCコイルの消費電力と突入の有無を確認します。多数の接触器を24 V DC で動かす場合は電源容量にも効きます。電源の選び方は 制御盤の24V DC電源選定|容量・冗長化・保護・FAT/SAT を参照してください。

サージ対策

コイルを切ったときのサージは、PLCの出力素子を傷めることがあります。メーカーの扱いは型式ごとに違います。

  • 富士電機は、SC-NEXT の AC 操作形、DC 操作形ともコイルにサージ吸収素子を内蔵していないとし、必要ならオプションのユニットを使うよう説明しています。PLCなどの出力トランジスタは、コイルのサージと出力電源を合わせた電圧以上の耐圧を持つ必要があるとしています。
  • 三菱電機は、T65〜N800AB形の交流操作コイルはサージ吸収機能を内蔵しているため、コイル用サージ吸収器ユニットは不要だとしています。T10〜T50 には、サージ吸収器付きの製作や UT-SA21 などのオプションがあります。
  • Schneider Electric の LC1D38FL データシートは、双方向のダイオードによるサージ抑制を内蔵と記載しています。

三菱電機は、サージ吸収素子を組み合わせると、コイルを切ってから主接点が開くまでの時間が遅くなると注意しています。また直流コイルでは、マイナス側を制御接点で開閉する回路で、湿度が高く結露しやすい条件だと電食でコイルが断線するおそれがあるとして、プラス側で開閉するよう勧めています。湿度の高いタイの工場では、見落としやすい点です。

補助接点

補助接点の数は型式で違います。三菱電機のカタログ(p.30)によると、標準付属の補助接点は S-T10 が1a、S-T12/T20 が1a1b、S-T21/T25 と S-T35/T50 が2a2b です。補助接点の定格は AC-15級で200〜240 V 3 A とされています。不足する場合は追加ユニットを使います。運転確認やインタロックに何点使うかを先に数えておくと、型式の選び直しを防げます。

周囲温度と取付密度:タイの盤内で効く定格の前提

基準温度はメーカーで違う

接触器の定格は、ある周囲温度を前提にしています。その前提はメーカーで違います。

メーカー、資料周囲温度の前提
Fuji Electric(SC-NEXT カタログ 2024年11月 Ed10、p.42、p.45)標準使用条件は−10〜+55 °C で、24時間平均が35 °C を超えないこと。ケースカバー付きは−10〜+40 °C
Mitsubishi Electric(MS-T/N カタログ 2023年10月版、p.73、p.140)箱なしの MSO形、S-T/N形は標準品で盤内温度55 °C でも使える。サーマルリレー TH-T形は周囲温度−10〜+40 °C(基準20 °C、盤内は55 °C まで)
Schneider Electric(技術資料 A6/34、LC1D38FL データシート)−5〜+55 °C は制限なし、−50〜+70 °C は必要に応じて制限。LC1D38 の定格使用電流は60 °C 未満の条件付き
Siemens(3RT2 取扱説明書 2014年10月版、p.51〜53)標準で−25〜+60 °C。60 °C を超え70 °C までは定格と開閉頻度を低減。24時間平均は60 °C を超えないこと

富士電機は、ここでいう周囲温度は製品のすぐ近くの温度だと説明しています。盤の外の気温ではなく、盤内で接触器の周りの温度を見る必要があります。また富士電機の条件には「24時間平均35 °C」が入っているため、昼夜の平均でも確かめることになります。

取付間隔

密着して並べると、互いの熱で温度が上がります。

  • 富士電機は取付間隔(アークスペース)を示し、天井取付は不可、横取付は専用仕様としています。
  • 三菱電機は、IEC 35 mm レール取付の最小間隔を T10〜T32 とサーマルで5 mm、T65/T80 で10 mm としています。密着取付は可能としつつ、連続通電や開閉頻度、使用率の高い製品を同じレールに並べると温度上昇や衝撃で寿命が短くなることがある、サーマルリレーはヒータ相互の熱影響で特性が若干変わる、として、極力最小間隔以上をあけるよう求めています。
  • Siemens は、60 °C までは密着取付に制限はなく、それを超えると10 mm の間隔が必要になる場合があると説明しています。

温度と寿命、湿度

三菱電機はカタログで、一般的には周囲温度が6〜10 °C 上がるごとに絶縁寿命は半減すると言われている(アレニウスの法則)と書いています。さらに、周囲温度が高い状態でコイルに定格を超える電圧が続くと、寿命が極端に短くなることがあるとしています。

湿度について同社は、熱帯地方への輸出では湿度の影響が最も大きいとし、梱包箱内1 m³ あたり3 kg 以上のシリカゲルを入れることを推奨しています。腐食性ガスがある環境向けには防食仕様品もあるとしています。

標高は、富士電機が2,000 m 以下、Siemens が2,000 m までを標準条件としています。タイの平野部の工場では問題になりにくい項目ですが、条件として RFP に書いておくと整理しやすくなります。

盤の冷却方式や温度上昇の計算は、制御盤 熱設計 冷却 選定|タイ工場の方式比較と検収条件 で扱っています。本記事で言いたいのは、盤内温度の想定と接触器の定格の前提温度を、同じ表の上で突き合わせることです。

安全回路と組み合わせる:ミラーコンタクト、機械的連動

ミラーコンタクトとは

非常停止や扉インタロックの回路では、接触器の主接点が溶着していないかを監視することがあります。そこで使われるのがミラーコンタクトです。

  • Fuji Electric(富士電機):SC-NEXT は、接触器単体と補助接点ブロック併用の両方で IEC 60947-4-1 Annex F のミラーコンタクト要件に適合し、TÜV 認証を取得していると説明しています。主接点が溶着しても NC 補助接点は開いたままで、再起動を防ぐとし、NC 接点の隙間は0.5 mm 以上と図示しています。
  • Mitsubishi Electric(三菱電機):ミラーコンタクトについて TÜV による適合認定を取得しており(対象フレームは10A〜32A フレーム)、EN 60204-1 の故障時の制御機能の要求事項に適合し、インタロック回路用の接点として使えると説明しています。
  • Schneider Electric:FAQ で、ミラー補助接点は NO 主接点の状態を反映する NC 補助接点だと説明しています。TeSys Deca の LC1D09〜LC1D95 では本体の21-22 NC 接点がミラーコンタクトで、取り外せないため前面ブロックより本体の NC 接点の使用を勧めています。
  • Siemens:3RT2 の取扱説明書で、ミラーコンタクトは主 NO 接点と同時に閉じることのない NC 補助接点だと説明しています。同社は、NC 接点を1つ以上持つ 3RT2 のモーター接触器は補助スイッチとの組合せでミラーコンタクト特性を持つとしています。

安全リレーユニットは、このNC接点を外部機器監視(EDM)の入力に取り込み、接点が溶着していれば再起動させない、という使い方をします。安全リレー側の選び方は 安全リレーの選定|非常停止・扉・EDM・リセットを一つの安全機能として設計する で扱っています。

ミラーコンタクトだけで安全性は決まらない

ミラーコンタクト付きの接触器を使えば、それだけで安全回路の到達レベルが決まるわけではありません。到達するカテゴリやパフォーマンスレベルは、回路全体のリスクアセスメントと設計、検証で決まるというのが本記事の注記です。安全PLCを使う場合の妥当性確認の進め方は、安全PLC導入|認証で終わらないRFP・妥当性確認 を参照してください。

三菱電機はカタログで、電磁開閉器は過大電流の開閉、接点の異常消耗、指令接点のチャタリング、経年劣化や寿命によって接点が溶着し開放しない場合があり、投入や開放ができなくなることを想定して安全を確保するよう注意しています。溶着は起こり得る前提で回路を組む、という考え方です。

正逆転回路の機械的インタロック

正転と逆転の接触器が同時に入ると、相間短絡になります。電気的なインタロックに加えて、機械的インタロックユニットを使う構成があります。富士電機は Mechanical Interlock Unit を、三菱電機は UT-ML20(T10〜T20)と UN-ML21 をカタログに載せています。本記事では、正逆転回路ではこのユニットの品番まで RFP に書くことを勧めます。

インバーター、ソフトスタータとの関係

インバーターで速度制御するモーターでは、接触器の役割が直入れの場合と変わります。前述のとおり、三菱電機は自社インバータの入力側の電磁接触器を AC-1級で選定し、その電気的耐久性を50万回、モーター駆動中の非常停止に使う場合は25回としています。出力側で商用運転に切り替える接触器は、モーターの定格電流に対し AC-3級で選ぶとしています。

ここから言えるのは、インバーターの入力側の接触器を運転と停止のたびに開閉する使い方は、同社の想定する責務と回数の前提から外れ得るということです。運転と停止はインバーターの指令で行い、入力側の接触器は電源の入切や非常時に使う、という役割分担を図面で確かめておくとよいでしょう。

インバーターそのものの更新や選定は インバーター 制御の更新・選定・FAT/SAT実務ガイド で、サーボとインバーターの使い分けは サーボ制御とインバーター制御2026|選定を分ける4つの境界 で扱っています。ソフトスタータの選定は本記事の範囲外です。

主要メーカーの公開情報と価格の確認方法

公開情報の比べ方

次の表は、本記事のために取得した資料で、どの情報がどこに載っていたかを整理したものです。製品の優劣や推奨を示すものではありません。メーカーはアルファベット順です。

メーカー取得した資料と発行年AC-3 と AC-1 の別列記載短絡協調の組合せ表ミラーコンタクトの記載周囲温度の前提
Fuji ElectricSC-NEXT カタログ(2024年11月 Ed10)あり(AC-3、AC-3e と AC-1)あり(Type 1、Type 2、p.30)あり(Annex F、TÜV 認証)−10〜+55 °C、24時間平均35 °C
Mitsubishi ElectricMS-T/N カタログ(2023年10月版)あり(AC-3級、AC-4級、AC-1級)取得資料で確認できず(UL SCCR の記述あり)あり(TÜV 適合認定、10A〜32A フレーム)盤内55 °C、サーマルは周囲−10〜+40 °C(基準20 °C)
Schneider ElectricTeSys 技術資料 A6(2020年、販売店サイト掲載)、LC1D38FL データシート(2026年生成)あり(AC-3、AC-3e と AC-1)あり(Type 1、Type 2)あり(本体21-22 NC)−5〜+55 °C 制限なし、定格は60 °C 未満の条件付き
Siemens3RT2 取扱説明書(2014年10月版)カテゴリの定義表(p.43)と AC-1 の技術データを確認あり(ヒューズの Type 1、Type 2、p.310)あり(NC 接点と補助スイッチの組合せ)−25〜+60 °C、60 °C 超で低減

この表は「どの資料のどこを見れば確認できるか」の手がかりです。発注時には、型式ごとの最新のカタログやデータシートで確認してください。

価格の確認方法

価格は、資料の種類によって意味が違います。並べて比べられるものではない点に注意してください。

  • メーカーの標準価格:三菱電機の MS-T/N カタログ(2023年10月版、p.81)には、電磁接触器 S-T21 が13,970円、電磁開閉器 MSO-T21 が22,700円と、標準価格(カタログ記載、2023年10月版)が載っています。日本国内向けのカタログ記載の値で、実際の販売価格ではありません。
  • 通販の販売価格:モノタロウの販売ページ(閲覧日2026年10月16日)では、たとえば富士電機 SC09XA が販売価格(税別)4,698円、税込5,168円、三菱電機 MSO-T10(サーマルリレー TH-T18 付き、コイル AC200 V)が販売価格(税別)6,698円、税込7,368円でした。品番末尾の記号の意味は、ページ上では確認できていません。

接触器単体と電磁開閉器ではサーマルリレーの有無が違い、コイル電圧や補助接点の構成でも価格が変わります。標準価格と通販価格も性質が違います。そのため、本記事では価格を横に並べて比べることはしません。タイ国内の公開価格は、今回の調査では確認できませんでした。タイでの調達では、型式、コイル電圧、補助接点、サーマルの有無をそろえたうえで、販売店に見積を取るのが現実的です。

RFPに書く要件とFAT/SATの受入基準

RFPに書く要件

本記事では、接触器と過負荷リレーの選定を盤メーカーに任せる場合でも、発注側が次の項目をRFPに書き、選定根拠書と協調表の出典を受け取ることが手戻りを減らすと考えます。

項目RFPに書く内容(例)根拠となるメーカー情報
負荷一覧モーターkW、銘板の全負荷電流と効率クラス(IE区分)、起動方式、起動時間、起動頻度、ON時間率富士電機は IE1 と IE3 を別列で表示
定格使用電流IEC 60947-4-1 準拠の定格で、使用カテゴリ(AC-3 または AC-4)、電圧の列(380〜440 V など)、周囲温度を明記三菱電機の電圧列別の定格表、Schneider Electric の60 °C 未満の条件、富士電機の JIS と IEC の別表
期待寿命必要な開閉回数(回、年)と、その根拠となるメーカーの表三菱電機の「参考値」、富士電機の耐久回数別適用表
過負荷リレー型式、トリップクラス、整定範囲、整定値、補正の有無三菱電機の補正率と規格値の表
短絡協調協調の種類(Type 1 または Type 2)、組合せ表の資料名と該当行(型式、整定範囲、r や Iq)富士電機、Schneider Electric、Siemens の組合せ表
コイルAC か DC か、コイル電圧、制御電源、サージ対策、PLC直接駆動の可否各社の動作電圧範囲とサージの扱い
補助接点と安全補助接点の数、ミラーコンタクトの型式と端子、機械的インタロックの品番各社のミラーコンタクトの説明
周囲温度と取付想定盤内温度、取付間隔、取付方向各社の周囲温度の前提と最小間隔

富士電機が JIS 定格と IEC 定格を別表で載せているように、同じ型式でも規格によって定格容量の表記が違う場合があります。タイ向けの盤では IEC 60947-4-1 準拠の定格で書かせると、比較と確認がしやすくなると本記事では考えます。

電気設計の外注範囲をどう切るかは 電気設計 外注|タイ工場RFP・図面・FAT/SAT実務 を、タイでの盤製作の引渡し実務は タイ 制御盤 製作|仕様・FAT・引渡しの発注実務ガイド を参照してください。

FAT(工場出荷試験)で確かめること

本記事では、盤メーカーの工場で次の点を確認することを提案します。

  • 過負荷リレーの整定値が、負荷一覧の銘板値と補正の考え方に合っているか。
  • 実装された短絡保護機器、接触器、過負荷リレーの型式が、組合せ表の該当行と一致しているか。
  • コイル電圧の実測値が、定格と動作電圧範囲に収まっているか。
  • 連続運転のあと、盤内の接触器周辺の温度がメーカーの前提温度に対してどうか。
  • ミラーコンタクトによる再起動阻止。主接点が閉じたままの状態を模擬し、安全リレーが再起動を止めることを確かめます(手順は安全側の設計者と事前に決めます)。

SAT(現地受入試験)で確かめること

現地では、実際の負荷と電源で次の点を確かめます。

  • 実負荷での起動電流と起動時間を測り、過負荷リレーがトリップしないこと、整定値と実負荷電流の関係が想定どおりであること。
  • 現地の電源電圧でコイルが確実に動作すること。モーター起動時の電圧低下も含めて確認します。三菱電機が平均95〜100 パーセントでの使用を求めていることも判断材料になります。
  • 運転を続けたあとの盤内温度。
  • トリップや溶着が起きた場合の復旧手順が、保全担当に引き継がれていること。

保全:接点の摩耗、寿命、交換の判断(マグネットスイッチの保全)

接触器は消耗品です。ただし「何年で交換」「何回で交換」という一般値は、本記事では示しません。メーカーが示す電気的耐久性は、前述のとおり条件付きの参考値です。三菱電機は開閉耐久性を「使用環境により変化する」目安と定義しており、Siemens は寿命の値がON時間率や周囲温度で変わると示しています。

保全で役立つのは、自分の設備の数字を持つことです。

  • 開閉回数を把握する。PLCで運転指令の回数を数えておくと、メーカーの電気的耐久性の目安と比べられます。
  • トリップの記録を残す。どの回路で、いつ、何が原因(過負荷、溶着、短絡)で止まったかを記録します。
  • コイルの劣化要因を見る。三菱電機は、コイルの寿命は周囲温度と印加電圧に影響されること、直流コイルは湿度と開閉する側で電食が起こり得ることを注意しています。

モーター電流を常時監視して、起動電流や負荷の変化から異常の兆しを捉える方法もあります。詳しくは モーター電流シグネチャ解析導入|RFPとFAT・SATの実務 で扱っています。

予備品の持ち方も考えておきます。メーカーの製品更新や生産終了の案内は続いています。交換部品を選ぶときは、元の型式の A 数だけで後継を選ばず、使用カテゴリ、コイル電圧、補助接点、取付寸法、過負荷リレーとの組合せを確かめます。旧型式を再生品で延命する場合でも、同じ確認が必要です。

費用と効果のモデル試算(仮の数字)

ここからは、この記事のための仮の数字で、見直しの費用と効果を試算します。実在の工場の値ではありません。

想定:タイの日系電子部品工場です。搬送コンベヤ、ポンプ、ファンなど12台のモーター起動回路(直入れ)を持つユーティリティ盤で、接触器の接点溶着と、起動時の過負荷リレーのトリップによる停止が続いています。盤メーカーに負荷一覧と選定根拠を出させて見直し、使用カテゴリ、トリップクラス、協調の観点で接触器と過負荷リレーを入れ替え、整定とFAT相当の確認運転を行います。

費目は、この盤の接触器と過負荷リレーに起因する停止の損失だけです。品質への影響や他の停止は数えていません。

項目計算値
現状の停止時間月6回 × 1回0.5時間 × 12か月、6 × 0.5 × 12 = 36時間36時間/年
停止1時間あたりの損失(仮)—10,000 THB
現状の損失36 × 10,000 = 360,000360,000 THB/年
初期費用40,000 + 72,000 + 48,000 = 160,000160,000 THB
基準ケースの停止時間(月1回に減る)1 × 0.5 × 12 = 6時間6時間/年
基準ケースの損失6 × 10,000 = 60,00060,000 THB/年
基準ケースの削減額360,000 − 60,000 = 300,000300,000 THB/年
基準ケースの回収期間160,000 ÷ 300,000 ≈ 0.53年約6.4か月
感度ケースの停止時間(月3回までしか減らない)3 × 0.5 × 12 = 18時間18時間/年
感度ケースの損失18 × 10,000 = 180,000180,000 THB/年
感度ケースの削減額360,000 − 180,000 = 180,000180,000 THB/年
感度ケースの回収期間160,000 ÷ 180,000 ≈ 0.89年約10.7か月

初期費用160,000 THB の内訳は、負荷一覧と選定根拠書の作成、協調表の照合が40,000 THB、接触器と過負荷リレー12回路分の部品と交換が72,000 THB、整定とFAT相当の確認運転が48,000 THB です。

電磁接触器 選定|AC-3定格・協調・サーマルリレーとタイ工場のRFP - figure 3

図3:年間の停止損失を、現状(360,000 THB)、基準ケース後(60,000 THB)、感度ケース後(180,000 THB)で比べたものです。削減額は基準ケースで300,000 THB/年(回収約6.4か月)、感度ケースで180,000 THB/年(回収約10.7か月)です。この記事のための仮の数字です。

読み方:回収期間は「停止がどこまで減るか」と「停止1時間あたりの損失」で大きく変わります。停止が月1回まで減れば約6.4か月、月3回までしか減らなければ約10.7か月です。短絡保護機器まで含めた組合せの変更や、盤の冷却の追加が要る場合は、初期費用がこの試算より大きくなります。部品を入れ替えれば停止がなくなるとは限らない点にも注意してください。導入前に、停止の回数と時間、トリップした機器と原因(溶着、過負荷、短絡)を記録し、負荷一覧と照らすことを勧めます。新設時にRFPで選定根拠書と協調の出典を求めておけば、この種の手戻りを減らしやすいと本記事では考えます。

よくある質問

電磁接触器と電磁開閉器の違いは?

三菱電機の用語説明では、電磁接触器(コンタクタ)は主接点を電磁石の力で開閉する接触器で、電磁開閉器(マグネットスイッチ)は電磁接触器とサーマルリレーを組み合わせたものです。発注や見積では、どちらを指すかを型式で書き分けると誤解が減ります。

AC-3定格とAC-1定格はどう違う?

AC-1 は突入電流がほとんどない抵抗負荷などの開閉、AC-3 はモーターの通常の始動と停止の開閉です。同じ型式でも定格使用電流が違い、三菱電機 S-T21 では AC-1級32 A、AC-3級(200〜220 V)18(20) A です(( )内は電磁接触器単体の値)。モーターの直入れでは AC-3 の列を読みます。

サーマルリレーのトリップクラスはどう選ぶ?

トリップクラスは、整定電流の7.2倍の電流で動作するまでの時間の「帯」です。三菱電機と Siemens の資料では、クラス10A は2〜10秒、クラス10は4〜10秒、クラス20は6〜20秒、クラス30は9〜30秒の帯です(熱動式の場合)。負荷の起動時間がその帯の下限より十分に短いかで考え、長い起動にはクラスを上げるか、メーカーが用意する別の特性の製品を検討します。

Type 2協調とは?

短絡を遮断したあと、交換なしに運転を再開できることを求める協調の種類です。ただし Schneider Electric と Siemens の資料によると、容易に分離できる軽い接点溶着は許容され、その場合の保守措置はメーカーが示すことになっています。Type 2 を求めるなら、メーカーが試験した組合せ表の該当行を指定します。

コイル電圧はACとDCのどちらを選ぶ?

一概には決まりません。PLCのトランジスタ出力で直接駆動したいなら、DCコイルの消費電力、突入の有無、サージ対策と出力素子の耐圧を確かめます。AC コイルなら、制御電源の電圧変動と動作電圧範囲(多くの型式で定格の85〜110 パーセントなど。型式と周囲温度で違います)を確かめます。どちらの場合も、型式ごとのメーカー資料で確認してください。

タイの工場で周囲温度はどう考える?

定格の前提となる周囲温度はメーカーで違います。富士電機は−10〜+55 °C で24時間平均35 °C 以下、三菱電機は盤内55 °C、Siemens は60 °C までを標準としています。盤の外の気温ではなく、接触器のすぐ近くの盤内温度を想定し、FATやSATで実測して前提と比べることを勧めます。

電磁接触器の価格は?

資料の種類で意味が違います。三菱電機の MS-T/N カタログ(2023年10月版)では、S-T21 の標準価格(カタログ記載)が13,970円です。モノタロウ(閲覧日2026年10月16日)では、富士電機 SC09XA が販売価格(税別)4,698円でした。接触器単体か電磁開閉器か、コイル電圧、補助接点で価格が変わるため、横並びで比べず、条件をそろえて見積を取ってください。

まとめ

  • 電磁接触器の選定は、A数に合う型式を引くだけでは決まりません。どの列(使用カテゴリ、電圧、周囲温度)を引くかが選定そのものです。
  • モーター回路では AC-3(インチングや逆相制動が多ければ AC-4)の定格使用電流を、実際に納入されるモーターの銘板の全負荷電流で照らします。
  • 開閉頻度(回/時)と電気的耐久性(回)は別の値です。電気的耐久性はメーカーが条件付きで示す目安で、必要な寿命から型式が変わることがあります。
  • 過負荷リレーのトリップクラスは時間の帯です。起動時間と照らし、整定には単体取付や電線サイズの補正があります。
  • 短絡協調は Type 1 と Type 2 で損傷の許容範囲が違います。メーカーが試験した組合せ表の該当行を指定します。
  • コイル(動作電圧範囲、消費電力、サージ)、周囲温度と取付間隔、ミラーコンタクトと機械的インタロックも選定の条件です。
  • これらを RFP に書き、FAT/SAT で組合せ表の該当行、整定値、コイル電圧、盤内温度を確かめることが、手戻りを減らす近道だと本記事では考えます。

モーター起動回路の負荷一覧の整理、盤メーカーから受け取った選定根拠書や協調表の確認、RFPの要件整理といった段階からでも、TOMAS TECH にご相談いただけます。お問い合わせは こちら からどうぞ。

参考情報