自動化設備メーカーを3社に絞りました、あとは価格ですね。この一言が出た時点で、選定はほぼ失敗しています。3社の見積が同じ範囲を指していることは、まずないからです。同じ「自動化設備一式」でも、機械だけの会社、電気とソフトまで持つ会社、据付と立ち上げまで抱える会社が混ざっています。本記事では、自動化設備メーカーを類型に分け、価格を並べる前に決めておくべき7つの判断軸を整理します。
自動化設備メーカーの比較が価格に落ちてしまう理由
まず、なぜ最後に価格勝負になるのかを押さえます。ここを飛ばすと、以降の判断軸が単なるチェック項目に見えてしまいます。
「メーカー」という言葉が3種類の会社を指している
自動化設備メーカーを探すとき、実際に候補に挙がるのは性質の違う会社です。自社ブランドの装置を製品として持っている会社、他社製のロボットやコントローラを組み合わせて仕組みを作る会社、そして機器を仕入れて売る会社。この3つが同じ「メーカー」という言葉で呼ばれています。
問題は、この3種類が同じ引き合いに対して、それぞれ自社の得意な範囲で見積を作ることです。装置を持つ会社は自社の標準機を前提に、組み合わせる会社は現場に合わせた特注を前提に、仕入れて売る会社は機器の定価を前提に金額を作ります。並べれば数字は比較できたように見えますが、比較しているのは範囲の違いであって、実力の違いではありません。
この構造は自動化投資の見積全般に共通するもので、範囲を揃えてから金額を並べる考え方は自動化見積もり比較で扱っています。本記事はその手前、そもそもどういう会社を候補に並べるべきかという段階に絞ります。
自動化投資は増えているが、選ぶ側の難易度も上がった
国際ロボット連盟が2025年9月に公表したWorld Robotics 2025によると、2024年の産業用ロボットの世界設置台数は542,000台で、10年前の約2倍になりました。稼働台数は4,664,000台で前年比9%増です。地域別の内訳では、2024年の新規設置のうちアジアが74%、欧州が16%、南北アメリカが9%を占めています。2025年は6%増の575,000台が見込まれ、2028年には700,000台を超えると予測されています。設置額ベースの市場規模は過去最高のUS$16.7 billionに達しました。
北米の数字も同じ方向を示しています。全米自動化推進協会が2026年2月に公表した2025年通年の集計では、北米企業が発注した産業用ロボットは36,766台、金額はUS$2.25 billionで、台数は6.6%増、金額は10.1%増でした。このうち協働ロボットは7,212台、US$241 millionで、台数の19.6%、金額の10.7%を占めています。発注の伸びを牽引したのは自動車以外の一般産業でした。
数字が増えているということは、候補となる会社も増えているということです。同時に、自動車以外の業種へ自動化が広がるということは、その工程を作った経験のない会社が引き合いに応じてくるということでもあります。選定の難易度が上がっているのは、市場が縮んでいるからではなく、広がっているからです。
密度の統計が示す「相談相手の層の厚さ」
国際ロボット連盟が2026年4月に公表したロボット密度の統計では、2024年の世界平均は従業員1万人あたり132台でした。韓国が1,220台で首位、次いでシンガポールが818台、ドイツが449台、日本が446台、米国が307台と続きます。地域では西欧が267台、北米が204台、アジアが131台です。
この統計は導入率の指標として読まれることが多いのですが、設備メーカーを選ぶ側にとってはもう1つの意味があります。密度が高い国では、装置を作る会社だけでなく、それを保守する会社、部品を持つ会社、技術者を育てる仕組みが同時に厚くなっているということです。逆に密度が低い環境では、装置は買えても、その後の面倒を見る相手が近くにいないという状況が起こりえます。自動化設備メーカーの選定は、装置を選ぶ作業ではなく、10年付き合う相手を選ぶ作業です。
自動化設備メーカーは4つの類型に分かれる
候補を並べる前に、その会社がどの類型に属するのかを分けます。分ける目的は優劣をつけることではなく、同じ類型どうしで比較できるようにするためです。
類型1 装置メーカー|自社製品として装置を持っている
充填機、包装機、圧入機、洗浄機のように、特定の工程向けの装置を製品として持っている会社です。カタログがあり、標準仕様があり、同じ機種が複数の工場で動いています。
この類型の強みは、同じ機種が世に出ている数だけ不具合が潰されていることです。立ち上げの再現性が高く、部品も型番で手配できます。弱みは、自社の標準から外れる要求に弱いことです。ワークの形状が特殊だったり、前後工程との受け渡しに癖があったりすると、標準機に無理やり合わせる方向の提案が出てきます。
類型2 SIer・エンジニアリング会社|他社製品を組んで仕組みにする
ロボット、コントローラ、カメラ、搬送機器を他社から調達し、その工場の工程に合わせて組み上げる会社です。日本語では「システムインテグレーター」「自動化装置設計製作」といった呼ばれ方をします。
強みは、工程に合わせて設計できることと、機器のメーカーを選べることです。弱みは、出来上がりが担当技術者の力量に強く依存することと、機器の組み合わせ由来の不具合が誰の責任か曖昧になりやすいことです。この類型に発注するときの範囲の切り方はFAシステム構築の発注ガイドにまとめています。
類型3 商社・ディーラー|機器を仕入れて供給する
ロボットや制御機器のメーカー代理店です。機器の価格と納期には強く、複数メーカーの横比較もできます。一方で、工程設計や据付後の作り込みは自社で持たず、協力会社に流すことが一般的です。
この類型を候補から外す必要はありません。機器選定の相談相手としては有効です。ただし、装置として動くところまでの責任を誰が持つのかは、契約書の上で明確にしておく必要があります。
類型4 現地の製作会社|タイのローカルファブ
タイの工業団地周辺には、機械加工と溶接、板金、簡単な制御まで手掛ける中小の製作会社が多数あります。コンベアの延長、治具、簡易な自動機であれば、価格と対応速度の両面で選択肢になります。
弱みは、ドキュメントと再現性です。図面が残らない、プログラムのバックアップが無い、担当者が辞めると誰も分からないという事態が起こりえます。バンコク近郊での会社選びの実務はバンコクの自動化会社の選び方で扱っています。
4類型の性質を並べて見る
| 類型 | 得意な案件 | 弱くなりやすい点 | 価格の性格 | 契約で先に決めること |
|---|---|---|---|---|
| 装置メーカー | 標準工程、量産の横展開 | 特注要求への追随 | 標準機ベースで読みやすい | 標準からの変更点と追加費用の単価 |
| SIer・エンジニアリング | 工程固有の自動化、既存設備との接続 | 担当者依存、機器間の責任分界 | 工数積み上げで幅が出る | 責任分界点と立ち上げ工数の上限 |
| 商社・ディーラー | 機器選定、複数メーカーの横比較 | 装置としての作り込み | 機器定価から値引き | 装置として動くまでの責任者 |
| 現地製作会社 | 治具、搬送延長、簡易自動機 | 図面とプログラムの残存性 | 安いが変動しやすい | 成果物の引き渡し物リスト |
この表で言いたいのは、同じ引き合いに4類型を混ぜて相見積もりを取ってはいけないということです。混ぜた瞬間、最も範囲の狭い見積が最も安く見えます。まず類型を決め、同じ類型の中で3社を並べる。これが相見積もりの前提条件です。

自動化設備メーカーを評価する7つの判断軸
類型を決めたら、次は個社の評価です。ここで使う軸を7つに絞りました。すべてを満点にする必要はありません。自社の案件でどの軸が効くのかを先に決めることが目的です。
軸1 対象工程の実績|同じ工程か、同じ業種か
「自動化の実績500件」という表現は、選定の材料になりません。見るべきは件数ではなく、自社と同じ工程の実績があるかどうかです。
具体的に聞くべきは3つです。同じ工程を自動化した案件があるか。そのときのワークの材質と重量はどの範囲だったか。稼働後に何年経っているか。3つ目が重要で、納入実績はあっても稼働が続いていない案件は、実績として数えるべきではありません。
軸2 引き受ける範囲|機械・電気・ソフト・据付・立ち上げ
自動化設備は、機械設計、電気設計、制御ソフト、据付工事、立ち上げ調整という5つの仕事の集合です。この5つのうち、どこを自社で持ち、どこを外注するのかは会社ごとに違います。
外注が悪いわけではありません。問題は、外注していることが見積書から読み取れないことです。とくに制御ソフトと電気設計は外に出されやすく、そこが外注だと、稼働後の小さな改造でも二段階の手配になります。制御ソフトの範囲の分け方は装置ソフト開発で5階層に分けて整理しました。電気設計を外に出す場合の実務は電気設計の外注にあります。
軸3 安全と規格への対応|2025年に改訂された枠組みを知っているか
産業用ロボットの安全規格であるISO 10218が2025年に改訂され、2011年版のパート1とパート2が置き換わりました。約8年をかけた大幅な改訂です。
構成として押さえるべきは、パート1がロボットそのものを設計・製造する側に適用され、パート2がロボット応用とロボットセルを設計・統合する側、つまりシステムインテグレーターに適用されるという点です。改訂ではロボットの新しい分類とそれに対応する機能安全要求が導入され、これまで別文書だった協働ロボットのISO/TS 15066が本体に統合されました。あわせて、ロボット安全に関わるサイバーセキュリティの要求も加わっています。
自動化設備メーカーへの質問としては、「ISO 10218に対応していますか」ではなく、「今回の案件でリスクアセスメントを誰が実施し、その記録をどの形式で残しますか」と聞くのが実務的です。パート2が適用されるのは装置を組む側なので、この質問に具体的な手順で答えられるかどうかが、安全を製品機能としてではなく工程として持っているかの判断材料になります。
軸4 保守と部品供給の体制|止まったときに何時間で来るか
装置は必ず止まります。問題は、止まっている時間の費用が装置の価格より大きくなりうることです。
2024年に公表された停止コストの調査では、世界の大手500社が計画外停止によって失う金額は年間で約1.4兆ドル、売上高の11%に相当すると報告されています。同じ調査で、主要な製造業の月あたり停止件数は2019年の42件から25件へ、月あたりの損失時間は39時間から27時間へ減少しました。件数と時間が減っているのに金額が大きいということは、1件あたりの重みが増しているということです。
したがって、保守について確認すべきは体制の有無ではなく、数字です。緊急時の一次回答は何時間以内か。エンジニアが現地に来るまでの標準的な時間は。消耗品と主要部品の在庫はタイ国内にあるか。それらの供給を何年間保証するか。この4つを見積の付帯条件として書かせておくと、稼働後の会話が変わります。
軸5 ドキュメントと知財|装置が自社の資産として残るか
装置は動いているのに、自社では何も触れないという状態が起こりえます。原因はほぼ、発注時に成果物を名前で書かなかったことです。
受け取るものとして明示すべきは、機械図面、電気回路図、部品表、制御プログラムのソース、パラメータとレシピ、テスト仕様書、操作説明書、保全説明書です。加えて、プログラムのコメントを何語で書くか、開発環境のライセンスを自社が持てるかを条件に入れます。ソースを受け取っても、開発ソフトが装置メーカー側にしかなければ実質的に何も変更できません。
軸6 人|担当者が3年後もいるか
自動化設備の品質は、会社の看板ではなく、担当した技術者の力量に強く依存します。そして、その技術者は不足しています。
聞くべきは、今回の案件の主担当が誰で、その人が同種の案件を何件担当したかです。そして、その人が離職した場合に誰が引き継ぐのか。属人性を完全に消すことはできませんが、引き継ぎの仕組みがあるかどうかは会社によってはっきり差が出ます。自動化を支える技術者の需給については自動化の技術者不足で整理しています。
軸7 経営の安定性と第三者評価|第三者が見ているか
装置の寿命は10年を超えます。その間に発注先が無くなれば、部品も図面も追えなくなります。財務の健全性を直接評価するのは難しいので、代わりに第三者の評価があるかを見ます。
制御システムインテグレーター協会の認証は、その一例です。この認証は、一般管理、人事管理、営業・マーケティング、財務管理、プロジェクト管理、システム開発ライフサイクル、支援活動、品質管理、サービスとサポート、情報システム管理とサイバーセキュリティという10の領域のベストプラクティスに対する独立監査に基づいています。技術力の証明ではなく、会社としての運営が仕組み化されているかの証明である点が重要です。
制御機器やソフトを供給する側の開発プロセスを評価する枠組みとしては、産業用オートメーション制御システムのセキュリティ規格であるIEC 62443-4-1もあります。「セキュリティは大丈夫ですか」と聞いて製品の機能で答える会社と、開発プロセスで答える会社では、10年後の対応力が違います。
7軸を質問文に変換する
| 軸 | 相手に投げる質問 | 空欄のまま発注すると起きること |
|---|---|---|
| 対象工程の実績 | 同じ工程の案件は何件で、最も古い稼働は何年目ですか | 初号機の実験台になる |
| 引き受ける範囲 | 機械・電気・ソフト・据付・立ち上げのどこが自社ですか | 改造のたびに二段階の手配になる |
| 安全と規格 | リスクアセスメントは誰が実施し、記録はどう残しますか | 安全対策が現場合わせになる |
| 保守と部品 | 一次回答は何時間以内で、部品在庫はタイにありますか | 停止時間が読めない |
| ドキュメントと知財 | 引き渡す成果物とライセンスの一覧をください | ソースはあるが開けない |
| 人 | 主担当は誰で、離職時は誰が引き継ぎますか | 担当者と一緒にノウハウが消える |
| 経営と第三者評価 | 第三者の監査や認証を受けていますか | 10年後に相手がいない |
見積書から自動化設備メーカーの実力を読む
7軸で絞ったあと、最後に見積書を読みます。ここで見るのは金額ではなく、前提条件の書き方です。
前提条件が書かれていない見積は安く見える
自動化設備の見積書には、必ず前提条件が付きます。ワークの寸法公差、供給方法、電源とエア、設置スペース、稼働時間、切替品種の数。これらが本文に書かれているかどうかが、その会社が工程を理解しているかの最も分かりやすい指標です。
前提条件が薄い見積は、多くの場合、安くなります。書いていないことは含まれていないからです。前提条件の行数は、その会社が現場を見た時間に比例します。
追加費用が出る定番の4か所
立ち上げの終盤で追加見積になりやすい箇所は、案件をまたいでほぼ同じです。
1つ目は、ワークのばらつきへの対応です。図面公差では入るが実物ではばらつくという状況で、供給機構やハンドの作り直しが発生します。2つ目は、前後工程との受け渡しです。自動化した工程の前後が手作業のままだと、そこの整合に工数がかかります。3つ目は、品種切替です。切替時間が見積の前提より長いと、稼働率の計算が崩れます。4つ目は、上位システムへのデータ送信です。「今回は不要」で削られ、後から必要になります。
この4つを見積依頼の段階で条件として書き込んでおくと、各社の金額差が範囲の差ではなく実力の差として読めるようになります。自動化投資が想定どおりにならない原因の整理は自動化のリスクと失敗にまとめています。
3社の金額が揃わないときに見るもの
相見積もりで金額が大きく割れたとき、まず疑うべきは自社の仕様書です。3社が同じ文章を読んで違う金額を出したなら、その文章に解釈の余地があります。
割れ方には読み方があります。1社だけ高い場合は、その会社が他社の見落としている工程を見つけている可能性があります。1社だけ安い場合は、範囲が抜けているか、初号機として実績を作りに来ています。どちらも悪い話ではありませんが、理由を聞かずに数字だけで落とすと、後で同じ金額差が追加見積として戻ってきます。

設備の種類ごとに選定の重心が変わる
7軸は共通ですが、設備の種類によってどの軸が効くかは変わります。ここは既存の記事に踏み込んだ内容があるので、案件の種類ごとに参照先を挙げます。
搬送を自動化する場合
無人搬送車や自律移動ロボットを入れる場合、重心は軸4の保守と軸2の範囲に寄ります。車体そのものより、充電設備、通信、上位の配車制御、床と経路の整備までを誰が持つかで金額が変わるためです。機種と各社の性格の違いはAGVメーカー比較で扱っています。
ロボットで組立・ハンドリングを自動化する場合
重心は軸1の実績と軸3の安全です。とくに人と同じ空間で動かす場合、ISO 10218のパート2が適用される設計・統合側の力量が結果を決めます。中小規模の工場での進め方はロボット導入 中小企業にまとめました。
検査を自動化する場合
重心は軸1の実績と、判定基準を誰が持つかという論点に寄ります。検査の自動化は、装置が指示どおり動いたかではなく、判定が正しいかで検収されるため、他の設備と検収の物差しが違います。寸法測定を自動化する場合の考え方は寸法検査の自動化にあります。
制御盤と電気設計が主役の場合
既存設備の改造や、装置間の連携が主眼になる案件では、重心は軸5のドキュメントに寄ります。制御機器のブランドを揃えるかどうかは、保全部品と技術者の育成に長期的に効きます。ブランド選定の判断材料はPLC選定で整理しています。
設備種別と重視する軸の対応
| 設備の種類 | 最も効く軸 | 次に効く軸 | 見積で抜けやすい範囲 |
|---|---|---|---|
| 搬送(AGV・AMR) | 保守と部品 | 引き受ける範囲 | 充電設備、通信、床と経路の整備 |
| ロボット組立・ハンドリング | 対象工程の実績 | 安全と規格 | 安全柵とリスクアセスメント |
| 検査・測定 | 対象工程の実績 | ドキュメントと知財 | 限度見本の作成と再学習 |
| 制御盤・既存改造 | ドキュメントと知財 | 人 | 既存図面の現況調査 |
| 省人化装置(単機能) | 引き受ける範囲 | 保守と部品 | 前後工程との受け渡し |

タイで自動化設備メーカーを選ぶときの固有条件
ここまでは一般論です。タイ拠点を前提にすると、いくつか別の条件が加わります。
日本の装置メーカーか、タイのSIerか
日本で設計製作した装置をタイに持ち込む選択は、品質の再現性という点では有利です。一方で、稼働後の改造と不具合対応は距離と時差の影響を受けます。逆にタイのSIerに任せると、対応は速くなりますが、ドキュメントと再現性の確保を発注側が主導する必要が出てきます。
現実的な落としどころは、装置の種類で分けることです。品質に直結する主要工程は実績のある装置メーカーに、搬送や治具、周辺の省人化装置は現地のSIerに、という分け方が多く見られます。分けるときの基準は価格ではなく、止まったときに何時間で人が来るかです。
BOIの2026年措置を投資計画に織り込む
タイ投資委員会は、既存事業者の生産性向上を対象とする措置を用意しています。自動化やロボットの導入を含む機械設備のアップグレードに対して、機械の輸入関税の減免と3年間の法人所得税免除が与えられるものです。
免除額の上限は原則として対象投資額の50%です。対象となる自動化・ロボット機械の価値のうち30%以上がタイ国内で製造された機械に紐づく場合には、上限が100%まで引き上げられます。対象投資額は土地と運転資金を除いて最低100万バーツで、奨励証書の発行から3年以内に実施を完了することが条件です。
ここで効いてくるのが、メーカー選定との連動です。国内製造の比率が上限を左右するため、どのメーカーを選ぶかがそのまま税制上の条件に影響します。申請時には、対象設備の内訳、調達の証跡、稼働開始の時期を示す必要があるため、見積依頼の段階で製造国の内訳を出してもらうよう条件に入れておくと、後の作業が軽くなります。設備投資の全体計画の立て方は設備投資計画にまとめています。
タイ国内の部品サプライチェーンが動きはじめている
タイ投資委員会は2026年2月、ヒューマノイドロボット向け部品の生産拠点をタイに作る5社の投資を承認しました。合計の初期投資額は100億バーツを超え、対象はボールねじ、遊星ローラねじ、アクチュエータ、ロボットのフレームや関節部品です。立地はチョンブリ、チャチュンサオ、ラヨーンで、1,000人を超える高度人材の雇用と、年間およそ450億バーツの国内材料・部品調達が見込まれています。
この動きが工場の調達に直接効くのは、まだ先です。ただし方向としては、これまで輸入していた駆動系の部品がタイ国内で手に入る可能性が出てきたということであり、保守部品の供給と納期という軸4の評価が、数年のうちに変わりうることを示しています。メーカーとの契約で部品供給の年数を決めるとき、この変化を織り込んでおく価値があります。
現地の運用言語を発注条件に書く
装置の話は最終的に人の話に戻ります。操作画面をタイ語にしても、アラームが出たときに何をすべきかが伝わっていなければ意味がありません。
発注仕様書に入れておきたいのは、操作教育と保全教育を分けること、実施言語を明記すること、そして説明書とプログラムのコメントを何語で書くかを決めることです。装置メーカーの標準的な引き渡しでは、日本語または英語の説明書と数時間の操作説明で終わることがあります。それが十分かどうかは、現地の保全体制によります。
2026年の投資環境をどう読むか
最後に、選定のタイミングに関わる材料を挙げます。
大手会計事務所が2025年11月に公表した2026年の製造業見通しでは、経営層600人を対象とした調査の結果として、80%が改善予算の20%以上をスマートマニュファクチャリングに投じる計画だと回答しています。物理世界で動くAIを2年以内に使う計画だとした回答は22%で、現時点の9%から上がる見込みです。一方、78%が通商環境の不確実性を最大の懸念として挙げ、今後1年の投入コストは平均で5.4%上昇すると見込まれています。
国際ロボット連盟が2026年1月に公表した2026年の技術トレンドでも、AIによるロボットの自律性向上、ITとOTの融合、ヒューマノイドの拡大、エージェント型AI、労働力不足への対応という5つが挙げられています。共通しているのは、装置が単体で完結せず、データとネットワークにつながる前提になっているという点です。
自動化設備メーカーを選ぶ側にとっての実務的な意味は2つです。1つは、コストが上がる方向にあるため、決定を先送りしても安くならない可能性が高いこと。もう1つは、いま導入する装置が数年後にデータ連携を求められる確率が高いため、送信機能を今作らないとしても、データを取り出せる状態にはしておくという条件を仕様に入れておく価値があるということです。
発注前チェックリスト
自動化設備メーカーに声をかける前に、社内で埋められる項目を挙げます。
- 自動化したい工程を、前後の工程を含めて1枚の図に書き出したか
- ワークの寸法、重量、材質、公差、ばらつきの実測値を用意したか
- 目標のタクトタイムを、どの条件で測るかまで決めたか
- 品種の数と切替の頻度を書き出したか
- 4類型のうち、どの類型に声をかけるかを決めたか
- 7軸のうち、今回の案件で最も効く軸を2つに絞ったか
- 引き渡してもらう成果物を名前で列挙したか
- 保守の一次回答時間と部品供給年数を条件に書いたか
- BOIの措置を使う場合、製造国の内訳を見積依頼に含めたか
- 教育の対象者と実施言語を決めたか
このうち上から4つが埋まっていれば、メーカーとの会話は具体的な工数の議論まで進みます。逆に、ここが空欄のまま相見積もりを取ると、範囲の違う見積が並ぶだけになります。
よくある質問
自動化設備メーカーは何社に声をかけるべきですか?
同じ類型の中から3社が現実的です。4類型を混ぜて5社以上に声をかけると、範囲の違う見積が並び、比較作業そのものが破綻します。まず類型を決め、その類型の中で3社。類型をまたいで比較したい場合は、たとえば装置メーカー3社とSIer3社というように、類型ごとに別の相見積もりとして扱うほうが判断しやすくなります。
自動化設備の実績件数は選定の基準になりますか?
件数そのものは基準になりません。見るべきは、自社と同じ工程の案件があるか、そのときのワークの材質と重量が近いか、そして最も古い納入案件が今も稼働しているかの3点です。とくに3つ目が重要で、納入実績はあっても数年で使われなくなった案件は、実績として数えるべきではありません。
省人化装置は自動化設備メーカーに頼むべきですか、現地の製作会社でよいですか?
装置の性格によります。単機能で、品質に直結せず、止まっても代替手段がある装置であれば、現地の製作会社は価格と対応速度の両面で有効な選択肢です。一方、品質に直結する工程や、止まるとライン全体が止まる位置にある装置は、実績とドキュメントの残存性を優先すべきです。判断の分かれ目は装置の複雑さではなく、止まったときの影響範囲です。
タイの自動化設備メーカーと日本の装置メーカーは何が違いますか?
再現性と対応速度のどちらを取るかという違いです。日本の装置メーカーは同じ機種の稼働実績が多く、立ち上げの再現性が高い一方、稼働後の改造や不具合対応は距離と時差の影響を受けます。タイのSIerは対応が速く現地語で話せる一方、図面とプログラムを確実に残す作業を発注側が主導する必要があります。工場全体で1社に統一する必要はなく、工程ごとに分ける前提で考えるのが実務的です。
ISO 10218の改訂は工場側にも関係しますか?
関係します。2025年の改訂でパート1とパート2の2011年版が置き換わり、パート2はロボット応用とロボットセルを設計・統合する側、つまり装置を組むメーカーに適用されます。協働ロボットのISO/TS 15066が本体に統合され、サイバーセキュリティの要求も加わりました。工場側が規格の条文を読み込む必要はありませんが、リスクアセスメントを誰が実施し、その記録をどの形式で受け取るのかを発注条件として決めておくことは、装置を使う側の責任範囲に直結します。
BOIの措置を使う場合、メーカー選定に制約は出ますか?
制約というより、条件が1つ増えます。自動化・ロボット機械の価値のうち30%以上がタイ国内製造の機械に紐づく場合、法人所得税の免除上限が対象投資額の50%から100%へ引き上げられます。したがって、同程度の技術力の候補が並んだ場合、国内製造の比率が判断材料の1つになります。見積依頼の段階で、主要構成品の製造国の内訳を提出してもらう条件を入れておくと、申請時の作業が軽くなります。
まとめ
本記事の要点を整理します。
自動化設備メーカーの比較が最後に価格勝負になるのは、金額の問題ではなく類型の問題です。装置メーカー、SIer・エンジニアリング会社、商社・ディーラー、現地製作会社という4類型は、同じ引き合いに対してそれぞれ得意な範囲で見積を作ります。混ぜて相見積もりを取れば、最も範囲の狭い見積が最も安く見えます。まず類型を決め、同じ類型の中で3社を並べることが前提条件です。
個社の評価には7つの軸を使います。対象工程の実績、引き受ける範囲、安全と規格への対応、保守と部品供給、ドキュメントと知財、人、経営の安定性と第三者評価。すべてを満点にする必要はなく、案件ごとに効く軸を2つに絞れば判断は進みます。実績は件数ではなく同じ工程かどうかで、保守は体制の有無ではなく一次回答の時間で評価します。
見積書で読むべきは金額ではなく前提条件の書き方です。前提条件の薄い見積は安く見えますが、書いていないことは含まれていません。追加費用が出る定番はワークのばらつき、前後工程との受け渡し、品種切替、上位へのデータ送信の4か所で、これらを見積依頼の条件に書き込むと、金額差が範囲の差ではなく実力の差として読めるようになります。
数字の面では、2024年の産業用ロボット設置台数は542,000台、稼働台数は4,664,000台で前年比9%増、アジアが新規設置の74%を占めました。世界平均のロボット密度は従業員1万人あたり132台で、シンガポールは818台です。停止コストの調査では、大手500社の計画外停止による損失は年間約1.4兆ドル、売上高の11%と報告されています。装置の価格より停止時間の費用が大きくなりうるという事実が、保守を軸の1つに置く理由です。
タイでは、BOIの措置が機械設備のアップグレードに対して3年間の法人所得税免除を用意しており、上限は原則50%、自動化・ロボット機械の30%以上が国内製造に紐づく場合は100%になります。メーカー選定が税制上の条件に直結するため、見積依頼の段階で製造国の内訳を求めておく価値があります。
自動化設備メーカーの選定は、装置を買う作業ではなく、10年付き合う相手を決める作業です。価格を並べるのは、範囲を揃えたあとで構いません。
自動化の検討は、工程の切り出しが固まりきる前から始まることがほとんどだと思います。TOMAS TECHでは、タイの日系製造業の現場を前提に、どの類型に声をかけ、どの軸で評価するのが現実的かという整理の段階からご相談を承っています。発注先を決める前の検討段階でも構いませんので、お問い合わせページからお気軽にご連絡ください。
参考情報
- International Federation of Robotics|World Robotics 2025 Report
- International Federation of Robotics|Robot Density Surges in Europe, Asia, and Americas
- International Federation of Robotics|Top 5 Global Robotics Trends 2026
- The Robot Report|North American robot orders rise by 6.6% in 2025
- The Robot Report|ISO 10218 industrial robot safety standard receives major overhaul
- Control System Integrators Association|Certification
- AEMT|The True Cost of Downtime 2024
- Deloitte|2026 Manufacturing Industry Outlook
- Mahanakorn Partners|Thailand’s BOI in 2026
- The Nation Thailand|BOI approves 10bn-baht push to build humanoid robot parts base in Thailand