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2026.08.14

PLC選定2026|あと何年直せるかで決まる主要4社の使い分け

PLC選定2026|あと何年直せるかで決まる主要4社の使い分け

見積書に2機種が並んでいます。片方は処理速度が速く、片方は社内に書ける人が多い。どちらを選んでも来年のラインは動きます。PLC選定で判断が本当に割れるのはこの比較表の上ではなく、その盤を8年後に直せるかどうかという一点です。そして2026年は、主要4社のうち3社で「終端日」が同時に動いている年です。生産終了、受注生産への移行、最終受注、修理対応の終了。この4つは別々の日付で、どれを見ているかによって残り年数の見積もりが数年単位でずれます。

PLC選定で本当に決まるのは「あと何年直せるか」

新規ラインでも更新でも、機種選定の議論はたいてい同じ順序で進みます。処理速度、点数、価格、ラダーの書きやすさ、社内実績。この順で並べた比較表を作ると、だいたい2機種まで絞れます。ここまでは30分で終わります。

問題はその先です。絞った2機種のどちらを選んでも、来年の量産は立ち上がります。差が出るのは5年後から10年後、つまり稟議を通した人がもうその工場にいないかもしれない時期です。そこで効いてくるのは、比較表の一番上に書いた処理速度ではありません。

効いてくるのは「その盤を、その時点で直せるか」です。もっと言えば、直すために必要な3つの資源が、そのときまだ手に入るかどうかです。

  1. 部品。壊れたCPUやユニットの代わりが、正規ルートで手に入るか。
  2. 。タイ国内で、その機種を触れる技術者を、必要な時間内に呼べるか。
  3. 中身。プログラムと画面と通信設定が、次の世代に持ち越せる形で残っているか。

この3つには、それぞれ別の「終端日」があります。この記事ではそれを部品供給の終端日、直せる人の終端日、持ち越せる資産の終端日と呼びます。PLC選定とは、突き詰めればこの3つの日付を見比べて、自社の設備計画とどう噛み合うかを判断する作業です。

スペック比較表が答えを出せない理由

スペック比較表には、時間軸がありません。処理速度も点数も価格も、すべて「今」の値です。一方でPLCが載った制御盤は、10年から15年、場合によってはそれ以上使われます。時間軸のない表で、時間軸のある資産を選んでいる。これがずれの正体です。

しかも、スペックの差が実務に効く場面は限られます。スキャンタイムが半分になっても、それが装置のタクトに直結するのは、高速な位置決めや画像処理と同期を取る一部の工程だけです。多くの搬送・組立・検査ラインでは、スキャンタイムよりも段取り替えの手数や、異常時の切り分けやすさのほうが、年間の生産量に効きます。

だからといってスペックを見るなという話ではありません。スペックは足切りに使い、最終判断には使わない。これが実務的な使い分けです。必要な性能を満たす機種を2つか3つに絞るところまではスペック表でやり、そこから先は終端日で決める。順序を逆にすると、5年後に取り替えられない盤が残ります。

「壊れたら考える」が成立しなくなってきた

10年前であれば、供給が終わった機種でも中古市場や修理業者を頼れば、それなりに延命できました。今もその手は残っていますが、条件が悪くなっています。理由は単純で、同じ型式を探している工場が世界中に同時に増えたためです。ある機種の生産終了が公表されると、その型式の中古相場と入手難度は、公表を境に動き始めるのが通例です。

つまり「壊れたら考える」という運用は、実質的に「壊れたときに、他社より高く早く買えるか競争する」という運用に変わりました。競争に勝てる工場は、社内に在庫を持っているか、供給元と直接つながっている工場です。どちらでもないなら、壊れる前に日付を見ておくしかありません。

2026年、主要4社のうち3社で終端日が動いている(PLCメーカー比較の前提)

まず事実を並べます。以下は2026年8月時点で各社および流通各社が公表している情報です。日付は改定されることがあるため、実際の判断では必ず各社の公式案内で最新の状態を確認してください。また、ここで挙げる型式・製品名はいずれも各社の製品であり、当社の製品ではありません。

対象公表されている日付・内容4段階のどれか出典
三菱電機 MELSEC-Q UD形CPU(Q03UD/Q04UDH/Q06UDH/Q13UDEH/Q26UDEH 等)生産終了予定 2026年10月30日。三菱電機の一般方針として修理対応は生産中止後7年のため、2033年前後が目安生産中止(+修理対応終了の目安)artitech FA機器生産終了早見表/三菱電機FA 生産終了品ページ
三菱電機 MELSECNET/Hユニット(QJ71LP21G/QJ71BR11 等)2026年3月31日に受注生産へ移行、2029年2月28日 受注締切。理由は使用部品の一部が入手困難受注生産移行 → 最終受注奈良崎電機 生産中止情報
オムロン CS系2024年3月に生産終了案内、一部は2025年3月に最終受注生産中止 → 最終受注高島電機 メーカー案内/オムロン制御機器 生産終了品ページ
オムロン CJ2H-CPU6*-EIP2025年3月末 → 2027年3月末に延長期限の延長同上
オムロン CJ2M-CPU3*2026年3月末 → 2028年3月末に延長期限の延長同上
オムロン CS1D-CPU6*H/P生産終了を撤回撤回同上
シーメンス SIMATIC S7-300/ET 200MProduct Phase-Out は2023年10月1日発効、標準納入終了は2025年10月1日。以降は保守部品のみで概ね10年(2033年前後)。ファームウェア更新は提供されない生産中止 → 保守部品のみClassic Automation/Automation Trader
キーエンス KV-8000現行機。高速エンジン搭載で従来比10倍をうたう。他社PLCからの置換時にメーカー側でプログラム変換を行う支援あり。販売は直販(代理店を介さない)現行キーエンス公式製品ページ/導入事例
PLC選定2026|あと何年直せるかで決まる主要4社の使い分け - figure 1

この表を1枚のカレンダーに落とすと、2025年から2029年にかけて日付が密集していることが分かります。そして三菱電機のUD形CPUとシーメンスのS7-300は、修理対応の目安が2033年前後という点でほぼ揃っています。今2026年に「まだ動いているから大丈夫」と判断した盤は、7年後に同じ問題に一斉に直面する可能性があるということです。

「生産中止」「受注生産移行」「最終受注」「修理対応終了」は別の日付である

現場で最も多い誤解が、この4つを1つの日付として扱ってしまうことです。順に見ます。

生産中止(生産終了)。量産ラインを止める日です。ここで在庫がゼロになるわけではありません。流通在庫やメーカー在庫が残っていれば、その後もしばらくは買えます。逆に人気型式は公表直後に在庫が消えることもあり、実際の入手可能期間は型式ごとにばらつきます。

受注生産への移行。量産は止めるが、注文があればまとめて作る、という段階です。三菱電機のMELSECNET/Hユニットがこれにあたり、2026年3月31日に受注生産へ移行し、2029年2月28日が受注締切と公表されています。この段階では、価格と納期が量産時と同じとは限りません。理由も明示されていて、使用部品の一部が入手困難であるためとされています。つまり終端日を決めているのはメーカーの都合だけではなく、その先の半導体・電子部品のサプライチェーンです。

最終受注。注文を受け付ける最後の日です。ここを過ぎると、正規ルートでの新品調達は終わります。予備品を積むかどうかの判断は、この日付から逆算します。

修理対応終了。故障品を送っても直してもらえなくなる日です。三菱電機は一般方針として生産中止後7年としており、UD形CPUの場合は2033年前後が目安になります。シーメンスのS7-300も、標準納入終了後は保守部品のみで概ね10年という整理が示されています。

この4つが別の日付だという前提に立つと、同じ機種でも「あと何年使えるか」の答えが変わります。最終受注日を見れば残り3年、修理対応終了日を見れば残り7年。同じ盤について、社内で数年ずれた見積もりが同時に存在することが起きます。稟議書で「あと何年使えるのか」という質問が出たときは、どの日付を指しているのかを先に揃えてください。ここを揃えないまま議論すると、金額の話に進む前に空転します。

延長と撤回をどう読むか

オムロンのCJ2H-CPU6*-EIPは2025年3月末から2027年3月末へ、CJ2M-CPU3*は2026年3月末から2028年3月末へと、それぞれ生産終了時期が延長されています。CS1D-CPU6*H/Pにいたっては生産終了そのものが撤回されました。CJ2系は継続生産が示されています。

これは既存ユーザーにとって明確な朗報です。同時に、選定の実務としては別の意味も持ちます。終端日は動く、という事実の証拠だからです。前倒しになることもあれば、後ろ倒しになることも、撤回されることもあります。

したがって選定時の扱いは次のようになります。公表された日付は、その時点でのメーカーの計画であって、契約された保証ではありません。日付を根拠に10年計画を組むなら、その日付が1年前後に動いても計画が壊れないかを確認しておく。逆に言えば、日付が半年動いただけで破綻するような計画は、そもそもマージンが不足しています。

もう一つ、延長の報せを受け取ったときにやりがちな失敗があります。「延びたから今回は見送り」と判断して、次の年度に何もしないことです。延長された2年は、更新の準備をするための2年であって、何もしないための2年ではありません。この2年で図面とプログラムの現状を確定させておけば、次の更新のコストは確実に下がります。

選定軸① 部品供給:PLC更新・リプレースの起点になる日付の読み方

PLC選定2026|あと何年直せるかで決まる主要4社の使い分け - figure 2

3つの終端日のうち、最も調べやすいのが部品供給の終端日です。公表情報として存在するからです。にもかかわらず、多くの工場でこれが把握されていません。理由は、調べる単位が間違っているからです。

調べる単位は「メーカー」でも「シリーズ」でもなく「型式」

「うちは三菱だから大丈夫」「オムロンだから安心」という会話が、選定会議でよく出ます。この粒度では判断できません。同じメーカーの同じシリーズの中でも、CPUとネットワークユニットで供給の段階が別々に進む、という状態が実際に起きているためです。前掲の三菱電機の例では、UD形CPUの生産終了予定とMELSECNET/Hユニットの受注生産移行が、それぞれ別の日付で動いています。

やるべきことは単純で、盤の中に入っているすべてのユニットの型式を書き出し、1つずつ現況を確認することです。8面の盤なら、CPU、電源、入出力、アナログ、位置決め、通信、そしてHMI。数えると1面あたり5〜10点、8面で40点から80点になります。1点あたり数分なので、半日から1日の作業です。この半日を、5年に一度もやっていない工場が多いのが実情です。

型式棚卸しシートの列構成

実際に手を動かすとき、次の列を持ったシートを作ってください。列が足りないと、後で読み返したときに判断に使えません。

記入内容なぜ必要か
盤番号・装置名どの盤の何か更新の単位を決めるため
型式(形名)銘板の表記そのまま枝番違いで終端日が違うことがある
数量同型式の総数予備品を積む数の根拠
現況の段階現行/受注生産/最終受注済/修理のみ4段階のどれかを明記する
公表された日付年月日逆算の起点
出典と確認日どこで確認したか半年後に再確認するとき差分が取れる
故障時の代替手段予備品あり/中古/後継品へ載せ替え夜中に取る行動を先に決めておく
後継品の有無型式と、載せ替え時の作業量更新見積の下敷きになる

このシートがあると、次に説明する逆算がそのままできます。ないと、毎回ゼロから調べ直すことになります。

最終受注日からの逆算は「稟議期間」を必ず含める

最終受注日が公表されている型式について、いつ動くべきかを逆算します。日本本社の承認が必要な設備投資では、現場が必要性を認識してから発注書が出るまでの期間が、想像以上に長くなります。

逆算に入れる要素は次の通りです。数字は自社の実績値を入れてください。

  1. 現状調査と要件の確定(型式棚卸し、現行プログラムの吸い上げ、I/Oリストの整合確認)
  2. 見積取得と比較(複数社なら、仕様を揃えるための往復が発生します)
  3. 社内稟議(現地承認 → 本社設備技術部 → 経理・購買)
  4. 発注から納品までのリードタイム
  5. 製作・プログラム移行・工場内試験
  6. 現地据付と立ち上げに使える停止枠が、年間カレンダーのどこにあるか

最後の6番が、実務上いちばん効きます。24時間稼働のラインでは、更新のために止められる日が年に数回しかありません。部品が間に合っても停止枠が取れなければ更新は実行できません。逆算は発注日ではなく、停止枠の日から引いてください。

予備品を積むか、更新を前倒すか

最終受注日が近い型式について、取れる選択肢は3つです。

選択肢1:予備品を積む。最終受注前に、CPUと主要ユニットを買って寝かせます。効くのは、更新の実施時期を自分で選べるようになる点です。壊れた瞬間に慌てて動くのではなく、都合の良い停止枠まで持ちこたえられます。難点は、寝かせた在庫が使われないまま更新時期を迎える可能性があること、そしてバッテリーや電解コンデンサを持つ製品は、保管していても経年するという点です。保管品は年1回通電確認をするか、しないなら「したことがない」と分かるようにしておいてください。

選択肢2:更新を前倒す。次章以降の試算で扱いますが、更新を計画として実施すると、停止を計画停止に変えられます。計画停止は年間カレンダーの休止日に寄せられるので、機会損失を大幅に圧縮できます。

選択肢3:PLC改造で部分的に延命する。盤の筐体・動力回路・現場配線を残し、CPUと通信ユニットだけを後継品に載せ替える方法です。工事量が小さく、停止時間も短くて済みます。適用できるのは、後継品が同じ配線・同じ端子台配置を維持している場合か、変換アダプタが用意されている場合です。ただしプログラムの互換性は別問題で、命令の一部が非対応になっていることがあります。この見極めは実機で確認するしかありません。

3つのうちどれを選ぶかは、次の2つの軸で決まります。停止1時間あたりの損失がいくらか、そして現地で直せる人がいるかどうか。後者が次章です。

老朽化した設備全体をどう扱うかという広い視点については、老朽化設備の更新をいつ判断するかで別途整理しています。PLC単体ではなく設備群として順番を決めたい場合は、そちらも併せて読んでください。

選定軸② タイで直せるか:技術者の母集団と到達時間

ここからが、日本国内の選定記事にはあまり書かれない部分です。タイの工場でPLCを選ぶとき、日本と条件が違う点が3つあります。

「呼べるか」を平日昼間で判断しない

メーカーや商社のサポート体制を確認するとき、たいてい平日の営業時間を前提に話が進みます。しかし制御盤が止まるのは平日の昼間だけではありません。むしろ夜勤帯と週末に多い、というのが多くの保全担当者の実感です。

したがって、選定時に埋めるべきなのは次の表です。数字はメーカーの公表値ではなく、自社が実際に試して確かめた値を入れてください。当社としても、ここに一般論としての「何時間」を書くことはしません。工業団地の場所と契約内容で大きく変わるためです。

経路平日 08:00-17:00平日 22:00-翌06:00土日・祝日
自社保全(工場内)
装置メーカー(日本/現地法人)
PLCメーカー窓口または代理店
現地システムインテグレーター

埋める値は「電話がつながるか」ではなく、一次切り分けが始まるまでの時間です。電話はつながるが技術者の手配が翌営業日、という経路は、夜間には実質的に使えません。この表を新ラインの立ち上げ前に一度埋めておくと、稟議のときに説得力のある材料になります。

代理店経由と直販で、届き方が変わる

三菱電機、オムロン、シーメンスの製品は、タイでは一般に商社・代理店を介した流通が中心とされます。キーエンスは直販です。これは優劣ではなく、届き方の構造が違うという話です。自社の場合にどちらの経路になるかは、既存の購買実績で確認してください。

代理店経由の場合、間に入る会社の在庫と技術力が、そのまま自社の復旧時間になります。良い代理店に当たれば、日本のメーカー窓口に問い合わせるより速いことも珍しくありません。逆に、担当者が営業のみで技術者を抱えていない代理店だと、切り分けの段階で足踏みします。つまり代理店経由は、代理店選びが機種選びと同じ重みを持ちます。選定時にメーカーだけ決めて代理店を後で決めるのは、判断の順序として危ういやり方です。

直販の場合、窓口が1本になるので伝言ゲームが減ります。他社PLCからの置換時にメーカー側でプログラム変換を行う支援があることも、切り替えのハードルを下げます。一方で、複数メーカーを混ぜて1つの商社にまとめて発注したい購買方針とは、噛み合わないことがあります。ここは購買部門と先に握っておく必要があります。

判断の基準を1行で言うと、こうなります。復旧経路を短くしたいなら直販が有利、調達をまとめて価格と与信を管理したいなら代理店経由が有利。どちらを優先するかは工場の運営方針次第で、正解は1つではありません。

タイのPLCプログラム人材をめぐる状況は変わりつつある

もう一つ、無視できない変化があります。中国のEV関連企業のタイ進出により、製造技術者の給与相場が20〜30%上昇し、日系の自動車部品メーカーからの人材流出が起きていると報告されています。加えて2026年1月から、社会保険の拠出金算定基礎額の上限引き上げが段階的に始まります(東京コンサルティンググループ タイ労務動向2026)。

これが選定に効いてくる筋道は次の通りです。社内でPLCを触れる人が育っても、その人が5年後も自社にいる確率は以前より下がっています。したがって、特定個人の暗黙知に依存する選定は、以前よりリスクが高くなりました

具体的な対策は3つです。第一に、機種を絞ること。3社が混在する工場より、1社に寄せた工場のほうが、新しく採用した技術者を戦力にするまでの時間が短くなります。第二に、プログラムのコメントと変更履歴を、担当者ではなくファイルに残すこと。第三に、社外に依頼できる先を平時から1社は確保しておくことです。緊急時に初めて連絡する会社は、装置の中身を知らないので、切り分けから始めることになります。

外部にプログラムを依頼する場合の契約・体制の作り方は、PLCプログラム開発の外注をどう設計するかにまとめています。また、新ラインの立ち上げ時に社内へ知識を残す進め方は設備立ち上げ支援を参照してください。

選定軸③ 持ち越せる資産:ラダープログラム・シーケンス制御・通信規格・HMI画面・ライセンス

3つ目の終端日は、社内にある資産の終端日です。ここが最も見落とされます。ハードウェアの日付は公表されますが、自社資産の状態は誰も教えてくれないからです。

次の更新のときに何を持ち越せるかで、更新費用は大きく変わります。棚卸しの観点を整理します。

資産同一メーカー内で更新する場合別メーカーへ移行する場合持ち越せない場合に発生する作業
ラダープログラム変換ツールで多くが移行可能。ただし特殊命令と一部の応用命令は要確認メーカーによっては変換支援あり。それでも動作検証は必要論理の読み直しと再作成、全I/Oの動作確認
シーケンス制御の設計思想(インターロック・非常停止の考え方)ほぼ持ち越せるほぼ持ち越せる(ただし記述方法は変わる)安全の考え方の再設計。ここが抜けると事故につながる
I/Oリスト・電気図面実物と合っていれば持ち越せる同左現地での実地確認。最も時間を食う作業
HMI画面同一メーカー内でも世代が変わると再作成になることがあるほぼ再作成画面レイアウトとアラーム一覧の作り直し
通信規格・ネットワーク構成世代が変われば見直しが必要上位系との接続方式から再検討上位システム側の改修が連動する
開発環境のライセンス継続使用できることが多い新規購入費用と、社内PCへの展開手続き
変更履歴・現地改造の記録残っていれば持ち越せる同左「なぜこの回路があるのか」の再調査

実務でいちばん時間を食うのは、表の中で言えば図面と実物の差分です。稼働開始から数年経った制御盤は、必ずと言っていいほど現地改造が入っています。追加センサ、暫定のジャンパ、緊急対応で入れた接点。それが図面に反映されていない場合、更新時にすべて現地で追いかけることになります。

ここから導ける、明日から使える具体は1つです。更新の予定がなくても、図面と実機の差分を年1回埋める作業を保全業務に組み込んでください。これをやっている工場とやっていない工場では、次の更新の見積もりが目に見えて変わります。差分を埋める作業は日常業務の中で分散できますが、更新時にまとめてやると停止枠を圧迫します。

通信規格の選択が次の更新の自由度を決める

持ち越せる資産の中で、選定時の判断が最も長く尾を引くのが通信規格です。PLC本体は10年で入れ替わりますが、ネットワークの構成は工場の骨格なので、一度決めると変えにくくなります。

参考になる数字として、HMS Networksの年次調査(2025年発表)では、産業用ネットワークの新規ノードのシェアはPROFINETが18%、EtherNet/IPが18%、EtherCATが12%とされています。ただしこの数字の読み方には注意が必要です。これはグローバルの新規ノードの分布であり、タイの日系工場という母集団の分布とは異なります。CC-Link IEは日本・中国・アジアに強く、母数は三菱電機FAの顧客基盤に依存します。つまり自社の実際の選択肢は、このグローバルシェアではなく、自社の装置メーカーと保全体制の分布で決まります

選定時に判断すべき点を絞ると、次の3つです。

第一に、上位システムとの接点をどこに置くか。PLCから直接データを出すのか、ゲートウェイを挟むのか。ここを決めておくと、PLCの機種が変わっても上位側の改修が要らなくなります。上位への接続方式の設計についてはPLCからのデータ収集をどう設計するかで詳しく扱っています。

第二に、OPC UAのような、メーカーに依存しない層を一枚挟むかどうか。挟むと構成が1つ増えますが、次の更新でPLCメーカーを変える自由度が上がります。逆に挟まない構成は、シンプルで速い代わりに、上位システムがPLCの型式に縛られます。この判断は、次の更新でメーカーを変える可能性がどのくらいあるかで決めてください。可能性がゼロに近いなら、挟まないほうが合理的です。

第三に、既存の産業用ネットワークを新しい規格へ切り替えるとき、盤内の配線が変わるかどうか。三菱電機のMELSECNET/Hのように光ファイバや同軸を使う構成から、Ethernetベースの構成へ移行する場合、配線とネットワーク機器の入れ替えが伴います。これは更新工事の金額に直接乗ります。前掲の通り、MELSECNET/Hユニットは2026年3月31日に受注生産へ移行し、2029年2月28日が受注締切と公表されています。該当する構成を持っている工場は、この配線の入れ替えを含めて計画してください。

独自試算:制御盤8面・10年の総額はどこで割れるか

ここからは当社試算です。前提を全て開示しますので、数値は自社の値に置き換えて読んでください。以下の金額は当社がモデルとして仮に置いた前提値であり、各メーカーの公表価格でも、特定案件の実勢価格でもありません。

試算の前提

  • 対象:制御盤8面で構成される1ライン
  • 稼働:24時間 × 年300日(=年7,200時間)
  • 期間:10年
  • 通貨:THB(円換算は混ぜません)
  • ライン停止1時間あたりの機会損失:15,000 THB。この数字は自社の値に置き換えてください。後半で単価を振った感度分析を示します
  • 既存の制御盤は取得から相応の年数が経っており、簿価は0とみなします
  • 仮置きの単価:現行世代のCPU 90,000/ユニット 20,000/HMI 40,000。更新世代のCPU 130,000/ユニット 24,000/HMI 60,000

比較する2つのシナリオは次の通りです。

  • シナリオA(延命):供給終端が近い既存機種を10年間使い続けます。最終受注前に予備品をまとめて確保し、以降は都度の部品手配と緊急対応で回します。計画更新は10年間実施しません。
  • シナリオB(5年目に計画更新1回):1〜5年目は既存機種を運用し、5年目に計画更新を1回実施します。盤の筐体・動力回路・現場配線は流用し、CPU・ユニット・HMIを更新してプログラムを移行します。

世界線を混ぜないための約束:AとBの効果額を「相手からの節約」として測ることはしません。それぞれの10年総額を同じ定義で計算し、最後に差を取るだけにします。加えて、Bが5年目に取得した更新資産のうち10年目末に残っている分は、期間対応のために控除します。この控除をしないと、Aの側に隠れている「11年目に立つ更新義務」が見えず、比較が成立しません。

停止時間の内訳

項目シナリオAシナリオB
計画外停止 1〜5年目年3件 × 2.0時間 × 5年 = 30時間年3件 × 2.0時間 × 5年 = 30時間
計画外停止 6〜10年目年4件 × 3.5時間 × 5年 = 70時間年2件 × 1.0時間 × 5年 = 10時間
計画停止(更新工事)0時間48時間
停止時間 合計100時間88時間
うち損失を計上する時間100時間56時間
停止損失(@15,000 THB/時)1,500,000 THB840,000 THB

Aの6〜10年目で1件あたりの復旧時間が伸びる理由は、修理対応が終わった後は現物交換ができず、故障のたびに代替品の探索と仮復旧が挟まるためです。件数だけでなく1件あたりの時間が伸びる、というのがこの区間の特徴です。

Bの計画停止48時間のうち、32時間は年間カレンダー上の非稼働日(年7,200時間稼働なので、年間で1,560時間は非稼働です)に充当できるとみなし、損失を計上していません。残る16時間は稼働日を止める前提で計上しています。計画停止は日程を買える停止であり、計画外停止は買えない停止です。この差が、試算全体で最も効く要素です。

直接支出の内訳

費目シナリオAシナリオB前提
① 予備品の先行確保(最終受注前)920,000420,000A:CPU4台×90,000+ユニット20点×20,000+HMI4台×40,000/B:CPU2台×90,000+ユニット8点×20,000+HMI2台×40,000
② 保守部品の都度調達 1〜5年目250,000250,000両シナリオとも 年50,000×5年
③ 保守部品の都度調達 6〜10年目825,000200,000A:年165,000×5年(修理対応終了後の中古・代替品調達)/B:年40,000×5年(新世代で正規調達)
④ 更新工事一式(5年目)03,990,000次表の内訳
⑤ 保全の外部支援(10年計)600,000450,000A:年60,000×10年/B:1〜5年目 年60,000=300,000、6〜10年目 年30,000=150,000
直接支出 合計2,595,0005,310,000

更新工事の内訳は次の通りです。

項目数量単価金額
CPU8台130,0001,040,000
I/O・通信ユニット40点24,000960,000
HMI8台60,000480,000
機器費 小計2,480,000
プログラム移行・動作検証8面85,000680,000
盤改造・既設配線の流用工事8面60,000480,000
立ち上げ・現地試運転一式350,000350,000
更新工事 合計3,990,000

10年総額:2つの見方で結論が反転する

まず、期間中に実際に出ていく金額だけで並べます。

見方1:支出ベースの10年総額シナリオAシナリオB
直接支出2,595,0005,310,000
停止損失1,500,000840,000
10年総額4,095,0006,150,000
差(B − A)+2,055,000(Aが安い)

この表だけを見ると、延命が200万THB以上安いという結論になります。稟議の場でこの表を出せば、更新は却下されます。

しかしこの比較は成立していません。10年目末の時点で、AとBは全く違う状態にあるからです。Aの制御盤は10年分さらに古くなり、修理対応も終わっていて、11年目には更新工事3,990,000 THB相当が丸ごと待っています。Bの制御盤は更新から5年しか経っておらず、まだ半分の寿命が残っています。この状態の差を無視して総額だけ比べるのが、いわゆる世界線の取り違えです

そこで、更新後の制御盤の期待使用年数を10年と置き、直線で按分して期間対応させます。Bが5年目に投じた3,990,000 THBのうち、10年目末までに使い切ったのは5年分=1,995,000 THB、残る1,995,000 THBは11年目以降に持ち越される資産です。この残存分をBから控除します。Aは更新資産を取得していないので、消費も残存もゼロです。

見方2:期間対応させた10年総額シナリオAシナリオB
直接支出2,595,0005,310,000
更新資産の残存(10年目末、控除)0−1,995,000
期間対応後の直接支出2,595,0003,315,000
停止損失1,500,000840,000
10年総額4,095,0004,155,000
差(B − A)+60,000(Aが安い)

差は60,000 THBです。10年間・400万THB規模の比較で、差が6万THB。実務的にはほぼ互角という結論になります。

PLC選定2026|あと何年直せるかで決まる主要4社の使い分け - figure 3

60,000 THBという差の意味

この60,000 THBが何時間分かというと、15,000 THBで割って4時間です。つまりシナリオAの計画外停止が、10年間で100時間ではなく104時間になった時点で、2つのシナリオは同額になります。100時間の見積もりに対する4時間は4%です。10年先の故障時間を4%の精度で当てられる人はいません。したがってこの試算から言えるのは「更新したほうが安い」でも「延命のほうが安い」でもなく、金額だけでは決まらないということです。

自社の数字で判断するための1行の式

上の2表から、差は次の式で表せます。pは停止1時間あたりの機会損失(THB)です。

差(B − A)= 720,000 − 44 × p

720,000は期間対応後の直接支出の差(3,315,000 − 2,595,000)、44は損失を計上する停止時間の差(100時間 − 56時間)です。差がプラスならAが安く、マイナスならBが安いことになります。

分岐点は、720,000 ÷ 44 = 約16,364 THB/時です。停止1時間あたりの損失がこれを下回る工場では延命が安く、上回る工場では計画更新が安くなります。感度を並べます。

停止1時間の機会損失A 10年総額B 10年総額差(B − A)有利なのは
8,000 THB3,395,0003,763,000+368,000A(延命)
15,000 THB4,095,0004,155,000+60,000A(ただし僅差)
約16,364 THB約4,231,000約4,231,0000分岐点
25,000 THB5,095,0004,715,000−380,000B(計画更新)
40,000 THB6,595,0005,555,000−1,040,000B(計画更新)

明日から使える具体は、この式です。自社の停止1時間あたりの損失額を1つ決めて、代入してください。それだけで、自社が延命側と更新側のどちらに寄る工場なのかが分かります。多品種少量で在庫緩衝のある工場は左側に、専用ラインで顧客への直納が続く工場は右側に寄ります。

この試算が言っていないこと

3点、明示しておきます。第一に、これは特定の案件の見積もりではありません。仮置きの単価と件数で組んだモデルです。第二に、回収年数は書いていません。この比較では両シナリオともに支出であり、投資と回収の関係が一意に置けないため、分母の根拠のない年数を出すことは避けました。第三に、機種選定の話には踏み込んでいません。この試算はメーカーの優劣ではなく、更新のタイミングと停止時間の可制御性を扱っています。

制御盤そのものの製作を発注する段階の論点は、制御盤設計・製作の発注ガイドで別に整理しています。

メーカー混在は悪なのか:3層で線を引く

「機種は1社に統一すべき」という方針は、保全の観点からは正しいものです。しかし現実の工場では守れません。装置メーカーが自社標準のPLCで納めてくるからです。ここで方針と現実が衝突し、たいてい方針のほうが形骸化します。

現実的な解は、統一するかしないかを二択で決めないことです。3つの層に分けて、層ごとに別のルールを持ちます。

対象標準を決める主体混在の可否判断の理由
第1層:工場インフラユーティリティ監視、上位への集約、エネルギー計測、共通の警報系本社設備技術部+現地保全混在させない長期に残り、更新周期が最も長い。ここが混ざると保全教育が二重になる
第2層:ライン制御搬送、コンベア、ライン全体のインターロック、統括HMI現地の生産技術原則1社に寄せる保全の一次対応が発生する層。夜間に触るのはここ
第3層:装置内制御装置メーカーが自社標準で組み込んだ制御装置メーカー混在を許容する装置メーカーの標準を崩すと、保証と立ち上げ品質が落ちる

この線引きの実務上の効果は、第3層での譲歩を明示的に認めることで、第1層と第2層を守り切れる点にあります。「全社で三菱に統一」という無理な方針を掲げると、装置メーカーとの交渉で例外が積み上がり、最後には何の方針もない状態になります。最初から第3層は許容すると決めておけば、そこで浮いた交渉力を第1層と第2層に集中できます。

第3層を許容する場合に、装置メーカーとの契約で必ず取り決めておく項目が3つあります。

  1. プログラムの提供範囲。ソースを提供してもらえるのか、パスワード保護されるのか。保護される場合、保全が触れる範囲はどこまでか。
  2. 上位への出力インターフェース。装置内のPLCが何であっても、ライン側へ出す信号とデータの形式は自社仕様に合わせてもらう。ここを揃えておけば、装置単位の入れ替えが上位に波及しません。
  3. 保守部品の供給期間と、故障時の連絡先。装置メーカー経由なのか、PLCメーカーへ直接なのか。夜間に誰に電話するかを、納入時に紙で受け取っておきます。

この3項目は、装置の引き合い段階の仕様書に入れてください。納入後に交渉すると、費用が乗ります。

なお、駆動系の方式選定も同じ構造の判断になります。制御方式の選び方についてはサーボ制御とインバーター制御の使い分けを参照してください。

発注・稟議の前に埋める10項目チェックリスト

選定と稟議の前に、次の10項目を埋めてください。埋まらない項目があるなら、その項目が今回の意思決定の穴です。

  1. 対象盤の全型式が棚卸しされているか(盤番号・型式・数量・現況の段階・出典と確認日まで)
  2. 4段階のどの日付で議論しているかが社内で揃っているか(生産中止/受注生産移行/最終受注/修理対応終了)
  3. 最終受注日から逆算した「動くべき日」が、停止枠のカレンダーから引かれているか
  4. 停止1時間あたりの機会損失額が1つの数字として合意されているか(本記事の式に代入する値)
  5. 夜間・週末の一次切り分け開始までの時間が、経路別に実測または確認されているか
  6. 代理店を使う場合、その代理店の技術者の有無と対応範囲が確認されているか
  7. 図面と実機の差分(現地改造・暫定ジャンパ・未反映の追加センサ)が洗い出されているか
  8. 持ち越せる資産と作り直す資産が仕分けされているか(ラダー/HMI画面/通信構成/ライセンス)
  9. 上位システムとの接点が、PLC機種の変更で影響を受けない位置に置かれているか
  10. 第1層・第2層・第3層のどこの話をしているかが、稟議書の中で明示されているか

このうち3・4・7の3つは、埋めるのに時間がかかる一方で、埋まっていないと見積もりの精度が出ません。逆に言えば、この3つが埋まっていれば、複数社から取った見積もりを同じ土俵で比較できます。

よくある質問(FAQ)

PLC選定で最初に決めるべきことは何ですか

停止1時間あたりの機会損失額です。この1つの数字が決まると、予備品を積むか計画更新に踏み切るか、直販と代理店のどちらの経路を優先するか、冗長化にどこまで投資するかが、すべて同じ基準で判断できるようになります。逆にこの数字がないと、議論が「なんとなく高い/安い」の応酬になります。本記事の試算では15,000 THB/時を置きましたが、これは自社で決める数字です。売上、粗利、追加の残業と物流費、顧客への影響のうち、どこまで含めるかを社内で先に合意してください。

三菱PLCとキーエンスPLCの違いは何ですか

優劣ではなく、条件によって有利不利が変わります。三菱電機の製品はタイの日系工場で広く使われており、当社が現場で見る限り扱える技術者の母集団も大きいため、人を確保しやすい傾向があります。一方で型式ごとの終端日が細かく動くため、棚卸しの手間はかかります。本記事で触れたUD形CPUの生産終了予定(2026年10月30日)やMELSECNET/Hユニットの受注生産移行が、その例です。キーエンスのKV-8000は高速エンジン搭載で従来比10倍をうたう現行機で、販売が直販のため窓口が1本になり、他社PLCからの置換時にメーカー側でプログラム変換を行う支援もあります。復旧経路の短さを重視するなら直販が有利で、調達をまとめて価格・与信を一元管理したい購買方針なら代理店経由が有利です。なお、いずれも各社の製品であり、当社の製品ではありません。

PLC改造と更新はどちらが安いですか

短期の支出だけを見ればPLC改造(CPUと通信ユニットだけを後継品に載せ替える方式)が安くなります。工事量が小さく、停止時間も短く済むためです。なお本記事の試算では、改造は延命(シナリオA)に含まれる選択肢の1つとして扱っています。その前提で示したのは、10年で見ると延命と計画更新の総額がほぼ互角になり得るということです。分岐点は停止1時間あたり約16,364 THBで、これを下回る工場では延命が安く、上回る工場では計画更新が安くなります(当社試算、前提は本文の通り)。もう1つ、改造を選ぶ場合の前提条件があります。後継品が同じ配線・端子台配置を維持しているか、変換手段があること、そしてプログラムの命令互換が実機で確認できていることです。ここが確認できていない改造は、停止枠の中で終わらないリスクがあります。

タイでPLCプログラムを外注できますか

できます。ただし選定と同じで、依頼先の「終端日」を見てください。具体的には、対象メーカーの開発環境を保有しているか、夜間・週末の対応範囲がどこまでか、プログラムのソースと変更履歴を自社に納品してもらえるか、担当技術者が辞めた場合に引き継げる体制があるか、の4点です。特に3点目は契約前に書面で確認してください。ソースが手元にないまま数年が過ぎると、次の更新のときにゼロから解析することになります。詳しい体制の作り方はPLCプログラム開発の外注にまとめています。

オムロンPLCの生産終了はいつですか

型式によって異なり、しかも日付が動いています。CS系は2024年3月に生産終了案内が出され、一部は2025年3月に最終受注となっています。一方でCJ2H-CPU6*-EIPは2025年3月末から2027年3月末へ、CJ2M-CPU3*は2026年3月末から2028年3月末へと延長されました。CS1D-CPU6*H/Pは生産終了そのものが撤回されており、CJ2系は継続生産が示されています。自社の盤に入っている型式を銘板の表記どおりに書き出し、公式の生産終了品ページで1点ずつ確認してください。「オムロンだから大丈夫」あるいは「オムロンだから危ない」という粒度では、判断できません。

まとめ

PLC選定の最後の分かれ目は、処理速度でもラダーの書きやすさでもなく、その盤をあと何年直せるかです。それは3つの終端日で決まります。部品供給の終端日、タイで直せる人の終端日、持ち越せる資産の終端日。

部品供給については、生産中止・受注生産移行・最終受注・修理対応終了の4つが別の日付であることを押さえ、盤の中の全型式を1点ずつ棚卸ししてください。メーカー単位やシリーズ単位では判断できません。2026年は三菱電機・オムロン・シーメンスの日付が同時に動いており、延長も撤回も起きています。日付は改定される前提で、1年動いても壊れない計画を組んでください。

直せる人については、平日昼間ではなく夜間・週末の一次切り分け開始までの時間で経路を評価してください。代理店経由なら代理店選びが機種選びと同じ重みを持ちます。そして技術者の流動性が上がっている以上、特定個人の暗黙知に依存する構成は以前より危険になりました。

持ち越せる資産については、図面と実機の差分を年1回埋める作業を保全業務に組み込むことが、次の更新の見積もり精度を最も上げます。通信規格と上位システムとの接点をどこに置くかは、PLC本体より長く効く判断です。

そして金額について。制御盤8面・10年のモデル試算では、延命と5年目の計画更新1回は、期間対応させると10年総額でほぼ互角(差60,000 THB、停止時間にして4時間分)でした。差(B − A)= 720,000 − 44 × p という式に自社の停止1時間あたりの損失額を代入すれば、自社がどちら寄りかが分かります。分岐点は約16,364 THB/時です。総額で決まらないからこそ、決め手は停止を自分で日程調整できるかどうかと、10年目に手元に残っている盤の状態になります。

タイでの設備更新では、日本と同じ判断基準がそのままは使えない場面があります。部品が届く経路、夜中に呼べる人、次の担当者に残せる資料。もし自社の盤について、どの型式がどの段階にあるのかを一度洗い出したい、あるいは自社の停止損失額でこの試算をやり直してみたいということでしたら、お問い合わせフォームからご連絡ください。棚卸しの進め方や、試算の前提の置き方についてお話しできます。


本記事で参照した情報の出典:artitech FA機器生産終了早見表/三菱電機FA 生産終了品ページ/奈良崎電機 生産中止情報/Classic Automation/Automation Trader/高島電機 メーカー案内/オムロン制御機器 生産終了品ページ/キーエンス公式製品ページおよび導入事例/HMS Networks 産業用ネットワーク年次調査(2025年発表)/東京コンサルティンググループ タイ労務動向2026。記載の日付・数値は2026年8月時点で公表されている内容です。試算部分は当社が仮に置いた前提にもとづくモデルであり、特定案件の見積もりではありません。文中の製品名・型式はすべて各社の製品であり、当社の製品ではありません。