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2026.10.13

スクラップ管理システムの導入|理由コード・原価・BOI処分とRFP

スクラップ管理システムの導入|理由コード・原価・BOI処分とRFP

導入:スクラップ管理システムは「不良数を入れる画面」ではない

スクラップは班長の手書き日報に書かれ、理由欄は「その他」ばかり。月末に棚卸差異として材料が合わず、置き場に何がどれだけあるかも分からない。業者への売却量と記録も一致しない。スクラップ管理システムの相談は、たいていこうした悩みから始まります。BOI奨励の輸入原材料から出たスクラップを処分するたびに経理が書類を集め、監査では廃棄の証跡を求められます。

この記事の主張を先にまとめます。スクラップ管理システムは、不良数を入力する画面ではありません。次の6段階を一本の流れにする仕組みです。

  • ①発生源で、工程・設備・作業指示・ロットに紐付けて
  • ②理由コードと数量(個数・重量)を
  • ③その場で記録し
  • ④承認と置き場の区分を経て
  • ⑤在庫(バックフラッシュの補正)と原価(正常仕損と異常仕損の区別)に反映し
  • ⑥売却・廃棄の出口で、承認・立会・数量・写真といった証跡を残す

タイでは、会計・法人税・BOI・工場局がそれぞれ「記録と証跡」を求めます。月末のまとめ入力では足りない理由はここにあります。主要ERPはスクラップ数量に理由を付けて記録できると各社のドキュメントは説明しています。ただ、現場で毎回入力される仕組み(端末・はかり・理由コードの粒度・承認者)を作らなければ、機能があっても使われません。受け入れ基準は「機能があるか」ではなく、自社の実際の仕損事例を流して、記録から出口の書類までが一本でつながるかで決めます。

この記事は特定製品の推奨やランキングではありません。製品の機能は各社の公開ドキュメントにもとづき、「同社のドキュメントは〜と説明している」という形で紹介します。法令・制度は、確認できた原文の範囲で書いています。後半の費用試算は、この記事のための仮の数字です。

なぜ今、タイの工場でスクラップの記録を見直すのか

タイの製造業の景況感は上向いています。集計サイト Trading Economics によると、S&P Global のタイ製造業PMIは2026年9月に54.3で、8月の53.8から上がりました。一方で雇用は、自然減によりわずかに減ったとされています。景気は上向いても、人は増えていないということです。

人に関わる制度も動いています。2026年10月1日から従業員福祉基金への拠出が始まり、2030年9月30日までは雇用者と従業員がそれぞれ月額賃金の0.25%を拠出します。2030年10月1日以降は各0.50%の予定です。2026年7月の報道では、タイ閣議がラオス・ミャンマー・ベトナムからの移民労働者約77万人の就労許可延長を承認しました。製造業とサービス業の労働力確保が目的とされています。

投資の面では、タイBOIによると2026年1〜6月の投資奨励の申請は1,299件、436億ドルで、前年同期比37%増でした。業種別では電気・電子が35.6億ドル、農業・食品加工が18.2億ドル、自動車が7.592億ドルです。機械の高度化、デジタル技術、自動化やロボットの導入を対象とする「Smart and Sustainable Industry」の申請は132件、5.076億ドルでした。いずれも申請ベースの数字で、承認額や投資の実行額ではありません。

班長が日報に書き、事務員が月末に転記する。この作業は、人手が限られる中で真っ先に抜けやすい仕事です。抜けた記録は、月末の棚卸差異や、監査・BOIへの説明の場面でまとめて表に出ます。景況感が上向き、デジタル化への投資申請も出ているいまは、スクラップの記録を現場の入力から出口の証跡まで見直す良い時機です。

スクラップ・仕損・リワーク・廃棄物の違い

最初に言葉をそろえます。日本本社、タイの経理、BOI担当、現場で、同じ「スクラップ」が違う意味で使われていることがよくあります。

日本の原価計算基準(1962年)は、仕損を正常なものと異常なものに分けて扱います。総合原価計算では、仕損の費用は原則として良品(完成品と期末仕掛品)に負担させます。異常な仕損は「非原価項目」とされ、製品原価に含めません。作業くずや仕損品の処理と評価は、副産物に準ずるとしています。仕損品に売却価値や利用価値があれば、その見積額を差し引いた額を仕損費とする考え方です。

タイ歳入局の命令 ป.79/2541 も、法人税の文脈で同じような区分を定めています。

用語(タイ語)歳入局命令 ป.79/2541 の定義(要旨)
ของเสียตามปกติ(正常な仕損)効率的な生産過程で発生し、その製法の正常率として定めた率の範囲内の仕損
ของเสียเกินปกติ(異常な仕損)定めた正常率を超えて発生した仕損
เศษซาก(スクラップ)ある種の製造工程から生じ、測定可能な回収価値があるが少量の屑

BOIの事務局告示 ป.5/2543 は、第36条(1)の原材料について「ロス」と「スクラップ」を定義しています。ロスは、欠陥や規格外で本来の目的に使えない原材料、工程ロス、その原材料から作られた欠陥・規格外の製品や部品です。スクラップは、ロスのうち原形をとどめないまで破壊されたもの、とされています。

本記事で扱うのは、工程内で発生した仕損・スクラップを記録し、出口まで追う仕組みです。近い領域とは次のように分けます。

  • 手直しして良品に戻すもの(リワーク)は、スクラップとは別の流れです。隔離から再検査まではリワーク管理システムの記事で扱っています。現場では「直すか、捨てるか」の判定が分岐点になるため、スクラップの記録画面にもこの分岐を置きます
  • 売れ残りや滞留した在庫の処分は、在庫の出口の話です。過剰在庫削減の記事で整理しています
  • 廃棄を委託した後、処分完了までを追う話は、工場局の章で触れる産業廃棄物の記事に任せます

会計:正常仕損と異常仕損で在庫と費用が変わる

タイ会計士協会(TFAC)が公表するタイ会計基準 TAS 2(棚卸資産)は、異常な仕損の扱いを定めています。第16項は、棚卸資産の原価に含めず発生した期間の費用とする原価の例を挙げ、その16.1項が「材料・労務費その他の製造費用のうち、異常に生じた仕損」です。第38項は、期中に費用として認識する棚卸資産の額に、未配賦の製造間接費と異常な仕損部分の製造原価が含まれるとしています。第13項は、固定製造間接費を正常生産能力にもとづいて配賦し、配賦されなかった固定費は発生期間の費用とする、としています。

つまり TAS 2 のもとでは、正常な仕損は良品の原価に含まれて在庫に積まれ、異常な仕損は在庫に積まれずにその期の費用になります。同じ1キロのスクラップでも、どちらに分類するかで、在庫の金額とその期の損益が変わります。

注意点が2つあります。第一に、TAS 2 にも歳入局命令にも、「標準の何%を超えたら異常」という数値基準はありません。歳入局命令は、各社が定めた正常率を基準にしています。正常率は自社で決め、根拠を残す必要があります。第二に、タイの会社が適用する会計基準は会社の区分によって異なります。非公開会社向けの TFRS for NPAEs での扱いは、本記事では確認していません。自社がどの基準を適用しているかは、監査人に確認してください。

ここから先は編集上の推論です。正常と異常を区別して会計処理するには、仕損ごとに「何が・どれだけ・なぜ出たか」と、自社の正常率(計画スクラップ)との差が分かる記録が要ります。月末に合計数量だけを入れる運用では、この区別の根拠を説明しにくくなります。

税務:廃棄・スクラップを損金にする手順

タイ歳入局の命令 ป.79/2541(1998年11月3日)は、法人税の計算で、異常な仕損・品質劣化品・不良品・期限切れ品・スクラップを廃棄した期の損金にする手順を定めています。同命令は ป.84/2542(1999年5月13日)で一部改正されました。歳入局が2024年6月に出した原価・費用に関する論点マニュアルにも、同じ内容が収録されています。

同命令の第2条は、正常な仕損の原価を良品の原価の一部とみなすとしています。第3条は、廃棄の手順を企業の区分ごとに定めています。

  • 輸出加工区(IEAT)の企業:IEAT の定める廃棄方法に従い、監査人を立会人として招くか、廃棄報告書を監査人に提出する
  • BOI奨励企業で輸入原材料を使って輸出向けに生産する場合:原材料の廃棄は BOI の定める方法に従い、監査人の立会または報告を行う。原材料以外の廃棄は次の一般の手順に従う
  • 保管できないもの(食品・医薬品・化学品など):損傷の確認と権限者の承認を経て、少なくとも倉庫・経理・営業または監査の部門が立ち会って署名し、監査人を立会人として招く
  • 保管してまとめて廃棄できるもの:上の手順に加え、廃棄の30日前までに所轄の歳入事務所へ通知する(ป.84/2542 による改正)

一方で歳入局は、医薬品卸の事例についての2007年の回答で、この命令は税務職員の検査・指導の指針であり、廃棄の事実を証明する明確な書類・証拠があれば損金に算入できる、と答えています。

いずれにしても、損金算入の説明の土台になるのは証拠です。誰が承認したか、どの部門の誰が立ち会ったか、何をどれだけ廃棄したか、なぜ廃棄したか。スクラップ管理システムに承認の記録、立会者の記録、数量と理由、写真を残す機能を求める根拠はここにあります。自社の取引がどの手順に当たるか、通知が必要かは、所轄の歳入事務所や税務の専門家に確認してください。

BOI:第36条(1)原材料由来のロスとスクラップ

BOI事務局の告示 ป.5/2543(2000年7月24日)は、投資奨励法第36条(1)にもとづき、輸出向け製品の製造に使うために輸入税の減免を受けた原材料について、ロスとスクラップの条件と手続を定めています。対象は第36条(1)の原材料です。第30条の原材料、保税工場、フリーゾーンを使う企業は別の手続になるため、この章の内容をそのまま当てはめないでください。

告示によると、原材料勘定の調整(在庫残高からの控除)を申請する場合は、売却・破壊・輸出・寄付の許可を BOI に申請します。その際、ロスの種類、数量または重量、金額、原因を一覧にし、検査のためにロスやスクラップの現物を保管します。無税で勘定を調整できるのは、承認された方法での破壊、国外への輸出、承認された先(政府機関・慈善団体など)への寄付の場合です。商業価値のあるロスやスクラップを国内で売却する場合は、税・関税を納付し、その証憑を受け取った後に勘定を調整します。

BOI チェンマイ投資奨励センターの2023年6月のセミナー資料は、処方内ロスと処方外ロスを区別して説明しています。

区分BOI 2023年セミナー資料の説明(要旨)出口の選択肢
処方内ロス製法上生じ、確定量として生産処方に含めることを認められたロス輸出、またはスクラップの状態で納税して国内販売
処方外ロス発生量を予測できないその他のロス(未投入・残材、品質不良の部品・製品など)輸出、破壊後のスクラップの国内販売(商業価値があれば販売前にスクラップの状態で納税)、寄付

同資料は、破壊の流れも示しています。破壊方法の承認を申請し、原材料と数量を一覧にし、BOI の代理人(検査・証明の許可を得た者)のもとで承認された方法で破壊します。商業価値があれば種類と数量をまとめて課税され、そのうえで勘定の控除を申請します。

売却収入の扱いにも触れておきます。BOI の資料は、商業価値のあるロスをスクラップの状態で納税して売却した収入は「プロジェクトの収入」に数え、第31条の法人税免除の対象範囲に入ると説明しています。これは法人税の免除期間中で、免除の範囲内にある案件に限った話です。どの案件も無条件で免税になるわけではありません。

ここからは編集上の推論です。BOI 原材料由来のスクラップは、処方内か処方外か、商業価値があるかで出口が分かれます。どの出口でも、種類・数量(重量)・金額・原因の記録と現物の保管が前提です。理由コード・重量・ロットが紐付いたスクラップ記録は、そのまま BOI への申請資料の土台になります。生産処方や原材料勘定の調整は IC の RMTS Online で行うと BOI の資料は説明しています。RMTS での消し込みの設計はBOI原材料の在庫管理とRMTSの記事をご覧ください。個別の判断は BOI や専門家に確認してください。

保税工場・工場局:置き場の区分と持出し許可

置き場の区分を求める規定もあります。タイ税関の告示 第122/2561号(一般保税倉庫、官報2020年6月4日掲載)の別添は、保税倉庫の種類ごとの看板の様式をまとめています。製造型保税倉庫の場合、「処方内ロスの保管場所」と「処方外ロスの保管場所」の看板を、文字の高さ2インチ以上で掲示する旨が記載されています。保税工場やフリーゾーンでのスクラップの廃棄には税関の別のルールがあります。手続の中身は、所轄の税関や通関業者に確認してください。

工業省の告示「廃棄物または不要物の管理 B.E.2566(2023)」は、2023年11月1日から施行されています(第13条・第22条は官報掲載の翌日から)。JETRO が掲載する非公式英訳によると、告示の「不要物」は、工場内で使われなくなったもの、品質を満たさないものなどを指し、商業価値の有無を問いません。主な定めは次のとおりです。

  • 有害・非有害を区分して保管し、容器のラベルに発生者名・区分名とコード・保管の開始日と終了日を表示し、保管の配置図を最新にしておく
  • 局長等の承認なしに工場外へ持ち出してはならない
  • 工場局の研修資料によると、持出しの許可は「กอ.1」(旧「สก.2」から移行)、処理状況の報告は「กอ.2」で、月次・年次の報告は iSingle Form で行う
  • 様式の注意書きでは、無許可の持出しは工場法第45条違反で、20万バーツ以下の罰金とされている

売却できる金属スクラップも、この「不要物」の対象になり得ます。ただし、別表や除外規定、リサイクル業者への売却の扱いは細かく、本記事では一律に「許可が必要」とは言えません。自社のスクラップがどう扱われるかは、所轄の工場局や委託先に確認してください。法律事務所 Tilleke & Gibbins は、発生者の責任は委託業者への引渡しで終わらず、適切に処分が完了するまで続くと解説しています。処分完了までの追跡の設計は産業廃棄物管理システムの記事で扱っています。

スクラップの出口と、それぞれで残す証跡を図にまとめます。

スクラップ管理システムの導入|理由コード・原価・BOI処分とRFP - figure 1

スクラップ管理システムの全体像:発生から出口まで6段階

ここまでの制度を並べると、どこかの段階で記録が切れると、後の段階で説明ができなくなることが分かります。スクラップ管理システムは、次の6段階を一本につなぐ仕組みとして設計します。

  1. 発生源での記録:どの工程・設備・作業指示・ロットで出たか
  2. 理由と数量:理由コード、個数と重量
  3. 承認:誰が確認して、スクラップと確定したか
  4. 置き場:どの置き場に、どの区分(BOI処方内/処方外など)で置いたか
  5. 在庫・原価への反映:材料消費の補正、正常/異常の区別、計画スクラップとの差異
  6. 出口と証跡:売却・廃棄・輸出・寄付・社内再利用と、承認・立会・数量・写真
スクラップ管理システムの導入|理由コード・原価・BOI処分とRFP - figure 2

1〜3は現場と品質、4は倉庫、5は経理と生産管理、6は経理・総務・BOI担当の領域です。部門をまたぐので、どの段階の記録を誰が持つかを最初に決めておくことが、システムの選定より先の仕事になります。以下、段階ごとに見ていきます。

発生源で記録する:工程・設備・作業指示・ロットとの紐付け

最初の段階は、スクラップが出たその場所で記録することです。月末にまとめて入れた数量は、どの作業指示・どのロット・どの設備で出たかが分かりません。理由の分析にも、BOI のロスの原因の説明にも使えません。

主要ERPの現場向け機能は、この入力を前提にしています。Microsoft のドキュメントは、Dynamics 365 Supply Chain Management の現場端末(Production floor execution)で、作業者がテンキーでスクラップ数量を入力し、理由(None、Machine、Operator、Material)を選ぶ、と説明しています。完成報告の画面でも、エラー数量とエラー理由を報告できるとしています。Odoo のドキュメントは、Shop Floor の画面から部品のスクラップを登録できると説明しています。Oracle のドキュメントは、作業者がディスパッチリストから完了・スクラップ・不合格(reject)を報告する流れを説明しています。

入力の単位は、実績収集の仕組みとそろえるのが基本です。作業指示の完了報告と同じ画面でスクラップも入れられれば、入力の手間は増えません。実績収集の要件と検収の考え方は生産実績の自動収集の記事や実績収集システムの記事で整理しています。

ロットの紐付けにも注意が要ります。ロットを分けたり統合したりする工程では、スクラップがどの子ロットから出たかを記録できないと、後から原因をたどれません。分割と統合の管理はロット分割・統合の記事をご覧ください。

手書き日報から移るときは、帳票の項目をそのまま画面に写すのではなく、項目を減らすことを考えます。作業指示や設備は選択式にし、数量と理由だけを入力させる形にすると、入力が続きやすくなります。紙の帳票を電子化する進め方は電子帳票システムの記事で解説しています。

理由コードの設計:「その他」を減らす粒度

スクラップの理由が「その他」ばかりになるのは、作業者の怠慢というより、理由コードの設計の問題であることが多いものです。選択肢が多すぎて探せない、現場の言葉と合わない、どれにも当てはまらない、のいずれかが起きています。

各社のドキュメントを見ると、主要ERPはスクラップ数量に理由を付けて記録する設計になっています。

  • Microsoft(D365):現場端末の理由は None・Machine・Operator・Material の4種、完成報告ではエラー理由を選ぶ、と説明している
  • Microsoft(Business Central):出来高の仕訳でスクラップ数量と理由コードを入力し、スクラップ数量は出来高を増やさない、と説明している
  • SAP(S/4HANA):在庫のスクラップで移動タイプに応じた理由コードを付けられ、オペレーションスクラップの分析アプリでスクラップ理由を分析できる、と説明している
  • Oracle:スクラップ時に理由を選び、任意でコメントを入れる、と説明している
  • Odoo:スクラップオーダーに任意のスクラップ理由を入力する、と説明している

D365 の4種のように、最初の階層は大きな分類にとどめ、2階層目で具体的な現象(寸法不良、ショート、バリ、傷、段取り時の試し打ちなど)を選ぶ形にすると、現場で選びやすく、分析にも使えます。理由コードの件数に業界の決まった目安はありません。工程ごとに過去の日報の記述を集計し、頻度の高いものから自社で決めてください。そのうえで「その他」を選んだら短いコメントを必須にし、毎月コメントを見て新しいコードを足すか判断します。

理由コードは、品目・BOM・工程と同じマスタとして管理します。コードの追加・廃止の承認者を決めておかないと、工場ごと・直ごとに意味が少しずつずれていきます。計画スクラップ率もマスタに持たせる値です。マスタの整備の進め方はマスタデータ管理の記事をご覧ください。理由コードを原因の特定につなげる設計は不良原因の特定システムの記事で扱っています。

数量の取り方:個数・重量・はかり連携

数量を何で記録するかは、スクラップの種類で変わります。組立品や成形品の不良は個数で数えやすい一方、切粉・端材・ランナー・こぼれた原料は重量でしか量れません。BOI の告示が「数量または重量」の記載を求めていること、売却を重量単価で行う場合があることも考えると、個数で数える品目でも、置き場に入れるときに重量を量っておくと後の突合が楽になります。

重量を手書きで転記すると、転記ミスと書き忘れが起きます。はかりからシステムへ直接送る方法があります。METTLER TOLEDO は、OPC Foundation の媒体に掲載したスポンサー記事で、計量データを MES・ERP・クラウドに送る際の通信規格として OPC UA が好まれているようだと、自社の主要顧客との議論にもとづいて説明しています。同社は、既存のはかりを OPC UA サーバを内蔵した ACI400 IIoT Edge で接続できるとしています。Odoo のドキュメントは、品質チェックの Measure で計測に使う機器(Device)を任意で指定できると説明しています。

写真も証跡として役立ちます。Odoo のドキュメントは、品質チェックの「Take a Picture」で製品の写真のアップロードを求め、品質チームが後で確認できると説明しています。一方、スクラップの登録画面そのものに写真を添付できるかは、各社のドキュメントでは確認できませんでした。写真が必要な場合は、RFP で登録画面への添付が可能かを個別に確認してください。

承認・置き場・持出し:誰が確認し、どこに置くか

作業者がスクラップと記録したものを、そのまま確定させるかどうかは設計の分かれ目です。誤って捨てた良品、直せたはずのもの、数の入力ミスが混ざるからです。

Oracle のドキュメントは、二段階の処置を説明しています。オペレータが不合格(reject)として報告した数量を、監督者が Production Supervisor ワークベンチで確認し、「Scrap(スクラップ)」か「Reverse to Ready(作業可能に戻す)」を選びます。スクラップにする場合は数量と理由を入れ、任意でコメントを付けます。同社は、スクラップの報告には所定の権限が必要で、スクラップの取消にも別の権限が要るとも説明しています。

この「保留→判定→確定」の流れは、歳入局命令 ป.79/2541 の「権限者の承認」「複数部門の立会署名」と対応づけて設計できます。現場の判定(品質や班長)と、廃棄の承認(管理職・経理)を分け、それぞれの記録を残す形です。確定後に数量を直す場合の手順と履歴の残し方は生産実績の訂正・承認の記事で解説しています。

置き場も記録の一部です。BOI の告示は検査のための現物の保管を求め、税関告示の別添は製造型保税倉庫での処方内/処方外ロスの保管場所の表示を求めています。工業省の告示は区分保管とラベル、配置図を求めています。システム側では、置き場をロケーションとして持たせる方法があります。Odoo のドキュメントは、スクラップオーダーで元のロケーションとスクラップ先のロケーションを指定し、「Inventory Loss」タイプのスクラップロケーションに損失勘定を設定できると説明しています。SAP のドキュメントは、倉庫管理(EWM)でスクラップ用の作業場で梱包し、出荷伝票を経て出庫を転記する流れを説明しています。

置き場の区分の例は次のとおりです。区分の名前と数は自社の制度と出口に合わせて決めてください。

  • 判定待ち(保留品)
  • BOI 原材料由来・処方内
  • BOI 原材料由来・処方外
  • 一般の売却用スクラップ(材質別)
  • 廃棄委託用(有害・非有害の区分)

在庫への反映:バックフラッシュとスクラップの補正

月末の棚卸差異の原因の一つに、材料の自動消費(バックフラッシュ)とスクラップの記録のずれがあります。

Microsoft のドキュメントは、D365 の材料消費(Flushing principles)に Manual・Start・Finish・Available at location の4方式があると説明しています。Finish の方式では、製造指図の完成報告で材料が自動消費され、消費量は完成として報告した数量に比例します。

ここからは編集上の推論です。完成数量に比例して材料を落とす設定のまま、スクラップを報告しなければ、スクラップに使った材料は帳簿上まだ在庫に残ります。月末の実地棚卸でその分が差異として現れ、原因が分からないまま在庫調整で消すことになります。D365 の現場端末については、スクラップ報告の際に「Adjust material」で消費予定量と実消費量を調整できると Microsoft は説明しています。Business Central については、スクラップ数量は出来高を増やさないと説明しています。どの方式でも、スクラップを報告した時点で材料消費がどう動くかを、自社の設定で確かめておく必要があります。

材料の払出しと消費の設計は部材払出管理の記事で扱っています。棚卸差異の原因の切り分けは在庫差異の原因と対策の記事、差異を調整するときの承認の流れは棚卸差異承認システムの記事をご覧ください。

原価への反映:計画スクラップと実績の差異

原価の側では、計画(BOMや品目マスタに持たせるスクラップ率)と実績を比べられるかが要点です。

SAP のドキュメントは、S/4HANA の計画スクラップを3つに分けて説明しています。アセンブリスクラップは品目マスタで持ち、組立時に生じる不良を見込みます。コンポーネントスクラップは BOM で持ちます。高価な部品には、組付け前に不良のアセンブリを除外するためにオペレーションスクラップを使います。同社のページの例では、必要数量1,000個、アセンブリスクラップ10%のとき、オペレーションスクラップのない部品は100個分を上乗せして1,100個分、オペレーションスクラップ1%とネット指示のある部品は10個分を上乗せして1,010個分を手配します。

実績との比較について、SAP は2つのアプリを説明しています。Operation Scrap(App ID F2034)は、製造指図の実績確認で記録したスクラップを、指図の工程で定義した見込みスクラップと比べます。Material Scrap(App ID F2035)は品目の見込みスクラップ率と実績を比べ、見込み率を更新するためのフィードバックに使うとしています。

Microsoft のドキュメントは、D365 の計画スクラップを constant(固定)と variable(変動)に分けています。固定スクラップは、完成品の数量にかかわらず1回の生産で常に同じ量が出るスクラップです。同社の例では、必要な原料100リットルに変動スクラップ20%と固定スクラップ10リットルを見込み、100×1.20+10=130リットルを手配します。

実績のエラー数量の原価について、Microsoft は2つの処理を選べると説明しています。完成報告で報告したエラー数量の価値を良品に配賦するか、専用のスクラップ勘定に計上するかです。正常仕損は良品に負担させ、異常仕損は費用にするという会計の考え方に、この2つの処理を対応させる設計が考えられます(これは編集上の解釈です)。どちらをどの理由・どの率の範囲で使うかは、監査人と相談して決めてください。

標準と実績の差異の分析は標準原価計算システムの記事、原価を日次で見る仕組みは製造原価管理システムの記事で解説しています。

理由別に減らす:分析と打ち手

記録の目的は、最終的にはスクラップを減らすことです。理由コードと発生源の紐付けがあれば、次のような切り口で見られます。

  • 理由別のパレート:件数や重量の多い順に理由を並べると、まず手を付ける対象が絞れる
  • 工程・設備別:同じ品目でも、特定の設備や金型に偏っていないか
  • 材料・ロット別:特定の仕入先ロットや材料ロットで増えていないか
  • 直・作業者別:教育や手順の問題か(個人を責める目的では使わない)
  • 時間帯別:段取り直後や立上げ時に集中していないか

段取りや立上げのロスは、生産量にかかわらず1回ごとに出る量なので、D365 でいう固定スクラップとして計画に織り込めます(これは編集上の解釈です)。ロット数を減らす、段取りを短くすることが、そのままスクラップ量の削減につながる場合があります。段取りの分析の進め方は段取り時間短縮の記事をご覧ください。

工程条件や設備データと結び付けて原因を探る取り組みは歩留まり改善AIの記事、不良が出たロットから原因をさかのぼる考え方は工程内不良の追跡の記事で扱っています。

スクラップ率の削減目標に業界で決まった標準値はありません。現状を正しく記録できた最初の数か月の値を基準に、理由ごとに自社で目標を決めるのが現実的です。

RFPに書く要件とFAT/SATの受入基準

スクラップ管理の機能は、多くの場合ERPやMESの一部として提供されます。RFPでは「スクラップ機能があるか」ではなく、6段階のそれぞれで何ができるかを問います。

要件RFPで確認すること
記録単位作業指示・工程・設備・ロット単位で記録できるか
紐付けロットの分割・統合後も発生元をたどれるか
理由コード階層化、工程ごとの選択肢の絞込み、「その他」選択時のコメント必須化
数量個数と重量の両方、単位換算
はかり連携接続方式(OPC UA など)、既存はかりの流用可否
写真登録画面への添付が可能か(各社で要確認)
承認フロー保留→判定→確定の段階、承認者の権限、取消の権限
置き場・ロケーション区分(判定待ち・BOI処方内/処方外・売却用・廃棄用)の設定
在庫連携スクラップ報告時のバックフラッシュの補正
原価連携正常/異常の区別、計画スクラップと実績の差異
BOI原材料区分第36条(1)の原材料由来か、処方内/処方外かの区分
出口別の書類承認・立会・通知の証跡、売却・廃棄・輸出・寄付ごとの一覧
帳票BOI・歳入局・監査向けの一覧の出力
権限入力・判定・承認・取消・マスタ変更の分離
監査ログ誰がいつ何を変更したかの履歴
ERP連携方式連携のタイミング、再送・取消の扱い
多言語タイ語の画面と理由コード名
オフライン通信が切れたときの入力と後送
教育・保守現場教育、理由コードの見直しの支援

見積は、ハード(端末・はかり)、ソフト・ライセンス、ERP連携、マスタ整備(理由コード・計画スクラップ率・置き場)、試験の5つに分けて出してもらうと比べやすくなります。ERP側の機能で足りる部分と、追加で作る部分の境目も明確になります。

受入試験は次のように組みます。

  • FAT(出荷前試験):過去の実際の仕損事例を、例として10〜20件選びます。BOI原材料由来のもの、売却するもの、廃棄委託するもの、判定で良品に戻したものを混ぜます。これを流して、記録→承認→在庫→原価→出口の書類までが一本で通るかを確認します
  • SAT(現地試験):1〜2ラインで一定期間、紙の日報と並行して運転し、システムの数量と紙の数量、置き場の重量を突き合わせます

合格基準の数値(並行運転の期間、数量の一致率、「その他」の比率の上限など)は、自社で決めてください。RFPには例として自社の目標値を置き、ベンダーと協議して確定させます。RFP全体の書き方は生産管理システムの機能とRFPの記事、ERPとの連携の契約の決め方はERP連携の記事で解説しています。

費用と効果のモデル試算(仮の数字)

ここからの数字は、すべてこの記事のための仮の数字です。スクラップ管理の機能単体の公開価格は確認できなかったため、費用も仮に置いています。実際の金額は、工場の条件と見積で大きく変わります。

前提は次のとおりです(単位はTHB)。

  • 月間の材料費は5,000,000、そのうちスクラップになる材料の比率を3%と置く。スクラップ材料費は月150,000、年1,800,000
  • 効果①:発生源での記録と理由別の対策で、スクラップ量が15%減る。1,800,000×15%=年270,000
  • 効果②:棚卸差異やスクラップ集計の調査工数が月40時間減る。40時間×200 THB=月8,000、年96,000
  • 効果③:分別と記録で売却単価が上がる。月8トン(8,000kg)×2 THB/kg=月16,000、年192,000。BOI原材料由来の分は、関税を納付した後の国内売却など、ルールに従う前提
  • 費用:初期1,200,000(端末・はかり連携・ERP連携・マスタ整備・試験)、運用は年180,000
項目基本ケース慎重ケース(削減10%・売却単価改善なし)
効果①スクラップ量の削減270,000180,000
効果②調査工数の削減96,00096,000
効果③売却単価の改善192,0000
年間効果の合計558,000276,000
年間運用費180,000180,000
年間純効果378,00096,000
初期費用1,200,0001,200,000
回収年数約3.2年12.5年

(単位はTHB。削減率・単価・費用はすべて仮定)

計算の内訳は次のとおりです。

  • 基本ケース:270,000+96,000+192,000=558,000。558,000−180,000=378,000。1,200,000÷378,000≒3.2年
  • 慎重ケース:1,800,000×10%=180,000。180,000+96,000=276,000。276,000−180,000=96,000。1,200,000÷96,000=12.5年
スクラップ管理システムの導入|理由コード・原価・BOI処分とRFP - figure 3

試算の読み方を3点挙げます。

1点目は、効果の大半がスクラップ量そのものの削減と分別で決まることです。基本ケースの年間効果558,000のうち、効果①の270,000と効果③の192,000で462,000を占めます。調査工数の削減(96,000)だけでは、年180,000の運用費をまかなえません。

2点目は、記録システムを入れただけでは回収しないことです。慎重ケースのように削減が10%にとどまり、売却単価が変わらなければ、回収に12.5年かかります。理由コードで原因を絞り、打ち手につなげられるかが分かれ目です。

3点目は、置き換えの必要性です。材料費とスクラップ比率は工場ごとに大きく違います。自社の材料費、スクラップの比率、売却の実績で置き換えて計算してください。効果③は、分別の手順と売却先との取り決めが前提です。SATの並行運転で数量の記録が安定するまでは、効果に数えないでください。

よくある質問

スクラップ管理システムとは?

工程で出た仕損・スクラップを、発生源で理由と数量とともに記録し、承認と置き場を経て、在庫と原価に反映し、売却・廃棄の出口で証跡を残すまでを一本でつなぐ仕組みです。独立した製品として導入する場合もありますが、多くはERPやMESの機能の一部として提供されます。

仕損管理はExcelではだめ?

数量の集計だけならExcelでも可能です。ただ、発生源(作業指示・設備・ロット)との紐付け、承認の記録、変更の履歴、在庫の材料消費の補正までをExcelで保つのは難しくなります。歳入局や BOI に証跡を示す場面を考えると、少なくとも承認と変更履歴が残る仕組みにしておくことをお勧めします。

スクラップの理由コードは何個にすべき?

業界で決まった目安はありません。過去の日報の記述を工程ごとに集計し、頻度の高い理由から自社で決めてください。1階層目は大きな分類(設備・作業・材料など)、2階層目で具体的な現象を選ぶ形にすると、現場で選びやすくなります。「その他」を選んだらコメントを必須にし、定期的に見直します。

BOIのスクラップはどう処理する?

BOI の告示 ป.5/2543 は、第36条(1)の原材料について、ロスの種類・数量または重量・金額・原因の一覧化と現物の保管を求めています。無税で勘定を調整できるのは承認された方法での破壊・輸出・承認先への寄付で、国内で売却する場合は先に税・関税を納付します。第30条の原材料や保税工場、フリーゾーンは別の手続です。個別の処理は BOI や専門家に確認してください。

異常仕損はどう判断する?

TAS 2 にも歳入局命令にも、「何%を超えたら異常」という数値基準はありません。歳入局命令は、各社がその製法の正常率として定めた率を基準にしています。自社で正常率を定め、その根拠と、理由別の実績を記録しておくことが前提です。会計処理の判断は監査人に確認してください。

ERPのスクラップ機能だけで足りる?

主要ERPは、スクラップ数量に理由を付けて記録し、計画スクラップと実績を比べる機能を持つと各社のドキュメントは説明しています。足りないことが多いのは、現場で毎回入力される仕組み(端末、はかり、理由コードの粒度、承認者)と、BOI・歳入局・工場局向けの出口の書類です。自社の実際の仕損事例を流して、どこで記録が切れるかを確かめてから、追加の範囲を決めてください。

価格はどれくらい?

スクラップ管理の機能単体の公開価格は確認できませんでした。参考として、Microsoft の米国向け価格ページでは、Dynamics 365 Supply Chain Management が1ユーザー月額210ドル、Premium が300ドル(いずれも年払い、2026年10月13日閲覧)と表示されています。1ドル≒33.80バーツで単純換算すると、210ドルは約7,098バーツ相当です。これはタイの価格ではなく、同ページも通貨や国・地域によって実際の価格と異なる場合があると注記しています。実際には、端末・はかり・連携・マスタ整備を含めた見積で比べてください。

まとめ

  • スクラップ管理システムは、不良数を入れる画面ではなく、発生源の記録→理由と数量→承認→置き場→在庫・原価→出口の証跡を一本でつなぐ仕組みである
  • TAS 2 では異常な仕損はその期の費用になる。異常の数値基準は無いので、自社で正常率を定め、区別できる記録を残す
  • 歳入局命令 ป.79/2541 は、廃棄を損金にする手順として権限者の承認、複数部門の立会署名、保管できるものは30日前の通知を定めている。明確な証拠が土台になる
  • BOI の告示 ป.5/2543 は第36条(1)の原材料に限る話で、種類・数量または重量・金額・原因の記録と現物保管が前提。国内売却は先に税・関税を納付する
  • 工業省の告示 B.E.2566 では、不要物は商業価値の有無を問わず対象で、工場外への持出しには許可が要る。売却するスクラップの扱いは所轄・委託先に確認する
  • 理由コードは階層化し、「その他」にはコメントを必須にする。件数は自社で決める
  • 完成数量に比例して材料を自動消費する設定では、スクラップを報告しないと材料が帳簿に残り、棚卸差異になる
  • 受入基準は機能の有無ではなく、自社の実際の仕損事例を流して出口の書類まで通るかで決める
  • 試算では、効果の大半はスクラップ量の削減と分別で決まり、記録を入れただけでは回収しない

スクラップの記録方法や理由コードの整理、BOI原材料由来のスクラップの記録設計を検討している段階でも、TOMAS TECH にご相談いただけます。タイの日系工場で、現状の日報や置き場の棚卸しから、要件の整理、RFP、FAT/SATまでを一緒に進めます。お問い合わせはこちらからどうぞ。

参考情報