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2026.10.09

ライン供給 自動化の進め方|キッティング・ミルクランとAMRの順番

ライン供給 自動化の進め方|キッティング・ミルクランとAMRの順番

組立ラインの横に部品の箱が山積みになっているのに、肝心の部品が切れてラインが止まる。供給担当はフォークリフトや手押し台車で、呼ばれるたびに倉庫とラインを往復している。そんな現場で「AGV や AMR を入れればライン供給 自動化ができます」という提案を受けても、何から手を付け、どこまでを機械に任せればよいのかは、提案書からは読み取れません。この記事は、タイ(および ASEAN)の日系の自動車部品・電子部品・電機組立工場で、生産管理・生産技術・構内物流を担当する方が、社内で判断材料をそろえるための実務ガイドです。

この記事の主張は一つです。ライン供給の自動化は「車両を買う」ことから始めると失敗しやすい。①供給方式(ライン側在庫/キッティング/順序供給)、②量と時刻(ピッチ・容器の大きさ・ライン側の上限在庫)、③信号(かんばん・呼び出しボタン・システム指示)、④ルートとレイアウト(定ルート・停止点・通路幅・交差)を先に決め、⑤最後に搬送手段(手押し台車・牽引車・AGV・AMR)を選ぶ。 ①〜④は主に設計作業です。まず人手の定時定ルート(ミルクラン)で回して数字を取り、効果が確認できたルートから自動化します。

以下、この順番に沿って整理します。製品の仕様はすべてメーカーの公表値で、第三者が検証した値ではありません。事例はベンダーが発表したもので、タイの工場の事例ではありません。費用の試算は、この記事のために置いた仮の数字です。

なぜ今、タイ工場でライン供給 自動化が問われるのか

まず、2026年のタイの生産の動きを確認します。

Reuters が伝えたタイ工業連盟(FTI)の数字では、2026年8月のタイの自動車生産は124,646台で、前年同月比10.93%増でした。同じ月の国内販売は25.59%増、輸出は2.04%減です。7月も生産は6.12%増でした。一方で FTI は、2026年通年の生産見通しを従来の3%増から3.33%減へ下方修正しています(予測値)。理由として、中東情勢による輸出減の見込みが挙げられています。月ごとの増産と通年の減産見通しが同時にあることから、生産量の振れ幅が大きい年だと読めます。

製造業全体では、Reuters(The Star 掲載)によると、2026年8月の製造業生産指数(MPI)は前年比4.44%増で、アナリスト予想の1.0%を上回りました。工業省産業経済局長は電子製品の生産増、政府の景気刺激策、バーツ安を要因に挙げています。なお、工業省は電子製品を追加してウエイトを変える MPI の算出方法の改定を行っており、この数字は改定後のものです。BOI の発表(2026年8月3日)では、2023年から2026年半ばまでの半導体・先端電子分野の投資申請は268億ドル(約9,000億バーツ)、880プロジェクトで、うち PCB が224プロジェクト、98.5億ドル(約3,310億バーツ)と最大でした。

人手の面では、2025年8月の報道(The Nation、Reuters 転載)で、タイで働いていたカンボジア人は紛争前に52万人超、うち約40万人が出国したと伝えられました。カンボジア人はタイの外国人労働力の12%を占め、タイはスリランカ人労働者1万人の第1段階の受け入れを承認しています(いずれも2025年時点の報道です)。ILO によれば、タイの登録外国人労働者は少なくとも300万人です。また、MiR の2024年の発表記事には、タイの労働力が2037年までに300万人減少する見込みだという記述があります。ただし、これはベンダーのプレスリリース内の引用で、一次統計の出典は記事中に示されていません。

世界全体では、IFR の「World Robotics 2026」(2026年9月24日発表)によると、2025年に世界で稼働する産業用ロボットは9%増の500万台、2025年の年間設置台数は11%増で60万台を超えました。これは世界の数字で、タイの数字ではありません。

生産量が振れ、人の確保が読みにくいとき、真っ先に影響を受けやすいのは「呼ばれたら運ぶ」形の部品供給だと考えられます。生産量が変わるたびに必要な供給担当の人数が変わり、欠員が出ると供給が遅れてラインが止まるからです。ただし、ライン供給の自動化の需要とこれらの統計を直接結びつけたデータは、今回確認できていません。ここは推論として読んでください。

ライン供給とは:工程間搬送・部品供給との違い

用語を先にそろえます。

ライン供給は、この記事では「組立ラインの横(ラインサイド)まで、部品を決まった量・決まった時刻に届ける仕組み」を指します。倉庫やスーパーマーケット(後述)から組立工程の作業者の手元までの流れです。

工程間搬送は、ある工程の出来上がり(仕掛品)を次の工程へ運ぶ流れで、ライン供給より広い言葉です。プレスから溶接へ、成形から組立へといった流れが含まれます。この記事で扱う設計の考え方の多くは工程間搬送の自動化にも当てはまりますが、主題は部品をラインへ届ける側です。

部品供給は文脈によって二つの意味で使われます。一つはライン供給と同じ意味、もう一つは機械の中で部品を整列させて供給する装置(パーツフィーダ)の意味です。後者は「整列供給装置」の話で、この記事の対象外です。パーツフィーダの選び方は整列供給装置の選び方|4方式比較とPoC・FAT/SAT実践ガイドで整理しています。

リーン生産の用語集を出している Lean Enterprise Institute(LEI)は、マテリアルハンドリングを「必要な材料を工場内で動かすだけでなく、生産指示を伝える仕組みでもある」と説明しています。つまりライン供給は、モノを運ぶ作業であると同時に、「次に何をどれだけ作るか」という情報を運ぶ仕組みでもあります。ここを押さえておくと、車両を選ぶ前に信号の仕組みを決める理由が分かりやすくなります。

LEI は運搬を2つの方式に分けています。

  • 定時・不定量運搬:運搬者が決められた標準ルートを一定間隔(例として20分ごと)で巡回し、かんばんを回収して必要なものを届ける方式です。時刻が一定で、量が変わります。「みずすまし(waterspider conveyance)」とも呼ばれ、組立ラインの多くの点へ部品を供給するのに向くとされます。
  • 定量・不定時運搬:後工程からの信号に応じて運ぶ方式で、所定の在庫水準がきっかけになる「コールパーツ」です。量が一定で、時刻が変わります。バッチ生産品と保管エリアがある工場に向くとされます。

LEI は、両者を組み合わせて、変動するルートで決まった量を集める形態もあるとしています。

3つの供給方式の比較:ライン側在庫・キッティング・順序供給

組立ラインへの部品供給の方式は、研究の分野では「Assembly line feeding problem(組立ライン供給問題)」として整理されています。Wikipedia の解説では、次の5つに分けられています。

  • ラインストッキング:部品を倉庫で保管していた荷姿のままラインへ運ぶ。
  • ボックス供給(かんばん供給・バッチ供給):ラインへ供給する前に、数量を小分けする。
  • シーケンシング(順序供給):部品のバリエーションを需要の順に並べてから供給する。
  • 定置キッティング:決まった場所で数量を減らし、需要の順に仕分けてから工程へ運ぶ。
  • トラベリングキッティング:同様に仕分けたキットが、組立ラインと一緒に移動する。

実務では、ラインストッキングとボックス供給をまとめて「ライン側在庫(定量補充)」、2つのキッティングを「キッティング(セット供給)」、シーケンシングを「順序供給」と呼ぶと話が通りやすくなります。この3つを、設計の観点で比べたのが次の表です。表の評価は一般的な傾向を整理したもので、品目や生産形態によって変わります。

観点ライン側在庫(定量補充)キッティング(セット供給)順序供給(シーケンス)
向く生産形態品種が少なく、同じ部品を繰り返し使うライン品種が多く、機種切替が頻繁なライン1台ごとに仕様が変わり、部品のバリエーションが多いライン
ライン側の在庫多くなりやすい(品目数×容器分)少なくしやすい(キット分)少なくしやすい(順序に並んだ分)
ピッキングの負荷ライン側の作業者が手元で選ぶキッティング場所に集中する並べる場所に集中し、順序の管理が要る
誤品のリスク似た部品が並ぶと取り違えが起きやすいキットを作る段階で誤りが入ると、そのままラインへ流れる順序がずれると、後続のすべてに影響する
自動化との相性容器単位の補充なので、定ルートの搬送に載せやすいキット台車の単位で運べるので、牽引や AMR に載せやすい時刻と順序の精度が要るので、生産指示との連携が前提になる

方式の優劣について、参考になる研究があります。スウェーデンのルンド大学 LTH で2020年6月30日に発表された修士論文(Simon Ersbo)の要旨は、「キッティングは生産停止時間に関してラインストッキングを上回り、特に機種切替が頻繁な場合に顕著」で、小さいキットでも同様だったとしています。キッティングによってライン内の仕掛品(WIP)も下がったとされます。一方で、ライン内の保管場所を専用にするか共用にするかは、停止時間に有意な影響がなかったとされています。ただし、要旨には企業名・国・サンプル数や数値データが示されていません。1件の研究の結論として受け取り、自社のラインでは試行で確かめるのが妥当です。

現実の工場では、1本のラインの中でも部品によって方式を使い分けるのが普通です。ねじや小物のように使用量が多く安い部品はライン側在庫、機種ごとに違う部品はキッティング、大きくて色や仕様の違いが多い部品は順序供給、という分け方がよく検討されます。最初の仕事は、ラインの部品表を品目ごとに見て、どの方式に入れるかを決めることです。

キッティング 自動化をどこまでやるか

キッティングは、ライン供給の中でも人の判断が多い作業です。ここでいう「キッティング 自動化」には、段階がいくつかあります。

第1段階は、キットを作る場所と運ぶ単位を決めることです。 定置キッティングなら、スーパーマーケットの近くにキッティング場所を置き、キット台車にまとめてからラインへ運びます。トラベリングキッティングなら、キットが組立ラインと一緒に移動するので、ライン側に部品の棚を置く必要が小さくなります。どちらにするかで、ライン側の床の使い方と、運ぶ台車の形が変わります。

第2段階は、補充の仕組みを人の記憶に頼らない形にすることです。 その一例がフローラックです。フローラックのメーカー(Flexpipe)の解説では、傾斜したレーンに置いた箱が重力で前面へ流れ、補充者は後ろから入れ、作業者は前から取るので、先入れ先出しが自動的に守られるとしています。2ビンかんばんでは各レーンに2箱を置き、前の箱が空になったらその箱を補充エリアへ戻すこと自体が補充の信号になり、ソフトもスキャンも要らないと説明しています(ベンダーの解説です)。同社はフローラックを作業セルの横や前に置くのが最適だとしています。キッティング場所の棚と、ライン側の棚の両方に使える考え方です。

第3段階は、キット台車の運搬を機械に任せることです。 キット台車の単位で運ぶ形が決まっていれば、牽引車や AMR に載せ替えやすくなります。逆に、台車の形がそろっていない、キットの完成時刻がばらつく、という状態のまま運搬だけを自動化すると、車両が待つか、キットが待つかのどちらかになります。

では、どこを人が残すのか。キットに入れる部品の選択と、目視での確認は、品目の入れ替えが多い工場ほど人に残す判断になりやすいと考えられます。キットの誤りはそのままラインへ流れるので、「誰が、どこで、何を見て正しいと判断するか」を先に決めておく必要があります。運搬の自動化は、キットを作る作業そのものを減らすものではありません。ピッキング作業の自動化まで含めるかどうかは、品目数と変更の頻度を見て別に判断する、と切り分けておくのが現実的です。

ミルクラン(定時定ルート巡回)の設計:便数・周回時間・停止点・積載量

ライン供給の自動化を進めるうえで、最も重要な中間地点がミルクランです。

LEI はミルクランを「複数の拠点で集荷・配達を行う車両のルーティングで、拠点間の物の流れを速める方法」と説明しています。トラックが満載になるのを待たずに頻繁に回ることで、バリューストリーム上の在庫と、求めに応じるまでの時間を減らせるとし、「拠点間のミルクランは、工場内のマテリアルハンドリング・ルートと概念的に同様」としています。つまり工場の中では、牽引車や台車が決まったルートを決まった時刻に回り、各ラインの停止点で部品を置き、空容器やかんばんを回収していく形になります。

ミルクランの起点になるのがスーパーマーケットです。LEI の説明では、スーパーマーケットは後工程に供給するための「あらかじめ決めた標準在庫」を置く場所で、各品目に定位置があり、運搬者は後工程が必要とする量だけを引き取ります。引き取ることでかんばんや空容器などの信号が出て、前工程が補充の生産をします。LEI によれば、トヨタが1953年にトヨタ市の機械工場で始めた仕組みで、大野耐一が米国のスーパーマーケットの写真から着想したとされています。トヨタの公式の社史では、豊田喜一郎の「自動車の部品を集めるには、ジャスト・イン・タイムが最良」という趣旨の言葉がジャスト・イン・タイムの源流とされ、1960年に全工場で実施が始まったと説明されています。

ライン供給 自動化の進め方|キッティング・ミルクランとAMRの順番 - figure 1

図のように、Before は倉庫からフォークリフトと手押し台車で「呼ばれたら運ぶ」形、After はスーパーマーケットとキッティング場所を起点に、定ルート・定時で巡回する形です。After でも、牽引車は最初は人が運転し、数字が取れてから AMR に置き換える前提にしています。

設計の4つの変数

ミルクランの設計で決める変数は、主に4つです。ここでは業界平均のような数値は使わず、考え方だけを式で示します。実際の数字は自社の計測で埋めてください。

1. 周回間隔(何分ごとに回るか)

周回間隔を短くするほど、1回に運ぶ量は少なくなり、ライン側の在庫も減ります。その代わり便数が増え、運搬者や車両の稼働が増えます。

  • 1直あたりの便数 = 1直の稼働時間 ÷ 周回間隔

2. 周回時間(1周に何分かかるか)

1周の所要時間は、走行時間と、各停止点での作業時間(置く、空容器を回収する、かんばんを回収する)の合計です。

  • 周回時間 = ルート長 ÷ 走行速度 + Σ(停止点ごとの作業時間)+ スーパーマーケットでの積込み時間

周回時間が周回間隔より長いなら、そのルートは1台・1人では回りません。ルートを分けるか、車両や人を増やす必要があります。

  • 必要な車両(または運搬者)の数 ≧ 周回時間 ÷ 周回間隔

3. 停止点(どこで止まるか)

停止点は、ライン側の棚やフローラックの補充口に合わせて決めます。停止点が多すぎると周回時間が延び、少なすぎると作業者が部品を取りに歩くことになります。停止点の位置は、通路幅や交差点との関係も含めて、レイアウト図の上で決めます。

4. 積載量(1回に何を何箱運ぶか)

1回の便で運ぶ量は、次の便が来るまでにラインが使う量を下回ってはいけません。

  • 停止点ごとの1便あたりの必要量 ≧ そのラインの使用速度 × 周回間隔 + 安全分
  • 1便の積載量 ≧ Σ(停止点ごとの1便あたりの必要量)

ここで、ライン側の上限在庫(その場所に置いてよい最大量)が決まっていないと、周回間隔を長くして楽をする方向へ運用が流れやすくなります。上限在庫は「ライン側にこれ以上置かない」という約束で、ミルクランの設計とセットで決めます。

まず人手で回す

この4つの変数は、机の上の計算だけでは決まりません。停止点での作業時間や、割込み(急ぎの部品、不良の交換)の頻度は、実際に回してみないと分からないからです。そこで、最初は人が手押し台車や手動の牽引車で定時定ルートを回し、周回時間、停止点ごとの作業時間、欠品と割込みの回数を記録します。この記録が、後で AMR を入れるかどうかを判断するための数字になります。

信号の仕組み:かんばん・呼び出しボタン・システム指示

量と時刻が決まったら、次は「何を補充するか」を誰がどう知らせるか、つまり信号を決めます。信号には大きく3つの形があります。

かんばん(カード・空箱)

トヨタ生産方式で使われてきた形です。運搬者が巡回のたびにかんばんを回収し、それに応じてスーパーマーケットから部品を引き取ります。2ビンかんばんのフローラックでは、前述のとおり、空になった箱を戻すこと自体が補充信号になります。電気も通信も要らず、仕組みが目に見えるのが長所です。定時・不定量運搬(ミルクラン)と相性がよい形です。

呼び出しボタン(コール)

ライン側の作業者が、部品が所定の水準まで減ったらボタンを押して運搬を呼ぶ形です。LEI の「コールパーツ」(在庫水準をきっかけにした定量・不定時運搬)にあたります。品目が少なく、使用量の変動が大きい部品に向きます。ただし、ボタンが押されるたびに運ぶ運用にすると、元の「呼ばれたら運ぶ」状態に戻ってしまいます。呼び出しを次の定時便に載せるのか、臨時便を出すのかのルールを先に決めておく必要があります。フォークリフトの呼び出しと配車の考え方はフォークリフト 呼び出しシステム|配車PoC・RFP設計も参考になります。

システム指示(生産計画・MES/ERP との連携)

生産計画や生産実績から、必要な部品と時刻をシステムが計算し、運搬者や車両に指示を出す形です。順序供給ではほぼ前提になります。たとえば Hikrobot は、上位ソフト「RCS 2000」が MES/ERP と同期しながら複数のロボットの協調を制御し、自動車工場のジャスト・イン・タイムの供給を支えると説明しています(ベンダーの主張です)。

紙のかんばんをバーコードや無線の信号に置き換える「電子カンバン」は、かんばんとシステム指示の中間にあたります。信号の仕組みの詳細と、導入時の PoC の進め方は電子カンバン導入|タイ工場のRFP・90日PoC・受入設計で解説しています。この記事で強調したいのは、信号の形は搬送手段より先に決めるということです。信号が紙のかんばんのままでも、ミルクランは回ります。逆に、車両だけ AMR にしても、信号が「誰かが電話で呼ぶ」状態のままなら、AMR は呼ばれたら運ぶ車になるだけです。

搬送手段の選び方:手押し台車・牽引車・AGV・AMR・コンベヤ搭載AMR

ここまで決めてから、ようやく搬送手段を選びます。主な選択肢と、その向き不向きを整理したのが次の表です。製品例はメーカーの公表値で、網羅したものではなく、特定の製品を推奨するものでもありません。

搬送手段向く場面注意点製品例と公表値(メーカー公表)
手押し台車短い距離、少ない便数、試行段階のミルクラン重量物や長距離では作業者の負担が大きい—
手動の牽引車(人が運転)台車を連結して複数ラインを巡回するミルクラン運転者の訓練と、歩行者との交差の管理が要る—
自動牽引車(タガー型 AGV/AMR)定ルートで複数の台車をまとめて運ぶ、距離の長いルート台車の連結・切離しを誰がどこでするか、連結時の旋回の幅Seegrid Tow Tractor S7:最大牽引 10,000 lbs、最高自動走行速度 4 mph。Linde P-MATIC:牽引荷重 3,000〜5,000 kg
台車・パレット搬送 AMR(潜り込み型・リフト型など)台車やパレットを1台ずつ運ぶ、ルートの変更が多い場所1台あたりの積載が限られるので、便数が多いと台数が増えるOmron MD-650:可搬 650 kg・最高 2.2 m/s。MD-900:900 kg・1.8 m/s。MiR250:可搬最大 250 kg・最高 2 m/s。MiR1200 Pallet Jack:可搬 1,200 kg、最小通路幅 2,350 mm
コンベヤ搭載 AMR棚や設備とコンベヤで箱を受け渡す場所受渡しの高さ・位置・タイミングの取り決めが要るOTTO 1500:コンベヤとリフトのアタッチメントを用意

いくつか補足します。

  • Seegrid Tow Tractor S7 は、メーカーの説明では台車列を連結して牽引する車両(パレットを持ち上げる車両ではありません)で、3D コンピュータビジョンとセンサーフュージョンで走行し、用途の筆頭に「組立ステーションへの部品供給(parts-to-line)」を挙げています。ANSI/ITSDF B56.5-2019、ANSI B11.0、UL 583 の認証をうたっています。
  • Linde P-MATIC は、メーカーの説明では床の誘導線や反射板が要らない「インフラなしナビゲーション」で、レーザーとカメラで障害物を検知して速度を制御するとしています。用途に「生産材料の供給」と「廃材の回収」を挙げています。走行速度は技術データ上「8/8 (max. 7.2/-) km/h」と表記されており、どの条件の値かはメーカーに確認するのが確実です。
  • Omron MD シリーズ は、MD-650 と MD-900 のいずれも稼働時間を10時間(無負荷)/8時間(満載)とし、用途に「ラインサイド補充」「ラインサイド配送」を挙げています。準拠規格として EN ISO 3691-4、ANSI/RIA R15.08 などを示しています。
  • KUKA は、2026年2月の業界メディアの記事によると KMP シリーズを拡充し、KMP 250P(250 kg)から KMP 3000P(3 t)までをそろえ、SLAM と QR コード/ライン追従を切り替えられるとしています。
  • Hikrobot は、潜り込み型 LMR で可搬最大 1,500 kg をうたっています。
  • パナソニック コネクト は2023年8月に、基板実装ライン向けの AMR 試作機(可搬最大 500 kg、通路幅 1,250 mm 対応、搬送速度 毎秒1 m)を発表しました。リール部品やフィーダーの供給用で、他社製 AMR との群制御で「鉢合わせ」による効率低下を解決する設計とされ、当時は2024年度に製品化する予定とされていました。電子部品の実装工場では、こうした用途特化の選択肢も検討対象になります。

AGV と AMR の違いは、一般に、AGV が床のテープや磁気などの決まった経路を走り、AMR が地図と周囲のセンサーで経路を自分で選ぶ、と説明されます。ただし、上の例のように1つの製品がナビゲーション方式を切り替えられるものもあり、名前だけで線を引くのは難しくなっています。ライン供給では、ルートが固定されたミルクランなら決まった経路の走行で十分なことが多く、ルートや停止点の変更が多い場所では経路を柔軟に変えられる方式が向く、という程度の整理で考えるのが実務的です。

車両の種類ごとの詳しい比較は、牽引型については牽引式AGVとは|台車混載の巡回ルート設計・便数・費用相場を解説、コンベヤ搭載型についてはコンベヤ搭載 AMR導入|受渡し仕様と90日PoC設計、システム全体の構築の進め方はAGV システム構築ガイド2026|タイ工場のRFP・設計・導入で解説しています。

5つの決定を順番に進める

ここまでの内容を、決める順番として並べ直します。

ライン供給 自動化の進め方|キッティング・ミルクランとAMRの順番 - figure 2
  1. 供給方式:品目ごとに、ライン側在庫・キッティング・順序供給のどれに入れるかを決める。部品表と生産の品種構成から決まる。
  2. 量と時刻:周回間隔、容器の大きさ(1箱に何個入れるか)、ライン側の上限在庫を決める。1の方式が決まらないと、何をどの単位で運ぶかが決まらない。
  3. 信号:かんばん、呼び出しボタン、システム指示のどれで補充を知らせるかを決める。2で時刻が決まっていないと、定時便に載せるのか臨時便を出すのかが決まらない。
  4. ルートとレイアウト:スーパーマーケットとキッティング場所の位置、定ルート、停止点、通路幅、交差点を決める。ここまでで人手のミルクランが回せる。
  5. 搬送手段:手押し台車、牽引車、AGV、AMR のどれで運ぶかを、ルートごとに決める。

図の注記のとおり、1〜4は主に設計作業で、設備投資の大半は5に入ります。順番を逆にして5から始めると、車両の仕様に合わせて方式やルートを後から曲げることになり、投資の割に効果が出にくくなります。もう一つの利点は、1〜4を決めた段階で、人手のミルクランを回して数字を取れることです。どのルートの周回時間が長く、どこで割込みが多いかが分かれば、5で自動化するルートを選ぶ根拠になります。

事例に見る効果の出方

ベンダーが発表した事例を3つ紹介します。いずれもタイの事例ではなく、ベンダーの発表に基づく数字で、第三者の検証はありません。工場の規模や条件が違うので、自社の効果の見込みとして読み替えないでください。

DENSO(米国テネシー州アセンズ):2023年2月28日の記事によると、80万平方フィートの工場で MiR250 を6台稼働させ、新規ビジネス向けに MiR500 を5台購入しました。導入前は作業者が1日最大12マイル歩き、時間の約60%を台車押しに費やしていたとされます。投資回収は1年以内、6か月以内に手作業の運搬者を6人分削減したと発表されています。米国の1工場の事例です。

FAW-Volkswagen 仏山工場(中国):インドの業界メディアの記事によると、166万 m²、日産2,400台の工場に Hikrobot の LMR を47台導入し、作業負荷30%減、出庫精度100%、オンタイム供給100%を達成したとされています。中国の1工場についてのベンダー発表値で、一般的な効果を示す数字ではありません。

Opel Wien(オーストリア・アスペルン):Linde のケーススタディによると、エンジン・トランスミッション工場(工場面積150,000 m²)で、Linde P-MATIC による全自動のタガートレインを組立供給に導入しました。搬送距離は最長1.5 km、工場は平均で毎分2台の乗用車トランスミッションを生産しています。既存のプロセスや建屋のインフラに手を入れずに導入でき、各車両が全ルートの「仮想マップ」を持ち、歩行者には床に投影した青いライトの矢印で接近を警告するとされています。人員やコストの効果の数値は示されていません。

3つの事例から読み取れるのは、効果が語られているのが主に運搬の作業そのものだという点です。DENSO の事例で導入前の状態として挙げられているのは歩行と台車押しの時間、FAW-Volkswagen の事例は作業負荷と供給の正確さ、Opel Wien の事例は長い距離の定ルートでの組立供給です。自社で同じ効果が出るかは、現状の歩行距離と運搬の時間を測らないと分かりません。前章で「まず人手で回して数字を取る」と書いたのはそのためです。

安全:ISO 3691-4 などの規格と、人とすれ違う通路での運用

ライン供給の車両は、作業者やフォークリフトと同じ通路を走ることが多く、安全の設計が欠かせません。

ISO 3691-4:2023 は、無人産業車両とそのシステムの安全要求事項と検証手段を定める規格です。スウェーデン規格協会が掲載する EN 版(SS-EN ISO 3691-4:2023)の概要では、対象の例として「automated guided vehicle」「autonomous mobile robot」「bots」「automated guided cart」「tunnel tugger」「under cart」が挙げられています。作業者の操作で開始する自動モードや、手動モード、保守モードを持つ車両にも適用されます。一方、レールなどの機械的なガイドだけで走る車両と遠隔操作の車両は適用外で、電源の要求事項も対象外とされています。

ANSI/A3 R15.08 は、産業用移動ロボット(IMR)の米国規格です。Design World の記事によると、Part 1(ANSI/RIA R15.08-1-2020)は2020年末に IMR のメーカー向けに発行され、Part 2(R15.08-2-2023)は2023年10月に、IMR とフリートを現場に統合・設定する際の要求事項(作業ステーションや充電ステーションとのやり取り、運用環境)を定めるシステムインテグレーター向けとして発行されました。ユーザー向けの Part 3 は、委員会が策定する予定とされています。

ISO 10218-1:2025 は産業用ロボットの本質安全設計とリスク低減を定める規格で、エストニア規格協会が掲載する EN 版(2025年4月1日)の概要では、無人産業車両や移動プラットフォームに固定・組み込まれたロボットの「移動(mobility)」には適用されないとされています。アーム付きの移動ロボットを検討する場合は、どの部分にどの規格を当てて安全を確認するのかを、供給者に確認しておく必要があります。

タイの規制:Enviliance ASIA の解説によると、労働省の「機械・クレーン・ボイラーに関する労働安全衛生環境の管理基準省令 B.E.2564(2021)」が2021年8月6日に官報に掲載され、90日後に施行されました。第1章の「機械」にはプレス機、溶接機、フォークリフト、リフトなどが含まれ、雇用主に運転者の訓練、文書による作業手順、使用前点検を求めています。同解説の本文には、自動搬送車や AMR への言及はありませんでした。適用の有無は、労働安全の担当や専門家に確認してください。

運用面では、次の点を設計段階で決めておきます。

  • 歩行者とのすれ違い:車両の走行エリアと歩行者の通路を分けるのか、共用にするのか。共用なら、どの速度で走り、どこで止まるのか。
  • 交差点と死角:棚の角やラインの端など、見通しの悪い場所での速度と警告の方法。
  • 停止点での作業:作業者が台車を出し入れする場所で、車両がどう待機するか。
  • フォークリフトとの混在:同じ通路を走る場合の優先順位。

車両の安全センサー、特に安全レーザースキャナの検知範囲の設定は、通路の幅と速度に直結します。選定と設定の考え方は安全レーザースキャナの選定|タイ工場の現場確認から検収までで解説しています。

費用のモデル試算(仮の数字)

ここでは、方式の改善だけを行う案と、そこに AMR を上乗せする案を、同じモデルで比べます。以下の数字はすべてこの記事のために置いた仮の数字で、実在の工場の数字でも、製品の価格でもありません。 実際に検討するときは、現状の便数・歩行距離の計測と、供給者からの見積で置き換えてください。

モデルの前提

  • 組立ライン6本のエリア。現状は倉庫からフォークリフトと手押し台車で「呼ばれたら運ぶ」供給。
  • 供給担当は1直あたり6人 × 2直 = 12人。
  • 1人あたりの年間人件費(賞与・社会保険等込み)は 220,000 THB と仮置き。この数字は、後述する最低賃金などの公表値から計算したものではなく、試算のための仮置きです。
  • 通貨は THB。
項目現状案1 方式の改善のみ(スーパーマーケット+キッティング+人手の牽引車でミルクラン)案2 案1+最も長い2ルートを牽引型AMR 2台で自動化
供給担当の人数12人(6人×2直)8人(4人×2直)4人(2人×2直)
初期投資(一時費用)—900,000(棚・キット台車・手動牽引車・表示)4,500,000(案1の900,000+AMR2台・呼び出しシステム・連携3,600,000)
年間の保守費——180,000
現状比の年間純効果—4×220,000=880,0008×220,000−180,000=1,580,000
単純回収年数—900,000÷880,000≈1.0年4,500,000÷1,580,000≈2.8年

計算の中身

参考として、現状の供給担当の人件費は 12×220,000=2,640,000 THB/年です。

案1:供給担当が12人から8人になるので、減るのは4人です。年間の効果は 4×220,000=880,000 THB。初期投資 900,000 THB を割ると、900,000÷880,000≈1.0年で回収します。

案2:供給担当が12人から4人になるので、減るのは8人です。人件費の効果は 8×220,000=1,760,000 THB、ここから AMR の年間保守費 180,000 THB を引いて、年間純効果は 1,760,000−180,000=1,580,000 THB。初期投資 4,500,000 THB を割ると、4,500,000÷1,580,000≈2.8年です。

AMR の上乗せ分だけを見る

案2の回収年数 約2.8年には、案1の効果が含まれています。AMR を入れるかどうかを判断するには、案1から案2へ進むときの「上乗せ分」だけを見る必要があります。

  • 追加投資:4,500,000−900,000=3,600,000 THB
  • 追加で減る人数:8人−4人=4人(2人×2直)
  • 追加効果:4×220,000−180,000=700,000 THB/年
  • 上乗せ分の回収:3,600,000÷700,000≈5.1年(2直の場合)

感度(同じモデルで3直稼働の場合、AMR の上乗せ分のみ):AMR は直の数に関係なく走れるので、減らせる人数は 2人×3直=6人になります。追加効果は 6×220,000−180,000=1,140,000 THB/年、上乗せ分の回収は 3,600,000÷1,140,000≈3.2年です。

ライン供給 自動化の進め方|キッティング・ミルクランとAMRの順番 - figure 3

試算の読み方

  • このモデルでは、効果の大半は方式の改善(案1)で出ます。案1は約1.0年で回収します。
  • AMR は、案1を回して数字が取れたルートに上乗せする判断になります。上乗せ分の回収は、2直なら約5.1年、3直なら約3.2年です。稼働する直の数、ルートの長さ、人の採用の難しさで判断が変わります。
  • 人件費の効果は、減った人員を欠員の補充や他の工程へ配置転換できた場合に初めて実現します。この試算は解雇を前提にしていません。配置先がないまま人数だけを減らす計画にすると、試算どおりの効果は出ません。

この試算に入れていないもの

欠品による停止の減少、ライン側在庫の削減による床面積の確保、誤品の減少は、この試算に入れていません。いずれも効果が出る可能性はありますが、金額に換算する前提が工場ごとに大きく違い、人件費の効果と重なって二重に数える恐れがあるためです。過大評価を避けるため、ここでは人数の変化と保守費だけで計算しています。また、AMR の電池交換などの更新費、ソフトのライセンス更新、社内の教育時間も含めていません。複数年の総保有コスト(TCO)の考え方は無人搬送車 価格の決め方|AGV・AMRの5年TCOで解説しています。

RFP(発注仕様)に書く項目

ライン供給の自動化を供給者に見積依頼するときは、車両の仕様だけでなく、1〜4で決めた設計を前提条件として渡します。最低限、次の12項目を RFP に書いておくと、見積の比較がしやすくなります。

No.項目書く内容の例
1対象ルートと範囲自動化するルート、停止点の数と位置、スーパーマーケットとキッティング場所の位置(レイアウト図を添付)
2供給方式品目ごとのライン側在庫・キッティング・順序供給の区分
3量と時刻周回間隔、1便あたりの積載量、ライン側の上限在庫
4運ぶもの台車・容器・パレットの寸法と重量、連結の方法
5信号との連携かんばん、呼び出しボタン、上位システム(MES/ERP)とのやり取りの範囲
6床と通路通路幅、床の状態(段差、継ぎ目、傾斜)、交差点、扉やシャッター
7人・フォークリフトとの混在共用通路の有無、優先順位、速度の制限
8安全準拠を求める規格(ISO 3691-4 など)、リスクアセスメントの分担、警告表示
9稼働条件稼働する直の数、充電の方法と場所、停電・通信断のときの動作
10異常時の運用欠品・割込み・障害物・車両の故障のときの手順、手動への切替
11受入試験FAT/SAT の項目と合否の基準(次章)
12保守と教育保守の範囲と対応時間、予備部品の在庫、タイ語での教育と表示

このうち、5と10は見積の比較で抜けやすい項目です。上位システムとの連携を「別途」とする見積と、「含む」とする見積では、金額の比較が意味をなさなくなります。

受入試験(FAT/SAT)と立ち上げ90日

ライン供給の車両は、通常の状態で走ることを確かめるだけでは不十分です。現場で実際に起きる乱れを、わざと起こして確かめます。

わざと起こす試験

  • 欠品:スーパーマーケットに部品がない状態で呼び出しが来たら、車両と運搬者にどう伝わるか。
  • 割込み:定時便の途中で急ぎの部品の呼び出しが来たら、どう扱われるか。
  • 交差:交差点で歩行者やフォークリフトと鉢合わせしたら、どこで止まり、どう再開するか。
  • 通信断:無線が途切れたら、車両はその場で止まるのか、決めた場所まで進むのか。復帰後に指示は重複しないか。
  • 電池切れ:電池が残り少なくなったら、作業の途中でも充電に向かうのか、そのとき運んでいた台車はどうなるか。
  • 容器違い:決まった寸法と違う容器や台車が置かれたら、検知して止まるのか、そのまま運んでしまうのか。

工場の床、照明、無線の環境は供給者の工場とは違うので、FAT(工場での受入試験)で確かめた項目も、SAT(現場での受入試験)でもう一度確かめます。

立ち上げ90日の進め方

立ち上げ後の90日は、最初から全ルートを自動化するのではなく、段階を踏むと問題の切り分けがしやすくなります。

  • 前半:自動化したルートでも、人の運搬を並行して残し、車両が止まったときに供給が途切れないようにする。停止の回数と理由を記録する。
  • 中盤:停止の理由ごとに対策を打つ(床の補修、停止点の位置の調整、呼び出しのルールの見直し)。人の並行運用を段階的に減らす。
  • 後半:周回時間、欠品と割込みの回数を、人手のミルクランで取った数字と比べる。効果が確認できたら、次のルートの自動化を検討する。

空になった容器を回収する流れも、立ち上げで詰まりやすい場所です。空箱回収の自動化については空箱 回収 自動化ガイド|タイ工場のRFP・FAT/SATで解説しています。

タイ・ASEAN 固有の論点

暑さ・湿度と床

暑さと湿度は、電池の性能、センサー、床の状態に影響する可能性があります。供給者には、カタログの使用温度・湿度の範囲と、実際の工場の環境(特に空調のない倉庫側)を突き合わせて確認します。床のひび割れや段差、継ぎ目は、車両の走行と積荷の安定に影響するので、ルートの床を事前に調べ、補修の費用を見積に入れておきます。

雨季の屋外通路

倉庫と組立棟が別棟で、屋根のない通路を通るルートがある場合、雨季の雨や水たまりで車両が走れなくなる恐れがあります。屋外を走れるかどうかは製品ごとに違うので、メーカーに確認します。屋外区間を含むルートは、最初の自動化の対象から外し、人手のミルクランで続ける判断もあり得ます。

多言語の表示と教育

作業者がタイ語、ミャンマー語、カンボジア語など異なる言語を使う工場では、かんばん、停止点の表示、車両の警告、異常時の手順書を、文字だけに頼らない形(色、絵、記号)にしておくと伝わりやすくなります。車両の操作画面の言語も確認項目です。

賃金・採用

民間の解説サイトによると、タイの日額最低賃金は県によって337〜400バーツで、2026年7月1日付の Notification No. 14 で再確認されたとされています。同じ解説では、社会保険基金の算定賃金の上限が2026年1月1日から月15,000バーツから17,500バーツへ引き上げられ、従業員福祉基金が2026年10月1日に始まり、従業員10人以上の雇用主が対象で、労使とも賃金の0.25%を拠出するとされています。いずれも官報の原本ではなく民間の解説による情報です。前述の試算の 220,000 THB は、これらの数字とは関係のない仮置きです。人件費の上昇が自社の試算にどう効くかは、自社の給与データで確かめてください。

保守部品と対応体制

車両が止まったとき、交換部品がタイ国内にあるか、海外から取り寄せるのかで、復旧までの時間が変わります。予備部品をどこに何個置くか、現地で誰が一次対応するかを、契約の段階で決めておきます。なお、MiR は2024年6月にタイの新しいパートナーとして Sonic Automation を発表しており、メーカーによってタイ国内の販売・サポート体制は異なります。

BOI 特典の対象の確認

Tilleke & Gibbins の解説によると、BOI 告示 No. 4/2569(2026年3月31日官報掲載)は、一般自動車製造(カテゴリー3.6)と PHEV/HEV 製造(カテゴリー3.8)の事業に限って、自動化・ロボットシステムへの投資額について法人税の50%免除を3年間認めるものです。自動化機械の総額の少なくとも30%がタイ国内の自動化機械製造業に関連・支援するものであれば、免除は100%に引き上げられ、機械の輸入関税の免除もあります。要件として、投資額100万バーツ以上(土地・運転資金は対象外)、現在法人税の免除を受けていないこと、製品開発計画を含むことなどがあり、申請期限は2027年末とされています。この告示は全業種向けではありません。電子部品工場など、カテゴリー3.6・3.8に当たらない工場が同じ条件を使えるとは書かれていないので、対象になるかどうかは BOI に確認してください。

よくある質問

ライン供給とは?工程間搬送 自動化との違いは?

ライン供給は、組立ラインの横まで部品を、決まった量・決まった時刻に届ける仕組みです。工程間搬送は、ある工程の仕掛品を次の工程へ運ぶ流れで、ライン供給より広い言葉です。工程間搬送の自動化では、前後の設備の受渡しや仕掛品の滞留が主な論点になり、ライン供給の自動化では、供給方式・量と時刻・信号の設計が主な論点になります。

キッティングとライン側在庫はどちらがよい?

品目と生産形態によります。品種が少なく同じ部品を繰り返し使うならライン側在庫、品種が多く機種切替が頻繁ならキッティングが候補になります。ルンド大学 LTH の修士論文の要旨では、キッティングが生産停止時間でラインストッキングを上回り、機種切替が頻繁な場合に顕著だったとされていますが、企業名やサンプル数は示されていない1件の研究です。1本のラインの中でも、部品ごとに使い分けるのが普通です。

工場のミルクランで便数はどう決める?

1直の稼働時間を周回間隔で割ったものが1直あたりの便数です。周回間隔は、ライン側の上限在庫と、1便で運べる量から決めます。1周の所要時間が周回間隔より長ければ、そのルートは1台・1人では回らないので、ルートを分けるか、車両や人を増やします。最初は人手で回して、周回時間と停止点ごとの作業時間を測ってから決めるのが確実です。

AGVとAMRはライン供給でどう使い分ける?

ルートが固定されたミルクランで台車をまとめて運ぶなら、牽引型の車両が候補になります。台車やパレットを1台ずつ運び、ルートや停止点の変更が多い場所なら、地図とセンサーで経路を選べる AMR が向きます。ただし、ナビゲーション方式を切り替えられる製品もあり、名前だけでは線を引きにくくなっています。運ぶもの、便数、ルートの変更の頻度で選びます。

部品供給 自動化の費用はどのくらい?

AMR やシステムの価格は、規模や連携の範囲で大きく変わるため、一般的な相場はこの記事では示していません。この記事のモデル試算(仮の数字)では、方式の改善のみの案1が初期投資 900,000 THB で約1.0年、AMR を上乗せする案2が 4,500,000 THB で約2.8年、AMR の上乗せ分だけでは2直で約5.1年という結果でした。実際の費用は、現状の計測と見積で確かめてください。

工場の搬送効率化を小さく始めるには?

車両を買う前に、1本のルートで人手のミルクランを始めるのが小さな始め方です。スーパーマーケットの定位置、周回間隔、停止点、かんばんか呼び出しボタンかを決め、手押し台車か手動の牽引車で回します。周回時間、欠品と割込みの回数を記録し、効果が出たルート、特に距離が長く便数が多いルートから自動化を検討します。

キッティング 自動化はどこまで機械に任せられる?

キット台車の運搬は、運ぶ単位がそろっていれば牽引車や AMR に任せやすい部分です。一方、キットに入れる部品の選択と確認は、品目の入れ替えが多い工場ほど人に残す判断になりやすいと考えられます。キットの誤りはそのままラインへ流れるので、誰がどこで確認するかを先に決めてから、運搬の自動化を進めます。

まとめ

ライン供給の自動化は、車両を選ぶことから始めると、車両の仕様に合わせて方式やルートを後から曲げることになり、投資の割に効果が出にくくなります。先に、品目ごとの供給方式(ライン側在庫・キッティング・順序供給)を決め、周回間隔と容器の大きさとライン側の上限在庫を決め、かんばん・呼び出しボタン・システム指示のどれで補充を知らせるかを決め、スーパーマーケットとルートと停止点をレイアウト図の上で決める。ここまでは主に設計作業で、人手のミルクランで回して数字を取ることができます。そのうえで、効果が確認できたルートから、牽引車や AMR で自動化します。

モデル試算(仮置き)では、効果の大半は方式の改善で出て、AMR の上乗せ分の回収は、2直なら約5.1年、3直なら約3.2年という違いが出ました。稼働する直の数、ルートの長さ、人の採用の難しさで判断が変わります。そして人件費の効果は、減った人員を配置転換できて初めて実現します。だからこそ、まず人手で回して、自社の数字で判断することが出発点になります。

TOMAS TECH では、タイの工場の生産形態とレイアウトに合わせて、ライン供給の設計と自動化の検討をお手伝いしています。車両や方式が決まっていない段階、たとえば現状の供給ルートと便数を棚卸しする段階や、ミルクランの試行を設計する段階でもご相談いただけます。お問い合わせはこちらのフォームからどうぞ。

参考情報