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2026.10.16

工場の温度センサー選定|熱電対とPt100、保護管・校正とRFP

工場の温度センサー選定|熱電対とPt100、保護管・校正とRFP

はじめに:工場の温度センサー選定で先に決める3つのこと

工場の温度センサー選定は、カタログで「熱電対K、クラス2」や「Pt100、クラスA」を選べば終わる作業に見えます。ところが現場では、「カタログ上はクラスAなのに、隣の温度計と値が合わない」「断線したのに0℃や上限値がそのまま記録に残っていた」「監査で校正周期の根拠を聞かれて答えられなかった」といった悩みがよく聞かれます。

タイの生産環境にも触れておきます。ロイター配信を掲載したThe Star(2026年9月30日)によると、タイ工業省が発表した2026年8月の製造業生産指数(MPI)は前年同月比4.44%増で、ロイター調査の予想(1.0%増)を上回りました。ただし工業経済局(OIE)局長は、MPIの算出方法を改定し、新しい電子製品を加えてウェイトを変えたと説明しています。前年の数字と単純に比べられない点に注意が必要です。Trading Economics(2026年9月30日)によると、工業省は2026年の工場生産の伸び見通しを従来の0.0〜0.5%から2.75〜3.55%に引き上げました。一方で同社の2026年10月2日の記事によると、タイの景況感指数(Business Sentiment Index)は9月に48.1(8月は49.8)で、9か月連続で50を下回りました。限られた予算で「温度記録が信頼できる」という品質の根拠を固めたい工場は多いと考えます。

本記事では、工場の温度センサー選定で先に決めるのは「カタログのクラス」ではなく、次の3つだと考えます。

  1. 何の温度を、どの範囲・どの速さで知りたいか:温度域・応答・設置条件から、熱電対か測温抵抗体か、どの型式と構造かを絞り込む。
  2. 測定点の誤差は測定チェーンで考える:素子や素線のクラスの許容差に、保護管・挿入長・配線・伝送器・経年ドリフトの誤差が重なる。
  3. RFPに書き、FAT/SATで確かめる:保護管の強度計算、故障信号(NAMUR NE43)、診断、校正周期の決め方を仕様書に書き、工場出荷試験(FAT)と現地受入試験(SAT)で確かめる。

工場で使うセンサー全体の選び方は「工場のIoTセンサー種類2026」で整理しています。本記事は、設備・配管・炉・金型・タンクに取り付けるプロセス用の接触式温度センサーに絞ります。

工場の温度センサーの種類:熱電対と測温抵抗体

プロセス用の接触式温度センサーは、大きく熱電対と測温抵抗体に分かれます。

熱電対は、2種類の金属線を組み合わせ、温度差で生じる起電力から温度を求めます。計測器メーカーのグラフテックの技術資料によると、計測器は基準接点補償(冷接点補償)の機能で接続部の温度を認識し、測温接点の温度を求めます。延長には熱電対の種類に合った補償導線を使い、熱電対と補償導線の接続部に温度差があると正確に計測できない、と同社は説明しています。

測温抵抗体は、白金などの抵抗値が温度で変わる性質を使います。代表的なのは白金測温抵抗体のPt100です。IEC 60751:2022の公式プレビューによると、この規格の適用範囲は−200〜+850℃の工業用白金測温抵抗体と白金抵抗素子です。

使い分けについて、デンマークのセンサーメーカーSenmaticは、測温抵抗体は通常−50〜600℃で使い、熱電対はさらに高温まで使えること、測温抵抗体は一般に熱電対より安定性が高いことを説明しています。JUMOは、測温抵抗体は熱電対より精度と分解能が高いと説明しています。

なお、制御器側の選び方は「温度調節器の選定ガイド」で扱っています。また、はんだ付けの炉内プロファイルは「リフロー温度プロファイル管理の導入」、冷凍倉庫の監視は「冷凍食品倉庫の温度監視システム導入」の領域とし、本記事では対象外とします。サーモカメラなどの非接触式も対象外です。

熱電対と測温抵抗体(Pt100)の違い

両者の違いを、本記事で確認できた資料の範囲で表にまとめます。応答時間は構造と試験条件で大きく変わるため、型式どうしの単純な比較はしません。

観点熱電対測温抵抗体(Pt100)
測る原理温度差で生じる起電力白金の抵抗値の変化
温度域の目安測温抵抗体より高温まで使える(Senmatic)通常−50〜600℃(Senmatic)。規格の適用範囲は−200〜+850℃(IEC 60751:2022)
精度の考え方素線の許容差クラス(クラス1・2)。IEC 60584-1/JIS C 1602:2015を引用した資料の値許容差クラス(AA・A・B・C)。IEC 60751(2008年版)に基づくメーカー資料の値
配線補償導線と冷接点補償が必要。接続部の温度差が誤差になる2線式・3線式・4線式。導線の抵抗が誤差になる
使用中の変化素線の不均質が不確かさの大きな要因で、卑金属熱電対では使用中に急速に悪化しうる(NPL)一般に熱電対より安定性が高い(Senmatic)
規格IEC 60584-1:2013、補償導線はIEC 60584-3:2021、MI熱電対はIEC 61515:2016IEC 60751:2022(2008年版を置換)

本記事では、測温抵抗体の範囲に収まり精度と安定性を重く見るならPt100、それを超える高温なら熱電対を候補にし、どちらでも「クラス」だけでは測定点の誤差は決まらない、と考えます。

熱電対の種類と選び方

IEC 60584-1:2013の公式要旨によると、この規格はR、S、B、J、T、E、K、N、C、A形の基準関数と許容差を定めています。第3版ではK形の多項式の範囲を1300℃までに制限し、附属書Cで各形の使用上限温度と環境条件の手引を示しています。

K・J・N・Tの許容差は次のとおりです。英国の熱電対メーカーTC Directは、IEC 60584-1が定める「センサー製造に使う熱電対素線の出力許容差」としてこの値を掲載しています。グラフテックの技術資料もJIS C 1602:2015としてKとTの値を掲載しており、KとTのクラス1・2は2つの資料で一致します。

種類クラス1クラス2確認した資料
K−40〜+375℃:±1.5℃/+375〜+1000℃:±0.004·t−40〜+333℃:±2.5℃/+333〜+1200℃:±0.0075·tTC Direct、グラフテック
J−40〜+375℃:±1.5℃/+375〜+750℃:±0.004·t−40〜+333℃:±2.5℃/+333〜+750℃:±0.0075·tTC Direct
NKと同じ値Kと同じ値TC Direct
T−40〜+125℃:±0.5℃/+125〜+350℃:±0.004·t−40〜+133℃:±1℃/+133〜+350℃:±0.0075·tTC Direct、グラフテック

表中のtは、符号を考えない温度(℃)の値です。式から計算すると、Kのクラス1は1000℃で±4.0℃(0.004×1000)、クラス2は500℃で±3.75℃(0.0075×500)、1200℃で±9.0℃(0.0075×1200)です。クラス1の境界375℃では0.004×375=1.5℃となり、一定値の±1.5℃とつながります。グラフテックの資料は「クラス1は高価。一般的にはクラス2が使用されます」と記述しています。

型式の選び方では、使用中の変化も見ます。米国メーカーTempcoの資料DE18は、種類別のドリフト傾向として、Kは高温で中〜高、NはKより低ドリフトでKの安定した代替としてよく選ばれる、Jは鉄の酸化・錆・脆化、Tは低温で低ドリフトだが高温で銅が酸化、RとSは汚染や粒成長が起きる、と説明しています。

配線では、熱電対の種類に合った補償導線を使います。IEC 60584-3:2021は工業プロセス用の延長導線・補償導線の識別と製造許容差を定めており、MI形の延長・補償導線は含みません。接続部の温度差が誤差になるため、グラフテックは厳密には同じ熱起電力特性の専用端子台やコネクターを推奨しています。

Pt100のクラスAとクラスB、配線方式

Pt100の許容差は、IEC 60751(2008年版)に基づくメーカー資料の値として示します。ケーブル・センサーメーカーのLappは「IEC 60751:2008が定める精度クラス」として次の値を掲載しており、JUMOの解説もクラスAとBについて同じ値です。巻線形と薄膜形で適用温度範囲が違う点に注意が必要です。

クラス許容差の式(℃)0℃100℃巻線形の範囲薄膜形の範囲
AA±(0.1+0.0017·t)±0.1℃±0.27℃−50〜+250℃0〜+150℃
A±(0.15+0.002·t)±0.15℃±0.35℃−100〜+450℃−30〜+300℃
B±(0.3+0.005·t)±0.3℃±0.8℃−196〜+600℃−50〜+500℃
C±(0.6+0.01·t)——記載なし記載なし

tは符号を考えない温度の値で、0℃と100℃の値はLappの掲載値です。式から計算すると、200℃ではクラスAが±0.55℃、クラスBが±1.3℃です。Endress+Hauser(以下E+H)のTM311技術仕様書も、Pt100クラスA・−50〜+200℃の最大誤差を0.55℃としており、式と整合します。Lappによると、クラスCは産業用の測定回路では一般的でないとされます。JUMOは、クラスBは価格とのバランスが良く産業で最も一般的、クラスAはエネルギー産業の熱媒温度などの用途、と説明しています。

次の図は、Pt100のクラスA・Bと熱電対Kのクラス1・2の許容差を式から計算し、適用範囲の中だけで描いたものです。センサー単体の許容差で、設置・配線・伝送器・経年変化による誤差は含みません。

工場の温度センサー選定|熱電対とPt100、保護管・校正とRFP - figure 1

規格の版にも注意が必要です。IEC 60751は2022年1月27日に第3版が発行され、2008年版を置き換えました。Senmaticは、2008年以降は素子だけでなく温度計全体が接続端でクラスを満たす必要があり、2022年版でも同様だと説明しています。同社は、見積依頼で今も1983年初版の仕様が流用されていると指摘しています。

配線方式は2線式・3線式・4線式があります。Senmaticによると、クラスAとAAは規格上3線式または4線式が必要です。同社はさらに、長い配線の3線式では導線抵抗の許容差のためクラスAを検証できず、2008年版のクラスA以上を満たすには4線式で発注すべきだと述べています(同社の見解)。本記事では、クラスA以上を指定するなら、配線長と合わせて3線式か4線式かを仕様で決めるべきだと考えます。

「クラス」は測定点の誤差ではない:測定チェーンで考える

ここが本記事の2つ目の柱です。クラスAやクラス1は、素子・素線、または温度計単体の許容差です。現場で読む値の誤差には、その前後の要素が重なります。

  • 保護管と挿入長:E+HのTM311設置指示によると、挿入長が短すぎるとプロセス接続部や容器壁を伝わる熱で誤差が出ます。
  • 応答の遅れ:保護管に入れると応答は遅くなります。E+HのTM311では、同じ試験条件(0.4 m/sの水中、10 Kステップ)でTipSens素子のt90が直接接触で1.5秒、6 mm保護管(4.3×20 mm)付きで3秒です。Emersonによると、従来の保護管設置の応答T90は一般に30秒〜3分の範囲です(E+Hの値とは試験条件が異なるため、両者を比べることはできません)。
  • 素子・素線の変化:熱電対の起電力は先端ではなく温度勾配のある部分で生じるため、英国国立物理学研究所(NPL)の論文要旨は、熱電的な不均質が不確かさの最も重要な要因の一つだとしています。
  • 配線:測温抵抗体では導線抵抗、熱電対では補償導線と接続部の温度差、冷接点補償が誤差の原因になります。
  • 伝送器:アナログ・デジタル変換の誤差が加わります。横河電機はYTA710の代表的なPt100のA/D精度を0.1℃と記載していますが、これは伝送器のA/D変換部の値で、センサー込みの精度ではありません。

伝送器側の誤差には打ち手があります。横河電機は、実際の測温抵抗体は個体ごとにIEC 60751の標準曲線から(許容差の範囲内で)ずれており、CM1オプションでCallendar-van Dusen(CvD)係数を入れて伝送器とセンサーの系の精度を上げられると説明しています。E+Hも、少なくとも3つの温度で校正して実際の特性を求め、CvD係数を伝送器に設定する「センサー・伝送器マッチング」を別サービスとして提供していると説明しています。

工場の温度センサー選定|熱電対とPt100、保護管・校正とRFP - figure 2

MI熱電対の規格IEC 61515:2016も、公式要旨で「仕様は納入時の新品に適用し、使用後の製品には適用しない」としています。だから選定では、測定点ごとに要求する精度を決め、測定チェーンのどこで誤差が出るかを仕様と受入試験で押さえる必要がある、と考えます。

保護管(サーモウェル)の選定と設置

保護管はセンサーをプロセスから守りますが、流れの中に突き出すため、渦による振動で破損するおそれがあります。

ASMEのページによると、ASME PTC 19.3 TW-2016(2025年に再確認、現行)は、棒材から削り出した保護管を対象とし、フランジ溶接・ねじ込み・容器や配管への溶接で取り付けるものを含みます。パイプから作った保護管、ローレットや螺旋リブなどの特殊な表面、シャンクや先端への溶接(溶射・肉盛を含む)は対象外です。取付方法や標準寸法なども範囲外です。

判定の考え方は、Emersonの白書(2014年3月)が説明しています。同社によると、日本のもんじゅで起きた保護管の疲労破損はインライン共振によるもので、1974年版はこれを考慮していませんでした。TW-2010は、周波数限界、動的応力限界、静的応力限界、静水圧限界の4つの基準で判定し、減衰を表すScruton数を新たに使います。材料の腐食・浸食は別途考える必要があります。

本記事では、周波数比などの数値を自社で判断するのではなく、RFPで「現行のASME PTC 19.3 TWに沿った強度計算書」と、その前提にした流速・圧力・温度・流体の条件を出してもらうのが現実的だと考えます。

挿入長について、E+HはTM311の設置指示で、配管では挿入長は理想的には配管径の半分としています。校正器メーカーのFlukeは、校正時の軸方向の熱伝導誤差を避ける目安として「プローブ径の20倍+感温部の長さ以上」を挙げ、径3/16インチ・感温部3/4インチなら最小4½インチという例を示しています。どちらもメーカーの設置指示や経験則で、規格値ではありません。IEC 60751:2022の目次には「最小浸漬深さ」の試験項目がありますが、その数値は本記事では確認していません。

工場の温度センサー選定|熱電対とPt100、保護管・校正とRFP - figure 3

保護管を使わない方法として、Emersonは外気側と配管表面の温度から熱伝導アルゴリズムでプロセス温度を計算するRosemount X-well Technologyを説明しています。ただし同社自身が、精度に最も効くのはプロセス温度と外気温の差であり、重要度の高くない制御用途で検討できるとしています。保護管の代わりとして常に同じ精度が出る、とは考えないほうがよいでしょう。

経年劣化(ドリフト)と交換の考え方

熱電対、とくに卑金属熱電対は使用中に特性が変わります。NPLの論文要旨によると、素線の均質性は使用中、特に卑金属熱電対で急速に劣化しうるとされます。

Tempcoの資料DE18は、Kについて次のように説明しています。200〜600℃の範囲で約1〜2℃の追加ドリフトが始まりうること、最大は約400℃付近で、急冷すると恒久的になりうること、500℃で3〜4時間保持して徐冷し再校正すれば影響を抑えられるが、600℃を超える温度にさらされると元に戻ること、です。温度帯は資料によって違うため、これはTempcoの説明として扱います。

本記事では、ドリフトへの備えとして次の3点が現実的だと考えます。

  • 高温で使う熱電対は、定期的な比較か交換の時期を、使用温度と使用時間を記録したうえで決める。
  • 重要な測定点は、別のセンサーとの比較ができるようにする。横河電機によると、YTA710はデュアル入力でセンサー故障時のバックアップ切替、平均、差温の計算ができます。
  • 熱電対は使用中に素線の均質性が劣化しうる(NPL)ため、交換を前提にした予備品の計画を持つ。

伝送器と信号:4-20 mA、NAMUR NE43、HART・IO-Link

伝送器を使う場合、4-20 mAの信号のどこを「故障」とするかを決めておく必要があります。NAMUR NE43は規格ではなくNAMURの推奨で、4-20 mAの信号範囲を区分しています。ドイツの計測器販売・校正会社ICS Schneiderの説明では、約3.8〜4.0 mAが許容される下側範囲、4.0〜20.0 mAが通常の測定範囲、20.0〜約20.5 mAが許容される上側範囲で、ダウンスケールの故障は通常約3.6 mA以下、アップスケールの故障は通常約21 mA以上です。

信号の範囲意味(NE43の区分)実装例
3.6 mA以下故障(ダウンスケール)E+H TM311は3.6 mA以下を選択可。Pyromation T71は断線・短絡時に3.6 mA以下または21.0 mA以上
3.8〜4.0 mA測定範囲の下限超え両製品とも4.0→3.8 mA
4.0〜20.0 mA通常の測定範囲—
20.0〜20.5 mA測定範囲の上限超え両製品とも20.0→20.5 mA
21.0 mA以上故障(アップスケール)E+H TM311は高側を21.5〜23 mAで設定可

実際の故障電流は伝送器と設定次第です。ICS Schneiderは例として3.5 mAや21.5 mAを挙げ、アップスケールとダウンスケールのどちらが良いかは一般論では決まらず、プラントの安全側の考え方で決まると説明しています。

アナログ値に加えて、センサーの状態や診断を上位へ渡せる通信もあります。E+HによるとTM311はIO-Linkと4〜20 mAを自動判別し、IO-Linkモードでは全故障情報をデジタルで送ります。JUMOのdTRANS T09は4〜20 mAまたはIO-Link、横河電機のYTA710は4〜20 mA+HART 7などに対応すると各社は説明しています。IO-Linkの受入設計は「IO-Link導入:センサーデータ統合と受入設計」、既設HART計器の更新は「Ethernet-APL 導入」で扱っています。

PLC/MESへの収集と故障の扱い

温度をトレーサビリティの記録に残すなら、故障信号を温度値として記録しないことが重要です。ICS Schneiderは、Pt100の配線が1本切れてPLCが上限の200℃と解釈する例を挙げ、21.5 mAを単に200℃と表示すると「センサー故障」という情報が失われる、と説明しています。同社は、PLC側の閾値を伝送器の設定と合わせること、ノイズによる誤警報を避けるために短いヒステリシスや時間による妥当性チェックを入れることが有用だとしています。

本記事では、PLCとMESの間で次の3点を決めておくべきだと考えます。

  • 故障帯の電流は、温度値ではなく「欠測」と状態コードとして記録する。
  • 測定範囲の上限・下限超えの帯は、故障とは別の状態として残す。
  • HARTやIO-Linkで取れる診断情報のうち、どれをMESに取り込むかを決める。

PLCからの収集点数と周期の決め方は「PLCデータ収集2026」、欠測の検知と受入基準は「工場センサーデータ欠測対策の導入」で扱っています。炉の温度を熱処理の加工条件記録として残す場合は「熱処理の加工条件記録システム導入」も参照してください。なお、MESでの保存粒度や保存期間の業界標準値は確認できませんでした。用途に合わせて自社で決める必要があります。

主要メーカーはどう説明しているか

主要メーカーの公開情報を、アルファベット順に機能だけ整理します。いずれも各社の説明であり、本記事は特定の製品を推奨するものではありません。試験条件が違うため、数値どうしの優劣比較もしません。

メーカー製品同社の説明(要旨)
EmersonRosemount X-well Technology外気側と配管表面の温度からプロセス温度を計算し、保護管なしで測る。3144S伝送器との組合せで最大650℃。重要度の高くない制御用途で検討可
Endress+HauseriTHERM CompactLine TM311Pt100クラスA・4線式、−50〜+200℃。IO-Linkと4〜20 mAを自動判別。4〜20 mAではNE43に従う故障情報
Endress+HauseriTHERM TrustSens TM371衛生用途向けの自己校正型測温抵抗体。118℃または39℃の基準点で自動校正し、トレーサブルな校正証明書を自動生成。4〜20 mA・HART
JUMOdTRANS T09Pt100/Pt1000(4線式)入力、4〜20 mAまたはIO-Link、両端M12、IP66/IP67/IP69。既設設備の後付け向け
PyromationT71NE43に沿った故障信号(3.6 mA以下または21.0 mA以上)、NE89に従う配線抵抗のエラー判定
YokogawaYTA710RTD・熱電対・抵抗・mV入力、デュアル入力。4〜20 mA+HART 7、BRAIN、FOUNDATION Fieldbus。CM1オプションでCvD係数を設定

TrustSensの自己校正は特定の温度点での衛生用途向けの機能で、炉や金型の温度センサーの校正が不要になるという意味ではありません。応答時間も、E+HがTM311で示す値(IEC 60751に従う0.4 m/sの水中、10 Kステップ)と、Emersonが示す「保護管設置で30秒〜3分」とは条件が違うため、比べられません。

価格は、種類・クラス・保護管(材質と強度計算の有無)・伝送器(HART/IO-Link)・校正証明の範囲で大きく変わります。上記メーカーの公式ページでは公開価格を確認できなかったため、RFPで見積を取る必要があります。

校正と校正周期の決め方

3つ目の柱は校正です。E+Hの説明では、温度計の校正には0℃の氷点などの定点を使う方法と、精密な基準温度計と比べる方法があり、温度分布の均一な校正槽か、被校正器と基準温度計を十分に挿入できる校正炉を使います。現場のセンサーでは、基準温度計との比較校正が中心になると考えます。

校正周期は、規格が決めてくれるものではありません。ISO/IEC 17025:2017は試験所・校正機関の能力・公平性・一貫した運営に関する要求事項です。再校正間隔の決め方を示すILAC-G24:2022/OIML D 10:2022は、「再校正間隔を決めて調整するための、普遍的に適用できる唯一の最善の方法は無い」としています。初期の間隔は主にリスク評価で決め、考慮する要素として、要求される不確かさ、最大許容誤差を超えるリスク、メーカーの推奨、摩耗とドリフトの傾向、使用の程度と厳しさ、環境条件、被測定量の影響(例として熱電対への高温の影響)、中間チェックの頻度と結果などを挙げています。ICS Schneiderも、DIN EN 60584は固定の校正間隔を規定していないと説明しています。

同文書は、校正結果を履歴として残して将来の間隔判断の基礎にすること、校正と校正の間に中間チェックを持つことを求めています。見直し方法は5つ示され、使用中チェックの適用例に白金測温抵抗体(暦時間法との併用)が挙げられています。

本記事では、初期の周期をリスクで決め、校正履歴と中間チェックで見直す流れを記録に残すことが、監査で周期の根拠を説明するうえで現実的だと考えます。期限の管理は「校正管理システムで防ぐタイ工場の測定器期限切れ」、証明書の測定点や不確かさの照合は「製造業の校正証明書をAI照合で管理する導入手順」で扱っています。

タイの校正インフラとして、国家計量標準機関のNIMTは温度・光計測の部門を持っています。NIMTは熱電対の校正研修を2025年5月28〜30日に実施し、冷接点補償・浸漬の影響・不均質の影響の実演や不確かさの計算を内容に含めています。また、タイ工業省系の電気電子研究所(EEI)は、2005年からタイ工業規格局(TISI)のISO/IEC 17025に基づく校正の認定を受け、温度・湿度の校正分野を持つと自社ページで説明しています。

RFPに書く項目

ここまでの内容を、温度センサーのRFP(提案依頼書)の項目に落とします。

項目RFPに書く内容
測定対象と温度域測る対象(配管・炉・金型・タンク)、通常の温度と最高・最低温度、必要な応答の速さ
型式とクラス熱電対の種類とクラス、またはPt100のクラス。許容差を引用した規格と版(例:IEC 60751は2008年版か2022年版か)
構造巻線形か薄膜形か、シース・MI構造、端子箱、素子の数(1点か2点か)
保護管と強度計算材質、プロセス接続、現行のASME PTC 19.3 TWに沿った強度計算書と前提条件(流速・圧力・温度・流体)
挿入長挿入長の根拠(配管径、設置指示)と、取付位置の図面
配線測温抵抗体は3線式か4線式か、熱電対は補償導線の種類と接続部の扱い
伝送器・信号4-20 mAの故障電流(ダウンスケールかアップスケールか、値)、HART/IO-Link、診断、CvDマッチングの要否
データ連携PLCのタグ名・スケーリング、故障帯を欠測として扱う設定、MESに取り込む診断項目
校正校正証明書の発行者、ISO/IEC 17025の認定の有無、校正の測定点と不確かさ、トレーサビリティ
予備品・交換予備センサーの数、交換手順、交換時の再校正
文書IEC 60751:2022第7章が定める「供給者が提示すべき情報」に相当する資料、取扱説明書、図面

古い版の仕様を流用しないよう、RFPでは版と配線方式をセットで書くことが重要だと考えます。

FAT/SATで確かめること

本記事では、次の項目をFAT/SATに入れることを提案します。合格ラインは、測定点ごとの要求精度に合わせて自社で決めます。

  • 比較校正:基準温度計と並べて、使用する温度域の複数の点で値を比べる。校正証明書の測定点が使用温度域を覆っているかも確認する。
  • ループチェック:伝送器から模擬信号を出し、PLCとMESで同じ温度として表示・記録されるかを確かめる。
  • 断線・短絡時の信号:センサーの配線を外し、設定どおりの故障電流が出ること、PLCとMESが温度ではなく欠測として記録し、上限・下限超えの帯と区別されることを確かめる。
  • タグ名とスケーリング:測定点の番号、タグ名、レンジが図面と一致するか。
  • 設置状態:SATで挿入長、保護管の取付、補償導線の接続部の状態を目視と記録で確認する。

よくある質問

熱電対と測温抵抗体はどちらを選ぶ?

測る温度が測温抵抗体の範囲(Senmaticによると通常−50〜600℃)に収まり、精度と安定性を重く見るならPt100、炉などの高温では熱電対が候補です。どちらでも測定チェーン全体で精度を考えます。

Pt100のクラスAとクラスBの違いは?

IEC 60751(2008年版)に基づくメーカー資料によると、クラスAは±(0.15+0.002·t)、クラスBは±(0.3+0.005·t)で、100℃ではそれぞれ±0.35℃、±0.8℃です。適用範囲は構造で違い、クラスAは巻線形で−100〜+450℃、薄膜形で−30〜+300℃です。Senmaticによると、クラスAとAAは規格上3線式または4線式が必要です。

保護管は必ず必要?

保護管を使う場合は、流れによる振動で破損するおそれがあるため、現行のASME PTC 19.3 TWに沿った強度計算書を求めます。保護管なしの方式もありますが、Emerson自身が、重要度の高くない制御用途で検討できる方式としています。

温度センサーの校正周期はどう決める?

規格で決まった周期はありません。ILAC-G24/OIML D 10:2022は普遍的な最善の方法は無いとし、リスク評価で初期の間隔を決め、校正履歴と中間チェックで見直すことを示しています。

断線したらPLCにはどう見える?

伝送器を使う場合、NE43に沿った設定ならダウンスケールは約3.6 mA以下、アップスケールは約21 mA以上の故障電流になります。故障電流をそのまま温度に換算すると、上限や下限の温度として記録されることがあるため、故障帯は欠測として扱う設定にし、FAT/SATで配線を外して確かめます。

まとめ

  • 工場の温度センサー選定で先に決めるのは、カタログのクラスではなく、①何の温度をどの範囲・速さで知りたいか、②測定チェーン全体での誤差、③保護管の強度計算・故障信号・診断・校正周期をRFPに書いてFAT/SATで確かめること、の3つだと考えます。
  • 熱電対の許容差はIEC 60584-1/JIS C 1602:2015を引用した資料の値で、素線の許容差です。Pt100の許容差はIEC 60751(2008年版)に基づくメーカー資料の値で、巻線形と薄膜形で適用範囲が違います。
  • 測定点の誤差には、保護管・挿入長・配線・伝送器・経年ドリフトが重なります。
  • 4-20 mAの故障帯(NE43では3.6 mA以下、21.0 mA以上)は温度として記録せず、欠測として扱います。
  • 校正周期は規格が決めるものではなく、リスク評価と校正の履歴、中間チェックで決めて記録します。

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参考情報