タイのダイカスト工場で「外観は合格なのに加工後に巣が現れる」「顧客が内部欠陥の証跡を求める」という相談が増えると、X線検査装置とAIの導入が候補になります。ただし、画像を自動判定できる装置を買うだけでは品質保証は完成しません。対象とする鋳巣・引け巣・介在物、許容する位置と大きさ、画像の撮り方、誤判定時の扱いを顧客と合意して初めて、検査工程が成立します。本稿は、2Dデジタルラジオグラフィ(DR)と3D CTの選び方から、タイ工場でのRFP、FAT、SAT、ショットID連携までを実務順に整理します。
先に結論:AIは欠陥候補を示し、合否基準は買い手と決める
ダイカストX線内部欠陥検査の導入順序は、①重要部位と不具合モードを決める、②顧客と合否基準を文書化する、③基準を再現できる撮影条件を作る、④AIに欠陥候補を抽出させる、⑤人が境界例を裁定し記録を残す、です。AIのスコアをそのまま「顧客承認済みの品質基準」に置き換えることはできません。合否の責任者、再撮影の条件、保留品の流れを先に決めておけば、現場の負担を減らしながら説明できる検査になります。
単一方向の透過像で必要な欠陥が見え、タクトに収まる量産ラインでは2D DRを第一候補にします。複雑な形状、重なりが多い領域、欠陥の深さや体積、肉厚など三次元情報が判断に必要ならCTを検討します。全数をCTにするか、DR全数検査とCT抜取・工程解析を組み合わせるかは、要求品質、設備能力、撮影時間、予算をサンプルで比較して決めます。NikonはDRを平面画像、CTを複数方向の投影から再構成する体積データとして説明しています。Nikonの2D DRと3D CTの説明

なぜ表面検査や工程トレースだけでは足りないのか
外観カメラはバリ、傷、湯じわなど表面に現れた状態を見る道具です。内部の空洞や異物が表面に達していなければ、原理的に外観画像だけでは判断できません。加工で薄い壁が露出した時、気密試験や耐久試験で不具合が出た時に初めて内部の問題が見つかることがあります。ここでX線が必要になるのは「すべての鋳物にX線が必須」という意味ではありません。製品の機能、顧客要求、過去の不具合、工程能力から、内部検査が必要な品種と部位を定義するためです。ASNTの放射線透過試験の解説は、X線などで部品の内部状態を可視化できる一方、形状や欠陥の向き、放射線管理に制約があることを示しています。
一方で、ショット番号や金型番号を記録するトレーサビリティは、原因調査の土台です。しかし、その記録だけで個々の鋳物の内部品質が合格だったと証明できるわけではありません。X線判定とショットIDを結び付けて初めて、どの溶湯、成形条件、キャビティ、時刻から生じた不良かを追えます。製造履歴の設計についてはタイ工場向けダイカストトレーサビリティの解説を参照してください。また、表面のAI検査との役割の違いは金属表面欠陥検査AIの記事で整理しています。本稿では、その内側をどう判定するかに絞ります。
検査対象を三つに分ける:鋳巣、引け巣、介在物
鋳巣・ガスポロシティは「点の数」だけで見ない
ガスポロシティは内部の気泡状の空隙として現れます。X線像では周囲との濃淡差で候補を探しますが、見え方は鋳物の厚み、撮影角度、線源と検出器の設定、画像処理で変わります。単純に「黒い点がいくつあるか」だけでは合否を決められません。顧客と決めるべきなのは、評価領域、最大径または面積、単位領域内の分布、端面やシール面からの距離、集合した空隙の扱いです。同じ数の空隙でも、応力の高い薄肉部と非機能部では意味が異なります。ZEISSは軽金属鋳造向けの説明で、内部の気孔やポロシティをX線で評価する対象として挙げています。ZEISSの軽金属鋳物向けX線検査
引け巣は形と位置を工程条件に戻す
引け巣は凝固収縮に関連する空隙です。丸い単独の気孔と異なり、枝分かれした不規則な形や集中した領域として見える場合があります。画像だけで原因を断定するのではなく、発生位置と金型温度、射出条件、冷却、溶湯管理などの履歴を突き合わせます。CTで三次元形状や周囲の肉厚を把握する価値が高い場面もあります。現行のASTM E1814-25は鋳物CTの用途として、ポロシティ、介在物、亀裂、引けなどの不連続部の位置確認と特徴把握を挙げています。ただし、この規格名を引用するだけで製品固有の許容値が決まるわけではありません。ASTM E1814-25の概要
介在物は「見えない」を「無い」と読まない
介在物は母材と異なる材料や密度を持つ異物で、像のコントラストも空隙とは異なります。どの材質・大きさまで検出すべきかは対象部品と撮影系に依存します。顧客が問題にするのが硬い異物による工具損傷なのか、強度上の不連続なのかで評価領域と合否が変わります。感度を確認できないままAIに「介在物なし」と表示させるのは危険です。最小検出対象を決め、実試料で見えることを確認し、「撮影不能」「判定不能」を合格と別の状態として扱います。
欠陥分類の名称も顧客図面、現場の検査記録、AI学習ラベルで一致させます。「巣」という一語でガス気孔と引け巣を混ぜると、工程改善につながるデータが失われます。逆に分類を細かくしすぎ、検査員同士が一致しない場合も役に立ちません。まず購買仕様と品質判断に必要な分類に絞り、原因解析用の詳細分類は追加の属性として保存するのが現実的です。
2D DRとCT、タイ工場の量産検査にはどちらを選ぶか
2D DRはX線が鋳物を通り、検出器に届いた投影像を読む方式です。撮影位置を固定した検査なら搬送と組み合わせやすく、複数方向からの撮影で死角を減らせます。ただし奥行き方向の情報が重なり、厚肉部や複雑な内部形状では欠陥の位置や大きさを読み違える可能性があります。「2Dで十分」とするには、対象欠陥が量産時の全姿勢で見えることをサンプルで証明する必要があります。
CTは対象を回転させながら多数の投影を撮影し、断面と体積を再構成します。重なりを分離し、欠陥の深さ、体積、表面からの距離、内部形状や肉厚を分析しやすくなります。その反面、固定、回転、再構成、データ保存に必要な時間と設備要件を含めて評価しなければなりません。Nikonのサービス説明も、DRを迅速な定常検査、CTを複雑な形状の詳細な三次元分析に向くものとして区別しています。Nikonの検査サービス
判断の実務では、同一ロットの代表良品、不良品、境界品を両方式で撮り、顧客が重視する欠陥ごとに「判定可能か」を表にします。評価軸は、欠陥検出だけではありません。位置決めの再現性、撮影と搬送を含むサイクルタイム、設備停止後の復旧、オペレーターの安全、データ容量、保守、増産時の拡張も並べます。2Dで不確かな領域だけ追加角度またはCTへ送る段階判定は、投資を抑えつつ判断根拠を増やす候補です。最終的には実ワークと買い手の基準で実証します。

AIがする仕事と、しない仕事
X線画像を扱うAIの典型的な仕事は、欠陥らしい領域の検出、領域の輪郭抽出、欠陥種類の分類、所定のルールに沿った測定値の提示です。CTでは体積データから候補領域を抽出できます。ZEISSはZADD Segmentationについて、CTデータに含まれるノイズやアーティファクトが従来の欠陥検出を難しくすること、AIで候補領域をセグメント化し、径や体積などの測定・評価に結び付けることを説明しています。ZEISS ZADD Segmentation
しかし、AIは顧客図面の意図を自動で理解しません。顧客が「シール面から一定距離内は不可」「指定領域は厳格に見る」とした場合、その領域指定としきい値を品質部門が設定し、変更を承認する必要があります。AIによる領域抽出と、買い手が認めた合否ルールを分離した構成にしておくと、モデル更新時に「何が変わったか」を追えます。モデルの信頼度が高いことと、その判定が顧客の受入基準を満たすことも別の話です。
「誤検出をゼロにしたい」という要求は、見逃しと過剰判定の両方を測らずに決められません。過剰判定は再撮影や目視確認、良品廃棄につながります。見逃しは出荷後不具合につながり得ます。撮影姿勢、ロット、金型キャビティ、鋳物厚さごとに、AIが人の確定判定とどれほど一致するかを検証します。境界例を除いた簡単な画像だけで「高精度」と評価してはいけません。実際に現場で迷う画像を試験集合に残し、目視再判定に回す信頼度帯を設けます。
合否基準は先に顧客と文章・画像で固定する
RFPの前に、買い手の図面、契約仕様、過去の承認サンプル、対象規格を集めます。欠陥種類ごとに重要部位を色分けした図を作り、許容値と例外を一枚の判定表へまとめます。たとえば「どの投影で評価するか」「重なった欠陥を一つと数えるか」「加工後に消える部分を含むか」「境界値ちょうどをどちらに入れるか」を明確にします。数値が未定なら、装置ベンダーに勝手に埋めてもらわず、顧客承認待ちの項目として残します。
受入基準には、画像品質の条件も必要です。材質、最大厚さ、撮影位置、方向、露光条件、校正、画像保存形式、再撮影条件を決めます。人が見ても判定できない画像をAIに渡して合格判定させないためです。ASNTが説明するように放射線透過試験の見え方には幾何形状や欠陥の向きによる限界があります。撮影不能を「欠陥なし」と扱わず、保留・別法検査へ送ります。ASNTのRT解説
責任の境界も文書化します。品質保証部門が基準と変更履歴を所有し、検査員は判定不能例をエスカレーションし、設備担当は画像品質と装置状態を維持します。顧客承認が必要な変更、たとえばAIモデル更新、しきい値変更、撮影姿勢変更、金型改造後の再検証条件を取り決めます。この文書がないと、学習データを増やしただけのつもりでも受入基準が実質的に変わる可能性があります。
学習画像の集め方:不良品だけでなく境界品と条件差を含める
学習用データは、欠陥が鮮明な不良品の寄せ集めでは不十分です。量産で多数を占める正常画像、加工痕や肉厚変化が欠陥に似る画像、見逃したくない微小欠陥、判定者が迷う境界品を含めます。ワーク品番、金型、キャビティ、撮影角度、厚さ、装置、時間帯を記録し、同じワークの別角度画像が学習側と評価側に分かれて混入しないようにします。そうしないと、初見のワークに対する性能を過大評価しやすくなります。
正解ラベルは一人の検査員のメモだけに頼りません。顧客基準を理解した担当者が定義に沿って付け、迷う例は複数人で合意します。必要ならCTや切断調査などで真値を補強します。ただし破壊確認したサンプルが量産全体を代表するとは限りません。ラベルには欠陥の有無だけでなく、種類、位置、評価領域、判定可能性、最終合否を分けて持たせます。AIが誤ったときに「撮影が悪かったのか」「候補抽出が悪かったのか」「合否ルールが違ったのか」を切り分けられます。
検証セットは導入後も固定した基準セットとして保管し、新しい不良パターンを別の追加入力として管理します。季節や溶湯条件、材料、金型の状態が変わるタイ工場では、初期評価時と違う画像が出る可能性があります。モデルを更新するときは、旧モデルと新モデルを同じ固定セットで比較し、見逃しと過剰判定、判定不能率の変化を示します。モデル改善を理由に、顧客が承認した合否判定の意味を勝手に変えない運用が重要です。
RFPに入れるべき仕様:装置の型番より評価条件を先に書く
提案依頼書では「AI付きX線装置一式」とだけ書かず、対象ワークと検査結果の使い道を明記します。品番、材質、寸法、最大厚さ、許容重量、治具への載せ方、撮影可能な方向、対象とする欠陥、重要領域、顧客が求める証跡を添えます。複数品種を一台で扱う場合は、品番切替の方法と誤ったレシピを選んだ場合の防止策も必要です。量産タクトは露光時間だけでなく、搬入、ID読取、位置決め、撮影、再構成、AI処理、人による確認、排出まで含めて測ります。メーカーのカタログ値だけでライン能力を判断しないためです。
RFPの画像要件には、欠陥ごとに「このサンプルが見えること」を指定します。もし顧客がASTMなどの参照画像を用いるなら、どの版、どの等級、どの撮影条件を採用するのか購買者と供給者で合意します。ASTM E2973-22はアルミニウムおよびマグネシウムのダイカスト向けデジタル参照画像を扱いますが、それを示すだけで全製品の合否基準が自動的に決まるわけではありません。評価する属性と受入基準は契約側で明確にすべきです。ASTM E2973-22 CTについても、現行のASTM E1814-25は鋳物検査の方法を扱うもので、個別の鋳物に対する受入基準を定める文書ではありません。
AI仕様には、学習済みモデルの名前より運用条件を記します。必要な入力画像形式と画素サイズ、撮影条件の許容範囲、結果として保存する欠陥マスク・測定値・合否・モデル版、信頼度が低い時の保留、再撮影、手動判定、再学習時の手順です。ベンダーが持ち込む既存モデルを使う場合も、自社ワークの試験集合で確認し、量産移行時の性能保証範囲を決めます。工場のIT側は、PLCやMESとの接続方式、通信断時の扱い、保存期間、バックアップ、アクセス権、時刻同期を確認します。
安全・保守の条件も性能表と同じ重さで扱います。X線を使う設備には遮へい、インターロック、設置場所、点検、教育、現地で適用される許認可の確認が必要です。ここは機種と設置条件により変わるため、タイの工場側、安全担当、ベンダー、必要な専門家で具体的に確認します。ASNTは放射線透過試験で安全対策と訓練が必要だと説明しています。ASNT RT 国際的な非破壊検査員の資格・認証の枠組みとしてISO 9712:2021も参照できますが、これだけで現地の法的要件を満たすと判断してはいけません。
FATとSATで「検出できる」から「現場で回る」まで確認する
FATはベンダー側での工場出荷前試験、SATは設置した工場での受入試験です。FATでは自社から持ち込んだ良品、不良品、境界品を使い、合意した撮影条件で欠陥候補が見え、AI結果と人の判定が比較できることを確認します。試験集合の品番、個体、撮影姿勢、正解ラベル、再撮影条件を試験前に固定します。ベンダーが試験画像を見てからしきい値を合わせた場合は、それを学習・調整用と明示し、別の未使用画像で確認します。これにより、デモだけ良く見える結果を避けられます。
FATの判定表には、欠陥別の検出、見逃し、過剰判定、判定不能、サイクルタイム、再現性を記入します。「精度98%」のような単一値だけでは、何件の不良を見逃したのか分かりません。母集団に不良が少ないと、全部を良品と判定しても高い正解率に見えることがあります。したがって、欠陥種と重要領域ごとの結果、良品側の再検率、境界例の扱いを併記します。受入閾値は購買者の品質リスクと生産能力から事前に合意し、記事上で一般的な正解値を作らないことが肝心です。
SATでは、実際の搬送・電源・ネットワーク・MES連携の下で同じ受入条件を再確認します。ワークの向きがずれた時、ラベルが読めない時、撮影画像が欠けた時、AIサービスが停止した時、ネットワークが切れた時に、鋳物が「合格」へ流れないことを試験します。昼夜のシフト、複数オペレーター、通常の生産ばらつきを含め、再撮影と手動判定がラインをどれほど止めるかを測ります。FATで使えたモデルでも、現地設置後の治具や温度、通信条件が変われば挙動が変わり得るからです。
引渡し時には、試験記録、撮影レシピ、AIモデル版、合否ルール版、校正・点検手順、バックアップと復旧手順、保守窓口、教育記録を受け取ります。特に検査画像と最終判定が後で追えることを確認します。設備の稼働開始後に顧客が異議を出した時、判断の根拠画像を開けないと、自動化した意味が薄れます。

ショットIDと検査画像をつなぐデータ設計
量産ラインでは、検査機が撮った画像を「日付のフォルダ」に置くだけでは後から探しにくくなります。少なくとも個体IDまたはショットID、品番、金型、キャビティ、成形時刻、検査時刻、設備ID、撮影レシピ版、AIモデル版、合否ルール版、最終判定者と理由を結び付けます。必要に応じて溶湯ロット、材料、主要な成形条件も関連付けます。各工場の製造方式で個体IDを持てない場合は、ショットとキャビティから個体へたどる設計を決めます。
ここで重要なのは、物理ワークと記録の一対一対応を途中で失わないことです。検査前に識別子を読めないワークは保留させ、オペレーターが後で推測してひも付けないようにします。同じショットから複数個が出る場合はキャビティ情報も必要です。再検査した場合は最初の画像を上書きせず、再撮影の理由と最終判定まで残します。保留から手動合格に変えた場合も、変更前後の判定と承認者を記録します。
AIの学習に使うデータと、顧客に提出する品質記録は用途を分けます。学習用の匿名化や抽出で元の証跡を消さないこと、顧客契約に応じた保存期間とアクセス権を設定すること、バックアップから再現できることが要点です。取得する画像容量が大きいCTでは、原画像、再構成データ、欠陥マスク、レポートのどれを何年保存するかで保管費が大きく変わります。RFP時点でデータ量を試算し、運用費に含めます。
ショットIDを軸に検査結果と工程条件を並べると、欠陥の増加が特定キャビティや時間帯に偏るかを見られます。ただし相関が見えたことだけで原因は確定しません。型の状態、溶湯、射出、冷却などを現場で確認し、変更前後の欠陥傾向を同じ撮影条件で比較します。X線AIの導入価値は合否の自動化だけでなく、工程に戻せる証跡を増やせることにあります。
導入費用を見るときは設備価格だけで比べない
見積を比較するときは、X線源と検出器、遮へい設備、搬送治具、AIソフト、サーバー、MES接続、初期学習、FAT・SAT、教育、保守、消耗品、再校正を同じ表に並べます。CTの場合は再構成計算や大容量保存の費用も加えます。設置工事や安全確認でラインを止める時間、保留品を扱う人手も実際の費用です。価格を一つの金額に丸めず、初期費、年間費、品番追加費に分けると、品種が増えた時の負担が読めます。
効果も「AIで検査員を何人減らせるか」だけで測りません。加工後に見つかる不良を前倒しで検出できるか、再撮影と目視確認は何件増えるか、顧客への証跡提出時間が短くなるか、工程条件へフィードバックできるかを見ます。良品を誤って廃棄する費用も含めます。これらは製品と不良率、工程構成で変わるため、一般的な投資回収月数を約束できません。導入前のベースラインを測り、パイロット期間に同じ指標で比較します。
装置候補の比較には、同じサンプルと同じ合否条件を使います。A社には薄肉の不良品、B社には見やすい良品だけを渡す比較では判断できません。デモ後のレポートには、生画像と処理画像、判定根拠、処理時間、失敗例をそろえ、失敗例について改善策と追加費用を確認します。ベンダーの「AI搭載」という表示より、目的の欠陥を自社条件でどこまで再現して判定できるかを重視します。
タイ工場で進める五段階の実装計画
第1段階:対象と基準を決める。 品番を一つか少数に絞り、顧客要求、過去不良、重要部位、必要な証跡を整理します。品質保証、製造、設備、IT、顧客窓口を同席させ、合否基準の未確定事項を一覧にします。この段階で装置の型番を確定する必要はありません。
第2段階:実ワークで方式を選ぶ。 正常、欠陥、境界のサンプルを用意し、2D DRと必要に応じてCTで撮影します。画像の見え方、死角、撮影時間、固定の難しさを記録します。CTを研究室で使う価値と、量産ラインで全数検査する価値は分けて評価します。ZEISSの大型鋳物の事例でも、光学、接触、X線を組み合わせて品質保証を行っており、単一の検査法ですべてを代替する考えではありません。Handtmannのメガキャスティング事例
第3段階:RFP、FATを行う。 基準サンプルと試験手順を添え、ベンダーの提案を同じ条件で比較します。AIの結果だけでなく、画像品質、保留処理、安全、データ連携、保守まで点検します。判定不能を含む結果を残し、課題を閉じる条件を合意してから発注・出荷を進めます。
第4段階:SATと並走を行う。 現地設置後は一定期間、人の判定とAIの判定を並走させます。差異が出た画像を日次で確認し、撮影条件、ラベル、モデル、合否ルールのどこに原因があるか記録します。未承認のしきい値変更で数字だけ改善しないようにします。タイ語・英語・日本語のどの文書を正式版とするかも品質部門で決め、シフトをまたいで同じ指示が伝わるようにします。
第5段階:量産管理へ移す。 判定を自動搬送に使うなら、識別子欠落、画像不良、AI停止、通信断の各状態で安全側に保留することを最後に確認します。月次などの定期レビューでは、欠陥傾向、保留率、再撮影率、見逃しの発見、モデル更新履歴を見ます。品番・金型・顧客仕様が変わった時は再評価の要否を判定し、初期承認のまま無期限に使い続けない運用にします。
よくある質問
ダイカストX線内部欠陥検査では2D DRとCTのどちらが安いですか?
一般に装置構成や検査時間、データ量が異なりますが、総費用は対象ワークと必要な撮影条件で変わります。単価だけで比べず、必要な欠陥が見えるか、タクト、再検率、解析・保存費、保守を同じサンプルで比較してください。DRを全数、CTを抜取・原因解析に使う構成も候補です。
AIで鋳巣を検出できれば人の最終確認は不要ですか?
顧客が承認した基準、境界例、画像不良時の処理が整うまでは、人の確認工程を残すべきです。安定稼働後も、判定不能例やモデル更新時の監視、抜取監査の役割を決めます。AIは欠陥候補を揃えて示せますが、品質保証責任の所在を消しません。
X線検査の合否基準をASTM規格に任せられますか?
規格は方法や参照画像を理解するために有用ですが、個別部品の重要部位と許容値を自動で決めるものではありません。採用する規格と版、評価領域、欠陥種類、等級、境界例について、買い手と供給者が文書で合意します。現行のASTM E1814-25も鋳物CTの検査方法を扱い、製品ごとの受入基準を指定しません。ASTM E1814-25
タイの工場でX線AIを導入する最初の一歩は何ですか?
対象品番を絞り、良品・不良品・境界品と顧客の図面・基準を集めてください。装置選定前に「何を検出し、どの位置なら不合格か」を確定することが先です。安全担当と設備担当には、設置場所、放射線管理、保守体制を早期に確認してもらいます。
ショットIDがなくても画像を保存すれば追跡できますか?
日付だけの画像保管では、出荷した個体や金型キャビティとの対応を後から証明しにくくなります。少なくとも製品またはショットとキャビティに結び付く識別子、検査時刻、レシピとモデルの版、最終判定を保存します。再撮影では元画像を残し、判定変更の履歴も保持します。
まとめ
ダイカストの内部欠陥検査は、X線装置、AI、合否基準、トレーサビリティを一つの工程として設計すると成果が出やすくなります。まず鋳巣・引け巣・介在物をどの部位でどう評価するかを顧客と決め、実ワークで2D DRとCTを比較します。AIは候補抽出と計測を助けますが、顧客承認済みの基準、撮影不能時の保留、人による境界例判断を代替しません。RFPで条件を明示し、FATとSATで同じサンプルと指標を使い、ショットIDまでつないで初めて、量産で説明できる品質記録になります。
タイ工場で対象部品や顧客基準の整理を始めた段階でも、TOMAS TECHにご相談ください。検査方式の比較、AI判定の受入条件、製造履歴との接続範囲を一緒に具体化できます。