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2026.10.15

ケーブルキャリア 選定ガイド|曲げ半径・充填・寿命とタイ工場のRFP

ケーブルキャリア 選定ガイド|曲げ半径・充填・寿命とタイ工場のRFP

導入:ケーブルキャリア選定はカタログのサイズ表から始めない

ガントリローダの可動部のケーブルが数か月で断線し、交換のたびにラインが止まる。ケーブルキャリアの選定を見直したいという相談は、こうした悩みから始まることがあります。ケーブルがねじれてらせん状になり(コークスクリュー)、キャリアの横からはみ出している。装置メーカーに任せきりで、中に何本、どのケーブルが入っているかの図面が無い。切粉やクーラントがキャリアに入り込んで詰まる。キャリアが割れたので同じサイズを買い直したのに、しばらくするとまた壊れる。

本記事の主張を先にまとめます。ケーブルキャリアの選定は、カタログで内高と内幅のサイズを選ぶ前に、次の3つで決まると本記事では考えます。

  • ①中に通すケーブルとホースの一覧:本数、外径、最小曲げ半径、種類
  • ②運動条件:ストローク、速度、加速度、設置姿勢、自立で届くかどうか
  • ③環境:切粉、クーラント、油、スパッタ、クリーン度

①と②が、サイズ(内高、内幅、曲げ半径)と支持方式(自立、滑走とガイドトラフ、垂直)を決めます。③は、キャリアの形式(開放か密閉か、樹脂かスチールか)とケーブルのシース材を決めます。また、メーカーやケーブルメーカー各社が挙げる断線の典型的な原因は、連続屈曲用でないケーブル、詰め込み、曲げ半径不足、ねじれたままの敷設、可動部での結束といった、ケーブル側の選定と敷設に集中しています。そのため、キャリアだけを買い直しても再発しうると本記事では考えます。受け入れでは、ストローク両端で曲げ部のケーブルが自由に動くこと、ケーブルが中立帯を通っていること、固定方法、初期運転後の再点検を確かめ、寿命計算の前提条件を書面で残すことを勧めます。

この記事は特定製品の推奨やランキングではありません。数値や製品機能は各社の公開資料にもとづき、「同社は〜と説明している」という形で紹介します。後半の費用試算は、この記事のための仮の数字です。

なぜ今、タイの工場で可動部の配線を見直すのか

タイでは、自動化への投資の動きが続いています。タイ投資委員会(BOI)によると、2026年1〜6月の投資奨励の申請は1,299件、436億ドル(約1.47兆バーツ)で、前年同期比37%増でした。このうち機械、自動化、ロボットの分野は82件、3億8,740万ドル(約131億バーツ)、自動車分野は122件、7億5,920万ドル(約257億バーツ)です。機械の更新やデジタル化、自動化とロボットの導入を対象とする「Smart and Sustainable Industry」施策の申請は132件、5億760万ドル(約172億バーツ)でした。日本からの申請は123件、9億7,010万ドル(約328億バーツ)です。いずれも申請ベースの数字で、認可ベースの数字とは別のものです。

生産側の数字はまちまちです。タイ工業連盟(FTI)の発表を集計サイトTrading Economicsで確認したところ(二次情報)、2026年8月の自動車生産は124,646台で前年同月比10.93%増、8月の国内販売は59,808台で同25.59%増でした。一方で8月の輸出は同2.04%減で、FTIは2026年通年の生産を前年比3.33%減と予想しています。ロイターの配信(The Star掲載)によると、2026年8月の製造業生産指数(MPI)は前年同月比4.44%増でした。なお工業省はMPIの算出方法を改定しており、新たな電子製品を加えてウェイトを変えています。

これらはタイ全体の数字で、個々の工場の状況をそのまま表すものではありません。ただ、新しい装置の導入や既存設備の改造が続く局面では、ガントリ、ローダ、走行軸、ストッカーといった直線軸が増えると考えられます。その可動部の配線を、装置ごとの成り行きではなく、同じ考え方で決めておく意味は大きいと本記事では考えます。

ケーブルキャリアとは:呼び名と種類

ケーブルキャリアは、機械の可動部に沿ってケーブルやホースを収め、一定の曲げ半径を保ちながら一緒に動かすための部品です。呼び名はいくつかあります。「ケーブルベア」は株式会社椿本チエインの登録商標で、同社製品の名称です。ほかに「ケーブルチェーン」「ケーブル保護管」と呼ばれることもあり、igusは自社製品を「エネルギーチェーン(e-chain)」と呼んでいます。本記事では一般名称として「ケーブルキャリア」を使い、椿本チエインの製品を指す場合だけ「ケーブルベア」と書きます。タイ語では、MISUMIタイのサイトが「รางกระดูกงู」という呼び名を使っています。

種類は、材質、形状、支持方式で分けて見ると整理しやすくなります。

分け方主な種類選ぶときの観点
材質樹脂製、スチール製荷重、長さ、環境(熱、切粉)
形状開放型(横桟のみ)、カバー付き、密閉型切粉、スパッタ、クーラントの入りやすさ
支持方式自立、滑走(ガイドトラフ)、垂直(吊り下げ、立ち上げ)、横置きストローク、速度、加速度、設置姿勢

密閉型の例として、TSUBAKI KABELSCHLEPPは工作機械向けのTKAシリーズを「Chip-tight right to the end」と紹介し、保護等級を「Tight (IP54*)」と記載しています。ただしこの注記は、TKA55シリーズの内幅(Bi)50〜175のものを指すと同社は書いています。シリーズ全体にIP54が当てはまるとは読まないほうが安全です。

ロール式のキャリアや回転運動専用のキャリアは、本記事では扱いません。

ロボットアームの配線は別記事で

多関節ロボットのアームに沿わせる配線(ドレスパック)は、直線軸のケーブルキャリアとは求められる条件が違います。KabelSchlepp Americaの技術ハンドブックは、屈曲の種類を区別して説明しています。中心軸の回りに90〜360°ねじる「Torsional Flex」は、多軸ロボットで典型的に起こる動きです。一方でケーブルキャリアの中は、直線の往復で転がる「Continuous Flex」だと同社は説明しています。LAPPも、ÖLFLEX CHAIN 809の仕様で、曲げの回数とは別に、ねじり(±150°/m)の条件と回数を規定しています。つまり直線軸は「曲げ」、ロボットアームは「ねじりと曲げ」が主な負荷です。ロボットアームの配線はロボットドレスパックの選定2026|タイ工場でケーブル断線と干渉を防ぐ発注・検収の実務で扱っています。本記事は直線軸に絞ります。

最初に決めること:中に通すケーブルとホースの一覧

ケーブルキャリアのサイズを中身から逆算する手順は、KabelSchlepp AmericaやMISUMIの資料で示されています。KabelSchlepp Americaのハンドブックは、選定のStep 1を「キャリア内部に必要なケーブルとホースのクリアランスを計算すること」としています。各ケーブルとホースの外径にクリアランスを足し、その最大値から必要な内高を、合計に仕切りの厚みを足して必要な内幅を出す、と同社は説明しています。MISUMIも、エコノミーシリーズのケーブルキャリアについて、配線内容に応じて選定し、内部高さはケーブル外径から決めるという手順を示しています。

そのため、カタログを開く前に、中に通すものの一覧を作ることを勧めます。一覧の列の例を示します。

列記入する内容使い道
用途動力、モーター、エンコーダ、センサ、通信、空圧、媒体仕切りで分けるかの判断
種類電線、空圧ホース、油圧ホース、媒体ホースクリアランスと固定方法が変わる
本数予備を含めて内幅と将来の増設
外径実測またはメーカー値(mm)内高、内幅、充填
最小曲げ半径(可動)ケーブルメーカーの動的、連続屈曲の値キャリアの曲げ半径
重量kg/m配置、自立長、支持方式
シース材PVC、PUR、TPE、ゴムなど環境への適合、ケーブル同士の貼り付き
メーカー品番連続屈曲用かどうかの確認交換部品の手配
固定端と移動端の位置盤側、機上側の端子や接続部固定方法、余長

この一覧は、装置メーカーに発注するときにも役立ちます。HELUKABELは、ドラッグチェーン用ケーブルの問い合わせ用に質問票を用意しています。項目は、チェーンの長さと幅、ピッチ、曲げ半径、水平か垂直か、最大移動距離、速度、加速度、頻度(回/h)、1日の稼働時間、ケーブルの総長と可動長、本数、芯数、シールドの有無、ハロゲンフリーかどうか、使用温度、化学的影響などです。ケーブルの専門メーカーが何を知りたがるかが分かるので、一覧の列を決めるときの参考になります。

ケーブルキャリア 選定ガイド|曲げ半径・充填・寿命とタイ工場のRFP - figure 1

ケーブルキャリアの曲げ半径の決め方

キャリアの曲げ半径は、中に入るケーブルとホースのうち、最も条件の厳しいものに合わせて決まります。igusは「e-chainの曲げ半径は、収める中で最も太いか、最も硬いケーブルまたはホースで常に決まる」と説明しています。MISUMIも、複数種類のケーブルやホースを一緒に収める場合は、最も大きな最小曲げ半径に合わせてキャリアの曲げ半径を選ぶ、と説明しています。

では、そのケーブル側の最小曲げ半径はどう見るか。ここで「外径の何倍」という値が出てきますが、出典ごとに値も条件も違います。

出典値条件
JMACS(電線メーカー)ケーブル外径の10倍以上同社の可動部用ケーブルの配線資料での指定
igus(解説ページ)最小曲げ半径=10×ケーブル径(例:径10 mmなら100 mm)よく使われる簡易則として紹介。用途、材料、規格によって変わりうると注記
KabelSchlepp America高屈曲ケーブル7.5×外径以上、標準の連続屈曲ケーブル10×外径以上、ホースは内容物1000 psi未満で10×外径以上、1000 psi超で12×外径以上ケーブルやホースのメーカーの値が手に入らない場合の目安
igus chainflex CF9(保証表)5、6、7×d(−25〜+90℃で500万、750万、1,000万往復の保証)。−35〜−15℃と+90〜+100℃では6.8、7.5、8.5×d特定製品の、温度帯と保証回数の組み合わせ
LAPP ÖLFLEX CHAIN 809 7G1,0動的な連続屈曲10×外径(90.0 mm)、固定設置4×外径(36.0 mm)外径9 mmの特定品番の仕様表

このように、「10倍」はJMACSの指定値であり、igusが紹介する簡易則でもあります。一方でKabelSchlepp Americaは、高屈曲ケーブルでは7.5倍を、メーカー値が無いときの目安としています。igusのCF9は、同じ製品でも温度と保証回数によって5〜8.5倍と係数が変わります。値が一つに揃っていないこと自体が、「一覧を作り、各ケーブルのメーカー値で決める」理由だと本記事では考えます。KabelSchlepp Americaも、まずはケーブルやホースのメーカーが公表している仕様を使うよう書いています。LAPPの敷設指示も、曲げ半径はケーブルの最小曲げ半径に従うこと、としています。

もう一つ注意したいのが、静的な曲げ半径と動的な曲げ半径の違いです。igusは、固定設置や時々曲げる場合の曲げ半径は規格(例:DIN)で定義される一方、エネルギーチェーンの中のような動的な条件ではメーカーの値による、と整理しています。上のLAPPの例でも、固定設置は4倍、動的な連続屈曲は10倍と、同じケーブルで大きく違います。ケーブルのカタログで小さい値を見つけても、それが固定設置の値でないかを確かめてください。

igusは、e-chainの曲げ半径はケーブルの最小曲げ半径以上にすること、曲げ半径を大きくすると寿命が大きく延びることも説明しています。スペースに余裕があるなら、最小値ぎりぎりではなく一段大きい曲げ半径を候補にする考え方もあります。

内高、内幅と充填率、クリアランス

次に、断面の中の詰め方です。ここも出典によって基準の立て方が違い、一律の「充填率」はありません。

充填(断面の占め方)

出典基準
JMACSケーブルの占積率は30%以下
MISUMI(エコノミー中荷重タイプ)ケーブルの総断面積は「内部高さ×内部幅」の60%以内
KabelSchlepp Americaキャビティの最大充填はキャビティ面積の60%以下

同じ「断面に対する割合」でも、JMACSとMISUMI、KabelSchlepp Americaでは2倍の差があります。どちらが正しいかを示すものではなく、それぞれの出典の前提(製品やケーブル)とセットで読む必要があります。複数の出典にまたがる場合は、使うケーブルとキャリアのメーカーが示す値に従い、迷ったら厳しいほうを採るという決め方を本記事では勧めます。

ケーブル周りのクリアランス

丸形のケーブルについては、外径の10%程度のすき間を取るという説明が複数の出典に見られます。igusは丸形電線のクリアランスを10%とし、隣のケーブルや壁との最小距離を1 mmと書いています。LAPPは横桟や仕切り、隣のケーブルとの間隔をケーブル径の10%以上、HELUKABELも空きをケーブル径の10%以上としています。MISUMIは、内壁との間隔を外径の10%以上、隣のケーブルとの間隔を大きいほうの外径の10%以上と説明しています。JMACSは、仕切板とケーブルの間隔を2 mm以上としています。

最大ケーブル外径と内高の関係

出典外径の上限の考え方
MISUMI外径は内部高さの80%以内(例:外径20 mmなら内部高さ25 mm以上)
igus最大ケーブル径=内高からクリアランス(丸形電線は10%)を引いた値
LAPP(アジア向け資料)電線外径の上限=内高−10%(例:内高50 mmなら45 mm)

ここでも値は揃っていません。最も太いケーブルが内高に収まるかは、採用するキャリアのメーカーの値で確認してください。

空圧、油圧、媒体ホースのクリアランス

ホースは伸び縮みや膨らみがあるため、電線より大きなクリアランスを求める出典が多いです。ただし値は出典で違います。

出典空圧ホース油圧ホース媒体ホース
igus5〜10%(ゴム製は10%)20%15〜20%
KabelSchlepp America15%(最小2.0 mm超)20%(最小3.0 mm超)記載なし
LAPP(アジア向け資料)15%20〜30%30%

KabelSchlepp Americaは、電線は外径の10%(最小1.0 mm超)を足すとしています。ホースの値を一つにまとめず、使うホースのメーカーとキャリアのメーカーの値を一覧の横に書き込んでおくと、後で根拠を説明しやすくなります。

仕切り(セパレータ)と棚、ケーブルの配置

仕切りが要るかの判定

同じくらいの太さのケーブルを並べると、曲げ部で入れ替わったり、上に乗り上げたりします。igusとLAPPは、同じ判定式を示しています。並べた2本の径の和が内高の1.2倍を下回る(D1+D2<1.2×内高)場合は、仕切りが必要だという考え方です。LAPPの例では、内高50 mmで40 mmのケーブル2本なら80>60で仕切りは不要、22 mmと35 mmなら57<60で必要としています。

igusはさらに、並んだ同じ径のケーブルの区画の高さは、ケーブル径に50%を足した値を超えないように、と説明しています。径が大きく違う場合や、年間10,000往復を超えかつ0.5 m/sを超える使い方では、水平の棚が必要になるとも書いています。仕切りの間隔は、標準で2リンクごと(1リンクおき)、高速、高加速度、重い充填(例:油圧ホース)では毎リンクを推奨しています。KabelSchlepp Americaは仕切りの既定の間隔を「2リンクごと」、最大でも0.5 mごととしています。

仕切りで分けるもの

各社は、性質の違うものを仕切りで分けるよう説明しています。JMACSは、外径が大きく違うケーブルを混ぜると細いケーブルが太いケーブルに押さえつけられるため、空間に余裕があっても仕切板で分けるよう書いています。エアホースなど硬いものとの混配線も、仕切板で分けるとしています。KabelSchlepp Americaは、異なる部材やシース材を分ける場合、ケーブルやホースの外径が内高の60%未満の場合、フラットケーブル、絡みの防止、左右の重量バランスを、縦仕切りを使う場面に挙げています。igusも、シース材の違うケーブルは互いに貼り付かないようにし、できれば分けるよう書いています。

重さのバランス

配置の基本として、各社は左右対称と重いものを外側に、という点で共通しています。igusは、ケーブルを幅方向に対称に並べ、最も重いケーブルを外側に置くと説明しています。偏るとピンと穴の摩耗が片側で進み、寿命が落ちるとし、速く頻繁に動くほど配置が重要になると書いています。LAPPも、重さとサイズで左右対称にし、太く重いものを外側、小さいものを内側に置き、棚なしで上下に重ねないよう説明しています。HELUKABELとLAPPはどちらも、25芯を超えるような多層構造のケーブルは避け、複数本に分けることを推奨しています。KabelSchlepp Americaは、重量の偏りがキャリアのバランスを崩し、故障につながりうると書いています。

運動条件:ストローク、速度、加速度と自立長

中身の次は、どう動くかです。直線軸の運動条件は、キャリアの支持方式と寿命に直結します。軸そのものの機械要素については、リニアガイド 選定|寿命計算・予圧・精度とタイ工場のRFPやボールねじ 選定ガイド|タイ工場のRFP・FAT/SAT実務で扱っています。キャリアの選定では、軸の設計値から次の値を受け取っておきます。

  • ストローク(最大移動距離)
  • 最大速度と最大加速度
  • 頻度(1時間あたりの往復回数)と1日の稼働時間
  • 設置姿勢(水平、垂直、横置き)
  • 移動端に追加でかかる重さ

自立長とたるみ

igusは、自立で使う状態を「上側の走行部が全ストロークで下側に触れない状態」と定義しています。自立長は、移動端から曲げの円弧が始まるところまでの支えのない距離で、最大値はシリーズと充填重量で変わる(値はカタログを参照)と同社は説明しています。同社の区分は次の3つです。

区分(igus)状態同社の説明
FLGプリテンションがかかり直線に近い。たるみは最大でリンク高さの1/2期待寿命は最低1,000万往復
FLBたるみを許容する(たるみがチェーンの最小曲げ半径未満)速度と加速度が制限される。期待寿命は最良で500万〜700万往復
クリティカルたるみたるみが大きすぎる状態回避が必要。寿命、速度、加速度が大きく下がる

これらの寿命の値は、igusが自社のe-chainについて示す期待値です。他社製品にそのまま当てはめることはできません。同社は、長く使ってクリティカルたるみに達した場合は交換するよう書いています。

自立長が足りない場合の延長手段として、KabelSchlepp Americaは支持ローラ、ローラ付き台車、ガイドチャンネルを挙げています。支持ローラ1個でストロークは推奨自立長の最大3倍、2個で最大4倍、3個以上は不可、と同社は説明しています。JMACSも、水平設置でたるみが出るロングスパンでは、ガイドレールと支持ローラーの設置を推奨しています。

製品の例として、モノタロウに掲載されたigusのEZチェーン Z14型の仕様には、最大フリースパン0.65 m、最大速度はスライド走行で3 m/sec、水平走行で20 m/sec、ベント走行で3 m/secと記載されています。同じ製品でも、走行の形態によって記載の最大速度が大きく違う例です。

高速、高加速度の軸

加速度は、寿命に大きく効く条件です。igusは寿命計算で加速度が重要な役割を果たすと説明しています。リニアモーターを使う高速な搬送のように、加速度が大きい軸では、ケーブルとキャリアの両方の許容値を先に確認してください。リニアモーター搬送そのものの選び方はリニア搬送システムの選定|タイ工場の比較・RFP・FAT/SATにまとめています。

ロングトラベル、垂直、横置きの注意点

ロングトラベル(滑走とガイドトラフ)

自立で届かない長いストロークでは、上側の走行部を下側の上に滑らせる「滑走(gliding)」が使われます。igusは、自立長が足りない場合の代替として滑走を挙げ、並列や対向で使う場合は別手配のガイドトラフで案内するよう説明しています。チェーンを最短にするため、固定端はストロークの中央に置くとしています。

igusは自社e-chainの滑走用途について、最大速度10 m/s、最大加速度は用途によるが50 m/s²以上も可能、最大ストローク800 m、充填重量70 kg/m以上も可能、連続運転は5 m/sまで、という値を示しています。これは同社が自社製品について説明している値で、ケーブルキャリア全般の上限ではありません。同社はほかに、移動端を下げて3〜5°の角度で取り付けること、押し引き力の計算値が許容最大の50%を超える場合は支持板が必要なことを書いています。

長い滑走で横に倒れないかの目安も、出典ごとに示されています。igusは「曲げ半径÷内幅<4」を安定性の目安とし、4を超えるなら幅を広げるよう説明しています。LAPPは、内幅が内高の2倍未満の場合、特に曲げ半径がリンク高さの3倍を超える場合に不安定になりうると書いています。またLAPPは、最大ストローク位置でも端部が載るように、リンクを1つ余分に見込むよう勧めています。

キャリアの長さについて、MISUMIは「キャリア長さ=S/2+K」(Sはストローク、Kはπ×曲げ半径+安全余裕値)とし、固定点はストロークの中央を推奨しています。キャリア、ケーブル、チューブの必要長が最小になるためだと同社は説明しています。

ロボットを床の走行軸に載せる場合も、同じ考え方でロングトラベルのキャリアを選びます。走行軸そのものの選定はロボット走行軸 選定|第7軸の可搬・精度・床とタイ工場のRFPで扱っています。

垂直(吊り下げと立ち上げ)

垂直には、上から吊り下げる場合と、下から立ち上げる場合があり、条件が大きく違います。igusは吊り下げについて、最大ストローク100 m、最大速度20 m/s、最大加速度50 m/s²(いずれも条件による)という自社製品の値を示しています。ケーブルとホースは両端でストレインリリーフして自重を支え、チェーンに張力を負担させないこと、水平方向の加速度が加わる場合はガイドが必要なことも説明しています。立ち上げについては、支持なしで約4 m、最初のリンクを支持して約6 m、全体を支持して約20 mという目安を示し、取付金具に荷重が集中すると書いています。

LAPPは、垂直の吊り下げでは運転中にケーブルが伸びるため、ステーの高さに追加の空間が必要だと説明しています。短期間の運転のあとで、ケーブルが中立帯を走っているかを確認し、再調整するよう勧めています。

横置き

キャリアを横に倒して使う横置きについて、igusは、ロック式の仕切りやスペーサでケーブルを挟まないこと、直線運動では並べるケーブルは最大2本までにすることを推奨しています。

環境で決まるもの:切粉、クーラント、油、スパッタ、クリーンルーム

③の環境は、サイズではなく、キャリアの形式とケーブルのシース材を決めます。

切粉とクーラント

切削工場では、切粉がキャリアの中や走行面に入り込むことがあります。前述のとおり、TSUBAKI KABELSCHLEPPは工作機械向けの密閉型TKAシリーズを切粉の入りにくい形式として紹介しています(IP54の注記はTKA55シリーズの内幅(Bi)50〜175のもの)。KabelSchlepp Americaは、走行面に異物が無く清潔であること(Running Surface Must Be Kept Free of Debris and Clean)を求めています。igusも、汚れた環境では走行路に汚れが溜まらないようにするよう書いています。密閉型を選ぶか、開放型にカバーや清掃の手順を組み合わせるかは、切粉の量と清掃のしやすさで決めます。

シース材

igusはchainflexのシース材について、次のように説明しています(温度は同社製品の値)。

シース材igusの説明周囲温度(同社製品)
PVC最も低コストで、低〜中負荷向け。油に弱い配合と耐油の配合がある+5〜+70℃
PURノッチに強く、耐油性が高い。工作機械向けに適すると説明。ハロゲンフリー、油とクーラントに耐性−25〜+80℃
TPEUV耐性が最も高く、油とバイオ油にも耐性。ハロゲンフリー−35〜+100℃

KabelSchlepp Americaは、キャリア用にはPVC、PUR、TPE、TPMのシースが適しているとし、ゴムやネオプレンは粘着性が高く、ケーブル同士やキャリアとの相対移動を妨げるため一般に勧めない、と説明しています。igusも、ゴム製の空圧ホースは他と貼り付きやすいとして、10%のクリアランスを守るよう書いています。

キャリア側の材質と難燃

MISUMIはエコノミー中荷重タイプの許容温度を−40〜120℃、難燃性をUL94 HBと記載しています。モノタロウに掲載されたigusのEZチェーン Z14型の仕様には「VDE 0304 IIC UL94 V2」と記載されています。溶接のスパッタや熱源の近くを通す場合は、キャリアとケーブルの両方について、使用温度と難燃の表記を確認してください。

クリーンルーム

igusは、同社の各種e-chainがFraunhofer IPAにより、DIN EN ISO 14644-1にもとづいて試験されたと公表しています。同社のページでは、例えばe-skinの各型やE61.29.050.075.0、E3.15.040.075.0がISO Class 1、E14.3.038.0などがClass 2、E6.29.060.150.0などがClass 3、E4.32.10.063.0がClass 5と、型式ごとにクラスが示されています。クラスは型式ごとの結果なので、メーカー名だけで判断せず、型式と試験結果で確認してください。

高屈曲ケーブルの選び方

キャリアの中のケーブルは、用途によっては数百万回以上曲げられます。そのための「連続屈曲用」「高屈曲」と呼ばれるケーブルがあります。

撚り構造

KabelSchlepp Americaは、導体の撚り方を3つに分けて説明しています。層ごとに撚り方向を反転させる「Concentric Contra-Helical」は連続屈曲の用途で通常使われ、キャリアで使うべき構造だとしています。「Unilay or Bunch」は通常は静的な用途向け、「Concentric Unilay」はねじりの用途向けとしています。連続運動用のケーブルは、芯の戻りねじれ(back-twist)を最小にする専用の撚線機で作る必要がある、とも同社は書いています。

igusは自社のchainflexについて、芯を短いピッチで束ねて撚り、すき間を埋める押出の内外シースで撚りが緩むのを防いでいる、と説明しています。

汎用ケーブルを使った場合

KabelSchlepp Americaは、汎用の産業用ケーブルの多くは連続屈曲用ではなく、小さな曲げ半径で使うとすぐにコークスクリューになったり、結び目ができたりすると説明しています。導体とシースの間の綿テープが屈曲でたるみ、導体を圧迫して早期故障の原因になる場合があることや、撚り癖のあるケーブルはコークスクリューになりやすいことも書いています。

仕様表の読み方の例

LAPPのÖLFLEX CHAIN 809 7G1,0の製品ページを例に、仕様表のどこを見るかを示します。

項目ページの記載確認する観点
位置づけBasic-Line。移動距離や加速度が中程度の用途向けと同社は説明自分の軸の条件に合うか
シースPVC。耐油はEN 50290-2-22のTM 54、ただしPVCシースは「limited oil resistance」と記載クーラントや油への適合
外径9 mm一覧の外径、内高
導体IEC 60228 class 5、Layered stranding撚り構造
曲げ半径動的な連続屈曲で10×外径、固定設置で4×外径動的の値でキャリアを決める
曲げ回数最大3,000,000回年間の往復回数と比べる
ねじり±150°/mで最大5,000回(+5℃以上)、2,000回(−20℃以上)曲げとは別の規定
難燃と北米規格IEC 60332-1-2、CSA FT1、UL VW-1。UL AWM style 11009/20886(UL 758)輸出先や顧客の要求

このページには、移動距離、加速度、自立速度の欄もありますが、数値に単位が付いていません。単位が書かれていない値は、推測で単位を補わず、メーカーに確認するのが安全です。

サーボモーターとエンコーダのケーブル

可動部を通るケーブルには、サーボモーターの動力線やエンコーダのケーブルも含まれます。モーター側のメーカーが指定する可動用ケーブルがあるか、延長する場合に連続屈曲用の品番を使えるかを、一覧の段階で確認してください。サーボ系の発注と受け入れについてはサーボ制御の発注・FAT/SAT実践ガイド|タイ工場2026で整理しています。

断線とコークスクリューの原因と対策

各社が挙げる原因

KabelSchlepp Americaは、ケーブルキャリアの中でケーブルが故障するよくある原因として、次の4つを挙げています。

  1. 連続屈曲用でないケーブルを使っている
  2. キャビティに詰め込みすぎている
  3. 実際の曲げ半径が、ケーブルメーカーが推奨する最小曲げ半径より小さい
  4. キャリアの設計がケーブルに適していない

コークスクリュー(らせん状のねじれ変形)について、igusは「原因は多くの場合、誤って敷設されたケーブルか、合っていない品質のケーブル」と説明しています。LAPPも、敷設時にねじれたケーブルは素線の撚りを早く傷め、運転中にねじれが増幅されてコークスクリューになり、芯線が断線して故障に至ると説明しています。JMACSは、可動部でケーブルを固定したり結束したりすると、曲げ応力の吸収や分散が妨げられ、固定部にストレスが集中すると書いています。

igusは、曲げ半径が足りない場合の影響として、ケーブルや素線の断線、導電性の低下、コークスクリューなどの機械的な損傷、寿命の低下、停止とコストを挙げています。低温では材料が硬くなって破断しやすくなり、高温では軟らかくなって摩耗が増えるとも説明しています。

このように、各社が挙げる典型的な原因は、ケーブルの種類、詰め込み、曲げ半径、ねじれ、固定といったケーブル側の選定と敷設に集中しています。キャリアの設計も原因の一つに挙がっていますが、キャリアだけを替えても、他の原因が残っていれば再発しうると本記事では考えます。

症状から原因を探す

KabelSchlepp Americaは、故障時の症状として、コークスクリュー、シースの下で導体に結び目ができる、キャビティの中でケーブル同士が絡む、ケーブルが横桟の間からはみ出して曲げ部で挟まる、他のケーブルや横桟との絡みでシースが裂ける、導体の断線で導通が無くなる、を挙げています。各社の説明をもとに、症状と主な原因、対策を整理すると次のようになります。

症状主な原因(各社の説明から)対策
コークスクリュー連続屈曲用でないケーブル、ねじれたままの敷設連続屈曲用への交換、ねじれの無い敷設
導体の断線、導通不良曲げ半径不足、詰め込み、可動部での固定曲げ半径の見直し、クリアランス確保、固定位置の是正
ケーブルのはみ出し、挟まり詰め込み、仕切り不足、ケーブル同士の絡み仕切りと棚の追加、配置の見直し
キャリアの破損支持方式の不適合、走行面の異物、重量の偏り支持方式と走行面の見直し、左右対称の配置

キャリアが壊れたらケーブルも交換を検討する

JMACSは、キャリア(同社資料ではケーブルベアと表記)が破損した場合はケーブルも交換するよう書いています。過剰なストレスでケーブルが傷んでいる可能性があるためです。キャリアが割れたので同じサイズを買い直す、という対応で再発が続いている場合は、キャリアの破損を結果と見て、中のケーブルと配置、運動条件をあわせて見直すことを勧めます。

ケーブルキャリア 選定ガイド|曲げ半径・充填・寿命とタイ工場のRFP - figure 2

固定(ストレインリリーフ)と敷設の手順

固定の方法は出典で違う

各社に共通しているのは、「可動部(曲げの区間)ではケーブルを固定したり結束したりしない」という点です。一方で、両端を固定するか、片方の端だけにするかは、出典とケーブルやホースの種類、支持方式で分かれます。

出典固定についての説明
igus丸形電線は両端でストレインリリーフ。回転運動などの例外は移動端のみ。最低限、移動端には固定するとしている。油圧ホースは伸びるため一般に移動端のみ、空圧ホースは両端
KabelSchlepp Americaキャリアの両端で適切なストレインリリーフが必要
LAPP自立の構成では移動点と固定点の両方で固定。滑走のチェーンは移動点のみ固定し、固定点側に少し余長を取る。ホースは移動端のみ。キャリアのリンクや横桟にタイラップで留めない
HELUKABELドラッグチェーンの一端で確実に固定し、もう一端は動きを吸収する余裕を残す
JMACSキャリアの動かない両端末のみで固定し、強く締め付けない。複数ケーブルの結束、可動部への固定は不可

igusは、曲げの終わりから固定点までの距離を、多くのケーブルでケーブル径の10〜30倍以内にするよう推奨しています(chainflexは取付金具に直接固定できると同社は説明)。LAPPは、高加速度ではケーブルタイによる固定は限定的だとしています。どの方法にするかは、使うケーブルとキャリアのメーカーの指示を一覧に書き込み、装置メーカーと合意しておくのが確実です。

ねじれ防止と余長

敷設時のねじれは、コークスクリューの原因として各社が挙げています。igusは、ケーブルはねじれなく真っ直ぐに敷設し、スプールの上から引き出さないよう書いています。KabelSchlepp Americaも、リールの上から引き出さず、正しく巻き解いてねじれなく敷設するよう説明しています。LAPPは、リールやドラムから接線方向にねじれなく巻き出し、敷設前に真っ直ぐ並べて落ち着かせることを勧めています。シースの印字は製造上らせん状に回っているため、ねじれの確認には使えないとも書いています。敷設時のケーブル温度は+5℃を下回らないこととしています。

HELUKABELは、敷設前にケーブルを平らな面にねじれなく伸ばし、全長の10%以上の余長を持たせるよう説明しています。JMACSは、よじれは水平に置くか吊り下げて取ること、張力をかけたまま配線するとキャリア内壁との摩擦でシースが削れることを書いています。

取付の向きと寸法

MISUMIは、取付ブラケットの固定端を下側、移動端を上側にするよう説明しています。igusは、長い滑走の用途では、固定端のストレインリリーフのねじ頭とチェーン上縁の間に最低10 mmのすき間を取るよう書いています。

固定端の先:盤と機上の接続

固定端から先の盤側の配線は、端子台やコネクタで受けます。盤内の端子の選び方は制御盤 端子台 選定|タイ工場のDINレール・配線・FAT実務にまとめています。

ケーブル本数そのものを減らす選択肢

キャリアの中身が増えすぎている場合は、本数を減らす方法も検討に値します。可動部の上にリモートI/Oを載せれば、個別のセンサ線をまとめて通信線と電源線に置き換えられます。機上に置くリモートI/Oの比較はリモートI/O 選定|タイ工場の盤内・機上比較とRFP・FAT/SATで扱っています。可動部のセンサ信号を無線化する方法もあります。こちらはIO-Link Wireless 導入:回転部・可動部を無線化する選定と受入をご覧ください。本数が減れば、充填とクリアランスにも余裕が出ます。

寿命計算と保証の読み方

寿命計算は前提条件とセットで

igusは、e-chainについてはオンラインの寿命計算(www.igus.eu/ECS-lifetime)、chainflexについては寿命計算機で往復回数を出し、保証の証明を発行できると説明しています。保証は、温度、運動の種類、ねじり、媒体、曲げ半径といった条件を前提にしている、と同社は書いています。前述のとおり、寿命計算では加速度が大きく効くとも説明しています。

つまり、寿命の数字は前提条件と一緒に読む必要があります。RFPや受け入れの書類では、寿命計算書に、温度、運動の種類(自立か滑走か)、ストローク、速度、加速度、曲げ半径が書かれているかを確かめてください。

保証の条件の例

igusはchainflexの保証を「4-year guarantee」と呼び、オンライン寿命計算で出した往復回数か、納品日から最大4年かの、いずれか早いほうまでとしています。上限は4年または1億往復のいずれか早いほうで、2020年2月15日以降の新規購入が対象、誤った敷設や不適切な使用による損傷は対象外と説明しています。e-chain本体については36か月の保証としています。

CF9の例では、外径12 mmのケーブルを曲げ半径100 mmで使うと係数は8.3になります。−25〜+90℃の範囲では、最小係数7を上回るため1,000万往復の保証になる、と同社は説明しています。温度帯の外では1,000万往復に8.5倍が必要となるため、8.3倍では750万往復の保証に下がる例が示されています。同じケーブルと同じ曲げ半径でも、温度だけで保証回数が変わるということです。

初期の伸びと点検の周期

LAPPは、ケーブルは運転初期の数時間で自然に伸び、チェーンは長い時間をかけて伸びると説明しています。そのうえで、運転1年目は3か月ごとに点検し、その後は保守の間隔ごとに、曲げ部でケーブルが自由に動くかを確認するよう勧めています。保守の指示を設備の点検計画に組み込むことも推奨しています。JMACSも、一定時間稼動させたあとでケーブルの位置を確かめ、必要に応じて調整するよう書いています。

点検で見る項目の例は、ケーブルのねじれやはみ出し、シースの摩耗、固定部の緩み、キャリアのたるみ(igusの区分でクリティカルたるみに近づいていないか)、走行面の異物です。ロボットを含む設備の保全体制の組み方はロボット 保守 サポート2026|訪問回数ではなく復旧能力を契約するも参考になります。

主要メーカーと公開仕様、価格の確認方法

本記事で参照した主なメーカーと、公開資料で確認できたことを並べます。推奨や順位を示すものではありません。

メーカー主な製品群公開資料で確認できたこと
iguse-chain(ケーブルキャリア)、chainflex(ケーブル)充填と仕切りのルール、自立と滑走と垂直の指針、寿命計算と保証の条件、クリーンルーム試験の型式別結果
椿本チエインケーブルベア(同社の登録商標。TKP形 プラケーブルベヤなど)通販サイトでの品番別の内寸、屈曲半径、価格。タイ法人のサイトにケーブル案内システムの製品群
KabelSchleppケーブルとホースのキャリア(TKAシリーズなど)技術ハンドブックの選定手順、クリアランス、故障原因、自立長の延長方法。ハンドブックに「A member of the TSUBAKI GROUP」と記載
MISUMIエコノミーシリーズのケーブルキャリア選定手順(外径と内部高さ、断面の60%、曲げ半径)、技術データ、日本とタイでの品番別表示
LAPPÖLFLEX CHAIN などのケーブル敷設指示、アジア向けレイアウト資料、製品別の仕様表
HELUKABELドラッグチェーン用ケーブル敷設マニュアル、問い合わせ用の質問票

各社の資料に書かれていない項目は、公開資料で確認できず、という扱いになります。例えば、各社の製品を同じ条件で比べた寿命の値は、公開資料で確認できませんでした。

タイでの入手先

タイでは次のことを確認できました。igusはタイ語サイト(igus.co.th)に「igus motion plastic thailand」として、電話番号(+66 02 587 4899)とメールアドレスを掲載しています。椿本チエインのタイ法人(Tsubakimoto (Thailand))は、タイ語サイトで、椿本チエイングループとして同社製品をタイで販売し、経験のある技術者が点検、相談、選定、技術支援を行うと説明しています。拠点としてバンコク本社と東部支店が掲載され、製品メニューにケーブル案内システムがあります。MISUMIタイ(th.misumi-ec.com)では、MISUMIのエコノミー品のケーブルキャリアが品番単位で表示され、類似品としてigusの「E2/000」も掲載されています。

価格の確認方法

価格は販売単位と税の扱いがそろっていないため、品番と単位、閲覧日を添えて確認する必要があります。以下は2026年10月15日に閲覧した値で、変動します。

  • モノタロウ:椿本チエイン TKP形 プラケーブルベヤ TKP25H15-30W15R28(内寸高さ15、内幅15、屈曲半径R28)は、1リンクあたり税別139円、税込153円。2リンク以上での注文と記載されています。
  • モノタロウ:同 TKP45H25-30W103R125(内寸高さ25、内幅103、R125)は、1リンクあたり税別579円、税込637円。
  • モノタロウ:igus EZチェーン Z14型 Z14.2.028.0-1(R28)は、1個(1リンク)あたり税別219円、税込241円。
  • MISUMI(日本):エコノミーシリーズ 中荷重タイプ E-MPD22-40-35-10(内側高さ22、内側幅40、曲げ半径35、10リンク)は、10リンクと取付ブラケットのセットで通常単価が税別3,220円、税込3,542円。シリーズ全体の通常単価は税別3,220〜29,945円です。
  • MISUMIタイ:同じ品番E-MPD22-40-35-10が「฿ 524.81 / ชิ้น」と表示されています。ただし画面上では標準価格とされ、登録したユーザーには実際の価格が表示されるとの記載があります。VAT込みかどうかは表示で確認できませんでした。

モノタロウの価格は1リンク単位、MISUMIは10リンクとブラケットのセット単位で、単位が違うため直接は比べられません。igusのタイと椿本チエインのタイについては、品番単位の公開価格を確認できませんでした。タイでの調達価格は、一覧と品番を添えて各社に見積もりを依頼するのが確実です。

RFPに書く要件とFAT/SATの受入基準

装置メーカーに発注する場合、キャリアとケーブルの要件をRFP(提案依頼書)に書いておくと、受け入れの基準もはっきりします。以下は項目の例です。数値の目標は自社で決めるものとして、例として置いています。

RFPの項目書く内容の例
中身の一覧用途、種類、本数、外径、最小曲げ半径、重量、シース材、品番、固定端と移動端。予備スペース(例:将来の追加本数)を自社で決めて明記
曲げ半径の根拠各ケーブルとホースのメーカーの動的な最小曲げ半径と、キャリアの曲げ半径の関係
充填とクリアランス採用したメーカーの基準と、その基準に収まっていることの説明
仕切りと棚仕切りの位置と間隔、判定の根拠
運動条件ストローク、速度、加速度、頻度、稼働時間、設置姿勢
支持方式自立、滑走とガイドトラフ、垂直。自立長の根拠
環境と形式切粉、クーラント、油、スパッタ、クリーン度と、選んだ形式とシース材
ケーブルの種類と品番連続屈曲用であることを品番とデータシートで示す
固定方法ケーブルとホースごとの固定位置(両端か移動端か)と方法
寿命計算書と保証書面前提条件(温度、運動の種類、ストローク、速度、加速度)を明記した計算書と、保証の条件を示す書面
予備品と交換手順予備ケーブルとリンク、交換の手順書、所要時間の目安
点検周期初期運転後の再点検の時期、その後の点検間隔と項目

寿命計算書を求める点について、igusは寿命計算機から保証証明書を依頼できると説明しています。メーカーがこうした書面を出せる場合は、条件付きで提出を求めることを勧めます。

FAT(工場出荷前の検査)

確認項目方法の例
曲げ部でケーブルが自由に動くか上側の走行部がストロークの両端にあるときに、それぞれ目視と手で確認(igusの敷設指針にもとづく)
中立帯曲げ部でケーブルが内周や外周に押し付けられていないか(LAPPの説明にもとづく)
固定一覧どおりの位置と方法か。可動部で結束していないか
走行面異物が無く清潔か(KabelSchlepp Americaの説明にもとづく)
試運転定めた往復回数(自社で決める)を運転し、ねじれ、はみ出し、異音が無いか
書類中身の一覧、寿命計算書、保証書面、配線図がそろっているか

SAT(現地での受入検査)

SATでは、実際のラインで動かしたあとに再点検する時期を決めておきます。LAPPは短期間の運転のあとで位置を確認して再調整すること、1年目は3か月ごとの点検を勧めています。JMACSも一定時間の稼動後に位置を確かめるよう書いています。初期運転後の再点検の結果と、一定期間(自社で決める)の稼働記録をもって受け入れを完了とする形にしておくと、初期の不具合を装置メーカーとの間で切り分けやすくなります。

費用と効果のモデル試算(仮の数字)

ここからは、この記事のための仮の数字による試算です。実在の工場の数字ではありません。

想定は、タイの日系自動車部品の切削工場です。ガントリローダ3台の可動部で、汎用ケーブルが詰め込まれたケーブルキャリアを使っており、断線が繰り返しています。1回の断線について、生産停止の損失と、修理の直接費(部材と外部作業)を別の費目として数えます。停止損失には修理費を含めていないため、同じ事象を2回数えているわけではありません。

項目計算金額
断線によるライン停止年4回×平均3時間×停止損失12,000 THB/時144,000 THB/年
修理の直接費(ケーブル部材、外部作業)年4回×15,000 THB60,000 THB/年
合計(現状の年間損失)144,000+60,000204,000 THB/年

対策は、3台のケーブルを連続屈曲用の高屈曲ケーブルに替え、中身の一覧を作って配置と仕切り、固定を見直し、必要な箇所はキャリアも更新するものとします。

項目金額
ケーブル150,000 THB
キャリア更新、仕切り90,000 THB
作業と切替時の停止対応80,000 THB
設計、FAT/SAT、記録40,000 THB
初期費用 合計360,000 THB
年間の点検費24,000 THB/年
ケース防げる断線年間効果年間純効果回収年数
基準ケース年4回(全部)204,000 THB204,000−24,000=180,000 THB360,000÷180,000=2.0年
感度(事象半分)年2回72,000+30,000=102,000 THB102,000−24,000=78,000 THB360,000÷78,000≈4.6年

感度のケースは、断線を想定の半分(年2回)しか防げない場合、または元々の断線が年2回だった場合です。停止損失は2回×3時間×12,000 THB=72,000 THB、修理の直接費は2回×15,000 THB=30,000 THBになります。

ケーブルキャリア 選定ガイド|曲げ半径・充填・寿命とタイ工場のRFP - figure 3

この試算の読み方を補足します。基準ケースの204,000 THB/年は、断線を全部防げた場合の上限です。断線の原因がケーブル側ではない場合、例えばキャリアの支持不足、走行面の異物、設計外の加速度などが原因なら、効果は小さくなります。導入を判断する前に、過去1年の断線記録(日時、軸、ケーブル、症状)から頻度と原因を数えることを勧めます。また、SATと初期運転後の点検で再発が無いことを確かめるまでは、効果に数えないほうが安全です。

よくある質問

ケーブルキャリアとケーブルベアの違いは?

「ケーブルベア」は株式会社椿本チエインの登録商標で、同社の製品名です。一般名称としてはケーブルキャリアのほか、ケーブルチェーン、ケーブル保護管などと呼ばれ、igusは自社製品をエネルギーチェーン(e-chain)と呼んでいます。働きは同じで、可動部のケーブルとホースを収め、曲げ半径を保ちながら一緒に動かす部品です。

ケーブルキャリアの曲げ半径はどう決める?

中に通すケーブルとホースのうち、最も大きな最小曲げ半径(最も太いか、硬いもの)に合わせて決める、とigusとMISUMIは説明しています。ケーブル側の値は、メーカーの動的な連続屈曲の値を使います。「外径の何倍」という目安は、JMACSが10倍以上、igusが10倍を簡易則として紹介、KabelSchlepp Americaが高屈曲ケーブルで7.5倍(メーカー値が無い場合)と、出典で違います。

ケーブルキャリアの充填率は何%まで?

一律の値はありません。JMACSは占積率30%以下、MISUMIとKabelSchlepp Americaは断面の60%以内(以下)としており、出典で2倍の差があります。外径と内高の関係も、MISUMIは80%以内、igusとLAPPは内高からクリアランス(10%)を引いた値としています。使うケーブルとキャリアのメーカーの値に従い、迷ったら厳しいほうを採るのが無難です。

高屈曲ケーブルは必要?

キャリアの中で何百万回も曲げる用途では、連続屈曲用のケーブルを使うことが前提になります。KabelSchlepp Americaは、連続屈曲用でないケーブルの使用を故障のよくある原因の一つに挙げ、汎用の産業用ケーブルの多くは小さな曲げ半径ですぐにコークスクリューになると説明しています。品番とデータシートで、動的な曲げ半径と曲げ回数が示されているかを確認してください。

ケーブルが断線する原因は?

各社が挙げる典型的な原因は、連続屈曲用でないケーブル、詰め込み、曲げ半径不足、ねじれたままの敷設、可動部での固定や結束といった、ケーブル側の選定と敷設に集中しています。キャリアの設計がケーブルに合っていないことも原因の一つに挙がっています。過去の断線記録で、どの軸のどのケーブルが、どんな症状で壊れたかを数えると、原因を絞りやすくなります。

ケーブルキャリアの寿命はどう見積もる?

メーカーの寿命計算を、前提条件(温度、運動の種類、ストローク、速度、加速度、曲げ半径)とセットで使います。igusは、e-chainとchainflexの寿命計算と、条件付きの保証を用意していると説明しています。同じケーブルでも温度で保証回数が変わる例があるため、計算書に条件が書かれているかを確認してください。

ケーブルキャリアの価格は?

2026年10月15日の閲覧時点で、モノタロウでは椿本チエインのTKP形が1リンクあたり税込153円(TKP25H15-30W15R28)や税込637円(TKP45H25-30W103R125)、igusのZ14型が1リンクあたり税込241円でした。MISUMI(日本)のE-MPD22-40-35-10は10リンクと取付ブラケットで税込3,542円です。単位が違うため直接は比べられません。タイではMISUMIタイで同じ品番が標準価格฿524.81と表示されていましたが、VAT区分は表示がなく、igusと椿本チエインのタイでの品番単位の公開価格は確認できませんでした。

まとめ

  • ケーブルキャリアの選定は、カタログのサイズ表から始めず、①中に通すケーブルとホースの一覧、②運動条件、③環境の3つで決まると本記事では考えます
  • ①と②がサイズと支持方式を、③が形式とシース材を決めます
  • 曲げ半径は、最も太いか硬いケーブルの、メーカーの動的な最小曲げ半径で決めます。「外径の何倍」の目安は出典で違います
  • 充填率、外径と内高の関係、ホースのクリアランスにも一律の値はありません。採用するメーカーの値に従い、迷ったら厳しいほうを採ります
  • 径の近いケーブルが並ぶ場合や性質の違うものは仕切りで分け、重いものを外側に左右対称に置きます
  • 自立で届かない長さは滑走やガイド、支持ローラで対応し、垂直は吊り下げと立ち上げで条件が違います
  • 断線の典型的な原因は、ケーブルの種類、詰め込み、曲げ半径、ねじれ、固定といったケーブル側に集中しています。キャリアだけを買い直しても再発する可能性があります
  • 可動部では固定や結束をせず、両端か移動端かはケーブルとホースの種類、支持方式、メーカーの指示で決めます
  • RFPには中身の一覧と、条件付きの寿命計算書を求め、FATではストローク両端と中立帯、SATでは初期運転後の再点検を確かめます

どの軸のどのケーブルから見直すか、まだ決まっていなくてもかまいません。断線記録の棚卸しや、中身の一覧づくりの段階からでも、TOMAS TECH にご相談いただけます。タイの日系工場で、現状の確認からRFP、FAT/SATまでを一緒に進めます。お問い合わせはこちらからどうぞ。

参考情報