タイ工場でロボット 保守 サポートを選ぶとき、比較すべきなのは「年に何回来てもらえるか」だけではありません。本当に買うべきものは、異常を検知してから、安全に止め、原因を切り分け、復旧し、安全性と品質を確認して生産へ戻し、再発防止まで閉じる「測定可能な復旧システム」です。訪問回数や曖昧な「迅速対応」だけで契約すると、いざ停止したときに、誰が接続を許可するのか、予備品がどこにあるのか、どのバックアップを戻すのか、誰が再稼働を承認するのかが決まっていない、という事態が起こります。
本稿では、タイの製造現場で産業用ロボット保守を調達する責任者に向けて、資産台帳、重要度、予防保全、遠隔・現地対応、予備品、バックアップ、サイバーセキュリティ、安全再検証、障害訓練、KPIを一つの契約にまとめる方法を解説します。特定メーカーのサービスを推奨するのではなく、複数ベンダーを同じ物差しで比較し、FAT/SAT後の運用引継ぎから契約更新まで使える実務モデルを示します。
なぜ今、ロボット 保守 サポートを「復旧能力」で選ぶのか
国際ロボット連盟によると、2024年に世界で導入された産業用ロボットは542,000台で、年間導入台数が500,000台を超えたのは4年連続でした。新規導入の地域別構成はアジア74%、欧州16%、米州9%です。これはタイの導入台数を示す数字ではありませんが、アジアでロボットを運用する工場が増え、導入後の支援能力が経営課題になっている背景を示します。
タイ投資委員会の2026年上半期発表では、機械・自動化・ロボティクス分野の投資申請が82件、約131億バーツ、Smart and Sustainable Industryの申請が132件、約172億バーツでした。後者には機械更新、デジタル導入、自動化・ロボティクス統合が含まれます。これらは申請件数・申請額であり、設置済みロボット台数や実現済みの生産効果ではありません。それでも、設備投資が続くほど、引渡し後の保守体制を標準化する必要は高まります。
ロボットセルは、ロボット本体だけで成立しません。コントローラ、ドライブ、エンドエフェクタ、治具、センサー、PLC、産業ネットワーク、安全機器、ビジョン、上位システム、レシピ、ライセンス、プログラム、バックアップが連携しています。したがって「メーカーに電話できる」という条件だけでは、セル全体の復旧責任を説明できません。調達側は、障害の入口から生産解放までの鎖を設計し、その鎖のどこを誰が担うかを契約に落とす必要があります。

図1のラベル: ASSET REGISTER -> CRITICALITY -> PM / INSPECTION -> MONITOR -> RESPOND -> RECOVER -> REVIEW
最初に作るべき資産台帳と重要度分類
良いロボット保守契約は、対象設備の正確な台帳から始まります。「ロボット10台」のような集計では足りません。各セルについて、少なくとも次の情報を一意の資産IDに結び付けます。
| 台帳項目 | 契約で必要な理由 | 証拠の例 |
|---|---|---|
| ロボット、コントローラ、ドライブの型式・製造番号 | 対象範囲と適合する予備品を特定する | 銘板写真、メーカー部品表 |
| ソフトウェア、ファームウェア、オプション、ライセンス | 復元可能な構成と保守期限を判断する | バージョン一覧、ライセンス台帳 |
| 安全設定、I/O、インターロック | 修理後の再検証範囲を決める | 安全機能一覧、回路図 |
| プログラム、レシピ、キャリブレーション | 正常状態へ戻す基準を持つ | 承認済みベースライン、チェックサム |
| バックアップの場所・取得日・復元試験日 | 「保存した」ではなく「戻せる」を証明する | 復元試験記録 |
| 重要予備品、在庫場所、保存条件、リードタイム | 必要時に使えるかを判断する | 在庫記録、点検記録 |
| 陳腐化情報とメーカー支援期限 | 更新・代替計画を前倒しする | ライフサイクル通知 |
| 現地スキルと有資格担当者 | 一次切り分けと安全作業の限界を明確にする | 教育記録、権限表 |
次に、各資産を生産影響と安全上の結果で分類します。重要度は購入価格ではなく、停止したときの結果で決めます。代替ラインがなく工程全体を止めるセル、危険源の再評価が必要なセル、交換部品が長納期の旧型設備は、同じ台数でも高い支援レベルが必要です。一方、冗長設備があり、標準品で復旧でき、現地チームが十分に訓練されているセルは、同じSLAを買う必要がないかもしれません。
重要度別のサービス階層
| 階層 | 典型的な条件 | 契約設計の重点 |
|---|---|---|
| Tier A | 代替なし、安全・品質・主要出荷への影響が大きい | 明確なエスカレーション、重要予備品、復元試験、障害訓練、時間帯別担当 |
| Tier B | 一定時間は代替運転できるが、長期停止は困難 | 予防保全、遠隔診断、合意した現地派遣、共通予備品 |
| Tier C | 冗長性があり、停止影響が限定的 | 計画保全、営業時間内支援、標準リードタイム |
この分類により、全台一律の高額契約を避けながら、重大設備の穴を残さずに済みます。分類理由、見直し頻度、設備変更時の再分類条件も記録します。
産業用ロボット保守の範囲を分解する
「フルサポート」という言葉は、契約書では役に立ちません。範囲を計画保全、状態監視、障害対応、復旧、継続改善に分け、それぞれの入力、作業、成果物、除外事項を明記します。
ABBの公式サービス契約ページは、技術支援、現地支援、予防保全・点検、固定料金の部品・工賃、状態監視、バックアップ管理、資産最適化などを契約要素の例として示しています。ABBは現地応答時間を4~48時間でカスタマイズできる例も掲載していますが、これはABBの提供例であり、普遍的な基準でもTOMAS TECHの約束でもありません。実際のタイ拠点での対象地域、受付時間、部品、技術者、除外条件は書面で確認すべきです。
KUKAの公式サービス情報も、予防保全、修理、予備品配送、ホットライン、保守契約、遠隔・現地サービス、性能確認、プログラミング、アップグレードを例示しています。24時間・週7日・年365日の支援、契約別の応答・予備品条件、セキュアVPNによる遠隔サービスの例がありますが、これらもベンダーおよび契約に依存します。広告上の機能を、自社サイトで保証されるサービスレベルと読み替えてはいけません。
計画保全と点検
ロボット予防保全では、メーカー推奨、稼働時間、動作負荷、環境、過去の故障、法令・社内基準を根拠に作業を組みます。作業名だけでなく、対象、周期、許容値、測定方法、必要停止時間、交換条件、記録様式を決めます。給脂や目視点検を実施した事実だけでなく、測定値、異常傾向、是正期限、完了証拠が残る仕組みにします。
点検中に設定やプログラムを変更する可能性がある場合は、変更管理を適用します。変更前バックアップ、承認者、変更理由、変更内容、試験結果、ロールバック方法、更新後ベースラインを一つの記録にします。保全担当者の善意に依存せず、後から「いつ、誰が、何を変えたか」を追跡できることが重要です。
状態監視とアラーム証拠
状態監視は、ダッシュボードを導入すること自体が目的ではありません。取得するアラーム、イベント、温度、負荷、サイクル情報などを決め、時刻同期、保存期間、通信断時の扱い、閲覧権限、異常判定後の行動を設計します。アラームが記録されても、担当者へ通知されず、チケットやエスカレーションにつながらなければ、復旧能力は上がりません。
契約には、監視対象、欠測時の通知、一次判定の担当、推奨処置、現場確認の期限、履歴の引渡し方法を含めます。設備データを外部へ送る場合は、ネットワーク境界、保存場所、権限、ログ、契約終了時のデータ返却・削除も確認します。
「応答時間」を7つの時刻に分ける
ロボット 保守 契約で最も誤解が生じやすいのが「応答」です。「4時間対応」が、受付確認なのか、技術者が遠隔接続するまでなのか、現地到着なのか、復旧完了なのかで価値は大きく変わります。少なくとも以下を別の時刻として定義します。
| マイルストーン | 意味 | 必要な証拠 |
|---|---|---|
| Acknowledgment | 連絡を受け、チケットを発行した | チケット番号、受付時刻 |
| Qualified remote connection | 対象機種を扱える担当が安全な手順で接続した | 担当者、接続・承認ログ |
| Technician dispatch | 必要な技能・工具・部品を確認して派遣を決定した | 派遣記録、予定時刻 |
| Onsite arrival | 技術者が工場の指定地点へ到着した | 入構・到着記録 |
| Workaround | 合意した制限条件で暫定運転を可能にした | 暫定条件、リスク承認 |
| Restore | 技術的な故障を修復し、構成を復元した | 修理・設定・試験記録 |
| Verified production release | 安全と工程・初品を確認し、権限者が生産を解放した | 検証票、承認署名 |
計測の開始条件も必要です。電話、ポータル、メールのどれを正式な受付とするか、必要情報が不足した場合に時計を止めるか、営業時間外、祝日、遠隔地、入構手続き、顧客都合の待機をどう扱うかを決めます。目標未達時は、単なる値引きだけでなく、是正計画、原因分析、訓練の再実施など、復旧能力を改善する処置につなげます。
予備品は「在庫あり」ではなく使用可能性で評価する
ロボット ダウンタイム 対策では、予備品リストの存在だけでは不十分です。部品番号が正しいか、対象バージョンと互換性があるか、保管環境が適切か、電池やシールなどの期限は有効か、貸出後に補充されたか、交換工具と手順があるかを確認します。
重要度別に、現場在庫、ベンダー委託在庫、地域倉庫、受注品を分け、所有権、費用、払い出し権限、補充点、棚卸し頻度、保証開始、陳腐化時の扱いを決めます。リードタイムは固定の数字を推測せず、部品ごとにベンダーが書面提示し、定期的に更新する方式が安全です。
予備品交換も訓練します。例えば、交換可能なドライブが棚にあっても、互換ファームウェア、パラメータ、バックアップ、設定用PC、ケーブル、権限、再検証手順がなければ復旧できません。契約受入れ前の障害訓練で、取り出しから安全な再稼働までを通して確かめます。
バックアップと変更管理を復旧可能な形にする
バックアップのKPIを「取得率」だけにすると、壊れたファイル、古い版、暗号鍵の不足、ライセンス不備を見逃します。管理対象には、ロボットプログラム、コントローラ設定、PLC、HMI、ビジョン、レシピ、キャリブレーション、安全設定、ネットワーク設定、ライセンス、必要な復元ツールを含めます。
各バックアップには、資産ID、構成バージョン、取得日時、取得者、変更チケット、保存場所、完全性確認、復元試験結果を結び付けます。オンラインとオフラインの保管、権限分離、暗号化、保持世代、災害時アクセスも自社方針に合わせて定義します。どの版が承認済みの正常ベースラインなのかを一意にし、現場PCのデスクトップにある匿名ファイルへ依存しないようにします。
復元試験では、単にファイルを開くのではなく、合意した安全な試験環境で復元し、通信、I/O、座標、ツール、レシピ、インターロック、安全機能、工程結果を確認します。すべての資産で同時に行う必要はなく、重要度と変更頻度に応じた計画を作り、失敗は是正して再試験します。
遠隔支援をサイバー安全にする
遠隔接続は移動時間を減らし、一次切り分けを早める可能性がありますが、常時開放の共有アカウントは新しいリスクを作ります。契約には、接続目的、対象資産、承認者、接続可能時間、本人確認、最小権限、操作記録、画面・コマンドログ、セッション終了、緊急遮断を含めます。
安全な運用例は、現場が案件ごとに接続を承認し、指定された踏み台またはVPNを使い、個人別アカウントと多要素認証を適用し、必要な資産へ必要な時間だけ接続を許可することです。実装は自社IT/OTポリシーとリスク評価に合わせます。ベンダーの「セキュアVPN対応」という説明だけで、工場側の許可、ネットワーク分離、監視、ログ保持が完了したことにはなりません。
遠隔接続が使えない状況も訓練します。回線障害、認証基盤停止、担当者不在、証明書期限切れが起きたときに、電話による安全な切り分け、現地派遣、ログ持出しの承認手順へ切り替えられるようにします。
修理後の安全再検証と生産解放
ISO 10218-1:2025は2025年2月発行の第3版で、部分完成機械としての産業用ロボット本体の安全要求を扱います。ISOはロボットの統合と用途についてISO 10218-2:2025を案内しています。ただし、どの要求が適用されるかは、システム、法域、契約、リスク評価によって異なります。保守契約だけで適合が成立するわけではなく、セル・用途の危険源、安全機能、変更後の再検証は、インテグレーション側と工場側の責任分担を明確にする必要があります。本稿は法的助言ではありません。
修理完了と生産解放は分けます。部品を交換しアラームが消えても、座標、速度、経路、ツール、インターロック、安全停止、保護装置、ワーク品質が承認状態へ戻ったとは限りません。契約で、誰が技術復旧を宣言し、誰が安全確認を行い、誰が初品・工程を承認し、誰が生産解放するかを指定します。
再解放チェックには、復元したバックアップとバージョン、変更箇所、必要な安全機能試験、インターロック、低速・単動確認、ドライラン、初品または工程受入れ、残存制限、監視強化期間を含めます。暫定回避策を使う場合は、許可された期間、運転条件、追加管理、恒久対策期限を明記します。

図2のラベル: DETECT -> TRIAGE -> SAFE STATE -> RESTORE -> VERIFY SAFETY -> RELEASE -> RCA / ACTION。検証失敗時は FAIL -> FIX & RETEST で戻る。
契約受入れ前に障害訓練を行う
提案書と連絡網だけでは、復旧できることを証明できません。FAT/SATから運用へ移る前、または新しいロボット保守サポートの開始時に、代表的な障害を安全に模擬し、証拠を残します。少なくとも次を候補にします。
- コントローラまたはドライブ故障の切り分け。
- 産業ネットワーク断とアラーム・ログの取得。
- 承認済みバックアップからの復元。
- 重要予備品の払い出し、交換、補充起票。
- 遠隔アクセス不成立時の代替手順。
- 営業時間外の連絡と段階的エスカレーション。
訓練ごとに、前提条件、開始合図、安全な停止、期待結果、担当者、必要証拠、合否基準を定義します。成功時刻だけでなく、誤った連絡先、権限不足、互換性不一致、ログ欠落も記録します。不合格は「参考」として閉じず、責任者と期限を付けて修正し、同じシナリオを再試験します。
本番設備で故障を起こす必要はありません。シミュレーション、予備コントローラ、計画停止、机上訓練を組み合わせ、リスク評価と工場の許可に従います。重要なのは、契約の言葉が人、部品、データ、権限、手順として実際につながることを確かめることです。
RFPとロボット保守契約に入れる決定表
RFPでは、ベンダーに自由記述だけを求めず、資産・階層別の同一マトリクスへ回答してもらいます。「可能」「標準」「別途」ではなく、対象、時間帯、場所、担当資格、成果物、除外、価格境界、顧客側前提を記入させます。
| 評価領域 | 必須質問 | 受入れ証拠 |
|---|---|---|
| COVERAGE | どの資産、周辺機器、ソフト版、作業が対象か | 資産・作業マトリクス |
| RESPONSE | 各マイルストーンの開始・終了、時間帯、例外は何か | チケット時刻とエスカレーション記録 |
| SPARES | 在庫場所、互換性、リードタイム、補充責任は何か | 棚卸し、適合表、交換訓練 |
| BACKUP | 何を、いつ、誰が保存し、どう復元検証するか | 版管理台帳、復元試験 |
| CYBER | 遠隔接続の承認、認証、権限、ログ、遮断はどうするか | 接続ログ、アクセスレビュー |
| SAFETY | 修理後に何を再検証し、誰が解放するか | 安全・工程受入れ票 |
| DRILL | どの障害を、いつ、どの合否基準で訓練するか | 訓練記録、再試験結果 |
| KPI | どのデータで傾向と再発防止を確認するか | 月次スコアカード、RCA期限 |

図3のラベル: COVERAGE, RESPONSE, SPARES, BACKUP, CYBER, SAFETY, DRILL, KPI
価格も境界を明示します。定額に含む受付、遠隔支援、定期点検、現地工賃、移動、部品、時間外対応と、別料金になる消耗品、改造、ソフト更新、復旧不能な旧型品、第三者設備を分けます。固定料金という名称だけで無制限対応と判断せず、上限、除外、承認フローを確認します。
ベンダー評価では、最も短い宣伝上の応答時間だけで順位を決めません。タイ国内の対象サイトで、対象機種を扱える人が、必要部品とアクセス権を持ち、合意した時間帯に動ける証拠を比較します。メーカー、システムインテグレーター、地域サービス会社、工場内保全の責任境界も一枚にします。導入・統合段階の選定についてはタイでのロボットSIer選定ガイドを、協働ロボット特有の実装観点はタイ工場の協働ロボット導入ガイドも参照してください。
KPIは罰則ではなく復旧能力の改善に使う
月次レビューでは、平均値一つに依存しません。重要設備と一般設備、営業時間内外、遠隔・現地、計画・突発を分け、分布と未達理由を見ます。推奨するスコアカード項目は、資産カバー率、計画保全完了、アラーム・イベント取得、バックアップ復元試験、予備品の可用性と提示リードタイム、遠隔アクセス統制、安全再検証、エスカレーション、訓練結果、再発故障のRCA完了です。
数値目標は設備の重要度、現地条件、ベンダー能力、工場の許容停止に基づき合意します。本稿の情報からダウンタイム、MTTR、可用性、投資回収、応答時間を推定してはいけません。実績データがない初期契約では、まず計測定義と基準値を整え、一定期間の証拠を得てから目標を更新する方法が現実的です。
RCAは報告書提出で完了にしません。原因、封じ込め、恒久対策、他設備への水平展開、責任者、期限、効果確認を追跡します。同じアラームの繰り返し、同じ部品の再交換、暫定回避策の長期化をスコアカードで見えるようにします。
月次・四半期レビューの運営方法
月次会議は、チケット件数を読み上げる場ではなく、次の停止を短くする判断の場にします。会議前にベンダーと工場が同じ元データを確認し、資産ID、重要度、発生日時、七つの応答マイルストーン、使用部品、構成変更、安全・品質確認、未完了処置を突合します。定義が異なる数字を会議で初めて比較すると、原因分析より数字の説明に時間を使ってしまいます。
毎月は、期限超過した計画保全、復元試験の失敗、最低在庫割れ、遠隔アクセスの例外、未完了RCAを優先します。四半期には、重要度の変更、旧型品の支援期限、担当者の交代、連絡網、訓練計画、契約の対象外となった設備を見直します。新しい製品、治具、ソフトウェア版、ネットワーク構成を導入した場合は、定例を待たずに台帳、バックアップ、予備品、再検証項目を更新します。
責任の置き場所も明確にします。工場側には契約責任者、設備オーナー、安全、品質、IT/OT、購買の窓口を置き、ベンダー側にはサービス責任者、技術エスカレーション、部品窓口を置きます。一人にすべてを集約すると、不在時に意思決定が止まります。主担当と代替担当、承認できる範囲、時間帯を連絡表へ記載し、障害訓練で実際に使います。
契約更新時は、単価だけでなく、証拠の品質と改善の完了率を評価します。未達が顧客側の入構遅延、情報不足、遠隔接続不許可によるものなら、顧客側の是正も必要です。逆に、担当者不足、誤った予備品、古いバックアップ、繰り返す一次診断ミスが原因なら、ベンダーの能力計画へ反映します。双方の原因を同じ基準で扱うことで、SLAを責任転嫁の道具ではなく、復旧システムを改善する共通言語にできます。
複数メーカー・複数拠点での標準化
複数メーカーのロボットを持つ工場では、メーカーごとの契約名称や帳票をそのまま並べると、全体像が見えません。内部では、資産ID、重要度、七つの時刻、バックアップ状態、予備品状態、安全再検証、RCAという共通フィールドへ変換します。メーカー固有の診断や純正要件は維持しつつ、経営・工場管理には共通スコアカードで報告します。
複数拠点でも、目標値を無理に同一にする必要はありません。交通条件、稼働時間、現地技能、部品配置、製品リスクが異なるからです。一方、用語、証拠、変更管理、合否判定の構造はそろえられます。標準テンプレートを使い、サイト固有条件を別欄にすれば、拠点間の学びを共有しながら、現場に合わない一律SLAを避けられます。
FAT/SATから運用への引継ぎチェックリスト
保守契約は稼働後に急いで買うものではありません。設備調達時に、引継ぎ成果物と受入れ条件をFAT/SATへ組み込みます。
- 資産台帳、構成、ライセンス、陳腐化情報が最新である。
- 承認済みプログラム、設定、図面、取扱・保全手順がそろっている。
- バックアップの完全性と、選定資産の復元試験が確認済みである。
- 重要予備品の適合、保存、在庫、補充、リードタイムが記録されている。
- 現地・遠隔の連絡先、受付経路、対応時間帯、エスカレーションが試験済みである。
- 遠隔接続のサイバー統制と、接続不能時の代替手順が承認されている。
- 安全機能、インターロック、工程・初品の再解放基準と権限者が明確である。
- 保全・故障・変更・訓練の記録様式と保管場所が決まっている。
- 契約KPIの定義、データ源、レビュー頻度、是正方法が合意されている。
不足があれば、未完了リストに責任者と期限を付けます。「運転できた」ことと「障害から再現可能に復旧できる」ことは別の受入れ条件です。
引継ぎ判定では、文書が納品フォルダに存在するかだけでなく、実際の担当者が検索し、正しい資産へ結び付け、必要な権限で利用できるかを確認します。図面番号と現物、バックアップの資産ID、予備品の適合先、連絡先の勤務時間が一致しなければ、書類上の完了にとどまります。受入れ会議では、代表的なTier A資産を一つ選び、台帳から手順、部品、接続、復元、安全・品質確認、承認記録までを追跡すると、境界の抜けを発見しやすくなります。その結果を他の同種資産へ展開し、未完了項目は「後日対応」という曖昧な状態にせず、暫定管理、責任者、期限、再確認方法を付けます。保守サービスの開始日は、契約書の署名日だけでなく、この運用鎖が使える状態になった日として管理することが重要です。
よくある質問
ロボット保守サポートはメーカーとSIerのどちらに頼むべきですか?
一律の正解はありません。ロボット本体の深い診断、純正部品、ソフトウェア権限はメーカーが強い場合があり、セル全体、PLC、周辺機器、工程との統合はSIerが理解している場合があります。工場内保全が一次対応を担うこともあります。資産・障害種類ごとに主担当、代替担当、エスカレーション先を決め、責任の空白をなくしてください。
産業用ロボット保守で最低限必要な予備品は何ですか?
機種、構成、重要度、使用環境、陳腐化、供給条件で変わるため、共通の固定リストはありません。故障履歴とメーカー情報を使い、停止影響、互換性、提示リードタイム、保存寿命、交換技能を評価します。部品だけでなく、工具、ケーブル、ソフト、ライセンス、パラメータ、再検証手順も復旧セットとして扱います。
ロボット予防保全をしていれば突発停止は防げますか?
予防保全はリスク低減に役立ちますが、突発停止がなくなるとは保証できません。計画点検に加え、アラーム証拠、バックアップ、予備品、連絡網、安全な復旧手順、障害訓練を組み合わせ、発生時の影響と復旧のばらつきを小さくする設計が必要です。
応答時間は何時間を要求すべきですか?
一つの普遍的な時間はありません。重要度、代替運転、地域、時間帯、必要技能、部品配置、工場の許容停止から決めます。受付、遠隔接続、派遣、現地到着、暫定復旧、技術復旧、生産解放を分け、各時刻の証拠を要求してください。ベンダーの公開例は比較材料にとどめ、実サイトの条件を書面で確認します。
遠隔保守があれば現地支援は不要ですか?
不要にはなりません。遠隔支援はログ確認や設定診断に有効な場合がありますが、機械的故障、配線、部品交換、安全確認、接続障害では現地作業が必要です。遠隔と現地の切替条件、派遣判断、アクセス不能時の代替手順を契約で決めます。
修理後は誰がロボットを生産へ戻しますか?
技術者が修理完了を宣言することと、生産解放は別です。工場の定めた権限者が、適用される安全検証、インターロック、動作、工程・初品、残存制限を確認して解放します。役割分担はシステム、法域、契約、リスク評価に合わせ、事前に承認してください。
まとめ:訪問回数ではなく、証拠のある復旧システムを契約する
タイ工場のロボット保守サポートでは、資産台帳と重要度を起点に、予防保全、監視、応答、予備品、バックアップ、サイバー統制、安全再検証、障害訓練、KPIを一つの運用モデルへつなげることが重要です。応答を複数の時刻へ分解し、修理と生産解放を分け、契約受入れ前に実演すれば、曖昧な約束を比較可能な能力へ変えられます。
TOMAS TECHでは、タイの製造現場に合わせた資産・重要度整理、保守RFP、責任分界、受入れ試験、運用引継ぎの具体化をご支援します。既存設備の保守契約を見直したい場合も、新規セルのFAT/SATから準備したい場合も、まずはお問い合わせください。