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2026.10.18

制御盤 ケーブルグランド 選定|防水・外径・FATの実務

制御盤 ケーブルグランド 選定|防水・外径・FATの実務

制御盤のケーブル引込口は、完成後に見えにくくなる小さな部位です。しかし、制御盤 ケーブルグランド 選定を「M20なら何でも入る」としてしまうと、外被とシールの隙間、盤面の取付不良、ケーブルの引張荷重、シールドの接続不良が別々の不具合として現れます。タイ工場では高湿度、洗浄、屋外雨水、粉じん、設備振動など条件がラインごとに異なり、同じグランドを一律に使うことも危険です。本稿は銘柄比較より先に、ケーブル表、盤の開口、要求する保護性能、RFP、FAT/SAT を一本の検証可能な仕様につなぐ手順を示します。

最初に結論:ケーブルグランドは「盤の穴に合うねじ」と「ケーブル外径を密閉できるクランプ範囲」を別々に確認します。次に盤面側のガスケット、ケーブル外被、引張応力、必要なら EMC シールド接続を確認します。カタログ上の IP 表示だけでは、加工後の制御盤全体の保護等級は決まりません。採用品の施工説明と現場の判定基準をセットにしてください。

1. 制御盤 ケーブルグランド 選定で最初に決める境界

ケーブルグランドの役割は、ケーブルを盤に通すことだけではありません。貫通部からの水・粉じんの侵入を抑え、ケーブル外被を保持し、端子に引張荷重を伝えにくくします。型式によってはシールドを盤の導電面へ接続する機能も担います。IEC 62444:2010 は電気設備用ケーブルグランドの構造と性能の要求・試験を扱う規格であり、製品の選定時に参照できる一次資料です。ただし、規格名を注文書に記すだけでは、採用型式と実際の取付状態は確定しません。

このテーマは制御盤全体の設計・FATの一部ですが、ここでは盤壁を貫通する一点に焦点を絞ります。盤内での導体接続は端子台の選定で、盤内熱対策は冷却ファンの選定で扱います。グランドに換気や端子保持の役割まで期待してはいけません。

選定の単位は「1台の盤」ではなく「1本の引込ケーブル」です。同じ盤でも、モーター電源、エンコーダ、センサー、Ethernet、予備開口では外径・曲げ・シールド・保全方法が違います。まずケーブル表に各引込口のケーブル品番、実測外径、最小・最大の外径公差、外被材、シールド有無、取付位置、交換頻度を並べます。メーカーの公称外径だけでは製造公差や採用代替ケーブルの差を吸収できないため、量産時には実ケーブルでも測ります。完成後に品番を入れ替える可能性があるなら、交換候補の外径まで設計入力に含めます。

本記事でいう合格条件

合格は「ケーブルが入った」ことではありません。採用したケーブルとグランドが指定範囲で組み合わされ、盤面側と外被側のシールが施工説明どおりに組み立てられ、所定の方向・固定方法で保持され、要求された保護・EMC・保守性を現場で確認できる状態です。IP 等級が必要な場合は、どの部品を、どの条件で、どの組立状態に対して確認するかを発注前に明記します。

2. ケーブルグランド IP等級をどう読むか

IEC 60529 は電気機器の外郭が提供する保護等級を IP コードで分類します。第一数字は危険部への接近・固形物侵入に関する保護、第二数字は水の侵入に関する保護を表します。一方で、製品カタログの「IP68」はその製品と試験条件に紐づく表示です。各メーカーは水深・圧力・時間などを個別に記載します。IP68 という同じ文字だけで、洗浄ノズル、屋外雨水、連続水没のどれにも無条件に適合すると判断してはいけません。

グランドの IP 表示が高くても、盤全体の性能は別問題です。盤面の穴径・ねじ形状・塗装面・平面度・板厚、座金やガスケットの有無、外被の傷、未使用穴の処理、ドアシールなどが実際の侵入経路になります。Rittal の製品資料も、プレートを正しく取り付けた場合の IP 等級を条件付きで示しています。メーカーが製品単体に示す IP と、加工・組立後の盤全体に求める IP は発注仕様で分けて書きます。

まず設置環境を、屋内での粉じんと拭き取り、清掃時の散水、ホース洗浄、屋外雨水、結露、油・薬液付着などに分けます。水に触れる確率だけではなく、方向・圧力・頻度と停止時の温度差も整理します。洗浄設備なら洗浄方法を、屋外盤なら日射と雨の当たり方を確認します。タイ工場で「高湿度だから IP68」と短絡せず、必要な保護と排熱・結露対策を盤全体で決めます。

IP 表示の読み違いを避ける三つの確認

第一に、グランドのカタログにある IP 等級、試験条件、適用するケーブル外径、必要部品を同じ型式の資料で確認します。第二に、取付板がその製品の適用板厚・穴径・ねじ長に入るか、ロックナットやシール座金の指定があるかを確認します。第三に、組立後の確認方法を決めます。目視検査だけで済ませるのか、顧客仕様に基づく散水試験を行うのかは環境と契約で決まります。試験方法を曖昧にして「IP68相当」と書かないことが重要です。

制御盤 ケーブルグランド 選定|防水・外径・FATの実務 - figure 1

3. ケーブルグランド 電線径 選定:見るのは導体断面積ではなく外径

調達で最も起こりやすい誤解は、電線の導体断面積とグランドのクランプ径を取り違えることです。「2.5 mm²の4芯」と書いても外径は決まりません。絶縁厚、シールド、外被、耐油仕様、製造元によって外径が変わります。グランドのシールが触れるのは通常、ケーブルの外被外径です。LAPP の選定ガイドは外径を測って該当製品のクランプ範囲へ照合する手順を示しています。Phoenix Contact の資料も、同じねじサイズに複数のクランプ範囲がある例を掲載しています。

例えば M20 × 1.5 は盤へ入るねじの規格・寸法であり、密閉できるケーブル外径を一意に表しません。LAPP の SKINTOP ST-M のガイドに載る一例では M20 × 1.5 のクランプ範囲は 6~13 mm です。しかし、別シリーズや別メーカーの M20 が必ず同じ範囲とは限りません。採用候補ごとにデータシートを照合します。設計表には「M20」「ケーブル外径 11.8 mm」の二つだけでなく、製品型式と許容クランプ範囲を記します。

公称外径が範囲の端ぎりぎりの場合、調達後に実測値が範囲を外れるおそれがあります。製造ロットの公差、ケーブル交換候補、外被が扁平になる曲がり癖を考慮し、端から余裕を持つ型式を選びます。ただし「中央なら必ず安全」という一般式もありません。特殊なシール構造、二重シール、平形ケーブル、コルゲート管などは専用の適用表で判断します。ケーブルが軽く引けても抜けないことと、外被を傷めず密閉できることは別の確認です。

ケーブル表の最低列

項目記入例選定で使う理由
引込番号・行先C-01/モーターM1FAT写真と図面を対応させる
ケーブル品番・外被材メーカー正式型番、耐油PVCなど代替時の誤差と環境適合を確認する
外径公称値と現物実測値を区別クランプ範囲へ照合する
シールド編組あり/なしEMC型か通常型かを判断する
盤開口ねじ種、呼び、穴径、板厚盤面側の取り合いを確かめる
環境散水、油、紫外線、振動など材質と必要な保護を決める
採用グランド型番、シール、ナット、キャップ購買と保守交換を同じ仕様にする

多芯ケーブルと複数の細いセンサーケーブルを混同しないことも大切です。一つの標準グランドに複数本を無理に通すと、円形シールが各外被に均一に密着しません。複数本を一つの開口にまとめる場合は、その用途向けに設計されたマルチケーブル貫通システムと適合するインサートを選び、各ケーブル径と未使用孔の閉塞方法を確認します。将来予備を残したいときも、開放したままにはせず、メーカー指定のブラインドプラグを記録します。

4. 制御盤 ケーブル引込 防水は盤面側とケーブル側の二面で考える

ケーブルグランドには大きく二つのシール境界があります。ひとつは盤板と本体の間、もうひとつはグランドのシール部とケーブル外被の間です。片方が正しくても、もう片方に傷・緩み・寸法違いがあれば侵入経路になります。設計レビューでは「どこに水が入るか」を断面図で追い、雨や洗浄水がケーブルを伝って引込口へ向かう取り回しも見るべきです。

盤面側では、穴径と位置、打抜きバリ、塗装厚、板の曲がり、ねじの有効長を確認します。メーカーがシール座金や O リングを指定する構造なら、調達範囲に含めて組立記録にも残します。既設盤の PG ねじをメートルねじのグランドにそのままねじ込むような改造は避けます。LAPP は PG とメートルねじを互換と扱わないよう説明しています。変換アダプタを使う場合は、アダプタを含めた接合面と適用 IP 条件を確認します。

ケーブル側では、外被の円形性、表面傷、油・洗浄剤による変質、適切な締付けを見ます。ねじを強く締めれば保護等級が上がるわけではありません。過度の締付けはシール材や外被を損ねる場合があります。締付トルクや取付工具は型式ごとの施工説明で確定します。汎用的な数値を一律に指定しない方が、施工ミスを防ぎます。

引込位置も性能に影響します。可能なら雨水が直接溜まりやすい上面を避け、ケーブルに適切な曲げ半径と支持を与えます。ケーブルを端子で機械的に保持しないよう、グランドのストレインリリーフ能力と外部側のクランプ・支持点を分けて設計します。振動や繰り返し可動が大きいケーブルでは、固定用グランドだけで可動部の寿命を保証できません。可動ケーブルの仕様、曲げ半径、固定点を別に検討します。

材質は環境・荷重・保全方法から選ぶ

ポリアミド、ニッケルめっき真鍮、ステンレスなどはそれぞれ使いどころがあります。単に「金属の方が上」とは決めません。油・洗浄剤・紫外線・温度・腐食環境と、必要な機械的保持、接地・シールド接続、現地での補修部材入手を比較します。食品設備や薬液洗浄では表面形状や衛生条件も確認します。メーカーが材料適合を保証する範囲を確認し、未知の薬液についてはサンプル試験やメーカー照会を前提にします。

制御盤 ケーブルグランド 選定|防水・外径・FATの実務 - figure 2

5. EMCケーブルグランドはシールドの接続経路まで指定する

インバータのモーターケーブルやノイズに敏感な信号線では、シールドの処理が盤への引込で途切れやすくなります。EMC 対応グランドは、ケーブルのシールドと盤側の導電面を接続する構造を持ちます。Rittal の EMC グランド製品資料はシールド外径の条件と、塗装面でも導電接続を作るロックナットの構造を説明しています。これは採用品の施工構造を理解する一次資料であり、任意の盤・ケーブルで同じ性能を保証するものではありません。

EMC 対応の型番だけを指定しても十分ではありません。編組シールドがどの位置で露出し、製品の接点にどれだけ接触し、盤の導電経路へどうつながるかを図面に示します。塗装や樹脂盤で導電経路が成立しない場合は、メーカー指定の座金や接地部材を使うなど、組立方法を確定します。シールド用の径と外被用のクランプ径が別に指定される製品もあります。両方の許容範囲を確認してください。

制御盤内部へ入った後に長いシールドの「尾」を残すと、期待した高周波特性にならない可能性があります。具体的な接続形態は機器メーカーの EMC 指示、ドライブとケーブルの仕様、盤の接地設計に合わせます。保護接地導体と機能的なシールド接続は目的を分けて図示し、シールドが保護接地の代用になるような記述を避けます。完成後の確認は、外観写真だけでなく、機器ごとの配線指示への適合まで見ます。

6. 買う前に比較する候補表:価格より仕様の欠落を先に見る

候補比較の最初の関門は、全候補が同じ条件で見積もられているかです。A社がグランド本体のみ、B社がロックナットとガスケット付き、C社が EMC 接続部品と現地施工を含むなら、単価だけを並べても意味がありません。発注数量は設計済み引込口と予備開口を分け、部品の予備率と保守交換品を区別します。製品の規格適合証明、データシート版、施工説明、使用環境、リードタイムも見積依頼時にそろえます。

比較軸製品資料で確かめること現場で確かめること
ねじ・開口M/PG/NPT、呼び、必要板厚開口実測、バリ、座面
外径シールのクランプ範囲採用ケーブル実測値
保護等級IP表示と試験条件盤組立後の要求と検収方法
材料本体・シール材、温度と耐薬品油、洗剤、屋外日射の実条件
保持力ストレインリリーフの仕様支持点、振動、端子への荷重
EMCシールド接点と適用径接地経路、塗装、編組の処理
保守分解方法、交換部品現地在庫、工具、予備品

「IP68」「M20」「ステンレス」の三項目だけで承認するのは避けます。たとえば、M20 でも外径範囲が異なる製品はあり、金属の盤側導通はガスケットや塗装条件で変わります。サプライヤーが提出する資料は、選んだ型番そのものを指していることを確認します。シリーズ総合カタログの代表値だけでは仕様の承認に使えないことがあります。

タイの調達では現地調達の継続性も重要です。初回だけ海外手配できても、設備停止時に同じシール材やナットが入手できなければ応急代替が起きやすくなります。購買表にはメーカー品番、認める同等品条件、代替承認者、シール・ロックナットの品番、納期を記録します。「同等品可」を一行で済ませず、外径範囲・ねじ・IP 条件・材質・EMC 仕様・施工説明が同等かを照合します。

7. ケーブルグランド RFP FAT SAT を一つのトレース表にする

RFP に書くべきなのは「グランドは IP68」といった抽象的な要求だけではありません。引込ごとにどのケーブルを、どの穴から、どの部品で、どう検査するかをつなぎます。図面、ケーブル表、BOM、施工写真、FAT/SAT 記録が同じ引込番号を共有すると、変更時に抜け漏れを追えます。盤全体の調達仕様や責任分界は制御盤製作の発注ガイドも参照してください。

RFP の例として、「引込 C-01、採用ケーブル型番と外径実測範囲、盤開口 M20 × 1.5、グランド正式品番、クランプ範囲、要求 IP と適用条件、シール座金・ロックナット、施工要領書番号、FAT の目視・寸法検査、SAT の現場接続後確認」を一行にします。これは書式例であり、M20 や IP の値をすべての設備へ推奨するものではありません。客先仕様や適用市場の要求がある場合はそれを優先します。

FAT:出荷前に検査するもの

FAT では、承認図と現物の引込位置、開口、型番、ケーブル表、BOM を照合します。取付面の損傷、座金・ナットの有無、未使用穴の封止、ケーブルの外径適合、外被の傷、締付方法を確認します。EMC 仕様ならシールドと盤側導電面の経路を記録します。試験を実施するなら、対象範囲・方法・合否基準・安全措置を事前に承認します。工場 FAT で実際の現地ケーブルが未到着なら「実ケーブルでの最終密閉確認は SAT」と明示し、仮ケーブルでの合格を最終合格と混同しません。

SAT:現場施工後に確認するもの

SAT では実ケーブル・実配線ルートに置き換え、外径、外被、曲げ、支持点、開口位置、水が伝う方向、余長と保守アクセスを再確認します。設備側接続後にケーブルへ引張荷重が集中していないか、盤板側に変形や緩みがないかを見ます。現場で追加開口した場合は、設計変更として穴加工、部品追加、試験、図面更新をセットで承認します。出荷時に閉塞済みの予備穴を勝手に開放しない運用も必要です。

検収項目FAT の証拠SAT の証拠
引込位置・部品承認図、BOM、現物写真As-built 図面、現物写真
外径・シール型番とケーブル表の照合実ケーブル外径・施工記録
盤面取付穴加工・ガスケット・ナット確認現地改造箇所の再確認
保持・EMC支持・接続方法の確認実配線での保持・接地経路
未使用穴ブラインド処理記録増設後の閉塞状態
制御盤 ケーブルグランド 選定|防水・外径・FATの実務 - figure 3

8. 失敗しやすい四つの場面と、現実的な修正方法

外径を導体サイズで推定した場合。 ケーブルは通るのにシールが十分に圧縮されず、洗浄後に盤内へ湿気が入ることがあります。対策は、既設ケーブルの外被を傷めない位置で外径を測り、その値に合うグランドの正式型番を選び直すことです。外径が不明なまま「大きめなら安心」と発注しないでください。

盤の穴とねじを混同した場合。 既設 PG 穴へ M ねじを無理に使う、穴径だけ合っていてシール座面が不十分、といった改造では取付側が弱点になります。対策は、ねじ種・ピッチ・穴径・板厚を現物で確認し、適合した部品またはメーカー指定のアダプタを選ぶことです。加工済み板に不適切なねじを強制すると再加工範囲が広がります。

グランドだけ高 IP にした場合。 盤側に未処理のノックアウトや傷んだドアガスケットが残れば、グランドの仕様を上げても盤全体の目標は満たせません。対策は侵入経路を盤全体で洗い出すことです。雨水、洗浄水、結露のどれが問題かで対策が変わります。水が付く面への配線経路を見直す方が効果的な場合もあります。

現地で代替品を無承認使用した場合。 見た目が同じ M20 でもクランプ範囲やシール材、EMC 機能が異なる可能性があります。対策は代替承認を作業前のゲートにすることです。購買と施工者が型番・ケーブル外径・取付条件の差分を申請し、設計者が図面と検査項目を更新してから施工します。現場判断で交換して事後に写真だけ残す運用は避けます。

9. 仕様決定までの実務手順

第一段階は現場情報の収集です。盤の設置場所、洗浄・水・粉じん・油・振動、屋外なら日射と雨、ケーブル一覧と将来変更を確認します。第二段階で、要求する盤全体の保護レベルと試験・検査方法を顧客仕様に合わせて決めます。第三段階で引込ごとの正式ケーブル品番と外径を確定し、盤開口のねじと位置を決めます。第四段階で、候補グランドの型式別データシートからクランプ範囲、材質、IP 条件、必要な座金・ナット、施工説明を照合します。

第五段階はレビューです。電気設計者は EMC と接地、機械設計者は穴加工と板厚、生産技術者は引込位置と保守性、購買は供給と同等品条件を確認します。第六段階で RFP と図面・BOM・ケーブル表を同じ版に固定し、FAT/SAT の証拠を定義します。最後に、現地で変わったケーブルや穴を As-built と予備部品表へ戻します。単なる部品選定から、再現可能な施工条件へ変えるのがこの手順の目的です。

判断に迷ったら「今ある情報で型番を決められるか」ではなく、「別の作業者が半年後に同じ型番を選び、同じ方法で施工・検査できるか」を確認します。外径の実測、取付面、シール部品、施工説明、判定基準のいずれかが欠けていれば、発注前に埋める価値があります。部品単価が小さいために仕様化を後回しにしがちですが、盤完成後に多数の引込口をやり直す作業は大きくなります。

発注前レビューの記入例:実案件へ置き換えるための仮設例

たとえば、洗浄を行う包装ラインの制御盤へモーター用ケーブル一本とセンサー用ケーブル四本を入れる計画を考えます。ここで「包装ラインなら IP68 の M20 を五個」と決めてしまうと、モーターケーブルと細いセンサーケーブルの外径差を見落とします。まず各ケーブルの正式型番と外径範囲を表にし、実ケーブルで代表値を測ります。ケーブル五本を五つの独立したグランドにするか、センサー側に専用の複数ケーブル用貫通システムを使うかを盤板スペースと保守性から比較します。後者を選ぶ場合は、未使用孔がある状態と四本使用した状態の両方について、採用品の取付説明に照らします。この例の本数と方式は説明のための仮定であり、特定設備の推奨構成ではありません。

次に清掃手順を現場担当者と確認します。「水を使う」という表現だけでは、少量の拭き取りとホースによる噴射を区別できません。洗浄剤を使うならその名称・濃度・温度、清掃時に電源を切るか、どの方向から水が当たるかを確認します。グランド本体やシールの耐薬品性について公開資料で判断できない場合は、候補メーカーへ照会します。必要な盤全体の保護等級や現地での試験方法は顧客・設備・適用仕様から決め、単品カタログの数字から逆算しないことが重要です。

モーターケーブルがシールド付きなら、ドライブメーカーの配線指示を図面へ反映します。シールドをどこで露出するか、グランドの接点が編組に接するか、塗装された盤板から導電経路をどう確保するかをレビューします。センサーケーブルの中にはシールドのないものもあり、全てを EMC グランドにする必要はありません。逆に、EMC グランドを購入しただけでシールド端末処理を省略することもできません。ケーブル表に「通常型/EMC型」という区分を作り、型番と施工図で裏付けます。

最後に、FAT では盤製作時にしか見えない穴加工のバリやガスケット配置を写真に残し、SAT では実際の引込ルート、余長、支持点とケーブル外径を確認します。もし現場でケーブル品番が変わったら、施工済みグランドのクランプ範囲に入るかを再照合し、入らなければ部品を再選定します。現場変更票に「代替ケーブルの品番・外径・影響する引込番号・承認者」を残せば、後年の交換時にも同じ誤りを繰り返しにくくなります。

仕様書で避けたい曖昧な文言

「防水グランドを使用」は防水の条件を定義していません。「M20程度」はねじと外径範囲を混同させます。「現地同等品可」は代替の判定項目を示していません。「施工者に一任」は誰が適合を確認するかを曖昧にします。これらはそれぞれ、対象引込番号、グランドと付属品の正式型番、ケーブル外径の許容範囲、盤面の加工条件、製品の試験条件、施工説明、代替承認と検収記録に置き換えます。すべてを長文で書く必要はありません。ケーブル表の列を揃え、例外だけ注記すれば、短い RFP でも比較しやすくなります。

交換品管理でも同じ考え方が役立ちます。倉庫の棚札に単に「M20ケーブルグランド」と書くと、通常型と EMC 型、クランプ範囲の違う型式が混在しやすくなります。保全用 BOM にはメーカー品番、付属ガスケット、ロックナット、ブラインドプラグを分けて記録します。もし調達先が変わる場合は、その場の見た目で選ぶのではなく、元の採用品の機能と許容範囲を比較して承認します。設計時の情報が保全現場まで届いて初めて、選定が完了したと言えます。

図面と現物が食い違ったときの処理

既設盤の改造では、図面の開口位置・ねじ呼びと現物が一致しないことがあります。この場合に図面だけを正として発注を進めると、現地施工で穴を広げる、余ったグランドを別の穴へ使う、といった即興対応が生まれます。着手前の現地調査で、各引込口を番号付き写真と寸法記録で押さえます。測定できない面は「未確認」と残し、工事開始前の確認項目にします。既存ケーブルを抜けない場合は、外周と型番を確認し、停機時に実測する計画を入れます。

開口を追加・拡大する変更は、盤の強度や配線スペースだけでなく保護等級にも影響します。加工の承認者、作業後のバリ処理、塗装補修、シール面、部品取付、検査、図面更新を一つの変更票にまとめます。塗装補修と EMC 接続が両立するかも確認します。新しい穴に部品を付けた時点で作業を終えるのではなく、未使用穴を含めた盤全体の状態を再点検します。保全担当へは最新の As-built と部品表を渡し、現地の予備品と一致させます。

検収時の不適合は、単に「締め直して完了」とせず原因を分類します。外径範囲外なら型式を替える必要があります。ガスケット忘れなら部品と組立手順を直します。板の変形や穴径過大なら取付面の補修方法を設計者が決めます。シールド接続不良なら塗装や端末処理も調べます。原因に応じて是正し、同じ引込番号で再検査した証拠を残すことで、FAT と SAT の記録が次の保全にも使える資料になります。

10. FAQ:ケーブルグランド選定のよくある質問

ケーブルグランド IP等級は盤全体の IP 等級と同じですか?

同じではありません。製品の IP 表示はその製品の規定された試験条件に対するもので、盤全体には盤板、穴加工、ガスケット、扉、未使用開口、ケーブル外被などが加わります。どの状態を受入対象にするかを仕様で定義し、組立状態で確認してください。IEC 60529 の分類と個別メーカーの試験条件を混同しないことが大切です。

ケーブルグランド 電線径 選定では何を測りますか?

通常は、グランドのシールが当たる位置のケーブル外被外径です。導体断面積や芯数だけでは選べません。採用ケーブルの公称外径と実測値、製造公差を確認し、候補グランドのクランプ範囲と照合します。平形や複数本を通す用途は専用品の適用条件を使います。

M20のケーブルグランドなら M20 の穴に必ず合いますか?

ねじ種とピッチ、盤板の穴形状・板厚・シール構造まで確認が必要です。M20 はケーブル外径を示す数字でもありません。既設盤では PG など別ねじや傷んだ開口があるため、現物確認を行ってください。

制御盤 ケーブル引込 防水で一番先に直すべき点は何ですか?

原因によります。水跡があるなら、盤板とグランドの接合、ケーブル外被との接触、未使用穴、ドアシール、配線経路を順に調べます。高 IP のグランドへの一律交換より、侵入経路を特定してから適合部品と施工方法を見直す方が確実です。通電設備の点検・試験は安全手順と停止条件を守って行います。

ケーブルグランド RFP FAT SAT に最低限何を書きますか?

引込番号、ケーブル正式品番と外径、盤開口、グランド・付属品型番、必要な IP・EMC 条件、施工説明、FAT と SAT の検査対象・合否基準、変更時の承認方法です。実ケーブルが工場に無い場合は、最終適合の確認を SAT に残すことを明記します。

まとめ

制御盤のケーブルグランドは、ねじ呼びだけで選べません。ケーブル外径とシールの範囲、盤板側の取り合い、環境に必要な IP 条件、引張荷重、必要な場合の EMC 接続を引込ごとに確定し、RFP から FAT/SAT まで同じ引込番号で追跡することが実務上の近道です。まずケーブル表と盤開口の現況をそろえ、型式別資料と施工説明に照らして候補を絞ってください。

タイ工場の制御盤新設・改造で、ケーブル表や盤面図がまだ完成していない段階でも、引込条件の整理から相談できます。水・粉じん・振動・EMC の条件と現場写真があれば、部品候補と検収項目を一緒に具体化しやすくなります。TOMAS TECH へのお問い合わせをご利用ください。

参考情報・一次資料

※規格と製品ページは本稿執筆時に確認した公開情報です。適用規格、試験条件、施工トルク、材料適合は採用品の最新版資料と案件仕様で確認してください。