タイ工場で制御盤の冷却ファンを選定するとき、カタログの「最大風量」だけを比べると、据え付け後に盤内温度が下がらないことがあります。必要なのは、機器の発熱、最も厳しい周囲温度、許容盤内温度、フィルターと排気口の圧力損失、粉じん・水の侵入条件を一つの設計条件として扱うことです。本稿は、フィルターファンで足りるかを判定し、風量の概算から見積仕様、FAT・SATの受入証拠までつなぐ実務手順を示します。設備ごとの法規・規格適合と最終機種選定は、適用市場、組立品の仕様、部品メーカーの資料に基づいて確認してください。
先に結論:制御盤 冷却ファン 選定は「空気を入れてよいか」から始める
フィルターファンは、盤外の空気を取り込み、盤内の熱を排気する方式です。したがって、盤外空気が十分に冷たく、かつ盤内へ入れてよい程度に清浄であることが前提です。Rittalは、周囲空気を使う冷却の条件を「比較的清浄で、目標盤内温度より低い周囲温度」と整理しています。周囲温度が目標盤内温度と同じか高いなら、風量を増やしてもその空気だけで目標以下には冷やせません。油煙、水飛沫、腐食性ガスや多量の粉じんがあるなら、フィルター交換だけで必要な密閉性を確保できるかを見直します。Rittal:周囲空気による冷却
最初の判断を次の表にまとめます。これは製品の適用範囲を一律に決める表ではなく、方式比較の入口です。
| 現場条件 | 第一候補 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 周囲空気が目標盤内温度より低く、汚染が許容範囲 | フィルターファンと排気フィルター | 熱損失、実風量、吸排気経路、フィルター保守 |
| 周囲空気は冷たいが、盤内に粉じん等を入れたくない | 空気/空気熱交換器 | 二つの空気回路の分離、必要温度差と能力 |
| 周囲温度が高い、または盤内を周囲より低くしたい | 盤用冷却器または適切な冷水系 | 冷却能力、排熱、凝縮水、電源・保全 |
| 水、油、洗浄、腐食などの暴露がある | 密閉方式を含む再設計 | 完成盤のIP、材質、開口、ドレン、保全 |
空気/空気熱交換器は盤内外の空気を混ぜず、温度差を使って熱を移します。盤外より低い盤内温度を要求するなら、一般に圧縮式の盤用冷却器や冷水を使う空気/水熱交換器などの適用を検討します。Rittalの方式説明もこの区別を示しています。Rittal:冷却方式の技術説明
発熱と温度条件をそろえる:カタログ風量の前に必要な入力
まず、盤内にあるインバーター、サーボアンプ、電源、変圧器、制動抵抗器、通信機器、接触器などの損失を、運転状態ごとに一覧にします。機器の消費電力全体がそのまま盤内発熱になるわけではありません。メーカーが示す損失データ、負荷率、同時運転、外付け抵抗器の場所、盤外へ熱を逃す構造を確認します。予備スペースに将来追加する機器があるなら、現時点の実装と将来条件を分けて計算します。冷却機器だけ大きくしても、熱源の配置やダクトの閉塞は解決しません。
周囲温度は空調室の設定値ではなく、盤の吸気口付近の厳しい条件で置きます。炉や乾燥機の近く、屋根直下、直射日光、空調停止時、隣接盤の排気再吸込などで局所的に高くなることがあります。季節平均だけで判断せず、操業時の最大側を現地で測り、設計入力として承認します。盤内側の上限は「盤の平均温度」だけでなく、最も温度余裕の小さい機器の周囲許容値、ディレーティング条件、取付間隔と吸気条件で決めます。メーカーが要求する個別の冷却間隔と通風方向も優先します。
表面からの自然放熱、盤のサイズと材質、壁への密着、隣接盤、外気からの熱流入も計算の前提になります。IEC TR 60890:2022は低圧開閉装置・制御装置アセンブリ等のエンクロージャ内の空気温度上昇を計算する方法を扱いますが、主として強制換気のない組立品への適用を説明しています。ファン付き盤にその計算をそのまま「ファン容量の認証」として転用せず、適用範囲と使用した補正・製品データを設計書に残してください。IEC TR 60890:2022
発注者がサプライヤーに渡す入力表は、最低でも次の列を持つと比較しやすくなります。
| 入力項目 | 記入する内容 | 証拠・出典 |
|---|---|---|
| 熱損失 | 機器別W、運転モード、同時率、増設条件 | 採用部品のデータシート、負荷表 |
| 周囲条件 | 吸気位置の通常・最大温度、粉じん、水、油煙、腐食、日射 | 現地測定、配置図、現場写真 |
| 盤内目標 | 機器ごとの許容温度とディレーティング | 各メーカーの据付・使用条件 |
| 盤構造 | 寸法、材質、開口、壁・隣接盤、吸排気位置 | 承認図、現物確認 |
| 保護条件 | 必要な完成盤IP、洗浄条件、フィルター管理 | 顧客仕様、適用規格、保全計画 |
| 試験条件 | FATとSATの負荷、温度、測定点、合否方法 | 承認済み試験手順書 |
既存の制御盤設計と熱・FATの発注実務では盤全体の設計入力を扱っています。本稿はそのうち、冷却ファンと空気経路を機種選定へ落とす部分に絞ります。

制御盤 冷却ファン 風量計算:式は入口、実風量が判定値
空気が盤内で受け取る顕熱の式は、熱量Q[W]=質量流量[kg/s]×空気の比熱cp[J/(kg・K)]×温度差ΔT[K]です。体積流量V[m³/h]を使うと、概算は V=3600Q/(ρcpΔT) となります。ρは空気密度[kg/m³]です。Rittalのフィルターファン資料は同じ関係を示し、空気密度と比熱は温度や標高・圧力で変わると注意しています。Rittal:フィルターファンの必要流量
たとえば、説明用の仮定として、空気で搬出すべき熱量Qを500 W、許容吸排気温度差を10 K、ρを1.2 kg/m³、cpを1005 J/(kg・K)と置くと、Vは約149 m³/hです。これは特定工場の推奨機種や保証風量ではありません。実際には、盤壁からの放熱・外部からの入熱、吸気と排気の位置、盤内混合、部品近傍の局所温度、フィルターの圧力損失を考慮し、許容温度に収まるかを確認します。Schneider Electricも手計算は盤壁からの放熱を把握し切れず不確かさがあり、専用の熱計算を推奨すると説明しています。Schneider Electric:盤の必要風量
ここで比較するのは、ファン単体の無抵抗時の最大風量ではなく、採用するファンと吸気フィルター、排気フィルター、ルーバー、ダクトを組み合わせたときの運転点の風量です。空気が流れるほど圧力損失は増え、フィルターが汚れると流量が変わります。排気口の有効面積が小さい、扉の裏に配線が密集している、吸排気口が近く短絡している場合も、盤全体では十分な流れを作れません。Schneider ElectricのClimaSys資料は、排気側要素の圧力損失とフィルターの清掃・交換を選定条件として挙げています。Schneider Electric:ClimaSys資料
風量の余裕を求めるとき、「計算値に一律何%を足す」という数字だけでは不十分です。余裕を分解し、入力損失の不確かさ、最大周囲温度、フィルター汚れ、追加機器、製品性能公差、電源条件を明記します。その上でメーカー曲線上の運転点を確認します。複数ファンなら合計の自由風量ではなく、各設置位置と排気側抵抗を含めた空気経路を確認します。熱源の局所冷却が必要なら、盤全体の換気量を増やすだけでなく、機器メーカーの指示に合う通風方向と離隔を設計します。
制御盤 フィルターファン 選び方:流れを設計する五つの観点
1. 吸気と排気の経路
吸気口と排気口を遠ざけ、盤内の主要な熱源を通る流れを作ります。位置を「下から吸って上から抜く」と決め打ちせず、部品の通風方向、配線ダクト、扉機器、盤の並び、粉じんの堆積しやすい場所を考えます。冷たい空気が排気口へ直行すれば、風量計の数字が合っても熱源の周囲温度は下がりません。図面に入口、出口、障害物、温度測定点を描くと、レビュー時の認識差を減らせます。
2. フィルターと汚れた状態の性能
フィルターは粉じんの侵入を減らしますが、目詰まり時には空気抵抗が増えます。フィルター材と交換周期は周囲環境と保全体制に合わせて決め、清掃できる位置・方向を確保します。極端に汚れた環境では「頻繁に交換するからファンでよい」と安易に決めず、閉回路の熱交換器や冷却器を含めて保全費と停止影響を比較します。Rittalも粉じん・油で汚れた空気等にフィルターファンが適さない場合を示しています。Rittal:冷却方式比較
3. 完成盤のIPと開口
IEC 60529のIPコードはエンクロージャによる侵入防護の分類です。冷却ファンの前面部品だけが特定のIP表示でも、完成盤の扉、ケーブルグランド、排気口、追加加工穴、ガスケットを含む組立状態が同じとは限りません。必要等級、取付方向、フィルター材、洗浄時の暴露、交換後の再現性を発注条件に書きます。IPだけで結露、耐食性、油煙、紫外線、温度上昇まで保証されたと解釈しないことも重要です。IEC 60529
4. 電源・制御・故障時の挙動
定格電圧、周波数、起動、電源喪失、回転停止検知、フィルター汚れ検知、盤内温度警報の要否を決めます。温度スイッチでファンを停止する設計は省エネルギーに寄与し得ますが、始動前の熱溜まりや湿気対策を含めた制御条件が必要です。ファン故障時に設備を即停止するのか、警報を出して負荷を下げるのかは、安全機能や工程影響に基づいて決めます。冷却制御のPLC接点や通信を設計図・I/O表・警報一覧に含めます。
5. 保全と予備品
製品寿命、交換部品、フィルターの互換性、清掃作業時間、タイ国内での調達先を確認します。ファン交換のために高圧部へ無用に接近する構造や、盤を移動しないとフィルターを外せない配置は避けます。保全担当が確認する指標は「動いている音」だけでなく、フィルター差圧や温度の推移、目視状態、警報履歴などから案件に合うものを選びます。交換作業時の電気安全手順は現場の手順書へ反映します。

ファンか熱交換器か盤用エアコンか:境界条件を見積前に固定する
ファン選定の議論が長引く理由は、同じ「盤内を冷やす」という言葉で別の要求を話しているためです。盤内温度を周囲温度より少し高い範囲に抑えたいのか、周囲温度より低く保ちたいのかをまず分けます。周囲空気が清浄で十分に冷たければ、フィルターファンは構造と保全が比較的単純です。周囲空気を入れられないが十分な温度差があるなら、空気/空気熱交換器の閉回路が候補です。周囲温度が高く盤内目標より低くできない場合や、厳しい温度制御が必要な場合は、盤用冷却器や冷水系の能力とインフラを評価します。Rittal:方式選定
タイの工場では、空調が効く組立室と、屋根下・搬入口・洗浄区域が同じ敷地にあります。「工場の外気温」一つで全盤を共通選定せず、各盤の吸気位置の条件を測ります。空調停止時も運転を継続するなら、その状態を設計条件に含めます。盤用エアコンなら盤外への排熱先とドレンの処理を確認します。冷却能力を上げても、熱風を隣の盤が吸い込めば効果が低下します。密閉系でも扉開放運転、ガスケット劣化、ケーブル導入部の漏れがあると前提が崩れます。
盤内の結露は別の検討です。低温にすれば常に安全というわけではありません。周囲の湿度、扉開放、停止時の温度変化を見て、必要ならヒーターや制御、結露水処理を設計します。方式を比較する際は、購入費だけでなく、消耗品、電力、清掃、故障時の復旧、予備品、盤の停止時間も同じ評価表に載せます。これは製品優劣を一般化するためではなく、工場ごとの条件に合う方式を選ぶためです。
RFPに書く:制御盤 冷却 RFP FAT SATの条件
発注前の簡易ケース:同じ盤でも方式が変わる
たとえば同じインバーターとPLCを収めた盤を、空調の効く組立室と、屋根下の搬送設備脇に一台ずつ置く計画を考えます。機器の損失が同じでも、吸気位置の周囲温度が違えば許容できる温度上昇ΔTが変わります。組立室では盤外の空気を取り込める一方、搬送設備脇では粉じんや熱風があり、同じフィルターファンを複製する判断が成立しないことがあります。このケースで先に決めるべきなのは型番ではなく、各盤の設置点の最大周囲温度と汚染、盤内機器の許容温度、設備停止時の運転要件です。
さらに、製造時に承認した盤レイアウトから配線ダクトが太くなり、上部の排気口を部分的に塞いだとします。計算で必要風量を満たしていても、設置後の運転点と局所温度は変わります。だから発注書には、風量計算書の提出だけでなく、採用部材を取り付けた流路図、フィルター型式、点検スペース、FATでの外観確認を含めます。SATでは同じ負荷で盤外と盤内を同時に測ります。計算、図面、現物、測定の四つがつながって初めて、選定根拠が再現できます。
見積比較では、供給者Aがフィルター清掃を頻繁に行う前提のファン案、供給者Bが盤を密閉する熱交換器案、供給者Cが盤用冷却器案を出す場合もあります。このとき機器価格だけで順位を付けず、温度要求に適合するか、侵入防護の要求を満たせるか、消耗品・電力・停止時間を含む運用条件を並べます。特定方式を最初から指定する必要がある場合でも、方式選定の前提と不適用時の代替提案を求めると、現地条件の見落としに気付きやすくなります。
設計書に残す計算の監査可能性
風量式のQが「盤内機器の総損失」なのか「自然放熱を差し引いて空気で運ぶ残余熱」なのかを明記します。ここを混ぜると、同じ式を使っていてもサプライヤー間の答えが違います。自然放熱を見込むなら、その盤の有効表面積、材質、壁との距離、周囲条件を記録し、どの計算方法・ソフトウェア・版で算出したか残します。熱負荷の不明な機器はゼロ扱いせず、データ取得先と暫定仮定を記します。将来増設分を別ケースとする場合は、増設時にファンを交換するのか、初期から余裕を確保するのかを明確にします。
温度差ΔTも、盤内のどこかと盤外の瞬間差を都合よく取った値ではありません。設計対象の入口空気と出口空気の想定差であり、機器周辺の許容温度とは別に照合が必要です。高いΔTを許せば計算上の必要風量は小さくなりますが、その間に温度に弱い部品の吸気が許容を超えないかを確認します。逆に厳しすぎる温度差を置いてファンだけ大きくすれば、騒音、消費電力、フィルター負荷、設置開口も変わります。式の結果を最終回答にせず、製品曲線と盤内レイアウト、部品許容値へ戻して判断します。
実風量の証拠には、メーカーが示すファンの圧力・風量特性と、採用する入口・出口部材の圧力損失が必要です。異なるフィルター材に変える、排気口にルーバーを追加する、保守用の防護カバーを付ける場合は、運転点が変わらないか再確認します。試験でファンが回転していることだけでは十分ではありません。必要な空気が熱源を通過しているか、温度測定と設計図の双方で確認します。
図面と計算書には版を付け、FAT時の実装部品と一致させます。代替部品を採用するときは、外形寸法が同じでもファン曲線、フィルター材、電源仕様、騒音、保護構造、保守部品が変わり得ます。変更を購買担当だけで承認せず、盤設計者と現場保全が影響を確認してください。SATで温度を記録した後も、採用型式と図面、フィルター部品番号、設定値、試験成績を一式で保存します。次回の改造時に同じ条件を読み返せることが、熱設計の証拠を長く役立てる条件です。
見積依頼書に「冷却ファンを付ける」とだけ書くと、メーカーも容量も設計前提も比較できません。買い手は要求と現場条件を固定し、供給者には計算と図面、機種の運転点、試験方法を回答させます。要求値がまだ測れていない場合は、推定値であること、実測予定日、設計変更時の扱いを明記します。タイでの制御盤製作・引渡し実務の調達範囲に、以下の冷却欄を追加するとよいでしょう。
| RFPの欄 | 供給者に求める回答 |
|---|---|
| 熱収支 | 部品別損失、運転モード、周囲温度、盤内目標、自然放熱の扱い |
| 冷却方式 | ファン/熱交換器/冷却器を選ぶ理由と不適用条件 |
| 風量 | 計算式、採用した密度・比熱、必要風量、製品曲線上の実風量 |
| 空気経路 | 吸排気位置、排気フィルター、障害物、熱源と測定点の配置図 |
| 環境・IP | 完成盤の目標、開口部品、取付条件、洗浄・粉じん条件 |
| 電気・保全 | 電源、制御、警報、故障時動作、フィルター交換、予備品 |
| 受入 | FATで示す証拠、SATで測る現地条件、未達時の是正方法 |
発注者は、各提案が同じ最大周囲温度、同じ熱損失、同じ盤内上限を使っているかを最初に比較します。ファンAは自由風量、ファンBはフィルター付き運転風量、といった比較は成立しません。必要なら、全候補を同じフィルター汚れ条件や同じ保全条件で再提出してもらいます。保証対象を「盤内温度」だけにすると、どの点で、何の運転負荷で、どの周囲温度で測ったかが後で争点になります。測定位置と条件、記録間隔、合否に使う部品メーカーの許容値を先に合意します。
FAT:製作所で何を証明するか
FATでは承認図と実物のファン型式・向き、吸気と排気の開口、フィルター材、電源、警報配線、保全アクセスを照合します。配線ダクトや扉機器が空気経路を遮らないか、盤を閉じた状態で確認します。可能な負荷条件では盤内の複数点を測り、試験室の周囲温度と試験負荷を記録します。FATの周囲条件が現場の最悪条件と異なれば、その差を記録し、現地で残す検証項目をSATへ引き継ぎます。回転方向、異常停止、温度警報、フィルター目詰まりの通知は、実際に採用する機能だけを手順化します。
SAT:タイ工場の運転条件で何を証明するか
SATでは、完成盤を設置した場所で、実運転負荷と吸気側周囲温度を同時に記録します。盤内の最も温度に厳しい機器の吸気近傍、盤上部、排気側など、事前に決めた点を測ります。盤の扉を閉じ、通常のライン稼働、隣接設備の排熱、空調状態を記録します。測定できなかった季節や最大負荷の条件は「合格したこと」にせず、再測定条件と責任者を残します。メーカーの許容値や承認済み上限を超えたら、ファンの交換だけでなく、熱源配置、流路短絡、フィルター、周囲排熱まで原因を切り分けます。

よくある失敗と、選定をやり直すタイミング
第一の失敗は、盤外温度が高いのに「ファンを大型化すれば冷える」と考えることです。周囲空気を取り込む方式である限り、盤内をその空気より低くすることはできません。第二は、製品ページの最大風量を必要風量と直接比較することです。実際のフィルターと排気部材を含めた運転点を取らなければ、設計風量の証拠になりません。第三は、完成盤のIP条件をファン単体の表記で代用することです。扉、ケーブル、現地加工と保全後の状態が入った組立品で確認します。
第四は、盤内温度を扉の中央一点で測ることです。VFDや電源の吸気側、盤上部、密集した機器の後ろに局所高温が残る可能性があります。第五は、フィルター交換を設計書の外に置くことです。交換アクセス、予備品、警報と記録まで決めないと、導入直後の性能が維持できません。第六は、追加機器が入った後の再評価を忘れることです。部品一つでも損失、空気経路、電源余裕、IPの加工穴に影響します。設計変更時には熱収支表と受入条件を更新します。
再選定の判断は「一度でも警報が出たら機種変更」と単純化しません。警報発生時の運転負荷、盤外温度、扉状態、フィルター状態を同時に記録し、当初の設計入力から何が外れたかを先に調べます。ファン停止なら電源や制御、流量不足ならフィルターと排気抵抗、局所高温なら熱源と風路の配置を確認します。設計条件を超える環境変化が恒常的になったときは、ファンの容量だけでなく冷却方式と完成盤の保護条件を再評価します。暫定的に扉を開けて運転した状態を、恒久的な合格条件にしてはいけません。
現場での切り分けには、警報前後の温度推移だけでなく、対象ラインの製品・運転モード・周囲設備の状態を同じ時刻で残します。清掃直後に温度が下がればフィルターの影響を疑えますが、清掃前後で負荷や外気温が違うなら単純な因果関係とは言えません。ファンの回転を目視できても、吸気口に梱包材が近接したり排気口に物が置かれたりすれば実際の流れは落ちます。原因を確定したら、対策後に同等の負荷と周囲条件で測り直し、図面・保全手順・警報設定へ反映します。この記録が次の増設や同型盤への展開時に使える設計資産になります。
既設盤の後付け冷却では、穴を開ける前に調査する
既設盤の過熱対策では、現状の盤内温度だけを見てファンの口径を決めがちです。先に運転履歴とアラーム、負荷状態、盤外温度を同時に記録してください。停止が特定の時間帯や工程だけに集中するなら、熱源の同時運転や隣接設備の排熱が原因かもしれません。盤の扉が開いたままなら温度が下がるという事実は、冷却不足の手掛かりにはなりますが、「ファンで解決できる」証拠ではありません。粉じんや湿気も同時に盤へ入るためです。
後付け開口の位置は、内部配線、母線、保護導体、扉機器、機械的強度、保守アクセスに影響します。切粉が盤内に残らない施工手順と、加工後の清掃・検査を決めます。吸気側だけを開けて排気側の面積が足りなければ期待風量は出ません。新設ファンの電源をどこから取り、既存の遮断器・端子・配線に余裕があるかも確認します。配線を増やすことで通風路を狭める矛盾も起こり得ます。
既設のドアガスケットやケーブルグランドが劣化している場合、冷却ファンを追加する前から侵入防護が設計どおりでないことがあります。改造後の完成盤について、現行要求に対する点検と記録を行います。製造当時の等級表示が今の設置環境に合うかも確認します。増設スペースが足りない場合は、盤内の熱源を盤外へ移す、盤構造を変える、盤そのものを更新する案も比較対象です。既設盤の改造は機器一点の購入ではなく、盤全体の再評価として見積もるほうが責任境界が明確になります。
引渡し後の監視を設計に戻す
SATに合格しても、フィルターは徐々に汚れ、工場の工程や空調条件は変わります。保全に渡すべきものは、ファン型式と交換部品だけではありません。基準となる盤内・周囲温度、測定点の位置、負荷条件、警報設定、フィルター清掃・交換の判定方法、清掃後の確認手順を一つの記録にまとめます。温度だけが上がったときは、周囲温度上昇、負荷増、ファン停止、フィルター閉塞、流路を塞ぐ後付け配線を分けて点検できるようにします。
将来の設計変更では、変更管理票に追加部品の損失と位置を入れ、温度計算と測定点への影響を評価します。電源を切る必要があるフィルター交換作業なら、停止計画と安全手順まで保全計画に含めます。盤内温度のトレンドを保存する場合は、センサー設置位置と校正方法を統一し、測定値を異なる負荷・周囲条件のまま単純比較しないことが重要です。冷却の受入は一度きりの試験ですが、設計条件を維持する作業は運用中ずっと続きます。
FAQ:制御盤 冷却ファン 選定の疑問
制御盤 冷却ファン 風量計算の結果だけで型式を決められますか?
決められません。計算値は必要流量の入口です。フィルターと排気部材を付けた状態の製品曲線、盤内の流路、局所温度、周囲条件、保全時の汚れを確認し、FAT・SATの証拠とつなぎます。
制御盤 フィルターファンは高IPの盤にも使えますか?
製品と取り付け方、排気部材、完成盤の要求等級によります。IEC 60529のIP表示は特定の侵入防護分類であり、ファン前面の等級を完成盤全体へ自動的に移せません。必要な完成状態の試験・証拠を供給者と定義します。
周囲温度が盤内目標と同じ場合、ファンを増やせばよいですか?
一般には、その周囲空気で盤内を目標より下に冷やせません。目標値の再設定が機器条件上可能かを確認したうえで、空気/空気熱交換器の温度差も不足するなら盤用冷却器や冷水系を検討します。
タイ工場の制御盤 冷却 RFP FAT SATでは何を数値化しますか?
熱損失の根拠、最大周囲温度、盤内の許容値、必要・実風量、測定点、負荷、試験時間や記録方法、合否条件を案件ごとに定義します。記事中の計算例や一般的な室温をそのまま契約値にはしません。
まとめ
制御盤の冷却ファンは、盤外空気が冷たく清浄であることを確認し、部品損失と最悪周囲条件から必要風量を概算し、フィルター付きの実風量と盤内の流路で検証します。周囲空気を入れられない、または目標温度を下回れない場合は、熱交換器や盤用冷却器を同じ条件で比較します。RFPに入力と証拠を明記し、FATでは構造・機能、SATではタイ工場の運転温度を確認することで、価格だけで決まらない冷却品質を受け入れられます。
新設盤や改造盤の冷却方式がまだ決まっていない段階でも、熱損失表、現地の温度・粉じん条件、既存図面をそろえてお問い合わせください。TOMAS TECHと、方式比較、見積条件、FAT・SATで残す証拠を整理できます。
参照資料
- Rittal:Industrial Enclosure Cooling Applications – Filter Fans
- Rittal:Fans, filter fans, air/air heat exchangers
- Rittal:Technical aspects of enclosure climate control
- Schneider Electric:How to calculate necessary air flow for cabinet cooling
- Schneider Electric:ClimaSys enclosure thermal management brochure
- IEC:IEC 60529 IP Code
- IEC:IEC TR 60890:2022