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2026.10.18

工場 排水 溶存酸素計 選定|曝気槽の連続測定を失敗させない

工場 排水 溶存酸素計 選定|曝気槽の連続測定を失敗させない

工場の排水処理で「溶存酸素計を選定したい」と考えたら、最初に決めるべきことはメーカーでも価格でもありません。曝気槽のどの状態を測り、測定値を誰が何の判断に使うかです。同じDO(dissolved oxygen、溶存酸素)の表示でも、槽内の位置、気泡、汚れ、温度補正、校正履歴によって運転判断の意味は変わります。本稿ではタイなどの製造拠点にある産業排水の生物処理を念頭に、光学式と電極式の比較から、設置、保守、PLC・SCADA記録、RFP・FAT・SATまで一つの導入手順として整理します。放流口の法令判定値や一律のDO目標値を提案する記事ではありません。

工場排水でDOを測る目的を、まず曝気運転に結び付ける

DOは水に溶けている酸素の濃度です。曝気槽で好気性の微生物が処理を進めるために酸素が必要であり、送風機が供給した空気が液中にどれほど残っているかを見る運転指標になります。米国EPAの好気性生物処理マニュアルは、DO測定を送気量の調整に使い、必要な残留DOを保ちながら過曝気による電力の無駄を避けると説明しています。ただし、この説明から「全工場で同じ濃度に設定すればよい」という結論は出ません。処理方式、槽の形、負荷、要求水質、混合状態、センサー位置が違うからです。EPAの原資料

ここでDO計を導入する目的を三つに分けます。第一は運転監視です。昼夜や生産品目で流入負荷が変わるとき、DOの時系列と送風機の状態を重ね、酸素が不足しやすい条件を探します。第二は制御です。測定値を使って風量やブロワ台数を調整する場合、プロセスの遅れや計器故障への保護を含む制御設計が必要です。第三は説明責任です。異常時に「その時間帯に何を測り、どの設定で、誰が対応したか」を追えるよう記録します。導入初日から閉ループ制御に入るより、まず監視として信頼できるデータを作り、運転員の判断と照合してから制御へ進む順序が実務的です。

DOはBOD、COD、pH、ORP、濁度の代替値ではありません。DOは曝気槽の酸素状態を見ます。BODやCODは有機物負荷・酸素要求量を評価する別の試験であり、pHは酸塩基、ORPは酸化還元状態、濁度は光の散乱を反映します。排水処理全体の測定設計を先に見直す場合は、工場排水の濁度計選定の記事と工場排水ORPセンサー選定の記事を参照してください。本稿はDO計の選定と曝気槽への実装に絞ります。

仕様書の前に決める五つの「測定の問い」

計器のカタログを比較する前に、①どの槽・どの工程で測るか、②平均的なDOか最も酸素が不足しやすい区域を知りたいか、③観測だけか制御入力にも使うか、④現場でどの頻度で洗浄・確認できるか、⑤停電・断線・洗浄中にどの状態を示すかを書き出します。この五つの答えが無いと、測定範囲と精度の数字だけが立派な装置を買っても、使える場所に据え付けられません。

処理方式が連続曝気か、間欠曝気やSBRのように工程が切り替わるかも重要です。間欠運転では曝気停止中にDOが下がるのは設計上の動作かもしれず、常時「低DO警報」にすると警報疲れを起こします。逆に、曝気中だけを平均すると停止工程の状態は消えます。測定値には運転フェーズとブロワ運転状態を同時に記録し、表示画面で「制御に使える期間」を分けます。工場で処理対象が変わると、流入の塩分、温度、油脂、界面活性剤、固形分が変わる可能性があります。直近の水質試験結果だけでなく、最大負荷、洗浄排水、停止再開時の条件も確認します。

RFPには「目標DO 〇mg/L」だけを書かず、どの工程で誰が承認する設定値かを記します。初期値を決める際は既存の採水・実験室データ、処理成績、送風機電力、アンモニアや有機物の負荷など、現場にある指標と照合します。処理品質が守れ、かつ過曝気を抑えられる範囲を現場の試運転で見つけるのが筋です。公的マニュアルやメーカー資料の例示値を、そのままタイの個別工場の適正値や放流基準に読み替えないでください。

光学式と電極式の溶存酸素計は何で選ぶか

光学式は、酸素に応答する蛍光材料の発光特性を読みます。電極式は、膜を通過した酸素が電極で反応した電流を測る方式を含みます。方式だけで優劣を断定しないでください。カタログにある精度は決められた試験条件での値であり、曝気槽内で気泡や汚れが付いたままの誤差ではありません。横河電機は排水処理向けのDOセンサー製品群と光学式製品を掲載しています。メーカー資料は機種ごとの差を確認する一次資料ですが、導入先の水質と保守体制への適合は現場試験で確かめます。横河電機の製品ページ

光学式では電解液や電極膜の定期補充を必要としない機種があります。一方で発光キャップや光学窓の汚れ、傷、寿命、直射光の影響を無視できません。電極式では膜、電解液、電極状態、分極の要否、流速条件を確認します。HachのDOトラブルシューティング資料は、Clark型プローブを攪拌または流れのある試料で使うこと、光学式プローブを直射日光にさらさないこと、100%水蒸気飽和空気での校正条件などを示しています。特定機種の推奨をすべての製品へ一般化せず、候補機種の取扱説明書と照らしてください。Hachの技術資料

比較の軸は少なくとも、測定原理、測定範囲、応答時間、必要な流速、消耗品と交換作業、キャップ・膜の調達期間、自動洗浄への対応、温度・塩分・気圧の設定、信号インターフェース、保守時の値保持、現地サービスです。最低価格ではなく、センサー本体、架台、ケーブル、変換器、洗浄、交換品、定期点検、停止時の人件費を合わせて比べます。導入初年度の見積では、予備キャップや膜だけでなく、洗浄のために槽へ安全にアクセスする設備も含めます。

比較項目光学式で確認すること電極式で確認すること
測定部発光キャップ、光学窓、汚れと交換時期膜、電解液、電極、分極と流速条件
校正・確認キャップ交換後の手順、空気校正、携帯計との照合膜・液交換後の手順、分極、ゼロ・空気校正
据付気泡、付着物、光、引き抜き経路気泡、付着物、必要流速、引き抜き経路
維持費キャップ、洗浄、交換作業膜・電解液、洗浄、交換作業
調達現地在庫、代替品、サービス窓口同左、加えて消耗液と膜の在庫

特に「光学式だから保守不要」「電極式だから安価」といった短絡は避けます。たとえば高い付着負荷がある槽では両方式とも洗浄が必要です。一方、流れの弱い採水槽に電極式を置けば、方式固有の流速条件が測定値へ影響する可能性があります。各候補について実水で並行試験を行い、洗浄前後の差、採水値とのずれ、運転フェーズごとの信号欠測、保守にかかった時間を記録すると判断しやすくなります。試験は同じ場所だけでなく、代表点と問題点を区別して設計します。

工場 排水 溶存酸素計 選定|曝気槽の連続測定を失敗させない - figure 1

センサーの位置で測定値が変わる:曝気槽の設置設計

曝気槽には送気散気管に近い気泡の多い場所、流入水が混ざる場所、汚泥が滞留しやすい場所、水面近くなどの差があります。画面上の数値は「槽全体のDO」ではなく、センサー先端が接した局所の水の値です。測定目的が平均的な状態なら、槽内の流れと混合が代表的な点を選びます。酸素不足を早期に見たいなら、低DOになりやすい区画を候補にします。ただし散気管の直上で気泡がセンサー面を覆う位置は避けます。まず携帯計で複数点を、負荷と運転フェーズを変えて測り、設置候補の妥当性を記録します。

Endress+HauserのOxymax COS61D取扱説明書は、気泡が感応面に付着すると読みが高くなる場合があるとして、センサーの推奨傾斜範囲と避ける角度を示しています。また設置場所、浸漬、保守の条件を機種別に説明しています。この具体的な角度を別メーカーへコピーするのではなく、「気泡と沈降物を避ける向きが必要」という選定条件として扱ってください。Endress+Hauserの取扱説明書

設置図には、槽の水位範囲、センサー先端の深さ、散気管との位置関係、流入と排出の方向、攪拌機の軌跡、引き抜きのための作業スペースを描きます。最低水位でセンサーが空気中に出ないか、最大水位でケーブル接続部が浸水しないかを確認します。槽壁、支持金具、洗浄装置が測定面への流れを遮る場合もあります。槽の上に安全な足場が無いと、毎週の洗浄が計画どおり行えません。保守アクセスは計測性能の一部です。

必要に応じて二点測定を考えます。たとえば長い曝気槽の前段と後段では負荷と酸素供給の状態が違います。ただしセンサーを増やす前に、各点で何を判断するかを決めてください。前段値を送風量の制御に使い、後段値で処理状態を検証する設計もあれば、片方を故障照合用に使う設計もあります。二台の単純平均は、局所的な酸素不足や片方の汚れを隠すことがあります。点数を増やすほど校正・洗浄・故障判定の仕事も増えるため、予算は計器数と保守要員をセットで考えます。

汚れ、気泡、流れの停止を「センサー故障」と混同しない

生物処理槽のセンサーには汚泥、バイオフィルム、油分、スケールが付きます。付着の影響は方式・機種・水質によって異なりますが、測定値がゆっくりずれる、応答が遅れる、洗浄直後に段差が出るといった兆候を見ます。気泡が光学面や膜へ付く場合は、実際の水中DOとは違う表示になり得ます。前述のEndress+Hauser資料は気泡で高めの読みが生じる設置角度を明記しています。したがって「値が高いから酸素は十分」と判断する前に、気泡、洗浄履歴、送気の変化を照合します。

トラブル時の切り分けは、①現場の運転状態、②目視できる気泡と付着、③測定部・ケーブル・変換器の診断、④清掃前後の比較、⑤携帯計または採水測定との比較、の順が分かりやすいでしょう。ブロワ停止後の低DOはプロセスの真の変化であり得ます。センサー先端が液面から出たときの高値は測定条件の逸脱かもしれません。洗浄で値が一気に変わるなら付着の影響を疑えますが、洗浄後の値が常に真値だと即断せず、校正状態と採水点を確認します。

自動洗浄機構は保守の間隔を延ばせる可能性がありますが、ノズル詰まり、エア供給停止、洗浄時の偽値など、新たな点検項目も生みます。洗浄中は制御入力を保持するのか、直前の有効値を一定時間使うのか、手動運転へ切り替えるのかをRFPで定義します。洗浄終了後すぐの値を採用するか、安定確認時間を置くかも決めます。センサーの故障時に送風機を止めるような危険なデフォルト動作を避けるため、制御ロジックと運転手順を同時にレビューしてください。

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温度・塩分・気圧の補正は「単位」と一緒に管理する

DOの表示にはmg/L、%飽和などがあります。同じ水でも温度、気圧、塩分の条件が変われば飽和濃度が変わり、校正結果や比較結果にも影響します。USGSのDOTABLESは、水温、気圧、塩分または電気伝導率を入力し、酸素溶解度や飽和率、塩分補正係数を計算する公式ツールです。たとえば温水や塩分を含む排水を淡水・標準気圧の設定のまま扱うと、%飽和の解釈や換算がずれる可能性があります。USGS DOTABLES

仕様書では、センサーが温度を内蔵測定するのか、別の温度計の値を受けるのかを確認します。塩分は固定値を入力するのか、導電率から現場で推定するのか、変動時は誰が更新するのかを書きます。気圧については現場の実気圧を使うのか、標高を考慮した値を設定するのか、変換器が自動的に取り込むのかを確認します。HMIにはDOだけでなく、表示単位と補正に用いた温度、塩分設定、気圧設定、センサー診断状態を確認できるようにします。少なくとも保守記録には、設定値の変更日時と変更者を残します。

機種によって補正の適用範囲は違います。「自動温度補正あり」だけでは、塩分や気圧、校正の環境条件まで正しく扱えるとは限りません。メーカーの取扱説明書で、表示濃度の計算、%飽和の計算、空気校正時の圧力入力を分けて確認します。取扱説明書が求める校正条件を満たさず、隣接する二台の表示が一致しないから片方を故障と決めつけるのは避けます。採水時は採水点、時刻、温度、曝気状態を揃え、携帯計との差を評価します。

校正と検証を分け、保守の根拠を残す

「毎月校正」とだけRFPに書いても、運転に必要な信頼性は得られません。校正はセンサーの出力を既知条件へ調整する作業で、検証は現状の測定が許容範囲にあるかを確認する作業です。確認の結果が良好なら毎回調整する必要はないかもしれません。Endress+Hauserの取扱説明書には、空気中の100%相対湿度を用いる校正、ゼロ点、サンプル校正などの方法と、キャップ交換後やシステム監視の中で校正を見直す条件が記載されています。この機種別手順を候補機種の手順書に置き換えて実施します。機種別手順の例

実務では、洗浄前の表示、洗浄後の表示、基準計との比較、必要なら校正前後の表示を別々に記録します。清掃した途端に値が変わったなら汚れの寄与を把握できます。校正後だけを記録すると、日々の運転データがどの程度ずれていたか分かりません。基準の携帯計も校正状態と電池、プローブの保守を確認します。採水後に水が外気に触れたり、試料が温まったりすると比較条件が変わるため、現場の同じ点で迅速に照合するのが原則です。

判定基準は「差が何mg/L以内」だけで固定しません。測定範囲、プロセスの変動、機種の仕様、制御上の許容差を踏まえ、安定した運転条件と低DO領域で別々に確認します。許容差、洗浄後の再測定時間、再校正の条件、センサー交換の判断、保守責任者をSOPへ落とします。未校正のまま運転できる時間を決める場合は、制御入力として扱わない条件と、手動運転への切替条件も付けます。定期点検日はカレンダーだけでなく、値の急変や洗浄回数、キャップ交換と関連付けて見直します。

PLC・SCADAへ送る値は、単なる数値一つでは足りない

DO変換器からPLCへ4–20 mAを送るか、デジタル通信を使うかを決めます。4–20 mAなら、測定範囲と電流値の対応、範囲外・断線・診断エラー時の出力、ノイズ対策、絶縁、ケーブル距離を明示します。デジタル通信なら、値、単位、温度、状態ビット、校正・洗浄中フラグ、通信断をどのタグへ割り当てるかを決めます。通信方式の選定は既存PLCの空き点数と保守チームが扱えるプロトコルに合わせます。センサーだけをネットワークにつないでも、運転履歴として使えるとは限りません。

SCADAトレンドにはDO、温度、ブロワ周波数または送風量、ブロワ運転状態、曝気フェーズ、流入量、洗浄フラグ、校正日時を同じ時間軸で残します。センサーの生値と、制御に採用した有効値を区別できると、故障時の判断が容易です。記録周期はプロセスの変化速度と保存容量に合わせて決め、急変や警報の前後は追えるようにします。時計の同期、タイムゾーン、停電後の時刻ずれも確認してください。複数システムのグラフを並べても時刻が数分ずれていると、因果関係を誤ります。

制御に使うなら、まず値の妥当性判定を置きます。通信断、上限下限外、メンテナンス、校正中、急な不自然な段差を無条件でPIDへ渡しません。PLCは最後の有効値を短時間保持する、定めた安全な風量へ移る、運転員に手動切替を促すなど、サイトの安全設計に従って動かします。保持を無期限にすると測定器が止まったことが見えなくなるので、期限と警報が必要です。風量制御自体には送風機の最小・最大、弁の動作、混合に必要な空気量、設備保護を組み込みます。DOだけで設備を制御する前に、制御盤メーカーと運転部門がシーケンスを確認します。

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RFPに入れるべき要求:計器単体から運用まで

RFPでは「DO計一式」ではなく、成果と受入条件を列記します。①対象槽と測定目的、②想定水質と温度・塩分範囲、③設置位置とアクセス、④候補方式と許容する消耗品、⑤洗浄と校正・検証、⑥PLC・SCADAタグと異常時の処理、⑦設置工事・安全、⑧図面と教育、⑨保証と現地保守です。処理水に油脂や薬品洗浄液が入るなら、接液材質と洗浄薬品への適合性も照会します。メーカーのカタログの測定範囲だけで「排水に対応」と判定しないでください。

見積比較では、測定器、変換器、浸漬ホルダー、引き上げ金具、ケーブル、接続箱、PLC I/O、SCADA画面、通信試験、予備消耗品、試運転、教育を同じ範囲に揃えます。一社だけ架台を別費用にすれば安く見えるため、費用表は機器・工事・ソフト・年次維持を分けます。年次費用には、洗浄の作業時間、キャップや膜、基準計の校正、交換に伴う停止、現地サポートを含めます。公表価格の単純比較より、現地で交換部品が届く時間と保守契約の内容が導入判断に効くことがあります。

ベンダーへの質問には、①どの実水データで方式を推奨するか、②汚れと気泡の対策をどう試験するか、③校正・検証の手順と所要時間、④測定不能時の出力、⑤予備品の型番と納期、⑥設置後の教育範囲、を含めます。回答は営業資料ではなく、提案図、計器データシート、I/Oリスト、試験計画、保守マニュアルで受け取ります。水質が未確定なら、候補を一つに決める前に短期パイロットを発注する方法があります。パイロットの合格条件を先に決めることで、都合のよい時間帯だけの測定結果を避けられます。

FATとSATで何を確認すれば導入済みと言えるか

FAT(工場出荷前試験)は、機器と制御・表示の組み合わせが要求どおりかを施工前に確認する場です。変換器の設定、単位、出力スケール、エラー時の信号、PLCタグ、SCADA画面の表示、警報、時刻、洗浄中フラグを模擬入力で試します。センサーをきれいな水で校正できても、現場の気泡や付着への耐性はFATだけでは証明できません。FAT結果には試験条件、設定ファイル、異常時の画面、未解決事項を残します。

SAT(現地受入試験)では、設置深さと向き、水位変動、引き上げ作業、ケーブル保護、採水位置、安全アクセスを確認します。さらに、曝気ON/OFF、通常負荷と高負荷、洗浄前後、ブロワ停止、通信断などを、可能な範囲で実状態または安全な模擬条件で試します。サイトの運転を危険にさらす試験は机上・模擬で代替します。値そのものの一致だけでなく、「異常を検知し、制御から除外し、担当者が記録を見て対応できるか」を受入条件にします。

試運転期間では、日ごとのDOトレンド、携帯計との照合、洗浄回数、警報件数、運転員の手動介入、処理水質、電力を一緒にレビューします。二つの機種を比較するなら、同じ水質条件と同じ洗浄条件をできるだけ揃えます。一週間の良好な結果だけで年間の保守負荷を保証することはできないので、季節、製品切替、定期洗浄排水など変動条件が残る場合は、後日再評価する条項を契約に入れます。引き渡し時には竣工図、タグ一覧、SOP、予備品表、教育記録、校正証跡、保証窓口をセットで受け取ります。

導入の順番を誤らないための現場チェックリスト

まず、現行の排水処理フローと曝気槽を図にし、DO値が必要な意思決定を一文で書きます。次に、携帯計で候補位置を複数時点に測り、気泡、汚れ、負荷の変化を観察します。そこから方式比較と短期試験に入り、設置と保守アクセスの図面を確定します。続いて補正設定、PLCタグ、SCADAトレンド、故障時の動作を設計し、FAT、SAT、一定期間の並走を経て制御へ使うか判断します。最初から全項目を自動制御へつなぐ必要はありませんが、後から使えるよう品質フラグと時刻を保存しておく価値はあります。

現場で使う最小チェック項目は「測定目的・位置・運転フェーズ」「方式と必要な流速」「汚れ・気泡対策」「温度・塩分・気圧の設定」「洗浄・校正・検証」「通信断と保守時の制御」「FAT・SATの合格条件」です。この七項目のどれかが空欄なら、DO計の価格交渉より仕様を詰めることを優先してください。調達部門には費用の範囲、設備部門には設置と交換作業、運転部門にはトレンドと警報、IT/OT部門にはデータの品質と保存を確認してもらいます。

実水パイロットは「計器の数字」だけでなく運転判断を比べる

現場試験をする場合は、どの機種の数字が携帯計へ最も近いかという一点だけで決めないことが大切です。候補機種を同時に近接設置できるなら、同じ時間に同じ負荷を受ける条件を作ります。ただし互いのホルダーが流れを遮ったり、散気管の真上と横に分かれたりすると、測定差の原因が機器なのか位置なのか分かりません。設置図と写真を残し、位置を入れ替えられるなら入れ替え試験も検討します。携帯計の採水点は両候補に近く、かつ気泡を直接吸い込まない場所を選びます。

日中だけの試験は避け、夜間、週末、操業開始直後、洗浄排水が入る時間帯など、実際に負荷が変わる場面を含めます。比較表にはDO値、温度、運転フェーズ、送風量、流入量、洗浄の有無、作業者、採水時刻を並べます。機器の仕様書で示される応答時間が速くても、現場の信号平滑化を強く掛ければ画面は遅れます。逆に平滑化を弱くし過ぎると、気泡による瞬間的な揺らぎでブロワが頻繁に動きます。現場の制御周期と許容できる応答を、運転員と設備担当が一緒に決めます。

パイロットの合否は、測定値の一致、値が使えなかった時間、清掃回数、清掃に要した時間、消耗品の交換、警報の原因判定、担当者の操作のしやすさを組み合わせます。製品によって自動診断項目が違うため、単純な点数だけで優劣を付けず、必須条件を満たした候補の維持費と運転上の使いやすさを評価します。パイロットで想定水質の全てを網羅できないなら、未確認の条件を契約書に残し、正式運転後の再評価日と責任分担を明確にします。

高いDO表示を信じる前に確認する「異常の組み合わせ」

「DOが高いのに処理成績が悪い」という相談では、まず計器の誤りとプロセスの不均一を分けます。散気管付近で気泡が測定面へ付着していれば高めに読める可能性があります。槽の一角だけは高DOでも、流入直後の酸素需要が高い区域や混合の弱い区域では不足しているかもしれません。送風量だけが増えてDOも高い場合は、過曝気の可能性と流入負荷低下の可能性を両方調べます。表示一つでブロワ設定を下げる前に、複数点の携帯計測、流入・処理水質、汚泥の状態を比較してください。

反対に「DOが低いのにブロワは十分動いている」場合は、実際の酸素需要増加、散気管の目詰まり、配管漏れ、混合不良、センサーの汚れや設置位置を順に確認します。センサーが流れの弱い場所に置かれているなら、槽全体の酸素供給と局所測定値が一致しないことがあります。見かけの低値を直すために送風を増やすと電力だけが増える場合もあります。問題を運転、設備、計測の三系統に分け、同じ時刻のトレンドと現場観察を一枚の記録にまとめると、対策が部門間でぶれにくくなります。

「値が一定のまま動かない」ことも安心材料ではありません。PLCが直前の有効値を保持している、SCADAの通信が止まっている、校正中の固定値が残っている、測定面が厚く汚れて応答が遅くなっている、など複数の原因があります。ブロワの切替や運転フェーズの変化に対するDOの応答を見て、値の鮮度を別タグで確認します。画面上は正常範囲でも時刻が古いデータなら制御に使えません。運転員が「数字」と「数字を信じてよい状態」を同時に読める表示を要求してください。

誰が何を残すかで継続運用の質が変わる

計器を設置した後の運用責任を曖昧にすると、最初の数週間だけきれいなトレンドが残り、その後は警報が放置されます。運転部門は日次の値と送風機の状態、設備部門は洗浄・交換・校正、品質または環境部門は処理水の試験結果、IT/OT部門は時刻同期とデータ保存を担当する、といった役割表を作ります。異常が出たとき誰が現場確認し、誰が制御を手動へ切り替え、誰が再開を承認するかまで決めます。管理画面の権限も役割に合わせ、DO設定値や補正値の変更を追跡できるようにします。

保守ログには「洗浄済み」という一語だけでなく、洗浄前後の表示、付着物の種類、校正前後の差、交換した部品、運転に戻した時刻を残します。これを続けると、月ごとに付着が増えるのか、特定の生産品目の後に汚れやすいのかが分かります。もし清掃間隔を短くするしかないなら、自動洗浄や設置位置変更の費用対効果を検討できます。逆に安定した期間が長いなら、無用な分解や調整を減らす余地が見えます。保守計画は固定日程だけでなく、測定データと作業記録から改善します。

処理場のシフトが替わっても判断できるよう、表示画面の警報文は「DO低下」だけで終わらせず、確認順をSOPへ結びます。例として、まず測定値の品質フラグ、次にブロワ運転と流入変化、さらにセンサーの汚れ・気泡、最後に携帯計との照合、という順序を示します。運転員が計器異常とプロセス異常を同時に疑えるようにすることが重要です。訓練では通常時の表示だけでなく、断線、洗浄中、低水位、通信断の画面を見せ、現場で迷わず対応できるかを確かめます。

よくある質問:工場排水の溶存酸素計をどう選定する?

Q1. 光学式のDO計なら洗浄や校正は不要ですか?

不要ではありません。電解液や膜を使わない光学式機種でも、光学面の汚れ、キャップ交換、校正または検証の手順は必要です。汚れの進み方は実水で確認し、洗浄前後の差を記録して点検間隔を決めます。メーカーの取扱説明書を機種ごとに使い、他方式の保守頻度を機械的に当てはめません。

Q2. 曝気槽のDOは何mg/Lに設定すべきですか?

すべての工場に適用できる数値はありません。処理方式、負荷、必要な処理品質、送風機能力、槽内の混合、測定位置を踏まえて、現場の運転試験で定めます。DOの値だけで処理の良否を判断せず、流入と処理水の水質、送風電力、汚泥状態を合わせて見ます。設定値と根拠を運転記録に残し、工程変更時には見直します。

Q3. DO計を放流口に置けば曝気槽の制御にも使えますか?

通常、制御目的と測定位置が離れすぎます。放流口の水は槽内の空間差や時間遅れを含むため、送風機の即時調整に必要な状態を直接示しません。放流口で測る目的と、曝気槽内で測る目的を分け、必要なら別の計器を設計します。放流基準への適合判断は当該許可・法令と指定分析法に従ってください。

Q4. PLCへの接続は4–20 mAだけで十分ですか?

制御に使う値のほかに、故障、洗浄、校正、通信断、範囲外を判別できるなら構成として成り立ちます。ただしアナログ値一つだけでは状態を取りこぼしやすいため、補助接点やデジタル診断信号、SCADAタグを含めてI/Oを設計します。停電復旧と異常時の風量動作をFAT・SATで試すことが重要です。

Q5. センサーを一台だけ買う場合、どこへ置けばよいですか?

代表点か弱点監視点かを、運転目的から決めます。携帯計で槽内を複数点・複数時刻に測り、散気管直上の気泡、汚泥滞留、最低水位、引き抜き経路を確認してください。一台で槽全体を代表できない場合は、測定できない範囲を運転手順に明記します。

まとめ

工場排水の溶存酸素計選定では、方式の名称よりも、曝気槽のどこを測るか、付着と気泡へどう対処するか、補正条件と保守履歴をどう残すか、異常時にPLCがどう振る舞うかが成果を決めます。光学式と電極式は実水・実設置で比較し、運転目的、保守体制、総費用で選びます。DO目標値はサイト固有の処理条件と試運転結果から定め、FAT・SATで測定と制御の両方を受け入れます。

曝気槽のDO計を選ぶ段階で、既存のP&ID、槽の寸法、散気管の配置、直近の水質試験、PLC・SCADA構成があれば、候補位置とRFPの整理からご相談いただけます。TOMAS TECHへのお問い合わせは機種が未決定の段階でも可能です。

参考情報・一次資料