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2026.10.12

工業用ショックアブソーバ選定|衝突エネルギーから見積・試運転まで

工業用ショックアブソーバ選定|衝突エネルギーから見積・試運転まで

工業用ショックアブソーバの選定で最初に必要なのは、ねじ径や外形寸法ではありません。停止する質量、衝突直前の速度、押し続ける力、1時間当たりの停止回数です。どれかが曖昧なままカタログの「最大吸収エネルギー」だけを見て発注すると、試運転時に衝撃音が残る、ピストンが戻り切らない、短期間で油漏れが起きるといった問題を招きます。本稿はタイの工場で設備を新設・改造する生産技術担当者向けに、必要データの集め方、計算、型式比較、発注仕様、FAT/SAT、保全までを一連の判断として整理します。

工業用ショックアブソーバを選ぶ前に、停止させる対象を切り分ける

ショックアブソーバは移動体の運動エネルギーを、ストロークの中で減速しながら散逸させる部品です。空圧シリンダの端でスライダを止める、搬送パレットを停止位置へ受ける、回転アームの終端衝撃を吸収する、といった用途が典型です。ストッパそのもの、位置決め基準、または人身保護用の安全装置として扱ってよいとは限りません。最終停止位置の精度と機械的な安全限界は、独立したストッパやガイドの設計条件として分けてください。

設計対象を一枚の図にすると、移動体、駆動源、吸収器、固定ストッパ、ガイド、ワークの関係が見えます。吸収器のプランジャに正面から当たるか、衝突点がガイドから離れてモーメントを作るか、停止後もシリンダが押し続けるかを確認します。カタログで同じ「20 kg」を指定しても、水平に走るパレットと下降する軸では、重力や駆動力がストローク中に加える仕事が違います。回転体では質量だけでは足りず、慣性モーメント、衝突点半径、角速度が必要です。ACEの計算基礎も用途別の計算と有効質量を分けています。

工業用ショックアブソーバ選定|衝突エネルギーから見積・試運転まで - figure 1

現場で最初に集める八つの値

第一に、吸収器が実際に受ける移動質量です。ワークだけでなく、治具、スライダ、把持具、搬送キャリアも含めます。第二に、衝突点での速度です。カタログ上のシリンダ最高速度ではなく、実運転で止まる直前の値を測ります。第三に、吸収器に残せる有効ストロークです。取付けスペースではなく、衝突開始から固定ストッパ到達まで実際に使える距離を指します。第四に、減速中に働き続けるシリンダ推力、モータ推力、重力成分です。第五に、1時間当たりのサイクル数と連続運転時間です。第六に、衝突角度と横荷重です。第七に、周囲温度、クーラント、切粉、粉じん、洗浄条件です。第八に、停止位置と跳ね返りの許容値です。

この八項目は、見積依頼前に実測値と設計値を区別して書いてください。「最高速度1 m/s」はモータ設定値なのか、エンコーダで取った衝突直前速度なのかで意味が変わります。質量は最大積載時と空載時を並べると、調整式や自動補償式が必要かどうかを判断しやすくなります。ストロークも図面値だけでは不足します。公差、取付け板のたわみ、ストッパの調整範囲を差し引くと、使える距離は短くなります。

ダンパ、ゴム、シリンダ内蔵クッションとの違い

ゴムストッパは構造が簡単ですが、同じ移動エネルギーでも変形や反発の扱いが異なります。シリンダ内蔵クッションは配管と速度調整で成立する場合もありますが、移動質量が大きい、速度が高い、または停止音・反発を抑えたい場合は外付け吸収器の検討が必要です。油圧式ショックアブソーバにも自己補償型、調整式、低速向けなどの特性差があります。方式は「高性能そうだから」で選ばず、質量と速度の変動幅、必要停止距離、現場が調整を維持できるかで絞ります。SMCのRB製品情報とSMC USAのショックアブソーバ製品一覧には標準、耐クーラント、ショートタイプなどが分かれており、同じ用途名でも環境と寸法で候補が変わることが分かります。

衝突エネルギーの計算|12 Jの例で見落としを防ぐ

水平移動の単純な一次計算では、運動エネルギーを E_k = 1/2 × m × v² で求めます。質量 m はkg、衝突速度 v はm/s、結果はJです。駆動源が吸収ストローク中も前に押す場合、その仕事 E_p = F × s を足します。F は吸収器に沿う実効推力N、s は実際に使うストロークmです。一次候補の1回当たり吸収エネルギーは E_cycle = E_k + E_p。時間当たりは E_hour = E_cycle × c で、c は1時間当たりの衝突回数です。ACEは運動エネルギー、推進力によるエネルギー、1回当たり総エネルギー、時間当たり総エネルギーを別々の量として示しています。

仮に、質量20 kgのスライダが水平に1.0 m/sで到達し、停止中も100 Nの推力が続き、吸収ストロークを20 mm=0.020 m使えるとします。E_k = 0.5 × 20 × 1.0² = 10 J、E_p = 100 × 0.020 = 2 J、合計は12 J/回です。1時間に600回停止するなら12 × 600 = 7,200 J/hです。これは計算手順を示す仮定例であり、特定のメーカー型式が適合するという意味ではありません。実機では推力の変化、摩擦、速度分布、荷重変動、余裕率を確認し、メーカーの選定ツールまたは技術窓口で最終照合します。

工業用ショックアブソーバ選定|衝突エネルギーから見積・試運転まで - figure 2

速度を取り違えると、質量の補正では救えない

運動エネルギーは速度の二乗に比例します。上の仮定で質量を20 kgのまま、衝突速度だけ1.0 m/sから1.2 m/sにすると、運動エネルギーは10 Jから14.4 Jへ増えます。100 Nが20 mm押し続けるという同じ仮定なら、総量は16.4 J/回です。この差は「少し速い」程度の感覚では見落とします。PLCの設定速度と実衝突速度を混同せず、サイクルの中で最大速度になる条件、空載・満載、段取り替え直後を測定対象に含めます。

減速開始前にドライブ側で速度を落とせるなら、機械端で処理するエネルギーも下げられます。ただし、サイクルタイムの要求とトレードオフになります。既存設備の改造では、速度変更でタクトや位置決めに影響が出るため、制御変更と吸収器変更の二案を同じ条件で比較します。電動軸の速度プロファイルや停止制御を詰める場合は、当社の電動シリンダ選定ガイドも参照してください。

上下動・回転・斜め衝突は式をそのまま流用しない

下降する軸では重力が停止中も仕事を加え、上昇軸では向きが逆になります。回転アームでは角速度と慣性モーメントからエネルギーを求め、衝突点での接線速度を確認します。コンベヤに乗ったワークでは、ワークと搬送体の間の滑りや、後続品からの押圧を考慮します。斜めに当てる配置では、軸方向の成分だけでなく横荷重によるロッド損傷が問題です。これらはACEやSMCが用途別に選定手順を分ける理由でもあります。単純な水平スライダの式を万能式にせず、該当するメーカーのアプリケーション計算へ切り替えてください。

カタログで照合する七つの条件

「最大吸収エネルギーが12 J以上」という一項目だけでは選定は終わりません。Festo YSRWの技術資料には、サイズ別に吸収エネルギーやストロークの仕様が示されています。メーカーの型式表でも、少なくとも次の七項目を同一型式で照合します。型式の世代やオプションで値が変わるため、発注時点の図面とデータシートを正本にしてください。

  1. 1回当たり吸収エネルギー:最大値を超えないこと。平均値ではなく最悪条件で確認します。
  2. 時間当たり吸収エネルギーまたは許容作動頻度:連続運転で発生する熱の条件です。1回が範囲内でも高頻度なら不適合になり得ます。
  3. 有効質量・速度範囲:吸収特性に合う質量と衝突速度の範囲を確認します。最大エネルギーだけ一致しても減速波形が合わないことがあります。
  4. 吸収ストロークと残ストローク:設計で必要な20 mmを、その型式が実際に取れるかを確認します。
  5. 許容停止力・推力・固定ストッパ:筐体、支持板、ねじ、ワークへの反力も含めます。吸収器が機械的終端を兼ねるかは型式別に確認します。
  6. 取付け方向・衝突偏心・横荷重:ねじ径だけでなく、衝突点の同軸度とガイドの受け持つ力を確認します。
  7. 温度・媒体・復帰条件:クーラント、切粉、洗浄水、周囲温度に加え、次の衝突までにロッドが戻る時間を確認します。

Festo YSRWの技術資料の表には、型式サイズごとに1ストローク当たりと1時間当たりの許容エネルギーが別々に記載されています。これは一般に二つの定格を同時に見る必要があることを示す具体例です。ただし、この表の数値を別シリーズや現行改訂版へ無条件に流用してはいけません。発注候補の正式なデータシートで再確認します。

2本並列なら能力が単純に2倍、とは置かない

大きなワークを左右の2本で止める設計はよくあります。ただし、ワークの傾き、ガイドの遊び、取付け公差によって片側が先に当たります。その瞬間の負担は半分とは限りません。SMC RBカタログも複数吸収器へエネルギーが均等に配分される前提に注意を促しています。1本で受ける最悪ケースを検討し、同時当たりを保証する機構と調整手順がある場合だけ、メーカーと分担条件を詰めてください。

工業用ショックアブソーバ選定|衝突エネルギーから見積・試運転まで - figure 3

型式比較の順番|自己補償、調整式、環境仕様

最初の絞り込みは、最大荷重時の1回エネルギーと時間当たりエネルギーです。次に空載時や軽量ワーク時の有効質量・速度が吸収特性の範囲に入るかを見ます。ここで運転条件の幅が狭ければ、調整不要の自己補償型が保全を簡単にできます。品種ごとに質量や速度が広く変わる場合は、調整式、型式切替、速度プロファイル変更などを比較します。調整式を選ぶなら、つまみ位置と対応品種を標準作業に落とせることが条件です。現場で誰も設定を管理しないなら、調整機構はむしろ誤設定の入口になります。

次に設置環境です。切削機の近くならクーラントや切粉を受ける方向、食品・化学ラインなら洗浄や薬液との接触、溶接設備ならスパッタと高温を確認します。耐クーラント仕様の存在は、すべての液体に耐えることを意味しません。材質、シール、カバー、取付け姿勢を個別に照合します。タイ工場では現場温度と換気条件が設備ごとに違うため、一般的な「室温」の数字で済ませず、稼働中の吸収器周辺温度を測ってください。高サイクルの発熱が加わる場合はなおさらです。

最後に調達と交換です。寸法が合うだけの代替品は、エネルギー・有効質量・復帰特性が違う可能性があります。見積には型式、取付金具、交換用部品、現地在庫、納期、技術支援窓口を分けて記載してもらいます。輸入品を使うなら、故障時の停止許容時間から予備品数を決めます。予備を1本持つ判断も、単価だけでなく、調達待ちによる停止損失との比較です。

取付け設計で性能を失わないための実務

吸収器はカタログ上で成立しても、取付け方を誤ると設計した減速が得られません。まず衝突面をロッド軸に対して可能な限り正対させます。ガイド側で横方向の力とモーメントを受け、吸収器には軸方向荷重を負担させます。プレートの板厚やボルト本数は、単に静荷重に耐えるかでなく、反復衝撃で位置がずれないかを見る必要があります。ねじ込み長さ、ロックナットの締付け、取付け面の平面度も組立図に明記します。

固定ストッパの位置は「吸収器が底付きする位置」と混同しないでください。停止位置を保証する機械ストッパを別途設ける型式もあります。逆に、内蔵ストップを持つ型式もあり、必要なクリアランスはメーカー資料で異なります。Festoの資料では型式条件によって最大停止力や外部固定ストップに関する注記が付いています。汎用の「底付き直前で当てる」という経験則を横展開せず、採用型式の指示寸法に従います。

空圧シリンダに付けるときは、シリンダの速度調整弁、配管長、電磁弁の流量特性が実衝突速度を変えることも忘れないでください。空圧電磁弁の選定記事で回路全体の流量条件を整理しています。吸収器だけを交換しても、設定圧力や速度調整が変われば再選定が必要です。制御盤と現場の設定値を同じ仕様表に入れると、試運転後の変更を追跡しやすくなります。

既設装置の後付けでは、動画より測定ログを優先する

後付け案件では、現行設備の衝撃音が大きい、ストッパが摩耗する、ワークが跳ねるといった症状から話が始まります。動画は現象の共有に有効ですが、1回当たりエネルギーの計算には速度、質量、推力、頻度が必要です。エンコーダ値があるなら停止直前の速度履歴を取得し、無ければ安全な方法で距離と時間を測ります。ワーク重量は最大・最小の両方を採り、空圧シリンダなら圧力設定とシリンダ径から推力の上限を見積もります。ただし摩擦や圧力変動があるため、算出推力を実測と同一視しません。

摩耗したストッパを新品に替えた直後と、運転が落ち着いた状態では衝突条件が変わることもあります。新設品のカタログ適合だけでなく、既存ガイドのがた、支持板の緩み、センサの位置ずれを一緒に点検します。ショックアブソーバで音だけを消しても、ガイドへ残る偏荷重やワークの滑りを放置すれば別の故障に移ります。

見積依頼書に載せるべき項目

複数社に見積を出す際、型式名だけを渡すと同等性を比較できません。少なくとも次の項目を一枚の仕様表にします。

項目記入する内容不明な場合の扱い
用途図移動体、駆動源、吸収器、ガイド、固定ストッパの関係写真と簡単な断面図を添付
質量最大・最小の移動質量、ワーク・治具の内訳構成部品を個別計量
速度衝突直前の最大・最小速度と測定方法試験条件を明記して測定依頼
推力ストローク中の駆動力、重力、後続品の押圧制御条件と推定根拠を添付
ストローク実際に使える距離、固定ストッパ位置、調整幅図面公差込みで再計算
頻度回/分、回/時、稼働時間、ピーク運転タクト表と稼働率を提出
環境温度、液体、粉じん、切粉、洗浄、腐食要因設置点で現場確認
品質条件停止位置、反発、騒音、ワーク損傷の許容値受入基準を先に合意
保全交換時間、予備品、現地在庫、交換判断交換周期を固定値と決め付けない

見積回答には、推奨型式だけでなく、その型式で照合した1回エネルギー、時間当たりエネルギー、有効質量、衝突速度範囲、ストローク、推力・反力、環境条件を返してもらいます。前提が違う見積同士は単価比較しません。安全余裕をどこに置いたか、メーカー推奨の取付け部品が含まれるか、試運転時の調整支援が含まれるかも確認します。

安い型式を選ぶ前に総費用を並べる

吸収器の費用は本体単価だけではありません。取付金具、ストッパ板の加工、ガイド補強、センサ調整、停止時間、現地予備、交換作業が必要です。安価な小型品を限界付近で使い、頻繁に交換する場合と、余裕のある型式を使う場合では、年間費用の逆転があり得ます。一方で大きすぎる型式は低エネルギー域で適切な減速が得られない場合があります。「大きいほど安心」とは考えず、対象型式の有効質量・速度範囲で確認してください。

試算するなら、年間購入本数×本体価格、交換1回の作業時間×労務費、交換時の停止時間×対象設備の時間当たり停止損失、予備在庫費用を並べます。寿命をカタログ値から無条件に転記するのではなく、メーカーが示す条件と自工場の負荷・温度・汚れの違いを記録します。見積段階では未知でも、試運転後に実測した停止距離やロッドの戻り時間を残せば、次の更新時に型式を見直せます。

FAT/SATで確認する受入基準

工場出荷前のFATでは、最大質量と最大速度を同時に再現した条件、最小質量の条件、連続運転の条件を用意します。停止位置、反発、異音、漏れ、ロッド復帰、取付け板の緩みを確認します。製品やワークを直接傷つけるリスクがあるなら、試験用ダミーで段階的に速度を上げます。停止衝撃を人の感覚だけで判定せず、動画、変位、加速度、停止位置の反復データを可能な範囲で残します。

現地据付後のSATでは、実際の空圧圧力、配管、搬送負荷、周囲温度で再確認します。FATでは短時間しか運転しないため、時間当たり吸収エネルギーの条件を見落としがちです。ピークタクトで一定時間走らせ、取付部の温度と吸収器の復帰を確認します。連続運転の長さは採用型式と工程の実態に合わせてメーカーと決め、この記事の数値例から一律の試験時間を導かないでください。

受入記録には、型式、製造番号、調整位置、取付寸法、初期停止位置、速度設定、圧力、環境温度、サイクル数を残します。工場側の保全員が同じ観点で再点検できるよう、異常判定の写真と交換手順をタイ語または現場で使う言語で併記します。最後にガード、非常停止、インターロックを確認し、吸収器が故障しても危険な動きが人へ到達しない機械設計になっているかを設備全体で確認します。

運転後の保全|壊れる前に何を記録するか

保全点検では、油漏れや外観損傷だけでなく、停止位置の変化、異音、反発の増加、プランジャの戻り時間、取付ねじの緩みを見ます。従来より停止位置が変わったら、吸収器だけでなく速度設定、空圧圧力、ワーク重量、ガイドのがたを一緒に記録します。原因を決めずに吸収器を交換すると、負荷増大を隠して再発することがあります。

交換基準は「何万回で必ず交換」と一律に置くより、採用型式のメーカー指示、実際の負荷、停止品質の変化を組み合わせます。予防交換を決めるなら、その根拠となる現場データを残します。交換後は元のねじ位置に戻すだけで済ませず、停止速度とストッパ位置を再確認してください。調整式の設定位置には封印マークや記録表を使い、品種切替で設定を変える場合は作業者と責任者を明確にします。

タイ国内で複数拠点に同じ装置を展開する場合、各拠点の調達型式を同一にそろえる利点があります。ただし、装置のタクト、温度、ワーク重量が異なれば、そのままの横展開は危険です。共通化できるのは選定手順と記録項目であり、適合判定は設置条件ごとに行います。これを部品管理表と設備改造履歴へ反映しておくと、次の設備で同じ計算をやり直しやすくなります。

仕様が確定する前にメーカーへ確認したい三つの質問

第一の質問は「この運転範囲の中で、どの条件が型式にとって最も厳しいか」です。最大質量・最大速度だけが最悪とは限りません。減速特性によっては軽負荷時に十分なストロークを使えず、停止時の反発や衝撃が残る場合があります。複数品種を流すラインなら、各品種の質量・速度の組合せを表にして渡し、メーカーが全範囲を確認したことを回答に残します。

第二の質問は「固定ストッパと吸収器先端の相対位置を、図面上で何mmに設定するか」です。機械端の位置を吸収器に任せてよい型式と、別のストッパが必要な型式があります。取付け公差、板のたわみ、先端キャップの摩耗も含めて、最も奥まで入る条件と、最も手前で当たる条件をそれぞれ確認します。曖昧なまま現場に調整を任せると、ロッドが底付きしたり、逆に吸収ストロークを使い切らなかったりします。

第三の質問は「交換時に同じ性能へ復元するため、何を記録するか」です。調整式の目盛り、取付けねじ位置、ロックナット位置、停止位置、速度設定、圧力、製造番号などが候補です。メーカー推奨の点検間隔や交換判断がある場合は、実際の運転条件に当てはめて保全票へ書き込みます。技術的に適合する型式でも、復元手順が現場に残らなければ、交換のたびに停止品質が変わります。

導入判断を止めるべきサイン

計算上のエネルギーが候補型式の定格内でも、そのまま発注を進めないほうがよい場合があります。第一は衝突速度を実測できず、設定値しか分からない場合です。速度は二乗で効くため、推定誤差が結果に大きく表れます。設備にエンコーダがないときも、リスク評価に合う方法で停止直前の移動距離と時間を測るか、メーカーと保守的な設計条件を合意します。「たぶん1 m/s以下」という口頭情報だけでは見積の前提として弱いままです。

第二は吸収器に横荷重が掛かる構造です。特に搬送パレットの片側を一つのプランジャで受ける構造は、ワークの偏載とガイドの遊びで衝突方向が変わります。荷重を軸方向へ導くガイドや受け板の修正を先に検討します。吸収器の容量を大きくしても、曲げ荷重の問題は解決しません。衝突面が摩耗して角度が変わる工程では、新品時だけでなく摩耗後の当たり方を点検項目に含めます。

第三は停止後の位置を吸収器任せにしている場合です。加工や組立の位置決めが必要なら、固定ストッパやロック機構で基準を作る設計が必要になることがあります。採用候補に内蔵ストップがあっても、その許容力や位置精度を超える使い方はできません。装置の安全限界も別に確認します。吸収器が故障または脱落したときに可動部がどこまで進むかを図面上で示し、ガードとインターロックを含む設備全体で対策します。

第四は高頻度運転の熱条件が未確定な場合です。試運転の数十回で問題が見えなくても、量産タクトでは時間当たりの吸収エネルギーが制約になります。ピーク時間帯のサイクル数と継続時間を明確にし、周囲温度と合わせて確認します。運転日報に平均タクトしか無いなら、最も密な時間帯を抜き出して計算します。吸収器の温度はカバー内の換気や隣接設備からの熱にも左右されるため、据付場所で測定します。

第五は「同寸法の代替品だから再検証不要」と判断している場合です。カタログ記号が近くても吸収特性、復帰力、許容速度が異なることがあります。型式変更では、設計計算、取付け、FAT/SATの受入項目を更新し、保全用の予備品ラベルも変えます。この記録が無いと、次回交換時に古い型式と新しい型式が混在し、停止品質の変化を追いにくくなります。

組立・試運転の記録を調達仕様へ戻す

初号機の試運転で得た条件は、次号機の発注書へ必ず反映します。たとえば設計上は1.0 m/sだった衝突速度が実測で1.1 m/sなら、その差を「調整で吸収した」とだけ残さず、速度設定、圧力、ワーク重量、サイクル数、停止位置をセットで記録します。必要ならエネルギーを再計算し、採用型式の範囲内であることを確認します。図面、PLCパラメータ表、保全票が別々の版のままになると、交換時に古い前提で部品を発注する原因になります。

量産開始後に品種が増える場合も同じです。追加ワークの質量だけを見るのではなく、搬送姿勢と速度、衝突点、停止中の推力を確認します。特に軽量品では速度が上がりやすく、重量が軽いから安全とは言い切れません。新製品導入の工程承認票に「既設ショックアブソーバの適合確認」を一行追加しておくと、設備改造を伴わない品種追加でも確認の抜けを減らせます。

現場で吸収器を交換する担当者には、異常の症状と停止判断を文章だけでなく写真や短い動画で示します。油漏れ、プランジャの戻り不足、ストッパ位置の変化、異音をそれぞれ見分けられるようにし、発生時の初動を保全手順に記載します。交換品が届くまで稼働を続けてよいかは、吸収器だけでは判断できません。衝突先の強度、ワーク落下、ガードの状態を含む設備のリスク評価で決めます。

工業用ショックアブソーバ選定のFAQ

工業用ショックアブソーバのサイズは、ねじ径から選べますか?

ねじ径は取付け条件の一部です。まず停止するエネルギー、衝突速度、有効質量、頻度、ストローク、反力を求め、適合候補の寸法を最後に照合します。ねじ径だけ一致する交換品には、内部特性が違うものがあります。

吸収エネルギーがカタログ最大以下なら十分ですか?

十分とは言えません。1回当たりの上限に加え、時間当たりの上限、速度と有効質量の範囲、復帰時間、停止力、温度を確認します。前述の12 J/回、7,200 J/hという仮定例でも、両方の定格を満たす型式かを別々に調べる必要があります。

2本並列にすると、各吸収器を半分のエネルギーで選べますか?

必ずしもできません。先に接触する側が大きく負担するためです。同時当たりを調整できる構造と検査方法を設け、偏りを含む最悪条件をメーカーと確認します。

空圧シリンダの内蔵クッションで足りる場合はありますか?

あります。質量・速度・頻度が内蔵クッションの許容範囲にあり、停止品質も満たすなら外付け部品は不要です。反発や振動、音、部品摩耗が残る場合は、速度調整とともに外付け吸収器を検討します。

ショックアブソーバの価格は何で変わりますか?

吸収能力、ストローク、調整機構、耐環境仕様、取付け金具、在庫条件で変わります。見積では本体単価だけでなく、取付工事と予備品、交換作業、停止損失を同じ表で比較すると判断しやすくなります。この記事では特定製品の価格を提示しません。仕様と数量、タイでの調達条件によって変わるためです。

故障した吸収器を別メーカーの同寸法品に置き換えられますか?

外形が同じでも、そのまま適合するとは限りません。1回・時間当たりのエネルギー、速度、有効質量、ストローク、復帰、停止力、温度、取付け方向を再確認します。設備側の停止位置と安全限界も試運転で確認してください。

まとめ|選定表は「エネルギー」と「現場条件」を一緒に残す

工業用ショックアブソーバの選定は、質量と衝突速度から運動エネルギーを計算し、停止中に加わる推力の仕事を足すところから始まります。その結果を1回当たりと時間当たりの二つの定格に照らし、有効質量、速度範囲、ストローク、停止力、取付け、環境、復帰を同じ型式で確認します。見積段階では前提条件を各社で統一し、FAT/SATで最大・最小負荷と連続運転を測り、運転後は停止品質の変化を記録します。これで「寸法は合うが止まらない」という再選定を避けやすくなります。

ご相談:既設装置の衝撃音や停止位置のばらつき、または新設ラインの吸収器選定で、速度や推力の条件整理から必要な段階であれば、TOMAS TECHへご相談ください。装置図と現場の運転条件を基に、比較可能な見積仕様の作成から一緒に進められます。

参照した一次資料