タイ工場の自動組立機や搬送装置で電磁弁を選ぶとき、「シリンダーに合う5ポート弁を一つ」という依頼だけでは見積も受入試験も成立しません。単動か複動かで必要な通路数が変わり、同じ5ポートでも2位置と3位置では停止時の空気の扱いが異なります。内部パイロット式では供給圧が製品ごとの作動下限を下回ると、コイルが励磁されても主弁が切り替わらない可能性があります。流量表、コイル電圧、PLC出力、停電時の状態を別々に確認する必要があります。
本記事は空圧電磁弁の選定を、回路、圧力と流量、電気、安全、調達、FAT/SATの順に整理します。対象は機械に組み込む方向切換弁です。水や蒸気を単に開閉する2ポート流体弁とは選定条件が異なります。数字を使う箇所は計算手順を示す仮定であり、製品の保証値ではありません。最終仕様は採用する型式の最新版のカタログと回路図で確定してください。
最初に弁ではなく「空気をどこへ送るか」を描く
選定の入力はシリンダーと工程の動作です。単動シリンダーなら、供給、アクチュエータ、排気を切り替える3ポート2位置弁が候補になります。複動シリンダーは両室へ交互に給排気するため、供給口、二つの作動口、二つの排気口を持つ5ポート弁が一般的な候補です。ただし周辺回路や安全要求により構成は変わるため、「単動なら必ず3/2、複動なら必ず5/2」と型式まで自動決定しません。Festoの弁解説も3/2、5/2、5/3を機能で区別しています。
図面にはポート番号・名称、各位置での流路、コイル通電時と非通電時、スプリング復帰、排気先を記します。Pまたは1は供給、A/Bまたは2/4は作動、R/Sまたは3/5は排気として表されることがありますが、記号と番号の対応は採用品の資料で確認します。図記号の四角の数が弁位置、接続口の数がポート数です。「5/2」とは5ポート・2位置の意味であり、シリンダーの口径や流量を示しません。配管担当とPLC担当が同じ図面を見て、出力ONの時に伸長するのか後退するのかを合意してください。
同じ機械でもワーク排出、クランプ、扉ロック、エアブローは要求が違います。エアブローはON/OFF弁が適切な場合があり、保持が必要なクランプは圧力を閉じ込めるだけでは安全性を保証できません。工程ごとに「通常動作」「電源遮断」「供給圧低下」「非常停止」「復電・再給気」の状態表を作ると、弁の形式と追加機器の要否が分かります。空圧全体の設計・変更・保守時の危険源を扱う枠組みにはISO 4414:2010がありますが、この規格名だけで個別装置の安全設計が終わるわけではありません。

3/2、5/2、5/3の選び方
3/2弁は三つのポートを二つの流路状態で切り替えます。単動シリンダーで非通電時にシリンダー側を排気し、ばねで戻す構成なら、通常閉と通常開のどちらを求めるかまで指定します。通常閉・通常開という言葉は弁のポートの状態を指し、機械が安全かどうかを直接示しません。エアブローで非通電時に吹き続ければ不要なエネルギー消費が増え、逆にクランプを外す工程で排気のタイミングが遅れれば取り出し動作と干渉します。
5/2弁は二つの作動口の一方へ供給し、他方を排気する二位置を持ちます。単ソレノイド・スプリング復帰とダブルソレノイドでは非通電時のふるまいが異なります。ダブルソレノイド型の切替状態は電気を切っただけでは希望位置へ戻らないことがあります。停電時にワークを保持、退避、解放のどれにしたいのかを先に定義し、外力、残圧、漏れ、重力を含めて現物で検証します。「ダブルなら停電時に確実に保持」と書いた見積は受け入れないでください。
5/3弁は中央位置を持つため、中央の構成を必ず指定します。クローズドセンターは中央で作動側などの流路を閉じる方式、エキゾーストセンターは作動側を排気する方式、プレッシャーセンターは供給側へつなぐ方式として分類されます。実際のポート接続は製品ごとの図記号で確認します。クローズドセンターでも弁やシリンダーの内部漏れ、配管の漏れ、外力によって軸は動き得ます。落下危険のある垂直軸なら機械ブレーキ、ロッドロック、保持回路などを危険源評価に基づき検討し、中央位置を安全保持装置の代用にしません。中央に戻す時間、復帰ばね、両コイル同時指令の扱いも明文化します。
| 候補 | 主な用途の例 | 発注前の決定事項 |
|---|---|---|
| 3/2 | 単動シリンダー、制御空気、エアブロー | 通常位置、供給/排気の向き、停電時の状態 |
| 5/2 | 複動シリンダーの往復 | 単/複ソレノイド、復帰方法、A/Bと伸縮の対応 |
| 5/3 | 中央位置を使う複動系 | 中央流路、中央への復帰、漏れと外力への対策 |
直動式とパイロット式は「最小圧力」を見て分ける
直動式はコイルの電磁力が弁機構を直接動かします。パイロット式は小さなパイロット弁で主弁を動かし、主弁の切替にパイロット空気の条件が関係します。SMCの直動式3・4・5ポート弁とパイロット式4・5ポート弁は製品群が別です。直動式ならすべて低圧で使える、パイロット式なら必ず大流量という一般化は避け、候補型式の使用圧力範囲、流量特性、応答時間、消費電力を比較します。
内部パイロット式では供給圧がパイロット空気の源になるため、起動直後、他装置の同時動作時、停止直前の最低圧力が重要です。設定圧が十分でも、弁入口までの長い管、細い継手、フィルターの圧損で弁入口圧は下がります。外部パイロット式は別のパイロット供給を用いられる型式がありますが、独立供給の配管、遮断、故障時の挙動まで設計しなければなりません。SMC SZ3000の取扱資料のように、シリーズごとに圧力範囲と電気上の注意が示されます。あるシリーズの下限値を他の弁へ移植しないでください。
「0 MPaで使いたい」という要求は供給ラインがゼロ圧のときでも電気的に切り替えたいのか、極低圧の空気を流したいのか、再給気時に意図した位置から始めたいのかを分けます。回路内に残圧がある状態では圧力計の取付位置によって見え方が変わります。メーカーには弁入口の通常値と最悪値、供給の立上り・立下り、外部パイロットの有無を渡して、適用できる型式と条件を文書で回答してもらいます。
流量をCvやポート径の一語で決めない
弁を通る空気が足りないと、シリンダーの速度が出ず、圧力低下で推力も不足します。一方で大きすぎる弁を選ぶと、寸法やコストだけでなく排気時の速度調整が難しくなる場合があります。必要なのは、実負荷でのシリンダー両室の充填と排気を、所定のタクトで満たせるかです。シリンダー内径、ロッド径、ストローク、要求移動時間、供給圧、負荷、速度制御弁、ホース内径・長さ、継手、サイレンサーを一組として扱います。
初期見積では片室の幾何学的容積をピストン面積×ストロークで考えます。ロッド側はロッド体積を差し引きます。ただし幾何学容積を毎秒に換算した値を、そのままカタログの標準状態換算流量と比較してはいけません。圧縮性、圧力変化、温度、漏れ、加減速、チューブ容積、排気側の背圧を考慮する必要があります。メーカーの選定ツールまたは流量特性表で計算条件を一致させ、重要軸は実機で速度を確認します。ポートねじ径が同じでも内部通路の有効断面積が違うことがあります。Festoの方向切換弁製品群から候補を選ぶ際も、具体型式のデータシートへ進んでください。
例として、同じシリンダーを一定時間で動かす二案を比較するとします。案Aは弁が近く、チューブが短い。案Bは集中マニホールドから細く長いチューブを引く。カタログ上の弁流量が等しくても、案Bの管路容積と圧力損失で動作が遅れる可能性があります。これは条件を示す仮想例で、特定の長さや圧力の限界値を意味しません。急速排気弁を追加する場合は速度だけでなく停止衝撃、騒音、排気先、保守性を評価します。排気ポートのサイレンサーが目詰まりしたときの速度変化も保全項目に入れます。

DCコイルとPLC I/Oを一枚のインターフェース表で合わせる
「DC24 V」とだけ指定しても制御盤とは接続できません。PLCのトランジスタ出力がシンク型かソース型か、弁コイルの定格電圧と許容変動、起動・保持電流、出力1点あたりと共通端子あたりの容量、漏れ電流、サージ抑制素子、LED、極性、コネクタを照合します。出力点数には単ソレノイドなら一つ、ダブルソレノイドなら二つの制御点が必要となる設計が一般的ですが、通信マニホールドではマッピングをメーカー資料で確認します。I/O表に弁番号、工程動作、出力アドレス、コイル側のピン番号、反転の有無を記載します。
コイルに内蔵したサージ抑制素子にはダイオードやバリスタ等があり、極性と遮断時の応答に影響します。PLC側の出力回路にも抑制素子がある場合、組み合わせと停止時間を確認します。接点やトランジスタを定格電流の数字だけで決めず、ケーブル長、同時励磁数、盤内温度、保護回路を含めて電気設計者に確認を依頼してください。弁の作動表示LEDが点いても主弁が切り替わった証拠ではありません。空圧条件とシリンダーの端位置センサーを別に監視します。SMC SZ3000資料に代表される製品資料には誤配線やサージに関する注意があるため、採用品の配線図を正本とします。
PLCプログラムでは相反する二つのコイルを同時に要求しない相互排他と、切替確認のタイムアウトを設けます。タイムアウトの長さは実ワーク、最低供給圧、最長ホース、温度条件を用いた試験で決めます。失敗時に再励磁を無限に繰り返すと、軸の予期しない動作を招くため、異常を記録して手順に従う復帰へ移します。センサーが伸長端を示しただけで把持力やワークの着座を証明できない工程では、別の圧力・位置・ワーク有無の確認を加えます。
マニホールドは省配線だけでなく故障範囲を決める
弁をマニホールドに集約すると配線、配管、盤内スペースを整理しやすくなります。一方で共通供給と共通排気、通信ユニット、電源、ベースの制約を複数軸が共有します。一つの軸で大流量を排気したときの背圧が隣軸へ影響しないか、同時動作で入口圧が下がらないか、排気経路を検証します。ベース上で内部パイロットと外部パイロットを混在できるか、異なる弁サイズを載せられるかも製品仕様次第です。FestoのISO 5599-1関連資料のようなインターフェース資料は寸法やポート配置の確認に用い、電気・空圧の全互換性を推測しません。
マニホールドの見積には、ステーション数、予備位置、ブランキングプレート、供給区画、排気区画、コネクタ・通信方式、アドレス割付、電源分割、交換手順を入れます。フィールドバスの通信断、制御電源断、弁電源断が別々の故障であるなら、それぞれの出力状態を指定します。交換時に一本の弁だけを外してよいのか、全マニホールドの空気を遮断する必要があるのかは保全時間と安全に直結します。型式変更後のPLCアドレスずれや、コネクタの向きの相違もFATで確認します。
失電時の弁位置と人の安全を別々に設計する
失電時にスプリングで戻るか、最後の位置に残るか、中央に戻るかは弁構成の特徴です。しかし軸の実際の行き先は荷重、重力、残圧、弁とシリンダーの漏れ、外部ストッパーで決まります。どの状態を安全とするかは設備の危険源評価と工程要求から導きます。手を入れる場所にシリンダーが押し出されるなら、電磁弁の通常位置だけに頼らず、保護装置、独立した遮断・排気、機械的な保持を組み合わせます。ISO 4414は空圧システムの安全要求を扱いますが、適合判断には装置全体の設計と検証が必要です。
手動オーバーライドは試運転に便利ですが、意図せず押せる場所に残すと自動運転中に軸が動きます。押し込み式か保持式か、工具が必要か、ガード内からアクセスするかを定義し、使用可能な運転モードと作業者を限定します。オーバーライド操作時も排気・戻り側の軸やワークを見落とさないよう、試運転手順に二人確認や立入範囲を組み込みます。PLCが出力OFFでも手動操作で動くことがあるため、PLCの画面表示だけを機械の無動作証明にしません。
保守のロックアウト・タグアウトでは電源だけでなく圧縮空気の供給を遮断し、残圧を解放し、重力・ばね・閉じ込められた空気による再動作を防ぎます。圧力計のゼロ表示だけで危険源が消えたと判断せず、隔離範囲と閉じ込められた区間を回路図で確認します。SMCのマニホールド関連資料も残圧排出を考慮した資料として参照できます。2位置・3位置の通常方向切換弁を、安全用の遮断機能やLOTO機器として無条件に扱わないでください。

タイ工場で見落としやすい空気品質と現場条件
タイの工場では高温多湿の外気を取り込むコンプレッサーと、冷房された制御室、日射を受ける配管、洗浄する装置が同じ敷地にあります。弁の選定表には温度と湿度の数値だけでなく、凝縮水がどこに出るか、フィルターとドライヤーの配置、排水保全、粉じん・油霧・洗浄薬品の有無を記入します。採用品の推奨空気品質、潤滑条件、シール材、保護等級を確認してください。製品の使用圧力範囲に収まっていても、ドレンや異物で弁が固着すれば工程は止まります。
保守部品の入手性も比較項目です。タイ国内でコイル、コネクタ、シール、マニホールドベース、サイレンサーを調達できるか、代替型式への変更時に端子とポート位置が維持されるかを問い合わせます。輸入品の納期や通関期間を一般値で決めず、候補品の実見積と在庫回答で判断します。現地保全チームが型式を読み、弁とセンサーを切り分けられるように、盤図、空圧回路図、I/O表、交換記録を英語またはタイ語でも渡すと引渡し後の再現性が上がります。
RFQ/RFPに書くべき仕様と比較表
引合書は「メーカーAの相当品」で終わらせず、機能と試験条件を指定します。必要な項目は、機械の工程説明、単動・複動、弁の位置とポート、通常位置・中央機能、単/複ソレノイド、直動/パイロット、弁入口の通常・最低・最高圧、外部パイロット、必要な流量と条件、目標タクト、チューブと継手、空気品質、電圧・電流・PLC出力、コネクタ、サージ保護、手動操作、マニホールド構成、故障時の状態、保守部品です。該当しない欄も空白でなく「対象外」と書くと、発注後の解釈違いを防げます。
サプライヤーからは型式の末尾まで記載した見積、最新版データシート、流量・圧力の選定根拠、空圧回路図、電気配線図、外形・取付図、納期、交換部品を受け取ります。「当社標準で対応」とだけ返されたときは、標準とはどの電圧、コネクタ、手動操作、排気仕様なのかを問い直します。異なるメーカーを比較する表では、本体単価だけでなく、ベース、ケーブル、継手、消音器、予備品、配線工数、試験工数を同じ範囲で集計します。認定や安全機能を要求する場合は、対象型式と適用範囲が記された証憑を別に求めます。
| RFQ/RFPの行 | 値の書き方 | 受領する証拠 |
|---|---|---|
| 回路機能 | 例: 複動軸、5/2、単ソレノイド、非通電時は後退を要求 | ポート図、配管図、失電時試験計画 |
| 圧力 | 弁入口での通常・最小・最大と測定点 | 適用圧力範囲、パイロット方式 |
| 流量 | 実負荷、ストローク、目標時間、管路条件 | 選定計算、製品流量特性 |
| 電気 | DCコイル、PLC出力型式、容量、配線ピン | 電気図、I/O表、同時励磁計算 |
| 保守 | 遮断・排気・交換と再起動 | 手順書、予備品表、現地供給回答 |
表の「例」は仕様書の書き方を示す仮定です。特定工程の安全側を保証するものではありません。たとえば非通電時の後退が望ましく見えても、後退先に作業者の手があれば別の結論になります。
FATで弁単体と設備の相互作用を確かめる
FATはメーカーの弁単体試験成績だけでは足りません。対象装置の代表ワーク、配管、実際のPLC出力と電源を使い、コイルON/OFF、伸長・後退、応答時間、最短・最長タクト、連続運転、同時動作、最低供給圧を確認します。最低圧は現場実測と設計値の両方から試験条件を決め、採用品の作動範囲を外れる無理な試験は行いません。弁LED、PLC出力、圧力、端位置センサー、ワーク状態を同じ時刻で記録すると、動かなかったときの切り分けができます。
試験には電源遮断、通信断、供給圧低下、排気側の制約、手動オーバーライド、復電・再給気の順序を含めます。危険な故障を現場で突然作らず、治具と立入禁止範囲を決めて安全な試験計画を承認します。試験中に5/3中央で軸が止まって見えても、漏れによる位置変化を十分な時間で観察し、設計された保持機構の有無を確認します。結果は「動作OK」ではなく、圧力、サイクル数、負荷、指令と応答の時刻、逸脱、対策、再試験結果で残します。型式、図面版、PLC版を紐付けておけば、後の弁交換で条件が変わったか追跡できます。
SATは現地の空気・配線・作業を使う
タイの現地SATでは実際のコンプレッサー系統、他設備の同時消費、敷設後のホース、盤の電源、通信、作業者の動線で再確認します。FATで合格した短いホースの試験機が、現地の集中マニホールドでは遅くなることがあります。朝の立上げ時と生産ピーク時の弁入口圧、チューブの折れ・挟み、排気サイレンサーの位置、結露・ドレンも見ます。受入時の気温や供給状態を記録すれば、後日問題が出たときに設計変更か保全不良かを判断しやすくなります。
SATの合否は軸が端まで動いたかだけでなく、ワークの着座、把持または解放、製品品質、タクト、異常の検出と復帰、保守時の隔離確認まで含めます。クランプの端位置スイッチがONでも圧力が足りず加工中にワークが滑る可能性がある工程なら、工程内の力・圧力・製品寸法を評価します。FATで現地条件を再現できなかった項目を持越しリストにし、担当者、試験日、判定規則を決めます。納入後に現地の保全者が弁を交換し、配線と配管の誤接続を避けて復帰できるかも、実演で確認します。
故障を切り分ける順番
「シリンダーが動かない」ときに弁だけを交換すると、供給圧や出力信号の不良を見落とします。安全な状態へ移してから、PLC指令、出力端子、コイル入力、弁入口圧、パイロット圧、作動口圧、排気の詰まり、シリンダー側の機械抵抗を順に調べます。電気側が正常でもパイロット最低圧を満たさなければ主弁は動かない可能性があります。弁から空気が出てもホース折れや速度制御弁の誤調整でシリンダーは動きません。保全記録に交換前の測定値を残してください。
「動くが遅い」ときは、供給圧の動的低下、フィルターとサイレンサーの目詰まり、同時動作、速度制御弁の設定、配管変更、ワーク摩擦の変化を比べます。「止まるが漂う」ときは5/3中央の機能、漏れ、重力、保持機構、センサーの検出幅を調べます。「ときどき動く」はコネクタ接触、コイル熱、電源電圧、ドレン、異物、圧力の境界条件が候補です。原因を確定する前にPLCタイムアウトだけ延ばすと、故障の検出力を失います。
選定会議を「一つの型番」ではなく「一つの根拠」で終える
購買が同等品を求める場合、口径と電圧だけが同じ製品を代入すると、パイロット方式、手動操作、復帰方法、消費電流、端子配置、圧力下限が変わることがあります。代替品比較表には元の型式と候補型式を並べ、回路記号、全ポートの対応、通常位置、電気接続、取付寸法、最低・最高圧力、流量特性、周囲温度、交換部品を一行ずつ照合します。一項目でも未確認なら「同等」とせず、試験項目と担当者を決めます。保全者が夜勤に交換するときにも、この表を使える場所へ保存してください。
メーカーの流量値を比較するときには単位の見た目に注意します。ある資料が有効断面積を示し、別の資料がCvまたは標準状態換算流量を示す場合、数字の大小をそのまま順位にできません。試験規格、入口圧、出口圧、流体温度、流れ方向を確認し、必要に応じてメーカーへ同じ運転点での比較を依頼します。排気側に付けるサイレンサーや速度制御弁は、カタログ上の弁単体データに含まれていないことがあります。見積比較は弁だけでなく、採用する回路一式の測定結果に結び付けるべきです。
また、調達時に予備コイルだけを用意しても、故障がコネクタ、ガスケット、マニホールドベース、排気サイレンサーなら復旧できません。故障履歴、同一型式の使用台数、重要工程の停止損失、タイ国内の在庫回答に基づいて予備品を決めます。保管品は端子やゴム材が劣化し得るため、型式と保管条件、入出庫日も残します。代替部品を採用したら、空圧図、電気図、PLC I/O、FAT/SATの基準版を更新し、古い図面だけで次回の部品を発注しない仕組みにします。
導入後の変更管理と受入の引継ぎ
量産開始後にタクトを上げる、ホースを延ばす、同じマニホールドへ軸を増やす、PLC出力カードを交換する、といった変更は弁の型式を変えなくても使用条件を変えます。変更票には目的、変更前後の回路図とI/O、最低入口圧、同時動作数、電源容量、排気背圧、失電時の動作、必要な再試験を記します。特に「一軸追加しただけ」は共通供給と共通排気を通じて他軸の速度へ影響する可能性があります。既存軸の合否を再確認する範囲を決めてください。
運転部門へ渡す引継ぎ資料には、正常時の圧力・サイクル時間の基準値、異常履歴の読み方、手動操作の制限、隔離・残圧排出の位置、交換部品、再起動確認、連絡先を含めます。数字の基準はFAT/SATで測った条件とセットで残します。基準値だけを単独で掲示すると、ワークや製品が変わった後も同じ値を無条件に適用してしまいます。たとえば速度が遅いとき、作業者が勝手に圧力を上げて補正するのではなく、供給不足、サイレンサー詰まり、ワークの引掛かりのどれかを測ってから対処する手順にします。
設備メーカー、電気施工者、現場保全、製造責任者の間で、誰が最終の回路図を持ち、誰が弁交換後の動作試験を承認するかも決めます。FATで合格した設定を現地で変えた場合は、変更箇所だけでなく関連する故障時の動作も再確認します。そうすれば「納入時は動いた」という記録を、長期に使える保全と受入の基準へ変えられます。
マニホールドを試運転するときは、PLCの出力番号と実際の弁ステーションを一台ずつ突き合わせます。最初から全軸を同時に動かすと、配線違い、チューブのA/B逆接続、弁の取付位置違いが混ざり、原因を絞れません。まず各ステーションについて安全な低速試験を行い、指令、コイル表示、作動口圧、シリンダーの方向、端位置センサーを同じ記録票に残します。次に二軸以上の同時動作で供給圧と排気背圧を測り、単独試験のサイクル時間と比較します。これはマニホールドが共通流路を使うことから必要となる装置側の検証であり、弁単体のカタログ値では代用できません。
予備ステーションにも受入条件が要ります。ブランキングプレートを付けて現在使わない位置を閉じるのか、将来の増設へ供給・排気を残すのか、電気アドレスだけ予約するのかを決めます。増設予定だけを書いて管路容量や出力容量を未確認にすると、後日の一軸追加が既存軸を遅くすることがあります。FAT時点のステーション配置、供給区画、排気区画、同時励磁数と実測圧力を基準版として保存してください。SATで現地配管へ接続したら、同じ試験順序を繰り返し、試験条件の差と結果の差を分けて記録します。
受入後の定期確認では、軸が「動いた」という判定だけで終わらせません。生産中に最も空気を使う工程で弁入口圧を記録し、FAT/SATの基準値と比較します。排気音が変わった場合はサイレンサーの目詰まり、管路変更、弁の切替不良を候補に挙げ、圧力と動作時間を測って切り分けます。保全担当が元の設定へ戻せるよう、圧力調整器と速度制御弁の設定位置、交換前後の動作確認、手動オーバーライド解除の確認を引継ぎ書に入れます。これらは使用する型式と工程の危険源評価に合わせて具体化します。
よくある質問
5/2弁なら複動シリンダーはどれでも動きますか?
動作方向の回路候補にはなりますが、必要流量、圧力、シール・空気品質、速度、電気仕様、故障時の状態を満たすとは限りません。実機のシリンダーと管路を含めて選定します。
5/3クローズドセンターで垂直軸を安全に保持できますか?
それだけでは保証できません。内部漏れ、配管漏れ、外力、残圧の変化で動き得ます。危険源評価の結果に応じて独立した機械保持などを検討し、故障時の動作を試験します。
コイルLEDが点灯していれば弁の故障ですか?
断定できません。LEDは電気入力の一部を示すにすぎず、主弁切替、入口圧、パイロット圧、排気の状態を示しません。電圧と圧力を測って切り分けます。
直動式ならパイロット圧を考えなくてよいですか?
主弁駆動のパイロット圧条件は異なりますが、直動式にも適用圧力、流量、差圧、消費電力の制限があります。型式のデータシートで確認します。
ISO 5599-1の弁なら別メーカーのベースにそのまま交換できますか?
インターフェース規格の確認には役立ちますが、コイル、ピン配列、パイロット給気、手動操作、性能まで自動的に一致するわけではありません。候補の図面と配線を照合します。
まとめ
空圧電磁弁は、まず工程に必要な流路と停電時の動作を描き、3/2・5/2・5/3の形式と中央機能を選びます。次に直動・パイロット、最低入口圧、管路を含む流量、DCコイルとPLC出力、マニホールド、保守と安全を一つの仕様へまとめます。RFQ/RFPでは条件と証拠を指定し、FATでは装置で、SATではタイ工場の実供給と作業で確認します。弁の型式を先に決めるより、この順序で要求を固定するほうが見積比較と受入が明確になります。
タイ工場の空圧回路、制御盤、PLC I/O、装置受入を一緒に整理したい場合は、TOMAS TECHへお問い合わせください。シリンダー側の負荷を先に見直すならエアシリンダー選定、電動化も比較するなら電動シリンダー選定も参照できます。
参考資料
- ISO 4414:2010 — Pneumatic fluid power safety
- Festo — Pneumatic valves: 3/2, 5/2, 5/3
- SMC — Direct operated 3/4/5 port solenoid valves
- SMC — Pilot operated 4/5 port solenoid valves
- SMC — SZ3000 series instructions
- Festo — ISO 5599-1 valve interface catalogue
- SMC — JSY manifold catalogue and residual pressure information
- Emerson ASCO — 262/263 two-way solenoid valves, a different application class