装置メーカーから届いた図面に「リニアガイド ○○社 ○○形」とだけ書いてある。見積の比較表には各社の基本動定格荷重 C が並び、数字の大きい方が長持ちしそうに見える。ところが、リニアガイド選定でこの比べ方は危うい面があります。基本動定格荷重 C は、メーカーによって「50 km 走ったときの値」と「100 km 走ったときの値」が混在しているからです。同じ 20,000 N と書いてあっても、基準距離が違えば、計算される寿命は見かけ上で約2倍ずれます。
この記事の主張は一つです。リニアガイドの選定は「カタログの数字を比べること」ではなく、「どのメーカーの定義で計算したかを揃えること」から始まります。 基本動定格荷重 C だけでなく、静的安全係数の推奨値、予圧の記号、精度等級の記号も、メーカーごとに基準や意味が違います。そこで、発注する側が RFP(見積依頼書)に入れておきたいのは次の3つです。
- 計算に使ったメーカーの定義と係数(基準距離、荷重係数、推奨値の出典)を計算書に書かせる
- 予圧と精度は記号ではなく言葉と量で指定し、取付面の精度とセットで決める
- 早期損傷の主な原因(取付誤差、潤滑不足、異物、取扱い)を FAT/SAT と保全計画でつぶす
以下では、タイ(および ASEAN)の日系工場で自動機・検査装置・搬送装置・治具を設計または発注する生産技術、装置設計、保全、調達の担当者向けに、リニアガイドの構成、選定の7ステップ、荷重とモーメント、静的安全係数、寿命計算、予圧と剛性、精度等級と取付面、環境対策、早期損傷、RFP、FAT/SAT、タイでの調達の順に整理します。送り駆動側のボールねじは「ボールねじ 選定ガイド|タイ工場のRFP・FAT/SAT実務」で扱っているので、本記事は「装置の直動軸を支える案内」そのものに絞ります。記事中のモデル試算の数字は、特定の製品・型番の値ではなく、計算の構造と感度を示すために置いた仮の数字です。
リニアガイド選定で「カタログ比較」が危ない理由
基準距離が 50 km と 100 km に分かれている
リニアガイドの寿命計算は、基本動定格荷重 C と、ブロックにかかる荷重 P の比から求めます。この C の定義に、メーカーごとの違いがあります。
- THK(LMガイド)と HIWIN(Linear Guideway)は、ボール形の C を 50 km、ローラ形の C を 100 km の基準距離で定義しています。
- NSK(NH/NS 形のカタログ)は、寸法表に 50 km 基準の C50 と 100 km 基準の C100 の両方を載せています。
- Bosch Rexroth(Ball Rail Systems のカタログ)は、DIN ISO 14728-1 に従い、ボール形でも 100 km の走行を基準に動定格荷重を決めているとし、50 km 基準の値と比べるときは C、Mt、ML に 1.26 を掛けるよう書いています。
THK 自身も、公称寿命を比べるときは C が 50 km 基準か 100 km 基準かを考慮し、必要なら ISO 14728-1 に基づいて換算するよう書いています。つまり、カタログの C を横に並べるだけでは、条件の違う数字を比べることになりかねません。比較表や RFP には「C 値の基準距離」の欄を必ず設けます。
2026年の製品の動きも「定義の確認」を求めている
2026年は、直動案内まわりの製品発表もいくつかありました。
- THK は2026年7月23日、欧州法人(THK GmbH)の発表として、ISO 12090-1 と ISO 12090-2 に準拠した標準寸法の LMガイド「GK シリーズ」を公表しました。THK の説明では、ブロックとレールを別々に在庫から短納期で供給し、シリーズ・精度等級(精密級まで)・予圧区分の範囲内で互換としています。対象は HSR、SR、SHS、SSR、HDR、ローラガイドの SRG・HRX(ISO 12090-1 準拠)と、ミニチュアの RSX、SRS(ISO 12090-2 準拠)です。これはメーカーの発表で、タイを含む ASEAN での発売・在庫体制は発表に書かれていません。
- IKO(日本トムソン)は2026年10月1日、リニアローラウェイスーパーX の最小サイズ LRXD8…SL を発売しました。同社の発表では高さ 11 mm、幅 16 mm で、レール・スライドユニット・ローラにステンレス鋼を使い、主な用途として生産・検査機器、医療設備、特に半導体製造装置を想定しています。同日には、リニアモータテーブル NT100V シリーズの最小サイズ NT100V25 も発売しています。
- 10月26日〜31日には東京ビッグサイトで JIMTOF2026(第33回日本国際工作機械見本市)が開催予定で、主催者の9月28日の発表では22カ国・地域の1,134社(4,422小間)が出展するとしています。バンコクでは11月18日〜21日に METALEX 2026 が BITEC で開催予定です。
互換をうたう製品であっても、互換の範囲(どの等級まで、どの予圧区分まで)はメーカーが定めた条件の中の話です。GK シリーズの互換も、THK の説明では「精密級まで」です。新製品を検討するときも、C の基準距離、精度等級、予圧の定義を、そのメーカーの資料で確かめる手順は変わりません。
リニアガイドとは:構成と呼び名、ボール形とローラ形
構成部品
リニアガイドは、直線の軌道を持つレール(トラックレール)と、その上を走るブロック(スライダ、キャリッジ、スライドユニットなどとも呼ばれます)、ブロック内部で循環する転動体(ボールまたはローラ)、異物の侵入を防ぎ潤滑剤を保つシールで構成されます。転動体が転がることで、すべり案内より小さな力で動かせます。HIWIN は技術資料で、摩擦係数をボール形で約 0.004、ローラ形で約 0.003 とし、従来のすべり案内の 1/50 程度にできると説明しています。
呼び名がメーカーごとに違う
同じ種類の部品でも、呼び名はメーカーごとに違います。
| メーカー | 製品の呼び名 |
|---|---|
| THK | LMガイド |
| HIWIN | Linear Guideway |
| NSK | Linear Guides(リニアガイド) |
| Bosch Rexroth | Ball Rail Systems(ボールレールシステム) |
| IKO(日本トムソン) | リニアウェイ/リニアローラウェイ |
ISO の用語は “linear motion rolling bearings” で、日本ベアリング工業会(JBIA)の訳では「リニア軸受」です。図面や仕様書でメーカー固有の呼び名が使われていても、指しているものは同じ種類の部品であることが多いので、社内の用語は統一しておくと混乱が減ります。
ボール形とローラ形の違い
| 項目 | ボール形 | ローラ形 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 寿命式の指数 | 3 | 10/3 | HIWIN 技術資料 |
| C の基準距離 | 50 km | 100 km | THK、HIWIN |
| 摩擦係数の目安 | 約 0.004 | 約 0.003 | HIWIN 技術資料 |
IKO は LRXD8…SL の発表で、「転動体がローラなので、ボールと比べて負荷に対する弾性変形量が小さい」と説明しています。これはメーカーの説明です。なお、Bosch Rexroth のボール形カタログは上で触れたとおり 100 km 基準なので、「ボール形なら必ず 50 km」とは言えません。採用するメーカーの定義を個別に確かめます。
規格:ISO 14728-1/-2 と JIS の対応
リニアガイドの荷重定格と寿命の計算方法は、ISO 14728 で規定されています。
- ISO 14728-1:2017(Part 1: Dynamic load ratings and rating life): 2017年2月発行の第2版で、2022年に見直し・確認されています。基本動定格荷重と基本定格寿命の計算方法を規定します。ISO の概要では、転動体が機械の摺動面上を直接転がる設計には、その面がリニア軸受の軌道と全面的に同等でない限り適用されないとしています。
- ISO 14728-2:2017(Part 2: Static load ratings): 同じく2017年2月発行の第2版で、2022年に見直し・確認されています。基本静定格荷重、静等価荷重、静的安全係数の計算方法を規定します。
JBIA リニア軸受分科会の解説では、ISO 14728 の初版は2004年6月で、2017年の第2版は様式の更新、引用規格の扱いの変更、荷重方向の図の一部変更、誤記の修正などが主な改正点とされています。計算体系が大きく変わったとは書かれていません。
注意したいのは JIS との対応です。JBIA の「転がり軸受関連 ISO 規格」一覧(2026年6月現在)では、ISO 14728-1 と ISO 14728-2 の「関連 JIS」欄は空欄です。同じ一覧で回転軸受の ISO 281 には JIS B 1518、ISO 76 には JIS B 1519 が対応づけられていますが、これらは回転軸受の規格です。また、JIS B 1192-5:2018 は「ボールねじ-第5部:静定格荷重,動定格荷重及び寿命」で、ボールねじの規格です。仕様書に「JIS 準拠」と書くときは、どの規格のどの部分を指すのかを具体的に書き、リニアガイドに回転軸受やボールねじの JIS 番号を当てないようにします。
リニアガイド選定の7ステップ
Bosch Rexroth のカタログ(DIN 637 に基づくとしています)、HIWIN の技術資料、THK の選定ページは、いずれも選定フローを示しています。順番は少しずつ違いますが、使用条件から始め、荷重、静的安全係数、寿命、剛性(予圧)、精度、環境と進む骨格は共通です。本記事ではこれを7段に整理し、最後に RFP と FAT/SAT につなげます。

| 段 | 決めること | 主な確認事項 |
|---|---|---|
| ① 使用条件 | ストローク、速度、加減速、取付姿勢、取付ベースの材質、環境 | 切粉、クーラント、粉じん、湿気、温度、稼働時間 |
| ② 荷重とモーメント | 方向別の荷重、加減速時のピーク、オーバーハング | 等価荷重への換算方法(採用メーカーの式と係数) |
| ③ 静的安全係数 | 最大荷重に対する余裕 | 採用メーカーの推奨値で判定、出典を計算書に書く |
| ④ 定格寿命 | 要求寿命を満たすか | C の基準距離、修正係数、時間寿命、短ストローク |
| ⑤ 予圧と剛性 | 予圧区分 | 剛性と寿命と取付面許容誤差のトレードオフ |
| ⑥ 精度等級と取付面 | 精度等級、取付面の平行度と高さ | 走行平行度の測定条件、据付手順 |
| ⑦ 環境対策 | 潤滑、シール、防錆、温度 | 給脂方式と間隔、給脂口の位置、材料と表面処理 |
ポイントは、③で足りなければサイズや型式を変え、④で足りなければブロックの間隔や個数、レール本数を見直す、という戻りがあることです。Rexroth のフローもそのように書かれています。また、⑤の予圧を決めると④の寿命計算に予圧の影響を入れる必要が出る場合があり(THK は中予圧で使うときは予圧量を考慮した寿命計算が必要としています)、⑥の取付面の許容誤差も予圧で変わります。7段は一方通行ではなく、行き来しながら決めます。
装置全体の発注の流れ、見積が割れる構造は「専用機製作の進め方|タイ工場の見積・FAT/SAT実務」で整理しています。リニアガイドの仕様は、その中の機械設計の一部として RFP に織り込むのが現実的です。
荷重とモーメントの整理:方向別定格と等価荷重
荷重は方向ごとに分けて考える
ブロックにかかる力は、真上から押す方向(ラジアル)、引きはがす方向(逆ラジアル)、横方向に分かれ、さらにモーメント(ローリング、ピッチング、ヨーイング)が加わります。HIWIN は静的許容モーメント M0 を MR・MP・MY の3方向で定義し、Bosch Rexroth はねじりモーメント Mx と縦方向の My・Mz を定義しています。
加減速時のピーク荷重、オーバーハングしたワークやツールによるモーメント、取付姿勢(壁掛け、天吊り)で、どの方向の荷重が大きくなるかは変わります。水平軸だから下向きの荷重だけ、と考えると見落としが出ます。
4方向等荷重形とラジアル形
THK は LMガイドを、ラジアル・逆ラジアル・横方向の定格荷重が等しい「4方向等荷重形」と、ラジアル方向の定格荷重が大きい「ラジアル形」に分けています。ラジアル形では、逆ラジアルや横方向の定格荷重が仕様表の値と違い、係数で求めます。THK の例では、SSR の逆ラジアルは 0.50C/0.50C0、横方向は 0.53C/0.43C0 です。
Bosch Rexroth は、ボールランナブロックの軌道を接触角 45° に配置し、4つの主荷重方向で負荷容量が同じとしています。NSK の NH/NS 形では、方向別の基本荷重定格が下向き C/C0、上向き C/0.78C0、横 0.84C/0.65C0 です。
つまり、カタログ表の C と C0 がそのまま全方向に使えるとは限りません。どの方向にどのくらいの荷重がかかるかを整理したうえで、採用する型番の方向別定格を使います。
等価荷重への換算はメーカーの式で
2方向以上の荷重が同時にかかるとき、寿命と静的安全係数は、荷重を1つの等価荷重に換算して計算します。換算の考え方もメーカーごとに違います。
- THK: 全荷重をラジアルまたは逆ラジアル荷重に換算した等価荷重 PE = X·PR(L) + Y·PT で計算します。4方向等荷重形は X = Y = 1.000、SSR の逆ラジアル+横方向は X = 1.000、Y = 1.155 です(THK の型番ごとの係数)。
- NSK(NH/NS 形): モーメントを動等価係数 εr・εp・εy(単位 1/m、型番ごとの表)で荷重に換算し、最大の成分をそのまま、ほかの成分を 0.5 倍して合計します。例えば上下荷重 Fr が最大のときは Fe = Fr + 0.5Fse + 0.5Fre + 0.5Fpe + 0.5Fye です。横荷重は Fse = Fs·tanα(接触角 α = 50°)で換算します。
どちらの係数も、そのメーカーの型番に対して定められたものです。計算書を受け取ったら、使った式と係数がどのメーカーのどの型番のものかを確認します。A 社の係数で B 社の部品を計算していないか、という確認です。
静的安全係数:メーカーごとに推奨値が違う
静的安全係数とは
静的安全係数は、基本静定格荷重 C0 を、かかりうる最大荷重で割った値です。基本静定格荷重の定義も、THK は「最大応力の接触部で転動体と軌道の永久変形の合計が転動体直径の 0.0001 倍になる静荷重」、Bosch Rexroth は「最大荷重の転動体と軌道の接触中心の計算応力が 4200 MPa になる静荷重」(このとき永久変形の合計は転動体直径の約 0.0001 倍)と、表現が少し違います。
計算方法は ISO 14728-2 が規定しています。一方、用途ごとにいくつ以上あればよいかの推奨値は、各社の資料で大きく違います。Bosch Rexroth は S0 = C0/F0max とし、F0max は発生しうる最大荷重振幅で、短時間でも、動的荷重のピークでもよいとしています。HIWIN は単純荷重の fSL = C0/P と、モーメントの fSM = M0/M を分けています。THK は、ラジアル・逆ラジアル・横方向の方向ごとに検討するとしています。
各社の推奨値(各社の定義のまま)
| メーカー | 条件 | 推奨値 |
|---|---|---|
| THK | 振動・衝撃なし | 下限の目安 2 |
| THK | 振動・衝撃あり | 下限の目安 5 |
| THK(HRG 形) | 振動・衝撃なし/あり | どちらも 4 |
| HIWIN | 通常荷重 | 1.0〜3.0(最小値) |
| HIWIN | 衝撃・振動あり | 3.0〜5.0(最小値) |
| Bosch Rexroth | 全荷重データを把握し無振動運転が保証される | 3〜5 |
| Bosch Rexroth | 荷重条件や取付詳細を十分把握しない通常の機械設計 | 5〜8 |
| Bosch Rexroth | 停止中の大きな動荷重、汚染 | 8〜12 |
| Bosch Rexroth | 頭上に吊る配置、重大な潜在リスクのある用途 | 12 以上 |
THK は、振動・衝撃が生じる要因として、加減速、急停止・急始動、外部の機械からの振動・衝撃、加工力の経時変化などを挙げています。同じ「無振動」でも THK は 2、HIWIN は 1.0〜3.0、Bosch Rexroth は 3〜5 と、値の体系がそもそも違います。どれか1つの数字を「業界標準」として扱うことはできません。
モデル例:同じ 5.0 でも判定が変わる
ここで仮の数字を置きます。ブロック1個の基本静定格荷重 C0 = 30,000 N(仮)、急停止時を含む最大荷重 P0max = 6,000 N(仮)とすると、静的安全係数 fs = 30,000/6,000 = 5.0 です。これを各社の表で判定すると、次のようになります。

| メーカーの表 | 当てはめる条件 | 推奨値 | fs = 5.0 の判定 |
|---|---|---|---|
| THK | 振動・衝撃なし | 下限 2 | 余裕あり |
| THK | 振動・衝撃あり | 下限 5 | ちょうど下限 |
| HIWIN | 通常荷重 | 1.0〜3.0 | 満たす |
| HIWIN | 衝撃・振動あり | 3.0〜5.0 | 範囲の上端 |
| Bosch Rexroth | 全荷重データ把握・無振動 | 3〜5 | 範囲の上端 |
| Bosch Rexroth | 荷重条件を十分把握しない通常の機械設計 | 5〜8 | 範囲の下端 |
| Bosch Rexroth | 停止中の大きな動荷重・汚染 | 8〜12 | 不足 |
| Bosch Rexroth | 吊り下げ等 | 12 以上 | 不足 |
同じ 5.0 でも、どのメーカーの表で判定するか、どの使用条件に当てはめるかで、「余裕あり」にも「不足」にもなります。だから計算書には、「どのメーカーのどの条件の推奨値で判定したか」を書かせます。採用するリニアガイドが THK 製なら THK の表、HIWIN 製なら HIWIN の表で判定するのが筋です。そのうえで、急停止の頻度、クーラントや切粉の汚染、作業者の頭上を通る軸かどうかといった使用条件を、発注側と装置メーカーで合わせておきます。
リニアガイドの寿命計算:基準距離、修正係数、時間寿命
公称寿命の定義
THK は公称寿命 L10 を、「同一ロットの LMガイドを同一条件で個別に走らせたとき、その90%がフレーキングを起こさずに到達できる総走行距離」と定義しています。Bosch Rexroth も公称寿命を「90%の確率で到達できる計算寿命」としています。つまり、計算寿命は「全数がそこまで持つ距離」ではありません。
基本の式
HIWIN の技術資料の公称寿命の式は次のとおりです。
- ボール形: L = (C/P)^3 × 50 km
- ローラ形: L = (C/P)^(10/3) × 100 km
使用環境を考慮した式は、硬さ係数 fh、温度係数 ft、荷重係数 fw を入れて、ボール形で L = ((fh·ft·C)/(fw·Pc))^3 × 50 km、ローラ形で L = ((fh·ft·C)/(fw·Pc))^(10/3) × 100 km です。
NSK の NH/NS 形カタログでは、L = 100 × (C100/(fw·F))^3 または L = 50 × (C50/(fw·F))^3 [km] と、基準距離ごとに式を使い分けます。NSK は「ローラを転動体とするリニアガイドとは計算式が異なる」と注記しています。
修正係数もメーカーごとに違う
| メーカー | 修正係数 | 内容(各社の定義) |
|---|---|---|
| THK | α = fH·fT·fC/fW | 硬さ係数 fH(特記なき限り 1.0)、温度係数 fT(100℃超で適用)、接触係数 fC(ブロック密着)、荷重係数 fW |
| HIWIN | fh・ft・fw | 硬さ係数、温度係数、荷重係数。THK の fC に当たる係数は式に無い |
| NSK(NH/NS 形) | fw | 荷重係数。速度区分ではなく衝撃・振動の程度で区分 |
THK の接触係数 fC は、ブロックを密着させて複数個使うときの係数で、密着2個で 0.81、3個で 0.72、4個で 0.66、5個で 0.61、6個以上で 0.6、通常使用では 1 です。
荷重係数の表は次のとおりです。THK の速度区分 0.25/1/2 m/s は、HIWIN の 15/60/120 m/min と同じ境界です。
| 区分 | THK fW | HIWIN fw | NSK fw(NH/NS 形) |
|---|---|---|---|
| 微(THK: V≦0.25 m/s)/衝撃・振動なし(HIWIN: V≦15 m/min) | 1〜1.2 | 1〜1.2 | 外部からの衝撃・振動なし 1.0〜1.5 |
弱(0.25| 1.2〜1.5 | 1.2〜1.5 | 外部から衝撃・振動あり 1.5〜2.0 | |
中(1| 1.5〜2 | 1.5〜2.0 | 著しい衝撃・振動 2.0〜3.0 | |
| 強(V>2 m/s)/衝撃・振動あり(V>120 m/min) | 2〜3.5 | 2.0〜3.5 | (区分なし) |
NSK の列は速度区分を持たないため、横の行と1対1で対応するわけではありません。表の並びは見やすさのためのものです。
時間寿命への換算
距離の寿命を時間に直すと、装置の保全計画と比べやすくなります。HIWIN は Lh = (L·10^3)/(Ve·60) [時間](Ve: 速度 m/min)とし、Bosch Rexroth は、ストローク長 s とストローク繰返し数 n が一定なら L10 を (2·s·n·60) で割って求めるとしています。どちらも「1時間あたりの走行距離」で割る考え方です。
短ストロークと信頼度
THK は、ストローク長が LMブロック長さの2倍以下の場合、公称寿命の式が当てはまらないことがあるとしています。Bosch Rexroth も、ストローク長がランナブロック長の2倍未満の場合は負荷容量の低減が必要になることがあるとしています。検査装置の押付け機構や位置合わせ軸のような短いストロークでは、寿命計算の数字だけで安心しないことが大切です(後述のフレッティングも参照)。
要求する信頼度が90%と違う場合、Bosch Rexroth は信頼度係数 a1 で寿命を換算する表を載せています。
| 信頼度 | 寿命の記号 | a1 |
|---|---|---|
| 90% | L10a | 1.00 |
| 95% | L5a | 0.64 |
| 96% | L4a | 0.55 |
| 97% | L3a | 0.47 |
| 98% | L2a | 0.37 |
| 99% | L1a | 0.25 |
これは Bosch Rexroth のカタログ掲載値です。止まると影響の大きい軸で信頼度を上げたい場合、どのメーカーの換算を使ったかを計算書に書かせます。
モデル試算:読み方ひとつで寿命が約2倍〜約半分に動く
ここからは、特定の製品・型番の値ではなく、計算の構造と感度を示すための仮置きの数字です。式は HIWIN の公称寿命式(ボール形)L = ((fh·ft·C)/(fw·P))^3 × 50 km を使い、ブロック密着のケースだけ THK の接触係数 fC の考え方を借ります。係数はメーカーごとに違うので、実際の計算は採用するメーカーの式と係数で行います。
モデルの前提は次のとおりです。
- 検査装置の水平軸。ボール形リニアガイド、レール2本×ブロック4個
- ブロック1個あたりの荷重 P = 2,000 N(仮)
- カタログの基本動定格荷重 C = 20,000 N(仮、50 km 基準と仮定)
- fh = ft = 1.0
- 速度は 1 m/s 以下の区分として fw = 1.5(THK と HIWIN の「0.25〜1 m/s(15〜60 m/min)で 1.2〜1.5」の上限側)
- ストローク 0.8 m、毎分10往復 → 走行距離は 2 × 0.8 × 10 = 16 m/分 = 960 m/時
- 稼働 16時間/日 × 300日/年 = 4,800 時間/年
- 予圧の影響は入れていない(THK は、中予圧で使うときは予圧量を考慮した寿命計算が必要としている)
- ストローク 0.8 m は短ストロークの条件には当たらないものとする

| ケース | 条件 | 定格寿命 L | 時間寿命 | 年数(4,800 h/年) |
|---|---|---|---|---|
| ① 基準 | C=20,000 N(50 km 基準)、fw=1.5 | 約 14,815 km | 約 15,432 時間 | 約 3.2 年 |
| ② 基準距離の取り違え | カタログの 20,000 N が実は 100 km 基準(Rexroth の記載に従い 50 km 基準換算は ×1.26=25,200 N) | 約 29,635 km | 約 30,870 時間 | 約 6.4 年 |
| ③ 荷重係数を下限で見た | fw=1.2(同じ速度区分の下限) | 約 28,935 km | 約 30,141 時間 | 約 6.3 年 |
| ④ ブロックを密着配置 | THK の接触係数 fC=0.81(密着2個) | 約 7,873 km | 約 8,201 時間 | 約 1.7 年 |
計算の中身は次のとおりです。時間寿命はいずれも L × 1,000/960 で求めています。
- ① (20,000/(1.5 × 2,000))^3 × 50 = 6.667^3 × 50 ≈ 14,815 km
- ② (25,200/3,000)^3 × 50 = 8.4^3 × 50 ≈ 29,635 km
- ③ (20,000/2,400)^3 × 50 = 8.333^3 × 50 ≈ 28,935 km
- ④ (0.81 × 20,000/3,000)^3 × 50 = 5.4^3 × 50 ≈ 7,873 km
②は向きに注意が必要です。100 km 基準の C を 50 km 基準に換算すると、C は 1.26 倍になり、寿命は約2倍になります。言い換えると、100 km 基準の C を 50 km 基準の式にそのまま入れると寿命を過小に評価し、逆に 50 km 基準の C を 100 km 基準のつもりで扱うと過大に評価します。基準を揃えずに2社を比べると、寿命で約2倍の差が見かけ上生じるということです。1.26 は Bosch Rexroth のボール形カタログの記載で、(100/50)^(1/3) ≈ 1.26 とも整合します。ボール形についての値なので、ローラ形の換算は本記事では扱いません。ローラ形は採用するメーカーの資料で確認してください。
③は、同じ速度区分の中で fw を上限の 1.5 にするか下限の 1.2 にするかだけで、寿命が約3.2年から約6.3年に動くことを示しています。荷重係数の選び方は設計者の判断が入る部分なので、計算書に「なぜその値にしたか」を書かせると、後から検証できます。
④は、ブロック2個を密着させて配置すると、THK の考え方では C に 0.81 を掛けることになり、寿命が約1.7年まで下がる例です。ブロックの配置は、テーブルの長さや取付スペースの都合で後から変わることがあります。配置を変えたら寿命計算もやり直す、という取り決めが必要です。
まとめると、同じカタログ値でも、基準距離・荷重係数・配置の読み方ひとつで、寿命は①の約3.2年に対して約2倍(②、③)にも約半分(④)にも動きます。だから計算書に、使ったメーカーの定義、係数、基準距離を書かせます。
リニアガイドの予圧と剛性:区分と記号の衝突
予圧とは何を変えるのか
予圧は、ブロックと転動体と軌道の間にあらかじめ内部荷重をかけ、すきまを無くして剛性を上げる仕組みです。HIWIN は「予圧を大きくすると剛性は上がるが、公称寿命は下がる」と書いています。THK は、予圧の効果は予圧量の最大約2.8倍の外部荷重まで続き、それを超えると予圧が抜けること、予圧時の変位は予圧なしの約半分になることを示しています。Bosch Rexroth は、寿命低下を防ぐため予圧は軸受荷重 F の1/3を超えないこと、振動がある場合は C2 以上を選ぶこととしています(ここでの C2 は Rexroth の予圧クラスの記号です)。
各社の予圧区分
予圧は、本記事では「予圧なし/軽予圧/中予圧/重予圧」の言葉で書き、メーカーの記号は括弧に入れます。
| メーカー | 区分(メーカー記号) | 主な用途・説明(各社の記載) |
|---|---|---|
| HIWIN(HG シリーズ) | 軽予圧(Z0)= 0〜0.02C | 荷重方向一定・衝撃小・精度要求低。搬送装置、自動包装機、一般産業機械の XY 軸、溶接機 |
| HIWIN(HG シリーズ) | 中予圧(ZA)= 0.05C〜0.07C | 高精度要求。マシニングセンタ、一般産業機械の Z 軸、放電加工機、NC 旋盤、精密 XY テーブル、測定機 |
| HIWIN(HG シリーズ) | 重予圧(ZB)= 0.10C〜0.12C | 高剛性要求、振動・衝撃あり。マシニングセンタ、研削盤、工作機械の Z 軸、重切削機 |
| THK | 普通すきま | 荷重方向が一定で衝撃・振動が小さく2本平行で使う、摺動抵抗をできるだけ小さくしたい(自動包装機、一般産業機械の XY 軸、溶接機など) |
| THK | 軽予圧(すきま C1) | オーバーハング荷重・モーメント荷重、1本で使う、軽荷重で高精度(産業用ロボット、一般産業機械の垂直軸、測定機、精密 XY テーブルなど) |
| THK | 中予圧(すきま C0) | 高剛性が必要で振動・衝撃がかかる(マシニングセンタ、NC 旋盤、研削盤、工作機械の垂直軸など) |
| Bosch Rexroth | 予圧なし(C0)、中程度の予圧(C1)、平均的な予圧(C2)、高予圧(C3) | 予圧は軸受荷重 F の1/3以下。振動があれば C2 以上 |
| NSK(NH/NS 形 組立品) | 微小すきま(Z0)、軽予圧(Z1)、中予圧(Z3) | 予圧量の例: NH25 AL/AN/EM で軽予圧 196 N、中予圧 1,270 N |
| NSK(NH/NS 形 互換形) | 微小すきま(ZT)、軽予圧(ZZ)、中予圧(ZH) | すきま(µm、負は予圧)の例: NS15 で ZT −4〜15、ZZ −4〜0、ZH −7〜−3 |
HIWIN の予圧量は基本動定格荷重 C に対する割合で示されていて、これは HIWIN の定義です。HIWIN は、互換形は軽予圧と中予圧(Z0・ZA)、非互換形は重予圧(ZB)まで用意し、HG20 以下のサイズは過大予圧で寿命に影響しないよう中予圧(ZA)以下を推奨しています。NSK の微小すきま(Z0)は 0〜3 µm(予圧ゼロ)ですが、PN 級と組み合わせると 0〜15 µm になります。
THK は、HR、GSR、GSR-R の3形式を対象外として、全モデルが出荷前にすきま調整済みで追加の予圧調整は不要としています。
記号の衝突に注意
予圧の記号は、メーカーをまたぐと意味がぶつかります。
- THK の「C0」は中予圧のすきま記号
- Bosch Rexroth の「C0」は予圧なしの区分
- そして基本静定格荷重の記号も「C0」
- HIWIN の「Z0」は軽予圧、NSK の「Z0」は微小すきま
仕様書に「予圧 C0」とだけ書くと、受け取る側によって中予圧にも予圧なしにも読めますし、静定格荷重と取り違えるおそれもあります。仕様書では「中予圧(THK のすきま記号 C0)」のように、言葉と量(または範囲)を主にし、メーカー記号は併記にとどめます。
予圧を上げると取付面の許容誤差が小さくなる
予圧の選択は、剛性と寿命だけでなく取付面の精度にも跳ね返ります。HIWIN HG シリーズの取付面許容値の表では、同じサイズでも予圧が大きいほど、許容される基準面の平行度と高さの誤差が小さくなります(詳しくは次章の表)。Bosch Rexroth も、予圧クラスを選ぶときはレールの許容平行度ずれに注意し、普通精度(精度クラス N)で組む場合は、公差による内部応力を避けるため予圧なし(C0)か中程度の予圧(C1)を推奨しています。
剛性値の例として、HIWIN の HG シリーズは、HG15C で軽予圧 196、中予圧 365、重予圧 483 N/µm、HG25C で 292/539/705 N/µm、HG35C で 395/642/865 N/µm を示しています(型番・方向ごとの値で、他社の値とは横比較しません)。剛性 k は P/δ で、荷重あたりの変位の小ささを表します。
「剛性が欲しいから重予圧」と決める前に、取付面をその精度で加工・据付できるか、寿命計算に予圧の影響を入れたか、を確認します。
リニアガイドの精度等級と取付面
各社の精度等級の呼び名
| メーカー | 精度等級(低い方から) |
|---|---|
| THK | 普通級(Normal)、上級(H)、精密級(P)、超精密級(SP)、超々精密級(UP) |
| HIWIN(HG シリーズ) | C(Normal)、H(High)、P(Precision)、SP(Super Precision)、UP(Ultra Precision) |
| NSK(NH/NS 形 組立品) | PN(Normal)、P6(Precision)、P5(High precision)、P4(Super precision)、P3(Ultra precision) |
| NSK(NH/NS 形 互換形) | PC(Normal)、PH(High precision) |
| Bosch Rexroth | N、H、P、SP、UP(高精度ランナブロック BSHP には XP の記載) |
| IKO(LRXD8…SL) | 上級 H、精密級 P、超精密級 SP、超超精密級 UP |
H、P、SP、UP のように記号が同じでも、許容値はメーカー・型番・レール長ごとに違います。「P 級なら何 µm」と一般化はできません。NSK の P3〜PN も NH/NS 形での区分です。
走行平行度の定義と測定条件
THK は精度を「走行平行度」「高さ・幅の寸法許容差」「同一面で複数使用時の高さ・幅の相互差」で規定しています。走行平行度は、「LMレールを基準面にボルトで固定し、LMブロックをレール全長にわたって走らせたときの、ブロックとレール基準面との平行度の許容値」です。測定値はブロックの中央点または中央部の平均値です。
さらに THK は、複数レールを同一面で平行に使う場合、幅の相互差と寸法許容差はマスターレールにのみ適用され、従動レールにも適用したい場合は指定が必要としています。マスターレールにはシリアル番号の末尾に「KB」が印字されます(普通級は対象外)。
RFP で「走行平行度 ○ µm」と書くときは、この測定条件(基準面へのボルト固定、全長走行、中央部の値)を合わせて書いておくと、受入のときに「どう測ったか」で揉めにくくなります。
HIWIN HG シリーズの走行平行度の例
| レール長 | C | H | P | SP | UP |
|---|---|---|---|---|---|
| 〜100 mm | 12 | 7 | 3 | 2 | 2 |
| 500〜700 mm | 20 | 13 | 7 | 4 | 2 |
| 1,100〜1,500 mm | 26 | 18 | 11 | 7 | 4 |
| 3,600〜4,000 mm | 37 | 28 | 21 | 15 | 7 |
単位は µm で、HIWIN HG シリーズの技術資料からの抜粋です。同じ等級でもレールが長いほど許容値が大きくなります。長いストロークの軸で精度等級を決めるときは、レール長も条件に入れて読みます。IKO は LRXD8…SL について、条件によっては走行時の平行度を 1 µm 以下にできると説明しています(メーカーの説明)。
取付面の平行度と高さ(HIWIN HG シリーズの例)
リニアガイドの精度は、取付面の精度がそろって初めて出ます。HIWIN HG シリーズの取付面許容値は次のとおりです(単位 µm)。
| サイズ | 基準面の平行度 P(軽予圧 Z0/中予圧 ZA/重予圧 ZB) | 基準面高さの許容差 S1(軽予圧 Z0/中予圧 ZA/重予圧 ZB) |
|---|---|---|
| HG15 | 25/18/13 | 130/85/35 |
| HG20 | 25/20/18 | (抜粋なし) |
| HG25 | 30/22/20 | 130/85/70 |
| HG30 | 40/30/27 | (抜粋なし) |
| HG35 | 50/35/30 | 210/150/120 |
| HG45 | 60/40/35 | (抜粋なし) |
| HG55 | 70/50/45 | (抜粋なし) |
| HG65 | 80/60/55 | 350/250/200 |
「(抜粋なし)」は、本記事で高さの値を抜粋していないサイズです。どのサイズでも、予圧が大きいほど許容値が小さくなっています。HIWIN は、円弧接触設計のため取付面誤差をある程度吸収でき、取付面の精度要求を守れば高い精度と剛性が得られるとし、取付面誤差の吸収性が高い普通すきま形の予圧も用意しています。NSK も NH/NS 形について、転がり軸受の DF 配列に似た接触構造でモーメント剛性を下げ、取付誤差の吸収能力を高めたと説明しています(メーカーの説明)。
アルミベースや治具に取り付けるとき
THK は、アルミベースなど剛性の低いベースに取り付ける場合、レールの曲がりが機械精度に影響するため、レールの真直度をあらかじめ規定する必要があるとしています。検査装置や軽量の搬送ユニットではアルミフレームが多く使われます。ベースの加工公差と測定方法は、「治具 設計 製作|タイ工場のRFQ・公差・受入実務」で扱ったのと同じく、図面に数字と測り方を書いて受入で確認する対象です。
環境で選ぶ:潤滑、シール、防錆、温度
潤滑
THK は潤滑の役割を、(1) 摩擦を下げ焼付きと摩耗を防ぐ、(2) 軌道に油膜を作り応力を下げて転がり疲れ寿命を延ばす、(3) 錆を防ぐ、の3つとしています。シール付きでも内部の潤滑剤は徐々に漏れるので、使用条件に応じた間隔で給脂が必要です。また、水平以外の取付姿勢では潤滑剤が軌道に届かないことがあるため、取付姿勢とグリースニップル・配管継手の位置を THK に伝えるよう求めています。
HIWIN は、取付前にリチウム石けん基グリースで潤滑し、取付後は100 km ごとの再給脂を推奨しています(HG シリーズのページでは「100 km ごと、または3〜6か月ごとにグリースを点検」)。グリースは一般に速度 60 m/min 以下で使い、それより速い場合は高粘度油を使うとし、推奨油粘度は約 30〜150 cSt、油の推奨給油量は約 0.3 cm³/hr です。給脂間隔は T = (100 × 1000)/(Ve × 60) [時間] で求めます。「100 km ごと」は HIWIN の推奨で、THK は固定の距離を示していません。採用メーカーの推奨で保全計画を作ります。
壁掛けや天吊りの軸、カバーの奥にある軸では、給脂口に手が届くかどうかが、実際に給脂されるかどうかを左右します。給脂口の位置と、集中給油にするか手給脂にするかは、設計段階で決めておきます。
シールとスクレーパ
異物の侵入は、異常摩耗や寿命短縮の原因になります(THK)。各社とも、シールの種類を用意しています。
- THK: エンドシール、サイドシール、インナーシール、劣悪環境向けの積層接触形スクレーパ LaCS、専用ベローズ、レール取付穴用キャップ(切粉の侵入防止)
- HIWIN(HG シリーズ): 標準はエンドシール+ボトムシール。ZZ(エンドシール+ボトムシール+スクレーパ)、KK(ダブルシール+ボトムシール+スクレーパ)、DD(ダブルシール+ボトムシール)、高防塵の KH・SH・ZH など(対応サイズは HG20〜35 の C/H と 45C)
- NSK(NH/NS 形): 標準で両端エンドシールと下面シール
- Bosch Rexroth: 標準シール SS、低摩擦シール LS(ワイピング作用は限定的)、ダブルリップシール DS(切粉・木粉・切削液が多い用途向けで、ワイピング作用は優れるが摩擦力が大きく、再給脂間隔が短くなる)
シールを強くすると、摺動抵抗が増えます。HIWIN HG シリーズのエンドシール1枚あたりの最大抵抗は HG15 で 2.35 N、HG25 で 3.14 N、HG35 で 4.91 N、HG65 で 5.79 N、NSK NH 形のボールスライド1個あたりのシール摩擦(最大値)はサイズ15で 8 N、25で 10 N、35で 12 N、45で 17 N、65で 29 N です。Bosch Rexroth は数値ではなく文章で、DS は摩擦力が大きいと書いています。駆動側のモータやボールねじの選定、受入時の走行抵抗の基準は、シール仕様を固定したうえで決めます。HIWIN は摩擦力を F = µ·W + S(S はシール抵抗などの摩擦抵抗)と表しています。
防錆とステンレス
「ステンレス」と一言で言っても、仕様はいくつかに分かれます。
- THK: 一部モデル(SHS、SSR、SHW、SRS、HSR、SR、HRW、RSX、RSR、HR)でマルテンサイト系ステンレスを使えます。HSR-M2 はオーステナイト系ステンレスの高耐食形です。表面処理として THK-AP(AP-HC、AP-C、AP-CF)があります。
- Bosch Rexroth: Resist NR(ランナブロック本体が DIN EN 10088 の耐食鋼)、Resist NR II(全鋼製部品が耐食鋼)、Resist CR(鋼に耐食コーティング、硬質クロムめっき)
- NSK(NH/NS 形): ステンレス製レールの最大長さは炭素鋼より短くなります。NH 形の特殊高炭素鋼はサイズにより最大 2,980〜4,000 mm、ステンレス鋼は表に値がある4サイズで 1,800 または 3,500 mm です。
材料を変えると、定格荷重やレールの最大長さが変わる場合があります。ステンレス品の定格荷重は寸法表で個別に確認し、寿命計算と静的安全係数も、その値でやり直します。
使用温度
| メーカー | 使用温度の目安(各社の記載) |
|---|---|
| THK | 高温仕様でない LMガイドは 80℃以下(80℃超は THK に相談)。温度係数 fT は 100℃超で適用 |
| HIWIN | 付属部品に樹脂があるため 100℃未満を推奨。100℃超で許容荷重が下がる |
| Bosch Rexroth | 一般データは 0〜80℃、短時間なら 100℃まで。ボールチェーン無しのランナブロックは下限 −10℃ |
タイ工場で気をつけたいこと
タイの工場では、高温多湿の季節、空調の効いていない建屋、クーラントを多く使う加工ライン、粉じんの多い工程が珍しくありません。ここで数値の基準を一般化することはしませんが、考え方は次のとおりです。
- 錆が出やすい環境では、材料(ステンレスの種類)、表面処理、シール、潤滑剤をセットで決める。NSK の損傷事例には、塩素系切削液が保護カバーを越えて侵入し軌道とボールが錆びた例がある
- 装置の出荷から立上げまでの保管期間や輸送中の環境も、腐食の原因になりうる(NSK は保管不良を腐食の原因に挙げている)
- 切粉が出る工程では、レール取付穴のキャップ、スクレーパ、ベローズなどを検討し、シール仕様の違いによる摺動抵抗の増加も見込む
- 熱源の近くの軸は、採用メーカーの使用温度の範囲に収まるかを確認する
早期損傷の5つの原因と対策
リニアガイドは、正しく選定・取付・保守されていれば、転がり疲れによるフレーキング(表面がうろこ状に剥がれる現象)で寿命を迎えます。寿命は「いずれかの軌道または転動体に最初のフレーキングが起きるまでの総走行距離」です(THK、HIWIN とも同趣旨)。ところが NSK は、早期フレーキングや異常損傷が起きることがあり、その原因は取扱い不注意、過大な取付誤差(ミスアライメント)、潤滑不足、異物混入で、複合することもあるとしています。製品、取扱い、取付、保守履歴、経過を調べると再発防止につながる、とも書いています。
| 損傷 | 推定原因(NSK の記載) | 対策(NSK の記載) | 事例(NSK) |
|---|---|---|---|
| フレーキング | 寿命、組立不良(ミスアライメント)、取付面の平面度不良、潤滑不足・不適切な潤滑剤、圧痕や腐食ピットからの進展、異物・水の侵入 | サイズ再検討、組立精度・取付面精度の改善、潤滑方法・潤滑剤の見直し、衝撃荷重の回避、保護カバー見直し・シール強化 | 組立ミスアライメントによる過大なローリングモーメントで、レールの対向する軌道にフレーキング |
| 摩耗 | 潤滑不足、異物侵入、取付不良(ミスアライメント) | 潤滑・異物対策・取付の見直し | 給油配管の詰まりによる潤滑不足でスライダ軌道が摩耗 |
| フレッティング | 微小振幅の揺動で接触部の潤滑剤が完全に乾く | 耐フレッティンググリースの使用、一定頻度で長いストロークを動かして潤滑剤を行き渡らせる(例: 5,000サイクルに1回) | 赤褐色または黒色の摩耗粉が出る(フレッティングコロージョン) |
| 圧痕(ブリネリング) | 取付時・輸送時の高エネルギー衝撃や不適切な取扱い、硬い金属粒子の侵入 | 適切な取付・取扱い、シール強化、潤滑油のろ過 | ブロックに固定したテーブルを持ち上げ、レールを固定した重い機械ベースごと吊ったため軌道に圧痕 |
| 腐食 | 水・腐食性物質の侵入、不適切な潤滑剤、保管不良 | シール強化、耐酸性の高い材料・表面処理への変更、潤滑系の見直し、保管条件の見直し | 塩素系切削液が保護カバーを越えて侵入し軌道とボールが錆びた |
THK も、異物が入ると異常摩耗や寿命短縮を起こすこと、潤滑しないと転動体や軌道の摩耗が早まり寿命が短くなることを書いています。HIWIN は、潤滑不足は転がり摩擦の増加で寿命を大きく縮めるとしています。
この表から、発注側が手を打てるポイントが見えてきます。
- 取付誤差: 取付面の平行度・高さの許容値を仕様に書き、据付手順と締付トルクを記録させる
- 潤滑: 給脂方式、間隔、給脂口の位置を設計段階で決め、配管の詰まりを点検項目に入れる
- 異物と腐食: 環境に合ったシール、カバー、材料、表面処理を選ぶ
- 取扱い: 輸送・吊り上げの方法を決め、ブロック経由で重いベースを吊らない
- 短ストローク・揺動: 寿命計算の数字だけで安心せず、耐フレッティンググリースや定期的な長ストローク運転を検討する
既存装置でリニアガイドが早く傷んでいる場合も、この5つの切り口で、取付・潤滑・環境・取扱いのどこに原因がありそうかを順に調べます。古い装置の部品更新の進め方は「老朽化設備の更新2026|壊れる前に部品が消える4つの期限」も参考にしてください。
リニアガイドの RFP(見積依頼)に書く項目
ここまでの内容を、RFP の項目にまとめます。装置メーカーや SIer に装置一式を発注する場合も、リニアガイドを部品として購入する場合も、使える形にしています。
| # | 項目 | 書いておく内容 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 使用条件 | ストローク、速度、加減速、取付姿勢、稼働時間、環境(切粉、クーラント、粉じん、湿気、温度) | 荷重係数、シール、潤滑の前提になる |
| 2 | 荷重条件と等価荷重 | 方向別の荷重、ピーク荷重、モーメント、換算に使ったメーカーの式と係数 | 係数は型番ごとに違う |
| 3 | C 値と基準距離 | 比較表に「C 値の基準距離(50 km/100 km)」の欄を設ける | 基準が違うと寿命が見かけ上約2倍ずれる |
| 4 | 寿命計算書 | 使ったメーカーの定義、修正係数の値と選んだ理由、要求寿命、時間寿命への換算、予圧の影響の有無 | 後から検証できるようにする |
| 5 | 静的安全係数 | 計算値と、判定に使ったメーカー・条件の推奨値 | 同じ値でも表によって合否が変わる |
| 6 | 予圧 | 「予圧なし/軽予圧/中予圧/重予圧」の言葉と量(または範囲)。メーカー記号は併記 | 記号がメーカー間で衝突する |
| 7 | 精度等級と測定条件 | 等級、走行平行度の値と測定条件、マスター/従動レールへの適用範囲 | 測り方で数値が変わる |
| 8 | 取付面の許容値 | 基準面の平行度・高さ(採用メーカーの表)、ベースの材質と真直度 | 予圧が大きいほど許容値が小さい |
| 9 | シール仕様 | シールの種類、スクレーパ、ベローズ、取付穴キャップ | 摺動抵抗と防塵が変わる |
| 10 | 潤滑 | 潤滑剤の種類、給脂方式と間隔、給脂口の位置(取付姿勢を伝える) | 姿勢によっては潤滑剤が軌道に届かない |
| 11 | 防錆仕様 | 材料(ステンレスの種類)、表面処理、出荷時の防錆と保管条件 | ステンレスでも仕様が複数ある |
| 12 | 据付手順とトルク | 取付面の清掃、基準面への押当て、締付トルク、従動レールの平行出しの方法 | 取付誤差は早期損傷の主因 |
| 13 | 輸送・吊り上げ | 吊り位置、ブロック経由で吊らない、輸送中の固定 | 圧痕の事例がある |
| 14 | 予備品と保全資料 | 予備ブロック・シール、給脂の点検表 | 現地での保全を回すため |
| 15 | タイでの供給確認 | 採用メーカー・型番のタイでの供給経路、在庫、切断対応 | 交換時の納期に効く |
装置メーカーから「リニアガイド ○○社 ○○形」という一行だけを受け取っている場合は、まず3、4、5、6 の4項目を書面でもらうだけでも、比較の土台がそろいます。サーボモータを含む駆動系全体の受入と責任分界は「サーボ制御の発注・FAT/SAT実践ガイド|タイ工場2026」、ストロークの短い軸をアクチュエータ一式で買う場合は「電動シリンダー選定|タイ工場の推力・速度・安全設計」で整理しています。
FAT/SAT で確認すること
FAT(工場出荷前試験)と SAT(現地据付後試験)では、RFP に書いた項目が実物で守られているかを確かめます。リニアガイドに関して、技術資料に書かれていることから組み立てた確認項目は次のとおりです。
| 試験項目 | 方法 | 判定 | 記録 |
|---|---|---|---|
| 型番・予圧区分・精度等級の照合 | 現品と図面・出荷書類の型番、予圧区分、精度等級を照合 | RFP と一致 | 照合表 |
| マスター/従動レールの組合せ | HIWIN 非互換形はマスターレール(「MA」刻印、奇数番号)と従動レール(偶数番号)のペア(例: 001 と 002)、THK はマスターレールのシリアル末尾「KB」(普通級は対象外)を確認 | 指定どおりの組合せ | 写真 |
| 継ぎレール | 矢印と番号に従っているか、2本平行で使う場合は継ぎ目の位置がずれているか(HIWIN の手順) | 手順どおり | 写真 |
| 締付トルク | トルクレンチで規定トルク(例: HIWIN HG25、M6 で鉄 1,373 N·cm、鋳物 921 N·cm、アルミ 686 N·cm) | 採用メーカーの規定値 | トルク記録 |
| 走行平行度 | RFP で合意した測定条件(基準面へのボルト固定、全長走行、中央部の値) | 合意した許容値 | 測定データ |
| 摺動抵抗 | 同一仕様(シール、潤滑剤、予圧)の条件で比較 | メーカーと合意した基準 | 測定データ |
| 異音・引っかかり | 全ストロークを低速と常用速度で走行 | 異音・引っかかりがない | 試験記録 |
| 給脂 | 給脂口から潤滑剤が届くか、取付姿勢で給脂できるか、配管に詰まりがないか | 給脂できる | 点検記録 |
| 防錆油の洗浄 | 出荷時の防錆油を走行前に洗浄したか(HIWIN の手順) | 洗浄済み | 作業記録 |
| 輸送・据付後の状態 | SAT で再度、走行・異音・給脂を確認 | FAT と差がない | SAT 記録 |
従動レールの平行出しは、HIWIN の手順では、ストレートエッジとダイヤルゲージを使う方法、テーブルを使う方法、主側に倣う方法、専用治具を使う方法の4通りがあります。どの方法で出したかを記録させます。
予圧については、THK は出荷前にすきま調整済み(HR、GSR、GSR-R の3形式は対象外)とし、NSK は互換形・組立品それぞれのすきま・予圧範囲を µm で示しています。受入では、指定どおりの予圧区分の品が組まれているかを書類と現品で照合するのが基本です。
摺動抵抗は、シール仕様、予圧、潤滑剤、荷重で変わります。絶対値で一律の基準を置くより、同じ仕様の条件での比較として、基準値をメーカーと合意しておくのが現実的です。
タイで調達するときの確認点
現地拠点(公式資料で確認できた範囲)
本記事で公式資料を確認できたのは、THK と NSK のタイ拠点です。
- THK: THK のサービスネットワーク資料(CATALOG No.55-14)に、THK LM SYSTEM (THAILAND) CO., LTD.(サムットプラカーン県、Bangna Tower)が載っており、タイ語・日本語・英語の対応、在庫品目として LMガイドやボールねじが記載されています。タイの販売店として I.N.B. Enterprise、KKC Bearing Service(ラヨーンのサポートデスクを含む)、YAMAZEN (THAILAND)(シラチャ、コラート、ランプーンなどの事務所)も載っています。資料には在庫や切断対応と読める表示がありますが、具体的な在庫量や納期は書かれていません。
- NSK: NSK Bearings (Thailand) Co., Ltd. は Siam Motors と NSK の合弁で、1987年からバンコクで事業を行い、精密軸受、ボールねじ、リニアガイドを自動車・産業市場に供給しているとされています。タイには NSK Asia Pacific Technology Center もあり、アジア太平洋向けの技術支援を行っています。
その他のメーカーのタイでの拠点や在庫体制は、本記事では確認していません。採用候補のメーカーごとに、型番単位での在庫、納期、レールの切断対応、技術相談の窓口を直接確認します。特に、装置メーカーが海外の標準品を前提に設計している場合、交換部品をタイで調達できるかは、稼働後の停止時間に直結します。
BOI の効率化措置(2025年版ガイドの範囲)
タイ投資委員会(BOI)の Investment Promotion Guide 2025 には、「スマート・サステナブル産業への高度化措置」として、既存の事業向けの機械の更新・置換と自動化による効率化措置が載っています。ガイドの記載では、BOI 奨励の有無を問わず既存の操業中の事業が対象で、投資額は土地代・運転資金を含めずに100万バーツ以上、恩典は機械の輸入税免除と、3年間の法人所得税免除(上限は改善投資額の50%、土地代・運転資金は含めない)です。自動化・ロボットを導入し、その価値の30%以上がタイ国内の自動化産業とリンク/支援する場合は、上限が投資額の100%になります。また、自動化・ロボットシステムを導入するプロジェクト向けの措置もあり、申請時に自動化・ロボットへの投資計画の提出が必要です。ガイドには対象外の業種も記載されています。
注意点が2つあります。第一に、措置の対象は装置・システムへの投資で、リニアガイドのような部品単体の購入が対象になるとは書かれていません。第二に、これは2025年版ガイドの記載で、現在の受付状況や改正は BOI に直接確認する必要があります。本記事の記述は税務助言ではありません。
展示会で確かめる
11月18日〜21日にバンコクの BITEC で開催予定の METALEX 2026 は、機械・金属加工・製造技術の展示会です。出展するメーカーや製品は本記事では確認していませんが、もし候補メーカーが出展していれば、C 値の基準距離、静的安全係数の推奨値、予圧と精度等級の定義、タイでの在庫を、その場で質問するよい機会になります。自動機の設計・製作の発注の全体像は「自動機 設計製作の発注ガイド2026|見積が割れる5層」も参考になります。
よくある質問
リニアガイドの寿命計算はどうする?
採用するメーカーの式で計算します。HIWIN のボール形なら L = ((fh·ft·C)/(fw·P))^3 × 50 km で、ローラ形は指数が 10/3、基準距離が 100 km です。THK は修正係数 α = fH·fT·fC/fW を使い、ブロックを密着配置するときは接触係数 fC が入ります。距離の寿命は、1時間あたりの走行距離で割って時間寿命に直します。C の基準距離(50 km か 100 km か)を必ず確認し、ストロークがブロック長の2倍以下の短ストロークでは式が当てはまらないことがある点にも注意します。
リニアガイドの予圧はどれを選ぶ?
各社の資料では、荷重方向が一定で衝撃が小さい搬送装置などは普通すきまや軽予圧、高精度やモーメント荷重がある用途は軽予圧から中予圧、高剛性が必要で振動・衝撃がある工作機械などは中予圧や重予圧が例示されています。ただし、予圧を上げると剛性は上がる一方で寿命は下がり、取付面の許容誤差は小さくなります(HIWIN)。仕様書では記号でなく「軽予圧」「中予圧」の言葉と量で書き、メーカー記号は併記にとどめます。
リニアガイドの精度等級の違いは?
THK、HIWIN、Bosch Rexroth は H、P、SP、UP といった似た記号を使い、NSK の NH/NS 形は P3〜PN と PH・PC を使います。記号が同じでも、許容値はメーカー・型番・レール長ごとに違います。例えば HIWIN HG シリーズの走行平行度は、P 級でレール長〜100 mm なら 3 µm、3,600〜4,000 mm なら 21 µm です。走行平行度は測定条件(基準面へのボルト固定、全長走行、中央部の値)とセットで指定します。
静的安全係数はいくつ必要?
採用するメーカーの推奨値で判定します。振動・衝撃のない条件でも、THK は下限の目安 2、HIWIN は 1.0〜3.0、Bosch Rexroth は 3〜5(全荷重データを把握し無振動運転が保証される場合)と体系が違い、振動・衝撃や汚染、吊り下げ配置では Rexroth は 8〜12 や 12 以上を示しています。1つの数字を業界標準として使わず、計算書に「どのメーカーのどの条件の推奨値で判定したか」を書かせます。
リニアガイドの給脂間隔は?
HIWIN は取付後100 km ごとの再給脂を推奨し、HG シリーズのページでは「100 km ごと、または3〜6か月ごとにグリースを点検」としています。THK は固定の距離を示さず、使用条件に応じた間隔での給脂が必要としています。取付姿勢によっては潤滑剤が軌道に届かないため、給脂口の位置も合わせて決めます。
別メーカー品に置き換えられる?
取付寸法が近くても、定格荷重の基準距離、方向別定格、予圧と精度等級の定義、取付面の許容値、シールの摺動抵抗がメーカーごとに違うため、置き換えるときは寿命計算と静的安全係数を置き換え先のメーカーの定義でやり直します。THK の GK シリーズのように ISO 12090-1/-2 準拠をうたう製品もありますが、THK の説明では互換はシリーズ・精度等級(精密級まで)・予圧区分の範囲内の話です。規格寸法への準拠と、性能の同等は別のこととして確認します。
まとめ
リニアガイドの選定で最初に確かめるべきは、カタログの数字の大小ではなく、「どのメーカーの定義で計算したか」です。基本動定格荷重 C は、THK と HIWIN のボール形が 50 km 基準、Bosch Rexroth のボール形カタログは 100 km 基準で、NSK の NH/NS 形は両方を載せています。静的安全係数の推奨値も、無振動の条件で THK 2、HIWIN 1.0〜3.0、Bosch Rexroth 3〜5 と違い、予圧の記号「C0」は THK では中予圧、Rexroth では予圧なしを指します。
モデル試算(仮置き)では、①基準の約3.2年に対して、基準距離の取り違えで約6.4年、荷重係数を下限で見ると約6.3年、ブロックを密着配置すると約1.7年と、読み方ひとつで寿命が約2倍から約半分まで動きました。静的安全係数 5.0 も、どのメーカーのどの条件の表で判定するかで、「余裕あり」にも「不足」にもなります。
だから RFP には、(1) 計算に使ったメーカーの定義・係数・基準距離を計算書に書かせる、(2) 予圧と精度は言葉と量で指定し、取付面の精度とセットで決める、(3) 取付誤差・潤滑不足・異物・取扱いという早期損傷の主な原因を、FAT/SAT と保全計画でつぶす、の3つを入れます。7段の選定手順(使用条件、荷重、静的安全係数、寿命、予圧、精度と取付面、環境)を行き来しながら決め、受入で実物を確かめる。この順番で進めると、図面の「○○社 ○○形」の一行が、検証できる仕様に変わります。
TOMAS TECH では、タイの日系工場の自動機・検査装置の設計や、設備の改造・更新をお手伝いしています。既存装置のリニアガイドが早く傷む原因の切り分けや、RFP の仕様書づくりといった、製品や発注先が決まる前の段階でもご相談いただけます。お問い合わせはこちらのフォームからどうぞ。
参考情報
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- ISO:ISO 14728-2:2017 Rolling bearings — Linear motion rolling bearings — Part 2
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- IKO日本トムソン:最新情報
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