ボールねじ 選定を「径とリードをカタログから選ぶ作業」と考えると、設備は動いても、停止精度、寿命、温度安定性、保全性が要求に届かないことがあります。とくにタイ工場の新規設備・既設改造では、高温の周囲環境、長い連続運転、粉じんや切粉、現地で入手できる潤滑剤、サーボ・支持軸受・ガイドとの整合まで発注条件に落とす必要があります。本稿では、設備発注者が要求を数値化し、サプライヤーの計算根拠を比較し、RFPからFAT/SATまで同じ物差しで検収する方法を解説します。
結論:ボールねじ 選定は「精度等級」より先に運転条件を固定する
選定の順番は、用途、荷重、ストローク、速度・加速度、デューティ、姿勢、精度、寿命、環境、保全、試験です。先に型式を決めてから不足条件を補うと、最終的に「高速だが危険速度を超える」「高予圧だが発熱で精度が崩れる」「計算寿命は長いが汚染で早期損傷する」という矛盾が残ります。
発注者が最低限そろえる入力は次の通りです。
| 入力 | RFPへ書く内容 | 設計レビューで確認する証拠 |
|---|---|---|
| 機械構成 | 水平・垂直、固定側/支持側、ガイド、カップリング | 組立図、支持条件、芯出し方法 |
| 移動条件 | ストローク、最高速度、加減速、サイクル、年間時間 | モーションプロファイル、回転数計算 |
| 荷重 | 質量、外力、摩擦、切削・圧入反力、衝撃 | 荷重ケース、最大・平均軸荷重 |
| 精度 | 絶対位置、繰返し、反転、整定、測定温度 | 誤差予算、補正方法、測定手順 |
| 寿命 | 目標時間、距離、サイクル、稼働率 | L10または修正寿命と前提 |
| 環境 | 温度、粉じん、切粉、クーラント、洗浄 | シール、カバー、潤滑、材料方針 |
| 保全 | 給脂方法、交換空間、スペア、記録 | 保全計画、部品表、交換手順 |
| 受入 | FAT/SAT項目、負荷、温度安定時間 | 生データ、校正証明、判定基準 |
この表を埋める前に「C5」「予圧あり」「直径32 mm」のような答えを固定しないことが重要です。ISO 3408-1:2006はボールねじの用語と呼称を扱います。精度等級はISO 3408-3の受入条件・受入試験や、採用メーカーの現行精度規格・証明書と結び付けて指定します。等級名だけでは装置の総合精度を保証しないため、ねじ軸、ナット、支持軸受、ガイド、取付面、フレーム、温度、制御補正を一つの誤差予算として扱います。
ISO 3408シリーズを発注仕様でどう使うか
2026年9月時点で、ISO公式ページではISO 3408-1:2006が用語・呼称、ISO 3408-2:2021がメートル系列の呼び径・リード・ナットおよび取付ボルト寸法、ISO 3408-3:2006が受入条件・受入試験、Part 4が静的軸方向剛性、Part 5が静・動定格軸荷重と寿命を扱います。ISO 3408-3:2006は2026年4月8日に再確認され現行です。ISO 3408-2:2021は2026年9月3日にsystematic reviewのclose of reviewへ進んでいますが、公開ページ上の情報だけで最終結論を推測してはいけません。
また、ISO/TC 4/SC 11の公式ページには、ISO/TC 39/JWG 7によるISO 3408 Parts 1〜5の改訂作業が明記されています。したがってRFPでは「ISO 3408準拠」とだけ書かず、適用するPart、版、要求する等級、検査項目、証明書、改訂版が発行された場合の扱いを明記します。見積中や設計凍結後に版が変わった場合は、自動的に新旧どちらかへ切り替えず、差分、費用、納期、再試験範囲を合意します。
規格は選定計算を代行するものではありません。規格に適合する部品でも、装置側の支持条件や温度管理が不適切なら要求精度は出ません。反対に、用途に対して必要以上の精度等級を指定すると、部品価格だけでなく、取付面加工、芯出し、測定、温度管理にもコストが波及します。
ボールねじの選定フローを8段階に分ける
THK公式の選定条件は、搬送姿勢、質量、ガイド方式、摩擦、外部軸荷重、目標寿命、ストローク、速度、加減速、往復回数、位置決め精度、繰返し精度、バックラッシ、最小送り、モータ条件などを入力として挙げています。発注実務では、これを次の8段階に分けると比較しやすくなります。
- 要求機能とワーストケースを定義する
- 必要リードと概略径を決める
- 軸荷重、座屈、許容引張圧縮荷重を確認する
- 危険速度とDN値から許容回転数を確認する
- 精度等級、軸方向すきま、予圧、剛性を決める
- L10寿命と運転時間・走行距離へ換算する
- 熱変位、潤滑、汚染、取付誤差を設計する
- モータ・カップリング・支持軸受を含めFAT/SATで証明する
計算書には採用値だけでなく、入力、単位、荷重ケース、係数、カタログ版、式番号、余裕、判断者を残します。Excelの最終セルだけを提出させると、前提の違いを比較できません。

直径とリード:タクトだけで決めない
リードはねじ軸1回転あたりの直線移動量です。同じ直線速度ならリードを大きくすると必要回転数を下げられますが、同じ推力を出すためのモータトルク、最小送り、機械分解能、剛性、入手可能なナット形式との関係が変わります。小リードは分解能を取りやすい一方、高速送りでは回転数が上がります。大リードは高速化に有利ですが、保持・制動や制御分解能を含めて検討します。
垂直軸では停電時やサーボオフ時の落下防止を、モータ保持ブレーキだけに依存させないリスク評価が必要です。カウンタバランス、機械ブレーキ、落下防止機構、速度監視などを設備の安全要求に応じて設計します。ボールねじは高効率で逆駆動し得るため、「電源を切ればその場で止まる」とは限りません。
ねじ軸径は動定格荷重だけでなく、圧縮荷重での座屈、引張圧縮に対する許容荷重、危険速度、ねじ軸の軸方向剛性、加工・支持可能な全長から決めます。長い軸ほど座屈と危険速度が支配的になりやすく、固定―支持、固定―固定など端部支持条件の違いが効きます。メーカー計算では端部条件と有効長が組立図と一致しているかを確認します。
許容軸荷重と安全率:最大荷重の定義が先
THK公式は、最大圧縮荷重に対して座屈しないねじ軸を選ぶこと、座屈だけでなく降伏応力に関係する許容引張圧縮荷重も考慮することを示しています。基本静定格荷重C0aに対する静的安全率の下限目安は、振動・衝撃なしで2、振動・衝撃ありで5です。これらは万能の設計保証値ではなく、メーカーの選定ガイドにある目安です。加減速、急停止、ワーク衝突、加工力の変動、ジャム解除、非常停止を「振動・衝撃なし」に分類してよいかをレビューします。
最大軸荷重は、単に搬送質量×加速度ではありません。水平軸ならガイド抵抗、加工反力、シール抵抗、予圧、加減速を、垂直軸なら重力、加減速、外力を含めます。非常停止時の減速度が通常運転より高いなら、別ケースにします。複数軸がワークを拘束する場合は、同期誤差による内力も確認します。
RFPでは「安全率2以上」と一行で済ませず、次を要求します。
- 通常、起動、停止、非常停止、ジャム、保全後試運転の荷重ケース
- 最大軸荷重と時間平均等価荷重の計算を分離
- C0a、Ca、許容軸荷重、座屈荷重のどれと比較したか
- 支持条件、有効長、荷重方向、偏心の前提
- 衝撃・荷重係数の出典と採用理由
- カタログ定格と選定型式の版管理
許容回転数:危険速度とDN値の小さい方で決める
THK公式の選定基準では、許容回転数はねじ軸の危険速度N1とDN値で決まる許容回転数N2を求め、最大回転数の目安として小さい方を採用します。危険速度はねじ軸の固有振動と関係し、同社の計算式では結果に安全率0.8を乗じます。DN値の上限は製品型式や循環方式によって異なるため、一般的な単一値をRFPに転記せず、候補型式の最新仕様表で確認します。
要求速度から回転数を出すときは、加速区間のピーク、オーバーシュート、ギヤ比、実リードを含めます。サーボモータの定格回転数以内でも、ボールねじ側の危険速度やDN値を超えることがあります。逆に、ボールねじが許容しても、支持軸受、グリース、シール、カップリング、モータの連続回転数が先に上限になる場合があります。
速度域を決める制御側の考え方は、同言語のサーボ制御とインバーター制御2026も参照してください。ボールねじ軸ではモータ単体の選定ではなく、負荷慣性、加速トルク、ねじ軸の共振、機械剛性を一体で確認します。
ボールねじ 精度等級:装置の誤差予算から逆算する
「工作機械だからC3」「搬送だからC7」と用途名だけで決めるのは危険です。まず装置の合否を、絶対位置精度、繰返し位置決め精度、反転時のロストモーション、整定時間、姿勢変化、測定温度、測定位置で定義します。その総合許容差を、リード精度、軸方向すきま、ねじ・ナット・支持軸受・取付部の弾性変位、ガイド姿勢、フレーム変形、熱変位、エンコーダ・制御・測定不確かさへ配分します。
一方向だけで送る装置では軸方向すきまが位置精度へ現れにくい場合がありますが、方向反転や荷重反転ではバックラッシになります。予圧、ダブルナット、オフセット予圧などを検討する理由はここにあります。ただし、後述の通り予圧を強くすればすべて解決するわけではありません。
精度等級の証明書には、測定対象、基準温度、測定長、代表移動量誤差、変動、測定器、校正状態を要求します。受入時には部品単体の証明書と、装置組立後のレーザー干渉計や外部スケールによる結果を区別します。部品が合格でも、取付面の平行度や支持軸受の芯ずれで装置は不合格になり得ます。
ボールねじ 予圧:剛性向上と発熱・寿命のトレードオフ
THK公式は、予圧により軸方向すきまをゼロ未満にして高剛性化でき、荷重方向が反転したときの変位を小さくできると説明しています。固定位置予圧にはダブルナットやオフセット予圧、定圧予圧にはばね構造を使う方式があります。方式はサイズ、剛性、トルク変動、温度変化、用途に合わせて選びます。
一方で予圧はナット内部に初期荷重を与えます。THKの寿命説明は、中予圧で使用する場合、ナットがすでに内部荷重を受けているため、寿命計算で予圧を考慮する必要があると明記しています。予圧を上げると一般に剛性は上がりますが、回転トルクと発熱が増え、潤滑や取付誤差への感度も高まります。「予圧あり」を合否にせず、予圧方式、予圧値または管理方法、動トルク、温度上昇、剛性、寿命の計算・実測を組み合わせます。
FATでは無負荷の短時間運転だけでなく、代表サイクルを温度が安定するまで動かし、ナット部、支持軸受部、モータ、周囲温度、位置ドリフト、駆動トルクを記録します。予圧が適切でも、支持軸受の過大予圧や芯ずれで発熱する場合があるため、原因を部品ごとに切り分けます。

ボールねじ 寿命計算:L10を保証時間と誤解しない
THK公式では、ボールねじの寿命を転動疲労による最初のフレーキングまでの総回転数とし、定格寿命L10を「同一条件で個別に運転する同一群の90%がフレーキングせずに到達できる総回転数」と説明しています。基本動定格荷重Caは、一定方向・一定大きさの軸荷重でL=10^6回転を基準にした定格です。L10は単品の故障時刻を確約する値でも、潤滑不良、異物侵入、取付不良、腐食、事故荷重を含む総合寿命でもありません。
寿命計算では、実サイクルの荷重と回転数から平均軸荷重を求め、振動・衝撃などを荷重係数へ反映します。THKの例示する荷重係数は、振動・衝撃がごく小さくV≦0.25 m/sで1〜1.2、弱く0.25
回転寿命から時間寿命へ換算するときは、運転回転数と稼働時間、停止時間を分けます。走行距離へ換算するときは実リードを使います。往復運転では、短いストロークで同じ軌道部が繰り返し荷重を受ける条件、潤滑剤が行き渡りにくい条件もメーカーへ提示します。
RFPに「5年寿命」とだけ書くのではなく、例えば「年間300日、1日20時間、1分12サイクル、所定モーションプロファイル、所定荷重ケース、指定保全を前提にL10hを提示」と書きます。さらに、計算寿命とは別に、シール、潤滑、腐食、部品供給、交換作業時間を含む保全寿命を評価します。
ボールねじ 熱変位:1℃を小さく見ない
THK公式の位置決め精度資料は、ねじ軸の熱膨張係数を12×10^-6/℃とし、温度が1℃上がると1 mあたり12 µm伸びると説明しています。したがって、ねじの有効長が1.5 mで平均温度が5℃上昇すれば、単純計算の伸びは90 µmです。これはモデル計算であり、実機では温度分布、支持方式、拘束、フレーム、測定位置によって位置誤差の現れ方が変わります。
発熱源は、ナット予圧、支持軸受予圧、潤滑抵抗、シール、回転速度、芯ずれ、モータ、周辺装置です。タイ工場では空調停止時、昼夜、扉開閉、クーラント温度、立上げ直後と定常時の差も入力にします。室温だけを測ってねじ軸温度を推定しないことが重要です。
対策は一つではありません。
- 過大なボールねじ・支持軸受予圧を避ける
- リードを大きくして同じ送り速度での回転数を下げる
- 用途に合う潤滑剤と給脂量・周期を決める
- ねじ軸周囲を油または空気で冷却する
- 基準移動量に温度上昇を見込んだ負の目標値を設定する
- ねじ軸を引張予圧する設計をメーカーと検討する
- リニアスケールでフルクローズド制御し、温度モデルを検証する
- ウォームアップ条件と測定開始条件を標準化する
THK公式は一般例として2〜5℃の温度上昇を想定した負の目標値(-0.02〜-0.06 mm/m)を示しますが、これをすべての設備へコピーしてはいけません。自社サイクルの実測データに基づき決定し、補正前後の結果をFAT/SATで保存します。
潤滑・汚染・取付:計算寿命を実寿命へ近づける条件
寿命計算は、良好な潤滑と理想的な取付条件を前提にします。切粉、研磨粉、木粉、溶接スパッタ、洗浄液、クーラント、腐食性雰囲気がある場合、ワイパーやシールだけに頼らず、テレスコカバー、ベローズ、正圧、ドレン、スクレーパー、設置向きを組み合わせます。カバーが干渉したり、ストローク端で折れたりしないことも受入項目です。
潤滑仕様には銘柄だけでなく、基油・増ちょう剤の適合、粘度範囲、初期封入量、補給量、周期、給脂点、配管、パージ、混用可否、保管条件、タイ国内の調達先を含めます。自動給脂器を使う場合は、吐出確認、空配管、詰まり、停電時、アラーム、残量監視を確認します。多すぎる給脂も撹拌抵抗と発熱を増やし得ます。
取付では、ねじ軸とガイドの平行、ナットハウジングの位置、支持軸受の同軸、取付面の直角・平面、締付順序、締付トルク、回転トルクを記録します。カップリングで芯ずれを吸収させる設計は、ボールねじや支持軸受へ余分な荷重を入れる可能性があります。組立後に手回しまたは低速で全ストロークのトルク変動を確認し、異常部位を是正してからサーボチューニングへ進みます。
サーボ・減速機・支持軸受まで一体で選ぶ
ボールねじの高効率は必要モータトルクを下げる一方、負荷側から逆駆動されやすい特性も生みます。モータ選定では連続トルク、ピークトルク、回転数、負荷慣性、加減速、保持、回生、ブレーキを確認します。THK公式も、サーボモータ選定で回転数、回転トルク、最小送りを考慮するよう示しています。
減速機を追加するとモータ側慣性整合やトルクを調整できますが、バックラッシ、ねじり剛性、効率、発熱、保全点が増えます。必要性と方式比較は減速機 選定の実務ガイドを参照してください。直結か減速かは、ボールねじのリード、モータ速度、必要分解能、タクト、反転精度を同じ計算表で比較します。
支持軸受はボールねじの軸方向剛性と回転精度を左右します。固定側のアンギュラ軸受構成、予圧、ナット締結、支持側の熱伸び許容、グリース、シール、交換手順を指定します。固定―固定構成で熱伸びを拘束する場合は軸力変化を確認します。NSKは2026年に、ボールねじ送り系の軸力維持に関する研究を公開しており、温度・軸力・剛性を系として捉える重要性がうかがえます。ただし研究成果を個別設備へ直接適用する場合は、メーカー設計との照合が必要です。
RFPにそのまま使えるボールねじ仕様項目
1. 用途と責任境界
- 対象軸、工程、ワーク、設備番号
- 発注範囲:ねじ軸、ナット、支持ユニット、カップリング、モータ、カバー、潤滑
- 選定計算、詳細設計、製作、組立、試験、現地据付の責任者
- 支給品・既設流用品とその状態保証
2. 運転条件
- 水平/垂直/傾斜、ストローク、有効ねじ長、全長制約
- 最高・常用速度、加速度、減速度、ジャーク、整定時間
- サイクル図、往復回数、年間稼働日、1日時間、停止窓
- 搬送質量、外力、摩擦、加工・圧入反力、非常停止条件
3. 性能要求
- 絶対位置精度、繰返し、反転差、最小送り、整定
- 測定点、測定方向、温度、ウォームアップ、負荷
- 必要寿命L10hまたは走行距離と前提
- 許容温度上昇、位置ドリフト、騒音、トルク変動
4. 構造・部品
- 精密/転造、呼び径、リード、精度等級、予圧方式
- ナット形式、循環方式、シール、カバー、表面処理
- 固定・支持条件、支持軸受、ロックナット、カップリング
- 潤滑剤、給脂量、周期、給脂装置、現地入手性
5. 計算・提出物
- 最大軸荷重、C0a静的安全率、座屈、引張圧縮許容荷重
- 危険速度、DN値、許容回転数
- Ca、平均軸荷重、荷重係数、予圧を含むL10/L10h
- 剛性、弾性変位、熱変位、モータトルク・回転数・慣性
- 適用規格・版、カタログ版、図面、部品表、検査成績
6. 変更・代替ルール
型式変更、代替メーカー、精度等級、予圧、潤滑剤、シール、支持軸受の変更は事前承認とします。変更申請には、寸法互換だけでなく、荷重、寿命、速度、剛性、熱、トルク、保全、納期への差分を添付させます。「同等品」は判定基準ではありません。
FAT:部品証明と装置性能を分けて確認する

FATはカタログ確認ではなく、要求が装置として成立した証拠を集める工程です。すべてを工場出荷前に再現できない場合も、未試験項目をSATへ明示的に割り当てます。
| FAT項目 | 方法 | 主な記録 | 判定の注意 |
|---|---|---|---|
| 文書照合 | 型式、図面、証明書、計算書を照合 | 版、シリアル、差分表 | 代替品を黙認しない |
| 組立 | 取付面、芯、締付、全ストローク確認 | 測定値、トルク、写真 | カップリングで無理に吸収しない |
| 無負荷運転 | 低速から最高速度まで段階運転 | 電流、トルク、振動、音 | 共振域と方向差を見る |
| 荷重運転 | 代表・最大荷重でサイクル | 位置、整定、電流、温度 | 短時間で終えない |
| 精度 | レーザー干渉計等で往復測定 | 生データ、補正前後 | 温度と測定不確かさを記録 |
| 熱安定 | 代表デューティで定常まで運転 | ねじ、ナット、軸受、室温 | 位置ドリフトと同じ時系列にする |
| 異常 | センサー断、給脂異常、過負荷等 | アラーム、停止、復旧 | 安全試験は承認手順で行う |
| 保全 | 給脂、カバー、交換性を実演 | 時間、工具、アクセス | 実作業者が評価する |
精度測定は、サーボ補正前と補正後を分けます。補正後だけ合格しても、機械的なうねりや局所誤差が大きければ、温度や荷重が変わったとき再現しません。ボールねじ単体検査と装置全体の測定結果を紐づけます。
SAT:タイ工場の実環境で再確認する
輸送、据付、基礎固定、電源、室温、クーラント、周辺設備との同期により、FAT結果は変わります。SATでは水平出し、アンカー締結、ガイドとボールねじの状態、全ストロークのトルク、原点、精度、負荷運転、連続生産、保全アクセスを再確認します。
とくに次を合否へ入れます。
- 実ワーク・実治具・実工程での位置精度とタクト
- 朝の冷間起動から定常温度までの位置ドリフト
- 工場空調の通常運用と停止時の温度範囲
- 上流・下流設備との待ち、衝突、非常停止、復旧
- 現地潤滑剤、給脂工具、スペア部品の受入
- タイ語・英語の保全手順、図面、部品番号、教育記録
- 連続運転後の温度、電流、トルク、異音、グリース漏れ
制御盤、PLC、サーボの変更を伴う場合は、PLC更新・リプレース判断と制御盤 設計の発注実務も合わせて、I/O、インターロック、バックアップ、ロールバック、FAT/SATの責任境界を統一します。
見積比較:価格ではなく前提差を揃える
ボールねじの費用は、径・長さ・リード・精度・予圧・端末加工・支持ユニット・カバー・潤滑・数量・納期で変わります。市場相場を一律に断定できる根拠はありません。比較時は、部品代だけでなく、設計計算、図面、端末加工、組立、測定、FAT、現地据付、再調整、予備品、輸送、保証、保全教育まで同じWBSへ分けます。
安い提案が転造品だから悪い、精密研削品なら必ず良い、という判断も避けます。搬送用途で要求を満たす転造品は合理的な場合があります。一方、高精度位置決めで温度補正・組立精度まで必要なら、部品価格差より検証・制御を含む総額が支配します。サプライヤーには前提、除外、未確定、代替案を表で提出させます。
よくある失敗と是正方法
「過去設備と同じ型式」で選ぶ
ワーク質量、タクト、ストローク、支持長、周囲温度が同じとは限りません。既設型式は候補とし、現条件で再計算します。
最高速度だけでリードを決める
危険速度は満たしても、分解能、トルク、反転、整定が不足します。速度、加速度、精度、寿命を一枚の計算書で評価します。
予圧を最大にすれば精度が上がると考える
剛性は向上しても、内部荷重、トルク、発熱、寿命へ影響します。必要剛性から予圧を決め、熱試験で検証します。
L10を保証寿命と呼ぶ
L10は統計的な転動疲労寿命です。汚染、潤滑、腐食、取付、事故荷重、保全能力を別に評価します。
FATを無負荷の往復だけで終える
温度上昇、実負荷、方向反転、整定、非常停止後の復旧を見逃します。代表デューティを定常まで運転し、時系列データを保存します。
まとめ:ボールねじ 選定は計算書と受入証拠を一つにつなぐ
ボールねじ 選定の品質は、精度等級やメーカー名だけでは決まりません。運転条件を固定し、最大軸荷重、静的安全率、座屈、危険速度とDN値、予圧を含む寿命、剛性、熱変位、潤滑、汚染、取付を順に検証し、同じ要求をFAT/SATの合否へつなげることが重要です。12 µm/m/℃の熱膨張や、無振動2・振動衝撃5という静的安全率の目安も、条件と出典を伴って初めて設計判断に使えます。ISO 3408シリーズの改訂状況は継続確認し、適用Partと版を契約で固定してください。
タイ工場の新規設備、既設軸改造、サーボ化、RFP整理の段階でもご相談いただけます。荷重・速度・精度・寿命の入力整理から、サプライヤー計算書のレビュー、FAT/SAT項目の作成まで、まだ型式が決まっていない段階であればTOMAS TECHへお問い合わせください。
ボールねじ 選定のFAQ
ボールねじ 精度等級はC3とC5のどちらを選ぶべきですか?
用途名だけでは決められません。装置の絶対位置、繰返し、反転、整定、温度範囲を数値化し、リード精度、すきま、剛性、ガイド、フレーム、熱、測定の誤差予算へ分解してください。要求を満たす等級を選び、装置組立後の測定で確認します。
ボールねじ 予圧は高いほど良いですか?
いいえ。予圧はすきまを抑え剛性を高めますが、内部荷重、回転トルク、発熱が増え、寿命計算にも影響します。必要剛性と反転精度から予圧方式・量を決め、代表サイクルで温度と位置ドリフトを測ります。
ボールねじ 寿命計算のL10は交換時期ですか?
そのまま交換時期ではありません。L10は、同一条件の同一群の90%が転動疲労によるフレーキングなしで到達する総回転数の指標です。潤滑、汚染、取付、腐食、事故荷重、シールやカバーの寿命を含まないため、保全計画は別に作ります。
ボールねじ 熱変位はサーボ補正だけで解決できますか?
補正は有効ですが、温度分布や機械変形が再現しなければ誤差が残ります。発熱を減らし、ねじ軸・ナット・支持軸受・周囲温度を測り、ウォームアップ条件を定めたうえで補正モデルを検証します。高精度用途では外部スケールも検討します。
ボールねじ RFPに必須の計算書は何ですか?
最大・平均軸荷重、C0aに対する静的安全率、座屈、許容引張圧縮荷重、危険速度、DN値、Caと予圧を考慮した寿命、軸方向剛性と変位、熱変位、モータ回転数・トルク・慣性です。入力値、単位、係数、カタログ版も添付させます。
ボールねじ FATとSATはどう分けますか?
FATでは出荷前に文書、組立、無負荷・負荷運転、精度、熱安定、異常、保全性を確認します。SATでは輸送・据付後、タイ工場の実温度、実ワーク、実タクト、他設備連携、長時間運転で再確認します。現地でしかできない項目を契約時点でSATへ割り当てます。
参考情報
- ISO 3408-1:2006 — Ball screws — Part 1: Vocabulary and designation
- ISO 3408-2:2021 — Nominal diameters, leads, nut dimensions and mounting bolts
- ISO 3408-3:2006 — Acceptance conditions and acceptance tests
- ISO/TC 4/SC 11 — Linear motion rolling bearings(ISO 3408 Parts 1–5改訂JWG)
- ISO 3408-4:2006 — Static axial rigidity
- THK — Conditions of the Ball Screw
- THK — Permissible Axial Load
- THK — Permissible Rotational Speed
- THK — Selecting a Nut / Preload
- THK — Calculating the permissible axial load / Static Safety Factor
- THK — Studying the Service Life
- THK — Studying the Positioning Accuracy / Thermal Displacement
- NSK — Identify Ball Screw Quality Before It’s Too Late
- NSK — ボールねじ送り系を対象とした軸力維持のための状態安定化機構