タイミングベルト 選定の相談で最初に確かめたいのは、ベルトが「軸間で動力と位相を伝える」のか、「ワークを載せて運ぶ」のかという用途です。同じ歯付きベルトでも、伝動用の容量計算と搬送用の有効張力計算を混ぜると、幅、プーリ、張り代、検収項目の判断がずれます。タイの工場で新設機を発注する方、既設機の交換品を探す方に向けて、必要な入力、比較表、見積依頼、FAT・SATまでを整理します。
結論を先に述べます。ベルトの「ピッチ×歯数×幅」だけを購買票に書いても、駆動としての互換性と寿命は確定しません。メーカーの系列・歯形、プーリの歯形と歯数、実負荷、回転数、稼働時間、起動停止、張力、軸間距離の調整範囲、周辺環境を一組で確認します。仕様が固まる前にメーカーを横断して容量値だけ比較しないことが、再設計を減らす近道です。
タイミングベルト選定で、伝動用と搬送用を分ける理由
伝動用はモーターや減速機から従動軸へトルクと回転比を渡します。設計時には伝達動力、負荷変動、運転時間、小プーリ回転数、回転比、ベルト歯形、噛み合い歯数、ベルト幅を検討します。ミスミの伝動用選定資料は、機械種類、動力、負荷変動、日運転時間、小プーリ回転数、回転比、仮軸間距離、プーリ径制限、使用条件を最初に集めるよう示しています。ここから設計動力を求め、歯形・プーリ・長さ・幅へ進む順番です。入力を省いて品番を先に選ぶと、起動時のピークや小プーリの屈曲条件を確認できません。資料1
搬送用はワークを載せる、あるいはベルトに取り付けた治具を直線移動させます。荷重の重さだけでなく、支持面との摩擦、傾斜、速度、ワークの偏り、位置決め、搬送面の材質が効きます。ミスミの搬送用資料は、同径のヘッド・テールプーリを前提とする選定例で、有効張力→設計張力→ベルト種類・幅・プーリ径→ベルト長と軸間距離→張り代という順序を示しています。これは伝動用の定格動力表をそのまま当てる計算ではありません。異径プーリ、多軸、往復動作、垂直搬送は別途個別設計が必要です。資料3
両用途とも「歯があるから滑らない」と単純化しないでください。歯飛びや位置ずれは、張力不足、噛み合い不足、過負荷、プーリ芯ずれ、組付け誤差、ワーク衝突などで起きます。歯付きであることは、適切な条件で噛み合うための要素です。精密位置決めではベルト伸び、バックラッシ、軸剛性、プーリ偏心も検討します。繰返し停止位置の公差が厳しい場合は、実機で双方向・温度変化後の精度を測ります。

発注前に集める入力は九つ
最初の入力は用途です。単なる軸間伝動、ワーク搬送、位置決め軸、同期搬送のどれかを明記します。次にワークまたは負荷の質量、摩擦、傾斜を記録し、通常運転と詰まり・非常停止前後の最大負荷を分けます。三つ目にモーターの定格動力・トルク・回転数と、減速比、起動停止頻度を揃えます。カタログの定格出力だけで実際のピークトルクを置き換えないためです。
四つ目は稼働時間とサイクルです。8時間の連続運転と、同じ平均速度で毎分数十回の起動停止を行う軸では条件が違います。五つ目は設置寸法で、許容プーリ外径、軸間距離の公差、モーター台の調整方向、カバー内の空間を測ります。六つ目は環境です。周囲温度、粉塵、水、油、洗浄剤、食品接触の有無、静電気や防爆要件は、ベルト材と製品固有の適合証明で判断します。特定製品の耐熱値を「タイミングベルト全般」の値に広げないでください。
七つ目は精度と品質です。搬送の位置許容差、速度変動、歯飛び許容の有無、騒音、発塵、交換可能時間を数値で書きます。八つ目は既設機の情報です。ベルトの印字、プーリ歯数と歯形、軸間、幅、張力設定方法、過去の破損位置、交換周期を現物写真と一緒に残します。九つ目は調達境界です。ベルトだけの交換か、プーリ・軸受・ガード・張力測定器・予備品・保守教育まで含むのかを発注書で区別します。
この入力表を埋めると、見積価格を比較する前に「同じものを比較しているか」を確かめられます。既設機の故障対策では、切れたベルトの品番を一段太くするだけで解決したと考えず、歯面の摩耗、片寄り、軸受の発熱、テンショナー位置、起動時の電流や停止ログを並べて原因を切り分けます。
伝動用タイミングベルトの選定順序
第一に、実際に伝える動力と負荷の形を整理します。ミスミの一般的な伝動用資料では、系列に応じ、伝動動力に過負荷係数を掛けた設計動力を用います。ただし過負荷係数の構成や基準容量はベルト系列ごとに異なります。あるメーカーの補正係数を別メーカーの容量表へ転用しないでください。負荷変動、運転時間、回転比などを明記して、候補メーカーの手順でそれぞれ計算するのが安全です。資料1
第二に、歯形とピッチを仮選定します。HTD、GT、S、Tなどの表記は単なるサイズ名ではなく、歯面形状と適合プーリの系列にも関係します。似たピッチのベルトでも、メーカーが互換を認めない歯形を混用してはいけません。既設交換では「ピッチが同じだから入る」で判断せず、ベルトとプーリの型式・現物寸法・メーカー資料を突き合わせます。新設では入手性と交換部品の供給も条件に入れます。
第三に、大小プーリの歯数で回転比を決め、候補系列の最小歯数・最高回転数を確認します。小プーリを小さくしすぎると曲げ条件と噛み合い歯数が厳しくなります。ミスミの資料には系列と回転数ごとに小プーリの最小許容歯数表があり、一律の「最低何歯」とは言えません。プーリの外径だけではなく、ピッチ径、軸径、キー、締結方式、フランジ、隣接部品との干渉も確かめます。資料2
第四に、仮の軸間距離とプーリのピッチ径からベルトの概略長を求め、標準長を選んで実軸間距離を逆算します。カタログの「ベルト長」は測り方が異なる場合があります。発注票には採用メーカーが定義するピッチ長、歯数、幅を記し、既設の印字との対応表を添えます。モーター台の可動範囲は、新品の装着余裕と、張り調整・後の交換余裕の両方が必要です。穴位置が固定の装置は、標準品に合わせてベルトを無理にこじ入れる設計になっていないか確認します。
第五に、候補幅と噛み合い歯数を容量表で検証します。ミスミの方法では、基準伝動容量、噛み合い補正係数、基準幅を使い概略幅を出し、標準幅に丸めて再確認します。噛み合い歯数が少ないと補正係数が下がります。幅だけを広げても、小プーリの歯数不足や軸受荷重の問題は消えません。Gatesの設計資料も、減速機出力軸にかかるオーバーハング荷重を、その減速機の許容値で検証する必要を説明しています。資料2 資料5
第六に、初期張力、プーリ芯出し、ガード、保守方法を決めます。張力が大きければ安心という考えは誤りです。過大張力は軸受に影響し、過小張力は歯飛びや振動の原因になります。メーカー指定の測定法、測定時のスパン、ベルト状態、停止・隔離手順、再点検時期をセットで指定します。Optibeltの技術マニュアルは予張力の計算と設定を独立した設計項目として扱っています。実使用に近い条件で駆動を確認することも、本稿で勧める実務上の検証です。資料4
搬送用タイミングベルトの選定順序
搬送用途では、最初にワーク、治具、ベルトの支持方法を描きます。テーブル上を滑るベルト、ローラ支持、ワークをベルト歯面と反対側に直接載せる構成では、摩擦と変形の条件が違います。ワーク総質量だけでは有効張力を決められません。傾斜搬送なら高さ差、加減速するなら慣性負荷、複数ワークなら最大同時載荷数を加えます。ワークを固定治具で運ぶ場合は、治具の締結とベルト局所負荷も別途検討します。
ミスミの同径ヘッド・テールプーリを用いる搬送例では、有効張力は重力加速度9.8を掛けた摩擦項と揚程項の和で示されます。表の摩擦係数は特定材質・構成向けの一般値です。表面仕上げ、粉塵、油膜、温度が変われば実機の摩擦は変わります。資料の数値を現場保証値として使わず、試験で確認できるようにします。設計張力を出すときは日運転時間、ベルト長、速度に応じた補正をその資料の手順で加えます。資料3
次に候補ベルトの許容張力とプーリ最小歯数を照合します。これらは「同じピッチなら同じ許容値」ではありません。ジョイント加工品、エンドレス品、オープンエンド品でも条件が変わります。搬送用資料の許容張力表はジョイント加工ベルトの表であり、別構成へ流用できません。もしプロセス上の制約で特殊コーティング、アタッチメント、ジョイントが必要なら、その加工後の許容値をメーカーへ確認します。摩耗したときにベルト単体で交換できる構造かも判断します。
搬送プーリのピッチと歯数が決まれば、標準ベルト歯数から周長、軸間距離を決めます。同径二軸の単純例なら計算は比較的明快ですが、多軸やテンショナーを加えると巻き付け角、直線部長、接触位置が変わります。資料が示す内側の取付代と外側の張り代は、実際のモーター台や従動軸調整機構の図面に落としてください。箱の高さやガードの位置だけでなく、工具が入るか、交換で軸を外す必要があるかまで確認します。資料3
搬送ベルトに位置決めを担わせるなら、停止時の実ワーク位置を受入指標にします。モーターの回転角だけを合格させても、ワークとベルトの間の滑り、治具のガタ、ベルト弾性は測れません。タイ工場の高温時間帯、洗浄直後、最大載荷、最長稼働後という現実の運転条件を仕様に入れます。食品用途では洗浄剤・食品接触の適合証明が必要かを購買と品質保証が判断し、一般の歯付きベルトから推測しないことが重要です。

数値例:ベルト長の概算と張り代の検討
以下は製品選定ではなく、図面の読み合わせに使う仮置きの算例です。搬送用の同径二軸プーリとして、ピッチ5 mm、プーリ歯数40、仮軸間距離500 mmを置きます。プーリのピッチ円周は歯数×ピッチなので200 mm、ピッチ径は200÷π≒63.66 mmです。ベルト周長の概算は直線部二本と半円二つの和で、2×500+200=1,200 mm。したがって歯数は1,200÷5=240歯です。標準品に240歯が存在し、候補メーカーがこの組み合わせを認める場合に限り、計算上の軸間距離は(1,200-200)÷2=500 mmとなります。資料3
ここで「穴位置を500 mmに固定すればよい」と結論を出してはいけません。ベルトをプーリに掛けるための内側調整と、取り付け後に適正張力へ持っていく外側調整が必要です。ミスミの搬送用資料では、対象のS5Mでは内側取付代10 mm以上、軸間距離500 mmまでの外側張り代5 mm以上という表が示されています。ただしこれは資料に載る条件の表であり、採用する系列・加工・機構に合わせて再確認します。仮に500 mmを基準位置とすれば、図面上は少なくとも内側方向と外側方向の可動余地を別々に説明する必要があります。加工公差、実際の標準長、交換作業の余地はさらに検討します。
この例から言えるのは「5 mmピッチ・40歯・240歯なら、幾何学的には軸間500 mm」ということだけです。許容張力、搬送質量、速度、モーター選定、寿命、歯形互換性はまだ決まっていません。見積を頼む時は概算値に「仮定」と書き、候補メーカーの計算結果と標準品番を必ず返してもらいます。寸法だけで候補品を確定させると、調達後にモーター台の長穴を作り直す危険があります。
比較表で見るべき項目と、価格の読み方
発注前の小規模試験をどう設計するか
候補が二つに絞れたら、最も厳しい条件で小規模試験を行う方法があります。試験機を用意できない場合でも、既設機の一軸を対象に短期間の運転データを集めることはできます。試験の目的は「どちらのベルトが一般に優れているか」を決めることではありません。対象設備の負荷、速度、温度、洗浄条件に対して、どの組み合わせが必要な性能を再現できるかを確かめます。試験前に候補ごとのベルト、プーリ、張力設定、ワーク、測定方法を固定し、途中で条件を変えた場合はその時点を記録します。
伝動用なら、通常負荷だけでなく、立上げ直後、最も重いワーク、加減速の最も厳しいレシピ、停止からの再起動を含めます。回転比が狙いどおりか、異音や振動が増えないか、軸受周辺の温度がどう変わるか、ベルトが片側へ寄らないかを観察します。外部の保護カバーを外したまま長時間の試験を行うのではなく、必要な測定は安全な計測窓やセンサーで設計します。搬送用なら、ワークの最大同時載荷と偏った載荷、投入と排出の衝撃、傾斜部、洗浄後の摩擦変化、位置決め精度を対象にします。試験対象が複数品種なら、平均的な品種一つで判断しないことが重要です。
試験結果を比較するときは、ベルトの初期張力が候補ごとに指定どおり設定されていたかを必ず確認します。張力が違うまま騒音や位置精度を比べても、材料や歯形の差だけを評価したことにはなりません。ベルトだけを換えてプーリを流用した場合は、メーカーがその組み合わせを認めたか、プーリが摩耗していないかも記録します。新品プーリを含む候補と摩耗した既設プーリ流用の候補を同じ条件の性能比較として扱うべきではありません。
試験終了時には、合否だけでなく未検証条件を列挙します。数日の試験で長期寿命は証明できません。現地工場で使う洗浄剤を試していないならその適合を未確認とし、繁忙期の最大タクトを試していないなら受入後の再確認項目にします。候補の優劣が僅差なら、現地での供給日数、交換作業の容易さ、保守員の習熟、予備品の共通化も発注判断に含めます。こうした境界を明記した試験記録は、調達後に「事前試験では良かった」と言いながら原因が分からなくなる事態を防ぎます。
見積比較表の列は、ベルト単価だけでなく、歯形・ピッチ・歯数・幅、プーリ品番・歯数・材質、許容容量または許容張力、必要張力、軸受荷重、張力測定方法、交換時の停止時間、標準在庫、現地調達日数、保証と除外条件にします。伝動用なら動力と噛み合い補正、搬送用なら摩擦・勾配・最大同時載荷も列に追加します。「高性能ベルト」でも、既設プーリを流用できなければ導入費は上がります。逆に本体単価が高くても、同じ容量を狭い幅で実現でき、機械側の条件を満たすなら総費用が下がる場合があります。
公開カタログだけでタイ市場の実売価格を一律に示すことはできません。輸入費、現地在庫、数量、プーリ加工、据付、ガード変更、立上げ、予備品で見積額は変わります。価格記事に書ける有用な答えは固定の相場ではなく、同じ見積範囲を揃える方法です。見積依頼には「ベルトのみ」「ベルト+プーリ」「改造・据付込み」を分け、停止時間と責任境界を明記してください。輸入ベルトの供給期間が長い場合は、同じ型式の予備を何本置くかを停止損失と交換頻度で決めます。
既存設備の更新で、サーボ軸の回転伝達が主題なら、カップリング選定の記事で扱うねじり剛性・芯ずれと合わせて見ると、ベルト側だけに過大な精度要求を載せずに済みます。ベルトに位置決めを担わせる装置では、ロータリーエンコーダ選定の記事も参考にして、エンコーダをモーター側に置くのか負荷側に置くのかを検討します。これらはベルト容量を代替する記事ではなく、機械全体の仕様を切り分けるための内部資料です。
タイ工場のRFPに書く具体的な要求
交換案件では故障の形から要求を逆算する
同じ「ベルトが早く傷む」という報告でも、損傷の場所で調べる順番が変わります。歯の一部だけが欠けるなら、起動時やワーク詰まり時のピーク負荷、噛み合い不足、プーリの傷を先に確認します。ベルトの一方の側面だけが削れるなら、プーリの平行度、フランジ接触、軸受のガタを見ます。全幅で歯面が均一に摩耗するなら、粉塵、材質適合、張力、運転時間を確認します。背面に局所的な傷があれば、テンショナーやガードとの接触、交換作業中のこじりを疑います。これは原因を断定する診断表ではなく、現場で測る項目を抜けなくするための順序です。
交換履歴は「何月何日に交換した」だけで終わらせません。稼働時間、搬送した品種、最大載荷、張力測定値、交換前後の写真、停止アラーム、ベルトのロット、プーリ交換有無を紐付けます。ベルトの寿命は公称サイクル数だけで予測できず、設備固有の負荷と保守の影響を受けます。数回の交換で同じ位置に傷が出る場合は、消耗品のグレードを上げる前に機械側の原因を点検する価値があります。予備品を増やす判断も、故障の根本原因が残ったままでは停止リスクを消せません。
既設機の仕様書が見つからない場合は、現物のベルト印字を撮影し、プーリ歯数、歯先形状、幅、ピッチ径、軸間、軸径、フランジ位置を採寸して、メーカーまたはSIerの照合を受けます。摩耗したベルトの外周長だけから元のピッチ長を推定すると誤差が出ます。印字の数字もメーカーによって長さ・歯数・幅の表し方が異なります。「似た印字」を代替承認にせず、ベルトとプーリを一緒に同定してから見積を取ります。
新設案件では、まだベルト方式自体が適切かを確認します。長い直線搬送にはチェーンやローラ、短い高精度位置決めにはボールねじやリニアモーターが適する場合もあります。方式比較は「ベルトが安いか」だけでなく、必要な力、ストローク、速度、位置精度、清掃、交換時の停止範囲で行います。ベルト方式を選ぶ場合も、機械全体の性能のうち何をベルトに、何をガイド・センサー・制御に担わせるかを図面で決めておくと、サプライヤーの責任境界が明確になります。
RFPの冒頭には対象工程、ワーク、タクト、年間稼働時間、期待する停止・位置精度を置きます。続いて現物図面、軸間、プーリ径制限、軸とベアリングの許容荷重、取付空間、周囲温度、粉塵・油・洗浄条件、製品への汚染制限を添付します。候補メーカーには、設計で使用した負荷・係数・容量表の版と、選んだベルト・プーリ・テンショナーの品番を回答させます。これで計算の前提が明確になり、受入で「仕様は満たしたが現場で使えない」を減らせます。
互換性の欄は特に重要です。既設プーリを流用する提案なら、歯形、ピッチ、歯数、歯幅、フランジ、軸固定の適合根拠を示してもらいます。新設なら、プーリとベルトを同じ設計パッケージとして見積もり、将来の代替品条件も示します。メーカーの資料で互換が明示されない限り、「歯が入る」ことを互換と解釈しません。ベルトの張力測定値と再点検方法、交換手順、ベルトの向きの指定も添付対象です。
保守と安全は購入後の問題ではありません。停止・エネルギー隔離、ガード取外し、テンショナー緩め、交換、芯出し、張力設定、試運転、ガード復旧まで作業手順を見積範囲に含めます。張力が指定範囲に入ったかを測定器と記録で確認します。スペアの保管温度・直射日光・曲げ置きの条件は、採用メーカーの保管指示を確認します。Gatesの予防保全資料は、駆動を隔離してから作業し、ベルトの取付と張力設定を段階的に行う手順を示しています。資料6
FAT・SATで何を測るか
図面承認時と引き渡し時の責任を分ける
ベルトの選定を誰が行い、最終的な装置性能を誰が保証するかも契約に書きます。ベルトメーカーは単体の容量や推奨張力を提示できますが、ワークの詰まり、軸受の摩耗、制御側の加減速まで一社で把握しているとは限りません。装置メーカー、SIer、ベルト供給者、工場保全の四者で、入力条件を誰が確定し、計算を誰が承認し、現地試験で不適合が出た場合に誰が改造するかを表にします。ベルトの型式だけが承認済みで、取付台の可動範囲やカバー内の作業空間が未承認という状態を避けるためです。
図面承認の時点では、モーターの回転方向、負荷側の回転方向、プーリの歯数と取付位置、テンショナーが接触する面、ガード開口、張力測定に使う直線スパンを示します。搬送ならワークがどの区間でベルトに載り、どこで乗り移るかも描きます。片側でベルトが見えない装置は、交換時にどの部品を先に外すかを作業図として提示してもらいます。保全担当が図面だけで安全に作業できるかをレビューすることは、単に部品代を詰めるより停止時間の予測に役立ちます。
納入時には、装置に付いた現物のベルト・プーリ・テンショナーの品番を、承認図、購入品リスト、予備品リスト、保全手順書で一致させます。途中でメーカーや幅が変わったなら、変更理由と再計算結果を残します。「同等品へ変更」とだけ記録すると、次回交換でプーリ互換や張力設定の根拠が失われます。変更した部品の写真、ラベル、張力測定値、現地試運転結果を設備台帳に紐付けると、次の交換時に同じ調査を繰り返さずに済みます。
測定条件を揃えないと、合格値も比較できない
たとえばベルト張力の記録に「合格」とだけ書いても、どの測定器で、どのスパンを、機械が停止して何分後に測ったかが分からなければ再現できません。メーカーが指定する測定器の校正状態、測定位置、ベルトの新品・使用後の区別、温度条件を記録します。初期張力を設定した後に数サイクル運転して再測定するかは採用メーカーの手順に従います。汎用的な再張力調整の間隔をこの記事から決めないでください。
位置精度も同様です。無負荷で一方向だけ停止位置を測れば、ワークの質量、逆方向からの接近、連続運転後の熱、ベルトと治具のガタが隠れます。生産する複数品種から最大質量と位置決めが厳しい品種を選び、試験ごとに開始位置、速度、停止回数、測定器を揃えます。許容値を満たさなかったときは、ベルトだけでなくセンサー位置、サーボ制御、ガイド、ワーク保持部を含む機械全体の原因として切り分けます。
タイ工場では本社のFATと現地SATが別担当になることもあります。FATで使った試験治具、測定方法、荷重条件を動画と記録で残し、SAT側が再現できるようにします。現地でしか使わない洗浄剤や実ワークのばらつきがある場合は、FATで代替条件を使ったことを明示し、SATで確認する残項目に繰り越します。これなら「FATで合格済み」という言葉が、未試験の条件まで合格と誤解されるのを防げます。
FATでは、ベルトとプーリの型式・歯数・幅の一致、軸間調整の余地、張力の測定記録、芯出し、ガードの開閉、交換作業性をまず確認します。運転試験は空運転だけでなく、最大載荷、通常載荷、起動停止、想定最速、低速、逆転が仕様にある場合の逆転を含めます。合格基準は「問題なし」ではなく、許容位置ずれ、ワークの落下ゼロ、歯飛びゼロ、許容温度、異音なしなど、測れる表現にします。温度などの閾値は設備・製品ごとに合意し、この記事の数値例を転用しません。
SATでは据付後の軸芯、張力、実ワークの位置、連続運転時の状態を再確認します。現地の電源、モーター制御、室温、粉塵、洗浄、ワークばらつきがFATと異なれば、同じ結果が出るとは限りません。温度上昇や側面の粉の発生があれば、単に「慣らし」と片付けず原因を記録します。保全員が指定手順で交換でき、交換後に同じ受入値へ戻せることもSATの一部です。
原因切り分けのため、FATとSATの記録には同じ品番、初期張力の測定条件、プーリ位置、荷重パターン、稼働時間、写真を残します。ベルトの摩耗面や歯欠けの位置、フランジへの接触痕も有用です。トラブル後に型式だけ分かっても、取り付け時の張力と芯が不明では比較が難しくなります。採用メーカーの推奨する再点検時期と交換基準を、保全計画へ引き継ぎます。

よくある質問
タイミングベルトのピッチが同じなら、別メーカー品に交換できますか?
ピッチ一致だけでは判断できません。歯形、プーリの歯面形状、ベルト幅、長さの定義、張力、容量、環境適合を確認してください。互換を提案するメーカーやSIerに、既設プーリでの適合と容量計算を文書で示してもらうのが確実です。
タイミングベルトの幅は広いほど安全ですか?
広い幅は許容容量を増やせる場合がありますが、噛み合い歯数不足、過大張力、軸受荷重、プーリ径不足を解決しません。必要幅は採用する系列の容量表で計算し、標準幅で再検証します。機械の軸受とガードのスペースも含めて判断します。
搬送用タイミングベルトの費用はどう比較しますか?
ベルト単価だけでなく、プーリ、テンショナー、加工、取付、張力計測、予備品、現地供給、停止時間を同じ範囲で見積もります。公開価格からタイ現地の総費用を断定できません。ワークと工程の実条件を揃え、同じ受入基準を満たす提案どうしで比較します。
交換したのにすぐ歯飛びする場合、何を確認しますか?
新品の品番だけでなく、歯形互換、初期張力、プーリ摩耗、噛み合い歯数、軸芯、過負荷、急停止、ワーク詰まりを確認します。再発位置と発生時の負荷・停止ログを残せば、単なる消耗と設計条件の不一致を分けやすくなります。
まとめ
タイミングベルトの選定は、用途を伝動と搬送に分け、実負荷、ベルト系列とプーリ、標準長と張り代、軸受荷重、保守方法、FAT・SATの合格条件まで一続きで決める作業です。この記事の計算例は幾何学的な確認であり、容量や寿命の保証ではありません。製品の確定前には採用メーカーの最新資料で再計算し、現地の実ワークで試験してください。
タイ工場の新設・更新で、既設プーリの流用可否やRFPの比較軸がまだ定まっていない段階でも、TOMAS TECHへのお問い合わせから相談できます。装置図面、ベルト印字、ワーク条件が分かる範囲だけでも、確認すべき設計・検収項目を整理しやすくなります。