Blog

2026.08.30

再エネ電力調達2026|タイ工場のUGT・I-RECと時間別計量

再エネ電力調達2026|タイ工場のUGT・I-RECと時間別計量

再エネ電力調達をタイの工場で検討し始めると、多くの担当者が同じ場所で止まります。契約を切り替えれば電気は緑になる。しかし本社や客先から求められるのは、緑の電気を「買った」ことではなく「使った」ことの証明です。2026年のタイでは、この証明の受け皿になる制度が一気に揃いました。本記事では、UGT・I-REC・自家消費という3つの調達経路の違いと、それを証明に変えるために工場側の計量データがどう変わるのかを整理します。

タイ工場の再エネ電力調達は2026年に選択肢が増えた

制度の全体像を先に押さえる

タイの再エネ電力調達は、2022年11月7日の国家エネルギー政策委員会(NEPC)第7/2565回会合の決議を起点として、エネルギー規制委員会(ERC)が制度化を進めてきました。ERCの公式ページによれば、この枠組みはUGT1とUGT2という2つの区分で構成されています。UGT1は2568年から2569年(西暦2025年から2026年)の料金が告示済み、UGT2はERCの2569年第13回会合(2026年4月1日)の決議で承認されています。

この2つに、証書だけを単独で買うI-REC、そして自社の屋根に載せる自家消費太陽光を加えると、工場が取り得る経路は実務上3系統に整理できます。3系統は排他ではなく、組み合わせて足りない分を埋めるのが実際の姿です。

工場のエネルギーコスト全体の考え方については、電力監視システム導入2026|測るだけで電気代が下がらない理由で別途整理しています。本記事はその先、削減ではなく「電気の出所を説明する」側の話です。

再エネ電力調達2026|タイ工場のUGT・I-RECと時間別計量 - figure 1

UGT1は出所を選ばない1年契約の入口

UGT1は、発電所を指定せずに再エネ電力を購入する仕組みです。EGATが運営するUGTの公式サイトによると、供給源はEGATの水力発電所7か所で、供給可能量は年間およそ2,000GWh、証書に換算すると年間およそ200万RECに相当します。契約期間は1年で、電力の使用者であれば種別を問わず申し込めます。

料金は通常の電気料金にプレミアムを上乗せする形です。2026年サービス分については、ERCが2026年1月7日から19日にかけて意見聴取を実施し、MEA(首都圏配電公社)は2026年3月12日付の告知で、プレミアムを1単位あたり0.0375バーツとすること、そして登録受付期間を2026年3月16日から4月10日までとすることを公表しました。この告知では、供給される電力にI-REC Standardに基づく再エネ証書が付くことも明記されています。

前年比では、この0.0375バーツというプレミアムは37%の引き下げにあたるとタイのエネルギー専門メディアが報じています。年間1,200万kWhを購入する工場であれば、上乗せ額は45万バーツです。入口としては極めて安い。

一方で、UGT1の実際の消化は限定的だったとも報じられています。タイの経済紙タンセタキットは2026年4月19日付の記事で、UGT1について水力7か所から年間13億2,900万単位が供給可能であるのに対し、2025年半ば以降の利用は41社・およそ1億4,200万単位にとどまると伝えています。制度の器はあるが、まだ埋まっていないという状況です。

UGT2は出所を指定する10年契約

UGT2は、発電所を指定して再エネ電力を購入する仕組みです。UGTの公式サイトによれば、対象となるのは太陽光・風力・太陽光+蓄電池の245か所で、ポートフォリオAとBを合わせた全面稼働時の供給量は年間およそ12,000GWhとされています。契約期間は10年、対象はタイの電気料金区分でType 4(大口一般用)とType 5(特定事業用)に限られます。

料金水準について、タンセタキットは2026年4月19日付で、UGT2が固定料金方式であり、管理費として1単位あたり5サタン(0.05バーツ)が乗ることを報じています。契約期間については同紙が10年から25年という幅を示しており、UGTの公式サイトが示す10年は下限にあたります。単価そのものは、2568年から2570年に商業運転を開始する電源で構成されるポートフォリオAについて、1単位あたり4.56バーツという水準が複数のメディアで報じられました。

UGT2の実務上の意味は、価格の高さではなく契約年数にあります。10年という期間は、通常の電気料金に含まれる燃料調整費(Ft)の変動から切り離された固定単価を10年間持つということでもあり、単純な上乗せコストとしてだけ評価すると判断を誤ります。

I-RECを単独で買う経路

証書だけを別途購入する経路もあります。タイにおけるI-RECの発行主体はEGATで、国際トラッキング標準財団の認定を受けたローカルイシュアーとして、I-REC(E)コードに基づく証書を発行しています。対象となる電源は太陽光・風力・水力・バイオマス・バイオガス・地熱です。

UGTとI-REC単独購入の決定的な違いは、証書が電力量とひも付いた状態で届くかどうかです。UGTはバンドルRECと呼ばれる方式で、電力の物理的な供給と証書が一体になり、同じ電気料金請求書の上に明細として現れます。これに対して単独購入の証書は、電力の請求書とはまったく別の経路で調達され、別の台帳で管理されます。この差が、後述する突合の難易度を大きく変えます。

Direct PPAは工場の選択肢に入っていない

2024年6月25日にNEPCが承認したDirect PPAのパイロットは、しばしば「工場も電源を選べるようになる」という文脈で紹介されますが、条件を読むと対象は限定的です。長島・大野・常松法律事務所が2025年12月22日付で公開した解説によると、対象は2,000MWの枠内で、BOIの奨励認定を受けたデータセンターに限られます。加えて、建屋あたりのITベースロードが50MW以上であること、親会社の方針で100%再エネが求められていること、既存稼働中の施設ではないことといった条件が課されます。

つまり、一般の製造工場は現時点でこの枠に入れません。工場が2026年に現実に使える経路は、UGT1・UGT2・自家消費太陽光・I-REC単独購入の4つであり、そのうち電力そのものを再エネに切り替えられるのはUGTと自家消費の2つです。

「買った」だけでは証明にならない

ロケーション基準とマーケット基準は別の計算

再エネ電力調達の効果が数字として現れるのは、Scope2の算定においてです。ここで理解しておく必要があるのは、Scope2には2通りの算定方法があり、両方を報告するのが原則だという点です。

ロケーション基準は、その地域の系統全体の平均排出係数を使います。タイであればタイ温室効果ガス管理機構(TGO)が公表する係数です。この方法では、どこから電気を買おうと、使った電力量が同じなら排出量は同じになります。再エネ電力を契約しても、ロケーション基準の数字は1グラムも動きません。

マーケット基準は、契約や証書に基づく排出係数を使います。再エネ証書を持っていれば、その分の電力量に排出係数ゼロを適用できます。再エネ電力調達の効果が現れるのは、こちらだけです。

この2本立てを理解しないまま契約を切り替えると、「再エネに切り替えたのにCO2が減っていない」という報告が上がってきます。減っていないのではなく、減る側の数字を出していないだけです。Scope1とScope2の算定そのものの進め方は、CO2排出量の見える化|タイ工場のScope1・2算定と費用で扱っています。

証書は電力量とひも付いて初めて意味を持つ

マーケット基準で排出係数ゼロを主張するには、証書の枚数と、その証書を当てる電力量が対応している必要があります。I-RECは1枚が1MWhに対応します。年間600万kWhを消費する拠点で全量を証書でカバーするなら、6,000枚が要ります。

問題は、この対応関係を誰が管理するかです。工場側の消費データは通常、月次の電気料金請求書と、あるとしても構内のサブメーターの記録です。証書側は購入時期も枚数も別管理です。この2つを突き合わせる作業を、多くの拠点はいまExcelで年に1回だけ行っています。

3拠点あると按分の問題が出る

タイに複数拠点を持つ日系企業では、さらに按分の問題が乗ります。証書をグループでまとめて購入し、拠点ごとに割り付ける場合、割り付けの根拠が消費実績でなければ説明できません。

以下は本記事で使うモデルです。実在の企業の数値ではありません。

拠点年間購入電力量消費比必要なI-REC枚数
A拠点600万kWh36,000枚
B拠点400万kWh24,000枚
C拠点200万kWh12,000枚
合計1,200万kWh612,000枚

この表の消費比が、そのまま証書の割り付け比率になります。ところが実務では、3拠点のうちどれか1つで前提が崩れます。増産で消費が伸びた、サブメーターが1系統止まっていて実績が取れていない、拠点Cだけ契約種別がType 4に該当せずUGT2に入れない。いずれの場合も、割り付けは崩れます。

再エネ電力調達2026|タイ工場のUGT・I-RECと時間別計量 - figure 2

二重計上を防ぐ3つの照合

証書の世界で最も厳しく問われるのは、同じ1MWhを2社が主張していないかという点です。実務では次の3つを照合します。

第1に、発電時期と消費時期が同じ期間に収まっているか。証書には発電された期間が記録されており、報告年度をまたぐ証書は原則として当てられません。

第2に、地理的な境界が合っているか。タイの系統で発行された証書は、タイでの消費に当てるのが原則です。

第3に、証書が償却(リタイア)済みか。証書は使った時点で登録簿から償却され、二度と使えません。購入しただけで償却していない証書を報告に載せると、監査で指摘を受けます。

この3つは、いずれも「工場側が持っている消費データ」と「証書側の属性」を突き合わせないと確認できません。突合の単位が粗いほど、確認は形式的になります。

GHGプロトコルの改定が計量の粒度を決める

年単位のマッチングから時間単位のマッチングへ

ここまでの話は、現行のScope2ガイダンス(2015年版)を前提としています。この前提が、いま変わろうとしています。

GHGプロトコルの公式ブログによれば、Scope2の技術作業部会はマーケット基準の算定方法について3つの変更を提案しています。

第1が時間単位マッチング(hourly matching)です。現行では証書と消費を年間単位で突き合わせれば足りますが、改定案では1時間ごとに突き合わせることが求められます。

第2が受電可能性(deliverability)の要件です。エネルギー属性は、消費地点へ物理的に電力を届けられる系統領域から調達されている必要があります。

第3が標準供給サービス(SSS)の按分です。報告者は自身の按分相当分しか主張できず、主張されなかった属性は任意のマーケット基準の主張に回せません。

改定後のScope2標準の公表は2027年後半が見込まれ、その後、複数年をかけて段階的に適用される見通しとされています。

月次の請求書しかない工場に何が起きるか

時間単位マッチングが効いてくると、工場側の前提が根本から変わります。

年単位であれば、必要なのは「年間の消費量」というスカラー値1つです。月次の電気料金請求書を12枚足せば作れます。時間単位になると、必要なのは「各時間帯の消費量」という時系列データです。1日24点、年間8,760点。請求書からは作れません。

そして、この粒度に落とすと必ず露出するのが、太陽光由来の証書と夜間消費のミスマッチです。年単位でならせば足りていた証書が、時間帯で見ると昼は余り夜は足りないという形で分解されます。

分かりやすくするために、1日を4時間ずつ6ブロックに区切って考えてみます。太陽光の発電が乗るのは実質的に2ブロックです。3交代で24時間稼働している工場であれば、残る4ブロックの消費に対して、太陽光由来の証書は当たりません。年単位の合計では合っていたものが、ブロック単位では4つの穴として現れます。

再エネ電力調達2026|タイ工場のUGT・I-RECと時間別計量 - figure 3

何分粒度でどこまで残すか

では工場側は何をすればよいのか。答えは単純で、時間単位マッチングが適用される前に、時間単位の消費データを取り始めて残しておくことです。

タイの工場では、受電点の計量そのものは配電公社側の取引メーターが行っています。しかしそのデータは請求書の形でしか工場に返ってきません。時間単位の値を自社で持つには、受電点に自社側のメーターを置くか、既存のデマンド監視装置のデータを吸い上げる必要があります。

粒度の選び方には目安があります。タイのデマンド料金は15分の平均需要で決まるため、既にデマンド監視を入れている拠点は15分値を持っています。これがあれば、1時間値は集計で作れます。逆に1時間値しか取っていないと、15分値には戻せません。細かい方で取り、粗い方は集計で作る。これが原則です。

保存期間も決めておく必要があります。証書の報告は年次で、第三者確認や客先監査で遡られる可能性を考えると、最低でも3年、できれば5年です。15分値を5年分、3拠点合計15点(受電点3点と主要負荷12点)で保存すると、行数は15点×35,040点×5年でおよそ263万行になります。時系列データベースであれば何ということもない規模ですが、Excelでは扱えません。

計量点の設計そのものについては、エネルギー監視システムの費用と導入手順|タイ工場の電力見える化で詳しく扱っています。

費用のモデル試算

前提を明記します

以下はモデルです。実在の見積ではありません。読者の拠点で数字が変わる前提として使ってください。

前提は次のとおりです。タイに3拠点を持つ日系製造業。年間購入電力量は合計1,200万kWh(A拠点600万、B拠点400万、C拠点200万)。現行の平均電力単価を4.20バーツ/kWhとします。UGT1のプレミアムはMEAが公表した0.0375バーツ/kWh、UGT2の単価は報道ベースの4.56バーツ/kWhを使います。

調達側の3シナリオ

シナリオ初期投資年間の追加コスト契約年数出所の指定
1. UGT1で全量なし45.0万バーツ1年不可
2. UGT2で全量なし432.0万バーツ10年
3. 自家消費太陽光+UGT12,500万バーツ▲548.3万バーツ自家分のみ可

各シナリオの計算根拠を補足します。

シナリオ1は1,200万kWh×0.0375バーツで45.0万バーツ。シナリオ2は現行単価との差0.36バーツ×1,200万kWhで432.0万バーツ。シナリオ3は、A拠点の屋根に1,000kWpを設置し、タイの実発電量を1,400kWh/kWp・年と置いて年間140万kWhを自家消費、電気代削減が140万kWh×4.20バーツで588.0万バーツ、残る1,060万kWhにUGT1を当てて39.75万バーツ。差引で年548.25万バーツの便益となり、初期2,500万バーツに対する単純回収は約4.6年です。太陽光の発電量が計画どおり出ているかを確認する仕組みは、太陽光発電の監視2026|工場で発電量の低下に気づけない4つの死角で扱っています。

証明側の費用は別に乗る

ここまでは電気そのものの話です。証明を成立させるための費用は、これとは別に発生します。層に分けて積むと見落としが減ります。

内容初期年間
第1層 計量受電点3点+主要負荷12点、計15点の電力量計設置52.5万バーツ
第2層 収集ゲートウェイ3台と拠点間の通信45.0万バーツ3.0万バーツ
第3層 保存時系列データベースと5年分の保管20.0万バーツ18.0万バーツ
第4層 突合証書台帳と計量値の照合、按分ルールの実装60.0万バーツ12.0万バーツ
第5層 報告2通りの算定と第三者確認への対応35.0万バーツ
合計177.5万バーツ68.0万バーツ

シナリオ1を選んだ場合、電気そのものの追加コストは年45.0万バーツですが、証明側は初期177.5万バーツと年68.0万バーツです。証明のほうが高い。これは異常な話ではなく、UGT1のプレミアムが安く設定されているために起きる逆転です。

逆に言えば、この第1層から第3層はエネルギー監視システムの構成要素そのものであり、電気代削減やISO 50001の運用と共用できます。証書のためだけに投資する形にすると回収の説明ができませんが、既に電力の見える化を進めている拠点であれば、追加は第4層と第5層だけです。ISO 50001の枠組みで進める場合の考え方は、ISO50001エネルギー管理2026|投資回収は電力の見える化からにまとめています。

タイ拠点で実際につまずく4つの点

契約種別が分からないまま検討している

UGT2の対象はType 4とType 5です。ところが工場側の担当者に「うちの契約種別は」と聞いて即答できる拠点は多くありません。契約種別は電気料金請求書に記載されていますが、請求書は経理が処理して工場には回っていない、というのがよくある状態です。UGT2を検討するなら、最初にやるのは製品比較ではなく請求書1枚の確認です。

工業団地から受電している拠点は経路が違う

タイの日系工場の多くは工業団地内に立地しており、電力を配電公社から直接ではなく、団地の運営会社を経由して受電しているケースがあります。この場合、UGTの契約主体が誰になるのかという問題が出ます。団地側が一括して受電している構造だと、テナント側の工場が単独でUGTに申し込めないことがあります。ここは団地ごとに扱いが異なるため、制度の解説を読むだけでは判断できません。運営会社への確認が先です。

親会社の集計スケジュールと登録期間がずれる

MEAのUGT1は2026年について3月16日から4月10日という登録受付期間が設定されていました。年に一度、期間が限られています。一方、日本の親会社の予算やサステナビリティ方針の確定は多くの場合3月から4月にかけてです。本社の方針が固まるのを待つと、その年の登録期間を逃します。逆算すると、前年の第4四半期には現地で申し込みの可否を判断できる状態にしておく必要があります。

証書は買ったが誰も償却していない

購入した証書を登録簿で償却する操作は、購買部門の業務範囲から外れがちです。購入して支払いを済ませた時点で完了だと考えられ、償却されないまま年度末を迎えます。償却されていない証書は、報告に使うと二重計上のリスクを問われます。誰がいつ償却するかを、購入時にセットで決めておいてください。

導入の進め方

5つのステップに分ける

第1ステップは、報告の宛先を確定することです。本社の統合報告書なのか、客先のサプライヤー調査なのか、RE100などのイニシアチブなのかで、要求される証書の種類と粒度が変わります。宛先が決まらないまま調達を始めると、後から使えない証書を抱えます。

第2ステップは、現在の消費データの棚卸しです。受電点は何点あるか、月次の請求書以外に何が取れているか、デマンド監視装置は入っているか、その値は保存されているか。ここで15分値が既にあると分かれば、以降の工程は大幅に短くなります。

第3ステップは、調達経路の選定です。契約種別がType 4またはType 5に該当するかでUGT2の可否が決まり、屋根の耐荷重と面積で自家消費の上限が決まります。この2つは技術的な制約なので先に確定させます。

第4ステップは、突合の仕組みの構築です。計量値と証書台帳を、拠点別・期間別に照合できる形にします。ここが最も後回しにされやすく、最も監査で問われます。

第5ステップは、2通りの算定の並行運用です。ロケーション基準とマーケット基準を毎月同時に出し、差分が調達の効果として説明できる状態にします。

選定時に確認する5項目

再エネ調達を支えるシステムを選ぶとき、確認すべきは次の5点です。

計量値の取得粒度が15分以下であること。1時間固定の製品は、将来の時間単位マッチングには対応できても、タイのデマンド料金の分析には使えません。

証書台帳を消費データと同じ画面で照合できること。別システムで別々に管理すると、突合が人手のExcel作業に戻ります。

拠点別の按分ルールを設定として持てること。コードに埋め込まれていると、拠点構成が変わるたびに改修が必要になります。

ロケーション基準とマーケット基準を両方出力できること。片方しか出せない製品は、報告の最後で使えません。

過去データの遡及再計算ができること。排出係数は後から更新されます。更新後に過去年度を再計算できないと、時系列の比較が壊れます。

誰が担当するのか

この案件は、工場のIT担当だけでも、サステナビリティ担当だけでも完結しません。計量点の設置は電気保全、契約種別の確認は総務または経理、証書の購入は購買、報告は本社のサステナビリティ部門です。

現実的な進め方は、工場側で第2ステップの棚卸しを先に済ませ、「うちは15分値を持っている/持っていない」という一行を持って本社との議論に入ることです。この一行があるかどうかで、議論の長さが変わります。

よくある質問

UGT1とUGT2はどちらを選ぶべきですか

要求されている証明の水準で決まります。証書が付いていれば足りるのであればUGT1で入り、1年ごとに見直すのが低リスクです。客先や親会社から電源の種類まで指定されている場合、あるいは長期の固定単価に価値がある場合はUGT2です。契約種別がType 4またはType 5でない拠点はUGT2に入れないため、そもそも選択肢になりません。

I-RECを単独で買えば再エネ100%と言えますか

証書の量が消費量をカバーしていれば、マーケット基準のScope2としては主張できます。ただし報告先のルールを確認してください。イニシアチブによっては、証書の発行時期と消費時期の一致、発行地域の制限、電源の運転開始年など、追加の条件を課しています。証書を買った後で条件を知ると、買い直しになります。

Scope2はマーケット基準だけ報告すればよいですか

原則として両方です。ロケーション基準は系統平均の係数を使うため調達では動かず、マーケット基準は契約と証書で動きます。片方だけを出すと、削減の実態が読み取れません。本社の報告フォーマットが片方しか受け付けない場合でも、社内では両方を保持しておくべきです。

自家消費の太陽光でも証書は必要ですか

自家消費分は自社で発電して自社で使っているため、証書がなくても再エネとして扱えるのが一般的です。ただし、その発電量を系統に売っている場合や、証書を発行して第三者に売却している場合は、自社の主張には使えません。売った分は他社のものになります。発電量の実測がないと、この切り分けができません。

Direct PPAは工場でも使えるようになりますか

2026年時点のパイロットは、BOI奨励を受けた大規模データセンターに限定されています。製造業への拡大は制度設計の次段階の議論であり、第三者アクセス(TPA)の規則整備が前提となります。現時点の計画に織り込むべきものではありません。

時間単位マッチングに備えて何分値を残すべきですか

15分値です。タイのデマンド料金が15分の平均需要で決まるため、デマンド監視装置を入れていれば既に15分値が存在します。15分値があれば1時間値は集計で作れますが、逆はできません。保存期間は、第三者確認と客先監査を考慮して5年を目安にしてください。

まとめ

2026年のタイでは、再エネ電力調達の選択肢が実務レベルで揃いました。UGT1は年間およそ2,000GWhの水力由来を1年契約・プレミアム0.0375バーツ/kWhで、UGT2は太陽光と風力の245か所・年間およそ12,000GWhを10年契約で、それぞれI-REC付きで提供します。Direct PPAは当面データセンター限定であり、工場の現実解はUGTと自家消費太陽光、そして不足分のI-RECです。

しかし、調達を切り替えただけでは報告の数字は動きません。動くのはマーケット基準のScope2だけであり、その計算には証書と消費電力量の対応が要ります。さらにGHGプロトコルの改定が控えており、突き合わせの単位は年から時間へ移ります。そのとき必要になるのは新しい契約ではなく、既に取れているはずの15分値を保存し、証書台帳と照合できる形にしておくことです。

契約は数か月で変えられますが、過去の計量データは後から作れません。2027年後半に改定標準が出てから計測を始めると、比較すべき過去が空白になります。順序としては、計量が先、契約が後です。

TOMAS TECHは、PEGASUSをはじめとする生産管理・エネルギー管理システムを通じて、タイおよびASEANの日系工場で現場データの活用を支援してきました。電力の計量点をどこに置き、どの粒度で何年残すかという設計は、電気代の削減とCO2の報告の両方に効いてくる部分です。製品の比較に入る前の、いま何が取れていて何が取れていないのかという棚卸しの段階からご相談いただけます。ご相談はお問い合わせページからお気軽にどうぞ。

参考情報