MELFA FR-Q コントローラの生産終了が発表された。タイに工場を持つ日本企業にとって、最初に必要なのは「ロボットをすべて即時交換する」という判断ではない。自社設備が通知の対象型式に該当するかを確認し、受注・生産・修理の期限と、ラインを止められる時期を重ねて、更新の順序を決めることだ。三菱電機の2026年10月の技術ニュース BFP-A6079-0428E は、CR800-Q/CR860-Qを対象とするFR-Q型コントローラについて、受注受付を2027年9月末、生産を2028年3月末に終了すると案内した。修理対応は2034年9月末までを予定するが、電子部品などの調達状況によって期間内でも修理できない場合がある。別通知 BFP-A6079-0429E は、2026年11月製造品からCEマーキングを終了すると告知している。
この記事は、タイ工場の設備責任者、保全責任者、生産技術、調達、品質・安全担当が、FR-QからFR-Rへの移行案件を発注・検証できるように、対象の切り分け、リスク、見積条件、FAT・SAT、稼働後の管理を一つの計画にまとめたものだ。法令への適合判断や個別型式の互換性は、出荷先と構成を特定して製造元・専門家へ確認する必要がある。
まず結論:今回の通知はロボットコントローラのFR-Q型が対象
今回の発表はMELSEC-Qのモーションコントローラ全般の生産終了ではない。対象は産業用ロボットMELFAのFR-Q型コントローラ、具体的にはCR800-QとCR860-Qである。通知には垂直多関節のRV-FR-Q、水平多関節のRH-FRH-Q、天吊りのRH-FRHR-Qが載り、特注品や専用オプションも対象に含む。型式末尾の「-Q」だけで機械的に判定すると、周辺PLCや別製品を混同しやすい。ロボット本体の銘板、コントローラの銘板、製造番号、導入時の構成図と部品表を同時に確認したい。
| 確認対象 | 現場で集める証拠 | 更新判断への使い方 |
|---|---|---|
| ロボット本体 | RV/RHの型式、銘板写真、製造番号 | 通知の対象・代替表と一台ずつ照合 |
| コントローラ | CR800-Q/CR860-Qの型式、製造年月、ファーム情報 | 期限、保守、交換範囲を特定 |
| iQ Platform | 接続するMELSEC-Q、CPU、I/O、ネットワークの構成 | FR-R移行に伴う制御アーキテクチャ変更を評価 |
| 安全回路 | 非常停止、扉、ライトカーテン、安全PLC、外部軸 | 安全機能の再評価と試験範囲を決定 |
| アプリケーション | ロボットプログラム、工具、位置補正、ビジョン、トラッキング | 変換・再教示・再調整の工数を見積もる |
| 生産条件 | ワーク、タクト、稼働時間、停止許容、予備機 | 優先順位と切替日を決める |
「同じMELFAだからコントローラだけ差し替えれば動く」とは決めない。三菱電機のFRシリーズ構成ページではCR800-QをMELSEC Qシリーズ専用、CR800-RをMELSEC iQ-Rシリーズ専用として区別している。この違いだけでもPLC CPU、ベース、信号、通信、ソフトウェア、保守品の確認が要ることが分かる。更新対象をコントローラ単体と決める前に、セル全体の接続図を取り直す。
MELFA FR-Q コントローラ 生産終了の期限を一枚にまとめる
三菱電機のBFP-A6079-0428Eは2026年10月発行で、当時の予定として期限を示した。通知は法規・規格の移行日程により受注・生産日程を改定する可能性があり、変更時は別途案内すると注記する。したがって、購買稟議を出す時点と発注直前に最新版を再確認する。
| マイルストーン | メーカー通知の内容 | タイ工場の実務上の意味 |
|---|---|---|
| 2026年11月製造品から | FR-Q対象製品のCEマーキング終了 | EU向け設備や輸出案件は型式と製造時期を調達前に確認 |
| 2027年1月20日以降 | メーカーは対象製品をEU市場に上市できないと説明 | EU案件の扱いをメーカー・法務・顧客要求に照らして個別確認 |
| 2027年9月末 | FR-Q型の受注受付終了予定 | 最終注文の余裕を見て意思決定・納期確認を前倒し |
| 2028年3月末 | FR-Q型の生産終了予定 | 予備機だけに頼る運用期間を見積もる |
| 2034年9月末 | 修理対応終了予定 | 部品事情による前倒し不能リスクを計画に織り込む |
受注受付終了と生産終了は別日である。修理対応期限は「必ず修理できる」という保証日ではない。通知は電子部品その他の入手可能性によって期間内でも修理できない場合があると明記する。長期稼働ラインでは「2034年まで待てる」と読まず、故障率、代替部品、海外からの輸送日数、停止損失、更新工事のリードタイムを加味する。反対に、稼働率が低く代替ラインがある設備まで同じ日に更新する必要もない。リスクと工期で順番をつけるのが現実的だ。
CEマーキングの通知をタイ国内の禁止と読み替えない
BFP-A6079-0429Eは、FR-Q対象製品のCEマーキングを2026年11月製造品から終了し、2027年1月20日以降は対象製品をEU市場に上市できないと説明している。通知が挙げる背景はEU機械規則、産業用ロボット安全規格、EUサイバーレジリエンス法への継続適合の難しさである。一方、この通知だけからタイ国内で既設機の使用が一律禁止されるとは導けない。EUへの輸出設備、EUの取引先向けライン、将来EUへ移設するセルについては、納入品の製造時期、宣言書、最終機械の責任分界を含めて確認する。タイ国内の法令と顧客契約も別に評価する。この記事は法的適合性の確定判断を代行しない。
CR800-Q 更新とCR860-Q 更新は型式表を別々に見る
通知の代替表は「FR-R型コントローラ」を提示し、CR800とCR860を分けて対象型式を列挙する。CR800側にはRV-2FR-Q、RV-4FR-Q、RV-7FR-Q、RV-13FR-Q、RV-20FR-Qと、RH-3/6/12/20FRH-Q、RH-3FRHR-Qなどがあり、各モデルに対応する-R型が示される。CR860側にはRV-35FR-Q、RV-50FR-Q、RV-80FR-Qと、それぞれの-R型が載る。表は代替の候補を示すもので、設置済みセルの機械・電気・ソフト・安全が無変更で動くという保証ではない。発注前には本体型式、可搬重量、リーチ、据付姿勢、工具・外部軸・オプション、設置場所をメーカーと照合する。
| 現行構成の例 | 通知の代替候補の例 | 自動的に互換としない項目 |
|---|---|---|
| RV-4FR-Q系+CR800-Q | RV-4FR-R系 | PLC連携、プログラム、配線、教示点、安全 |
| RH-6FRH-Q系+CR800-Q | RH-6FRH-R系 | SCARA工具、カメラ、搬送同期、外部I/O |
| RH-3FRHR-Q系+CR800-Q | RH-3FRHR-R系 | 天吊り取付、干渉、ケーブルルート |
| RV-50FR-Q系+CR860-Q | RV-50FR-R系 | 盤寸法、電源、重量物安全、保全機材 |
この表は通知の型式対応を簡略化した説明用の例であり、個別型式の正式選定表ではない。特注品、専用オプション、既設改造を加えた構成は、銘板番号をメーカーへ伝えて部品表単位で確認する。メーカーのFRシリーズ取扱説明書一覧にはコントローラ設定・保守、安全、iQ Platform連携などの資料入口がある。採用候補の最新版マニュアルと図面を購買仕様に添付したい。

産業用ロボット コントローラ 更新の前に、接続点を数える
既設セルを単一機器の置換として見積もると、稼働直前にI/Oや安全回路の追加工事が発覚しやすい。ロボットはPLCだけでなく、搬送、ビジョン、力覚、溶接電源、グリッパー、MES、トレーサビリティ、保全端末と接続する。関係者が異なる装置では、配線図の現物との不一致が最大のリスクになり得る。調査は「何台あるか」ではなく「各セルで何と何が、どの条件で、どちらから指令するか」を記録する。
| 接続点 | 現状調査で記録する値 | 移行時の受入試験 |
|---|---|---|
| 上位PLC | CPU、信号表、レジスタ、ハンドシェイク、タイムアウト | 起動・停止・異常復帰・二重指令を再現 |
| 安全 | 停止カテゴリ、安全入力、扉、ライトカーテン、再起動条件 | 危険側故障を含む安全妥当性確認 |
| ロボット動作 | プログラム版、教示点、速度、干渉領域、復帰位置 | ワーク全種・全姿勢で品質とタクトを測定 |
| 周辺機器 | カメラ、工具、外部軸、溶接機、搬送、治具 | 実ワークで同時動作とエラー処理を確認 |
| データ | 品種切替、ロット、実績、アラーム、時刻 | 上位データとの一件単位照合 |
| 保全 | バックアップ手順、交換部品、操作端末、権限 | 復元試験と保全員の復旧訓練 |
たとえばQシリーズPLCのラックに依存する構成では、FR-R側のiQ-R専用コントローラを選ぶだけで済むか、PLC側も更新するか、あるいは連携方法を変更するかを決める必要がある。これは設計案件であり、カタログ上の型式対応だけで決定しない。制御盤内の発熱・空間、電源、ケーブル長、接地、ネットワーク負荷、安全PLCとの分界も同時に調べる。ロボット本体を残せるか、ツールを改造するかは現物とメーカー回答を根拠に決める。
既設ロボットのバックアップは「ファイルがある」だけでは足りない
バックアップはプログラム、パラメータ、座標系、ツール、教示点、I/O割付、ユーザー権限、ネットワーク設定、ビジョン校正値、オプション構成を含めて一覧化する。取得日時と装置番号を記録し、復元先の条件を確認する。旧版ファイルが新コントローラでそのまま読み込めるかはモデル・版・オプション次第なので、メーカーやSIの変換手順を確認する。オフラインでファイルを読めても、実ワークで姿勢・干渉・品質が合うとは限らない。FAT前に変換可否を試し、再教示が必要な点数と時間を見積に反映させる。
タイ工場での更新優先順位:期限だけでなく停止損失で決める
全ラインを一斉更新すると停止時間と保全要員が集中する。優先順位は、規制・顧客契約、故障影響、部品調達、工事難度を掛け合わせて決める。EU向け供給に使う設備は今回のCE通知を早く確認すべきだが、それだけで既設セルのタイ国内使用可否を断定できない。停止一時間あたりの損失は生産品種やバッファ量で違うため、経理・生産管理が値を出す。
| 評価軸 | 高優先の例 | 必要な根拠 |
|---|---|---|
| 出荷・契約 | EU向け新規設備への組込み、顧客指定期限 | 契約、仕向地、メーカー回答 |
| 生産停止影響 | 単一セル、代替ラインなし、高稼働 | OEE、停止履歴、バッファ量 |
| 故障と保守 | 警報増加、予備機なし、修理見積長期化 | アラーム履歴、保全記録、在庫 |
| 変更範囲 | Q系PLCとの密結合、特殊工具、安全改造 | 回路図、I/O表、ソフト一覧 |
| 実行機会 | 定期停止、モデルチェンジ、治具更新 | 生産計画、投資計画 |
たとえば同じ型式の十台でも、ボトルネック工程に一台だけある装置と、冗長な搬送工程にある装置では更新時期を変えられる。優先度「高」を選んだ理由と更新前の暫定策も併記する。予備品を買う場合は在庫を残したまま将来の互換・保管・寿命を過大評価しない。予備品調達は移行を遅らせる根拠ではなく、移行までの停止リスクを下げる措置として扱う。
RFPに入れるべき仕様:FR-R型式だけを書かない
見積依頼書に「CR800-Qを更新」とだけ書くと、各社の見積範囲が揃わない。最低限、対象セルの現状、目標、停止枠、受入基準、納品物を明記する。現状図面が欠ける場合は、調査フェーズを分けて成果物を固定する。固定価格で全リスクを転嫁しようとすると、実機調査不足が後で変更契約になる。発注者側は現場立会い、プログラムの版確定、実ワーク提供、切替判定者の確保を担う。
| RFP項目 | 質問・指定の例 | 回答に欲しい証拠 |
|---|---|---|
| 型式適合 | 現行の本体・CR800-Q/CR860-Qと提案FR-Rの対応根拠は何か | メーカー回答、型式表、例外リスト |
| 機器境界 | ロボット本体、制御盤、PLC、ネットワーク、安全をどこまで更新するか | 現旧・更新後の構成図と部品表 |
| プログラム | 変換、再教示、オプション、版差異をどう評価するか | 変換試験、工数見積、未対応機能一覧 |
| 生産条件 | 何をもって同等性能とするか | 品種別タクト、歩留まり、位置精度の計測計画 |
| 安全 | リスクアセスメントと妥当性確認の責任者は誰か | 安全機能表、試験手順、署名者 |
| 切替 | 最大停止時間、戻し条件、復旧手順は何か | 時間割、バックアップ、ロールバック手順 |
| 保守 | タイ国内のサポート、予備品、教育の範囲は何か | 対応時間、在庫・トレーニング計画 |
見積を比較するときは本体価格だけでなく、設計、ソフト変換、配線、盤改造、安全試験、FAT、輸送・関税、SAT、現場立上げ、保全教育、予備品、停止損失まで分ける。タイバーツ建て・円建ての為替や長納期部品の条件も確認する。受注受付期限が近づくほど調達条件が変わる可能性があるため、見積の有効期限とメーカー発注の最終日を取り違えない。

FATとSATを分け、プラグアンドプレイを前提にしない
FAT(工場受入試験)は出荷前に制御と安全の代表シナリオを確認する。SAT(現地受入試験)はタイの実ラインで、実ワーク・実搬送・実通信・実オペレータを使って確認する。FATに合格しても据付誤差、ケーブル、温度、治具、ワークばらつき、PLC信号タイミングが現地で変わる。受入条件を「動いた」で終えず、ログと測定値を残す。
| テスト | FATで確認すること | SATで確認すること | 合否の証拠 |
|---|---|---|---|
| 基本動作 | 全軸、原点、手動・自動、モード切替 | 設置状態での干渉と可動範囲 | 動画、位置・速度記録 |
| PLC連携 | 指令・応答、品種選択、タイムアウト | 上位ラインとの連続運転 | I/Oトレース、時刻付きログ |
| 異常 | 停電、通信断、センサ故障、途中停止 | 実際の復旧動線と作業者の手順 | 障害票、復旧時間 |
| 安全 | 非常停止、扉、ライトカーテン、再起動 | 現地のガード・動線・周辺機械との連動 | 妥当性確認記録 |
| 品質 | 代表ワークの把持・加工・搬送 | 全品種の歩留まり、傷、位置、タクト | 計測表、品質承認 |
| データ | 実績・アラームの出力 | MESなどへの連携・追跡 | 一件単位の照合表 |
安全については、旧設備が動いていたから新構成も安全と判断しない。制御の変更に伴い停止距離、再起動インターロック、速度制限、エリアセンサ、安全PLC、作業者の立入動線を再評価する。試験の方法と責任者は設備のリスクアセスメントに基づいて決める。三菱電機のFRシリーズ資料一覧には安全マニュアルとコントローラの設定・保守マニュアルが掲載されている。採用する型式の版に合う資料を受入基準の添付文書にする。
切替当日のGo/No-Goと復旧線を決める
切替日を決める前に、戻し可能な時刻を決める。たとえば土曜の停止枠で電気工事、ソフト投入、原点・安全、実ワーク、連続運転までを終え、日曜の所定時刻までに合格できなければ旧構成へ戻す。実際にどこまで戻せるかは、盤と配線の改造範囲次第だ。旧設備を撤去・配線変更した後に「戻す」と書いても工程上不可能なら、予備盤、並行配線、または失敗時の代替生産手段を用意する。
| 判定点 | Go条件の例 | No-Goまたは復旧条件の例 |
|---|---|---|
| 設備 | 全軸・工具・外部軸が指定範囲で稼働 | 位置ずれ、干渉、未解決の重要警報 |
| 安全 | 重要安全機能の妥当性確認が完了 | 非常停止・扉・再起動条件に未解決項目 |
| 生産 | 代表品種でタクト・品質・歩留まりが合格 | 重要品種を試せない、品質逸脱 |
| 接続 | PLC、MES、周辺機器と再起動・異常復帰を確認 | 信号欠落、実績欠損、手作業代替不能 |
| 人員 | 保全・生産・品質の署名者が揃う | 夜間の復旧担当不在、教育未了 |
| 時間 | 残り停止時間に復旧余裕がある | 戻しに要る時間を下回る |
切替判定には製造、保全、安全、品質、IT/OT、SI、メーカー窓口が参加し、誰が停止を宣言できるかを事前に決める。朝の稼働を守るため、合否を曖昧にしたまま夜を越さない。Go後は一週間程度を監視期間として、警報、タクト、品質、実績欠損、作業者の手動介入を毎シフト記録する。期間はラインの頻度と品種切替回数で調整する。

台帳・予備品・変更管理を一つの運用にする
更新プロジェクトを一回限りの設備工事として終えると、次に故障したときの復旧速度は上がらない。まず各セルに固有IDを付け、ロボット本体、コントローラ、PLC、安全機器、工具、ビジョン、周辺装置の型式・製造番号・ソフト版を結び付ける。台帳の「現行」と「計画」を分け、現行は現物確認日、計画は見積・承認の状態を持たせる。これにより旧FR-Qが残る場所、FR-Rへの切替完了、予備品の割当て、メーカー確認待ちの例外を同じ画面で追える。図面と実物の食い違いは更新工事の前に是正するか、差異として承認し、SATでその差異を確認する。
予備品は部品番号と数量だけで管理しない。保管場所、購入日、対象装置、ファームウェア・パラメータの状態、使用可能性の確認日、交換後の復元手順、タイ国内のサポート窓口を記録する。FR-Qの修理が2034年9月末まで予定されていても、部品の入手可能性に依存するため、故障時に「まず修理を依頼し、不可なら在庫を付け、最後に更新する」といった順番だけでは停止が長引く。重要セルについては代替生産、予備機交換、計画更新のどれを何時間以内に選ぶかを先に定める。保管中の予備機を毎年動作確認するかは、メーカー推奨条件と現場のリスクに合わせて決め、確認の記録を残す。
ソフト変更は設備ごとの版管理を行う。FAT合格時のプログラム、パラメータ、I/O表と、SAT合格時の同じ組を区別して保管し、変更者、変更理由、検証結果、承認者を紐づける。特に「SAT中に一点だけ教示を修正した」「現場でタイムアウト値を変えた」変更は、次のセルへ横展開するときの誤差要因になる。追加変更が安全機能やワーク干渉に触れる場合は、該当試験をやり直す条件をあらかじめ決める。バックアップには復元テストの結果も付け、単なる保存済みファイルと復旧可能な構成を区別する。
| 管理する記録 | 最低限残す内容 | 次の判断に使う場面 |
|---|---|---|
| 設備台帳 | セルID、本体・コントローラ型式、製造番号、版、接続、現物確認日 | 対象判定と工事範囲の決定 |
| 予備品台帳 | 適合機種、保管条件、設定状態、確認日、割当セル | 故障時の交換判断 |
| 変更履歴 | 修正ファイル、理由、実施者、承認者、再試験範囲 | 不具合の原因追跡と横展開 |
| 受入証跡 | FAT・SATの測定値、未解決項目、署名、復旧試験 | Go判定と保証条件の確認 |
この台帳は、保全部門だけが見られる閉じた表にしない。生産計画には停止枠と代替ライン、調達には発注期限と予備品、品質には品種別の合格条件、安全担当には変更後の妥当性確認が必要である。誰がどの列を更新するかを決め、月次の設備会議で期限と例外を見直す。発注を急ぐほど、未確認の項目を「問題なし」と埋めるより、「未確認・担当者・回答期限」として残すほうが意思決定を誤らない。
90日を目安にした実行計画
以下の90日は全工場共通の法定期限ではなく、複数セルの調査・試験・初回切替をまとめるための計画例である。大規模ラインや特殊用途は長くなる。注文期限が2027年9月末予定だからといって、設計をその直前に始めると現物調査、メーカー回答、部品、工事枠が間に合わない。逆に事実確認前に全台を先行発注すると、余計な機器や設計変更が生じる。
| 期間例 | 実施すること | 判断に使う成果物 |
|---|---|---|
| 1〜30日 | 全台棚卸し、対象型式照合、EU向け案件確認、接続・安全・ソフト現状調査 | 型式台帳、構成図、リスク順位、未解決事項 |
| 31〜60日 | メーカー適合確認、RFP発行、候補案比較、変換試験、FAT計画 | 対応表、見積比較、試験手順、停止枠案 |
| 61〜90日 | 初回セルFAT、現地工事、SAT、切替リハーサル、Go判定 | 受入記録、復旧手順、教育・保全引継ぎ |
複数セルなら最初の一台を代表機に選ぶ。特殊改造が少ない機種だけでなく、PLC・安全・外部機器との接続が典型的なものを選ぶと横展開しやすい。初回で分かった配線差異、変換不具合、タクト差を標準設計と試験表へ戻し、二台目以降の見積と日程に反映する。初回が上手くいっても全セル一律に同じ停止時間を当てず、品種や周辺機器の違いを表に残す。
既設設備の更新を関連テーマと分けて考える
ロボット選定を本体の可搬重量やリーチから検討する場合は、産業用ロボットの種類と選定を参照できる。本稿はFR-Q型の生産終了に伴う既設コントローラ更新を扱い、別通知に基づくMELSEC-Qモーション機器の更新とは対象が違う。セルの安全機能を改めて設計する場合は、安全PLCの妥当性確認も併せて確認したい。ロボットの型式選定、安全設計、コントローラ移行は相互に関係するが、各々の責任者・図面・試験を明確にして進める。
よくある質問:MELFA FR-Q コントローラ 生産終了とFR-R移行
CR800-QとCR860-Qはいつまで注文できますか?
三菱電機の2026年10月付BFP-A6079-0428Eでは、FR-Q型の受注受付終了予定は2027年9月末、生産終了予定は2028年3月末である。通知は法規・規格移行の日程に応じた変更可能性を記す。実際の最終発注日、仕様、納期は販売窓口で最新版を確認する。
修理対応が2034年9月末までなら更新は先送りできますか?
一律には言えない。通知は修理対応期限を2034年9月末とする一方、電子部品などの入手状況次第で期間内でも修理できない場合があると明記する。停止損失、予備機、保全要員、更新時の停止枠を含めて判断する。
FR-Rへはコントローラだけ交換すれば動きますか?
通知の代替型式表は更新候補を示すが、プラグアンドプレイを保証しない。CR800-QはMELSEC Qシリーズ専用、CR800-RはiQ-R専用として構成が区別されている。PLC連携、配線、プログラム、教示、安全機能、オプションを現物で確認し、FATとSATで合否を決める。
CEマーキング終了はタイ工場の既設設備にどう影響しますか?
メーカー通知は2026年11月製造品からのCEマーキング終了と、2027年1月20日以降のEU市場への上市不可を説明する。これはタイ国内の既設機を直ちに使用禁止にするという意味ではない。EU向け設備・契約・輸出・将来移設を含む案件では、製造元と専門家へ個別に確認する。
MELSEC-Qモーションコントローラの生産終了と同じ話ですか?
違う。この記事の対象は産業用ロボットMELFAのFR-Q型、CR800-Q/CR860-Qである。MELSEC-Qモーション機器は別の製品・通知・型式表に基づいて評価する。同じ盤内に共存する場合でも、それぞれを台帳で分けて管理する。
見積依頼では何を提出すれば比較可能ですか?
本体とコントローラの銘板、ソフト・オプション一覧、PLC・安全・周辺I/O図、実ワークと品種、タクト・品質の実績、停止可能時間を揃える。提案側には型式適合の根拠、更新境界、変換・教示、安全、FAT・SAT、復旧、タイ国内保守の範囲を同じ表で回答してもらう。
まとめ
FR-Q型の更新は「2034年まで修理できるから様子見」か「全台すぐ交換」かの二択ではない。2027年9月末の受注受付、2028年3月末の生産、2034年9月末の修理対応という通知上の予定と、部品依存の但し書き、CEマーキングの別通知を押さえたうえで、型式・接続・安全・生産影響をセルごとに評価する。FR-Rはメーカー提示の代替候補だが、実設備の互換性は調査と試験で証明する。最初の一台でRFP、FAT、SAT、切替判定の型を作り、横展開するのが失敗を抑える進め方である。
タイ工場でCR800-Q/CR860-Qの台帳整理やFR-R移行の見積条件を詰める段階なら、TOMAS TECHへご相談ください。型式・制御図・停止可能時間が分かる範囲から、調査項目と受入試験の進め方を一緒に整理できます。
参考資料
- 三菱電機、BFP-A6079-0428E:MELFA FR-Q型コントローラ生産終了通知、2026年10月。
- 三菱電機、BFP-A6079-0429E:MELFA FR-Q型コントローラCEマーキング終了通知、2026年10月。
- 三菱電機、MELFA RV-FRシリーズのシステム構成。
- 三菱電機、MELFA FRシリーズ取扱説明書一覧。
- 三菱電機、CR800-Q仕様。
- 欧州連合、Machinery safety requirements(現行制度の要約)。