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2026.10.11

製造業の材料使用期限管理システム導入|FEFO・隔離・受入試験

製造業の材料使用期限管理システム導入|FEFO・隔離・受入試験

製造業で材料使用期限管理システムを導入する際、期限日の登録と期限順の出庫だけを要件にすると、受入検査中のロット、開封後の短い期限、製造指図への払出、未使用材料の返却で事故が残る。必要なのは「どの容器を、どの条件で、いつまで、どの工程へ使えるか」をロットと容器の状態で決め、ERP・WMS・MESの判断を一致させる仕組みだ。本稿ではタイの工場を想定し、FEFO、隔離、RFP、FAT・SATを一連の業務として設計する。

材料使用期限管理システムの導入範囲を先に決める

対象は食品・医薬品だけではない。接着剤、塗料、樹脂、ゴム、化学薬品、はんだペースト、フィルム、電子部品の一部など、保管条件や時間で性能が変わる材料がある。ただし「何日使えるか」「期限切れ品をどう扱うか」は材料仕様、顧客要求、製品リスク、適用規制で異なる。ERPの標準フィールドに日付があることを理由に、全材料へ同じ判定式を当てない。

導入の最初に材料群を四つに分けると議論が速い。①メーカーが未開封の使用期限を指定する材料、②開封・解凍・調合後に別の使用可能時間が始まる材料、③再検査日または再評価日を持つ材料、④期限がないが先入れ先出しやロット追跡が必要な材料だ。期限日と再検査日は同義ではない。再検査日が来ても、承認された試験と品質判定なしに自動延長してはならない。一方、期限がない材料へ架空の期限日を入れると、誤った廃棄や出庫拒否が起こる。

さらに「在庫数量がある」「倉庫でピッキングできる」「品質が使用を許可した」「その製造指図に割り当てられる」を別々の問いにする。数量が正しくても使用可否が誤れば品質事故になる。品質状態が正しくても計画と払出が連動しなければ欠品や直前の手戻りが起こる。システム導入の目的は、賞味期限の一覧表を作ることではなく、材料投入前の判断を再現可能にすることだ。

FIFOとFEFOの違いを現場ルールに翻訳する

FIFOは入庫の古い順、FEFOは期限の早い順に使う。期限付き材料でFEFOを採用する場合も「最も早く切れるロットを無条件に出す」という意味ではない。候補は、品質リリース済みで、指定温度など保管条件を満たし、製造完了または顧客への出荷まで必要な残存期間があり、対象製品の仕様に適合し、引当可能な数量があるロットに限る。その候補の中から期限の早いものを優先する。

WHOの医薬品向け保管指針は適切な在庫回転としてFEFOを示し、拒否された材料を隔離管理して使用を防ぐよう求める。これは医薬品の要求を他業界へそのまま法的義務として移す根拠ではないが、「期限順」と「品質状態」を同時に判定する設計の参考になる。タイ工場では業界別の要求、顧客仕様、会社の品質手順を別途確認する。

例として、同じ品目にAロット(期限10月20日、品質保留)、Bロット(期限10月25日、使用可能)、Cロット(期限11月5日、使用可能)がある。FEFOの最初の候補はBだ。Aは期限が早くても隔離中なので選ばない。Bを使う製品の最終工程が10月27日で、投入時点だけでなく最終工程まで有効である契約なら、Bも候補から外れる。Cを使うか、工程・材料を見直す。残存期間の基準時点は「今日」だけではなく、受入、払出、投入、製造完了、出荷など契約で指定した時点に置く。

SAPのヘルプでは、入庫時に残存有効期間を品目マスタまたは購買文書の要求と照合し、設定により警告またはエラーにできる。バッチの期限に沿った出庫時のバッチ選定も説明されている。標準機能がある場合でも、警告を誰が上書きできるか、WMSがどの状態を受け取るか、MESで再チェックするかは個別設計が必要だ。

ロット番号と容器IDを分けて管理する

サプライヤーのロット番号は品質由来を表す。同じロットが複数の缶、袋、ドラム、リールに分かれて届くと、開封日時、残量、保管場所、逸脱の履歴は容器ごとに異なる。そこでロットと容器を一対多に分け、製造投入の最小トレース単位を容器IDにする。容器を小分けするときは親子関係を作り、元ロット、移し替え日時、作業者、数量、ラベル発行、開封後期限の継承規則を残す。

GS1のApplication Identifierでは、(01)がGTIN、(10)がバッチ/ロット、(17)が使用期限を示す。GS1準拠のバーコードを使う場合は、これらを読み取ってサプライヤー表記とシステム項目へ対応付けられる。一方、現場の容器ID、開封状態、保管場所、品質承認は別途管理が必要だ。バーコードが読めることと、その容器を使ってよいことは同じではない。未読取りや印字不良を手入力で救済する場合も、原ラベル写真と承認ログを残す。

製造業の材料使用期限管理システム導入|FEFO・隔離・受入試験 - figure 1

データの正本を決める。品目コードと基本の保存条件はERPまたはPLM、サプライヤーロットとメーカー期限は受入時に照合されたロット台帳、容器の所在と残量はWMS、品質状態と再検査結果はQMSまたは品質モジュール、実際の投入はMESが正本、という分担が一例だ。複数システムで同じ日付を編集できると、期限の上書き競合が起こる。訂正は「旧値・新値・根拠文書・承認者・時刻」を持つイベントで行い、過去の製造記録の値を黙って書き換えない。

受入時に残存期間と品質状態を確認する

受入画面には品目、供給者、発注番号、メーカーのロット、製造日、期限日、受入日、容器数、数量、保存温度、輸送中の逸脱有無を集める。ラベルの年月日とシステムの日付形式を統一し、時刻を使う材料はタイムゾーンも持つ。月のみ記された期限を勝手に月初または月末へ変換しない。GS1 AI (17)には日付の扱いに仕様があるが、メーカー表示や契約上の意味を確認してから業務ルールに落とす。

残存期間の受入基準は、材料ごとに「期限日-受入日」が最低何日かで定義する。さらにサプライヤーとの購買条件と生産計画の所要日数を区別する。例えば発注条件の最低残存期間を満たしても、次の生産まで保管する予定が長ければ使い切れない。逆に、短い残存期間でも品質責任者の承認と限定された製造指図があれば使用できる場合がある。その例外を一般在庫への無制限解放として実装しない。

受入直後は「物理的に受け取った」と「品質が使用可能と判定した」を分ける。ラベル、外観、数量、証明書、温度ログ、サンプリング・検査がそろうまで、隔離状態に置く。隔離は床の専用区画だけでなく、WMSの引当不可とMESの投入不可まで一貫させる。通信が切れても後段の端末が前日のリリース状態を使わないよう、品質状態の有効時刻と版を伝える。

EU GMP Chapter 5は、原材料の表示に品質状態(隔離、試験中、リリース、拒否など)と、必要に応じ期限または再検査日を含める考え方を示す。規制の直接適用は製品・市場ごとに判断するが、状態と日付を別フィールドで管理する設計は他業界でも有用だ。状態を「在庫あり/なし」だけに押し込むと、品質判定前の材料が自動引当される。

保管中の期限と環境逸脱を同時に扱う

期限日だけが有効でも、指定温度、湿度、遮光、窒素封入などの保管条件を外れた容器は使用可能とは限らない。温度ロガーの測定値は、対象保管場所、期間、機器の校正状態、欠測、ドア開放などのイベントと結び付ける。逸脱が起きたら全在庫を機械的に廃棄するのではなく、影響するロット・容器・時間帯を特定し、品質部門が保持または解除を決める。影響評価が終わるまでは隔離する。

開封後の期限はメーカーの未開封期限より短くなることが多い。システムは「メーカー期限」と「開封後期限」を両方保持し、実際に使える上限を適用ルールで決める。解凍後、混合後、希釈後、乾燥炉から取り出した後など、時間計測が始まるイベントも材料群で違う。端末には「開封」ボタンだけでなく、開始時刻を記録する具体的な作業イベントを表示する。作業を忘れて後から入力する場合は事後入力と分かる記録にし、時計を遡らせて安全余裕を作らない。

保管場所間を移動する際には、移動元と移動先の条件、輸送時間、仮置き時間、封緘状態を記録する。冷蔵庫からラインへ持ち出し、使わず戻した材料は、単純な「返却」で初期状態へ戻らない。累積の室温曝露、封開け回数、残量などで使用可否が変わる。ルールが複雑なら、最初の導入対象を代表的な材料群に絞って例外処理を確かめる方が、全材料を一斉に取り込むより安全だ。

ERP・WMS・MESで払出と返却の責任を分ける

ERPは購買・品目マスタ・在庫評価と製造指図、WMSは容器・棚番・ピッキング・移動、MESは工程で実際に使用した容器と数量、QMSは品質判定を担う設計が分かりやすい。製品構成により役割を一つの製品へ統合してもよいが、どのイベントが正本かは一つにする。入庫、品質解除、引当、ピック、ライン受渡し、投入、残量返却、廃棄を同じ「出庫」イベントにまとめると追跡できない。

WMSがFEFOで提案した容器をMESで投入する直前に、MESは容器IDを再読取りする。提案後に期限切れ、品質保留、別指図への引当、温度逸脱が起こり得るためだ。MESは読取時点の品質状態、期限、対象製品との適合、必要残存期間、数量、指図版を検証する。ネットワーク停止中のオフライン運用を認める場合は、事前に許可した短い有効期間のリストと例外承認、後同期時の衝突処理を決める。期限判定を単に端末画面の色で示すだけでは、作業者が誤容器を投入するのを止められない。

返却は未使用品と開封済み品を区別する。未使用でも、ラインに置かれた時間や保管条件で状態が変わる場合がある。返却時に容器の残量を計量し、MESの消費実績とWMSの容器残量を照合する。差があるときはロットを自動的に帳尻合わせしない。投入済み数量、廃棄、サンプル、洗浄ロス、計量誤差を分類し、権限者が修正する。

既存の在庫引当管理システムの記事は注文や製造指図への数量確約を扱う。本稿の使用期限管理では、その引当候補から品質保留・期限条件不適合の容器を除外する。MSD(吸湿性部品)の管理記事では開封後のフロアライフと曝露時間に特有の運用を解説している。材料ごとの時間ルールを同じデータモデルに押し込む前に、これらの違いを確認したい。

製造業の材料使用期限管理システム導入|FEFO・隔離・受入試験 - figure 2

例外処理を業務フローとして設計する

実運用で事故が起こるのは通常出庫より例外だ。期限が近い、メーカーラベルが読めない、同じ供給者ロットでも一部容器だけ温度逸脱した、開封日時が不明、品質試験の結果待ち、ラインに持ち込んだが未使用、MESとWMSの残量が合わない、といったケースをRFP時点で列挙する。各例外に、停止点、隔離範囲、承認者、必要証拠、再開条件、監査ログを付ける。

期限の「延長」は特に慎重に扱う。再試験・再評価が許される材料であっても、検査法、サンプル代表性、保管履歴、許可権限、適用できる製品・用途を品質手順に従って判断する。システム上は元のメーカー期限を消さず、承認済みの再評価結果と新しい使用条件を別版で残す。規制対象材料では当該法令・承認内容を確認する。現場の便宜のためだけに期限日を書き換える機能は設けない。

品質保留の解除は、担当者が画面でステータスを押す行為だけでは完結しない。対象容器、試験結果、逸脱番号、製品限定の有無、解除時刻を結び付け、WMSとMESへ配信する。配信失敗の間は「解放済み」と「現場で使える」が食い違うので、連携の再送・冪等キー・確認応答を設計する。逆に緊急保留は先に使用を止め、影響する引当・ピック・投入待ちの指図を示す必要がある。

RFPには画面一覧ではなく判定と証跡を書く

データモデルの最小単位をそろえる

RFPの添付資料には、品目、サプライヤー、サプライヤーロット、自社ロット、容器、ロケーション、品質判定、期限イベント、製造指図、投入実績の関係図を入れる。たとえば一つのサプライヤーロットが五つの缶で届き、二つの缶だけ開封され、そのうち一つがラインから戻るケースを図で示す。入庫伝票の一行を最小単位にすると、同じ行に属する缶の開封後期限や温度逸脱を分けられない。反対に容器ごとの履歴しか残さないと、同じロットに対する品質判定や回収範囲を見失う。

期限のフィールドは、元情報の出典を持たせる。メーカー表示の期限、品目マスタから算出した期限、社内の開封後ルールから計算した期限、品質部門が承認した再評価後の条件は異なる。画面で一つの「有効期限」として見せるときも、どの値が判定を支配したかを説明できるようにする。日付だけなら日末まで使用可能なのか、時刻指定ならどの時間帯かもルールに書く。タイの工場と国外のサプライヤーで日付がずれるときは、原ラベルの日付を保持し、システム判定で使う時刻のタイムゾーンを明記する。

品質状態は、受入待ち、試験中、使用可能、条件付き使用、保留、拒否、期限切れ、廃棄待ちなどを整理する。ただし状態数を増やすほど現場操作が複雑になる。業務上の停止条件が同じなら状態を統合し、許可範囲が異なるときだけ分ける。条件付き使用は「特定の製造指図・製品・数量・期限まで」という制約を別データで保持する。単なる緑色のリリース表示にしてしまうと、限定承認が次の指図へ流用される。

サプライヤーと社内の役割を契約に落とす

供給者にはロット番号、期限の表示形式、製造日または有効期間、保存・輸送条件、証明書、温度記録、ラベルの機械可読性について、必要なデータを指定する。すべての材料にGS1形式のラベルを強制する必要はないが、何をスキャンし、どの値を人が照合するかを決める。ラベルが貼り替えられた場合は、元ラベルとの対応と貼替者を残す。供給者が期限を訂正するなら、口頭連絡ではなく訂正証明書と影響ロットを結び付ける。

社内では、購買が契約上の最低残存期間を管理し、倉庫が受入・保管・移動・ピックを記録し、品質が保留・解除を承認し、生産が投入を検証し、ITが連携と権限を維持する。誰でも期限を変更できる運用では監査ログがあっても統制として弱い。役割分離、代行承認、夜勤や休日のエスカレーションを試験シナリオへ入れる。承認者が不在なら使用を止めるのか、承認済みの代替手順を使うのかを事前に決める。

生産計画と廃棄を結び付ける

期限が近い材料の一覧は、単に赤く表示するだけでは使い切りにつながらない。製造指図の必要量、ライン切替、品質検査の所要時間、保管場所からの搬送時間を合わせ、期限前に使用できる候補を示す。ただし期限直前のロットを優先するために製品仕様や必要残存期間を緩めてはならない。使えない材料は、返品、再評価、別用途への転用、適正廃棄のどれに進めるか、品質・購買・生産で判断する。廃棄額は結果指標であり、受入時の短い残存期間や過大発注という原因指標も追う。

生産計画に使う「利用可能数量」は、現物数量から単純に保留数量を引いただけでは足りない。工程完了時に必要な残存期間を満たす容器、特定指図に限定された容器、すでにピックされた容器、開封後の使用可能時間が足りない容器を分ける。計画時点では使用可能でも、実際の投入が遅れれば判定は変わる。このため計画・ピック・投入の各時点に同じルールの版を適用し、結果が変わった理由をログに残す。

材料使用期限管理システムのRFPには、品目・ロット・容器のモデル、期限の種類、状態遷移、FEFO候補条件、品質部門の承認権限、ERP・WMS・MESの正本と連携イベント、オフライン時の制限、監査ログ、移行方法を書く。「バーコード管理に対応」「期限アラートあり」だけでは、ライン投入を止められるか評価できない。

次の表はベンダーへ渡す要求の最小例だ。閾値や責任者は自社の品質手順で確定する。

項目RFPで指定する問い提示を求める証拠
データ粒度ロットと個々の容器を別に持てるか親子IDと履歴のデモ
期限判定未開封・開封後・解凍後・再検査日をどう区別するかルール表と境界値の実行結果
FEFO品質・保存条件・残存期間で候補を絞ってから並べるか候補と除外理由のログ
受入最低残存期間未満、期限欠落、ラベル不一致でどう止めるか実機スキャンと受入記録
隔離保留後に引当・ピック・投入を遮断できるか各システムの状態表示
返却開封、曝露、残量を維持したまま戻せるか容器履歴と差異処理
連携連携失敗や重複再送時にどう整合するかAPI契約、再送ログ、復旧手順
監査期限訂正と例外承認の旧値・根拠を追えるか監査ログのエクスポート

見積比較ではライセンス額だけでなく、マスタ整備、ラベル・スキャナ、倉庫端末、品質ワークフロー、既存ERP連携、MESの投入インターロック、テストデータ作成、教育、保守を分ける。標準機能があっても、サプライヤーラベルのばらつき、容器小分け、夜勤時の承認フロー、タイ語・英語・日本語の現場表示には設定や開発が要る。提案書には標準設定、追加開発、運用手順で対応する箇所を色分けしてもらう。

ベンダー選定では、最も簡単な「期限日が早い順に表示」をデモしてもらうのではなく、品質保留中の早期ロット、期限の遅い開封済み容器、通信断、誤読、返却を含むシナリオを与える。除外された理由を作業者と管理者が理解でき、操作後の記録をエクスポートできるかを見る。結果を画像だけで受け取らず、データと再現手順を受入証拠にする。

FAT・SATで検証すべき境界値

FATはベンダー環境で機能・連携を試し、SATは実際のラベル、スキャナ、倉庫、ライン、夜勤を含む自社環境で再確認する。どちらも正常系だけでは足りない。受入基準を「画面が動く」ではなく「禁止すべき払出・投入を止め、許可した例外だけ証跡付きで通す」と書く。計算上の期限がちょうど境界日に当たる場合、時刻、タイムゾーン、月末、閏日、日付変更直後を試す。

試験期待する結果
早い期限のロットが品質保留FEFO候補から除外し、次の適格ロットと除外理由を表示
入庫時の最低残存期間を1日下回る定めた警告/拒否を実行し、無権限の上書きを止める
メーカー期限より開封後期限が先容器固有の使用上限でピックと投入を判定
開封時刻が未記録自動的な使用可能扱いをせず、隔離または承認経路へ送る
ピック後に品質保留へ変更MES投入を遮断し、影響指図と容器所在を通知
一部容器だけ温度逸脱該当容器を隔離し、同ロットの他容器の扱いを手順どおり判断
端末オフラインで期限を越える古い許可状態を再利用せず、定義した停止・例外手順を実行
開封済み容器をラインから返却曝露時間・残量・履歴を保持し、未開封在庫へ戻さない
同じ解除イベントを再送一回だけ状態を変え、重複した監査イベントを作らない

試験データには、品目、供給者ロット、容器ID、各種期限、品質状態、保存条件、製造指図、実際のスキャン値を含める。期待値と実績をCSV等で比較できるようにする。FATで通ったシナリオも、現場の照明でバーコードが読みにくい、手袋で端末を操作しづらい、Wi-Fiが届かない、ラベルが冷蔵庫で剥がれる、といった理由でSATでは失敗しうる。SATの対象を画面操作だけに限定しない。

製造業の材料使用期限管理システム導入|FEFO・隔離・受入試験 - figure 3

移行は「期限不明」を発見する作業から始める

既存在庫を新システムへ入れるとき、品目単位の総量だけを移行すると容器ごとの期限を復元できない。棚卸しで容器を読み取り、サプライヤーロット、メーカー期限、開封状態、残量、品質状態を照合する。証明できない値を仮の遠い日付で埋めることは避ける。「期限不明」「開封時刻不明」「ラベル不一致」を独立した状態として数え、品質部門が使用可否を決める。

最初は期限影響が大きく、容器単位の運用が明確な一つの材料群で試す。受入、保管、ピック、投入、返却、廃棄まで一巡させ、帳簿・現物・システムが合うかを見る。次に複数シフト、複数倉庫、複数供給者へ広げる。旧台帳と新システムの二重入力期間を長くしすぎると、どちらが正本か不明になるため、切替日、差異解消責任者、ロールバック条件をあらかじめ決める。

運用指標は「期限切れ廃棄額」だけにしない。期限不明容器の件数、受入時の残存期間不足率、FEFO提案からの例外率、品質保留の滞留日数、ピック後の保留発生件数、返却差異、期限切れ投入の阻止件数、連携遅延を追う。阻止件数は初期には増えるかもしれない。それは事故が増えた意味ではなく、従来見えなかった不適合が検知された可能性がある。閾値を緩める前に原因を分解する。

指標は材料群、供給者、倉庫、ライン、シフトで分けて見る。期限切れ廃棄が多いとき、その原因は納入時点の残存期間が短い、購買ロットが大きすぎる、品質検査に時間がかかる、ピック順が守られていない、開封後の戻し方が不適切など複数ありうる。単一の合計値だけでは担当部門に改善を割り当てられない。例外率が高い材料群は、現場がルールを守っていないと即断せず、品目マスタの期限設定、サプライヤーラベルの読取り、製造計画の変更頻度を確認する。

導入後の定例会では、品質、倉庫、生産、購買、ITが同じイベント履歴を見て判断する。品質は保留・解除に要した時間と根拠、倉庫はピックの候補と実績、生産は投入時の再判定と返却、購買は最低残存期間の達成、ITは連携遅延・再送・オフライン操作を確認する。改善指示は「アラートを減らす」ではなく、「どの材料のどの例外を、どの承認と試験で減らすか」にする。ルールを変えたら版番号を付け、過去の指図へ遡って適用しない。変更前後で、同じテストデータを再実行し、以前は止めていたケースが通るようになっていないか確かめる。

監査や顧客から特定製品への材料使用履歴を求められたときは、製造指図から投入容器、親子の小分け履歴、サプライヤーロット、受入記録、品質承認、期限判定、保管逸脱までたどれる必要がある。逆方向には、一つの材料ロットや容器に問題が見つかったとき、影響する製品ロット、工程、在庫、出荷候補を抽出する。単に「トレーサビリティ対応」と書くだけでは、検索に要する時間、欠けてよいデータ、外部へ出せる証跡の形式が分からない。FAT・SATにはこの双方向検索も入れ、一覧をCSV等で取り出せるか確認する。

よくある質問

材料使用期限管理システムと一般的な在庫管理システムは何が違う?

一般的な在庫管理は品目、数量、場所、入出庫を中心に扱う。材料使用期限管理では、ロット・容器ごとの期限種別、開封や曝露の履歴、品質状態、用途別の必要残存期間、実際の工程投入を結び付ける。既存WMSやERPに必要機能があり、MESとの連携で満たせる場合もあるため、製品名よりも禁止すべき使用を止められるかで評価する。

FEFOを設定すれば期限切れ材料は使われなくなる?

FEFOだけでは不十分だ。期限が近い順の並べ替えに加えて、品質保留や環境逸脱の容器を候補から除外し、製造指図に必要な残存期間を満たし、投入時に再読取り・再判定する必要がある。返却や緊急保留が反映されなければ、正しい候補提案の後でも誤投入が起こり得る。

ロット番号だけ管理すれば十分?

同じロットの容器が常に同じ状態なら可能だが、開封、部分使用、移動、温度逸脱が容器ごとに異なる現場では足りない。ロットを品質由来の単位、容器を使用・残量・所在の単位として分ける。小分け時には親子関係とラベルの再発行履歴を残す。

期限を過ぎた材料を再検査して延長できる?

一律には答えられない。材料仕様、品質手順、顧客要求、適用規制で決まる。再検査が認められる場合でも、元の期限を消さずに結果、承認、適用範囲を記録する。期限切れ品を単に日付だけ変更して通常在庫へ戻す設計は避ける。

導入費用と期間はどのように見積もる?

材料群と倉庫・ラインの数、既存ERP/WMS/MESの連携、ラベルの標準化、品質承認、容器単位の棚卸しで大きく変わる。最初のRFPでは、対象材料と容器数、例外シナリオ、既存システムのAPI、必要端末、FAT・SATの範囲を提示し、設定・開発・移行・教育・保守を分けて見積もる。根拠のない一律の費用や月数を当てはめない。

タイ工場で医薬品向けのFEFO指針をそのまま使える?

WHOやEU GMPは設計の参考になるが、適用義務は製品と販売市場で異なる。食品、医薬品、電子部品、化学品で期限や隔離の意味も違う。顧客仕様、現地法令、自社の品質システムを確認し、適用する要求と参考にする要求をRFP上で分ける。

まとめ

材料使用期限管理システムの導入では、ロットと容器の粒度を分け、未開封・開封後・再検査の期限を区別し、品質状態と保管条件をFEFOの候補判定へ入れる。ERPの数量、WMSの容器、MESの投入、QMSの承認をイベントでつなぎ、ピック後にも再判定する。RFPには例外、権限、連携失敗、証跡を記し、FAT・SATで境界値と実機運用を検証する。これにより「期限順に出す」から「使ってよい材料だけを工程へ通す」へ移行できる。

タイ工場で期限付き材料の対象整理、FEFOと品質隔離のルール、ERP・WMS・MESの分担、RFPまたはFAT・SATの試験項目を検討している段階なら、TOMAS TECHへお問い合わせください。現行台帳と代表材料の流れを起点に、導入範囲と確認すべき例外を整理できます。

参考資料

  1. GS1, GS1 Application Identifiers(GTIN、ロット、期限の識別子) https://www.gs1.org/gs1-application-identifiers
  2. GS1, GS1 Logistic Label Guideline(AI 01/10/17のデータ形式) https://www.gs1.org/standards/gs1-logistic-label-guideline/1-3
  3. WHO, Good Storage Practices for Pharmaceuticals, TRS 908 Annex 9(FEFO、隔離、保管条件) https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/42613/WHO_TRS_908.pdf
  4. SAP Help Portal, Expiration Date Check for Materials Handled in Batches(入庫時の残存期間と出庫時のバッチ選定) https://help.sap.com/docs/SAP_S4HANA_ON-PREMISE/91b21005dded4984bcccf4a69ae1300c/c763bd534f22b44ce10000000a174cb4.html
  5. SAP Help Portal, Calculating and Checking the Shelf Life Expiration Date(残存期間・バッチ状態) https://help.sap.com/docs/SAP_S4HANA_CLOUD/32da8359c8ee4e8b8e8c5e15cacba5aa/1effb753128eb44ce10000000a174cb4.html
  6. European Commission, EudraLex Volume 4, Chapter 5 Production(原材料表示と品質状態) https://health.ec.europa.eu/document/download/4a1fdb4f-6f6f-49c4-b264-8056e5bbe078_en?filename=chapter_5.pdf