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2026.10.07

ウェイトチェッカーの選定|過充填を減らすタイ工場のRFPと受入試験

ウェイトチェッカーの選定|過充填を減らすタイ工場のRFPと受入試験

「包装後の重量は、QCが30分おきに抜き取って量っている。内容量不足のクレームが怖いので、充填は多めに設定している」。タイの日系食品・飲料・日用品・医薬品の工場で、生産技術課長や品質保証課長の方からよく聞く話です。そこで検討に上がるのが、ウェイトチェッカーの選定です。

先に結論を書きます。ウェイトチェッカーの投資回収を決めるのは「不良品を何個はじけるか」ではありません。「充填の平均を、表示量にどこまで安全に寄せられるか」、つまり過充填をどれだけ減らせるかです。 だから、機種の速度を比べる前に、今の充填の平均とばらつきを測ります。選定で決めることは、①今の充填を測る、②必要な精度と速度を決める、③出口を設計する、④法定計量と記録を設計する、⑤受入試験で数字を確かめる、の5つです。

なお、本記事に登場する生産数・充填量・原価・投資額・リジェクト率・回収年数は、すべて後述のモデル工場を前提にした本記事オリジナルの試算値・想定値(仮置き値)です。業界平均でも調査値でもありません。ベンダー価格の一次情報も使っていません。自社の実測値と見積もりに差し替えて使う「計算の型」として読んでください。

なぜ今、タイ工場でウェイトチェッカーの選定が問われるのか

抜き取り検査と「多めの充填」の限界

インラインのウェイトチェッカーがない工場では、内容量の管理は抜き取り検査が中心になります。たとえば30分おきに10袋を抜いて量り、平均が下がっていれば充填機を手で調整する、というやり方です。

このやり方には2つの弱点があります。1つ目は、量っていない袋がほとんどだということです。毎分40袋のラインを1日16時間動かすと、1日38,400袋になります。30分おきに10袋なら、量るのは1日32回で320袋です。量っているのは120袋に1袋で、残りの袋は誰も量っていません。抜き取りと抜き取りの間に充填がずれても、次の抜き取りまで気づけません。

2つ目は、その「気づけない時間」を、充填量の上乗せで埋めていることです。内容量不足の袋が市場に出るのが怖いので、平均を表示量よりかなり上に設定する。これは安全側の判断ですが、上乗せした分の原料は、毎袋、無償で顧客に渡しています。この上乗せを英語では「giveaway」と呼びます。日本語では過充填と言うのが一般的です。

食品輸出の逆風で「原料1g」が重くなる

タイの経済紙Thansettakijの2026年9月17日の記事によると、2026年1〜6月のタイの食品輸出額は693,376.26百万バーツで、前年同期の752,034.07百万バーツから7.8%減りました。記事では、逆風としてバーツ高(前年の33.44バーツ/USDに対して31.62バーツ/USD)、航路に影響する地政学的な紛争、海上運賃の高騰が挙げられています。発言者はタイ商工会議所副会頭のWisit Limluecha氏です。通年については、第4四半期に市場が改善すれば3〜5%の成長が見込めるとされていますが、これはあくまで改善を前提にした見通しです。報道記事であり、統計の元の作成機関の資料は本記事では確認できていません。

売上が伸びにくい時期には、原価の中で自分たちで動かせる部分が重要になります。過充填はその代表です。後で詳しく試算しますが、年1,152万袋を作るラインで1袋あたり1gの上乗せを減らすと、原料は年11,520kg減ります。原価をTHB 60/kgと置けば、年THB 691,200です。「1gくらい」と思っていた上乗せが、ライン1本で年数十万バーツの単位になります。

2026年もウェイトチェッカーの新製品が続いている

装置側にも動きがあります。いくつか例を挙げます(いずれもベンダーの発表で、推奨や比較ではありません)。

  • METTLER TOLEDO:業界誌Processing Magazineの2026年9月22日のプレビュー記事によると、同社の製品検査部門は2026年10月18〜21日にシカゴで開かれるPACK EXPO International 2026に出展し、C31チェックウェイヤとX12 X線検査装置で「LightningBuild」というプログラムを始めます。選定した機種を、発注から顧客の荷受場まで4週間以内に届けるとしています。これは「選定機種」に限った条件付きのベンダー公表値で、米国での展示会の話です。タイへの納期は記事に書かれていません。
  • Minebea Intec:2026年8月19日に、チェックウェイヤ「Essentus Advanced L」を発表しました。前身のEconusは全世界で2,000台超が設置済みとされ、新機種の計量範囲は最大12kgです。Ethernet・Profibus・Profinet・シリアル通信や、ブラウザで生産データを見られる機能を持つとされています。まずアジア、インド、中東、アフリカで販売するとしていますが、「アジア」にタイが含まれるかは明記されていません。同社は2026年9月29日〜10月1日にムンバイで開かれたAnuga FoodTech India 2026にもEssentus Advancedを出展しました。
  • Fortress Technology:interpack 2026でチェックウェイヤ「Raptor Flex」を発表しました。最大4kgのパックに対応し、最大200 ppm(1分あたり200パック)で計量できるとされています。これもベンダー公表値で、パックの条件によって変わります。精度の値は発表に書かれていません。

このほか、業界誌の製品ニュース一覧には、英国や中国のメーカーによる新しいチェックウェイヤの発表も載っており、新製品の発表が続いている状況です。選択肢が増えるのは良いことですが、カタログの速度や新機能を並べても、自社のラインで回収できるかはわかりません。何を先に決めるべきかを、この記事で順に整理します。

ウェイトチェッカー(チェックウェイヤ・重量選別機)とは何をする装置か

ウェイトチェッカーの選定|過充填を減らすタイ工場のRFPと受入試験 - figure 1

上の図は、ウェイトチェッカーの基本構成を示したものです。左から製品が流れ込み、インフィードで姿勢と間隔を整え、計量テーブルで重量を量り、アウトフィードで規格外品をリジェクタではじきます。量った重量のデータは、上流の充填機に戻して充填量を自動で直す(フィードバック制御)こともできます。

基本の構成

ウェイトチェッカーは、ライン上を流れる製品を1個ずつ止めずに量り、設定した重量の範囲から外れたものを自動ではじく装置です。チェックウェイヤ、自動重量選別機とも呼ばれます。国際法定計量機関(OIML)の勧告R 51-1では、チェックウェイヤを「質量の異なる包装商品を、公称設定値との差に応じて2つ以上のグループに分ける装置」と定義しています。

Thermo Fisher Scientificの実務ガイドによると、ウェイトチェッカーはコントローラと計量フレームでできており、計量フレームは通常、次の3つの区画に分かれます。

  • インフィード:製品を安定させて計量部に送り込む
  • 計量テーブル:製品が乗っている間に重量を量る
  • アウトフィード:量り終えた製品を送り出し、必要なら規格外品をはじく

同社はインフィードと計量テーブルのコンベヤ速度を同じにすること、製品と製品の間隔を適切に取ることを挙げています。間隔が取れていれば、製品が乗っていない瞬間にゼロ点を取り直せるので、精度が最も高くなるとしています。

搬送方式についても、同社は一般論として、ベルトが最も正確、チェーンが最も頑丈、スケート(スライダ)が缶で最も性能が出る、と説明しています。背の高い製品の転倒を防ぐサイドベルトや、製品間隔を取るためのウォームスクリュー、加速コンベヤといった付属機構もあります。

用途は「不足品をはじく」だけではない

Thermo Fisherは、ウェイトチェッカーの用途として次のようなものを挙げています。

  • 内容量の不足・過多の検出
  • 金属検出機・X線検査装置との組み合わせ
  • 重量ゾーンごとの等級分け
  • 重量による個数の確認(箱入りのチョコレートが1個欠けている、など)
  • 破損、漏れ、充填品の誤りの検出
  • リーフレット、スプーン、ストローなど付属品の入れ忘れの検出
  • 出荷前に、ロットの平均と標準偏差を目標と比べる
  • 重量データを充填機に戻して、閉ループで充填量を制御する

この記事で特に重視するのは、最後の2つです。全数の重量データがあれば、ロットの平均とばらつきが数字で見えます。そのデータを充填機に戻せば、平均を表示量の近くに保ち続けられます。

金属検出機・X線検査装置との関係

ウェイトチェッカーは重量を見る装置で、異物を見る装置ではありません。異物の検出は金属検出機やX線検査装置の役割です。Thermo Fisherも、ウェイトチェッカーの用途の1つに金属検出機・X線検査装置との組み合わせを挙げており、ウェイトチェッカーと金属検出機を1台の架台にまとめた一体機もあります。どちらを、どの順番で、何台入れるかの考え方は、金属検出機の選定とX線異物検査との使い分けで整理しています。

投資回収を決めるのは「はじく数」ではなく「平均を寄せる幅」

ウェイトチェッカーの選定|過充填を減らすタイ工場のRFPと受入試験 - figure 2

上の図は、後で説明するモデル工場Qの「現状」「案A」「案B」について、1袋あたりの充填の平均と、表示量200gを超える過充填の量を並べたものです。現状は平均206.0gで過充填6.0g、案Aは平均203.0gで過充填3.0g、案Bは平均201.5gで過充填1.5gです。

ここからは、架空のモデル工場で費用と効果を試算します。繰り返しになりますが、以下の数値はすべて本記事オリジナルの試算値・想定値(仮置き値)です。業界平均でも調査値でもなく、ベンダー価格の一次情報も使っていません。

共通の前提(モデル工場Q)

  • タイ中部にある日系の調味料・スナック工場。対象は表示量200gのパウチ1品種のライン
  • ライン能力は毎分40袋。1日16時間(2交替)、年300日稼働
  • 生産数は、40袋×60分×16時間=1日38,400袋、×300日=年11,520,000袋
  • 内容物の原価はTHB 60/kg(=THB 0.06/g、仮定)
  • 現状はインラインのウェイトチェッカーなし。QCが30分おきに10袋を抜き取って量り、充填機を手で調整している。内容量不足を恐れて、充填の平均を206.0gに設定している(過充填は1袋あたり6.0g、仮定)
  • リジェクトした袋1袋の処理費(開封・再計量・再包装の手間と包材)はTHB 2.0(仮定)
  • 抜き取り検査の人件費の削減は、効果に入れない(保守的に見るため)

現状の過充填を金額にしておきます。11,520,000袋×6.0g=69,120kgで、THB 60/kgを掛けると年THB 4,147,200です。これが、このラインで毎年「おまけ」として出ていく原料です。

案A:ウェイトチェッカー1台(リジェクトのみ、フィードバックなし)

  • 初期費用はTHB 1,200,000(本体・リジェクタ・据付・教育、仮定)、年間の保守・校正費はTHB 60,000(仮定)
  • 全数を量れるので、充填の平均を203.0gまで下げる(過充填6.0g→3.0g、1袋あたり3.0gの削減、仮定)
  • 原料の効果:11,520,000袋×3.0g=34,560,000g=34,560kg。×THB 60/kg=年THB 2,073,600
  • リジェクトの処理費:リジェクト率0.8%(仮定)で、11,520,000袋×0.8%=92,160袋。×THB 2.0=年THB 184,320
  • 年間ネットは、2,073,600−184,320−60,000=THB 1,829,280
  • 回収年数は、1,200,000÷1,829,280=約0.7年

案B:ウェイトチェッカー+充填機へのフィードバック制御

  • 初期費用はTHB 1,800,000(案Aに、充填機との通信・制御の改造を加えたもの、仮定)、年間の保守・校正費はTHB 80,000(仮定)
  • 充填のずれを自動で戻せるので、平均を201.5gまで下げる(過充填6.0g→1.5g、1袋あたり4.5gの削減、仮定)
  • 原料の効果:11,520,000袋×4.5g=51,840,000g=51,840kg。×THB 60/kg=年THB 3,110,400
  • リジェクトの処理費:リジェクト率0.5%(仮定)で、57,600袋。×THB 2.0=年THB 115,200
  • 年間ネットは、3,110,400−115,200−80,000=THB 2,915,200
  • 回収年数は、1,800,000÷2,915,200=約0.6年

案Bのリジェクト率を案Aより低く置いたのは、充填のずれがすぐに戻るので、下限を外れる袋が出にくくなる、と仮定したためです。

感度:測ってみたら、今の平均はすでに203.0gだった

前提のうち最も不確かなのは「今の充填の平均が何gか」です。抜き取りの記録から「206g前後のはず」と思っていても、連続で量ってみると違うことはよくあります。そこで、実測したら今の平均はすでに203.0g(過充填3.0g)だった、という場合を計算します。

  • 案A:全数を量れるようになっても、フィードバックがなければ平均は203.0gのままで、下げる余地がありません。原料の効果は0です。年間ネットは0−184,320−60,000=THB −244,320で、原料の効果だけでは回収できません。
  • 案B:203.0gから201.5gへ、1袋あたり1.5g下げられます。11,520,000袋×1.5g=17,280kgで、×THB 60/kg=THB 1,036,800。ここから115,200と80,000を引いた年間ネットはTHB 841,600です。回収年数は、1,800,000÷841,600=約2.1年です。

ただし、案Aが原料だけで回収できないからといって、価値がゼロになるわけではありません。全数を量るので、内容量不足の袋が市場に出るのを防げますし、ロットごとの重量の記録も残ります。これらは、クレームや法令違反のリスクを下げる別の価値です。この試算ではその価値を金額にしていません。

試算のまとめ

項目現状案A リジェクトのみ案B フィードバックあり
充填の平均(g/袋)206.0203.0201.5
過充填(g/袋)6.03.01.5
初期費用(THB)-1,200,0001,800,000
年間の保守・校正費(THB)-60,00080,000
原料の効果(THB/年)-2,073,6003,110,400
リジェクト率/袋数(年)-0.8%/92,160袋0.5%/57,600袋
リジェクトの処理費(THB/年)-184,320115,200
年間ネット(THB)-1,829,2802,915,200
回収年数-約0.7年約0.6年
感度:今の平均が203.0gの場合の年間ネット(THB)-−244,320841,600
感度:今の平均が203.0gの場合の回収年数-原料の効果だけでは回収できない約2.1年

読みどころ1:効果のほとんどは原料で、リジェクトはむしろマイナス

案Aでも案Bでも、効果のほぼすべては原料(過充填の削減)から来ています。リジェクトの処理費は、効果ではなく費用の側に入っています。はじいた袋は開封して量り直し、包み直す必要があるからです。

つまり、ウェイトチェッカーを「不良品をはじく装置」として見ると、はじけばはじくほど費用が増えることになります。正しい見方は「平均を表示量に寄せるために、全数を測る装置」です。はじく機能は、平均を寄せたときに下限を外れる袋を市場に出さないための安全装置です。

読みどころ2:差が出るのはフィードバックの有無

前提どおり今の平均が206.0gなら、案Aの約0.7年と案Bの約0.6年はほとんど変わりません。どちらを選んでも1年以内に回収できる計算です。

ところが、今の平均がすでに203.0gだった場合は、案Aは原料だけでは回収できず、案Bは約2.1年で回収できます。今の過充填がもともと小さい工場ほど、フィードバック制御の有無で結果が分かれます。

ちなみに、案Bが案Aより多く払う初期費用はTHB 600,000で、年間ネットの差は、前提どおりでも感度の場合でもTHB 1,085,920です。差額の部分だけで見ると、どちらの場合も約0.6年で取り戻せる計算になります。

読みどころ3:最初にやるのは機種比較ではなく、今の充填の実測

この試算の効果は、「今の平均が何gか」と「どこまで下げられるか」の差で決まります。今の平均が206.0gか203.0gかで、案Aの年間ネットはTHB 1,829,280からTHB −244,320まで動きます。

だから、機種を比べる前に、今の充填の平均とばらつきを連続サンプルで測ります。何gの上乗せで内容量を守っているのかを、数字でつかむことが選定の最初の仕事です。測り方は次の節で説明します。

読みどころ4:平均をどこまで下げられるかは「精度」で決まる

平均をどこまで表示量に近づけられるかは、充填機そのもののばらつきと、ウェイトチェッカー自身の精度で決まります。ばらつきが大きいまま平均を下げれば、下限を外れる袋が増え、リジェクトの費用がふくらみます。

ここで注意したいのが、速度と精度のトレードオフです。後で説明するように、同じ装置でも速く流すほど1個あたりの計量時間が短くなり、精度は落ちる傾向があります。カタログの速度だけで機種を選ぶと、精度が足りず、平均を下げられなくなります。そうなると、この試算の効果そのものが出ません。

読みどころ5:平均を下げても、法定の要件を満たすことが前提

平均を下げるのは、あくまで法令の要件を満たす範囲の中での話です。国際的な参考であるOIMLの勧告R 87(2016年版)は、包装商品について「平均の実内容量が表示量以上であること」を求めています。また、表示量200gの場合、許容される不足量Tは9gです(R 87の表で200〜300gの区分は9g、100〜200gの区分は4.5%で、200gに4.5%を掛けても9gになります)。タイの許容誤差は、後で説明する商務省の告示で確認する必要があります。

読みどころ6:数字は仮置き。自社の数字で計算し直す

ここまでの数字は、すべて仮置きの値です。原価、生産数、今の平均、下げられる幅、リジェクト率、処理費、投資額を、自社の実測と見積もりに差し替えて計算し直してください。特に「下げられる幅」は、受入試験で実際の精度を確かめてから決めるべき値です。

ウェイトチェッカー選定で決める5つのこと

① 今の充填を測る:平均・ばらつき・時間による変化

最初にやることは、今の充填の実態を数字にすることです。抜き取り検査の記録はあっても、30分おきの10袋だけでは、その間の変化が見えません。

測り方の基本は次のとおりです。

  • 連続サンプルを取る:一定の時間、充填機から出てくる袋を飛ばさずに続けて量る。時間帯(立ち上げ直後、昼、交替前後、夜)を分けて、何回か行う
  • 平均とばらつきを出す:平均だけでなく、標準偏差や最小値も出す。最小値が表示量からどれだけ上にあるかが、今の「安全の余裕」
  • 時間による変化を見る:原料のロットが変わったとき、ホッパーの残量が変わったとき、交替の直後などに、平均がどう動くかを見る
  • 過充填の量を出す:平均から表示量を引いた値が、今の過充填。これに年間の袋数と原価を掛ければ、今の過充填の金額が出る

ここで出た「平均の時間変化」が大きければ、フィードバック制御の効果が大きいことを示しています。逆に、平均は安定しているがばらつきが大きいなら、まず充填機そのものの調整や整備が先になるかもしれません。

上流の充填機や袋詰め機の能力・方式を見直す余地がある場合は、袋詰め自動化の導入ガイドもあわせて参考にしてください。

② 精度と速度:ロードセル式と電磁平衡式(EMFR)、計量コンベヤ長さ、単列と多列

速度を上げるほど、精度は落ちる傾向がある

Anritsu(アンリツ)の技術資料(Technical Note Vol.6、2012年9月)は、同じ計量部・同じ速度で、計量コンベヤの長さだけを変えて比べた結果を載せています。計量精度は、270mmのコンベヤで2.3g、495mmのコンベヤで1.0gとなり、長いほうが1.3g良い結果でした。資料では、長いコンベヤのほうが製品が計量されている時間が長く、測定結果がより正確になるためと説明しています。一方で、短い計量コンベヤは大量生産のラインに向く、とも書かれています。

ここで大事なのは、この値が2012年のベンダー社内実験の値で、「計量精度」が統計的に何を指すのか(標準偏差なのか、その3倍なのか)も、製品の重量や速度の条件も書かれていないことです。したがって、後で紹介するOIMLの「標準偏差」の値と同じ尺度で比べることはできません。読み取ってよいのは「計量時間を長く取れるほど精度が上がり、速度とはトレードオフになる」という傾向までです。

ロードセル式と電磁平衡式(EMFR)

計量部の方式には、大きく分けてひずみゲージ式のロードセルと、電磁平衡式(EMFR:電磁力平衡)があります。

同じAnritsuの資料は、同じ計量コンベヤ長さで比べると、ひずみゲージ式の計量精度は±2.3g、電磁平衡式は±0.8gだったとしています。そのうえで、高精度の電磁平衡式は包装前の個包装キャンディやチョコレートなどに向き、精度は劣るがコストの低いひずみゲージ式は、箱詰め後の袋の入り数不足のチェックに勧められる、と書いています。製品と、ライン上のどこに置くかで方式を選ぶべきだ、という考え方です。これも同じく2012年の社内実験の値で、統計の定義と条件は不明です。比率を一般化して「電磁平衡式は約3倍正確」と読み替えないでください。

電磁平衡式の専業メーカーであるWIPOTECは、EMFRの原理を次のように説明しています。天びんの機構に荷重がかかると、位置検出器がずれを検出し、制御器がコイルの電流を調整してつり合いを保ちます。その電流が荷重に比例するので、それをデジタル信号にして重量とします。同社は、ひずみゲージ式より非常に正確な重量を速く得られ、バネや機械的な摩耗部品がないので動的計量に向く、と主張しています。また、フォークリフトの走行などによる外部の振動を計量結果から除く振動補償の機能も紹介しています。いずれもベンダーの主張で、ロードセル式のコストや堅牢性といった利点には触れていない点に注意してください。

200gの袋で「精度」がどう原料に効くか

Anritsuの資料には、精度が原料の使用量に効く理由を示す、単純化した例も載っています。200gのコーヒーパックで、精度±1gの機械なら最小の充填量は201g、精度±0.5gの機械なら200.5gとなり、前者は1パックあたり0.5g多く原料を使う、というものです。これは考え方を示すための例で、法定の平均要件とは別の話です。それでも、「装置の精度が良いほど、平均を表示量に近づけられる」という関係はつかめます。

単列と多列

Thermo Fisherは、多列(マルチレーン)のウェイトチェッカーを使う理由として、単列では充填機の能力に追いつかない場合があること、多連の充填機から出てくる複数列をそのまま量れること、1レーンあたりの速度が下がるので精度が上がること、必要な直線スペースを大きく減らせること、を挙げています。

チェックウェイヤの方式の比較表

比べる軸ひずみゲージ式ロードセル電磁平衡式(EMFR)
原理ロードセルのひずみを電気信号に変える荷重とつり合う電磁力(コイル電流)を信号にする
Anritsu資料(2012年の社内実験)の計量精度±2.3g±0.8g
資料が勧める用途の例箱詰め後の入り数不足のチェック包装前の個包装菓子など高精度が要るもの
コストひずみゲージ式のほうが低い(Anritsu資料)具体的な価格差は見積もりで確認
ベンダーの主張-整定が速い、摩耗部品がない、振動補償(WIPOTEC)
注意点精度の統計定義と条件は資料に記載なし同左。ベンダー主張は自社の製品で確かめる

速度だけで比べない

ベンダーのカタログには、処理能力の大きな数字が並びます。たとえばThermo Fisherのガイドには、チェーン式で最大700 packages per minute、医薬向けの機種で2g〜500gを最大550 ppm(パックサイズ次第)、汎用機で最大3kgのパッケージを最大350 packages per minuteといった値が載っています。しかし、どの速度でどの精度が出るか、という組み合わせは書かれていません。

モデル工場Qのラインは毎分40袋です。必要なのは、自社の製品・自社の速度で、どれだけの精度が出るかです。RFPでは「最大速度」ではなく、「この製品を、この速度で流したときの精度」を要求します。

③ 出口の設計:リジェクタ方式、リジェクト確認、フィードバック制御

リジェクタの方式

Thermo Fisherは、リジェクタの種類としてエアブラスト、プッシャー、ボッパー、ドロップフラップ、ダイバータを挙げ、製品や顧客の要件によってほかの方式もあるとしています。また、精度を左右する要因として、製品速度、製品の重量とサイズ、ウェイトチェッカーへの乗り移りと降り、そしてリジェクト方式と設計を挙げています。どの方式が合うかは製品と速度によって変わるので、実際の製品で試して決めます。

リジェクトの確実性:内容量不足の袋を流さない対策

リジェクタが動かなかったのに、装置は「はじいた」と数えてしまう。これが最も怖い故障です。参考になるのが、Thermo Fisherの資料にある、英国の小売大手Marks and Spencer(M&S)の異物検出の規範に対応したシステムの基本要件です。

  • すべてのセンサは故障時に閉となり、アラームを出す(フェイルセーフ)
  • インフィードに製品を登録するフォトアイを置く
  • 施錠できるリジェクトビンと、検査点からビンまでの完全な囲い
  • リジェクト確認センサ
  • ビン満杯の通知、ビンの開放・未施錠が続いたときのアラーム
  • 低エア圧スイッチ
  • 故障やアラームは電源を入れ直しても残り、キーを持つQA管理者などだけが解除できる

これは金属検出機・X線検査装置などの異物検出システム向けの要件で、ウェイトチェッカー単体の要件ではありません。 ただ、「はじいたことを確認する」「はじいた袋を勝手にラインに戻させない」「エアが落ちたら止める」という考え方は、ウェイトチェッカーでもそのまま使えます。RFPには、リジェクト確認、施錠ビン、ビン満杯検知、エア圧低下検知を入れることを勧めます。Ishida Europeが2024年に発表したDACS-GNシリーズも、リテール向けのリジェクト確認技術や、床振動への対策技術を搭載しているとしており、同じ考え方の機能の例です。

フィードバック制御:平均を寄せ続ける仕組み

Mettler-Toledo Garvensの担当者が業界誌に寄せた記事(2025年6月)は、フィードバック制御を「ウェイトチェッカーと上流の充填機をつなぐ通信のループ」と説明しています。目標重量からのずれを検出するとすぐに上流へデータを送り、充填機が自動で出力を調整するので、手作業や生産停止なしに製品重量を一定に保てる、としています。削減率などの数値は書かれていません。

モデル工場Qで、案Bが案Aより平均を1.5g低くできると置いたのは、この仕組みを前提にしています。フィードバックを入れるには、充填機側が外部からの信号で充填量を変えられること、通信の方式と信号の中身(補正量の計算方法、1回の補正の幅、補正の上限・下限など)を決めることが必要です。充填機メーカーとウェイトチェッカーメーカーのどちらが、どこまでを担当するかも、RFPの段階で決めておきます。はかりと制御盤(PLC)のつなぎ方の基本は、産業用はかりのPLC連携の導入設計で整理しています。

④ 法定計量と記録の設計:OIML R 51/R 87、EUの例、タイの度量衡法

2つの国際勧告:装置の精度と、包装商品の内容量

内容量に関する国際的な参考は、大きく2つあります。1つは装置(自動重量選別機)の精度を定めるOIML R 51-1、もう1つは包装商品の内容量を定めるOIML R 87です。

OIML R 51-1(2006年版) は、自動重量選別機を用途によって2つに分けています。カテゴリXは、R 87の要件の対象となる包装商品を検査するチェックウェイヤだけに適用され、カテゴリYはそれ以外のすべて(重量値付けラベラや郵便・運送用のスケールなど)に適用されます。工場で包装商品の内容量を検査するウェイトチェッカーは、OIMLの区分ではカテゴリXに当たります。

カテゴリXの許容誤差は、「平均誤差」と「標準偏差」の2本立てです。連続して量ったときの平均のずれ(系統誤差)と、ばらつき(ランダム誤差)の両方に上限があります。たとえば係数(x)が1の場合、100gを超え200g以下の荷重では、最大許容標準偏差は初回検定で0.24%、使用中の検査で0.3%です。表の中では%で示す区分とgで示す区分が交互に並んでいるので、読み取るときは単位に注意してください。また、カテゴリXの試験では、1kg以下の荷重なら60回連続して量って平均と標準偏差を求めます。

なお、本記事で確認したのは2006年版で、これが現行の最新版かどうかはOIMLのカタログでは確認できませんでした。

OIML R 87(2016年版) は、包装商品が流通のどの段階でも満たすべき要件を3つ定めています。

  1. 平均要件:平均の実内容量が表示量以上であること
  2. T1誤差(不足量がTを超え2T以下)のあるパッケージは、同質なグループのうち2.5%以下であること
  3. T2誤差(不足量が2Tを超える)のパッケージは1つもないこと

表示量200gでTは9gなので、R 87を当てはめると、191gを下回り182g以上の袋(T1誤差)は2.5%以下、182gを下回る袋(T2誤差)は0個、ということになります。ここで大事なのは、平均要件があるので「下限の袋をはじけば平均はいくら下げてもよい」わけではないことです。平均を下げるほど、平均要件とT1・T2の両方に近づきます。

EUの例

EUでは、計量機器指令(MID、2014/32/EU)の附属書VIII(MI-006)が自動重量選別機を扱い、ここでもカテゴリX・Yの区分があります。カテゴリXは、包装商品指令76/211/EECの要件に従って作られた包装商品を検査する機器です。本記事では、英国政府のサイトに載っている英国版のテキストで確認しました。

その包装商品指令76/211/EECは、平均の実内容量が公称量を下回らないこと、許容負誤差を超える包装の割合が十分に小さいこと、許容負誤差の2倍を超える包装には「e」マークを付けてはならないこと、を定めています。抜取試験の細かい規定は附属書IIの側にあり、本記事では確認していません。EU向けの輸出がある場合は条文で確認してください。

タイ:度量衡法と2018年の告示

タイでは、度量衡法(仏暦2542年、1999年)が包装商品の内容量を定めています。以下は、法律の条文そのものではなく、商務省ウドンタニ県事務所が作成した法律の要点まとめの資料(政府機関の要約資料)に基づく内容です。

  • 第62条:商務大臣は、包装者(製造者のほか、輸入者・小分け包装者を含む)が量を表示しなければならない包装商品の種類と、表示の基準・方法を告示で定める
  • 第63条:量の表示は実際の量と一致し、その誤差は商務大臣が告示する許容誤差を超えてはならない。表示の正しさを検査する基準・方法は国内取引局長が告示する
  • 第64条:外国の単位で表示された輸入包装商品は、タイの単位でも表示しなければならない

第62条に基づく告示は2018年3月12日付の商務省告示(包装商品の種類、量の表示の基準・方法、許容誤差を定めるもの)、第63条の検査方法は2018年6月8日付の国内取引局告示です。罰則として、第62条の告示に違反した包装者は6か月以下の拘禁もしくは2万バーツ以下の罰金またはその併科(第83条)、表示量が正しくないと知りながら包装し他人に損害を与えるおそれがある場合は1年以下の拘禁もしくは4万バーツ以下の罰金またはその併科(第84条)などが定められています。

本記事では、告示本文に載っている許容誤差の表を確認できていません。 タイの許容誤差がOIML R 87と同じかどうかもわかりません。平均をどこまで下げるかを決める前に、2018年の告示の本文で自社製品の区分の値を確認してください。

記録の設計

法定の要件を満たしていることを示すには、記録が要ります。ロットごと・シフトごとの袋数、平均、標準偏差、リジェクトの数と理由、校正の記録を、紙ではなくデータで残すことを勧めます。ウェイトチェッカーのデータを品質記録につなぐ設計は重量計のデータ連携で、ロット単位で原料から出荷までを追う仕組みは食品工場のトレーサビリティシステムで解説しています。

なお、内容量の管理をHACCPのCCP(重要管理点)として扱うかどうかは、本記事では断定しません。内容量は主に品質と法定計量の管理ですが、CCPにするかどうかは各社のハザード分析によって決まります。Minebea Intecは、チェックウェイヤを「過充填・充填不足を確実に防ぎ、法的要件を満たすための主要な構成要素」と位置づけています。

⑤ 受入試験で数字を確かめる

最後は、ここまで決めた精度・出口・記録が、実際に出るかを確かめることです。ベンダーの工場で行うFAT(工場受入試験)と、自社の工場で行うSAT(現地受入試験)の2段階で行います。具体的な中身は後の節「FAT/SATで確かめること」で説明します。

ウェイトチェッカーのRFPに書く12項目

ベンダーに見積もりを依頼するときは、次の12項目をそろえて書きます。Thermo Fisherも、見積もりを依頼するときは製品とアプリケーションの情報をすべてサプライヤに渡すよう勧めています。前提がそろわないまま見積もりを取ると、精度も価格も比べられません。

No.項目書く内容の例
1製品の条件品種ごとの表示量、寸法、包装形態(パウチ・箱・ボトル)、重心の偏り、品種の数
2速度と精度の組み合わせ「この製品を毎分◯個で流したときの精度」を要求する。精度の統計的な定義(標準偏差など)も指定する
3方式と計量部ロードセル式か電磁平衡式か、計量コンベヤの長さ、単列か多列か。提案の根拠を求める
4搬送とリジェクタ搬送方式、製品間隔の取り方、リジェクタの方式、リジェクトの振り分け先の数
5リジェクトの確実性リジェクト確認センサ、施錠ビン、ビン満杯検知、エア圧低下検知、アラームの解除権限
6フィードバック制御充填機との信号の中身、通信方式、補正のロジック、上限・下限、担当範囲
7データの出力ロット・シフトごとの袋数、平均、標準偏差、リジェクト数の出力形式と保存期間
8通信と上位システムPLC・MES・品質システムとの通信方式(Ethernet系など)と、やり取りする項目
9洗浄条件と材質洗浄の方法(水・熱水・洗剤)、必要な保護等級、ステンレスの種類
10校正と日常点検ゼロ・スパン校正の方法と頻度、試験用の分銅や試験体、品種切替時の手順
11教育と保守タイ語の画面・マニュアル、教育の対象と回数、タイ国内の技術者と部品在庫、駆け付けの時間
12納期、FAT/SATの条件、責任分界タイへの納期、FAT/SATの試験項目と合格基準、充填機メーカーとの担当範囲

特に2番は、この記事の中心です。「最大◯ppm」「精度±◯g」を別々に聞くのではなく、自社の製品と速度の組み合わせで聞きます。精度の値も、標準偏差なのか、その何倍なのかを指定しないと、ベンダーごとの値を比べられません。

12番の責任分界も重要です。フィードバック制御は、ウェイトチェッカーと充填機の両方にまたがります。信号を出す側と受ける側のどちらが、補正の結果に責任を持つのかを決めておかないと、稼働後に「平均が下がらない」問題の原因を切り分けられません。

FAT/SATで確かめること

ウェイトチェッカーの選定|過充填を減らすタイ工場のRFPと受入試験 - figure 3

上の図は、受入試験の流れを示したものです。暖機と静的校正から始まり、動的な繰り返し試験、偏置試験、物品分離、リジェクト確認とアラーム、フィードバック制御、データ出力の順に確かめていきます。

参考になる型:ASEANのガイドライン

受入試験の手順を考えるときに参考になるのが、ASEANの標準・品質諮問委員会(ACCSQ)の法定計量作業部会がまとめた「自動重量選別機の検定ガイドライン Version 2.0」です。OIML R 51-1(2006年版)を基礎に、加盟国の検定手順をそろえるための共通参照文書です。

ただし、このガイドラインには大事な前提があります。

  • 対象はASEAN域内の取引に使うY(a)・Y(b)等級の機器で、包装商品を検査するカテゴリXのチェックウェイヤは対象外
  • 型式承認を取得済みであることが前提
  • どの要件も各国の国内規則に合わせて調整できる
  • タイがこのガイドラインを国内の検定手順として採用したかは、本記事では確認できていない

つまり、これはタイの法定の手順ではなく、工場のSATを設計するときの「参考になる型」です。その前提で、使える考え方を挙げます。

  • 試験前に約30分の暖機を行う
  • 基準を測る管理用のはかりは、被試験機より少なくとも3倍高精度のものを使う
  • 試験体は、最小〜最大の範囲でほぼ等間隔に最低5個用意する
  • 偏置試験は、最大荷重の1/3の試験体を、搬送部の前寄り・後寄りの2位置で各3回流す
  • 計量性能の試験は、同じ試験体を計10回流す
  • 物品分離の試験は、2個を間隔なしで流して3回、位置を入れ替えてもう3回行う
  • 目視点検で、ほこり・気流・振動などが運転を妨げていないか、安定した水平の基礎に設置されているかを確認する

FAT/SATの試験項目

この型とThermo Fisherの日常管理の推奨を組み合わせると、受入試験の項目は次のように整理できます。合格基準は、RFPで決めた精度とリジェクトの要件から、工場が決めます。

試験内容見るポイント
暖機と静的校正約30分の暖機後、試験体を静止状態で量り、管理用はかりの値と比べるゼロ点とスパンが合っているか
動的な繰り返し実際の製品・実際の速度で、同じ試験体を繰り返し流す平均のずれとばらつきが、RFPの精度を満たすか
偏置試験体を搬送部の前寄り・後寄りに置いて流す置く位置で値が変わらないか
物品分離製品を間隔を詰めて流す2個を1個と量らないか、正しくはじくか
リジェクト確認規格外の試験パックを流す。リジェクタの電源やエアを切った状態でも流すはじかれなかったことを装置が検知し、アラームとライン停止になるか
ビン満杯・エア圧ビンを満杯にする、エア圧を下げる検知してアラームが出るか、解除に権限が要るか
フィードバック充填量を意図的にずらすずれを検知して充填機に補正が送られ、平均が戻るか
データ出力ロット・シフトの集計を出す袋数・平均・標準偏差・リジェクト数が、手計算と一致するか

試験回数の考え方

Thermo Fisherは、品種切替ごとやシフト開始前に行う「グレーゾーン検証」(判定の境目近くの製品が正しく判定されるかの確認)で、統計的に有効な結果を得るために1つのパッケージを少なくとも20回流すことを勧めています。これは同社の推奨で、OIML R 51-1のカテゴリXで1kg以下の荷重に求められる60回の連続計量とは別のものです。受入試験では、法定の試験回数と、自社の日常点検の回数を混同しないように、それぞれ何のための試験かを書き分けておきます。

FATとSATで同じ手順を流す

FATはベンダーの工場、SATは自社の工場で行いますが、同じ製品・同じ手順で流すことが大切です。FATで精度が出ても、自社の工場では床の振動や空調の風、隣の機械の振動で精度が落ちることがあります。両方で同じ試験を流せば、差が出たときに「装置の問題」か「設置環境の問題」かを切り分けられます。

タイ工場ならではの注意点

1. 度量衡法と告示を自社で確認する

前に書いたとおり、タイの包装商品の許容誤差は2018年3月12日付の商務省告示で定められていますが、本記事ではその数値を確認できていません。平均をどこまで下げるかは、この告示の値を確認してから決めてください。

また、取引に使う計量器の検定について、度量衡法は第25条で、商品の売買や報酬・手数料の算定に使う計量器は担当官の検査・検定を受けなければならないと定めています(政府機関の要約資料による)。検定などを担うのは、商務省国内取引局の中に置かれた中央度量衡局です(第6条)。しかし、工程内で選別にだけ使うウェイトチェッカーが検定の対象になるかどうかは、本記事では確認できていません。 必要とも不要とも断定できないので、中央度量衡局または専門家に確認してください。

2. 輸入した包装商品の単位表示

第64条により、外国の単位で表示された輸入包装商品は、タイの単位でも表示する必要があります(政府機関の要約資料による)。日本や他国から包装済みの製品を輸入して販売する場合は、表示の確認も忘れないでください。

3. 床の振動、フォークリフト、空調の風

ウェイトチェッカーは、わずかな重量の差を量る装置です。床の振動、近くを走るフォークリフト、隣の機械、空調の吹き出しの風は、精度に直接効きます。Thermo Fisherも、架台の接地とコンベヤの水平、他のコンベヤをウェイトチェッカーに接触させないこと、ラインを頻繁に起動・停止しないことを挙げています。設置場所を決めるときは、空調の吹き出し口の位置、フォークリフトの通路、床の状態を図面で確認し、SATで実際の環境での精度を確かめます。

4. 洗浄と材質

食品工場では、洗浄の方法に合った保護等級と材質が必要です。WIPOTECは、IP69は高圧水の噴射に耐え、IP69Kはさらに熱水・スチームジェットでの洗浄にも耐えると説明しています。Thermo Fisherは、腐食性の洗剤に耐える304ステンレス(より厳しい環境では316)や、IP65を挙げています。どこまでの洗浄に耐えるかはメーカーの条件で確かめ、自社の洗浄手順(水温、圧力、洗剤)をRFPに書いて回答をもらいます。

5. 現地サポートと校正の体制

ゼロ・スパンの校正について、Thermo Fisherは毎日または品種切替ごとに行うことを勧めています。校正に使う分銅や試験体を誰が管理するのか、年次の点検をタイ国内の技術者が行えるのか、部品の在庫がタイにあるのかは、止まったときの影響を大きく左右します。操作画面とマニュアルがタイ語で用意されているかも、現場で手順を守ってもらうために欠かせません。

6. 人件費の削減は主役ではない

タイの最低賃金は、2025年7月1日施行の改定時点で日額THB 337〜400で、県によって異なります(THB 400はバンコク、チャチュンサオ、チョンブリ、プーケット、ラヨーンなど)。社会保険の拠出の算定に使う賃金の上限も、2026年1月1日からTHB 17,500に引き上げられました。人件費は少しずつ上がっています。

それでも、この記事の試算では、抜き取り検査の人件費の削減を効果に入れていません。全数を量るようになっても、QCの抜き取りや校正の確認は残るからです。ウェイトチェッカーの回収を決めるのは、あくまで原料(過充填)の削減です。

7. 展示会で実機を見る

タイでは、包装・加工機械の展示会ProPak Asia 2027が、2027年6月9〜12日にムアントンターニーのIMPACTで開催される予定です。自社の製品のサンプルと、①で測った平均・ばらつきのデータを持って行き、「この製品を、この速度で流したときの精度」をベンダーに具体的に聞くと、比較がしやすくなります。

よくある失敗

速度で機種を選ぶ

カタログの最大速度が大きい機種を選んだが、自社の製品では精度が足りず、平均を下げられない。速度と精度のトレードオフを考えずに選ぶと、投資の前提そのものが崩れます。RFPでは、自社の速度での精度を要求します。

入れたのに平均を下げない

全数を量れるようになったのに、「念のため」で充填の平均を元のまま206gに置いている。これでは、原料の効果は0で、リジェクトの処理費と保守費だけが増えます。モデル工場Qの数字で言えば、年THB 2,073,600の原料の効果を捨てていることになります。導入の計画には、平均を何gまで、いつまでに下げるかを書いておきます。

アラームを鳴りっぱなしにする

しきい値を厳しくしすぎて、アラームが1日中鳴っている。Thermo Fisherは「常に鳴るアラームはオペレーターに無視される」と指摘しています。本当に止めるべきときに止まらなくなるので、しきい値は運用に合わせて設定し直します。

リジェクトビンを施錠しない

はじいた袋を、作業者が「少し軽いだけ」とラインに戻してしまう。施錠できるビンと、解除の権限を決めておかないと、内容量不足の袋が市場に出ます。

品種切替のときの校正を省く

品種を切り替えたのに、ゼロ・スパンの確認とグレーゾーンの確認を飛ばす。前の品種の設定のまま流すと、判定がずれます。切替の手順書に、校正と確認を入れておきます。

データを紙で終える

ウェイトチェッカーの集計を紙に書き写して、ファイルに綴じている。これでは、平均の時間変化や品種ごとの傾向が見えず、平均をさらに下げられるかの判断ができません。データのままで残し、品質記録やトレーサビリティにつなげます。

フィードバックの担当を決めずに発注する

ウェイトチェッカーと充填機を別々のメーカーに発注し、通信と補正のロジックを誰が作るかを決めていない。稼働後に「信号は送っている」「信号の中身が違う」と原因の押し付け合いになります。RFPの12番で責任分界を決めておきます。

よくある質問(FAQ)

ウェイトチェッカーとは? 何ができる装置ですか?

ライン上を流れる製品を1個ずつ止めずに量り、設定した重量の範囲から外れたものを自動ではじく装置です。チェックウェイヤ、自動重量選別機とも呼ばれます。内容量の不足・過多の検出のほか、重量による個数や付属品の確認、ロットの平均と標準偏差の記録、重量データを充填機に戻して充填量を自動で直すフィードバック制御にも使えます。投資回収の面で特に大きいのは、全数のデータを使って充填の平均を表示量に近づけ、過充填を減らすことです。

ウェイトチェッカーの価格・費用はどれくらいですか?

本記事では、ベンダー価格の一次情報を使っていないため、価格の相場は示しません。モデル試算では、ウェイトチェッカー1台(リジェクトのみ)の初期費用をTHB 1,200,000、フィードバック制御ありをTHB 1,800,000と仮置きしましたが、これは計算の型を示すための値です。見積もりを比べるときは、同じ製品・同じ速度での精度、リジェクトの確実性の機能、フィードバックの範囲、データ出力、据付・教育・FAT/SATの費用、年間の保守・校正費をそろえて依頼してください。

チェックウェイヤと金属検出機の一体機は選ぶべきですか?

一体機は、ウェイトチェッカーと金属検出機を1台の架台にまとめたものです。ただし、重量の検査と異物の検査は目的が違い、異物の種類によってはX線検査装置が必要な場合もあります。どの異物を、ラインのどこで、どの装置で見るかを先に決めてから、一体機にするか別々にするかを判断します。考え方は金属検出機の選定の記事で整理しています。

ロードセル式と電磁平衡式の違いは何ですか?

ひずみゲージ式のロードセルは、荷重によるひずみを電気信号に変えて量ります。電磁平衡式(EMFR)は、荷重とつり合うように電磁力を調整し、その電流から重量を求めます。Anritsuの2012年の技術資料では、同じ計量コンベヤ長さでひずみゲージ式±2.3g、電磁平衡式±0.8gという社内実験の値が示され、高精度が要る用途は電磁平衡式、入り数不足のチェックなどはコストの低いひずみゲージ式が勧められています。ただし、精度の統計的な定義と試験条件は資料に書かれていないので、自社の製品と速度で比べてください。

タイではウェイトチェッカーの検定が必要ですか?

本記事では確認できていません。タイの度量衡法は、商品の売買などの取引に使う計量器に検査・検定を求めています(政府機関の要約資料による)。しかし、工程内で選別にだけ使うウェイトチェッカーがその対象になるかは確認できませんでした。必要とも不要とも断定できないため、中央度量衡局または専門家に確認してください。なお、包装商品の量の表示と許容誤差は、2018年3月12日付の商務省告示で定められています。

過充填はどれくらい削減できますか? フィードバック制御で変わりますか?

工場によってまったく違うので、一般的な削減量は示せません。本記事のモデル試算(すべて仮置き値)では、平均206.0gのラインで、リジェクトのみの案Aで203.0gまで(1袋3.0g減)、フィードバック制御ありの案Bで201.5gまで(1袋4.5g減)下げると置きました。どこまで下げられるかは、充填機のばらつき、ウェイトチェッカーの精度、そしてタイの告示の許容誤差で決まります。まず今の充填の平均とばらつきを連続サンプルで測ってください。

平均を表示量ぎりぎりまで下げてもよいですか?

平均要件があるので、ぎりぎりまでは下げられません。国際的な参考であるOIML R 87では、平均の実内容量が表示量以上であることに加え、不足量の大きい袋の割合にも上限があります(表示量200gなら許容不足量Tは9g)。ばらつきが大きいまま平均を下げると、これらの要件に近づき、リジェクトも増えます。タイでは2018年の告示の許容誤差を確認したうえで、自社の充填のばらつきから安全な平均を決めてください。

まとめ

  • ウェイトチェッカーの選定で投資回収を決めるのは、不良品をはじく数ではなく、充填の平均を表示量にどこまで安全に寄せられるか(過充填をどれだけ減らせるか)
  • 決める順番は、①今の充填を測る、②精度と速度を決める、③出口を設計する、④法定計量と記録を設計する、⑤受入試験で確かめる、の5つ
  • モデル試算(仮置き値)では、平均206.0gのラインで、リジェクトのみの案Aが約0.7年、フィードバックありの案Bが約0.6年で回収。今の平均がすでに203.0gなら、案Aは原料だけでは回収できず、案Bは約2.1年
  • 効果のほとんどは原料で、リジェクトの処理費はむしろ費用。差を生むのはフィードバック制御の有無
  • 速度を上げるほど精度は落ちる傾向があるので、RFPでは「自社の製品・自社の速度での精度」を要求する。ベンダーの数値は条件付きの公表値として読む
  • OIML R 51-1・R 87は国際的な参考。タイの許容誤差は2018年の告示で、工程内のウェイトチェッカーの検定の要否は中央度量衡局または専門家に確認する
  • 受入試験は、ASEANのガイドラインを参考になる型として、静的校正、動的繰り返し、偏置、物品分離、リジェクト確認、フィードバック、データ出力を確かめる

今の充填の平均とばらつきを連続サンプルでどう測るか、ウェイトチェッカーのRFPや受入基準をどう整理するか、といった検討の初期の段階からでも構いません。タイの工場で内容量の管理や過充填の削減を検討されている方は、検討の入り口から一緒に整理できますので、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

参考情報