工場の冷却水漏れを見つけるために「流量計を付けたい」と相談しても、循環ヘッダーの流量だけでは漏水を判定できません。閉ループでは正常時も大量の水が回り続けるからです。工場 冷却水 漏水検知 システム 導入を検討するなら、補給水、圧力、枝配管、ポンプや熱交換器周辺の濡れを一つの診断手順として設計する必要があります。本稿はタイの既設工場を想定し、調査から仕様書、FAT、SAT、運用までを具体化します。
最初に決めるのは「どの冷却水系」か
工場で「冷却水」と呼ぶ設備は一つではありません。冷却塔の散水・蒸発を含む開放系、チラーの蒸発器と負荷側を結ぶ閉ループ、機械ごとの独立した冷却回路、非常時だけ補給する回路が同じ建屋にあることもあります。配管図の色だけで同一系統と判断せず、実際の弁位置とポンプ運転、バイパス、膨張タンク、補給配管、ドレン、排気弁を現場で照合します。電磁弁が開く時間帯や保守時の排水も「正常な水の移動」です。これらを記録しないまま差分を漏れと呼べば誤報が続きます。
閉ループの基本は、保有水量が安定している運転条件で、外からの補給が継続していないことです。しかし完全密閉とみなすのも危険です。エア抜き、サンプリング、シール洗浄、補給タンクの液位制御、予定ドレンがあり得ます。導入前に系統単位で「通常の補給イベント」「意図的な排水」「停止時の圧力変化」を実測して基準線を作ります。開放型冷却塔側では蒸発とブローダウンが本来の水収支に含まれます。塔の補給量が増えただけで閉ループ漏水と決めつけず、両系統の境界にある熱交換器や補給配管の接続を確かめてください。
開放系と閉ループを混同しない水収支
冷却塔側の概念式は「補給水 ≒ 蒸発 + ブローダウン + 飛散 + 漏水 ± 貯留量変化」です。一方、安定運転中の閉ループ側で見るべきなのは「閉ループへの補給水 − 記録したドレン・サンプリング等」と圧力・膨張タンク液位の変化です。循環の往き流量と戻り流量だけの単純差分は、計器誤差、測定断面、分岐、バイパス、時間ずれで容易に揺れます。大きな循環流量の小差を扱うほど計器の不確かさが支配的になります。まずは補給水を測り、必要に応じて枝の流量と圧力を増やす順序が現実的です。
EPAのWaterSenseは施設のメーター・サブメーター読み、漏水検知機器、巡回点検を組み合わせることを勧めています。ただしこれは一般的な施設水管理のガイドであり、個別工場の閉ループ判定しきい値を示すものではありません。DOEの配水系統監査も、供給と確認できる使用量を照合し、区域別メーターや圧力管理を検討する考え方を示しています。本稿の診断手順はこれらを工場の閉ループに適用するための設計案で、装置メーカーの保証値ではありません。
何を検知するか:3段階の問いに分ける
漏水検知は「異常があるか」「どの枝か」「どこが濡れたか」を分けて考えます。第1段階は補給水の連続流入や静止時の圧力低下による異常候補の抽出です。第2段階は枝系統の流量、弁開度、運転モード、圧力の組み合わせから範囲を狭めます。第3段階はポンプシール、フランジ、熱交換器の下に置いた点検知器や検知ケーブル、目視・安全な現場確認で漏れ位置を特定します。1種類のセンサーで3段階をすべて解く設計にはしません。
DOEは配水系統で常設監視を使う場合も、漏れ位置を絞り込む別の手法と組み合わせるよう説明しています。ポンプ室についてはVEGAの公式用途例が、ポンプ近傍の圧力測定と、シール不良などで床に出た漏水を検知するポイントレベル検知を組み合わせています。これは本稿の多層診断に近い例ですが、対象液・床勾配・導電率・設置環境が異なれば、同じ機器構成がそのまま使えるとは限りません。

閉ループの補給水を最初の監視点にする
補給水ラインのメーターは、循環量より小さい「回路に新しく入った水」を直接観察できます。積算値、瞬時流量、弁の開閉状態を同じ時刻で記録してください。補給ポンプの短い充填動作が正常なら、その回数、持続時間、投入量を通常運転・停止・立上げごとに分けて保存します。水処理薬品の投入や保守作業もイベントに紐付けます。週次の積算だけでは夜間の連続少量漏れと保守日の一括補給を識別できません。逆に高頻度で全データを残せばよいわけでもなく、現場で必要な検知時間と保存コストを先に決めます。
閉ループに複数の補給入口がある場合、一本だけを測って「漏れなし」とは言えません。ヘッダーから別ラインに逆流できる配管、チラー側からの接続、仮設ホース、膨張タンクへの給水も棚卸しします。メーターが補給弁の上流にあるか下流にあるかで観測する漏れ範囲が変わります。補給ラインが他用途と共用なら、流量の用途配分か、配管の分離が必要です。計測点配置図には「この計器が含む容積・含まない容積」を線で示すべきです。
流量計を後付けするなら、停止可否と配管条件から方式を選びます。Endress+Hauserの技術説明によれば、クランプオン超音波は管外に設置でき、選定には外径、肉厚、材質、被覆、流体の音速に関する情報が必要です。つまり「配管を切らない=事前調査不要」ではありません。補給流量が断続的で小さいときは、候補計器の測定範囲、低流量特性、パルス最小単位、温度、直管長などを実機条件で照合します。製品名やカタログ精度だけで採用せず、現場でゼロ点と既存計器との比較を確認します。
圧力トレンドを「状況証拠」として使う
圧力低下は漏水の手掛かりですが、単独で確定できません。ポンプ起動停止、制御弁の動作、液温、膨張タンクのガス圧、エア抜き、センサー位置によって圧力が変わります。まず運転モードをタグ化し、同じモード同士で圧力を比べます。供給ヘッダーと戻りヘッダー、最も遠い枝の差圧を見る場合は、高低差とセンサー校正も合わせます。停止後の圧力減衰試験を行う場合は、設備メーカーの許容範囲と安全手順に従い、隔離条件を記録します。
異常判定には、補給水と圧力の「同時性」が役立ちます。たとえば補給弁が通常より頻繁に開き、同じ運転モードで圧力回復が遅いなら調査優先度を上げられます。一方、冷却負荷の変化に伴って流量と差圧が動いたが補給は無い場合、まず制御弁やポンプの運転を確認します。圧力データのタイムスタンプが流量計とずれていると因果が逆に見えるため、PLC・ゲートウェイ・サーバーの時刻同期と欠測フラグを仕様に含めます。
枝配管をどこまで測るか
すべての枝に流量計を付ける設計は、費用と停止工事の割に情報が増えないことがあります。枝を選ぶ基準は、過去の補給イベント、漏れ履歴、配管年数、アクセスの難しさ、漏れ時に止まる生産設備の影響です。熱交換器群を一括で一枝とするか、重要機械だけ独立させるかを現場で決めます。まずヘッダーと重大な枝2~3系統で試験し、検知できないシナリオが残れば追加する方式が合理的です。「2~3」は推奨された普遍的台数ではなく、段階導入の例です。
枝の往きと戻りを比較するなら同じ時間窓で積算し、校正と配管の境界を揃えます。分岐、バイパス、ドレン、逆止弁、他設備への接続が二点間にあれば差分の意味が変わります。差分が計器の総合不確かさと同程度なら「漏れ」と断定せず、補給水、圧力、現場検知との照合に回します。枝計測の目的がエネルギー制御か漏水診断かで必要な下限流量と検知時間は異なるため、RFPで目的を明記します。一般的な冷却水流量監視のPoC・受入設計は測定点全体の選び方を扱い、本稿は閉ループの漏れ判定に絞ります。

ポンプ・熱交換器の局所検知をどう置くか
局所検知にはスポットセンサーと検知ケーブルがあります。スポットセンサーは特定の低所、ドレンパン、ポンプシール直下などに向きます。検知ケーブルは長い機器列や配管下を覆える一方、別の水源が流れ込む経路や清掃水への応答を評価する必要があります。センサーを設置する「濡れやすい位置」は図面だけでは分からず、床勾配、排水溝、保温材、結露、洗浄作業、台車動線を現場で見ます。検知した水が冷却水なのか、空調ドレンや清掃水なのかはセンサー単独では判定できないことが多い点も明記します。
熱交換器の内部漏れは床を濡らさない場合があります。二次側への混入、圧力関係、補給量、流体性状の変化を別途評価しなければなりません。水質に関する監視は目的が違うため、冷却塔の水質監視と混同しないでください。外部漏れならスポット・ケーブルが有効な場所でも、内部漏れには水収支や分析の手順が必要です。漏水が電気盤や製品に達する前に見つけたい場所を優先して保護し、単にセンサー本数を増やすことをKPIにしません。
アラームは「検知」と「対応」を分けて設計する
アラームが鳴ることと損失を止めることは別です。画面上の赤表示だけでは、夜勤が誰に連絡するか、どの弁を閉めてよいか、製造を止める権限が誰にあるかが分かりません。アラーム仕様には対象設備、条件、遅延、解除条件、優先度、連絡先、確認期限、記録方法を入れます。受信確認と復旧確認を別の操作にし、監視センターで消音しても現場の故障が消えたように見えない設計にします。通信断・センサー故障・補給弁状態不明は「正常」扱いにせず、データ品質の別アラームで示します。
初期しきい値は現場の基準期間のデータから決めます。たとえば「停止中なのに補給が継続」「運転モードが同じなのに補給回数が増加」「補給と圧力低下が同時」という条件を候補にし、正常イベントを除外します。値を本稿から一律に転記することはできません。小さすぎるしきい値は結露や充填を漏れと誤認し、大きすぎれば小漏れを見逃します。試運転中は警報履歴を作業記録と照合し、誤報・見逃し・遅延を定量的に評価してから本番値を承認します。
自動遮断弁は便利ですが、誤遮断が設備冷却を止め、製品と安全に影響する可能性があります。遮断を自動化する回路と、通知して人が判断する回路を区分してください。自動遮断の対象にするなら、フェイルセーフ位置、停電・通信断・手動復帰、圧力上昇、水撃、非常停止との関係を設備側で確認します。水が漏れた場所だけを隔離できる弁構成か、隔離後に別設備へ逆流しないかも検証します。試験で安全に発生させられない事故条件はシミュレーションと弁単体試験を組み合わせます。
現場調査の順番:配管図より先に境界を確かめる
初回ウォークダウンでは、P&IDと実配管の相違、バイパス弁の常時位置、補給入口、膨張タンク、ドレン、サンプリング点をマーキングします。次に各ポンプの運転パターンと生産シフト、週末停止、洗浄日を確認します。過去の補給履歴がない工場では、仮設計器または手読みによる基準データ取得を提案します。結露と過去の漏水跡、ケーブルの敷設可能経路、点検スペース、既設PLCの予備I/O、ネットワーク、電源、保全担当者の運用も同時に見ます。現場調査報告書には写真だけでなく、未確認の弁と不確かな系統境界を残します。
調査後は異常シナリオを三つ以上具体化します。例は「停止中の枝フランジから少量漏れ」「ポンプシールから床へ漏れ」「熱交換器内部で二次側へ移る水」です。各シナリオについて、最初に変化する計測値、検知不能条件、確認に行く場所、許容できる検知時間、対応者を書きます。センサー選定はこの表の後です。シナリオがないRFPでは、納入者が計測点数と画面枚数を見積もっても、何を受け入れるか合意できません。
この時点で製造、設備保全、品質、安全、ITの担当者が同じ図面を見ることにも意味があります。製造は「いつなら止められるか」、保全は「どの弁を閉められるか」、品質は「製品に水が触れたときに何を隔離するか」、安全は「漏れた水が通電部へ到達するか」、ITは「警報を誰にどう届けるか」を確認します。一部門だけで計測点を決めると、センサーは正常に働いても、停電や通信断のときに誰も対応できない設計になりがちです。会議では結論だけでなく、確認できなかった配管と未確定の担当者も課題として残し、設置工事の前に解消します。
RFPに書くべき仕様と書いてはいけない曖昧語
冷媒・水質とセンサーの適合を先に試す
冷却回路の液体を一律に「水」と書かないでください。防錆剤、殺菌剤、グリコールを含むか、純水に近いかで、濡れ検知の原理が合わない場合があります。導電性の液体を検出するケーブルでは、液体の電気特性が重要です。RLEの導電性液体用ケーブルの資料は、適合するプロピレングリコール水溶液の範囲を示す一方、純粋な脱イオン水や非導電性液体は検出できないと明記しています。この数値範囲を他社製品へ一般化せず、採用候補ごとに実液または代表サンプルで検知試験を求めます。薬品の変更予定がある工場では、現在の液体だけで試験を終えないことも大切です。
床に置くセンサーは、感度だけでなく清掃と復旧を考えます。ケーブルに油、粉じん、洗浄剤が付く環境なら、保全員が安全に取り出して清掃できる敷設か、交換できる長さかを確認します。検知区画が広すぎると「漏れた」ことは分かっても場所を探すのに時間がかかります。区画を細かくしすぎると配線と保守点数が増えます。漏水が床面を流れる経路と巡回の動線を重ね、同じ通知でも「ポンプA下」と「熱交換器列」を区別できる単位を決めます。
外部システム接続も製品仕様と実際の制御盤を突き合わせます。RLEのゾーンコントローラーの一例は、検知ケーブルまたはスポットセンサーを接続し、Modbus RTUやBACnet MS/TPでBMSへ伝える構成を示しています。しかし通信可能というカタログ表示だけでは、既設PLCが必要な点数、故障状態、タイムスタンプを受けられる保証にはなりません。RFPには漏水・断線・通信断のタグ一覧と、どの異常が現場ブザーまで届くかを書き、FATで模擬信号を通して確認します。制御系へ書き込みを許すかは、遮断設計を承認した後に限定します。
検知できない漏れを設計書に残す
どの方式にも検知不能条件があります。床センサーは内部漏れを見ません。補給水計は複数の未計測入口を見逃します。圧力は温度と制御の影響を受けます。枝差分は計器の不確かさ以下の漏れを判定しにくくなります。発注書には、これらを「メーカーの欠陥」として曖昧に扱うのではなく、設計上の適用範囲として記してください。漏れの兆候があっても位置が確定しない場合の巡回、サンプル採取、隔離試験の手順を用意します。これがあると、運転員が警報を見た直後に無理な遮断をせず、設備に許された順序で確かめられます。
RFPには系統境界の図、主配管と補給配管の径・材質・保温、流体と温度、使用可能な停止時間、電源と通信、既設制御との責任境界を添付します。「漏れをリアルタイムに検出」とだけ書かず、どのシナリオをどの時間内に、どの誤報条件を除外して、誰に通知するかを受入条件にします。誤報率を要求するなら、その評価期間と母数、保守作業を除外するかも決めます。計器精度を求める際は、仕様書上の% of readingと% of full scaleを混同せず、必要な低流量領域での性能を指定してください。
納入範囲にはセンサー、取付金具、配線、盤、ゲートウェイ、時刻同期、データ保存、画面、権限、バックアップ、図面更新、教育、予備品、保守窓口を列記します。PLCやSCADAに既存資産があればタグ命名と履歴データの引渡形式を合わせます。クラウド利用を前提とする場合も、通信断の現場アラームが働くか、復旧後に欠測と遡及データを区別できるかを確認します。既設の制御ネットワークへ接続するなら、読み取り専用点と書き込み可能点を分け、アクセス権と変更手順を承認してから接続します。
| RFPの項目 | 発注者が記す内容 | 受入で見る証拠 |
|---|---|---|
| 系統境界 | 補給・ドレン・枝・弁・熱交換器の接続 | 現場確認済みP&ID |
| 検知目的 | 異常候補、枝絞り込み、局所濡れのどこまでか | シナリオ別試験表 |
| 計測 | 低流量、温度、配管条件、校正方法 | 校正記録と実測比較 |
| 通知 | 夜勤、通信断、誤報、復旧の扱い | アラーム履歴と連絡試験 |
| 安全 | 遮断権限、停電時位置、手動復帰 | インターロック試験記録 |
| データ | 時刻同期、欠測、保存、出力形式 | タグ一覧とサンプルデータ |
FATとSATで「本当に漏れを見つける」を確認する
FAT(工場出荷前試験)では、装置とソフトウェアの単体機能を、現場に持ち込む前に確認します。仮の流量・圧力・液位信号を入力し、正常補給、継続補給、圧力低下、センサー断線、通信断を再現します。正しい設備名でアラームが表示され、通知、確認、復旧が履歴に残ることを試します。演算式、時間窓、単位変換、時刻同期、CSV出力も検証します。FATで通ったからといって現場の配管境界とセンサー位置が正しい証拠にはなりません。
SAT(現地受入試験)では実配管・実流体・実運転で計測値を照合します。補給弁を安全な手順で動かし、流量と状態が一致するか確認します。許可された模擬濡れ試験でスポット・ケーブルの応答と、掃除後の復帰を確認します。圧力変化はポンプ起動、弁切替、停止など現実のイベントと突き合わせます。実漏れを故意に起こす必要はありません。試験手順は製造と保全が事前承認し、隔離が必要な箇所ではロックアウトと復旧確認を含めます。運転中に生産へ影響する試験は停止枠に回します。
SAT結果の「合格」は、単なる警報点灯ではありません。シナリオ別に検知までの時間、通知到達、操作権限、記録、復旧、誤報の扱いが承認され、保全担当者が手順を実行できることです。試験できなかった内部漏れや特殊運転は未検証条件として明記し、後日の点検・分析に渡します。残課題に期限と責任者を付けてから引き渡します。試験ログを添付すれば、しきい値を変更した時に当初の前提へ戻って比較できます。

導入費用は計器本数だけで比較しない
費用は、現場調査、配管・電気工事、計器、接続、画面、試験、運用教育、保守に分けます。配管を切る工事が必要か、既設I/Oに余裕があるか、夜間停止が必要かで見積りは変わります。補給水メーターだけの小規模試行と、全枝の流量計・圧力計・検知ケーブル・遮断弁を含む構成を一列の単価で比較しないでください。価格を先に固定するより、守りたい設備と漏れ時の損失、発見に許せる時間から段階的な構成を見積もる方が意味があります。本稿はベンダー価格や回収年数を断定しません。
見積比較表では、計測対象容積、検知できるシナリオ、見逃しやすい状態、停止工事の範囲、責任境界、校正・交換費用を並べます。安い構成でも、ポンプ室の床漏れを早く知らせる目的には十分な場合があります。逆に製品ライン停止のリスクが高い熱交換器を守るなら、補給水だけでは位置の特定が遅れます。候補ごとに「何を検知しないか」を明記させると、過剰な機能表より比較しやすくなります。水の全体像を先に整理する場合は、当社の工場の水使用量監視と計測点設計も参考になります。
比較の際は「設置一式」というまとめ方を避け、測定点ごとの機器、取付、配線、既設盤改造、試運転、教育を分けてください。配管径が同じでも保温材の撤去・復旧、作業床の高さ、防水区画の貫通、稼働中設備への近接で工数は変わります。ソフトウェア費用には、アラーム条件を後で変更できる権限、履歴保存期間、データの持ち出し、障害時の復元を含めます。保守契約では、センサーの点検を誰が行い、誤報が続く際にどの記録を渡し、何時間以内に現地対応するかを確認します。初期価格が低くても、故障時に使えない期間が長い構成は、守りたい設備に合わない可能性があります。
段階導入の判断も、単に「まず安いものを買う」ではありません。第1段階で補給水と運転イベントを記録し、どの時間帯・枝・設備で説明不能な補給が起きるかを確かめます。第2段階で、その原因候補を区別するための圧力または枝流量を追加します。第3段階で、水が出たときに被害が大きい局所へスポット検知やケーブルを配置します。この順序であれば、毎回「追加した計測点によってどの判断が変わるか」を説明できます。ただし電気盤直上の漏れのように発見遅延の影響が大きい場所は、基準データの収集を待たずに局所検知を先行させるべきです。優先順位は被害と現場の安全性で決めます。
運用開始後の30日で見直すこと
本稼働直後は、補給イベントとアラームを毎日照合します。保全作業や薬液補給が警報になったら、作業を隠すためにしきい値を緩めるのではなく、記録の連携とイベント分類を直します。センサーが汚れや清掃水に反応したら、設置位置とカバー方法を再検討します。通信断の時間帯に漏れが起きても追えないなら、現場側の履歴保持か独立警報を追加する判断が必要です。月末には「検知数」ではなく、確認までの時間、原因特定までの時間、誤報の理由、修理完了と再発を振り返ります。
点検手順には、検知器の模擬濡れ、流量計のゼロ・積算照合、圧力計の妥当性、アラームの連絡先、バックアップからの復元確認を組み込みます。校正・交換頻度は採用機器のメーカー手順と現場条件で決めます。図面とタグ台帳を変更管理に載せ、配管改造時には検知範囲も再評価します。運用者の交代後に「なぜこのセンサーがここにあるのか」が説明できるよう、各計測点に対象シナリオを紐付けた一覧を残してください。
異常発生時の記録は、アラーム時刻だけでは足りません。最初に気づいた人、現場で確認した水の位置、直前のポンプ・弁の状態、補給量、隔離操作、製造への影響、修理箇所、再起動後の確認値を一件の履歴として残します。写真を添える場合は、後で配管番号が分かるよう撮影位置も記します。これらがそろうと、次の同種アラームで「前回と同じ漏れか」「別の枝か」を判断しやすくなります。一方、記録者が原因を断定できない段階では、画面上も「漏水疑い」と「漏水確認」を分けて表示し、未確認のまま修理完了にしない運用が必要です。
しきい値を変更したときは、変更前後の値、理由、承認者、適用日時を保存します。誤報を止めるための一時的な警報停止には、対象設備、開始・終了予定、代替の巡回方法を設定します。無期限のミュートは小さな漏れを見逃す原因になります。週末・長期休暇・雨季の高湿度など、平日の基準線と異なる条件では追加の確認が要るか検討してください。検知器が水に触れたあとも、故障・汚れ・断線が無いことを確かめてから監視へ戻します。こうした復旧手順まで決めて初めて、SATで合格した仕組みが日常運用でも働き続けます。
よくある質問
冷却水の漏れは循環流量だけで分かりますか?
循環流量だけでは通常運転の流れと漏れを分けにくい場合が多いです。補給水量、圧力、弁・ポンプの状態、局所検知を組み合わせ、同じ運転モードで比較します。枝の往き・戻り差を使う場合は、計器誤差と配管境界を計算に含めます。
既設配管を止めずに漏水検知を導入できますか?
管外設置のクランプオン流量計や床面の検知器は停止工事を減らせる可能性があります。ただし配管条件の確認、取付、校正、電源・通信、運転中の安全対策は必要です。自動遮断弁や配管内センサーの設置は停止が必要な場合があるため、現場調査で切り分けます。
補給水が増えたら必ず漏れですか?
いいえ。充填、エア抜き、サンプリング、ドレン、保守、弁の動作を除外してから調べます。開放型冷却塔の蒸発やブローダウンは正常な水収支に含まれるため、塔の補給増を閉ループ漏れと混同しません。
漏水検知システムの費用はいくらですか?
配管条件、計器方式、監視する枝数、既設PLCとの接続、通知・遮断範囲、試験と教育で変わります。金額だけを比較する前に、対象シナリオと受入基準を同じにした複数案を依頼してください。
FATとSATでは何が違いますか?
FATは納入前に信号・演算・警報・履歴の動作を模擬入力で確認します。SATは現地の配管、流体、運転、通知先を含む実環境で確認します。両方を通じて安全な隔離手順と未検証条件を記録します。
まとめ
閉ループ冷却水の漏水検知は、循環流量の画面を増やすだけでは完成しません。系統境界を現場で確かめ、補給水と圧力で異常候補を拾い、重要な枝とポンプ・熱交換器周辺で範囲と位置を絞ります。アラームは確認と隔離の担当まで設計し、RFPでシナリオ別の受入条件を定め、FATとSATで検証します。開放型冷却塔の蒸発・ブローダウンとは別の水収支として扱うことが、誤報を抑える第一歩です。
タイの既設工場で閉ループ冷却水の計測点、停止可能時間、RFPの範囲を整理する段階なら、TOMAS TECHへのお問い合わせで現状の配管図と困っている漏れシナリオを共有いただけます。機器の選定前の相談でも構いません。
参考情報
- U.S. EPA WaterSense at Work, Section 2.3: Leak Detection and Repair — メーター、漏水機器、巡回点検の基本。
- U.S. EPA WaterSense at Work, Section 2.2: Leak Detection and Repair (2023) — フロー監視と表面漏水センサーを組み合わせる考え方。
- U.S. DOE FEMP, Distribution System Audits, Leak Detection, and Repair — 水収支、区域計測、圧力管理、位置特定。
- U.S. DOE FEMP, Distribution System Leak Detection — 常設監視と現場での位置特定の役割。
- Endress+Hauser, Ultrasonic flowmeter sensors — クランプオン式の原理と事前に必要な配管情報。
- Endress+Hauser, Proline Prosonic Flow W 400 — 水用超音波流量計の製品例。採用可否は現場条件で判断。
- VEGA, Pump room pressure monitoring and flood protection — ポンプ近傍の圧力と局所漏水検知の用途例。
- RLE, Conductive Fluid Sensing Cable — 導電性流体用ケーブルの適合範囲と除外条件。
- RLE, BMS-LD3Z — ケーブル・スポット検知器とBMS接続の製品例。