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2026.08.18

水使用量 監視|タイ工場で電力より遅れる理由と計測点設計2026

水使用量 監視|タイ工場で電力より遅れる理由と計測点設計2026

タイの工場では電力の見える化がこの10年で着実に進みました。一方で水使用量 監視は、受水槽の入口メーターを月に一度読むだけ、という状態で止まっている工場が少なくありません。しかし2026年、EECの工業用水需給は目に見えて逼迫し、工業団地側が節水と再利用を求め始めています。本記事では、水の計測が電力より技術的に難しい理由と、計測点をどう設計するかを実務目線で整理します。

なぜ2026年のタイで水使用量 監視が急に問われ始めたのか

「水は安いから測らなくていい」。タイで工場を運営されている方から、これまで何度も聞いてきた言葉です。実際、電気代に比べれば水道料金の請求額は小さく、経営会議の議題に上がることはほとんどありませんでした。その前提が、EECではいま急速に崩れ始めています。

EECの41工業団地・約6,000工場で需要が供給を上回っている

タイ東部経済回廊(EEC)は、チョンブリ・ラヨーン・チャチュンサオの3県で構成される工業集積地です。報道によれば、この3県には41の工業団地に約6,000の工場が立地し、工業用水の需要は日量150万立方メートルに達しています。これに対してIEAT(タイ工業団地公社)が準備している量は118万立方メートルで、需要に対して不足がある状態です。

単純に差し引けば日量32万立方メートルの開きということになります。これは日常的に断水が起きる水準という意味ではなく、需要側の伸びに供給計画が追いついていない、という構造の話です。工業団地の運営側から見れば、新規の入居申請に対して「水の手当てができるか」を審査する必要が出てきますし、既存入居者に対しても使用量の抑制を求める動機が生まれます。

工場側から見たときに重要なのは、この不足が「いつか誰かが解決してくれる問題」ではなく、団地からの要請という形で自社に降りてくる、という点です。そして要請が来たときに最初に聞かれるのは、たいてい「御社は月にどれだけ使っていますか」「何にどれだけ使っていますか」という質問です。前者は請求書で答えられますが、後者は計測がなければ答えられません。

データセンターとAI投資が水需要を押し上げている

需要側の伸びを牽引しているのが、データセンターとクラウド投資です。報道では、EEC関連だけで47件のデータセンター・クラウドサービスの投資申請があり、投資額は合計1730億バーツ(約50億ドル)規模とされています。

データセンターは冷却に水を使います。大規模な施設ほど冷却負荷が大きく、外気温の高いタイでは水冷方式の比重が上がります。2026年4月時点の報道では、AIインフラの拡大がタイの水ストレス地域にとって脅威になっているという指摘も出ています。

ここで製造業の立場として押さえておきたいのは、データセンターと工場が同じ水源とパイプラインを共有している、という事実です。新しい大口需要家が同じ配管網につながるということは、供給側の余裕が薄くなるということです。自社の使用量が変わらなくても、周囲の需要が増えれば、団地からの節水要請や料金体系の見直しは現実味を帯びてきます。

論点は「断水の恐怖」ではなく「コストと使用制限」

一方で、過度に危機を煽る書き方をするつもりはありません。バンコク首都圏水道公社(MWA)は2026年を通して安定供給の見通しを示しており、断水は想定していないと発表しています。MWAの給水区域は首都圏でEEC三県とは別ですが、少なくとも明日蛇口から水が出なくなる、という段階の話ではない、という温度感は共有しておきたいところです。

工場が備えるべきなのは、次の2点です。

  • 工業用水のコストが今後上がったときに、自社のどこが効いてくるのかを説明できること
  • 工業団地から使用量の抑制や再利用率の報告を求められたときに、数字で応じられること

どちらも、根っこにあるのは同じ問いです。自社の水が、どの工程で、どれだけ使われているのか。この問いに答えるための仕組みが水使用量 監視です。そして厄介なことに、この仕組みは電力の見える化と同じようには作れません。

電力監視と水使用量 監視の決定的な違いは「後付けのしやすさ」

水使用量 監視|タイ工場で電力より遅れる理由と計測点設計2026 - figure 1

工場のエネルギー監視というと、多くの方が電力計の設置を思い浮かべます。実際、電力の見える化は導入のハードルが低く、この10年でタイの日系工場にもかなり普及しました。ところが同じ発想で水に手を出そうとすると、最初の見積もりの段階で止まります。理由は技術的なもので、それがそのまま「電力だけ進んで水が置き去りになった」構造の原因になっています。

電力はCTクランプで、配線を切らずに測れる

電力の計測に使うCT(カレントトランス)は、電線をリング状のセンサーで挟むだけで電流を検出します。配線を切る必要も、電源を落とす必要も、原則としてありません。分割型のクランプCTであれば、活線状態のまま既設のケーブルに後付けできます。

これがどれほど大きな利点かは、工事の段取りを考えると分かります。生産を止めずに、休日出勤も停電作業も要らずに、分電盤の扉を開けて数十分で1回路分の計測点が増える。この手軽さがあるからこそ、「まず主要な10回路から」といった段階的な導入が成立してきました。もちろん活線の盤内作業ですので、有資格者による施工と保護具の着用は前提です。それでも生産を止めずに済むという点が、水との決定的な差になります。電力側の計測点の決め方や費用構造についてはエネルギー監視システムの費用と導入手順|タイ工場の電力見える化で整理していますので、あわせてご覧ください。

水は配管を切って流量計を割り込ませることが多い

水の計測は事情が違います。工業用途で広く使われる電磁流量計やパドル式(羽根車式)流量計は、いずれも管路の中に測定部を置くインライン型です。設置するには、対象の配管を切断し、フランジや継手を組んで流量計を割り込ませ、復旧して漏れ試験をする必要があります。

つまり、1点増やすたびに次の作業が発生します。

  • 該当系統の断水(生産設備への給水を止める)
  • 配管の切断と加工、フランジや継手の追加
  • 復旧後の耐圧・漏れ確認と、系統内のエア抜き
  • 材質によっては溶接や接着の養生待ち

電力のCTクランプが数十分で済む作業に対して、水は半日から1日、系統によっては休日工事が前提になります。1点あたりの工事費も、当然ながら大きく変わってきます。「まず10点から」が電力では現実的でも、水では検討の段階で数が絞られる理由がここにあります。

超音波クランプオン式は万能ではない

「水にも外付けのセンサーがあるはずだ」と考えられる方も多いはずです。実際、超音波クランプオン式の流量計は、配管の外側にセンサーを取り付けるだけで流量を測れます。配管を切らないという点で、電力のCTクランプに最も近い方式です。

ただし、この方式は適用条件が明確にあります。実務でつまずきやすいのは次のような点です。

  • 配管の材質と肉厚。超音波が透過しにくい材質、内面ライニングのある配管、モルタルライニングの鋳鉄管などは測定が難しくなります
  • 内面のスケールや錆こぶ。長年使われた配管では、内面の付着物が超音波の伝搬を乱し、指示値が安定しません
  • 直管長の確保。センサーの上流側・下流側に一定の直管区間が必要で、エルボや弁の直後には付けられません
  • 満管であること。配管の中が水で満たされていないと測定できず、落とし込み配管や自然流下の排水系統は不向きです
  • 流速の下限。流れが遅すぎると検出できないため、太い配管に少量しか流れていない箇所は測れません
  • 気泡と屋外環境。空気の混入、直射日光や雨がかりによるセンサーの劣化も、長期の安定性に影響します

つまり、超音波クランプオン式は「配管を切らずに済むかもしれない選択肢」であって、どこにでも付けられる万能解ではありません。既設配管の状態を現地で確認したうえで、点ごとに可否を判断する必要があります。この現地確認の工程が入ること自体が、電力との大きな違いです。

電力と水の計測を並べて比較する

ここまでの違いを整理すると、次のようになります。

観点電力の計測水の計測
代表的なセンサー分割型CTクランプ電磁流量計、パドル式、超音波クランプオン
既設への後付け活線のまま挟むだけ多くの場合は配管切断が必要
生産停止の要否原則不要系統の断水が必要になることが多い
1点あたりの工事時間数十分半日から1日、系統により休日工事
事前の現地確認回路構成の把握で足りる管材、肉厚、直管長、内面状態の確認が要る
段階的な追加容易。点数を増やしやすい点数追加のたびに工事が発生する
計測できない条件限定的。ケーブル径、盤内スペース、極小電流などで制約非満管、低流速、特殊管材などで不可

この表を見れば、なぜ多くの工場で電力だけが見える化され、水が置き去りになったのかが分かります。技術者が水を軽視していたわけではなく、後付けの難易度が単純に違ったのです。

そして、この難易度の差は「だから水は諦める」という結論には結び付きません。むしろ「後から気軽に増やせないのだから、最初の計測点設計が電力以上に重要になる」という結論に結び付きます。ここが本記事のいちばん伝えたい部分です。

工場のどこで水が消えているのか、なぜ見えないのか

計測点の設計に入る前に、そもそも工場の水がどこへ行っているのかを整理しておきます。ここが曖昧なまま流量計を発注すると、測ったけれど何も分からない、という結果になります。

見えているのは受水槽入口の1点だけ

多くの工場で、水に関して存在する計測点は事実上ひとつです。団地や水道公社から引き込んだ配管に付いている、料金計算用のメーター。あるいは受水槽の入口メーター。月末にこの数字を読み、前月との差を工務が記録する。それで終わりです。

この1点で分かるのは、工場全体で今月何立方メートル使ったか、という総量だけです。前月比が10%増えていたとして、増えた理由が生産量の増加なのか、冷却塔のブロー設定を誰かが変えたのか、どこかで漏れているのかは、この数字からは決して読み取れません。

電力の「分電盤ごとの内訳」と比べると非対称がはっきりする

電力監視を導入済みの工場では、この状況とまったく違う景色が見えているはずです。受電点の総量に加えて、動力系と電灯系、主要な生産ラインごと、コンプレッサー、空調、といった単位で内訳が取れています。だからこそ「先月の電気代増加のうち、半分はコンプレッサーだった」といった分解ができます。

水は、この内訳がまるごと欠けています。総量はあるが内訳がない。電力で当たり前にやっている分解を、水ではまったくやっていない。これが多くのタイの工場の実情です。

工場の水が消える主な行き先

内訳を作るために、まず候補を並べます。業種によって比重は変わりますが、一般的な製造工場では次のような使い道に分かれます。

用途典型的な設備水が減る仕組み
冷却塔の補給水クーリングタワー、チラー蒸発、飛散、ブローダウンで系外へ出る
洗浄・すすぎ部品洗浄機、CIP、金型洗浄排水として系外へ出る
ボイラ給水蒸気ボイラ、給湯設備蒸気として散逸、ブローで排出
製品への混入調合、めっき、塗装の前処理製品や中間品に取り込まれる
生活用水食堂、トイレ、シャワー生産量と連動しない固定的な使用
漏水・不明埋設配管、老朽継手、閉め忘れ誰も使っていないのに減る

この表で注目していただきたいのは、いちばん下の行です。漏水と不明分は、計測点がなければ永遠に見つかりません。総量しか見ていない工場では、漏水は「なんとなく使用量が多い」という感覚の中に溶けてしまいます。

「総量 − 計測分 = 未計測分」を残す設計にする

計測点を設計するときの原則をひとつだけ挙げるなら、これです。総量から個別の計測値を引いた残りを、必ず「未計測分」として台帳に残してください。

工程別に何点か流量計を付けると、どうしてもその合計と総量は一致しません。一致しないこと自体は正常です。問題は、その差を放置するか、追跡可能な数字として管理するかです。未計測分を毎月グラフに残しておくと、ある月に未計測分だけが跳ね上がったときに、漏水や設定変更を疑うきっかけになります。逆にこの欄がないと、増加分がどこかの工程に紛れて見えなくなります。

この考え方は、エネルギー管理の基本と同じです。ISO 50001のエネルギーレビューでも、現状のエネルギー使用を評価して重要な使用設備を特定することが求められますが、そのとき「どこまで実測で押さえられているか」を整理しておくと作業が進めやすくなります。詳しくはISO50001エネルギー管理2026|投資回収は電力の見える化からで整理していますので、認証取得を検討中の方は参考にしてください。

水使用量 監視の計測点設計|3階層で少しずつ広げる

水使用量 監視|タイ工場で電力より遅れる理由と計測点設計2026 - figure 2

ここからが本題です。電力のように気軽に点数を増やせない以上、最初にどこへ付けるかの設計品質が、そのまま投資対効果を決めます。弊社では、水の計測点を3つの階層に分けて考えることを推奨しています。

第1層 受入|総量と系統別の入口

最初の層は、工場に入ってくる水そのものです。すでに料金メーターがある場合でも、ここをデジタル化する価値があります。月次でしか読めない数字を、時間別あるいは日別で読めるようにするだけで、見え方が変わります。

たとえば、生産を止めている日曜日の使用量がゼロにならないなら、その分は漏水、生活用水、止め忘れた設備、待機運転中の冷却塔やチラー、受水槽のボールタップ補給といった要因のいずれかです。総量メーターを時間軸で見るだけで、切り分けの入口に立てます。井戸水や再生水を併用している工場では、水源ごとに分けて計測してください。

第1層は計測点の数としては1点から3点程度で、ほとんどの場合は既設メーターへのパルス出力の追加か、引込直後の1点への流量計設置で足ります。工事の負担も相対的に小さく、最初に着手すべき層です。

第2層 工程別|水を多く使う設備の分岐

次の層が、本当の内訳を作る部分であり、設計がいちばん難しい層でもあります。原則は「使用量の大きい順に、分岐の根元へ付ける」です。

現実的な優先順位は、多くの工場で次の順になります。

  • 冷却塔の補給水ライン。連続的に流れ、蒸発とブローで確実に消費されるため、金額インパクトが大きい
  • ボイラ給水ライン。蒸気を使う工場では冷却塔と並ぶ大口
  • 洗浄工程への給水ライン。バッチ運転のため、運用の見直し余地が大きい
  • 生活用水系統。生産量と連動しないため、分けておくと原単位の計算が正確になる

ここで重要なのが、「工程ごと」ではなく「分岐の根元ごと」に考えることです。工程別に完璧な内訳を作ろうとすると計測点が20点、30点と膨らみ、工事費だけで検討が止まります。既設の配管がどこで分岐しているかを図面と現地で確認し、少ない点数で大きな塊を切り分けられる場所を探してください。分岐が細かく分かれすぎている系統は、上流側の1点でまとめて測り、内訳は後の段階に回します。

第2層は3点から8点程度に収めるのが現実的です。この層の設計が終わった時点で、工場の水の大部分が説明できる状態になっていれば十分です。弊社の経験則としては、総量のうち内訳で説明できない残りが2割前後まで下がっていれば、次の段階に進んで構いません。

第3層 排出|排水口と再利用可能量

3つ目の層が排水側です。取水だけを測っている工場は多いのですが、排水を測っていないと、3Rのうちreuse(再利用)とrecycle(リサイクル)の検討ができません。

排水を計測する意味は3つあります。第一に、取水量と排水量の差から、蒸発や製品への混入といった「戻ってこない水」の量が推定できること。第二に、再利用の検討をするときに、どの排水口にどれだけの量が出ているかが分からなければ、回収設備の容量が決められないこと。第三に、工業団地への報告や環境許認可の対応で、排水量の記録を求められる場面があることです。

ただし排水側は、非満管の開水路や自然流下の配管が多く、超音波クランプオン式が使えないケースが目立ちます。開水路であれば堰やパーシャルフリュームといった一次装置を設け、その水位を超音波レベル計で測って流量に換算する。満管の圧送ラインであれば電磁流量計。というように、点ごとに方式を選び分ける必要があります。超音波レベル計が測っているのはあくまで水位であって流量ではない、という点は押さえておいてください。

3階層の設計をまとめる

3つの層を表にすると、優先度と工事の重さの関係がはっきりします。

階層測る対象目安の点数主な目的工事の重さ
第1層 受入引込総量、水源別入口1点から3点総量の時間別把握、休日漏水の検出軽い
第2層 工程別冷却塔、ボイラ、洗浄、生活用水3点から8点内訳の作成、原単位の算出重い
第3層 排出主要排水口、再利用候補ライン1点から4点再利用量の検討、報告対応中程度

この表のとおり、いきなり全階層を同時に着工する必要はありません。第1層を入れて数か月運用し、そこで見えた偏りをもとに第2層の位置を決める、という進め方のほうが、計測点の空振りを減らせます。

流量計の方式は点ごとに選び分ける

計測点が決まったら、次は方式の選定です。「全部この方式で」と決め打ちすると、必ずどこかで無理が出ます。

方式配管切断得意な場面注意点
電磁流量計必要導電性のある水、精度が要る主要ライン純水や油には使えない、直管長と適切な接地が要る
超音波クランプオン不要断水できない既設ライン、暫定計測管材、内面状態、直管長、満管が条件
パドル式(羽根車式)必要小口径の分岐、コストを抑えたい点異物に弱い、可動部の保守と直管長・下限流速の制約
機械式(容積式など)必要既設メーターの置き換え異物に弱くストレーナが要る、圧力損失とパルス出力の有無を要確認
堰・フリューム+超音波レベル計不要開水路の排水量一次装置の設置が前提、満管の配管には使わない

方式を選ぶときは、精度の高さよりも「その点で長期に安定して読み続けられるか」を優先してください。年に一度校正のたびに断水が要る方式を、生産の要となるラインに入れてしまうと、数年後に誰も触らない計測点になります。

流量計 監視のデータは既存のユーティリティ監視に寄せる

流量計の出力は、パルス、4-20mA、Modbusのいずれかであることがほとんどです。すでに電力の監視システムが入っている工場では、同じ収集基盤に水を載せてしまうのが最も安く、運用も続きます。

新設のセンサーを既存ネットワークに載せるときの無線・有線の使い分けや、収集周期からセンサーを選ぶ考え方は工場のIoTセンサー種類2026|選定を決めるのは精度でなく周期に整理しています。水の計測は電力ほど短い周期を必要としないぶん、選択肢の幅も変わってきます。

電力と水を同じ画面で見られるようにすると、思わぬ発見があります。冷却塔の補給水が増えている時間帯とチラーの電力が高い時間帯を重ねると、負荷が高いのか、それとも系内で水が漏れているのかを切り分けられます。片方だけでは見えなかった因果が見えるのは、統合したときの実利です。

タイの工業用水は「電力ほど安くない」という前提を持つ

投資判断に入る前に、水のコスト感を確認しておきます。日本の感覚のまま「水は安い」と考えていると、判断を誤ります。

工業団地内の工業用水価格の一例として、1立方メートルあたり24.75バーツという水準が報告されています。一方、PWA(タイ地方水道公社)の家庭向け基本料金は1立方メートル10.2バーツからとなっています。

ここは慎重に読む必要があります。工業団地内の価格と家庭向け水道料金は、そもそも制度も供給主体も異なるため、単純に「工業用水は家庭用の2倍以上」と結論づけるのは適切ではありません。契約条件や団地によっても価格は変わります。上の数字も、公開されている価格例として報告されているものであり、現時点のすべての団地に当てはまる確定価格として扱うべきものではありません。

それでも、この2つの数字から言えることがあります。工業団地内の水は、工場の使用量規模を掛け合わせれば年間で無視できない金額になるということです。「水は安いから測る価値がない」という前提は、少なくともタイの工業団地では成り立ちにくくなっています。

導入費用と回収の考え方(モデル試算)

ここからの数字は、計算の型を示すために弊社が置いた仮定に基づくモデルであり、実際の見積もりでも、実在する工場の実績でもありません。前章までのリサーチ事実とは切り離してお読みください。

モデルの前提

項目モデルの値備考
工場の使用量日量1,000立方メートル中規模の水使用がある工場を想定
年間稼働日数300日年間30万立方メートル
水の単価1立方メートルあたり24.75バーツ前章の価格例をモデルの入力値として使用
年間の水コスト約743万バーツ30万立方メートル×24.75バーツ

この前提のもとで、計測点を第1層3点、第2層6点、第3層2点の計11点で設計したとします。流量計本体と工事費を1点あたり8万から20万バーツの幅で見積もると、初期投資はおおむね88万から220万バーツの範囲になります。ここに収集装置とソフトウェアの費用が加わります。

削減率をどう見積もるか

削減効果は、削減率という1つの数字で語るとほぼ必ず外れます。効果は次のように分解して積み上げてください。

効果の種類発生する仕組みモデルでの見積もり
漏水の早期発見休日ベースラインの上昇で検知年間使用量の1%から3%
冷却塔の運転改善ブロー設定と濃縮倍率の適正化年間使用量の2%から5%
洗浄工程の見直しすすぎ時間、流量、頻度の最適化年間使用量の1%から4%
止め忘れの削減非稼働時間の使用量を可視化年間使用量の1%未満

4項目を単純に足すと4%から13%になりますが、すべての効果が同時に最大で出ることは稀です。このモデルで削減率の合計を5%から12%と置くと、年間の削減額は約37万から89万バーツになります。初期投資88万から220万バーツに対して、単純回収は約1年から6年の幅です。なお、この回収年数は流量計本体と工事費のみを分母に置いたものです。収集装置とソフトウェアの費用を含めると、回収はさらに伸びます。

幅が大きいことに違和感を持たれるかもしれませんが、これが実態に近い姿です。水の投資回収は、現状の無駄がどれだけあるかに完全に依存します。すでに冷却塔の管理が行き届き、漏水もない工場では回収は伸びます。逆に、休日の使用量が平日の3割もあるような工場では、第1層だけで投資が回ることもあります。

モデルに入れていない効果

上の試算には、金額換算していない効果が3つあります。判断材料としてはこちらのほうが大きい場合もあります。

  • 排水処理コストの削減。取水が減れば排水も減り、処理薬品や汚泥処分の費用が下がります
  • 工業団地からの要請への対応力。使用量と再利用率を数字で示せることが、増設申請などの場面で効いてきます
  • 生産計画との連動。水の使用制限が実際に来た場合に、どの工程から絞るかを事前に決めておけます

IEATの3Rと、工業団地側で進む供給インフラの動き

水使用量 監視|タイ工場で電力より遅れる理由と計測点設計2026 - figure 3

工場側の話をしてきましたが、供給側でも動きがあります。この文脈を知っておくと、団地からの要請が来たときに慌てずに済みます。

IEATは団地内での3Rを進めている

IEAT(タイ工業団地公社)は、工業団地内でreduce(削減)、reuse(再利用)、recycle(リサイクル)の3Rによる対応を進めています。供給量を増やす方向だけでなく、団地内で回す方向にも軸足を置いている、ということです。

工場側の含意は明確です。3Rの推進は、いずれ入居企業への具体的な要請という形で現れます。そのとき求められるのは「節水に努めています」という姿勢ではなく、「どこで、どれだけ、どう減らしたか」という数字です。取水量だけでなく排水量まで測っておく理由が、ここにもあります。

貯水と水源接続で供給側も手を打っている

供給側の具体例として、アマタグループで水事業を担うAmata Uのケースがあります。同社は17の貯水池に3,000万立方メートル超を保有しており、Amata UのCEOであるChawalit Tippawanich氏は、これにより東部で干ばつが起きても2年間は工場への給水を維持できると述べています。

さらにAmata Uは、Eastern Water Resources Development and Management(イーストウォーター)と水源をパイプラインで接続するMOUを締結し、供給の効率化を検討しています。調査の完了は約1年後の見込みとされています。

この動きをどう読むかですが、供給側が備えているから工場は何もしなくてよい、という話ではありません。むしろ、貯水池とパイプラインへの投資は最終的に水の供給コストに反映されていくものですし、干ばつ時に2年間持ちこたえられるという前提そのものが、平時の使用量が想定内に収まっていることを条件にしています。団地が使用量の抑制を求める動機は、供給側の投資が進むほどむしろ強くなります。

導入の進め方|4つのステップ

計測点の設計思想が固まったら、実行の順序です。水は工事が重いぶん、順序を間違えるとやり直しが効きません。

ステップ1 図面と現地で配管を追う

最初にやるべきは、センサーの選定ではなく配管の把握です。竣工図があっても、増改築を重ねた工場では現況と一致しないことがほとんどです。受水槽から各設備まで、どこで分岐しているか、どの区間が埋設か、口径と管材は何かを、現地で確認しながら図面に反映します。

この工程を省くと、発注した流量計が現地の口径に合わない、直管長が確保できない、埋設で掘削が要ることが後から判明する、といった手戻りが起きます。水の導入で最も費用対効果が高い工程は、実はこの調査です。

ステップ2 第1層だけを入れて数か月運用する

いきなり全点を発注しないでください。まず総量を時間別に取れる状態にして、2、3か月運用します。この期間だけで、休日の使用量、夜間のベースライン、生産量との相関という3つの重要な情報が手に入ります。

このデータがあると、第2層の計測点を「たぶんここが多いだろう」ではなく「休日にも流れている系統がここにある」という根拠で選べます。

ステップ3 第2層を重要度順に段階導入する

第2層は、一度に全部ではなく、2回から3回に分けて入れることを推奨します。年次の定期修理や長期休暇に合わせて断水工事を計画すれば、生産への影響を抑えられます。

1回目の工事で入れた計測点から得られたデータを見て、2回目の位置を微調整する。この繰り返しができるのが段階導入の利点です。

ステップ4 運用ルールと閾値を決める

計測点を増やしただけでは何も減りません。誰が、いつ、何を見て、どうなったら動くのかを決めてください。最低限、次の3つは決めておくと運用が続きます。

  • 非稼働日のベースライン値と、それを超えたときの確認手順
  • 冷却塔の補給水量の日次上限と、超えたときの点検項目
  • 月次の原単位(製品あたりの水使用量)と、前月比の報告先

よくある失敗

これまでに見てきた、水の見える化がうまくいかないパターンを挙げます。

総量だけデジタル化して終わる

最も多い形です。既設メーターにパルス出力を付けて監視画面に載せた時点で、プロジェクトが完了扱いになってしまう。総量が時間別に見えるようになったこと自体は前進ですが、内訳がないため改善の打ち手につながりません。第1層はあくまで第2層の設計材料である、という位置づけを最初に共有しておいてください。

工程別に細かく分けすぎて工事費が跳ね上がる

逆のパターンです。理想的な内訳を追い求めて計測点が25点になり、見積もりを見て計画が凍結される。水は電力と違って点数がそのまま工事費に効きます。まず大きな塊を切り分け、細分化は効果が確認できてから、という順序を守ってください。

超音波クランプオンを前提に計画して現地で使えない

図面上の口径だけを見て「クランプオンでいけます」と計画し、現地に行くと配管がモルタルライニングの鋳鉄管だった、内面にスケールが厚く付いていた、エルボの直後しか付けられる場所がなかった。この手戻りは頻繁に起きます。クランプオンを前提にする点は、必ず事前に現地で仮測定してから確定してください。

排水側を測らないまま再利用を検討する

3Rの要請を受けて再利用設備の検討を始めたものの、どの排水口にどれだけ出ているか分からず、回収設備の容量が決められない。この段階で慌てて排水計測を追加すると、設備検討そのものが数か月止まります。再利用の可能性がある工場では、第3層を第2層と同時期に計画してください。

数字を見る担当者が決まっていない

計測点は増えたが、月次で誰も見ていない。半年後にはグラフを開く人がいなくなる。これは水に限らずエネルギー監視全般で起きることですが、水は電力より変化が緩やかなぶん、放置されやすい傾向があります。ステップ4の運用ルールを軽視しないでください。

よくある質問

工場の水使用量はどう監視する?

受水槽の入口など総量を測る点をまず時間別に取れるようにし、その後で冷却塔の補給水、ボイラ給水、洗浄工程といった水を多く使う系統の分岐へ流量計を追加していくのが基本です。工程別を先に細かく作るのではなく、総量を数か月見てから内訳の位置を決めるほうが、計測点の空振りを減らせます。

流量計の設置費用は?

配管の口径、材質、埋設の有無、断水の可否によって大きく変わるため、一律の相場を示すのは適切ではありません。本記事のモデル試算では1点あたり8万から20万バーツの幅を仮に置いていますが、これはあくまで計算の型を示すための仮定値です。実際は現地調査を経て、点ごとに見積もる必要があります。

配管を切らずに測れる方法はある?

超音波クランプオン式であれば配管の外側から測れます。ただし、配管の材質と肉厚、内面のスケール、上流下流の直管長、満管であること、流速が下限を上回ることといった条件を満たす必要があります。既設配管では条件を満たさない点も珍しくないため、事前の現地確認が欠かせません。

既存のエネルギー監視システムに水も統合できる?

多くの場合できます。流量計の出力はパルス、4-20mA、Modbusのいずれかであることがほとんどで、電力監視で使っている収集装置がこれらに対応していれば、同じ基盤に載せられます。電力と水を同じ時間軸で並べて見られるようになると、負荷変動と漏水の切り分けなど、片方だけでは分からなかったことが見えてきます。

タイの工業団地から節水を求められたら何から始める?

まず、現在の月別使用量と、可能であれば休日と平日の差を整理してください。次に、冷却塔と洗浄工程という2つの大口について、運転条件を確認します。この2点だけでも、要請に対する初期回答は作れます。そのうえで、継続的に数字で示すために計測点の設計に着手する、という順序が現実的です。

水の見える化はどのくらいで効果が出る?

漏水や止め忘れといった分かりやすい無駄がある工場では、第1層を入れて最初の休日データを見た時点で発見があることも珍しくありません。一方、冷却塔の運転改善や洗浄工程の見直しは、運用ルールの変更を伴うため数か月単位の取り組みになります。短期の発見と中期の改善を分けて期待値を置いてください。

まとめ

タイの工場で電力の見える化だけが進み、水が置き去りになってきたのには、技術的な理由がありました。電力はCTクランプで活線のまま後付けできますが、水は配管を切って流量計を割り込ませる必要があることが多く、1点増やす負担がまったく違います。

しかし2026年、EECの41工業団地・約6,000工場が日量150万立方メートルの需要を抱え、IEATが準備しているのは118万立方メートルという状況になりました。データセンター投資がさらに需要を押し上げ、IEATは団地内での3Rを進めています。工業団地から使用量や再利用率を問われる場面は、これから増えていきます。

後から気軽に点数を増やせないからこそ、水は最初の計測点設計が決定的に重要です。受入の総量から始め、工程別の大口へ広げ、最後に排水側を押さえる。この3階層を、いきなり全部ではなく段階的に進める。総量から計測分を引いた未計測分を必ず残す。この設計思想さえ押さえておけば、限られた点数でも工場の水の大半を説明できる状態が作れます。

弊社は、タイの日系製造業向けにエネルギー監視と生産管理のシステムを提供しており、水を含むユーティリティ監視の計測点設計から現地工事の調整までを一貫してお手伝いしています。工業団地から節水の要請が来て困っている、まず何点付ければよいのか分からない、といった段階でも構いません。現地の配管状況を拝見したうえで、優先順位のご提案から始められます。ご相談はお問い合わせページからお気軽にどうぞ。

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