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2026.08.10

太陽光発電の監視2026|工場で発電量の低下に気づけない4つの死角

太陽光発電の監視2026|工場で発電量の低下に気づけない4つの死角

屋根に 500 kWp を載せた工場で、想定した年間 3,150,000 THB の削減が本当に出ているかを検算している例はほとんどありません。自家消費型は発電した電気を売らないので、成果は電気代の「減り」としてしか現れず、Ft の改定や生産量の増減に紛れて見えなくなります。この記事は、工場の太陽光発電の監視を、発電側・消費側・請求側を同じ時間軸に載せる仕事として組み立て直します。

自家消費型の太陽光は、発電量が落ちても請求書では見えない

売電する設備なら、毎月の検針票が届きます。買い手がいて、kWh あたりの単価が決まっていて、金額が振り込まれる。だから発電量は毎月必ず第三者と突き合わされます。数字がずれれば経理が気づきます。

自家消費型にはこの仕組みがありません。工場の屋根で発電した電気は、そのまま工場の中で消費されて終わります。外部と授受が発生しないので、検針票も請求書も、明細も届かない。効果は「PEA や MEA から買う電気が減った」という形でしか現れません。

ところが買電量は、太陽光以外の理由で毎月動きます。生産量が増えれば増える。シフトを2直から3直に増やせば増える。乾季で外気温が上がれば空調と冷凍機が回って増える。Ft が改定されれば単価が変わる。この変動幅は、太陽光の寄与と同じかそれ以上あります。つまり請求書を眺めているかぎり、太陽光の発電量が 5% 落ちていても、10% 落ちていても、判別できません。

タイの日系工場でよく見かけるのは次の状態です。パワコン付属の監視画面は確かに立ち上がっている。工場の受電室か事務所の隅にディスプレイが1台あって、当日の発電カーブが出ている。しかしそれを毎日開いている人はいません。開いても「今日は曇っていたから低いのだろう」で終わります。比較する基準がないので、低いかどうかを判定できないからです。

判定できないまま数年が過ぎると、設備は静かに劣化します。汚れが積もり、ストリングが1系統落ち、生産が止まる日には発電できるのに出力を絞られている。それぞれは小さく、日々の変動に埋もれます。しかし年間で足すと、この記事のモデル工場では想定削減額の 26% に達します。

監視の仕事は、この 26% を請求書の外側で捕まえることです。そのためには3つを繋ぐ必要があります。第一に発電側、実際に何 kWh 出たか、出るべき量に対して何 % かを見る。第二に消費側、出た電気を工場が実際に使えたかを見る。第三に請求側、買電量の減りが計算と合うかを見る。この3つが別々の画面に散っていると、どこで失っているのかは永久に分かりません。

この記事で使うモデル工場 — 500 kWp の屋根置き・全量自家消費

具体的な数字がないと議論が抽象論になるので、以下のモデル工場を置きます。タイの工業団地にある日系の加工組立工場で、既設の屋根に太陽光を後載せした、という前提です。

項目
設置容量500 kWp、屋根置き、全量自家消費、ゼロエクスポート
想定比発電量1,400 kWh/kWp/年
想定年間発電量700,000 kWh/年
置き換わる電力の実効単価4.5 THB/kWh
想定年間削減額3,150,000 THB/年
ストリング構成25 系統 × 20 kWp

計算は単純です。500 kWp × 1,400 kWh/kWp = 700,000 kWh/年。これに 4.5 THB/kWh を掛けて 3,150,000 THB/年。稟議書に載るのはこの 3,150,000 THB で、投資判断もこの数字で通ります。

2つ、前提の但し書きを付けます。1つ目は比発電量の 1,400 kWh/kWp/年です。これは設計時の仮置きであって、実際の案件では拠点の座標で PVOUT を引いてください。タイ国内でも北部と東部臨海部では年間の日射量が違いますし、同じ敷地でも屋根の傾斜角と方位で結果は動きます。世界銀行と ESMAP が公開しているタイの日射量・PV 発電ポテンシャルのデータセットは無償で、座標単位で引けます。

2つ目は実効単価の 4.5 THB/kWh です。これは TOU の昼間帯の電力量料金に Ft と VAT を上乗せした、この記事のモデル前提であって、公表されている料金表の数字そのものではありません。参考までにタイ投資委員会が掲載している公式レンジは、2023年6月30日更新の時点で TOU 大口の on-peak が 4.10〜4.33 THB/kWh、off-peak が 2.58〜2.64 THB/kWh です。これに加えてデマンド料金が 74.14〜332.71 THB/kW、無効電力が有効電力需要の 61.97% を超えた場合の力率超過課金が 56.07 THB/kVAR かかります。屋根置き太陽光が置き換えるのは基本的に昼間帯の電力量料金なので、実効単価は on-peak のレンジに Ft と VAT を乗せた水準に落ち着きます。自社の実効単価は、過去12か月の請求書から昼間帯の kWh と金額を拾って割り算すれば出ます。

なお、デマンド料金そのものの管理は太陽光の監視とは別の話です。15分単位の最大需要電力をどう抑えるかは電力監視システムの導入ガイドで扱っているので、そちらを参照してください。本記事は「自分で作った電気を測る」ことに範囲を絞ります。

発電量が落ちる4つの死角

太陽光発電の監視2026|工場で発電量の低下に気づけない4つの死角 - figure 1

発電量が想定を下回る原因は4つに整理できます。共通しているのは、どれも単独では日々の変動に埋もれる大きさだ、という点です。だから体感では見つかりません。

死角何が起きるか年間の損失
汚れ乾季の粉じん、鳥糞、近隣工場の排気。緩やかに効くので体感できない発電の 4% = 28,000 kWh = 126,000 THB
ストリング単位の欠損25 系統のうち1系統が止まっても全体では 4% 減にすぎず、日変動に埋もれる1系統が半年停止で 14,000 kWh = 63,000 THB
高温デレーティングモジュール温度が上がり、温度係数のぶんだけ出力が落ちる。異常ではなく設計に織り込むもの金額は出さない。PR の期待値を決める要素
ゼロエクスポート制御による抑制生産が止まる日は負荷が消え、逆潮流させないため PCS が出力を絞る140,000 kWh = 630,000 THB

以下、1つずつ中身を見ます。最後の抑制が最大の穴であり、かつ最も気づかれない性質を持っています。

死角1 — 汚れは「緩やかに効く」から体感できない

タイの乾季、11月から4月にかけて、工業団地の屋根には粉じんが積もります。近隣に鋳造や粉体を扱う工場があれば、堆積は速くなります。鳥糞は面積は小さいものの、セル1枚を完全に遮ると、そのセルを含むストリング全体の電流が引きずられます。

汚れの厄介なところは、一晩で 20% 落ちたりしないことです。1週間で 0.2%、1か月で 1% というペースで、静かに効きます。人間はこの速度の変化を認識できません。毎日見ている人ほど気づかない、という性質があります。

モデル工場で年間平均 4% の損失があると置くと、700,000 kWh × 0.04 = 28,000 kWh、金額にして 28,000 × 4.5 = 126,000 THB です。清掃業者を1回呼ぶ費用より明らかに大きい。にもかかわらず、多くの工場で清掃は「年2回」のように暦で回されています。暦で回すと、汚れていない雨季明けに洗い、粉じんが積もっている乾季の終盤に洗わない、という逆転が普通に起きます。

死角2 — ストリング1系統の停止は、全体の 4% にしか見えない

モデル工場は 25 系統 × 20 kWp の構成です。ヒューズ切れ、コネクタの接触不良、PCS の1入力チャンネルの故障などで1系統が発電を止めたとき、設備全体の出力は 4% 減ります。

4% は、天候による日々の変動幅よりずっと小さい。曇りが混じれば発電量は平気で 30% 動きます。だから PCS の合計値だけを見ている監視では、1系統の停止は原理的に検出できません。ここが重要な点です。「気づきにくい」のではなく、合計値のポーリングでは情報が存在しないのです。

半年間放置された場合の損失は、20 kWp × 1,400 kWh/kWp × 0.5 年 = 14,000 kWh、金額で 14,000 × 4.5 = 63,000 THB です。原因の多くはヒューズ1本かコネクタ1個で、部品代は数百 THB です。63,000 THB の損失を出しているのは部品ではなく、見えていなかった半年です。

死角3 — 高温デレーティングは異常ではない。だから PR の期待値に織り込む

タイの屋根面では、モジュール温度が 55〜65℃ に達します。結晶シリコンモジュールの最大出力温度係数はおおむね -0.35%/℃ 前後なので、標準試験条件の 25℃ から 35℃ 上がれば、出力は理屈のうえで1割強落ちます。屋根置きは地上設置より背面の通気が悪いので、この影響は大きく出ます。

これは故障ではありません。設計時点で分かっている物理現象であり、期待値の側に織り込むべきものです。ここを織り込まずに PR を評価すると、健全な設備を「不調」と誤診します。逆に、この温度損失を理由に何でも説明してしまうと、今度は本物の異常を見逃します。

実務的な結論は1つです。PR の期待値をタイの気候条件で最初に決めておくこと。新設で 75〜80% が目安になります。日本国内の設計値をそのまま持ってくると、期待値が高すぎて毎日が「異常」になり、誰もアラートを見なくなります。

死角4 — ゼロエクスポート制御による抑制。設備は正常なのに捨てている

これが最大の穴です。全量自家消費・ゼロエクスポートの設備は、系統への逆潮流を許されません。工場の負荷が発電量を下回ると、PCS が出力を絞ります。逆潮流を防ぐという意味では正常な動作であり、保護としては正しい。しかし発電できる電気を捨てていることに変わりはありません。

いつ起きるか。生産が止まる日です。週末、タイの祝日、ソンクラーン前後の長期休み、棚卸しや年次保全のための計画停止。モデル工場では、これらを合わせた停止日に発電できたはずの量を 210,000 kWh、年間発電量 700,000 kWh のちょうど3割と置きます。実際の比率は操業カレンダー次第なので、自社の稼働日数で置き換えてください。

停止日でも工場の電気がゼロになるわけではありません。冷凍機、サーバー室、警備照明、金型倉庫の除湿、待機中の空調といったベース負荷は残ります。モデル工場ではこれが 70,000 kWh。つまり 210,000 kWh のうち使えるのは 70,000 kWh だけで、差の 140,000 kWh は発電せずに捨てられます。金額にすると 140,000 × 4.5 = 630,000 THB です。

金額の評価には但し書きが要ります。停止日の多くは週末と祝日なので、TOU では終日 off-peak にあたります。捨てた電気を実際にいくらで評価するかは、その日が on-peak か off-peak かで変わります。本記事は死角どうしを同じものさしで比べるために年間を通じて 4.5 THB/kWh に統一していますが、off-peak 単価で評価すれば金額は小さくなります。それでも 3つの損失のなかで最大であることは変わりません。

厄介なのは、この現象がどの点検にも引っかからないことです。パネルは汚れていない、ストリングは全数生きている、PCS はエラーを出していない、絶縁抵抗も正常。保守業者を呼んでも「異常なし」で帰ります。設備側には本当に何も起きていないからです。原因は運転計画の側にあり、発電側と消費側を同じ時間軸に並べて初めて姿が見えます。

金額の出る3つを足すと、想定削減額の 26% が消える

金額を出した3つを足します。126,000 + 63,000 + 630,000 = 819,000 THB/年。想定削減額 3,150,000 THB に対して 26% です。死角3の高温は設計に織り込むものなので、この合計には入れていません。3つの損失は発生する時間帯が一部重なるため厳密には数万 THB ぶん重複しますが、桁を見誤らせる大きさではありません。

内訳の比重に注目してください。819,000 THB のうち 630,000 THB、つまり4分の3以上は抑制ぶんです。パネルを掃除しても、点検の回数を増やしても、この 630,000 THB は1 THB も戻りません。掃除で戻るのは 126,000 THB のほうです。太陽光の発電量が想定より少ないと聞くと、多くの人はまず清掃と点検を思い浮かべますが、金額の大きさで並べると優先順位は逆になります。

何を測るか — PR・比発電量・自家消費率の3指標

4つの死角を切り分けるには、指標が3つ要ります。1つでは足りません。

指標定義期待値何を検知するか
PR(性能比)実発電量 ÷(傾斜面日射量 × 定格容量 ÷ 1 kW/m²)新設で 75〜80%汚れ・ストリング欠損・高温、そして抑制。いずれも PR を下げるので、単独では原因を切り分けられない
比発電量実発電量 ÷ 定格容量、単位は kWh/kWp月次で前年同月と比較日射計が無い設備の代替指標。天候の差を吸収できない
自家消費率自家消費した電力量 ÷ 発電可能量(日射から求めた期待発電量)稼働日で 95% 以上、停止日は落ちる抑制。発電側の監視だけでは絶対に出ない

PR は太陽光の健康診断にあたる指標で、天候の影響を分母で正規化します。だから「今日は曇っていたから」という説明が効かなくなります。ただし PR は複合指標なので、下がった原因が汚れなのかストリング欠損なのか高温なのか、あるいは抑制なのかは、PR の値だけでは分かりません。切り分けにはストリング単位の電流とモジュール温度、そして次に述べる自家消費率が要ります。

比発電量は、日射計が無い既設設備の現実的な代替です。PCS のログさえあれば今日から出せます。弱点は天候の差を吸収できないことで、前年同月比で 8% 落ちていても、それが乾季の雨量の違いによるものか、設備の劣化によるものかを区別できません。だから比発電量は「異常を探す」のではなく「傾向を見る」ための指標として扱ってください。

自家消費率は性格がまったく違います。これは発電側の指標ではなく、発電側と消費側を突き合わせて初めて出る指標です。PCS のデータだけをいくら精密に取っても、この数字は永久に出ません。そして死角4の抑制を検出できる唯一の指標がこれです。稼働日は 95% 以上で推移し、停止日には大きく落ちる。落ち幅がそのまま捨てている電気の量です。

ここで分母の取り方を間違えないでください。ゼロエクスポートの設備では、抑制された電気はそもそも発電量として記録されません。だから分母に実発電量を置くと、抑制がかかった日でも自家消費率は 100% 近くに張り付き、何も検出できなくなります。分母は日射から求めた発電可能量を使ってください。日射計が監視設計の分岐点だと繰り返すのは、PR のためだけではなく、この分母を作るためでもあります。

3指標を並べる実務的な意味は、対策が真逆になる点にあります。ただし PR は抑制でも下がるので、PR の低下だけを見て設備側に走ってはいけません。順序は決まっています。まず自家消費率を見る。稼働日で 95% 以上を保っているのに PR が下がっているなら、これは設備側の問題なので、清掃・点検・部品交換に進みます。逆に PR の低下が停止日に集中していて、その日は工場の負荷そのものが消えているなら、設備は健全で、清掃しても点検しても何も変わりません。進むべきは、停止日の負荷の作り方、蓄電の要否、あるいは生産計画そのものの検討です。「発電量が減った」という同じ症状に対して、切り分けなしで動くと、確実に外します。

IEC 61724-1 が決めるのは、機器の精度だけではない

太陽光発電システムの性能監視には国際規格があります。IEC 61724-1、正式名称は「Photovoltaic system performance — Part 1: Monitoring」で、現行版は 2021年7月21日発行の Edition 2.0 です。

実務者が押さえておくべき点を絞ります。第一に、2021年版で Class C が廃止され、Class A と Class B の2区分になりました。古い資料や提案書に Class C の記載があれば、それは 2017年版以前を参照しています。

第二に、日射計、モジュール温度センサー、電力量計のそれぞれに精度要件が定められています。ここまではハードウェアの話です。しかし規格が要求しているのはそれだけではありません。校正の周期、点検の手順、欠測データの扱い、データ品質のチェック方法まで含めてクラスが決まります。高精度の日射計を1台買えば Class A になる、という話ではないということです。この点は見積を比較するときに効きます。センサーの型番だけが並んでいて、校正と点検の運用が書かれていない提案は、規格の半分しか満たしていません。

第三に、2021年版では汚れ率、いわゆる soiling ratio の測定方法と、両面モジュールの監視についても規定されています。清掃の周期を暦ではなく汚れ率で決める運用に切り替えたい場合、拠り所になるのはこの部分です。

工場の実務にとって最も大きな分岐は、日射計を付けるかどうかです。日射計が無ければ PR の分母を作れず、PR は出せません。PR が出せなければ、発電量の低下はすべて「天候のせい」で説明できてしまいます。逆に言えば、日射計を1組入れた瞬間から、天候による説明が効かなくなります。監視設計の分岐点はここにあります。

工場の太陽光監視構成の作り方

太陽光発電の監視2026|工場で発電量の低下に気づけない4つの死角 - figure 2

構成を決めるうえで外せない点を挙げます。設備の規模やメーカーが変わっても、この5つは変わりません。

  • PCS から Modbus TCP または SunSpec でストリング電流まで取る。 PCS の合計値だけをポーリングする構成では、死角2のストリング欠損が原理的に見えません。多くの産業用 PCS はストリング単位の電流を保持していますが、標準の監視画面には出していないことがあります。導入前にレジスタマップを取り寄せて、ストリング電流が読めるかを確認してください。
  • 傾斜面日射計と、モジュール裏面温度センサーを最低1組。 PR の分母を作る唯一の手段です。日射計はパネルと同じ傾斜角・同じ方位に設置しないと意味がありません。水平面に置いた日射計の値で PR を計算すると、季節ごとに系統的な誤差が乗ります。
  • 受電点と主要フィーダの電力計を、同じ時刻軸に載せる。 自家消費率はここでしか出ません。時刻同期がずれていると、抑制が起きた時間帯と負荷が消えた時間帯が一致せず、因果が読めなくなります。NTP でそろえるのが最低条件です。
  • 既に電力監視システムがあるなら、太陽光専用の画面を別に立てず同じ基盤に寄せる。 画面が2つに割れると、発電側と消費側を突き合わせる人が誰もいなくなります。基盤の作り方は工場のエネルギー監視システム導入ガイドで整理しているので、既存の構成がある場合はそこから積み上げてください。
  • 保存粒度は最低15分。 ゼロエクスポートの抑制は数分単位で効きます。日次集計しか残していないと、抑制は平均値の中に溶けて消えます。可能なら1分粒度で生値を保持し、集計は後段で作るほうが安全です。

構成を決める前に、既設設備の場合は棚卸しをしてください。確認するのは、PCS の型番と通信ポートの有無、ストリング電流の取得可否、既設の電力計の設置位置と通信仕様、そして PCS のログが何年分残っているかです。ログが1年分残っていれば、センサーを1つも足さずに月次の比発電量を前年と並べるところまでは今日から始められます。

発電した電力量を CO2 削減の報告に使う場合は、係数の取り方と集計期間の定義を先に決めておいてください。この部分はCO2排出量の見える化で扱っています。監視の生データが同じでも、報告の目的が加わると必要な粒度と保存期間が変わります。

監視にかかる費用の5層と回収年数

太陽光発電の監視2026|工場で発電量の低下に気づけない4つの死角 - figure 3

費用は1本の見積として比べると判断できません。層に分けると、どこを削ると何が見えなくなるかが分かります。

内容費用レンジ
1 計測PCS からのデータ取得、ストリング監視の有効化60,000 〜 150,000 THB
2 気象傾斜面日射計、モジュール温度センサー80,000 〜 250,000 THB
3 消費側受電点・主要フィーダの電力計0 〜 400,000 THB
4 収集・可視化エッジゲートウェイ、サーバまたはクラウド、ダッシュボード200,000 〜 600,000 THB
5 運用(年額)PR 日報の定義、閾値設定、清掃計画への接続、保守60,000 〜 180,000 THB

第2層の幅が大きいのは、日射計の等級で価格が倍以上変わるためです。Class B 相当で足りるのか Class A 相当が要るのかは、監視の目的で決まります。社内の運転改善が目的なら Class B 相当で十分に機能します。第3層が 0 になるのは、既に電力監視システムがあって受電点の電力量が同じ基盤に乗っている場合です。逆にここが 400,000 THB まで振れるのは、電力計を新設し、盤の改造と CT の追加、停電を伴う工事が必要になる場合です。

第1層から第4層までを合計した初期費用のレンジは 340,000 〜 1,400,000 THB になります。下限は第3層が 0 の場合、上限は全層を満額で積んだ場合です。第5層は年額なので初期費用には入れません。

中位構成として 900,000 THB を置きます。取り戻せるのは、先に出した 819,000 THB のすべてではありません。抑制のうち一部は生産計画上どうしても動かせませんし、汚れも 0% にはできません。6割を取り戻せるとして、約 490,000 THB/年。単純回収は 900,000 ÷ 490,000 = 1.8年です。

削る順番を間違えないでください。最初に削られがちなのは第2層の日射計ですが、ここを削ると PR が出せなくなり、残りの層で集めたデータを評価する基準が消えます。次に削られがちなのが第3層ですが、ここを削ると自家消費率が出せず、金額の4分の3を占める抑制が見えなくなります。削って影響が小さいのは第4層の作り込みの深さ、つまりダッシュボードの画面数や帳票の自動生成の範囲です。

第5層を 0 にした構成は勧めません。センサーとダッシュボードが揃っていても、誰が何を見て何をするかが決まっていなければ、データは溜まるだけです。閾値を決め、日報の様式を決め、清掃の判断を汚れ率に接続する。この運用設計に年間 60,000 〜 180,000 THB を割く価値は、819,000 THB の内訳を見れば明らかです。

タイの制度 — 2024年12月の省令改正で屋根置きは รง.4 が不要になった

タイで工場の屋根に太陽光を載せるときの許認可は、2024年末に大きく変わりました。

「工場の種類・区分・規模の指定に関する省令(第3号)仏暦2567年」は2024年12月27日付で導入され、翌12月28日に施行されました。これにより、工業団地外の屋根置き太陽光は容量にかかわらず รง.4、つまり工場ライセンスが不要になりました。それ以前は 1,000 kW を超える設備で必要とされていたので、500 kWp 級から 1 MW 級への拡張を検討していた工場にとっては、手続き上の段差が1つ消えたことになります。

ただし、これで届出が全部なくなるわけではありません。実務で残る主なものを挙げます。第一に ERC のエネルギー事業ライセンス、または免除の届出です。合計 1,000 kVA 未満であれば発電ライセンスは免除されますが、免除であっても ERC への届出そのものは必要です。「免除」と「不要」は違います。第二に建築確認です。屋根荷重の検討と改修に係る許可は別途残ります。既設屋根に後載せする場合、構造計算は避けて通れません。第三に PEA または MEA との系統連系の承認です。ゼロエクスポートで運用する場合も、逆潮流防止をどう担保するかを含めて事前協議が要ります。これ以外にも案件の条件によって手続きが残ることがあるので、上記を網羅リストとして扱わないでください。

工業団地内は別枠です。IEAT の管轄下にある場合、土地利用の許可や事業開始の届出が引き続き必要になります。自家消費専用の屋根置きについては IEAT が免除の方針を示した経緯があるので、着手前に最新の告示を確認してください。タイの日系工場の多くは工業団地内にありますから、上の省令改正をそのまま自社に当てはめないでください。まず自社の立地が団地内か団地外かを確認するところから始まります。

範囲についても2つ注意してください。ここまでの話は屋根置きに限った話で、地上設置は扱いが異なります。また、住宅向けの買取制度、いわゆる net billing の議論とも混ぜないでください。本記事が対象にしているのは、発電した電気を売らない自家消費型の工場設備です。売らない以上、買取価格の改定は関係がなく、経済性を決めるのは置き換える電気の実効単価と、実際に自家消費できた割合だけです。

90日で監視を立ち上げるロードマップ

一度に全部やろうとすると、日射計の調達と盤の改造工事の日程で止まります。3か月を3段階に切ってください。

期間やること出せるようになるもの
0〜30日既存の PCS ログを1年分吸い出し、月次の比発電量を前年と並べる比発電量の前年同月比。日射計が無い段階では PR は出せないと割り切る
31〜60日傾斜面日射計とモジュール温度センサーを設置し、受電点の電力計と時刻同期させるPR と自家消費率
61〜90日稼働日と停止日を分けた日報を定義し、閾値と担当を決める異常の検知と、清掃・運転計画への接続

0〜30日でやるべきことは調達ではなくデータの吸い出しです。PCS のログが1年分残っていれば、この段階で「そもそも想定の 700,000 kWh に対して何 % 出ているのか」という問いに答えが出ます。ここで想定を大きく下回っていることが分かれば、後続の投資判断が一気に楽になります。

31〜60日で日射計を入れるとき、時刻同期を軽く見ないでください。日射計、PCS、受電点の電力計が別々の時計で動いていると、自家消費率が時間帯ごとに意味を持たなくなります。設置工事の完了条件に時刻同期の確認を明記しておくと、後の手戻りが減ります。

61〜90日は運用の設計です。ここで決めるのは4つ。稼働日と停止日を分けた日報の様式、閾値、閾値を超えたときに誰が見るか、そして誰が動くか。閾値の例としては「PR が2日連続で基準比 -5%」が扱いやすい水準です。1日だけの落ち込みは雲の通過で普通に起きるので、2日連続を条件にするとアラートの数が現実的な量に収まります。

この段階で必ず変えてほしい運用が1つあります。清掃の周期を、暦ではなく汚れ率で決めることです。PR と日射量の推移から汚れの進み方が見えるようになれば、「乾季は6週ごと、雨季明けは不要」といった判断が数字で下せます。年2回の定期清掃をやめて汚れ率で回すだけで、126,000 THB の損失は目に見えて縮みます。

太陽光の監視でよくある5つの失敗

  • PCS 付属の無料監視画面だけで済ませる。 合計値しか出ないので、ストリング欠損と抑制が構造的に見えません。無料であることと、必要な情報が入っていることは別です。
  • 日射計を省く。 PR が出せなくなり、あらゆる低下を天候で説明できてしまいます。説明できてしまうというのは、検証できないということです。
  • 発電側の画面と電力監視の画面を別々に立てる。 突き合わせる作業が誰の担当でもなくなり、自家消費率を出す人が現れません。半年後には片方の画面が開かれなくなります。
  • 抑制を「故障」として保守業者に投げる。 設備は正常なので何も出てきません。報告書に「異常なし」と書かれて終わり、原因不明のまま翌年も同じ量を捨て続けます。
  • 清掃をカレンダーで回す。 汚れていない時に洗い、汚れている時に洗わない、という逆転が起きます。清掃費を払いながら損失が減らない、という最も報われない状態です。

5つに共通しているのは、どれも「監視をしていない」わけではない点です。画面はある、業者もいる、清掃もしている。それでも 819,000 THB が消えるのは、測っているものと、失っているものがずれているからです。

よくある質問

太陽光発電の監視システムは、パワコン付属の画面では足りないのですか

用途によります。今日の発電量を眺めるだけなら足ります。しかし付属画面の多くは PCS の合計値を表示する設計で、ストリング単位の電流を出しません。日射計の入力を持たないものも多く、その場合 PR は計算できません。さらに工場の消費側のデータを取り込めないので、自家消費率は原理的に出せません。この記事で挙げた4つの死角のうち、付属画面で見えるのは実質的に大きな故障だけです。金額で言えば 819,000 THB のうち、付属画面が捕まえられるのはごく一部にとどまります。

工場の太陽光で発電量が落ちたとき、まず何を見ればよいですか

順番があります。最初に自家消費率を見てください。これが落ちているなら設備は正常で、原因は抑制です。清掃や点検に進んでも何も出てきません。自家消費率が落ちていないなら、次に PR を見ます。PR が落ちていれば設備側の問題なので、ストリング単位の電流を並べます。1系統だけ電流が低ければ欠損、全系統がそろって低ければ汚れか高温です。モジュール温度を見れば高温かどうかは切り分けられます。この順番で見ると、無駄な清掃と無駄な点検依頼が消えます。

PR(性能比)はいくつを下回ったら異常と判断すべきですか

絶対値で線を引くのは勧めません。設置条件で妥当な水準が変わるからです。タイの屋根置きで新設なら 75〜80% が目安ですが、屋根の傾斜角、方位、通気、周囲の影で数ポイントは動きます。実務的には、自社設備の初年度の実測 PR を基準線として記録し、そこからの相対的な低下で判断してください。「基準比 -5% が2日連続」といった条件のほうが、絶対値の閾値よりも誤報が少なく、運用が続きます。年単位では、経年劣化のぶんだけ基準線自体を下げる必要があります。

日射計は本当に必要ですか。費用を抑える方法はありますか

PR を出したいなら必要です。日射計なしで PR は定義できません。ただし費用を抑える方法はあります。1つは等級の選択で、社内の運転改善が目的なら Class A 相当ではなく Class B 相当で足ります。第三者に性能保証を主張する場面がなければ、この差は実害になりません。もう1つは設置数で、屋根面の傾斜と方位がそろっている設備なら最低1組で始められます。それでも予算が取れない場合は、まず比発電量の前年同月比で運用を始め、日射計は次年度に回すという段取りが現実的です。ただし比発電量だけでは天候の差を吸収できないので、あくまで暫定と位置づけてください。

生産が止まる日に発電を捨てているかどうかは、どうすれば分かりますか

発電量と工場の消費電力を、同じ時刻軸で15分粒度以下で重ねてください。抑制が起きていれば、晴れているのに発電カーブの頭が平らに削れ、その高さが工場の消費電力の線とほぼ一致します。天候による低下ならカーブは不規則に揺れるので、見た目で区別できます。数字で押さえるなら、停止日の自家消費率を稼働日と比較します。稼働日が 95% 以上で推移しているのに停止日が大きく落ちていれば、その差が捨てている量です。PCS のログに出力抑制の状態フラグが記録されている機種もあるので、レジスタマップを確認する価値があります。

まとめ

自家消費型の太陽光は、発電した電気を売らないので、成果が請求書の中に埋もれます。埋もれたまま失われるのは、この記事のモデル工場で年間 819,000 THB、想定削減額 3,150,000 THB の 26% です。内訳は汚れが 126,000 THB、ストリング欠損が 63,000 THB、そしてゼロエクスポート制御による抑制が 630,000 THB。最大の穴である抑制は設備の故障ではないので、清掃と点検をいくら増やしても戻りません。

必要なのは、発電側の PR、消費側の自家消費率、そして請求側の買電量を、同じ時間軸に載せることです。PR を出すには日射計が要り、自家消費率を出すには受電点の電力計と時刻同期が要る。この2つを揃えた中位構成で 900,000 THB、取り戻せる 490,000 THB/年に対して単純回収 1.8年。3か月あれば、既存の PCS ログの棚卸しから日報の運用開始までは届きます。

既設の太陽光の発電量が想定どおり出ているかを確かめる段階でも、TOMAS TECH にご相談いただけます。PCS のログと過去12か月の電気料金請求書があれば、センサーを1つも足さずに比発電量の前年比までは出せますし、そこから日射計と電力計をどこまで足すべきかの判断もお手伝いできます。ご相談はお問い合わせページからどうぞ。

参考情報