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2026.08.07

工場内物流の改善は3層で進む|機械化で消える運搬のムダは1つだけ

工場内物流の改善は3層で進む|機械化で消える運搬のムダは1つだけ

構内の運搬が回らないという相談は、たいてい搬送機器の名前から始まる。コンベヤか、AGVか、自動倉庫か。しかし工場内物流の改善で最初に決めるべきものは機器ではない。運搬の総量を決めているのは距離ではなく、便の回数と1便あたりの単位だからである。本記事は、この2つを固定してから機械を選ぶ3層の順序を示す。

工場内物流の改善が「搬送機器の選定」から始まると失敗する理由

工場の中を物が動く量は、感覚では距離で決まっているように見える。倉庫から組立ラインまで80メートルある、だから遠い、だから何かで運ばせたい。この筋道は自然だが、実際に人と時間を食っている量とは一致しない。運搬に投入されている総人時は次の形で決まっている。

運搬の総人時 = 便の回数 × 1便あたりの所要時間

そして1便あたりの所要時間のうち、距離に比例する部分は往復の移動時間だけである。実際に測ると、1便の時間の過半は積む・降ろす・探す・待つ・記録するといった端点の作業で消えている。距離を半分にしても、便の回数が2倍になれば総人時は変わらない。逆に、距離が変わらなくても便の回数を半分にできれば総人時はおおむね半分に近づく。そして便の回数を決めているのは1便あたりの積載単位である。便の回数は、総物量を1便あたりの単位で割ったものである。つまり運搬の総人時に対して設計できる変数は便の回数と1便あたりの単位の2つであり、距離ではない。これがこの式の意味である。

機器から入ると何が起きるか

機器の選定から入った案件は、ほぼ同じ経過をたどる。現状の便の回数と積載単位をそのまま入力条件として渡し、ベンダーはその条件を満たす台数と能力を見積もる。1日に細かく何十便も走っている現場の条件をそのまま渡せば、それを人の代わりに走らせるための台数が出る。投資額は便の回数に比例して膨らむ。

さらに悪いのは、機械が入った後に便の設計を変えにくくなることだ。ルートを引き、充電位置を決め、床に磁気テープなり反射板なりを敷いた後で便をまとめようとすると、変更のたびに設備側の工事が発生する。第1層で決めるべきことを第3層の後ろに回すと、ほぼゼロ円で済んだ変更が工事費のかかる変更に化ける。これが、順序を飛ばすと投資額が過大になるという言い方の中身である。

距離・便数・単位のどれが効くか

3つの変数を並べると、改善余地と費用の関係がはっきりする。

変数変えるための手段費用の桁総人時への効き方
距離レイアウト変更、設備の移設大。生産停止を伴うことが多い移動時間の部分にだけ効く
便の回数定期便化、便のまとめ、呼び出し方式の変更ほぼゼロ。運用ルールの変更総人時にほぼ比例して効く
1便の単位容器の標準化、積載パターンの固定、台車・かご車の設計小。容器と治具の費用便の回数を通じて効く

この表には、費用が最も小さい2つの変数ほど総人時への効きが大きい、という逆転が現れている。にもかかわらず現場の議論が距離と機器に集中するのは、便と単位が「誰の担当でもない」領域だからである。距離はレイアウト担当、機器は設備担当と管轄がはっきりしている。一方で便の回数は生産計画と現場の裁量の隙間に落ちていて、明示的に設計された記録がどこにも無いことが多い。設計されていないものは改善の対象として認識されない。

「非効率をそのまま高速化した設備」という失敗

順序を飛ばした結果として買うことになるのは、非効率な物流をそのまま高速化した設備である。走る速度は上がる。しかし何を、いつ、どれだけ運ぶかという設計は変わっていないので、空で戻る便も、積み替えも、待ちもそのまま残る。稼働率だけが上がったように見えて、総人時は期待したほど下がらない。

先に決めるべきは、運ぶ回数と1回に運ぶ量である。この2つが固まっていない段階で機器の仕様書は書けない。仕様書に書く搬送能力は、便の回数と単位から導かれる数字だからだ。導出元が決まっていないのに答えだけ書けば、ベンダー側は安全側に振った能力を提案するほかない。過大な投資は、多くの場合ベンダーの提案が過剰なのではなく、発注側が条件を固定していないことの帰結である。

運搬のムダは4種類ある — 機械化で消えるのは1つだけ

運搬に含まれるムダは大きく4種類に分かれる。この分類は、どの層で消せるかがそれぞれ異なるという点で実務上の意味を持つ。

工場内物流の改善は3層で進む|機械化で消える運搬のムダは1つだけ - figure 2

4つを並べると次のようになる。

ムダの種類現場での現れ方主な原因消える層
探す現品を探して構内を歩く。表示と現物が合わない置き場が定位置化されていない。表示の粒度が荒い第2層
待つ前工程の完了待ち。フォークリフトの空き待ち。交差部での譲り合い便が設計されていない。呼び出し方式が属人的第1層と第2層
持ち替える工程の境界で容器を移し替える。パレットからかご車へ積み替える容器が工程ごとに違う。単位が揃っていない第1層
空で戻る往路は荷を持ち、復路は空で戻る復路の荷が便に組み込まれていない第1層と第3層

この分類で最も重要なのは、機械化で原則として消えるのは4番目の「空で戻る」だけだという点である。搬送機が走っている間、人はその場を離れられるので、復路が空でも人の時間は失われない。機械化は「空で戻る」のコストを人時から設備の稼働時間へ置き換える手段であって、他の3つには直接効かない。

「探す」「待つ」「持ち替える」は機械化では消えない

探すムダは、置き場と表示の設計の問題である。搬送機を入れても、置き場が決まっていなければ荷を降ろす先が決まらない。機械化するには先に定位置が必要になるので、順序としては第2層が前に来る。待つムダも同様で、前工程の完了待ちは搬送手段の性能とは無関係であり、便の頻度と呼び出し方式の設計に属する。フォークリフト待ちは台数の問題に見えるが、実際には「フォークリフトでしか動かせない単位」が多すぎることの結果であることが多い。

持ち替えるムダは、容器と単位の不統一が原因である。工程Aがプラスチックコンテナ、工程Bが金属パレット、出荷が紙箱という状態では、境界ごとに必ず積み替えが発生する。搬送機を入れても積み替え自体は消えない。むしろ搬送機は同一の単位を前提に設計されるので、単位が揃っていない現場では機械の前後に人の積み替え作業が新設される。導入後に人が減らない典型がこれである。

4分類を使った現状把握の手順

分類は、現状把握の測り方に落として初めて使える。推奨する手順は、運搬担当者の1日を4分類で時間配分することである。ストップウォッチで精密に測る必要はない。1週間、30分刻みで「探す・待つ・持ち替える・空で戻る・実際に荷を運ぶ」のどれに当たるかを本人に記録してもらうだけで桁は掴める。この記録を取ると、実際に荷が動いている時間の比率は想像より低く出て、低く出た分の内訳は探すと待つに集中していることが多い。投資判断の会議で3層の順序を説明するより、この1週間の記録を1枚出すほうが早い。

改善の順序は3層になる(第1層=便と単位、第2層=置き場と動線、第3層=機械化)

工場内物流の改善は、費用の桁が異なる3つの層に分かれる。順序は下から積み上げる形で固定されており、飛ばすと上の層の設計ができない。

工場内物流の改善は3層で進む|機械化で消える運搬のムダは1つだけ - figure 1

3層の中身を整理する。

決めること費用の桁主な担当
第1層 便と単位定期便(水すまし・ミルクラン)化、便の頻度、1便の積載単位、容器の標準化、呼び出し方式ほぼゼロから小生産管理と現場の合議
第2層 置き場と動線置き場の定位置化、間口の設計、積み替え点の削減、フォークリフトでしか動かせない単位の解消小から中生産技術
第3層 機械化コンベヤ、AGV・AMR、自動倉庫、仕分けの使い分け中から大。桁が変わる設備と経営判断

順序が固定されている理由は、上の層の設計入力が下の層の出力になっているからである。第3層で必要な搬送能力は、第1層で決めた便の回数と単位から計算される。第3層で必要な停留点の位置と数は、第2層で決めた置き場から決まる。下が決まっていなければ上は決められない。逆に言えば、下が決まっていれば上の仕様書は機械的に書ける。

3層は費用だけでなく、効果が出るまでの時間と後戻りの容易さも違う。第1層は紙とルールで決まるので着手は数週間、効果は1から2か月で数字に出て、間違えてもルールを戻せばよい。第2層は現場の物理的な移動を伴うので着手まで1から3か月かかり、置き場を再設定すれば戻せる。第3層は仕様確定と調達を含めて半年から1年、そして投資は戻せない。戻せる層で先に試し、戻せない層に入る前に条件を確定させる。この順序は海外拠点で特に効く。現地の作業実態を日本本社の想定だけで決めるとずれが出るが、第1層であればずれた時点で修正できる。

順序を飛ばした事例に共通する症状

物流自動化の事例を後から振り返ると、順序を飛ばした事例には共通の症状がある。導入前に示した削減人時と導入後の実績が合わない。理由を追うと、削減できると想定していた人時の中に「探す」「待つ」「持ち替える」が含まれている。これらは機械化では消えないので実績には出ない。もうひとつは、導入後に人の作業が新設されることである。機械が扱える単位に揃えるための積み替え、機械が読み取れる形への表示の貼り替え、停止時の復旧待ちと手動搬送。いずれも導入前の試算に入っていない。第1層と第2層を先に片付けておけば、このどれもが発生しないか、発生しても小さくなる。

第1層 定期便(水すまし)と積載単位を先に決める

第1層は、費用がほとんどかからないにもかかわらず総人時への効きが最も大きい層である。決めることは5つに整理できる。

決めること1 定期便化する

最初に決めるのは、運搬を「呼ばれたら行く」から「決まった時刻に回る」へ変えることである。水すましと呼ばれる方式である。構外の巡回集荷を指すミルクランの考え方を構内に持ち込んだもので、構内を巡回するルートと時刻を固定し、各工程はその便に合わせて出す物と受け取る物を用意する。

呼ばれたら行く方式の問題は、待ちが両側に発生することにある。呼ぶ側は運搬担当が来るまで待ち、運搬担当は次に呼ばれるまで待つ。どちらの待ちも記録に残らないので、改善の対象として認識されない。定期便に変えると、この2つの待ちが便の間隔という1つの数字に置き換わる。数字になれば設計できる。副次的な効果として、復路の荷が組み込めるようになる点も大きい。巡回ルートを決めれば各停留点で降ろすものと積むものを同時に扱えるので、4分類の「空で戻る」が構造的に減る。

決めること2 便の頻度を決める

便の間隔は、工程の消費速度と工程側の間口容量から決まる。間口に2時間分の在庫が置けるなら便は2時間間隔で足り、30分分しか置けないなら30分間隔の便が要る。逆に言えば、便の回数を減らしたければ間口容量を増やせばよく、これは第2層の話につながる。注意したいのは、間隔を短くするほど工程は楽になるが運搬の総人時は増えるというトレードオフである。現場の要望をそのまま聞くと便は際限なく増える。間口容量から逆算した必要間隔を基準にし、要望はその根拠を間口容量の話に翻訳してもらう。

決めること3 1便の積載単位を決める

1便で運ぶ量の単位を固定する。ここが曖昧なままだと便のたびに積載量が変わり、所要時間が読めない。読めない時間は計画に載らないので、結局は属人的な運用に戻る。基準は、人が安全に扱える重量と、工程が1回に受け取って処理しきれる量の小さいほうである。単位を大きくすれば便の回数は減るが、大きすぎるとフォークリフトが必要になり、第2層と第3層の制約が跳ね上がる。この関係が、後述するフォークリフト削減の議論の核心になる。

決めること4 容器を標準化する

容器の種類を減らすことは、4分類の「持ち替える」を消すうえで最も効く手段である。工程の物理的な要求から生じる積み替え点は残るが、それは第2層で個別に絞り込む。工程ごとに違う容器を使っている限り、境界では必ず積み替えが発生する。統一すると積み替えが消えるだけでなく、積載パターンが固定できるので所要時間が読めるようになり、将来の機械化の前提条件も同時に整う。全社一律である必要はない。まず物量の多い主要工程間で1種類に寄せ、例外は明示的に残す。容器の種類の一覧を1枚で管理し、例外が気付かないうちに増える状態を避ける。

決めること5 呼び出し方式を決める

定期便に切り替えても、何を積むかを伝える仕組みが要る。方式は主に3つある。

呼び出し方式仕組み向く条件注意点
定時定量毎便、決まった品目を決まった量だけ運ぶ生産が平準化されていて品目変動が小さい変動があると過剰在庫か欠品になる
かんばん方式空になった容器や札が次の補充指示になる品目数が中程度で消費が読める札の紛失と運用の形骸化が起きやすい
電子指示間口のセンサーや実績データから補充を指示する品目数が多い。変動が大きい仕組みの構築と保守の負荷がかかる

どれを選ぶかは品目数と変動の大きさで決まる。いきなり電子指示に飛ばず、かんばん方式で運用の型を作ってから電子化するほうが定着する。紙の運用で回らない仕組みは、電子化しても回らないからである。

海外工場で第1層が効く理由

第1層には、海外工場に固有の利得がある。教育コストの低下である。ローカルスタッフの入れ替わりがある前提に立つと、属人的な運用は引き継ぎのたびに劣化する。「あの人はどこに何があるか知っている」で回っている現場は、その人が抜けた瞬間に探すムダが跳ね上がる。

定期便のルートと時刻、容器の種類、積載単位が決まっていれば、新任者に教える内容は紙1枚に収まる。判断の余地が小さいほど、言語や経験の差が結果に出にくくなる。日本本社の工場では熟練者の判断で吸収されていた部分が、海外拠点では明示的なルールに置き換わっていないと機能しない。これは第1層を後回しにできない、海外拠点ならではの理由である。

第2層 置き場と動線 — フォークリフト削減は台数の話ではない

第1層で便と単位が決まると、次に決めるのは物理的な置き場と動線である。費用は表示、区画線、棚、間口の作り替えといった範囲に収まる。

置き場の定位置化と間口の設計

置き場の定位置化は、4分類の「探す」を消す。決めるのは場所そのものよりも、その場所に何がどれだけ置けるかという容量である。容量が決まっていないと繁忙期に置き場が溢れて別の場所に仮置きされ、定位置の意味が失われる。定位置は「置いてよい上限」とセットで初めて機能する。

間口の設計は、第1層の便の頻度と直結している。間口が2時間分の容量を持てば便は2時間間隔でよい。間口を広げる費用と便を増やす人時の費用を比べ、安いほうを選ぶ。比較自体は簡単だが、間口の話と便の話が別の担当者に分かれていると比較の場が作られない。第2層の設計には第1層の担当者を必ず同席させる。

積み替え点を数える

動線の設計で最初にやるべきことは、原材料の受け入れから完成品の出荷までの間に物が持ち替えられる回数を数えることである。工程数ではなく、容器や単位が変わる点の数を数える。この数字がそのまま人手の作業量になっている。積み替え点は、容器の統一で消えるものと、加熱炉の専用治具のように工程の物理的な要求から来る消せないものに分かれる。消せる点だけを対象にする。全部を消そうとすると工程側の反対が出て、消せるはずの点まで進まなくなる。

フォークリフト削減は「台数」ではなく「単位」の話

構内物流の効率化でフォークリフト削減が話題になるとき、議論はほぼ必ず台数から始まる。しかし台数は結果であって原因ではない。フォークリフトが必要なのは、それでしか動かせない単位の荷があるからである。パレット単位の大ロットが工程間を動いている限り、台数は減らない。

したがって取るべき手順は、台数の削減目標を立てることではなく、フォークリフトでしか動かせない荷を一覧にし、単位を小さくできるものから外していくことである。パレット単位で工程に届いていた材料を台車で扱える容器に分割し、定期便に載せる。この積み重ねの結果として台数が減る。順序を逆にして先に台数を減らすと、残った大ロットの荷が待ち行列を作り、待つムダが増えるだけになる。

安全面から見たフォークリフトの位置づけ

単位を減らす取り組みには、生産性とは別の根拠がある。以下は厚生労働省「労働災害統計」を一般社団法人日本産業車両協会が取りまとめた2023年の数字であり、日本国内の統計である。タイやASEANの数字ではない点を明記しておく。

2023年、フォークリフトに起因する死傷災害は1,989件、うち死亡災害は22件だった。事故の型別に見ると、死傷災害では、はさまれ・巻き込まれが35.4%、激突されが27.3%を占める。

死亡災害だけを取り出すと、型別の構成が変わる。

事故の型死傷災害に占める割合死亡災害に占める割合
はさまれ・巻き込まれ35.4%出典に記載なし
激突され27.3%出典に記載なし
転倒5.7%17.2%
墜落・転落11.9%18.0%

転倒は死傷全体では5.7%だが、死亡災害では17.2%に上がる。墜落・転落も11.9%から18.0%へ上がる。件数の多い型と、起きたときに死に至る型が一致していない。頻度対策と重篤度対策は別に立てる必要がある。

教育や標識で頻度は下げられるが、転倒や墜落の型は運転する機会の総量に比例すると考えられる。機会そのものを減らす唯一の手段が、フォークリフトでしか動かせない単位を減らすことである。安全対策と物流改善が同じ施策に収束するのは、この層においてである。

交差部の扱い

動線設計の最後は交差部である。人の通路とフォークリフトの通路が交わる点、定期便のルートと工程内の移動が交わる点を洗い出し、数を減らす。減らせない交差部は優先関係を決める。どちらが止まるかが決まっていない交差部では毎回両方が減速して譲り合いが発生し、1回あたりは数秒でも便の回数を掛けると無視できない時間になる。原則は歩行者優先であり、止まる側は車両にする。そのうえで、荷を持ったまま止まっては動き出すの繰り返しは荷崩れと接触の原因になるので、荷の動線が頻繁に通る交差部は、優先関係を床の停止線と表示で明示したうえで、そもそも人の動線と交差させない配置に寄せる。毎回その場の譲り合いに判断を委ねている限り、待ち時間も接触リスクも減らない。

第3層 マテハン機器(マテリアルハンドリング機器)の使い分け(コンベヤ/AGV・AMR/自動倉庫/仕分け自動化)

第1層と第2層が終わって初めて、機械化の設計ができる。マテハン機器の選定で使う判定軸は3つである。

工場内物流の改善は3層で進む|機械化で消える運搬のムダは1つだけ - figure 3

判定軸は、経路の固定度、便の頻度、単位の重量である。距離や年間搬送量は、この3つが決まった後の能力計算に使う入力であって、方式の選定には使えない。距離が長いからコンベヤ、という決め方が成立しないのは、同じ距離でも経路が固定できるかどうかで答えが変わるからである。

方式向く経路の固定度向く便の頻度向く単位の重量主な弱点
コンベヤ高い。経路が変わらない高い。連続または高頻度軽から中経路変更に工事が要る。床面を占有する
AGV中から高い。誘導路を敷ける中から重経路変更に誘導設備の変更が要る
AMR低から中。経路が変わりうる低から中軽から中台数が増えると渋滞の制御が難しい
自動倉庫保管点が固定入出庫の頻度に依存中から重建屋と投資の桁が大きい。移設が困難
仕分け自動化仕分け先が固定高い。ピークが集中する軽から中品目形状のばらつきに弱い

表で重要なのは弱点の列である。方式の選定は、できることの比較ではなく、弱点が自社の変動に耐えられるかの比較で決まる。品種構成が年に何度も変わる工場でコンベヤの固定経路を選べば、変更のたびに工事費が出る。逆に経路が10年変わらない工程であれば、その固定性は弱点ではなく利点になる。

経路の固定度をどう判定するか

経路の固定度は、感覚ではなく過去の実績で判定する。使う数字は、直近3年間でその区間のレイアウトや工程順が何回変わったかという回数である。0回であれば固定度は高い。年1回以上変わっているなら、固定経路を前提とする方式は避ける。将来の計画も見る。増設、移設、品種の切り替えが計画に入っていれば固定度は下がる。注意したいのは、計画の有無を設備担当だけで判断しないことである。生産計画側が想定している品種の推移を確認しないと、設備側の視点だけでは固定度を過大に見積もる。

便の頻度と単位の重量

便の頻度は第1層で決めた数字をそのまま使う。頻度が高いほど固定設備の稼働率が上がり、回収条件がよくなる。頻度が低い区間に固定設備を入れると、設備は大半の時間止まっていることになる。単位の重量も第1層の積載単位から出る。重量が上がるほど選べる方式は減り、投資額は上がる。ここで第1層に戻る判断が出ることがある。単位を小さくすれば安い方式が使えるという結論になったら、第1層をやり直す。3層は一方通行ではないが、再設計するのは常に下の層からである。

保管側と搬送側を分けて考える

第3層の検討では、保管と搬送を混ぜないほうがよい。自動倉庫は保管点の自動化、AGVやAMRは工程間搬送の自動化であり、解く問題が違うので同じ土俵で比較すると議論が噛み合わない。保管側の投資判断については自動倉庫の導入費用と回収条件を扱った記事で個別に整理している。

搬送側は台数の計算が投資額を直接決める。必要台数は便の頻度、1便の所要時間、充電や待機の時間から算出されるが、この計算の前提が第1層の数字である。台数計算の考え方とレイアウト条件の影響はAGVの配置と台数計算を扱った記事に、AGVとAMRと人手のどれがどの条件で有利かは搬送方式の比較記事にまとめてある。

コンベヤ設計を発注する前に発注側が決めておく項目

コンベヤ搬送システムは、いったん据え付けると経路の変更に工事を伴う。だからこそ、発注前に発注側が決めておくべき項目が他の方式より多い。ベンダーに丸投げした案件で後から問題になる項目を挙げる。

決める項目決めていないと起きること
搬送する単位と最大寸法・最大重量幅と駆動能力が過大または過小になる。将来の品種で載らない
ピーク時の時間あたり搬送数平均値で設計され、ピークで詰まる
停止時の運用停止中の手動搬送手段が無く、ライン全体が止まる
分岐と合流の点後から分岐を追加する工事が発生する
高さと人の横断点通路が分断され、人の動線が伸びる
清掃と保全のアクセス保全時にラインを止める範囲が広がる
制御の接続先生産管理システムとの実績連携が後付けになる

このうち発注側でしか決められないのは上から3つである。搬送する単位は第1層の積載単位から、ピーク時の搬送数は便の頻度から出る。停止時の運用は、その区間が止まったときに生産をどう続けるかという経営判断であり、ベンダーが決められる事柄ではない。

ピーク値と横断点の決め方

搬送数の設計値でよく起きるのは、平均値で設計してピークで詰まるという失敗である。平均値は月次の生産数を稼働時間で割って出せるので簡単だが、実際の搬送は始業直後、休憩明け、段取り替えの直後に山が来る。推奨する取り方は、直近1年の生産実績から日別のピークを拾い、上位5%の日を設計値にすることである。最大値そのものを設計値にすると設備が過大になる。上位5%を採り、それを超える日は運用で吸収するという切り分けを先に決めておかないと、能力の議論が収束しない。

最後に高さと横断点である。コンベヤは床面と空間を占有するので人の動線を分断し、分断された動線は歩行距離を伸ばす。横断点は人が通る頻度の高い場所に設け、頻度は現状の歩行を観察して決める。ここで第2層の動線設計が効いてくる。動線が整理されていない状態で経路を決めると、後から動線を直すときに横断点が合わなくなる。

仕分け自動化はどの条件から効き始めるか

仕分け自動化は、マテハンの中でも条件が絞られる領域である。効き始める条件は量ではなく構造で押さえる。

効き始める4つの条件

第一に、仕分け先の数が固定していること。頻繁に増減する運用では設備側の設定変更が発生し続ける。第二に、物量に時間的な山があること。平準化されている物量であれば人手を平準的に配置すれば足りる。山があるからこそ、山に合わせた人員配置のムダが発生し、設備で吸収する価値が出る。

第三に、品目の形状と重量のばらつきが小さいこと。仕分け機は搬送面と押し出し機構が形状を前提に設計されるので、ばらつきが大きいと詰まりと落下が増える。この場合はまず容器の標準化、つまり第1層に戻る。第四に、誤仕分けの発生コストが高いこと。誤って別の工程へ届いた部品が組み付けられてしまう工程では1件の損失が大きく、その分だけ設備による誤り率の低減を効果として計上できる。

量の基準は自社の数字から作る

「何行から仕分け自動化が成立するか」という問いには、業界横断の一般解が無い。ここでいう1行とは、1品目1明細の仕分け指示を指す。仕分け先の数、1行あたりの処理時間、人時単価、誤仕分けのコストがすべて効くからである。作り方は次の順序になる。まず現状の仕分けに投入している人時を、ピーク日とその他の日に分けて集計する。次に、設備で置き換えられる範囲を4分類で確認する。仕分け作業そのものは置き換えられるが、前後の積み替えと表示確認が残るなら、その分は削減人時から除く。最後に、残った削減人時に人時単価を掛けて年間効果を出す。この数字が出て初めて投資額の上限が決まる。次章で扱う考え方と同じ手順である。

人手と設備の中間案

仕分けは、全自動と全手動の間に選択肢が多い領域でもある。デジタル表示による指示、重量による照合、バーコード照合を人の作業に組み合わせるだけで誤り率は大きく下がり、設備投資の桁は自動仕分け機とは比較にならない。したがって検討の順序は、まず表示と照合の仕組みで誤り率を下げ、それでも人時が足りない場合に自動化を検討する、という形になる。誤りの原因が上流の表示にある場合、設備を入れても誤りは残る。ここでも第1層と第2層が先である。

構内物流の効率化にかかる費用と回収の考え方

投資判断で最も事故が起きるのは効果の計上方法である。ここを先に固定する。

ベースラインは1つに固定する

運搬の改善には複数の効果が出る。人時の削減、外注運搬費の削減、休日出勤の削減、誤仕分けによる損失の減少、災害リスクの低減。これらを合算して回収年数を出すと、実態より短い年数が出る。理由は単純で、同じ削減を二重に数えているからである。

たとえば運搬人時が減った結果として休日出勤が減ったのであれば、人時削減額と休日出勤削減額は同じ現象の別表現である。両方を足せば効果は2倍になるが、実際に減る支出は1回分しかない。

実務上の解は、効果を取るベースラインを1つに固定し、それ以外は定性的な副次効果として記述に留めることである。以下の試算では、ベースラインを運搬人時の削減のみに固定する。外注費、休日出勤、災害リスクは金額に計上しない。

試算の前提

以下は考え方を示すための例であり、金額はすべて仮の数値である。自社の実績値に置き換えて使うことを前提としている。

前提項目根拠
構内運搬の専従人員4名現状の配置
1日の稼働時間8時間通常勤務
月間稼働日数25日稼働カレンダー
人時単価50バーツタイの県別最低賃金337から400バーツ/日のうち上限側400を8時間で割った400 ÷ 8 = 50バーツを概算値として採用。法定負担を含めると上振れする

この前提から、年間の運搬人時と労務コストを出す。4名 × 8時間 = 32人時/日。32人時 × 25日 = 800人時/月。800人時 × 12か月 = 9,600人時/年。9,600人時 × 50バーツ = 480,000バーツ/年。これが改善前の運搬労務コストである。

層ごとの効果と許容投資額

各層の削減率も仮の値である。実際には現状把握の記録から決める。

累計削減率その層の追加削減人時(年)その層の追加効果(バーツ/年)
第1層のみ12%1,15257,600
第1層+第2層20%76838,400
第1層+第2層+第3層45%2,400120,000

計算を確認する。第1層のみで12%なら 9,600 × 0.12 = 1,152人時、金額は 1,152 × 50 = 57,600バーツ。第2層まで累計20%なら 9,600 × 0.20 = 1,920人時で、第2層の追加分は 1,920 – 1,152 = 768人時、金額は 768 × 50 = 38,400バーツ。第3層まで累計45%なら 9,600 × 0.45 = 4,320人時で、第3層の追加分は 4,320 – 1,920 = 2,400人時、金額は 2,400 × 50 = 120,000バーツである。

ここから第3層の許容投資額を出す。分子は第3層の投資額、分母は第3層の追加効果120,000バーツ/年だけである。第1層と第2層の効果96,000バーツ/年を分母に足してはならない。足すと、機械を買わなくても得られた効果を機械の効果として数えることになる。

目標回収年数第3層の許容投資額(バーツ)
2年240,000
3年360,000
5年600,000

検算する。120,000 × 2 = 240,000。120,000 × 3 = 360,000。120,000 × 5 = 600,000。いずれも一致する。

投資額の定義を式と揃える

許容投資額と比べる「投資額」の定義を明示しておく。含めるのは、機器本体、設置工事、電源と通信の敷設、制御の接続、初年度の保守費用、立ち上げ期の教育費用である。本体の見積額だけを分子に置くと、実際の支出との差が回収年数に直接効く。

年次で発生する保守費用を分子に入れるか分母から引くかは、どちらでもよいが混ぜてはならない。ここでは初年度分を分子に含め、2年目以降の保守費用は分母の効果から差し引く扱いを推奨する。仮に2年目以降の年間保守が20,000バーツであれば、1年目の分母は120,000バーツ(初年度保守は分子側にある)、2年目と3年目の分母は120,000 – 20,000 = 100,000バーツとなる。3年回収の許容投資額は120,000 + 100,000 + 100,000 = 320,000バーツで、保守を無視した360,000バーツより40,000バーツ低い。なお保守を全額分子に寄せる扱いでも、360,000 – 20,000 × 3 = 300,000バーツに初年度保守20,000バーツを戻すと同じ水準に着地する。どちらの扱いでも結論は変わらないので、要点は混ぜないことだけである。

人時単価の感度

人時単価は回収年数に直接効くので、感度を見ておく。単価が60バーツになれば第3層の追加効果は 2,400 × 60 = 144,000バーツ/年、3年回収の許容投資額は 144,000 × 3 = 432,000バーツになる。単価40バーツなら 2,400 × 40 = 96,000バーツ/年、3年で288,000バーツである。

タイの県別最低賃金は2026年時点で337から400バーツ/日の範囲にあり、全国一律ではない。同じ設備でも、立地する県によって成立する回収年数が変わるということである。労務費の推移をどう織り込むかについてはタイの人件費上昇を前提にした自動化投資の考え方で、単価の上昇率を織り込んだ回収モデルを扱っている。

金額規模の断定は避ける

なお、コンベヤやAGVの実勢価格をここで示すことはしない。仕様、台数、設置条件、制御の接続範囲で桁が変わるためである。発注側がやるべきは、価格を調べることではなく上の手順で許容投資額を先に決めることである。許容額を超える見積が出てきたら、方式を変えるか、第1層と第2層に戻って削減率を積み増すかの二択になる。

タイ・海外工場で先に効く順序(稼働率57.47%が意味すること)

タイの製造業には、投資の順序を左右するマクロの条件がある。

設備は余っていて人が足りない

タイ製造業の平均稼働率は、2026年第2四半期時点で57.47%である。2026年6月の鉱工業生産指数は前年同月比マイナス3.1%だった。この2つの数字が示しているのは、設備能力に余裕があるという状態である。能力に余裕がある局面で能力を増やす投資は回収しにくい。増やした能力が稼働しないからだ。一方で人手の逼迫は続いており、ASEANの倉庫・物流分野では労働力の確保が課題として継続的に指摘されている。

したがって投資の性格は、能力増強型ではなく人時削減型が先になる。工場内物流はまさに人時削減型の投資対象であり、しかも生産能力そのものには手を付けないので、稼働率が低い局面でも効果が出る。第1層と第2層は設備を止めずに実施できるので、この局面との相性はさらによい。

労務削減単独では第3層は回収しにくい

同時に、冷静に見ておくべき事実もある。タイの人時単価は日本と比べて低い。前章の試算のとおり、人時単価50バーツの前提では第3層の追加効果は年間120,000バーツの桁で、3年回収を条件にすると許容投資額は360,000バーツにとどまる。このためタイ拠点で第3層の投資を成立させたい場合は、労務削減単独ではなく、安全、品質、24時間運転といった他の要因が同時に効く区間を選ぶ必要がある。ただしその場合も、金額に計上するのはベースラインとして選んだ1つだけにする。安全と品質を金額に換算して足し込むと、前章で述べた二重計上に戻る。

裏を返せば、タイ拠点では第1層と第2層の投資対効果が相対的に非常に高いということでもある。容器と表示、置き場の整備までで20%の人時削減が視野に入る層を飛ばして、360,000バーツの枠を争う議論を先にする理由は無い。なお、標準化による教育コストの削減はこの試算に含めていない。既存の勘定科目に現れず金額化の根拠が弱いためで、実際にはこの分が上乗せされると考えてよい。どの工程を自動化の対象に選ぶかという上流の判断については自動化の対象工程を選ぶ考え方で扱っている。

BOIの支援措置は既存設備の更新に向いている

タイ投資委員会(BOI)は、既存設備のアップグレードを支援する「Smart and Sustainable Industry」措置を設けている。2026年第1四半期の申請は61件、7,071百万バーツだった。同時期の物流・高付加価値サービス分野の申請は68件、14,548百万バーツである。

この措置は新規の能力増強ではなく既存設備の改善を対象としている点で、稼働率が低い局面の投資の性格と合っている。第3層の投資を検討する場合、申請要件と対象範囲を早い段階で確認しておく価値がある。ただし要件は改定されるため、最新の公表内容を確認してほしい。名称が近い他の措置と混同されやすいので、措置名を正確に指定して照会することを勧める。

物流改善の進め方チェックリスト(発注前に紙で決める項目)

ここまでの内容を、発注前に紙で決める項目として整理する。ベンダーとの打ち合わせに入る前に一覧が埋まっているかを確認する。

決める項目埋まっている状態
現状把握運搬人時の4分類別内訳1週間分の記録がある
現状把握積み替え点の数受け入れから出荷まで数え上げてある
第1層定期便のルートと時刻図と時刻表が1枚にある
第1層便の頻度と間口容量の関係各工程の間口が何時間分かを記載
第1層1便の積載単位重量と数量の上限が決まっている
第1層容器の種類一覧があり例外が明示されている
第1層呼び出し方式定時定量・かんばん・電子指示のどれかに決定
第2層置き場の定位置と容量上限図面に位置と上限数が記載されている
第2層フォークリフトでしか動かせない荷の一覧品目と理由が列挙されている
第2層交差部の位置と優先関係図面に記載され現場に表示されている
第3層経路の固定度直近3年の変更回数と今後の計画
第3層ピーク時の搬送数上位5%の日の実績値
第3層停止時の運用手動搬送の手順と体制が決まっている
投資判断ベースラインの選択効果を取る根拠を1つに固定
投資判断許容投資額年間効果 × 目標回収年数で算出済み
投資判断投資額の定義本体・設置・制御・初年度保守の範囲を明記

この一覧のうち、ベンダーに聞けば埋まる項目は1つも無い。すべて発注側の内部で決まる事柄である。埋まっていれば見積の比較は能力と価格の比較に単純化され、埋まっていない状態で見積を取ると、比較の軸がベンダーごとに異なり、最も説明の巧みな提案が選ばれることになる。

進め方の順序

実務上の進め方としては、現状把握の1週間から始め、第1層を1か月から2か月で回し、効果を測ってから第2層へ進む。第2層の効果が出た時点で、残った人時の内訳をもう一度4分類で確認する。この時点で「空で戻る」が主要な残りになっていれば、第3層の検討に入る条件が整っている。他の3つが残っている場合は第1層と第2層に戻る。判定基準は単純だが有効である。機械化で消える種類のムダが残っていなければ、機械化は効かない。

よくある質問(FAQ)

現場からよく出る質問を5つ挙げる。

工場内物流の改善はどこから手を付ければよいですか?

現状把握から始める。運搬担当者の1週間の時間を、探す・待つ・持ち替える・空で戻る・実際に運ぶの5区分で記録する。精密な計測は不要で、30分刻みの自己申告で桁は掴める。この記録が無い状態で施策を決めると、機械化で消えないムダを機械化の効果として見込むことになる。記録が取れたら、定期便のルートと時刻、1便の積載単位、容器の種類を決める。ここまでは費用がほとんどかからず、効果は1から2か月で数字に出る。搬送機器の検討はこの後である。

構内物流の効率化にはコンベヤとAGVのどちらが向きますか?

距離や搬送量では決まらない。判定に使うのは、経路の固定度、便の頻度、単位の重量の3つである。経路が直近3年で一度も変わっておらず、今後の変更計画も無く、便の頻度が高い区間であれば、固定経路のコンベヤ搬送システムが有利になる。経路が年に一度以上変わっている区間や、増設や品種切り替えの計画がある区間では、経路変更に工事を伴う方式は避けたほうがよい。フォークリフトでしか動かせない荷が残っている場合は、どちらを選ぶ前に単位を分割できないかを先に検討する。単位が小さくなれば選択肢が増え、投資額の桁も下がる。

フォークリフト削減は現実的に可能ですか?

台数を目標にすると難しく、単位を目標にすると進む。フォークリフトが必要なのは、フォークリフトでしか動かせない荷があるからであり、台数はその結果である。取る手順は、その種の荷を一覧にし、パレット単位で工程に届いている材料を台車で扱える容器に分割して定期便に載せる、という置き換えの積み重ねになる。安全面の裏付けもある。日本の労働災害統計では、2023年のフォークリフトに起因する死傷災害は1,989件、死亡災害は22件で、死亡災害では転倒17.2%、墜落・転落18.0%と、死傷全体での5.7%、11.9%より大きく上がる。この型の災害は運転する機会の総量に比例し、機会そのものを減らせるのは単位の削減だけである。

仕分け自動化はどのくらいの物量から検討すべきですか?

物量の絶対値では決まらない。効き始める条件は4つで、仕分け先の数が固定していること、物量に時間的な山があること、品目の形状と重量のばらつきが小さいこと、誤仕分けの発生コストが高いことである。物量が多くても平準化されていれば人の配置で足りる。判断の順序としては、まずデジタル表示や重量照合といった中間案で誤り率を下げ、それでも人時が足りない場合に自動化を検討する。形状のばらつきが大きい場合は、自動化の前に容器の標準化に戻る。

工場内物流の改善にはどのくらいの費用がかかりますか?

層によって桁が違う。第1層の便と単位の設計はほぼ費用がかからず、容器と表示の費用が発生する程度である。第2層は表示、区画線、棚、間口の作り替えといった範囲で、生産設備の投資と比べれば小さい。桁が変わるのは第3層の機械化だけである。したがって費用の質問に答える順序は、価格を調べることではなく許容投資額を先に決めることになる。年間の削減人時に人時単価を掛けて年間効果を出し、目標回収年数を掛ければ許容投資額が出る。このとき効果のベースラインは1つに固定し、労務削減と外注削減を同時に計上しない。

まとめ

本記事の主張は2つである。ひとつ、工場内物流の改善で運搬の総量を決めているのは距離ではなく、便の回数と1便あたりの単位の2つである。ふたつ、運搬のムダ4種類のうち機械化で消えるのは「空で戻る」1つだけで、「探す」「待つ」「持ち替える」は第1層と第2層でしか消えない。

したがって順序は、第1層で便と積載単位と容器を決め、第2層で置き場と動線を整え、第3層で機械化を設計する、という3層になる。この順序を飛ばして機器の選定から入ると、非効率な物流をそのまま高速化した設備を買うことになり、台数も投資額も過大になる。第3層の方式選定に使う判定軸は、経路の固定度、便の頻度、単位の重量の3変数であって、距離や搬送量の単独では決まらない。

フォークリフト削減も同じ構造である。減らすべきは台数ではなく、フォークリフトでしか動かせない単位である。単位が残っている限り台数は減らず、日本の労働災害統計が示すとおり、転倒や墜落といった重篤な型の災害は運転する機会の総量に比例する。費用と回収については、効果を取るベースラインを1つに固定し、投資額の定義と回収年数の式を揃える。労務削減と外注削減を同時に計上しない。

タイの製造業は2026年第2四半期の稼働率が57.47%、2026年6月の鉱工業生産が前年同月比マイナス3.1%と、設備に余裕があって人が足りない局面にある。能力増強型ではなく人時削減型の投資が先に来るという意味で、工場内物流は投資対象として順序が早い。そして人時単価が低い環境では、ほぼゼロ円で効く第1層の相対的な価値がさらに高くなる。

工場内物流の改善は、設備を買う段階より前に決まる部分のほうが大きい。定期便の時刻表がまだ1枚も無い段階、容器の一覧をこれから作る段階でも相談に応じている。現状把握の記録の取り方や、許容投資額の算出、第3層に進む条件が整っているかの確認について具体的に進めたい場合は、お問い合わせから連絡してほしい。機器の見積を取る前の段階からで構わない。

参考情報