導入事例

2025.10.20

「PEGASUS」導入で実現した、在庫管理のリアルタイム化と現場変革

タイの製造現場では、生産ラインそのものの自動化が進む一方で、材料の入庫、保管、払い出し、棚卸といった周辺業務に手作業が残りやすい。特に日系製造業では、既存の基幹システムを長く使い続けながら、現場側だけを段階的に改善していくケースが多い。そのため、単に新しいシステムを入れるだけでは成果につながらない。既存システム、現場作業、ラベル、スキャン端末、在庫ルールをひとつの運用としてつなげることが重要になる。

Minebea AccessSolutions Thai(MAST)様の調達倉庫QRシステム構築は、その典型的な成功事例である。TOMAS TECHは、同社の既存AS400と連携するQR・バーコードスキャンシステムを構築し、材料入庫から保管、在庫移動、ラベル発行までの業務を見直した。結果として、稼働後の棚差ゼロ、手入力作業の大幅削減、検品スピードの向上、倉庫要員2名分の省人化という成果につながった。

この事例の価値は、単に「QRを読み取れるようにした」ことではない。既存の基幹システムを活かしながら、現場で起きる入力ミス、確認漏れ、再作業、在庫差異を減らし、調達倉庫の運用そのものを標準化した点にある。タイで製造拠点を運営する日系企業にとって、既存システムを置き換えずに現場改善を進める現実的なアプローチとして参考になる事例である。

QRスキャンを起点に、入庫・保管・在庫移動を正確に記録する調達倉庫運用へ

MAST様について

Minebea AccessSolutions Thaiは、タイに拠点を置く自動車部品メーカーであり、自動車用ドアロック、ドアハンドル、ドアミラー関連部品などを扱う製造拠点である。自動車業界では、品質、納期、トレーサビリティ、在庫精度が高い水準で求められる。材料がどこにあり、どのロットがいつ入庫し、どの工程に使われたのかを正確に追えることは、安定した生産活動の前提になる。

一方で、製造規模が大きくなるほど、倉庫業務は複雑になる。品目数が増え、入庫頻度が増え、保管場所が増えると、手入力や紙ベースの確認だけでは限界が出る。現場担当者が慣れと経験で業務を回していても、繁忙期、担当者変更、緊急入荷、ライン変更などが重なると、在庫情報と実際の棚の状態にずれが生じやすくなる。

課題:手入力が残る倉庫では、正確性とスピードを両立しにくい

導入前の課題は大きく三つあった。第一に、材料入庫や保管時の手入力負荷である。現場で確認した情報を人が入力する運用では、入力時間がかかるだけでなく、品番、数量、ロット、保管場所などの入力ミスが起こり得る。第二に、在庫の棚差である。システム上の在庫と実際の在庫が一致しない状態が続くと、現場は常に確認作業に追われる。第三に、既存AS400との関係である。基幹システムは企業の業務ルールと深く結びついているため、倉庫改善のためだけに全体を置き換えることは現実的ではない。

解決策:AS400連携、QR/バーコード、統一ラベルを一体で設計

TOMAS TECHは、MAST様の調達倉庫に対して、QR・バーコードスキャンを中心とした倉庫業務システムを構築した。ポイントは、単体のスキャン機能ではなく、既存AS400、ラベル発行、入庫・保管・出庫の現場動作を一つの流れとして設計したことにある。

AS400との連携により、既存システム側のデータを活かしながら、現場での実績登録をスムーズに行えるようにした。現場がスキャンした情報が在庫移動や入庫実績と結びつくことで、二重入力や手入力の負荷を減らすことができる。QR・バーコードスキャンにより、品番、ロット、数量、保管場所などの情報を正確に読み取れるようにした。統一ラベルシステムは、入庫、保管、出庫で使うラベル形式を標準化し、現場作業を迷わず進めるためのインターフェースになった。

AS400と現場スキャン端末を連携し、ラベル発行から在庫更新までを一貫管理

導入の進め方:調達倉庫から始め、成果を確認して横展開へ

本プロジェクトでは、まず調達倉庫を対象にシステムを導入した。全工程を一気に変えるのではなく、課題が明確で成果が見えやすい領域から始めることで、現場の理解を得やすくなり、運用定着のスピードも上がる。倉庫業務の改善では、システムを完成させることよりも、現場で正しく使われ続けることが重要である。

TOMAS TECHは、タイ現地での製造業務、日系企業の管理水準、既存システムとの連携、現場ユーザーの操作性を踏まえ、段階的に運用を作り込んだ。日本語、タイ語、英語をまたぐ現場では、システムの機能だけでなく、使い方のわかりやすさも成果に直結する。

成果:棚差ゼロ、手入力削減、検品スピード向上、省人化

  • 棚差ゼロ:稼働後の調達倉庫で達成
  • 手入力の大幅削減:スキャンで入力作業を置き換え
  • 検品スピード向上:入庫処理の滞留を抑制
  • 倉庫要員2名分の省人化:確認・入力・修正・探す作業を削減

導入後、MAST様の調達倉庫では棚差ゼロを実現した。在庫管理における棚差ゼロは、現場作業とシステム記録が高い精度で一致していることを示す重要な成果である。また、手入力作業が大幅に削減された。人が入力する作業をスキャンに置き換えることで、入力時間を短縮できるだけでなく、ミスの発生源を減らすことができる。

検品スピードも向上した。スキャンによって必要情報をすばやく確認できるため、材料入庫時の処理が速くなり、滞留を抑えられる。さらに、倉庫要員2名分の省人化という明確な効果も確認された。省人化は単なる人員削減ではなく、人手に依存していた確認、入力、修正、探す作業を減らし、限られた人員で安定した運用を実現することを意味する。

PEGASUSを導入したことで、システム上の在庫と実際の在庫がぴったり合うようになり、管理精度が向上しました。また、入出庫作業をハンディのスキャンで行うことで、生産管理システムにデータを連動させ、手入力がなくなりました。これにより2名の省人化を実現しました。

― 森川様(Minebea AccessSolutions Thai Ltd.)

タイの日系製造業への示唆

この事例は、タイの日系製造業にとって重要な示唆を持っている。多くの企業では、既存基幹システムを残しながら、現場だけを改善したいというニーズがある。MAST様の事例では、AS400を前提にしながら、現場のスキャン運用を組み合わせた。これは、既存資産を捨てずに、現場のデジタル化を進める現実的なアプローチである。

WMSは単独で終わるものではない。入庫精度が上がれば、生産計画や工程実績の精度も上がる。材料の保管場所やロットが正確に追えるようになれば、トレーサビリティの強化にもつながる。今後、調達倉庫から仕掛在庫や工程内在庫へ展開することで、工場全体の可視化にもつながっていく。

まとめ

Minebea AccessSolutions Thai様の調達倉庫QRシステム構築は、タイの製造現場におけるデジタル化の実践例である。既存AS400を活かしながら、QR・バーコードスキャン、統一ラベル、現場運用設計を組み合わせることで、棚差ゼロ、手入力削減、検品スピード向上、倉庫要員2名分の省人化を実現した。

製造業のDXは、必ずしも大規模なシステム刷新から始める必要はない。現場で毎日発生している入力、確認、照合、棚卸の負荷を減らすことから始めても、十分に大きな成果を出すことができる。TOMAS TECHは、現場に根づくシステム導入を通じて、タイの日系製造業の生産性向上とデータ活用を支援する。

事例紹介動画