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2026.10.04

真空エジェクタ 選定|タイ工場の吸着搬送設計と受入試験

真空エジェクタ 選定|タイ工場の吸着搬送設計と受入試験

真空エジェクタ 選定をカタログの最大真空圧だけで進めると、ロボットがワークを持てない、吸着確認を待ってサイクルが延びる、圧縮空気を使い続ける、といった問題が試運転で表面化します。タイ工場の吸着搬送では、実際のワークと吸着パッドで漏れ量を測り、配管容積と許容時間から必要な吸引特性を決め、保持・離脱・異常時の動作まで確認することが先です。本稿は機種比較、RFP、FAT、SATにそのまま使える判断順序を示します。

真空エジェクタ 選定の前に搬送条件を一枚にまとめる

エジェクタは圧縮空気を使って真空を発生させる装置です。真空発生器には電動ポンプやブロワもあり、Schmalzはワークの通気性、利用できるエネルギー、寸法・重量、搬送距離、サイクル時間を選定要因に挙げています。短いサイクルでロボット先端に小型の発生器を置きたい案件はエジェクタが候補になります。ただし、その適性は「エジェクタなら何でも高速」という意味ではありません。吸着面に漏れがある、配管が長い、同時に多数のパッドを使う場合には、発生器の特性と周辺回路まで調べます。

最初に記録するのはワークの材質、質量、外形、表面粗さ、穴、反り、温度、油・水・粉じん、個体差です。吸着する向き、ロボットの加減速、旋回時の姿勢、移動経路、停止時に保持が必要な時間も書きます。次に、パッドの数・径・材質・配置、ワークに触れられる位置、許容される接触痕を記します。発生器とパッドの間のチューブ内径・長さ、継手、フィルタ、マニホールド、逆止弁は、吸い出す空気の容積と圧力損失を変えます。現場のレギュレータ設定だけでなく、他の空圧機器が同時に動いたときのエジェクタ入口圧力が必要です。

工程要求は「ピック開始から何秒以内に吸着確認が必要か」「搬送中にどの状態を保つか」「置き位置で何秒以内に離脱させるか」「失敗したらどこで止めるか」に分けます。ロボットの総サイクルだけでは発生器へ割り当てる時間が見えません。吸着に使える時間、真空確認に使える時間、移動と離脱に使える時間を別々に記録します。設備の設置場所、騒音制限、排気方向、保守スペース、交換品の現地供給、既存PLCの入出力も比較表へ入れます。

既存のロボットハンド・グリッパー選定記事では把持方式全体を扱っています。ここでは真空発生回路の容量、制御、検証に対象を絞ります。また、先端工具を複数切り替える設備はツールチェンジャー選定記事と合わせ、交換後の空圧接続と真空再確認を設計してください。

ワークの気密性とリークを実物で測る

密閉ワークと多孔質ワークを同じ式で決めない

ガラス、平滑な金属板、表面処理された樹脂板のようにパッドがよく密着する面と、段ボール、織物、発泡材、穴あきトレー、粗い鋳物では、吸着中に流れ込む空気が違います。Schmalzの吸引量目安は、滑らかで気密性のある表面に対し、パッド径ごとの参考値として示されています。同社は多孔質・通気性ワークには実物で吸着試験を行うよう明記しています。カタログの「最大吸引流量」を単純にパッド数へ掛けるだけでは、実際の作動点が分かりません。

漏れは材料を通過する空気だけではありません。パッドのリップとワークの隙間、段差、リブ、印字、搬送中のたわみ、劣化した継手、傷んだチューブからも空気が入ります。新しいサンプル一枚だけで判断すると、仕入先変更後の表面や湿度で条件が変わったときに余裕がなくなります。良品の上限・下限、軽い反り、実際の包装や粉じんを含むサンプルを用意します。食品や医薬品など材料接触に制約がある場合は、パッド材質と洗浄条件も別に確認します。

実測で作動点をつかむ

同じパッド、同じ配管長、同じ供給圧でワークを吸着し、パッドに近い位置の真空圧を測ります。エジェクタの供給圧、吸引側の圧力、吸着成立までの時間、ワークを保持中の圧力変動、離脱時間を同時に記録します。SMCの選定資料には、実物を吸着して得た真空圧を発生器の流量特性曲線に当てはめ、漏れ量を推定する方法が載っています。この考え方なら「このワークとこのパッドの組み合わせ」で必要な流量を扱えます。漏れ量がゼロという仮定は、実測で漏れが十分小さいと確かめた場合に限ります。

見たいのは単一の最大値ではなく、狙う真空圧でどれだけ吸引できるかです。エジェクタの流量特性は真空圧で変わり、最大吸引流量の表示点と、吸着確認スイッチを入れる圧力点は違う可能性があります。同じ「最大真空圧」を掲げる候補でも、リークが続く面で維持できる圧力は異なります。候補機種ごとに、要求圧付近の流量特性、推奨供給圧、空気消費量、制御弁やフィルタの有無を同条件で比較します。圧力の符号が「−kPa」と「真空度%」で混在する資料は単位を合わせて読みます。

真空エジェクタ 選定|タイ工場の吸着搬送設計と受入試験 - figure 1

必要吸引流量をサイクル時間と配管容積から考える

エジェクタが吸い出すのはパッド内だけではありません。発生器からパッドまでのチューブ、継手、分岐、バッファ容積も対象です。ホースを長くした設計とロボット先端に発生器を置く設計を同じ型番だけで比較してはいけません。SMCは選定資料で、配管容積、目標応答時間、吸着中の漏れを使って必要な平均吸引流量を見積もる手順を示しています。これは候補を絞る計算であり、最終的な達成時間は実機の弁応答、流路抵抗、ワークの変形を含めて確認します。

設計時は、まずピック位置でパッドが接触した時点を時刻ゼロにします。次に、真空圧が吸着確認の閾値へ達するまでの許容時間を定めます。エジェクタ入口圧力を実測し、配管とパッドの容積を算出または測定し、実ワークの漏れを入れます。複数パッドが順に接触するなら、最初に一つが密着してから全パッドが安定するまでの過渡状態も測ります。ロボットの加速許可信号は、圧力が一瞬閾値を跨いだだけで出さず、必要な安定時間と診断を設けます。

Schmalzの計算例には、平滑で気密性のある面のパッド径ごとに吸引量の参考値が示されています。しかし、この表をタイ工場の段ボールや袋物へ直接適用できません。また、同社の選定支援に記載された−600 mbarは気密ワークを用いた計算上の想定値で、あらゆるワークの目標真空圧を意味しません。必要な保持力は荷重と動作で変わります。高真空へ寄せれば必ず安全になるという考え方ではなく、パッド面積、配置、ワークの変形、加速度を確認して設定圧を選びます。

タイの工場ではライン内の複数設備が同時に空気を使います。コンプレッサー室の圧力が十分でも、ロボット先端の細い配管や共通マニホールドで供給圧が下がることがあります。最大稼働時と通常稼働時の両方で、エジェクタ入口圧とピック時の立ち上がりを記録してください。テストベンチで成功した型番が量産ラインで遅くなる原因を、供給側の圧力変動と吸引側のリークに分けて追えます。

吸着パッドと発生器を一つの系として比較する

パッドの径を大きくすると接触面積は増えますが、ワークの曲面や狭い平面ではリップが浮き、リークが増える場合があります。薄いシートではパッドの吸い込みで変形や二枚取りが生じることもあります。パッドを増やすと荷重分散に役立つ一方、分岐と配管容積も増えます。まずパッド形状・材質・配置を実ワークで確かめ、その条件で発生器を選びます。順序を逆にすると、大きな発生器でパッドとワークの接触不良を隠す設計になりがちです。

比較表は少なくとも二つのワーク状態を使います。気密性の高い状態では、必要な圧力へ何秒で達し、保持中にエジェクタを停止できるかを見る。最も漏れやすい許容ワークでは、圧力がどこで安定し、そのときにどれだけ圧縮空気を使うかを見る。さらに、パッドが一つ塞がらない、ワークが斜めに乗る、フィルタが汚れるといった状態を試し、センサーが異常を確実に検出するか確認します。全状態に対して単一の「強い吸引」が正解とは限りません。

エジェクタ本体だけでなく、吸着用の供給弁、離脱用のブローオフ弁、逆止弁、真空スイッチ、フィルタ、サイレンサの構成を見ます。発生器に一体化される機能と別置きになる機能があり、部品点数、配線、保守箇所が変わります。粉じんの多いワークならフィルタ清掃周期と目詰まり検知方法を確認します。排気が作業者や軽いワークを吹き飛ばさない位置にあるか、ブローオフでワークが跳ねないかも試験対象です。

真空発生器の比較は空気消費と稼働時間まで含める

エジェクタ、ポンプ、ブロワの比較軸

エジェクタは圧縮空気を使い、小型でロボット近傍に置きやすい構成があります。電動ポンプは電源と設置スペースが必要ですが、長時間の保持や集中配管を含む構成で比較対象になります。ブロワは漏れの多い大きな面を扱う用途で候補になることがあります。Schmalzは、必要な真空度と吸引量を大きくすると消費エネルギーと運用費が増えると説明しています。したがって「エジェクタの購入価格が低い」「ポンプの定格電力が小さい」だけでは総費用を比べられません。

比較する境界を揃えます。発生器の単体価格、制御弁、センサー、継手、配管、コンプレッサー側の供給余力、設置工事、停止時の保守を含めます。エジェクタでは、カタログの圧縮空気消費量に、実際に噴射する時間と1時間当たりのサイクル数、年間稼働時間を掛けて使用空気量を見積もります。ただし電力費への換算は現場のコンプレッサー効率、圧力、負荷率、漏れ、電気料金を使って行います。一般論の「エジェクタなら何%節電」という数字を見積書に流用しません。

保持中に噴射を続けるか

密閉性の高いワークなら、設定圧へ達した後に供給を止め、必要に応じて再始動する省エネ制御を比較できます。ただし停止中の圧力低下、逆止弁の性能、再始動遅れ、電源喪失時の動作を確認します。漏れが大きいワークは供給を止めると急に保持力が落ちるため、同じ制御を当てはめられません。Piabの製品情報にも漏れのある材料を対象に供給圧を調整する省エネ機能がありますが、効果や適合性は対象ワークと回路条件で評価すべきです。

記録する指標は、単なる空気の瞬間流量より「良品一個を安全に搬送するのに使った圧縮空気量」です。吸着失敗で再試行が増えれば、噴射時間が短い機種でも総消費は増えます。逆に発生器を過大にすると、短い立ち上がりの代わりに供給容量、排気騒音、空気費が増える可能性があります。生産数、良品率、再試行率を同じ条件で記録し、設備側の価値と空気費を一緒に評価します。

真空エジェクタ 選定|タイ工場の吸着搬送設計と受入試験 - figure 2

真空監視を「吸着した」の一信号で終わらせない

圧力スイッチの閾値は、ワークを保持するための最低条件と、正常時に達する圧力の間に、測定ばらつきとヒステリシスを考えて置きます。閾値を高く設定し過ぎると、問題なく保持できるワークでも確認待ちになります。低くし過ぎると、十分な保持力がない状態をOKとするおそれがあります。SMCの選定資料は、実運転での供給圧変動、パッドからの漏れ、交換後のパッド高さや設定値の変化が吸着不安定の原因になるとしています。閾値は机上の一値ではなく、許容ワークの実測分布と動作条件から決めます。

PLCには「吸着命令」「真空成立」「搬送許可」「搬送中の真空喪失」「離脱命令」「離脱確認」を分けて持たせます。吸着命令後に期限内に成立しない場合は、ロボットを持ち上げない。搬送中に真空喪失が起きた場合は、進路と落下先を考慮した安全動作へ移る。置き位置では、ブローオフを出した事実だけで完了とせず、ワークが残っていないことを設備で確認する。これらは設備ごとのリスク評価と安全設計で決めるべきロジックであり、真空スイッチ一個だけに機械安全機能を背負わせるものではありません。

異常診断には圧力の時系列が有効です。立ち上がりが遅いなら供給圧、ノズル、配管容積、フィルタ、接触不良を調べる。成立後にじわじわ低下するならパッド摩耗、継手漏れ、ワーク表面の変化を疑う。複数パッドのうち一つだけ接触しないなら、全体圧の信号では見えにくい場合があるため、ゾーン分割や流量監視を検討する。診断の目的はセンサーを増やすことではなく、止まった理由を保全担当者が短時間で特定できることです。

圧力データをトレンドとして保存する場合は、品種、ワークロット、パッド交換日、フィルタ清掃日、供給圧の情報と結び付けます。数値を蓄積するだけでは予防保全にはなりません。正常品種ごとの基準範囲、警告しきい値、誰が設定変更を承認するかを決めます。センサーの断線、電源断、通信断は「真空成立」と誤認しない入力回路とPLCロジックで試験します。

離脱、停電、非常停止の境界を設計する

離脱時には、エジェクタ供給を止めるだけで重いワークが直ちに外れるとは限りません。パッドと滑らかな面の間に残る真空、逆止弁、細い配管が離脱を遅らせます。ブローオフを使う場合は圧力と時間を調整し、ワークを吹き飛ばしたり二枚目を動かしたりしないようにします。品種ごとにパッドと離脱時間が変わるなら、設定値の管理方法と変更履歴を用意します。高速搬送では吸着時間と同じくらい、離脱の安定性が総サイクルを左右します。

停電や圧縮空気喪失でワークを保持する必要があるかは、機械の危険源と人の立ち位置によります。逆止弁やバッファで短時間保持する設計もありますが、漏れのあるワークでは保持時間を保証できるとは限りません。電源断時に弁がどの位置へ戻るか、再起動で突然吸着・離脱しないか、ロボットがどの姿勢で停止するかを確認します。保持できない可能性があるなら、落下を受ける機械的対策、立入管理、搬送経路の見直しを含めます。実装は設備全体のリスクアセスメントと適用規格に従って決めます。

非常停止からの復帰も試験します。真空が残ったままロボットの位置だけ再原点復帰すると、ワークが思わぬ場所へ運ばれます。作業者が手動でワークを除去する手順、保持状態の表示、再始動許可の条件を明文化します。異常後に自動で再ピックを繰り返す設定は、同じ不良ワークを何度も落とす可能性があるので、再試行回数と停止条件を決めます。

タイ工場向けRFPに必要な測定条件と提出物

真空エジェクタ RFPでは、単に「真空度が高い製品」「省エネ型」と書かず、候補を同じ条件で比較できるようにします。添付するワーク情報は、材質・最大最小質量・寸法・吸着可能面・表面状態・温度・粉じん・湿気・ロット差です。工程情報には毎分の必要搬送数、ピックとプレースに使える時間、加速度、最大姿勢変化、同時稼働する空圧機器、停止時の保持要求を含めます。サンプルの提供条件と、検証対象とする「最も扱いにくい良品」の定義も必要です。

サプライヤーには、推奨パッドとエジェクタの型番だけでなく、供給圧の許容範囲、要求真空圧付近の流量曲線、空気消費、吸着・離脱の弁構成、配管図、フィルタ・サイレンサ・センサー構成、電気インターフェースを求めます。現地交換部品の納期、パッドとフィルタの保守周期の根拠、排気騒音への対策も回答項目にします。候補機種の定格値が異なる測定条件で示されているなら、単純比較せず、共通の供給圧・配管・ワーク条件でデモを求めます。

採点は価格一列でなく、要求サイクル達成、漏れの大きいワークでの保持、空気消費、異常検出、保守性、現地サポートに分けます。各項目に合格条件、測定方法、測定点、記録形式を添えます。提案に「最大吸引流量」とだけ書かれていても、要求圧での作動点が示されなければ未回答とします。提案時の想定配管長が本番と違えば、比較の前提を揃え直します。評価表を先に配ることで、各社の得意なカタログ値だけが並ぶことを防げます。

真空吸着 FAT・SATで何を合格とするか

FATで回路と制御を先に固める

FATでは実ワークの代表サンプルを使い、ベンチまたは組立済み設備で吸着成立時間、離脱時間、保持中の圧力、空気消費、騒音、連続運転を記録します。ワークの向きや品種を変え、良品のうち最も漏れやすい条件も試します。供給圧を設計範囲内で動かし、複数空圧機器の同時動作を模擬します。PLCの吸着確認が期限切れになったとき、ワークを持ち上げないことを確認します。センサーの断線や入力固定、パッド未接触、配管漏れ、ブローオフ不作動も意図的に作り、アラーム、停止位置、再起動手順を記録します。

FATの報告書には設定値だけでなく、生データまたは時系列グラフ、供給圧の測定位置、センサー型番、使用サンプルの識別番号、チューブ内径・長さ、パッド交換履歴を残します。ある試験で0.3秒を達成したといった数値は、その条件とセットで初めて意味を持ちます。合否基準はRFPの値を引き継ぎ、試験後に都合よく緩めません。必要な変更があるなら、変更理由、製品品質と安全への影響、承認者を記録します。

SATではタイ工場の実供給と稼働条件を見る

SATでは、現地のコンプレッサー網に接続し、実際のロボット軌道と周辺設備を動かします。エジェクタ入口の動的供給圧、吸着圧、サイクル分布、空気使用量、異常率を、立ち上げ直後だけでなく量産相当の運転でも測ります。昼夜で使用機器が変わるなら、代表する時間帯を含めます。フィルタ、サイレンサのアクセスと清掃、消耗パッドの交換、交換後の再教示・閾値確認も現地保全員と実施します。

FATで成功してSATで失敗する場合、装置だけを責める前に、実際の供給圧、配管変更、ワークロット、温湿度、粉じん、ロボット加速度、PLCのタイミングを照合します。変更した配管が長くなっていれば吸着応答が変わります。エアブローを強めたために隣の軽いワークが動くこともあります。測定点とログ時刻を揃えて原因を切り分け、再試験の条件と結果を残します。

真空エジェクタ 選定|タイ工場の吸着搬送設計と受入試験 - figure 3

調達判断に使える比較表の作り方

候補AとBを比べる際は、同じワーク、同じパッド、同じ配管、同じ供給圧を原則にします。パッドも含めて提案が違うなら「システム案A」と「システム案B」として区別し、違いを明記します。表には、ワーク別の吸着成立時間の分布、搬送中の最低真空圧、離脱時間、失敗率、空気消費、排気騒音、フィルタ清掃時間、交換部品、合計費用、異常時の安全動作を載せます。一度だけの最良値ではなく、繰り返しのばらつきと最悪の許容条件を見ます。

採点の重みは工程目的で変えます。高速のピックアンドプレースなら、吸着・離脱の再現性と異常時の停止が重要です。長い待機を挟む搬送なら、保持中の空気費と停電時の状態が効きます。紙箱や繊維など漏れの多いワークなら、要求圧付近の吸引流量とパッド構成を優先します。品種変更が多いラインではレシピ切替と誤設定防止も評価します。万能なランキングを作るのでなく、自社の受入条件に対する合否を先に決めます。

計画段階で予算を組むなら、発生器単体価格、コンプレッサー増設の要否、ロボット側の重量・配線・配管、保全消耗品、停止損失を分けて見ます。電気料金の前提や年間稼働時間が不明なまま投資回収年数を示すのは避けます。サプライヤーへは計算シートの入力値と算定式を求め、FAT・SATで得た空気消費実測値へ更新できる形にします。

量産開始後に起こる症状を選定条件へ戻す

立ち上げ時の選定が適切でも、量産後の問題をすべてエジェクタの容量不足と見なすと不要な交換につながります。吸着成立が遅くなった場合は、まず同じワーク品種、同じパッド、同じ供給圧で以前のログと比べます。供給圧が低いなら、共通空圧ラインの需要、レギュレータ、弁、フィルタを調べます。圧力は足りるのに立ち上がりだけ遅いなら、吸引側の配管変更、ノズルの異物、パッドの接触開始位置を見ます。ワークを持ち上げた瞬間だけ圧力が崩れるなら、ロボットの動作とワークのたわみが疑われます。原因ごとに測定点を変えることが重要です。

保持中の圧力が以前より下がるときは、同じワークロット内で再現するか、特定のロットだけかを分けます。特定ロットなら表面の粗さ、印刷、反り、通気性の変化を測ります。すべてのロットで起きるなら、パッドの摩耗や硬化、継手の緩み、チューブ損傷を確認します。パッドだけを新品に替えれば終わりとせず、交換後の高さ、押し付け量、スイッチ閾値も記録します。SMCのトラブル事例には、パッド交換後の条件差や継手からの漏れが含まれています。

離脱が不安定な場合は、ブローオフを強くする前に、残留真空と逆止弁の位置、配管長、パッドの粘着、ワークの帯電などを切り分けます。ブロー圧を過剰にすれば、薄いワークの姿勢乱れや隣接ワークの移動につながります。改善した条件は品種レシピへ反映し、現場が勝手に設定値を変えて元に戻せなくならないよう、変更権限と記録を決めます。故障後の修理だけでなく、正常時の吸着時間と保持圧の傾向を定期的に見る運用を作ると、パッドやフィルタの交換を計画しやすくなります。

多品種ラインでは、品種切替のたびに吸着位置、パッド配置、真空閾値、待ち時間、ブローオフ時間が整合するか確認します。設定を製品IDに結び付け、実際に載ったワークと読み出したレシピが違う場合は搬送を開始しない設計が考えられます。段取り替えの手順書には、最初の良品で確認する測定値と、異常時に戻す設定を記載します。トラブルシュートの結果を次の機種選定にも戻せば、単発の設備改造ではなく工場共通の標準条件にできます。

試験記録を次の設備でも使える形で残す

試験結果は「型番Aは良かった」という結論だけで保管しません。ワークを識別できる品番・ロット・写真、吸着面の状態、使用したパッドの型式・個数・配置、チューブの内径・長さ、発生器の位置、フィルタの状態、供給圧の測定場所をひと組として記録します。圧力センサーのサンプリング間隔が遅いと、短時間の圧力低下を見逃すことがあります。グラフの時間軸とPLCのイベント時刻を合わせ、接触、吸着命令、閾値到達、移動開始、離脱命令、離脱確認の順序を追えるようにします。次の設備で異なる値が出た際、ワークが変わったのか、配管が伸びたのか、ロジックが変わったのかを調べられます。

評価した候補を採用しなかった理由も残します。最も速かった機種が空気費で不利だった、騒音対策の設置スペースが足りなかった、タイ国内で交換用パッドの納期を確約できなかった、といった判断根拠は、後から品種や生産量が変わったときの再選定に役立ちます。逆に数値がなく「使いやすい」とだけ書かれた評価は比較し直せません。発注前には評価表の版を固定し、量産後に新しいワークが追加されたら、許容ワーク範囲を更新して再試験の要否を判定します。

とくに複数のタイ拠点へ同じ設備を展開するときは、圧縮空気の品質、供給圧、配管施工、保守要員、消耗品の供給条件が拠点ごとに違います。初号機のSAT合格を次拠点の合格とみなさず、共通のFAT記録を基準に各拠点でSATを行います。変更点を赤字で記録し、同じ不具合が別拠点で繰り返されないようにします。真空エジェクタの選定を一度きりの型番決めで終わらせず、実物試験から量産保全まで続く検証記録として扱うことが、設備を安定運用する近道です。

よくある質問:真空エジェクタ 選定と吸着搬送

真空エジェクタの最大真空圧が高ければ選定上有利ですか?

最大真空圧だけでは決まりません。実ワークが漏らす空気を吸いながら、要求時間内に必要な保持状態へ達するかが重要です。要求圧近くの吸引流量、パッドの密着、供給圧、配管容積を合わせて比較します。薄いワークでは過度な吸着が変形を招くこともあります。

段ボールや布の真空エジェクタ選定はどう始めますか?

実物サンプルと採用予定のパッドで吸着試験を行い、吸着中の圧力と漏れを見ます。材料の通気性と表面の隙間があるため、気密ワーク用の目安表をそのまま使いません。複数ロット、湿度や反りの違う許容品まで試し、必要ならパッド形状や吸着面の見直しから始めます。

真空発生器 比較で圧縮空気費はどう扱いますか?

各候補の実作動条件で圧縮空気流量と噴射時間を測り、サイクル数と稼働時間で年間使用量にします。電気代への換算は工場のコンプレッサー効率と料金条件を使います。吸着失敗による再試行と停止も費用に入れます。

吸着搬送 真空監視は圧力スイッチ一つで十分ですか?

設備により異なります。圧力閾値は基本ですが、立ち上がり時間、搬送中の圧力低下、センサー断線、ワーク残り、複数パッドの部分漏れを検出できるかを確認します。真空監視と機械安全の設計は役割を分け、設備のリスク評価に従います。

真空エジェクタ RFPと真空吸着 FAT・SATには何を入れますか?

RFPには実ワークの範囲、配管、供給圧、サイクル、保持・離脱、異常時動作、測定方法と合否条件を入れます。FATでは実サンプルで回路とPLCロジックを試し、SATではタイ工場の空気供給とロボット軌道で再検証します。両試験の条件と時系列データを残し、条件差を追えるようにします。

まとめ

真空エジェクタの選定は、最大真空圧の比較より先に、実ワークの漏れ、パッドの接触、配管容積、供給圧、使える吸着時間を明らかにする作業です。候補を同条件で試し、圧縮空気消費と保持・離脱の安定性を評価します。真空監視と異常時の動作をRFPに明記し、FATで機能、SATでタイ工場の実条件を確認すれば、カタログ値から量産性能まで判断をつなげられます。

TOMAS TECHでは、タイ工場のロボット吸着搬送について、ワークサンプルでの比較条件、RFPの評価項目、FAT・SATの測定計画を検討する段階から相談を受けています。設備構想を整理したい場合はお問い合わせからご連絡ください。

参考資料

*技術資料は2026年10月4日に確認。選定値、費用、合否基準は個別設備の実測とリスク評価で確定してください。*