タイの製造業でIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の活用が注目されています。とはいえ、「何ができるかわからない」「どこから始めればいいか迷っている」「上から指示されたが説明が難しい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、タイの工場現場を対象に、IoTによる現場改善の具体例や導入のポイントを解説します。「難しそう」「高額そう」というイメージを払拭し、スモールスタートで始められるIoT活用法をご紹介します。
タイでIoT導入が進んでいる理由

タイでは近年、製造業でのIoT導入が加速しています。政府の産業高度化政策「Thailand 4.0」による後押しや、生産性向上による競争力維持への期待、センサー価格の低下などの追い風が吹き、IoTは大企業だけでなく中小企業にも手が届く技術となりました。その結果、タイの製造業でもIoT活用が一般化しつつあります。
IoTで解決できる製造現場の課題

IoTは具体的に現場のどんな課題解決に役立つのでしょうか。ここでは製造現場でよく見られる課題と、IoTによる解決策を見てみましょう。
機械の停止や異常が“気づいたときには遅い”
製造ラインの機械に異常が発生しても、人の目に頼っていると発見が遅れて故障につながる場合があります。このような機械の異常検知にIoTが有効です。
センサーで温度や振動を常時モニタリングし、異常値を検知したらアラーム通知することで、故障の予兆を早期に発見できます。計画的なメンテナンスによって突発的なライン停止を防ぎ、生産ロスや修理コストの削減につながります。
作業実績の記録があいまい・後追い
製造現場の記録業務では、人手だと記入ミスや漏れが起きがちです。例えば稼働時間や生産数量を手書きで記録する場合、うっかり抜けや誤記入が発生することもあります。
IoTを使えば、これらのデータを自動収集・記録できるため、正確で一貫した情報が蓄積されます。リアルタイムに状況を把握でき、後から分析する際にも信頼性の高いデータを活用できます。紙やエクセルに頼っていた記録をIoTで精度向上させられるのは大きなメリットです。
設備ごとのデータが分断されている
工場では部門ごとにデータが分断されており、全体像の把握や横断的な分析が難しいことがあります。IoTで各設備の情報を一つのプラットフォームに集約すれば、工場の見える化が実現します。
生産数・稼働率・品質・設備状態など複数のデータを一元的に閲覧でき、相関分析も可能です。IoTによるデータ基盤の整備は、迅速かつ的確な意思決定につながります。
タイ工場でのIoT導入のすすめ

「IoTで課題解決できることはわかったが、具体的に何から始めれば良いのだろう?」と悩まれる方もいるでしょう。タイの工場でスモールスタートしやすいIoT活用の例をいくつかご紹介します。いずれも大掛かりなシステム投資をせず、比較的低コスト・短期間で導入できるものばかりです。
温度・湿度センサーによる品質管理
工場内の温度・湿度管理は製品品質や設備寿命に影響します。タイは高温多湿なため、センサーで環境を常時モニタリングし、異常値が出ればアラートを出すIoTシステムが有効です。
例えば、部品保管庫に温湿度センサーを設置しておけば、温度上昇や結露の発生を検知して対策を促せます。これにより品質トラブルを未然に防ぐことができます。温湿度センサーは比較的安価で、無線ネットワークさえあれば容易に導入できます。
生産ラインの稼働モニタリング
従来、どの機械がいつどれだけ動いていたか正確に把握できないこともありますが、IoTセンサーを取り付ければ各装置の稼働時間や停止回数を自動で記録できます。
例えば、電流や振動を検知するセンサーによりオンオフの状態を捉え、ラインごとの稼働率を算出可能です。稼働モニタリングは既存設備に後付けしやすく、データによるムダの発見など改善活動の第一歩として有効です。
部品残量や在庫の“自動カウント”
生産に使うネジや部品など消耗品の残量をIoTで監視する例もあります。人が倉庫を巡回して在庫を確認する代わりに、容器や供給装置にセンサーを付けて自動で残量を検知します。
例えば、容器の重量を測るセンサーで中身の個数を推定し、一定量を下回ったらランプ点灯や担当者への通知で知らせる仕組みです。これにより在庫切れによるライン停止を防ぎ、適切なタイミングで補充発注ができます。大がかりなシステムでなくとも、現場の困りごとをIoTで解決できる好例と言えます。
自社工場でもこうしたIoT活用を試してみたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
IoT導入を成功させる3つのポイント

小さな事例からでもIoT導入を始めることは可能ですが、成功させるためのポイントも押さえておきましょう。タイの工場でIoTプロジェクトを定着させるために重要な3つのポイントを紹介します。
いきなり全工程に広げず“小さく始める”
IoT導入は小さく始めることが成功の秘訣です。最初から工場全体を一度にIoT化しようとせず、まずは一つのラインや一台の機械などでスモールスタートしてください。
限定した範囲で試すことで、費用やリスクを抑えつつ効果を検証できます。小さな成功を重ねれば社内の理解も得やすくなり、徐々に規模を拡大しやすくなるでしょう。
“見える化”だけで終わらせない
IoT導入でデータの見える化ができても、それで終わりにしないことが重要です。集めたデータは、現場の意思決定や改善行動に結び付けてこそ価値があります。
例えば、稼働率を見える化しただけで満足せず、「なぜ低いのか」を現場で話し合い、原因に対策を打つところまで進めましょう。データを現場の武器として活用し、設備の調整や作業手順の見直しなど具体的なアクションにつなげていきましょう。
導入後の運用・保守を見据えた設計
IoT導入は始めて終わりではなく、継続的な運用・保守を見据えて計画する必要があります。導入直後だけ盛り上がっても、その後誰もデータを見なくなれば意味がありません。
そうならないために、最初から「誰がデータを確認し、異常時にどう対応するか」「センサーのメンテナンスは誰が行うか」といった運用フローを明確化しておきましょう。責任者や担当者を決め、日々の業務にデータ確認を組み込むことでIoTシステムが現場に定着します。
また、センサー機器の校正や電池交換、ソフトウェア更新など保守にかかる手間や費用も事前に織り込んでおきましょう。現地スタッフへの教育も欠かせません。使い方を説明し、マニュアルを整備し、トラブル時に迅速に支援できる体制を用意することで、IoTを長く安心して使い続けることができます。
TOMAS TECHのIoT導入支援

TOMAS TECHでは、タイの製造現場におけるIoT導入を現地調査からセンサー設計、運用定着支援まで一貫してサポートしています。「自社だけで手探りで進めるのは不安」「現地で頼れるパートナーがほしい」という方は、ぜひお役立てください。
スタッフが工場で現地調査を行い、課題に応じたIoTソリューションを提案します。続いて最適なセンサー機器と通信方法を選定しシステムを構築。導入後は現場に定着するまで定着支援を実施します。現場スタッフへの操作トレーニングや現地語でのサポートも行います。サービス内容や実績の詳細はお気軽にお問い合わせください。
タイのIotに関するよくある質問

タイでのIoT導入についてよくある質問に回答していきます。
センサーや通信機器の価格低下に加え、クラウドサービスも手頃になり、小規模なシステムなら数十万円程度から始めることが可能です。費用面が心配な方も、まずは小さく試して効果を見極めることをおすすめします。
工場内にローカルネットワークを構築し、データを構内サーバーに蓄積すれば、インターネット接続が不安定でも運用できます。
システムを直感的に使えるシンプルな画面にするなど、現場目線の工夫をすれば問題ありません。また、導入時に十分な説明とトレーニングを行い、IoTで現場作業がどう楽になるか具体的に伝えることで抵抗感を和らげられます。例えば「手書き記録の手間が減る」「異常をすぐ知らせてくれる」などメリットを実感してもらいましょう。
まとめ:IoTは“設備の見える化”だけでなく“現場の意思決定”に使うもの
IoTは単なる最新技術ではなく、現場の課題を解決する実用的なツールです。「難しそう」「高額そう」と敬遠せず、まずは身近なテーマでスモールスタートしてみましょう。IoTは“見える化”がゴールではなく、その先の現場の意思決定に活かしてこそ真価を発揮します。 自社での活用に迷ったら専門家の支援サービスも活用しましょう。
ぜひ以下のボタンから、TOMASTECHにお問い合わせください。