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2026.09.30

RAIN RFIDセンサー設備診断|配線困難な回転機械のPoC・RFP・受入設計

RAIN RFIDセンサー設備診断|配線困難な回転機械のPoC・RFP・受入設計

RAIN RFID センサーを設備診断に使う計画は、タグを貼れば振動や温度が常時遠隔送信されるという意味ではありません。2026年9月、RAIN AllianceはRAIN RFIDセンサーのエコシステムを支えるワーキンググループを発表しました。公式イベントページにはRAIN in Action 2026が9月29日〜10月1日、スペイン・マドリードで開催と掲載されています。エンドユーザー事例、デモ、ワークショップを扱う業界イベントですが、個別センサーの性能保証や、工場設備への適合認証を意味しません。タイ工場の担当者にとって重要なのは、ニュースを導入決定の根拠にすることではなく、どの状態をどの条件で読み、誰がどう保全判断するかを具体化することです。

本稿は、ポンプ、ファン、ギアボックス、タービン補機など、センサー配線を通しにくい回転機械を対象にします。受動UHF読取とセンサー電源方式の違い、金属・回転・RF環境の制約、データ欠測の扱い、PoC評価、RFPと受入基準を整理します。個品ID、棚卸し、DPP一般論、RFIDの一般費用解説ではなく、測定値を保全アクションへ結びつける設備診断の設計がテーマです。

ニュースをPoCと調達判断につなげる

RAIN Allianceによるワーキンググループの発表は、センサー用途を含むRAIN RFID関係者の協業や市場議論を進める動きです。RAIN in Actionの公式ページは、エンドユーザー事例、デモ、ワークショップを軸にしたイベントを案内しています。これらは市場の関心やユースケース探索の材料ですが、各社製品の相互運用性、連続計測、故障予兆検出率、回転機械への適合を保証するものではありません。

調達担当者は、発表をきっかけにサプライヤーへ具体的な質問をします。何を測るのか、計測値はどう生成されるのか、何秒または何分ごとに更新できるのか、測定と読取のどちらの時刻を返すのか、読み取れなかったときに欠測として検出できるのか、履歴をタグ側かサーバー側のどこへ保存するのか、異常候補を誰が確認するのか。回答が「RAIN対応」「最大読取距離」だけなら、診断システムの仕様はまだできていません。

今回の主キーワード「RAIN RFID センサー」は、技術の仕組みを知りたい段階の読者を想定しつつ、PoC・RFP・FAT/SATへ自然につなぎます。実際の判断には、RFID方式だけでなく、有線加速度計、独立電源のセンサー、既設PLCデータの活用も並べて評価してください。

RAIN RFIDの読み取りとセンサーの動作は別の仕様

RAIN RFIDは一般にUHF帯のパッシブバックscatterで使われます。固定リーダーがRF電波とコマンドを送り、タグが受けた電力で回路を動かし、アンテナの反射を変調して応答します。受動タグは通常、自ら任意のタイミングで無線送信する機器ではありません。読み取りは、リーダーとアンテナがタグに十分なRFエネルギーを届けられる条件に依存します。

センサー対応タグには複数のアーキテクチャがあります。純受動型は、リーダーの照射時に電力を得て測定・応答する設計があり、取得できる値や応答時間は製品ごとに異なります。Battery Assisted Passive(BAP)は、電池がセンサーや内部回路を助けながらバックscatter通信を行う構成です。また、独立電源のロガーが周期的に測定・保存し、RAIN RFIDは保守時の識別や一部データの取得に使う構成もあります。製品説明の「battery-free」だけから、24時間連続計測、一定周期での送信、長期データ保存を推定してはいけません。

方式電力・測定の考え方適用検討で確かめること
純受動センサータグ読取機から必要なRF電力が届くと測定・応答する方式がある起動条件、更新遅延、距離・角度・温度による差
電池補助型(BAP)電池がセンサーまたは回路を補助し、RFID応答はbackscatterの場合がある電池寿命、交換周期、電池切れとRF断の振る舞い
独立電源ロガー+RAINセンサー側でサンプリング・保存、RAINを識別や取り出しに利用時刻同期、保存量、データ取得方法、電源保守
有線/産業無線センサーPLCまたはゲートウェイへ周期的に送る配線、電源、ネットワーク、保護・安全設計

純受動、BAP、独立電源型は互換の呼称ではありません。見積依頼ではセンサーの電源方式、サンプリング契機、タグ側の保存有無、読取不能時の挙動を明記させます。電源方式が不明なまま「電池交換が不要」とだけ比較すると、必要な測定頻度や工事費が見落とされます。

どの回転機械に向くかを故障モードから考える

導入候補は「配線できない場所」というだけで選ばず、「測定結果がどの判断を変えるか」で絞ります。予備ポンプの軸受箱の温度変化を巡回時に確認できれば、点検の優先度を上げられるのか。屋外ファンの振動傾向を取得することで、計画停止の調整に役立つのか。遠隔設備の湿潤・温度を確認して、漏水や過熱の現地調査につなげるのか。業務判断が定義できない測定点は、PoCの成果を評価しにくくなります。

回転軸へタグやセンサーを直接取り付ける案には、バランス、遠心力、回転速度、温度、潤滑、飛散時の危険、取り付け・交換作業など機械固有の検討が必要です。初期検証では、固定ハウジング、軸受箱、モータ外装、ポンプケーシングなど、動かない場所への配置から調べるのが現実的です。回転部への設置を前提にする場合は、機械メーカーや設計責任者が取り付け方式を評価し、異物飛散や保全時の危険も確認します。

適用候補になりやすいのは、電源や配線を追加しにくい補機、点検頻度を高めたい予備設備、遠隔にある固定部品、定期巡回で読み取る温度や湿潤の確認などです。一方、高周波の振動波形、軸受の初期損傷解析、回転位相同期、ミリ秒単位の安全停止、停止防止インターロックは、受動RFIDタグ単独では要求を満たさない可能性が高い領域です。必要帯域や応答時間から逆算し、加速度計や保護リレーなどを比較対象にします。

保全記録から、故障モード、過去に観察できた前兆、現在の検出手段、停止損失、必要な警告時間、検出後に実行可能な対策を整理します。「振動値が見たい」ではなく、「この設備のどの故障を、いつまでに検出し、誰が点検し、何を記録するのか」を一文にできることが出発点です。

RF環境を現地で確認する:金属、回転、マルチパス

UHFの読み取り距離は単一の製品値では決まりません。GS1の技術案内は、受動UHFタグの一般的な読取距離は数メートル程度で、特別な条件で最大15mに届くことがあると説明しています。また、読み取れる量や性能はアンテナのパターンと利得、偏波、タグの向きなどに左右されます。この値は一般説明であり、特定機械への保証距離ではありません。現場は金属、ケーブル、液体、反射面、遮蔽物、設置角度により変化します。

金属対応タグを使っても、タグの取付面、スペーサー、曲率、アンテナ偏波、読取機出力、タグ面の方向で性能は変わります。製品仕様の最大距離だけで設計を決めず、実際のハウジング・カバー・配管を含む構成を試します。固定機械では読めても、運転時に部材や周辺機械の状態が変わると電波の反射・遮蔽条件が変化することがあります。設備停止中と稼働中の両方で読取ログを採り、稼働状態、負荷、回転数、温度と照合しましょう。

アンテナはタグに近いだけでは十分ではありません。必要な設備だけを狙えるビーム幅か、隣のポンプや工具のタグを読み込まないか、金属面の反射が読み取りに影響しないか、点検時にアクセスできるか、ケーブルや架台の固定が保全を妨げないかも確認します。必要なら複数アンテナや読取エリアの分割を検討しますが、台数を増やせば直ちに品質が上がるわけではなく、リーダー間の干渉や設定管理も設計対象です。

RAIN Allianceのシステム設計ガイドラインは、地域ごとの周波数設定、アンテナ切替、読取セッション、RFフェード等を説明しています。タイ工場では日本や欧州から持ち込んだリーダー設定をそのまま使わず、NBTCの現行技術基準、対象機器の適合、使用周波数・出力、現地の施工・運用責任をサプライヤーと確認してください。本稿は法令値や許可条件を断定しません。RFPにタイでの適合証明と責任者を入れます。

測定値を保全イベントへ変換するデータ設計

タグから数値を読み出すだけでは、保全判断を支援するデータにはなりません。少なくとも設備ID、設置位置、タグID、センサー型式、測定量、単位、測定時刻、読取時刻、リーダーID、アンテナポート、RFチャネル、成功/失敗回数、品質フラグ、設備運転状態、しきい値バージョンを関連付けます。センサーが最後に測定した時間と、リーダーが最後に応答を受けた時刻は異なる可能性があるため、timestampの意味も定義します。

データ経路の例は、センサータグ→アンテナ/固定リーダー→エッジ収集サービス→時系列保存/API→設備マスター→保全管理・作業指示です。各境界で担当するシステムと障害時の責任を定め、リーダー生ログと、重複除去・単位変換・品質判定後のセンサー値を分けて保存します。同じ保存値を何度も読み取った場合、それは新しい物理測定ではなく、再読取イベントかもしれません。

例えば軸受箱温度の定期確認では、固定上限のみで即故障判定せず、設備の平常時基準からの差、上昇速度、連続した有効測定回数、稼働状態、周囲温度、油種・潤滑条件などを踏まえる方法があります。これは考え方の例で、共通の閾値や診断精度を保証するものではありません。機械仕様、メーカーの保全指針、現地の正常データと故障履歴を使い、しきい値を設備ごとに承認します。例示値をそのまま購入仕様や安全限界として使わないでください。

データ品質として、次の状態を区別することが重要です。

状態意味の例画面・通知の扱い
有効な新規測定新しい測定時刻を持つ値を取得数値と単位、測定時刻を表示
過去値の再読取タグ応答はあるが新規測定ではない最新測定時刻を維持し、再読取を別記録
更新期限超過設定した期間内に有効値が届かない値を正常表示せず、データ鮮度警報
読取不能RF条件または設備側で応答を確認できない原因調査または再読取の依頼
閾値超過候補有効値が承認済み基準を超える保全員へ確認タスクを起票
保全中/設備停止測定判断の前提となる状態アラームを抑制する条件を明示

欠測は「正常」と扱わない:通知を現場作業に結ぶ

純受動タグが値を返さない理由は、RF電力不足、向き、遮蔽、金属の影響、周囲電波、タグ破損など複数あります。読取失敗とセンサー値の異常は同じではありません。システムは値の不在をゼロや正常値に置き換えず、「期限切れ」「読取異常」「設備停止中」など明確な状態で表現します。

通知は段階的に設計できます。更新期限超過なら再読取、RF異常が続けばアンテナ・ケーブル・タグを点検、測定値が閾値を超えたなら現地測定や機械点検を実施、差し迫った危険は既存の機械保護系統で対応します。RAIN RFIDセンサーの値だけを安全保護や自動停止に使うことは、必要な信頼性・機能安全を別途検証しない限り避けます。

通知先、一次対応期限、未確認時のエスカレーション、夜間休日の担当、誤報・欠測の記録、タグ交換後の再基準化を決めます。アラームを受け取っても現場へ出られない担当者へ何度も通知する設計は、アラーム疲れを招きます。通知には設備名、場所、測定値と時刻、機械状態、確認手順、連絡先を含め、現地スタッフが理解できるタイ語または英語の表記も準備します。

しきい値変更には変更理由、申請者、承認者、適用開始日、対象設備、以前の値を残します。データが蓄積されてから過去を比較できないような無記録変更を避けます。故障や点検の結果は設備ID・作業指示と結び、測定時に何が起きていたかのラベルを徐々に作ります。AIや機械学習を後から適用する場合でも、この保全履歴の紐付けがなければモデル評価の材料が不足します。

PoCを「読めたか」ではなく「判断できたか」で評価する

PoCの目的は、デモでタグIDや値が一度表示されることではありません。対象設備の運転条件下で再現性を確認し、値の正確さ、データ鮮度、欠測検出、作業対応が要求に合うかを調べます。設備の選定台数や期間は、停止可能時間、リスク、予算、季節変動から合意します。記事中に固定の台数・日数を標準値として提示することはできません。

準備では対象設備の仕様、危険区域や回転部、取り付け許可、既存センサー・PLC、参考計器、読取機の設置点を確認します。検査したい物理量と基準器の精度・校正状態を記録します。タグ位置は固定部を優先し、アンテナ角度と距離を複数案試します。設定条件を記録しないと、後日の再現やベンダー比較ができません。

テストケースには停止、起動・停止過渡、通常稼働、異なる負荷、近接機の稼働、カバー閉鎖、作業者や台車の通過、一時的な遮蔽、ネットワーク遅延などを含めます。安全に再現できない状態は無理に作らず、未試験として記録します。同時刻の基準計器値、RAIN読取値、リーダーログ、PLC運転状態、保全記録を突合し、読取率以外にも測定差、更新遅延、欠測の検知時間、誤報、保全員の応答を評価します。

PoCの合格基準はテスト前に合意します。例として、対象運転窓で有効測定値を取得した比率、基準計器との許容差、データ鮮度警報が動くまでの時間、現地確認後に作業記録へ結果が戻った割合を設定できます。これらの目標値は設備・判断要件から決め、記事中にある一般値や製品カタログ値をそのまま合格値にしません。RF性能と保全効果は異なる評価軸として報告します。

RFPの必須項目:同じ前提でベンダーを比較する

RFPには設備条件、センサー仕様、RF構成、データ連携、運用、受入証拠、保守契約を分けて記載します。仕様が未確定の箇所は「未確定」のままにせず、前提・影響・確認担当・決定期限をリストにします。

項目明記する内容
対象設備メーカー、型式、運転状態、測定位置、図面、材質、近傍の金属/液体
測定要求測定量、単位、範囲、精度・根拠、更新間隔、検出したい事象、必要警告時間
タグ/センサー電源方式、測定契機、保存メモリ、温度範囲、取付方式、寿命、交換作業
リーダー/アンテナタイ適合型式、周波数、出力、偏波、指向性、配置、ケーブル、干渉管理
性能停止/稼働中の読取、データ更新、タグ混入、欠測判定、復旧時間
データ/IT設備ID、時刻同期、単位、API/OPC UA等、ネットワーク境界、保存期間
運用/保全通知担当、確認期限、CMMS連携、しきい値承認、作業結果の戻し方
セキュリティアカウント、暗号化、ネットワーク分離、ログ、更新、遠隔保守承認
受入/保守FAT/SAT試験、基準計器、証拠ログ、教育、交換品、SLA、保証除外

「最大15m」「毎秒X回」などのカタログ値のみで選定せず、測定条件を揃えた現地試験の提案を求めます。ベンダーには実際のタグ型式、取付面、アンテナ配置図、読取ログ、装置設定バックアップ、タイ国内の無線適合根拠、データ項目一覧、障害対応手順を提出させます。性能値がベンダー公表値、実測値、プロジェクト目標のどれかを識別できる形式にします。

FAT/SATで正常系と失敗経路を両方確認する

FATでは設備・ソフトウェア構成、タグ登録、センサー値と単位、タイムスタンプ、API、ユーザー権限、アラーム、ログを納入前に確認します。実工場の金属環境、無線混雑、回転機の振動を再現できない項目は、SATの保留条件とします。FATのデモ動画だけでは、現場性能の受入証拠になりません。

SATには実機の停止・運転、予定した負荷、設備間の距離、カバーや配管を含めます。次の異常系は少なくとも検討します。

  • リーダー電源断、ネットワーク断、時刻同期喪失。
  • タグ脱落、破損、向き変更、アンテナケーブル劣化。
  • 対象外タグや近接する別設備のタグを読んだ場合。
  • センサー値が範囲外、値の更新だけ止まった場合。
  • 同じ値を繰り返し読んだ場合と、新しい測定を受けた場合。
  • アラームが担当者に届かない、確認期限を過ぎた場合。
  • 復旧後に欠測区間をどのように表示し、補完しないか。

各ケースで、システムが何を保存し、画面にどう示し、誰へ通知し、復旧後にどう再開するかを記録します。テストID、前提、試験者、日時、設定、期待値、実測値、ログ、逸脱、暫定対策、再試験期限を残します。条件付き受入れには責任者と期限、運転制約、未解決時の契約上の扱いを含めます。

SATの測定計画は条件を分けて記録する

現場受入れでは「読めた/読めない」だけでなく、どの運転条件で、何を測定し、どの保全判断に使えるかを結び付けます。対象機の銘板情報、軸受の位置、回転数の運転範囲、負荷状態、周囲温度、運転・停止履歴、アンテナ位置、タグの取付面を試験記録に残します。機械の運転を変えられない場合は、予定停止、通常負荷、負荷変動、保全点検後など、得られた条件の範囲を明記し、未試験範囲を「合格」と扱わないようにします。

比較対象の温度計、振動計、既設PLC値を使う場合も、測定点と時刻が一致しているかを確認します。センサータグが報告する値の更新時刻と、リーダーがその値を読んだ時刻は別の記録項目です。読み取りが成功してもタグ内の測定値が前回のままなら、新しい状態を観測したとは言えません。PoCでは、値の測定時刻、読取時刻、設備運転状態、基準計の値を同じ記録IDで追跡し、時間差や欠測を保全画面に表示できるかを確認します。

設備の回転数や負荷が不安定な場合は、運転条件と信号の変化を同じ時間軸に置きます。タグ/アンテナ位置を変更した前後で記録IDを分け、設置変更が比較結果に混ざらないようにします。センサー本体、リーダーの設定、エッジ処理、しきい値のどれを変更したのかを残し、変更前のデータと変更後のデータを単純につなげないことも重要です。メーカーのファームウェア更新やタグ品番変更は、調達上の軽微な置換とは限らないため、再試験の要否を変更管理表に定義します。

合格基準は、少なくとも次の三層に分けると保全担当者が判断しやすくなります。

  • 取得品質:対象設備の測定値に、測定時刻・読取時刻・設備ID・品質状態が揃っていること。データ更新の停止と通信の欠落を別の状態として識別できること。
  • 判断品質:PoCで合意した運転条件ごとに、基準計や既知の設備状態と測定値を比較でき、アラームの根拠と適用外条件を説明できること。
  • 作業品質:通知から点検までに担当者、期限、現場手順が結び付き、異常を確認した後の処置と再確認を記録できること。

これらを個別に評価すると、RF読取の成功を設備診断の精度と取り違えにくくなります。判定に必要なサンプルが集まらない場合は、不足条件を報告し、PoC期間延長、別方式の併用、対象設備の変更のいずれを選ぶかを関係者が決めます。無理に成功率の数字へ丸めず、適用できる設備・運転条件と、継続監視の責任者を限定して引き渡します。

費用と投資効果は仮定を明示して比べる

RAIN RFIDセンサー導入の共通価格表や標準ROIはありません。少なくともタグとセンサー、固定/携帯リーダー、アンテナ、架台、RF調査、設置工事、ネットワーク、ゲートウェイ、データ基盤、保全システム連携、PoC、試験、教育、予備品、年間保守を分けます。電池補助型なら交換電池、交換作業、廃棄も費用に含めます。複数社の見積りは、含む範囲と前提を揃えて比較します。

投資効果は自社の停止履歴、修理費、巡回工数、緊急出動、予備機運用から算出します。例えば停止損失を試算する時に時間や時間単価を置くなら、それは市場実績ではなく仮定と表示し、実データへの差替欄を用意します。センサーを入れれば故障を一定割合防げる、寿命が一定期間延びる、と最初から置くのは避けます。PoCで前兆を識別できたか、現場が行動できたか、効果を測る仕組みができたかを先に評価します。

運用費は、読み取りシステムの保守だけでなく、設備名やしきい値の管理、誤報調整、タグ位置変更、ネットワーク変更、利用者教育、現場言語の手順更新を含みます。初期見積りが安くても、運用責任が明示されず、故障時に担当部署が定まっていなければ、システムは使われなくなります。

タイ工場の導入体制と展開

タイの現場では、設備保全、生産技術、IT/OT、情報セキュリティ、安全衛生、調達、現地サプライヤー、日本本社の担当範囲を最初に決めます。現場の一次対応者がタイ語または英語で設備位置と確認手順を理解できる表示を用意します。日本本社側でデータを集約するなら、誰が個別設備データを閲覧できるか、保存先と持出しルールも確認します。

導入後の業務ループは、①読取品質とデータ鮮度の確認、②異常候補の選別、③担当者へ場所と確認内容を通知、④現場で実測・点検、⑤必要に応じて作業指示を作成、⑥処置結果と故障ラベルを記録、⑦しきい値とPoC仮説を見直す、という流れにします。可視化画面だけでは保全業務は完結しません。結果を設備マスターやCMMSへ戻し、後から効果を評価できるようにします。

他工場へ展開する場合、データ項目、状態コード、アラームの責任、ログ形式は共通化できます。一方、タグ位置、アンテナの向きと出力、測定しきい値、RF環境は設備ごと・設置場所ごとに確認が必要です。同じ型式のポンプでも塗装、配管、遮蔽物、設置方向が違えば読取条件は変わります。「1号機で成功したから全台同じ」という展開判断を避け、代表機と例外機を選んで段階的に試します。

よくある質問

バッテリーレスなら24時間連続監視できますか?

必ずしもそうではありません。純受動方式はリーダーの電波から必要な電力を得る仕組みであり、測定・保存の方法は製品ごとに異なります。BAPや独立電源型とも挙動が異なるため、測定間隔、データ保持、読み取れない時間の仕様を確認します。

タグを回転軸へ直接付けられますか?

機械的な評価なしに取り付けないでください。回転バランス、遠心力、温度、脱落の危険、保護カバー、交換方法を検討します。固定ハウジングへの取付案を優先し、回転体が必要なら設計責任者と安全性を確認します。

軸受振動の故障診断に使えますか?

センサーの周波数帯域、サンプリングレート、電力、データ伝送方式に依存します。応答値が読めることと、故障兆候を解析できる波形を取得できることは別です。波形解析が要件なら、有線や独立電源のセンサーと同じ条件で比較します。

最大読取距離の大きいタグを選べばよいですか?

距離だけでは判断できません。アンテナパターンと利得、偏波、タグ方向、金属、液体、遮蔽、回転時の変化、周囲のリーダー、現地規制も影響します。対象設備に取り付けた状態のログを受入証拠にします。

タイでの電波適合は誰が確認しますか?

RFPと契約で責任者を決めます。対象周波数、機器型式、出力設定、現地認証・技術基準への適合を購入者とサプライヤーのどちらが確認・証明するかを曖昧にしません。規制は改定される可能性があるため、調達時点のNBTC資料を参照します。

PoCで何をもって成功としますか?

読取率に加え、基準計器との差、データ更新の遅延、欠測を見つける時間、異常検出後の点検完了率、対応工数などを合意します。目標値は設備ごとに定め、実測根拠を残します。

価格・ROIはどのように比較しますか?

タグ、センサー、リーダー、アンテナ、工事、ソフトウェア、連携、PoC、保守、交換を分けて比較します。便益は工場の停止・修理・巡回実績から試算し、仮置き値は明確に仮定と表示してください。

まとめ:導入要件はタグではなく保全判断から作る

RAIN RFIDセンサーは、配線や電池交換が難しい測定点に選択肢を増やします。しかし受動UHFの読取はリーダー・アンテナ・RF条件に依存し、センサーの測定・電源・保存構成は製品ごとに異なります。金属面や回転による読取変化、欠測や再読取、データ時刻の意味をPoCで確かめる必要があります。

現場基準器との比較、停止/稼働時のRF試験、欠測の検知、アラートから点検・作業記録までをPoCに含めます。RFPにはタイでの適合責任、データ品質、しきい値承認、インターフェース、異常系、FAT/SAT証拠、保守と交換を記載します。状況に応じて有線センサーや独立電源ロガーも選択肢に残してください。検討初期の要件整理から相談できます。

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参考資料

情報確認日:2026年9月30日。メーカーの製品説明は各社の公表内容であり、特定設備での保証値として扱っていません。本稿は一般的な導入設計の解説で、機械安全、無線法令、診断技術、法的適合に関する専門判断の代替ではありません。

RAIN RFIDセンサー設備診断|配線困難な回転機械のPoC・RFP・受入設計 - figure 1

図1:回転機械の固定部への設置とRF視野

固定ベース上のポンプ、モーター、軸受ハウジング、ハウジング上のRAINセンサータグ、向きを調整できる固定アンテナを正面または軽い俯瞰で描きます。アンテナからタグへの緑の電波線と、配管や金属面の背後にあるオレンジ色の遮蔽領域を示します。回転軸にはタグを付けません。

RAIN RFIDセンサー設備診断|配線困難な回転機械のPoC・RFP・受入設計 - figure 2

図2:測定値から保全指示までのデータ経路

具体的なポンプ軸受とタグ、固定読取アンテナとリーダー盤、エッジゲートウェイ、時系列サーバー、設備マスター画面、保全作業指示画面を6段で接続します。有効な測定値は緑の矢印、読み取り欠測はオレンジ経路で「古いデータ」と表示する流れを示します。

RAIN RFIDセンサー設備診断|配線困難な回転機械のPoC・RFP・受入設計 - figure 3

図3:PoC受入れの3条件

同じポンプの軸受を、停止中、定常運転中、アンテナ経路を一時遮蔽した状態の3パネルにします。各パネルにタグ、アンテナ、基準温度計、読取表示を描き、最後のパネルでは応答なしと保全画面のデータ鮮度警報を示します。