温度センサー監視をモーター軸受に導入するとき、最初に決めるべきことはセンサーの型番ではありません。「どの軸受の、どの運転状態で、何度の変化を、誰が見て、何をするか」です。軸受ハウジングに後付けした温度計は、内部の転動面を直接測っているわけではありません。温度上昇だけで故障の種類や残存寿命を断定できない一方、同じ測定点を同じ条件で追うことには価値があります。この記事は、タイ工場などの既設モーターを対象に、対象選定、取付、データ収集、警報、費用の見方、RFP、FAT/SATを一つの導入手順としてまとめます。
温度センサー監視は何を検知でき、何を断定できないか
軸受の摩擦熱は、潤滑不足、異物、過大荷重、芯ずれ、転動体や軌道面の損傷などで増えることがあります。ただしハウジング温度の上昇原因は一つではありません。外気温、工程からの放射熱、回転数、負荷、洗浄後の水分、グリース補給直後の状態まで影響します。高温を見つけた時点で「軸受が壊れる」と言い切るのは危険です。逆に温度が平常でも、初期の転動面損傷を見逃すことがあります。
SKFの機械状態監視資料は、軸受温度を履歴または同条件の類似機と比較することを勧めています。SKFの説明は、測定位置を通常ハウジングとし、温度を独立した「合否値」ではなく状態変化として扱っています。Flukeも、通常運転時の熱画像を基準として保存し、同じ部位の経時変化を見ることを勧めています。Flukeの保全ガイドに沿えば、導入初日から全台共通の固定温度を警報にするより、負荷と外気の条件を揃えた基準を作るほうが実務的です。
温度監視が得意なのは、十分に熱として現れた異常の発見、修理前後の比較、巡回測定の空白期間を埋めることです。振動の周波数成分から軸受の局所欠陥を調べる目的とは異なります。故障モードごとに監視手段を選ぶという考え方はISO 17359:2018の一般指針と整合します。温度だけで完結させず、異常時には振動、電流、音、潤滑状態、運転履歴を確認する設計にします。故障モードの切り分けは、既存の振動センサーによる設備診断も参照してください。
対象設備は「止まった損失」と「測れる条件」で選ぶ
全モーターへの一斉取付は、配線費と保全対応件数を増やします。最初の対象は、停止すると後工程を止めるモーター、代替機がないポンプやファン、軸受交換に長い段取りが必要な装置などから絞ります。次に軸受ハウジングへ安全に触れられるか、外気温と負荷の情報が取れるか、既存のPLCや監視システムへ信号を通せるかを確認します。重要度が高くても測定点が熱源の近くしか取れない場合、測定値の解釈が難しくなります。
設備台帳には少なくとも設備ID、モーター型式、軸受型式、駆動側・反駆動側、潤滑方式、定格回転数、通常の運転パターン、故障履歴、停止時の影響、保守担当を記録します。二つの軸受を同一の「モーター温度」として集約すると、位置の違いが失われます。測定点IDは「設備ID+駆動側/反駆動側+位置」で一意にし、後にセンサーを交換しても同じ論理点として履歴を追えるようにします。ただし取付位置を変えた場合は履歴の連続性を注記します。
優先順位は「停止損失が大きい×温度変化を拾える×対処できる」設備から決めます。止まっても予備機へ切り替えられるものや、警報後に作業できる時間が全くないものは、単純な温度監視の効果が小さいことがあります。逆に夜間の無人運転で巡回間隔が長い設備は、連続監視の便益が明確です。ここで「監視できる」と「故障を防げる」を混同しないことが、稟議の数字を守ります。

センサーを付ける位置と測っている温度を仕様書に書く
既設機への後付けでは、軸受ハウジング外面に接触式センサーを固定する方法が基本候補です。メーカーが測定穴を指定している場合はその指示を優先し、ハウジングを現場判断で穴あけしません。軸受内部の温度、ハウジング外面の温度、近くの空気温度は別の量です。外面温度が内部より何度低いかを、機種を越えて一定値と仮定してはいけません。記事やRFPでは測定対象を「駆動側軸受ハウジング表面温度」と具体的に表記します。
取付金具の接触面、締付、放熱経路、センサー交換の作業空間を確認します。磁石固定は試験には便利でも、振動や洗浄に晒される恒久設置で使えるかは個別評価が必要です。ケーブルは回転部・熱源・洗浄水・保全作業の動線を避け、引張緩和と識別を設けます。計測点の写真を撮り、設置位置を図面に残します。非接触赤外線測定は巡回の比較に使えますが、表面状態や視線、測定距離の影響を受けます。連続監視の方式と巡回点検の方式を同一の精度として扱わないでください。
施工前に設備メーカーの保守条件、保証、電気安全、回転体のガード、停止手順を確認します。米国OSHAの危険エネルギー管理の説明は、保守中の予期せぬ起動や蓄積エネルギーの解放への対策を示します。タイ工場ではこれを現地の適用法令・工場の手順に読み替えて、施工会社と停止・隔離・再起動の責任を明記します。センサーを一つ付けるために、保護カバーを外したままにするような施工は認められません。
Pt100、熱電対、赤外線をどう使い分けるか
Pt100などの白金測温抵抗体は、軸受ハウジングのような比較的狭い温度域を継続的に測りたい場合の候補です。IEC 60751:2022は産業用白金抵抗温度計・センサーの要件と抵抗温度関係を定めています。しかし「IEC 60751準拠」と書くだけでは、取付の熱接触、配線抵抗、変換器、校正を含む測定系全体の精度は決まりません。長いケーブルを使う場合は配線方式を仕様に含めます。PTBの抵抗温度計校正資料は、二線式のリード抵抗が測定に影響し、三線式が工業計測で使われる理由を示しています。
熱電対は高温や広い温度範囲の用途で候補になりますが、軸受ハウジングで必ず有利とは限りません。温度範囲、変換器の互換性、冷接点補償、既設盤の空きチャネルを比べます。赤外線は非接触で測れる利点があり、初期の測定点調査や巡回比較に適します。ただしセンサーが見る表面の状態と距離を固定しなければ、連続データの解釈が不安定になります。機器の選定は「温度域→取付条件→必要な比較精度→信号→保守性」の順で決めます。
既設モーターに内蔵センサーや駆動装置の温度監視機能があるかも調べます。例えばSiemensの駆動装置カタログには、巻線温度用と軸受温度用のPt100評価ユニットが別のオプションとして載っています。「モーター温度」という既存タグを流用しても、それが巻線を測っているなら軸受監視の代替にはなりません。信号の意味、センサーの物理位置、異常時の挙動を照合します。
| 方式 | 向いている場面 | RFPで確認すること |
|---|---|---|
| 接触式Pt100 | ハウジングの連続傾向監視 | 固定方法、配線方式、変換器、交換性 |
| 熱電対 | 高温・既設入力を活用する場合 | 種類、補償、配線、変換器 |
| 赤外線巡回 | 測定点探索・定期比較 | 表面状態、距離、視野、同条件比較 |
| 既設内蔵センサー | OEM情報が利用できる場合 | 測定位置、タグの意味、データ取出し |
取得するデータは温度だけで足りるか
温度の時系列だけでは、工程の高負荷日と異常日が重なった場合に誤警報が増えます。最低限、運転・停止状態、可能なら回転数またはインバーター周波数、負荷の代理値、周囲温度、保全作業履歴を同じ時刻で見られるようにします。負荷の代理値は電流、流量、ダンパー開度など設備ごとに異なります。連携する情報を増やしすぎると導入が重くなるので、「警報判断に使うもの」と「異常後の原因確認に使うもの」を分けます。
データには測定時刻、設備ID、測定点ID、値、単位、品質フラグ、取得元を付けます。通信が切れたときに最後の値を現在値として表示すると、センサーが無反応なのに平常に見えます。画面とAPIでは「有効」「欠測」「古い値」「範囲外」「センサー断線」を区別します。ゲートウェイに一時保存機能があっても、復旧後の過去データとリアルタイム警報が同じ意味になるわけではありません。欠測中の警報責任を明文化することが必要です。
時刻同期も地味ですが重要です。モーター停止の前に温度が上がったのか、停止後に熱だまりが起きたのかで判断が変わります。PLC、ゲートウェイ、監視サーバーが異なる時刻を持つと因果関係を読み違えます。タイ工場と日本本社で共有する画面は、表示タイムゾーンと記録タイムゾーンを明記します。工場内の判定は一つの時刻基準で行い、本社の閲覧設定で元データを上書きしない設計にします。
固定温度一つではなく、運転条件と変化幅で警報を設計する
警報を「80℃を超えたらメール」とだけ書くと、設備ごとの正常範囲と運転の違いが消えます。まず通常運転の基準期間を設け、同じ測定点について停止中、起動後、定常負荷、高負荷、洗浄後などの温度帯を記録します。基準期間や警報値は設備とリスクによって決めるべきで、ここでは普遍的な温度値を示しません。メーカー限界値や潤滑剤の条件があれば、それを超えない保護上限を別に扱います。
警報は二段階以上に分けると扱いやすくなります。注意段階は点検と傾向確認、重大段階は運転条件の見直しや停止判断を求める設計です。ただし自動停止を伴う場合は、設備メーカーと制御安全担当による別審査が必要です。温度データをそのままインターロックに使うと、センサー断線や通信遅延で不要停止、または保護失敗を招きます。情報監視と機械保護の責任・信号経路を分けてください。
基準との差分を使うなら、外気温との差、同型機との差、同一機の同負荷帯平均との差を候補にします。絶対温度と変化速度を併用する場合も、起動直後の温まり方を正常として除外する時間窓が必要です。警報を確定するまでの持続時間と復帰条件を定義しないと、閾値付近で通知が連続します。現場が通知を無視し始めたら監視の価値が失われます。初期稼働後は、真の異常、正常な運転変化、センサー不良、通信断の内訳を毎週見直します。

故障モードと測定手段を一対一で照らし合わせる
温度監視の投資判断では「軸受を守る」という大きな目的を、その設備で過去に起きた故障へ分解します。例えば給脂不足で温度が上がった事例、異物の混入で振動が先に変わった事例、軸受ではなく冷却ファンの不具合でモーター全体が熱くなった事例は、同じ「モーター停止」でも有効な測定手段が違います。故障記録に原因が書かれていなければ、保全員への聞き取りと交換した部品の記録から仮説を作り、仮説であることを明記します。「軸受故障すべてを温度で予防できる」という仮定でROIを作ると、導入後に期待との差が生まれます。
故障モード表には「症状が熱として現れる可能性」「どの部位に現れるか」「保全員が対処するまでの余裕」「既存の保護機能」「他に必要な確認」を並べます。温度上昇が結果であって原因ではない場合もあります。冷却風路が塞がれば巻線やケース全体が熱くなり、軸受ハウジングもつられて上がります。異常時には駆動側と反駆動側、モーターケース、周囲温度の関係を見ると、軸受局所の問題か、広い熱負荷の問題かを切り分ける手掛かりになります。ただし、複数点が同時に上がったからといって原因を確定せず、電流や風量などを確認します。
診断できる範囲を狭く書くことは、製品の価値を下げることではありません。むしろ「温度が動いたら点検を始める」という役割を明確にし、故障を自動判定する約束を避けられます。保全員が振動計を持っているなら、温度の警報を振動測定へつなぐ運用を先に設計します。振動測定器を持たない場合も、異音、給脂履歴、負荷、停止・再起動の時刻という既存の情報を整理できます。測定方式を増やす前に、手元の情報から判断できることを確認してください。
測定系の誤差と「変化を見分ける力」を混同しない
センサーのカタログに記された許容差だけで、実際の軸受ハウジングの温度をどの程度正しく読めるかは決まりません。接触面が浮く、金具が熱を逃がす、ケーブルが周囲熱を拾う、変換器の設定が違う、測定器の校正時点が古い、といった要素が重なります。測定値が一度だけ独立した温度計と一致しても、負荷変化への応答が遅ければ警報に使いにくいことがあります。検収では「一点の絶対値が合うか」と「同じ条件の変化を再現して見分けられるか」を分けて確認します。
参照計測を行うときは、同じ位置に二つのプローブを置けないこともあります。その場合は近接した位置の差、表面処理、接触圧、測定時間を記録し、参照器の値を絶対的な真値と扱わないことが重要です。外気温が変わる場所では、周囲温度センサー自身の置き場所も統一します。モーターの排熱を直接受ける位置では「周囲温度」を測っているつもりが、機器からの熱を混ぜてしまいます。RFPで要求するのは、単純なセンサー精度だけでなく、現場で比較を再現する手順です。
測定周期を短くすれば必ず良くなるわけでもありません。熱は振動よりゆっくり変化することが多く、不要に細かいデータを送ると通信・保存・画面の負荷が増えます。一方、異常が急に進む設備では遅すぎる周期で対応可能な時間を逃します。故障モードと人が行動できる時間を基に、取得周期、記録周期、警報判定周期を別々に決めます。欠測が続いた場合の通知時刻も、温度警報の閾値と同じくらい重要な仕様です。
警報を維持するための変更管理を用意する
試験中にうまく動いた警報が、設備や工程の変更後も正しいとは限りません。軸受を別型式へ交換した、給脂剤を変えた、インバーターの運転パターンが変わった、ライン速度を上げた、測定位置を移した。このような変更を保全台帳で把握し、必要なら基準期間を取り直します。閾値の変更は誰でも自由にできるようにせず、変更理由、旧値、新値、承認者、適用日時を残します。改善のための調整と、誤警報を嫌って無断で値を上げる行為は区別する必要があります。
センサー交換も単純な部品交換ではありません。同じ測定点IDを引き継ぐ一方、センサーの個体番号、校正履歴、取付状態、交換日時を記録します。交換直後の値が変わった場合、それが設備状態の変化なのか計測系の変化なのかを調べられるようにするためです。データベース上では旧センサーの履歴を消さず、物理センサーの履歴と論理測定点の履歴を別に持つと追跡しやすくなります。紙の台帳で運用する場合も同じ項目を残せます。
通知を受けた後の対応手順も、工場の勤務体制が変われば見直します。休日の連絡先が退職者のまま、保全員が異動している、メールが迷惑フォルダへ入る、スマートフォンの通知が無音になっている、といった運用上の欠陥は、センサーの精度とは無関係です。定期的な訓練では模擬警報を発報し、現地担当が受信して確認し、必要な作業記録までつながるかを確かめます。システムが温度を測り続けることと、工場が警報に応答し続けることは別の保守対象です。
通知先とアクションを決め、保全業務につなぐ
温度上昇の通知先を「保全全員」にすると、誰も引き取らないことがあります。設備ごとに一次受信者、代行者、休日・夜間の連絡先、確認期限、保全記録の起票条件を決めます。通知の本文には設備ID、測定点、現在値、基準との差、運転状態、最終有効データ時刻、直近の履歴画面を含めます。「高温です」という一文だけでは現場に戻って調べる時間が増えます。
現場の判断表は、少なくとも「値が上がったが設備は定常運転」「負荷も同時に上がった」「センサーが欠測」「修理後に同条件で値が下がった」を区別します。注意警報なら給脂履歴や負荷を確認し、重大警報なら責任者が停止条件を確認する、といった動作を決めます。原因不明のまま閾値だけを引き上げないでください。警報を受けた人、確認した時刻、行った作業、結果、復帰判断を保存すれば、次の基準見直しに使えます。
温度監視は保全システムの代替ではありません。部品交換、給脂、軸受取外し、故障原因分析などの作業履歴は設備台帳に結び、温度履歴から作業記録へ辿れるようにします。予知保全の全体設計と費用は予知保全システム導入ガイドを参照してください。本記事の範囲は、軸受温度という一点の測定を、判断と保全行動に変えるところまでです。
タイ工場での設置と通信の現実的な進め方
既設設備では盤の空き入力、配線経路、電源、洗浄・粉じん・油・高温、電磁ノイズ、保守員のアクセスを先に調べます。数台の試験で無線センサーが動いても、金属棚や設備の移動、夜間の通信負荷まで含めて恒久運用できるとは限りません。ケーブル式を選ぶ場合も、信号線を動力線とどう分けるか、盤内でどこへ入れるか、施工停止時間をどう確保するかが費用を左右します。
本社が温度を見たい場合でも、ローカルの警報と一次対応をクラウド接続に依存させない設計が望ましいです。外部へ送るのは必要な状態・履歴に限定し、遠隔アクセスは工場のOTセキュリティ方針に従います。通信断時にローカル側で何が続き、何が止まるかを試験します。センサー側の電池交換を前提とする場合は、交換周期だけでなく、電池切れを事前検知する方法と、交換時に測定点IDを誤登録しない手順を見積に入れます。
タイと日本の担当者が同じ画面を使うなら、単位、時刻、設備名称、通知文、担当者名の言語を統一します。現地作業員が見ても対応できる通知と、本社管理者が見る分析画面では必要な情報が違います。翻訳された画面を作るだけでなく、現場の停止権限とエスカレーション先を現地の勤務表に合わせます。昼勤の担当者へ深夜アラートを送る設定は、技術より運用の失敗です。
見積はセンサー単価ではなく測定点の完成費用で比べる
見積の単位を「センサー1個」にすると、取付、配線、盤改造、ゲートウェイ、ソフトウェア、試運転、教育、保守が後から追加されます。同じ台数でも、既設盤に空きがあるか、設備停止が必要か、配線距離が長いか、清掃環境が厳しいかで総額は変わります。具体額は工場現場の見積がなければ示せません。公開記事で架空のTHB単価を出すより、費用の構成と比較の単位を固定するほうが発注判断に役立ちます。
| 費用層 | 含めるもの | 比較時の確認点 |
|---|---|---|
| 測定点 | センサー、取付金具、保護、校正 | 駆動側と反駆動側の点数 |
| 設備接続 | 配線、盤入力、電源、ゲートウェイ | 停止作業、既設タグの再利用 |
| データ基盤 | 履歴、品質フラグ、画面、通知 | 保存期間、通信断時の扱い |
| 業務導入 | 警報表、保全記録、教育、初期調整 | 誤警報の見直し責任 |
| 継続運用 | 再校正、交換、ライセンス、保守 | 年額と部品供給期間 |
ROIを試算するなら、過去の軸受故障停止回数、停止時間、再起動費、廃棄・手直し、保全工数を設備別に並べます。そのうえで「温度監視なら何回の異常を、停止前の対処可能時間内に見つけられるか」を保守的に置きます。温度で検知できない故障まで回避効果に入れないこと、増産可能量をそのまま売上としないこと、停止削減と保全工数削減を二重計上しないことが大切です。試験期間は投資回収の証明より、検出可能性と誤警報率の実測を目的にします。
RFPには「測定点」「品質」「警報」「保守」を書く
ベンダーへ渡すRFPには、まず対象設備と測定点の一覧を入れます。写真、図面、運転条件、停止可能時間、盤と通信の現状を添え、対象外の装置も明記します。計測要件はセンサー型式名だけでなく、測る表面、温度範囲、分解能、許容差の根拠、配線方式、校正方法、センサー断線・短絡時の表示と警報まで書きます。測定系全体の検収条件がないと、カタログ精度を満たすセンサーを納めても、設置後の比較可能性が得られません。
データ要件には測定周期、記録周期、タイムスタンプ、データ欠損時の品質フラグ、保存期間、CSVやAPIの出力、既設PLC/SCADA/保全台帳との連携を定めます。警報要件には、基準設定者、注意・重大段階、持続時間、復帰条件、通知先、確認・エスカレーション、通信断を含めます。画面でできることだけでなく、誰がどのタイミングで設定を変更し、変更履歴をどう残すかも要求します。
保守要件は交換手順、交換部品の入手、電池やネットワークの点検、再校正、年間サポート、障害時の連絡先です。タイ工場で購入する場合、現地で部品を調達できるか、海外からの輸入に何日かかるかを確認します。メーカー名の列挙だけでは比較できないので、候補ごとに現地施工と保守まで含めた責任範囲を回答してもらいます。
FATとSATは正常値だけでなく故障と欠測を試す
FATでは、センサー模擬入力から画面、警報、出力までの信号経路を確認します。通常範囲、注意、重大、断線、範囲外、通信断、復旧後の時刻と品質フラグを試し、記録が残るかを見ます。閾値は発注時の仮値でもよいですが、誰が現地データから最終設定するかを決めます。FATの合格で現地の熱接触やノイズの問題が消えるわけではありません。
SATでは、実際の取付位置を図面と照合し、運転時の温度を独立した参照計測と比較します。比較値が違うときは直ちにセンサーの不良と決めつけず、接触、取付位置、表面状態、応答遅れ、負荷条件を調べます。起動・停止・負荷変化を記録し、通知が現地担当へ届き、確認と保全起票まで繋がるか試験します。停電や通信断から復帰したとき、欠測が平常値として埋まらないことも重要です。
合否票には設備ID、測定点ID、試験日時、運転条件、入力値、表示値、通知先、結果、是正項目、再試験者を残します。センサー校正証明書、設置写真、配線図、タグ一覧、権限一覧、バックアップ・復旧手順、教育記録を引渡物に含めます。受入後の基準期間で調整が必要な部分と、最初から満たすべき安全・欠測要件を混ぜないようにします。

90日を目安にした小規模導入の進行例
以下は固定の工程表ではなく、停止日程と調達条件に合わせて組み替える進行例です。最初の段階で対象設備を数台に絞り、過去停止記録、測定点候補、保全担当、取付安全条件を確認します。現場で巡回温度を取り、負荷や外気温の変動を見てからRFPを確定します。導入前の短い巡回期間は、連続監視の設置位置が適切かを確かめる助けになります。
次の段階でセンサー取付、信号収集、時刻・品質フラグ、通知経路を作ります。FATとSATを終えても、すぐに「故障予測ができる」と宣言しません。運転条件別の基準を作り、誤警報と見逃しの候補を保全員と毎週確認します。警報の原因がセンサーなのか設備なのかを分類できるようになってから、追加設備へ横展開します。横展開時には同一モーター群の比較が役立ちますが、取付位置と負荷が異なる場合は単純な順位付けを避けます。
最後に、現場が警報に応答できた割合、温度異常から点検までの時間、誤警報の内訳、欠測率、保全作業との紐付け率を確認します。故障が起きなかったことだけを成功指標にすると短期間では評価できません。温度監視が役立った事例と役立たなかった事例を残し、次に振動や電流を組み合わせるかを判断します。ISO 17359の一般指針が示すように、監視方法は設備の重要度と故障モードから選ぶものです。
よくある質問
温度センサー監視だけで軸受故障を予知できますか?
できません。ハウジング温度の上昇は異常の手掛かりですが、原因の特定や寿命予測には運転条件と他の証拠が必要です。温度が上がらない初期損傷もあります。重要設備なら、温度、振動、電流、潤滑のうち故障モードに合う情報を組み合わせます。
軸受温度の警報は一律に何度へ設定すべきですか?
一律値は避けます。メーカーの限界、潤滑条件、周囲温度、負荷、回転数、測定位置を確認し、正常運転の履歴から設備別に設計します。保護停止の上限と、点検を促す注意警報は用途が違います。初期値は仮設定として、現地データで見直します。
後付け温度センサーの導入費用は何で決まりますか?
センサー本体より、取付と配線、盤改造、通信、画面、警報、現地試験、保守契約で差が出ます。センサー単価と「測定点が動く状態までの費用」を別に見積もります。停止作業、盤の空き、配線距離、洗浄環境を現場調査で確定します。
Pt100と赤外線のどちらを選べばよいですか?
同じハウジングを継続的に監視するなら接触式Pt100を有力候補にし、測定点の探索や巡回比較には赤外線を使う、と役割を分けます。最終判断はOEM指示、安全な取付可否、温度範囲、測定系全体の誤差と保守性によります。
温度が上がったら自動でモーターを止めるべきですか?
監視システムの通知と機械保護の停止は分けて設計します。自動停止は、センサー故障時の挙動や設備への影響を含めてOEM・制御安全担当が審査すべきです。情報監視の導入だけを理由に既設の保護回路へ接続しないでください。
まとめ
モーター軸受への温度センサー監視は、測定位置を固定し、運転条件と一緒に履歴を取り、警報後の人の動作を決めて初めて保全の道具になります。固定温度だけで故障を断定しないこと、欠測を正常に見せないこと、センサーのカタログ精度と設置後の測定品質を区別することが重要です。RFPでは測定点・品質・警報・保守を、FAT/SATでは故障・欠測・現場への通知まで検証します。数台で基準と対応を作ってから横展開すれば、機器の台数より実際の保全行動に投資できます。
既設モーターのどこを測り、どの警報を保全作業へつなぐべきか検討中であれば、設備一覧と停止履歴を基にした小規模な測定点設計からご相談いただけます。方式や台数が決まる前の段階でも問題ありません。
参考情報
- ISO 17359:2018 — Condition monitoring and diagnostics of machines
- ISO 13379-1:2025 — Data interpretation and diagnostics
- IEC 60751:2022 — Industrial platinum resistance thermometers and sensors
- SKF Machine Condition Advisor: bearing temperature and comparable conditions
- Fluke — Using thermal imaging to troubleshoot motors and drives
- PTB — Calibration of resistance thermometers
- Siemens SINAMICS G180 catalogue — motor bearing Pt100 monitoring
- OSHA — Control of hazardous energy