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2026.10.02

設備制御改造|MELSEC-Qモーション機器の生産終了とタイ工場の移行計画

設備制御改造|MELSEC-Qモーション機器の生産終了とタイ工場の移行計画

設備制御改造を検討するタイ工場に、2026年9月30日に掲載された三菱電機テクニカルニュース「26-22E」は具体的な期限を示しました。対象はMELSEC-Qシリーズのモーションコントローラ、シンプルモーションユニットと関連部品です。2028年12月31日に受注生産へ移行し、2029年9月30日に受注を締め切り、同年12月31日に生産を終える予定です。修理受付は2036年12月31日までとされていますが、部品在庫が尽きれば修理できない可能性があります。これはQシリーズのPLC全品が一斉に終了するという発表ではありません。自社の盤に載る型式を確認し、軸制御を含む改造範囲を決めるための通知です。メーカーの原文を起点に、タイ現地で実行できる計画を整理します。

まず結論:期限は「買える日」だけでなく、検証を終える日から逆算する

本件で最初に行うのは代替CPUの発注ではありません。現物の型式とプログラムを確保し、接続するサーボアンプ・エンコーダ・安全回路を線で結び、停止できる期間を生産側と合意することです。告知にある「代替機種」は部品表の候補を示すもので、既設プログラムや配線、同期動作が無変更で移ることを保証するものではありません。制御盤のPLCだけを見て「まだ供給される」と判断すると、モーションCPUや周辺ケーブルが先に調達できなくなる恐れがあります。

一方で、通知を見た直後にラインを全面更新する必要があるとも限りません。装置が稼働し、復元可能なデータがあり、期限までに適切な停止窓を設けられるなら、段階的な検証と改造ができます。既設機の残存寿命、故障時の損失、製品切替計画を一緒に評価します。PLC全般の延命・部分改造・全面更新という大枠はPLC更新の4択で扱っています。本稿はその中でも、MELSEC-Qのモーション制御と軸まわりに絞り、26-22Eを実務の工程表に落とします。

メーカー通知の節目日付タイ工場で先に済ませたいこと
対象製品を受注生産へ移行2028年12月31日現物型式・予備品・代替案の照合、調達期間の再確認
受注受付の締切2029年9月30日旧型品を使う最終判断と、必要な注文・納期の確認
生産終了、最終出荷の目安2029年12月31日代替設計の承認、試験、停止工事の着手条件を確定
修理受付の期限2036年12月31日まで部品在庫次第で修理不可となる前提で復旧計画を持つ

2029年末まで待てるかは個別の設備次第です。受注締切と実際の納期は同じ意味ではなく、希望納期が生産終了に近い場合は販売窓口への確認が必要と通知にもあります。サーボ系の改造では、現状調査、制御設計、ソフト移植、FAT、現地配線、SAT、立上げまでに複数の部門が関わります。余裕のある時期に試験機を確保し、現物照合と機能確認を済ませるほうが、突発故障後の緊急工事より停止の見通しを立てやすくなります。

26-22Eの対象範囲:MELSEC-Qの「どの部品」かを特定する

通知の表1には、Q172DSCPU・Q173DSCPUのモーションコントローラ、Q170MSCPU・Q170MSCPU-S1のスタンドアロン型、QD77MS2・QD77MS4・QD77MS16のシンプルモーションユニットが載っています。それだけではありません。Q172DEX同期エンコーダインターフェース、Q172DLXサーボ外部信号インターフェース、Q173DPX手動パルス発生器インターフェース、Q173DSXY安全信号ユニット、電池モジュール、各種ケーブル、コネクタ、OSソフトウェアも列挙されています。表1の型式から派生した特注モデルも対象と明記されています。

したがって盤内写真だけでCPU名を読み取り、残りを「付属品」として扱う棚卸しでは足りません。電池ホルダや強制停止入力ケーブルが特殊なら、コントローラ本体を移行する際に盤内で何を撤去・再配線するかが変わります。エンコーダ信号を同期用途で使っているなら、信号経路と制御周期も確認が必要です。手動操作盤のパルス発生器も、設備を普段運転するオペレータから見れば主要機能です。型式を「PLC」「サーボ」の二項目に丸めず、機械機能と結びついた部品表にしてください。

メーカーは理由を、一部部品の調達が難しくなり継続生産に影響が見込まれるため、と説明しています。この理由は重要です。2036年末まで修理受付という記載は、すべての故障品を無条件に修理できる約束ではありません。供給部品がなくなれば期限前でも修理不能となり得ます。予備品の保有数だけではなく、動作確認済みか、適合するOSとプロジェクトが残るか、保管条件が適切かを併せて確認します。

設備制御改造|MELSEC-Qモーション機器の生産終了とタイ工場の移行計画 - figure 1

なお、26-22EはQ170MSCPUおよびQ170MSCPU-S1の表示について、別の注意も記載しています。EU Cyber Resilience Actへの非適合によりCE表示を外し、それに伴ってUKCA表示も外すとし、2027年4月以降に注文した製品は両表示なしで供給されます。これは上記の生産・受注日程とは別の論点です。タイ工場でも、完成設備を欧州・英国へ出荷する場合や海外顧客仕様で表示が必要な場合は、旧型を追加発注する前に装置全体の適合と契約要求を確認してください。個別機器の表示変更が設備全体の適合を自動的に決めるわけではないため、認証担当とメーカーの最新資料を照合します。

まず現場で採るべき「型式と役割」の台帳

各装置について、設備ID、制御盤番号、CPU・ユニットのフル型式と製造番号、軸数、サーボアンプとモータの型式、エンコーダ入力、原点・リミット・非常停止の配線先、ネットワーク接続、プログラムの保存先を一行ずつ管理します。設備図面に同じ型式が書いてあっても、過去の修理で現物が変わっている場合があります。図面、部品表、オンライン診断、写真を突き合わせ、食い違いは未確定として残します。外した部品箱のラベルだけを根拠にしないことも大切です。

次に軸が何を実現しているかを書きます。「X軸」「Y軸」だけでは発注判断に使えません。搬送コンベヤとの追従、カム同期、電子ギヤ、押し込み時のトルク監視、印字位置合わせ、ワークの把持など、製品品質に直結する機能を示します。位置決め点数、運転速度、許容停止位置、原点復帰時の動作、段取り替えのパラメータ変更手順も残します。作業標準と実際の運転が違う箇所は、試験項目に直接反映させます。

代替機種の表をどう読むか:同じ型式の「差し替え」ではない

26-22Eの表2はQ172DSCPU・Q173DSCPUに対してMELSEC iQ-RのR16MTCPU、R32MTCPU、R64MTCPUを挙げています。QD77MS2・QD77MS4・QD77MS16にはRD77MS2、RD77MS4、RD77MS8、RD77MS16を挙げます。数字の大きい型式を選べば安全、あるいはQD77MS16なら必ずRD77MS16へ一対一で交換、という読み方は避けます。必要軸数、制御方式、使用機能、ベースユニット、ネットワークと拡張余地を含めて設計者が選定します。メーカーのQからiQ-Rへの移行ツールは候補確認に役立ちますが、最終仕様書と現物適合の確認を省く根拠にはなりません。

通知には「後継機なし」の行もあります。Q170MSCPU・Q170MSCPU-S1、Q173DSXY、Q170MSBATN-SET、Q170DBATCなどは、表2で直接の代替型式が示されていません。Q172DEXも直接の代替品はなく、MR-J4-B-RJまたはMR-J5-B-RJ経由という注記があります。Q172DLXにはRX41C4などの入力ユニット、Q173DPXにはRD62D2・RD62P2・RD62P2Eの高速カウンタユニットが例示されています。強制停止入力ケーブルとそのコネクタは、移行先のモーションコントローラの強制停止デバイスを使うため「不要」と整理されています。しかし「不要」は安全機能の検討が不要という意味ではなく、信号の取り込み方が変わるという設計上の注意点です。

代替品なしの部品がある設備ほど、先に機能分解が必要です。例えばスタンドアロン型のCPUを使った装置は、CPUだけを同形状の製品へ置き換える案が表2にありません。制御アーキテクチャと盤構成を再設計する可能性があります。安全信号ユニットも直接置換できないなら、停止カテゴリー、インターロック、外部安全機器との関係を再評価します。これは単なる型式変換作業ではなく、設備の制御仕様を再確認する機会です。

既設側の代表例通知に載る方向設計時の確認点
Q172DSCPU / Q173DSCPUR16MTCPU / R32MTCPU / R64MTCPU使用軸数、演算・同期機能、周辺I/O、OSとプロジェクト変換
QD77MS2 / 4 / 16RD77MS2 / 4 / 8 / 16軸構成、パラメータ、通信とサーボ互換性
Q170MSCPU / -S1直接の代替機種なし制御方式、盤・ネットワークの再設計
Q172DEX直接の代替機種なし。サーボアンプ経由の経路を注記同期エンコーダ信号の入力経路と精度
Q173DSXY直接の代替機種なし安全回路と停止動作の再評価

メーカーの置換表は、調達の短冊リストではなく検討の開始点です。見積依頼の段階では「旧型式と新型式」を並べるだけでは不十分です。現状回路図、機械タイミング、タッチパネルの画面、保守員の復旧手順と、どの性能を維持するかを業者へ渡します。受注者側が同等性を示す試験計画を出せるかどうかも選定基準にします。

設備制御改造で見落としやすい五つの境界

1. PLCロジックとモーションプログラムは別々に管理する

設備の状態遷移を担うPLCラダーと、軸の位置決め・補間・同期を担うモーションデータは、保管場所や編集ツールが異なることがあります。PLCのバックアップを取得したからといってモーション側を復元できるとは限りません。CPUから読み出した実機データ、オフラインプロジェクト、OSバージョン、サーボパラメータをひとつの復旧セットにまとめます。アクセス権、ライセンス、接続ケーブルまで確認し、担当者が不在でも第三者が開ける状態を目指します。読み出しが禁止されている領域やパスワード不明の部分は「完全バックアップ済み」と報告せず、契約上の所有者と復旧方法を確認します。

2. 軸の性能は型式表だけで同等と判定できない

サイクルタイム、停止位置のばらつき、加減速時の振動、他軸との位相差は機械と負荷に依存します。新CPUの処理能力だけで性能を推定せず、現行機の正常時データを記録します。代表ワークと限界ワークで位置、速度、追従誤差、アラーム履歴を測定し、改造後に同じ条件で比較します。サーボアンプを残す場合でも、通信の互換性と機能制約をメーカー資料で確かめます。将来サーボアンプまで更新する計画なら、二段階改造時に二度停止する費用も評価します。

3. エンコーダと安全回路は「周辺」ではない

追従搬送や印字位置合わせで使う同期エンコーダが移行先でどこに入るかが変われば、タイミングと診断方法が変わります。原点センサー、リミットスイッチ、非常停止、扉インターロック、セーフティリレーも同じ図面上に重ねます。特に強制停止入力ケーブルが不要になるという通知の記載は、新構成で停止要求をどこへ配線し、どの条件で軸を停止させるかを設計する必要があるということです。リスクアセスメントと現地法令・社内基準に沿って、安全担当が妥当性を確認します。

4. HMI・上位通信・保守手順の変更を含める

運転レシピがHMIから送られ、PLCとモーションCPUを経由して各軸に反映される装置では、値の型や単位が一か所違うだけで製品位置がずれます。既存画面のアラーム文言、手動運転権限、原点復帰ボタンの条件、上位システムへの生産完了信号も確認します。保守員の交換手順やトラブルシュート表を旧型式のまま残さないことが、立上げ後の復旧時間を左右します。プログラム引渡しと復元性の観点は老朽設備更新の期限管理とも合わせて判断できます。

5. 部品の納期と停止工事の順序を分ける

新CPUが納入されても、ベース、電源、通信、端子台、サーボ側の対応品、変換に必要なソフトが揃わなければ立上げられません。構成表は「現物」「発注済み」「納入済み」「検査済み」の状態で管理します。盤改造を先に始めてから不足部品に気づくと、原状復帰にも時間がかかります。旧制御を維持する期間と新制御へ切り替える時点を分け、ロールバックに必要な旧部品とパラメータは工事完了判定まで保管します。

設備制御改造|MELSEC-Qモーション機器の生産終了とタイ工場の移行計画 - figure 2

タイ工場の移行手順:現状確認からSATまで六段階で進める

第1段階:対象設備を危険度で並べる

同じQシリーズでも、工程のボトルネックで24時間稼働する設備と、代替機がある設備では優先度が違います。故障頻度、停止一時間当たりの損失、交換品の在庫、復旧可能性、製品品質への影響、代替工程の有無を評価します。機械がまだ使えるかという判断と、制御部品が調達できるかという判断は分けます。全設備を同じ年に一括更新することが最適とは限りません。先に一台をモデル機として改造し、得られた図面・試験方法・教育資料を横展開する方法もあります。

第2段階:現物とデータを凍結する

工事前の最新状態を「基準版」とします。装置を停止し、安全にアクセスできる条件で盤内の写真、型式、配線番号を記録し、PLC・モーション・HMI・サーボのデータを適正な手順で取得します。日付だけで版を識別せず、設備ID、取得元、ソフトのバージョン、担当者、照合結果を付けます。バックアップの価値は保存した事実ではなく、実際に開いて読み出しデータと照合し、復元できることにあります。秘密のパスワードを記事や共有図面に記載せず、権限管理された場所で扱います。

第3段階:移行先の機能仕様を作る

「Q172DSCPUをR32MTCPUへ変更する」とだけ書いた仕様書では、メーカー候補の選定以上に進みません。軸ごとに運転モード、最大速度、加減速、原点復帰、同期開始条件、異常時停止、復帰許可、HMIの操作、上位システムとの信号を定義します。維持すべき性能の測定方法と合格値も決めます。新品部品の型式選定には、メーカーの最新仕様、マニュアル、正規販売窓口による構成確認を用います。MELSEC-QからiQ-Rへの移行ツールの結果をそのまま最終設計としないでください。

第4段階:試験盤またはオフラインで変換を検証する

旧機から読み出した実データを使い、変換後のプログラムがコンパイルできるか、I/Oアドレス、デバイス割当、データ範囲、同期機能、異常処理を確認します。サーボとセンサーを模擬できる部分はFATで先に潰します。実機でしか確かめられない機械干渉や振動は、現地SATの試験として残します。「変換ソフトで警告が出なかった」ことを、製品品質や安全動作の合格と混同しません。

第5段階:停止窓、切替判定、ロールバックを合意する

タイ工場では生産、保全、品質、EHS、設備メーカー、現地のシステムインテグレータが同じ工事に関わることがあります。誰が切替開始を承認し、何時間後に継続か原状復帰を決めるか、試運転で不合格なら誰が製品を隔離するかを文書にします。休日工事の見積では、作業時間だけでなく試験ワーク、品質確認、通電後の監視、翌シフトへの引継ぎも含めます。旧部品を廃棄せず保管し、戻すための配線図とプログラムを現場へ置きます。

第6段階:SATで「動く」から「量産できる」へ移す

無負荷で軸が動くことは開始条件にすぎません。最悪条件のワーク、実際のレシピ、連続運転、停電復帰、非常停止からの再起動、通信断、原点消失などを確認します。位置精度とサイクルタイムを改造前の基準版と比較し、品質部門が製品判定を行います。アラーム履歴、バックアップ方法、交換手順、盤内図面、ソフト版数を揃えたうえで引き渡します。試運転後にパラメータを微調整した場合は、その値を「最終版」に反映させ、試験記録と一致させます。

見積依頼で比較すべき費用:CPU単価より「停止リスク」まで含める

設備制御改造の見積を比べるとき、旧型式の代替CPU価格だけを並べても判断できません。現地調査、図面修正、プログラム変換、サーボ適合確認、盤製作、配線、FAT、現地切替、品質試験、教育、予備品、保守契約を同じ範囲で比較します。設備メーカーが旧図面やソースを保有していない場合は、解析工数が増えます。防爆・クリーンルーム・食品衛生など特別な設備条件があれば、工事方法と認証への影響も見積条件に含めます。

見積書には、メーカーの型式表を転記しただけでなく、既設との接続一覧、未確認事項、工期、FAT/SATの合格条件、試験に必要なサンプル、ロールバックの費用と判断点を書いてもらいます。納期が長い部材については代替調達先を勝手に認めず、正規品と互換性の確認方法を明示します。中古品を暫定予備品にする場合も、真正性、保管状態、稼働試験、ソフト版数を確認し、本命の移行計画を延期する口実にはしません。

投資判断では「今すぐ改造」と「故障してから改造」の二択にしないでください。試験機だけ先に作る、計画停止まで旧機を保全する、既存サーボを一時的に残して盤側を移行するなど、段階案を比較できます。ただし段階案は各段階の互換性が成立することが条件です。二回の停止と設計変更を含めた総費用で比較し、品質検証を省く安さは採用しないことが重要です。

実行用の90日計画:短期で決めることと、後に回してよいこと

最初の30日には、通知対象の装置を抽出し、現物型式・予備品・プログラムの所在を確認します。設備ごとに責任者を置き、停止影響と復旧可能性から優先順位を作ります。メーカー資料と正規窓口で型式の該当性を確認し、後継機の有無と納期を聞きます。バックアップを取得できない設備は、発注より前に復元性の問題を解決します。この段階で設計が未確定でも、部品の注文期限と試験を始める期限はカレンダーへ入れられます。

31〜60日目には、優先設備一台の現状機能と基準性能を測ります。ラインを止めなくても取れるアラーム履歴、タクト、位置ばらつきから始め、停止窓でしか取得できないデータは計画を立てます。移行先構成、残すサーボと交換する部品、必要な安全検討を決め、業者へ同じ仕様で見積を依頼します。メーカー候補を採用しない場合はその理由を設計記録に残します。どの軸が品質に効き、どの動作で原状復帰できなくなるかをFAT/SATの骨子にします。

61〜90日目には、選んだ構成の技術検証と発注判断を進めます。最初の試験で不具合が見つかれば、旧プログラム、周辺信号、機械側のどれが原因か分けて修正します。停止工事の日付は、部材納入日だけで決めず、試験盤の結果、作業者の確保、生産と品質の承認が揃ってから確定します。予備品の購入も一時的な保険として費用対効果を評価し、2036年末の修理受付表示を「それまでは安全」という保証と誤解しません。

検収表に残したい試験の具体例

試験項目を「自動運転、手動運転、非常停止」とだけ書くと、担当者によって試す範囲が変わります。自動運転なら最小・最大速度、加減速中の負荷変動、連続運転時の温度、ワークの有無、ライン上流が止まった場合と下流が詰まった場合を分けます。位置決めなら、原点復帰後の繰返し精度、電源断後の復元、リミットセンサーに近い位置からの復帰、操作員がレシピを切り替えた直後の最初の製品を確認します。同期軸なら主軸側の速度変更に対する追従、エンコーダ信号の欠落、急停止後の位相再確立を確認します。条件、期待値、実測値、記録ファイル、判定者を一行にまとめ、合格が曖昧な項目は切替前に解消します。

安全に関する試験は通常運転の試験と別に管理します。扉を開いたとき、非常停止を押したとき、制御電源が落ちたとき、サーボアンプがアラームを出したときに、どの軸がどう停止し、どの操作で再起動できるかを確認します。これは単に「停止した」という結果を目で見るだけでは足りません。予期しない再起動が起きないこと、ワークが保持されるべき場合に落下しないこと、復帰時に人が危険区域にいないことを、装置ごとのリスクアセスメントと照合します。異常信号を模擬する手順自体も安全担当が承認します。

品質試験では、最も作りやすい製品だけを流さないことが重要です。材料の厚さ、ワーク重量、搬送間隔、周囲温度が変わると、位置ずれや振動が表面化することがあります。改造前の測定条件を再現し、統計的な比較を行えるだけのサンプルを確保します。合否を決める数値は品種や工程によって違うため、本記事では一律の精度やタクトを提示しません。顧客図面、工程能力、社内品質基準から許容値を決め、未達の場合に出荷判定を誰が止めるかも決めます。

将来の保守を可能にする納品物

施工業者への発注書には、更新後の回路図、端子表、部品表、プログラムのソースと実機版、OS・ファームウェア版、サーボパラメータ、HMI画面データ、バックアップと復元手順、FAT/SAT記録、未解決事項の一覧を納品物として書きます。画面のスクリーンショットだけでは編集できず、バイナリだけでは変更差分が追えません。契約上渡せないソースやライセンスがあるなら、発注前にその境界と障害時の支援条件を確かめます。旧プログラムと新プログラムを同名のファイルで上書きしないことも、後日の原因調査に役立ちます。

設備の構成が変わるたびに、台帳と保守手順を同時に更新します。次の担当者が制御盤を開いても「Q172DSCPUだったはず」という記憶を頼りにしない状態が目標です。予備品棚のラベルにも適用設備と版を記載します。ソフトを含む予備部品は定期的に起動・照合し、経年した電池や記憶媒体が保管中に使えなくなるリスクを管理します。改造は一度の停止工事で終わる作業ではなく、後の故障対応を安定させる情報整備でもあります。

設備制御改造|MELSEC-Qモーション機器の生産終了とタイ工場の移行計画 - figure 3

タイ現地での役割分担と問い合わせ先

現地工場の設備担当は現物、図面、プログラム、停止窓を管理します。生産担当は許容停止時間と代替生産、品質担当は試験ワークと合格基準、安全担当はリスクアセスメントと停止動作を承認します。設計・施工会社は移行構成、盤、ソフト、FAT/SAT、復旧手順の成果物を担当します。三菱電機の通知内容、型式適合、修理・供給条件、最新の販売情報については、メーカーのタイ現地サービス窓口など正規ルートで確認します。メーカーの窓口と、複数設備を横断して改造を組み立てるインテグレータの責任範囲を混同しないようにします。

海外本社に設計承認が必要な場合は、日英の型式表、回路差分、試験計画を先に揃えると協議しやすくなります。タイ語の現場手順には、モード選択、原点復帰、アラーム解除、非常停止後の再起動条件を操作員が使う表現で書きます。翻訳だけでなく、画面の実際の表記と照合します。引渡し時には、誰が何を更新できるか、保守用ソフトのライセンスとバックアップの保管場所、退職時の引継ぎも決めてください。技術改造が終わっても情報が一人のPCに残れば、次の故障時に同じ問題が戻ります。

よくある質問:設備制御改造とMELSEC-Qの期限

社内の承認資料に何を書くか

投資稟議では、メーカーの終了日を一枚に写しただけでは優先順位を決められません。対象設備ごとに、停止した場合に失う生産量、他ラインへの振替可否、故障から復旧までの想定時間、現在使える予備品の数と試験日、元プログラムの復元可否を並べます。影響の大きい設備なら、現状維持、旧型予備品の確保、試験盤の先行製作、計画停止での全面移行という複数案を同じ条件で比べます。見積額には停止期間、品質確認中の仕掛品、二度目の工事、保守員の教育も含めます。数値がまだない欄は推測で埋めず、いつ誰が測るかを記入してください。

メーカーの代替候補が決まっていても、社内の責任分担が曖昧なら着工してはいけません。現物調査の責任者、設計承認者、安全審査担当、試験結果の判定者、量産再開の承認者、旧制御に戻す判断者を明確にします。週末工事では日本本社、タイ現地の製造・保全・品質、施工会社の連絡が時間帯をまたぎます。連絡先一覧と判断期限を工事前に配布し、判断者不在で作業が止まる事態を避けます。試験で得た不具合は口頭だけで修正せず、現象、発生条件、原因、変更したソフト版、再試験結果を同じ記録で追います。

予備品を買う判断にも設備単位の根拠が必要です。未使用品でも保管年数、電池、記憶媒体、適用OS、製造番号によって、すぐ投入できるとは限りません。重要設備に一式を保管するなら、年次点検のたびに部品とバックアップの組合せを確認し、担当者が試験手順を実行できるか確かめます。予備品は改造が完了するまでの故障影響を下げる手段であり、後継設計の評価や生産停止窓の確保を省く理由にはなりません。逆に、すべての設備へ高価な予備品を一律に買う必要もありません。故障確率だけでなく、壊れた際の復旧可能性と業務影響で配分します。

最後に、改造後の運用変更を稟議から外さないでください。新しい盤に替えた後、保全員が使う診断ソフトや交換用の部品型式も変わります。夜間に異常が起きたとき、どのアラーム画面から調べ、どのバックアップを戻し、どこまで現場で復旧してよいかを教育します。予備品の発注先、メーカーサービスへの問い合わせ経路、ソフトのライセンス更新担当も決めます。工事費だけ承認して保守体制を旧型のままにすると、次のトラブルで復旧時間が長くなる可能性があります。こうした運用項目まで含めて移行計画と呼べる状態にすることが、期限に追われた単なる部品交換との違いです。

MELSEC-QシリーズのPLCはすべて2029年末に生産終了ですか?

いいえ。26-22Eは表1に列挙したモーションコントローラ、シンプルモーションユニットと関連製品についての通知です。MELSEC-QシリーズのすべてのPLC、I/O、電源を一括で対象にする通知ではありません。自社の型式を表1に照らし、別製品の告知があればそれぞれの期限を確認します。

Q172DSCPUとQ173DSCPUの代替機種は何ですか?

メーカー表2はiQ-RのR16MTCPU、R32MTCPU、R64MTCPUを挙げています。どれを選ぶかは軸数、機能、周辺機器と構成で決まります。プログラムが無変更で動くという意味ではありません。現物構成とメーカーの最新資料を照合してください。

QD77MS2・QD77MS4・QD77MS16はRD77MSへそのまま交換できますか?

通知はRD77MS2、RD77MS4、RD77MS8、RD77MS16を代替候補として示します。しかし端子、ベース、通信、パラメータ、軸動作がそのまま同一になるとは記載していません。回路・プログラム・サーボを含む設計と試験が必要です。

2036年末まで修理できるなら改造を先延ばしできますか?

修理受付は2036年12月31日までですが、部品在庫が尽きると修理できない可能性があると通知に明記されています。重要設備では、故障後の復旧時間、予備品の適合、停止費用を評価して改造時期を決めます。

代替機種がないQ170MSCPUやQ173DSXYはどうしますか?

表2に直接の代替機種はありません。既設機能を分解し、制御構成または安全回路を再設計して、同等の機能と適切な安全性を試験で確かめます。型式の語尾だけを替える見積にはしません。

タイ工場はどの時点で設備制御改造の見積を依頼すべきですか?

現物の対象型式、プログラムの入手可否、軸の使い方、停止窓を把握した段階で依頼できます。すべての図面が揃わない場合は、調査・復元性確認を見積の第1段階に切り分けます。合格条件のない「一式」見積より、未確定事項と試験範囲が明記された提案を比較してください。

まとめ:通知を設備ごとの移行計画に変える

26-22Eが示すのは、特定のMELSEC-Qモーション機器について、2028年末の受注生産移行、2029年9月末の受注締切、同年末の生産終了、部品在庫を条件とする2036年末までの修理受付です。Qシリーズ全体の一斉終了と捉えず、現物型式と機能の棚卸しから始めます。代替機種の表に載るCPUやユニットも、配線、プログラム、サーボ、エンコーダ、安全回路、HMI、復旧方法を含めて検証して初めて設備の移行案になります。工事を急ぐ前に、基準版の確保と合格条件を決めることが、停止を計画できる改造につながります。

タイ工場で対象設備の洗い出しや移行範囲の整理から始めたい場合は、現物型式、盤写真、分かる範囲の図面、希望停止時期を添えてTOMAS TECHへご相談ください。構成が確定していない段階でも、調査と試験計画の切り分けから検討できます。

参照した一次資料

確認日:2026年10月2日。型式、日程、代替機種の詳細は発注・設計判断の直前にメーカーの最新版を再確認してください。

  1. 三菱電機 Sales and Service No.26-22E:対象機種、日程、代替機種、修理受付
  2. 三菱電機モーションコントローラ更新情報:2026年9月30日の告知
  3. MELSEC-QからMELSEC iQ-Rへの移行ツール
  4. 三菱電機モーションコントローラ製品資料
  5. 三菱電機R32MTCPU仕様資料ダウンロード
  6. 三菱電機FAタイ現地サービス