タイ工場のタンクでレーダーレベル計を選定するとき、最初に決めるのは「80 GHzか、別の周波数か」ではありません。何の液位を、どの運転状態で、誰のどんな判断に使うかです。原料の補給、混合工程の管理、在庫換算、空運転防止、あふれ防止では、必要な測定範囲も許容する欠測も違います。この記事では非接触レーダーとガイド波レーダーの比較から、取付位置、エコー確認、PLC接続、見積依頼、FAT/SATまで、調達担当と保全部門が同じ表で話せる選定手順を示します。
レーダーレベル計の選定は「タンク1基の使用条件」から始める
レーダー方式はタンク上部から電磁波を送り、液面から戻る反射を利用して距離を求めます。液位は、基準位置から液面までの距離と、設定したタンク寸法を使って計算します。原理が同じでも、アンテナ、周波数、信号処理、取付条件で現場の結果は変わります。Endress+Hauserの連続液位計測ガイドは、機器選定の前にプロセスデータを集めるチェックリストを勧めています。カタログの「最大測定距離」は、この条件表の代わりにはなりません。
例えば、同じ工場の水槽と粘性原料タンクを一括で「レーダー式」にまとめると危険です。水槽は開放、液面が穏やか、洗浄しやすいかもしれません。一方、混合タンクは攪拌翼、コイル、ノズル、泡、付着、洗浄剤、昇温と冷却の周期があります。液面がどの状態のときに測りたいかを分けないまま装置を統一すると、計器の価格差より、施工変更と再試験の費用が大きくなります。
先に埋める「タンク条件票」
| 項目 | 記録する内容 | 選定に効く理由 |
|---|---|---|
| 用途 | 在庫表示、補給指示、工程制御、空運転防止、上限警報 | 更新周期と欠測時の処理が変わる |
| 媒体 | 水、油、溶剤、食品原料、薬液、スラリーなど | 誘電率、付着、材質適合を評価する |
| 運転条件 | 温度・圧力の通常値と上下限、蒸気、結露、泡 | アンテナと方式の適否に関わる |
| タンク形状 | 高さ、直径、屋根、底、ノズル図面 | ビーム、死角、基準点を決める |
| 内部物 | 攪拌翼、配管、はしご、加熱コイル、補強材 | 偽エコーの候補になる |
| 表面の動き | 充填・排出、攪拌、波立ち、泡立ち | 最悪条件での反射を確認する |
| 接続 | 電源、PLC入力、4–20 mA/HART等の要求 | 設備側で読める値と診断が決まる |
| 保守 | 立入り、足場、洗浄、停止可能時間 | 設置後の運用費に関わる |
この票は計器メーカーに渡すだけの書類ではありません。現場と調達の認識差を発見する道具です。「通常は水だが月1回だけ洗剤を循環する」「液面は平らに見えるが充填口の下だけ大きく波立つ」といった情報は、現場を知る人しか書けません。危険場所の区分、衛生仕様、接液部の材質、取付フランジ、当地の法令・認証は案件ごとに確認し、汎用記事の例をそのまま仕様にしないでください。
非接触レーダーとガイド波レーダーをどう比較するか
非接触レーダーはタンク上部のアンテナから液面を見ます。液中にプローブを入れないので、攪拌翼や洗浄作業と機械的に干渉しにくい構成です。ただし、ビーム経路に内蔵物があると別の反射を拾うことがあります。泡やアンテナ上の結露も、条件によって測定を難しくします。非接触というだけで「保守不要」「どんな泡でも測れる」とは評価しません。
ガイド波レーダーはロッドやケーブルのプローブに沿って電磁波を伝えます。Endress+Hauserは、乱れた表面、泡、タンク内障害物の影響が小さく、界面測定にも選択肢になると説明しています。ただしプローブは媒体に触れます。付着、洗浄、腐食、攪拌翼との距離、長尺プローブの取付・交換方法を調べる必要があります。どちらも万能ではなく、上から見る経路と媒体に入る部材のどちらを管理しやすいかが判断点です。
| 条件 | 非接触レーダーで確認すること | ガイド波レーダーで確認すること |
|---|---|---|
| 攪拌翼がある | ビームが翼や軸を避ける位置を取れるか | プローブが機械的に接触しないか |
| 泡がある | 泡の厚さ・性質が液面エコーに与える影響 | 泡の中の反射、プローブ付着を試す |
| 粘性媒体 | アンテナへの付着・結露を確認する | プローブへの蓄積と清掃性を確認する |
| 狭いタンク | ビーム幅と内壁反射を確認する | プローブ配置と壁・内部物との間隔を確認する |
| 界面を見たい | 対応可否を個別に確認する | 媒体の誘電率差を含め対応可否を確認する |
この表は「推奨機種一覧」ではなく、メーカーに実測または解析で答えてもらう論点です。高い泡があるならガイド波に即決、低い誘電率なら非接触を即却下、といった単純化もしません。泡の密度と水分、媒体の性質、機種の信号処理で結果が変わります。EmersonのRosemount 1208Aマニュアルでは、軽く空気を多く含む泡なら実液面を測れる場合があり、重く密な泡では泡の上面を測る場合があると明記されています。欲しい値が液面なのか泡面なのかを、仕様書の最初に書くべき理由です。

80 GHzレーダーレベル計を「高周波だから高精度」で選ばない
80 GHz機はビームを細く絞れる設計が多く、狭いノズルやタンク内の障害物を避けられる可能性があります。VEGAが公開した硫黄溶融タンクの事例では、壁と攪拌軸の間に80 GHzの狭いビームを通し、以前の方式で課題だった振動と保守を改善したと説明しています。ただし、それは媒体、タンク、取付位置、機種を合わせた個別事例です。自社の水槽・油槽・薬液槽でも同じ性能になるという証拠ではありません。
Endress+Hauserは、自由空間レーダーの精度が周波数単独では決まらず、ビーム角、アンテナ構成、据付、そして媒体の誘電率に左右されると説明しています。別のアプリケーションノートでも、80 GHzが合う場合と、26 GHzや6 GHz、別原理を検討したい場合があるとしています。したがってRFPでは「80 GHz指定」だけでなく、候補に求める液位範囲、最悪時の液面、タンク図面、受入判定を添えるのが妥当です。
ビームが細い利点と限界
細いビームは、内壁、補強材、攪拌機からの反射を避ける設置案を作りやすくします。しかし、液面が極端に波立つ、泡が厚い、アンテナに結露や付着が重なる、媒体の反射が弱いといった場合、ビーム角だけでは解決しません。現場の取付ノズルが傾いていれば、細いビームほど狙った液面から外れる可能性もあります。周波数を議論するときは、ビームの通り道を図面上に描き、その後で実機のエコーを確認します。
「最大測定距離がタンク高さを超える」ことは必要条件にすぎません。近距離側の測れない範囲、低液位時の底面反射、液面変動の速度、応答の遅れ、蒸気や結露の時間変化を候補機ごとに調べます。メーカーが条件付きで示す精度の数値だけを比較するより、同じ試験条件でどちらが安定して必要な値を返すかを確認するほうが調達判断に直結します。
非接触レベル計の取付位置を決める5つの確認
取付位置の検討では、既設ノズルを使うことを前提にしないでください。ノズルを使い回せば工事費は下がるように見えますが、その先に充填流、攪拌軸、コイル、はしごがあれば測定経路が悪くなります。新しいノズル工事が必要かどうかは、機器代と工事代を合わせて判断します。タンク図面には、屋根面の寸法だけでなく、充填流の位置と内部物の高さも記入します。
第一に、アンテナから液面までのビームがどこを通るかを確認します。Emersonの取扱説明書は、加熱コイル、はしご、攪拌機のような内部物をビーム内に置かないよう勧めています。偽エコー抑制機能がある機種でも、物理的な反射源を避けられるならそれが優先です。複数候補位置がある場合は、満液・中間・空に近い状態で各々のビーム経路を描き、最低液位の液面がタンク底や周辺機器からどう見えるか確認します。
第二に、ノズルの内径・長さ・突き出し・傾斜が候補アンテナに合うかを確認します。メーカー図面にない寸法を推測して「標準フランジなら装着可」としないことです。高いノズル壁や溶接ビードが反射を作る場合があります。取付方法に関する適合は機種ごとのマニュアルで判定し、施工前に断面図で承認を取ります。
第三に、液体が入る位置を見ます。充填流にビームを直撃させると、液面の代わりに流れや飛沫を見てしまう場合があります。攪拌しているタンクでは、攪拌停止時だけでなく、通常回転、原料投入直後、排出終盤も確認します。現場で一番困る状態を「例外」として試験から外さないことが大切です。
第四に、保守できるかを確認します。アンテナに付着や結露が起きたとき、どの足場から安全にアクセスするか。洗浄時に外す必要があるか。ケーブルや表示器をどこに置くか。機器交換時にタンクの停止や排液が必要か。タイの現場では日英泰の担当者が関わることが多いため、タグ番号と図面番号を使い、言語が違っても同じ位置を指せる資料にします。
第五に、独立した保護機能との関係を整理します。上限警報やあふれ防止に同じ計器値を使う設計では、計器故障時に何が起きるかを設計者が確認します。安全上重要な用途なら、要求される認証や安全機能の構成を専門の設計者とメーカーに確認してください。連続液位の見える化記事だけで、独立した保護層の要否を決めることはできません。

誘電率・泡・結露・攪拌を仕様書にどう書くか
誘電率は液面から返るレーダー反射の強さに関わります。Endress+Hauserの基礎資料は、一般に媒体と気相の誘電率の差が大きいほど反射が強くなると説明しています。媒体の正確な値を保全部門が知らなくても、液体の種類、濃度、温度、組成変動をメーカーに伝えることはできます。「常時水」「油と水を切り替える」「泡を含む洗浄液」といった現場語の記録が、曖昧な「液体一般」より役立ちます。
泡は一律の障害でも、一律に無視できるものでもありません。泡の上端を液位と見なしたい工程もあれば、泡の下の実液面だけが必要な工程もあります。前者なら制御の意味が違い、後者なら泡を通過するエコーが得られるかが焦点です。最も泡立つ運転状態を試験日程に含め、手測定または別計測との比較方法を決めます。泡が再現しにくければ、製造履歴と時刻を残し、再試験条件を事前に取り決めます。
結露は「電磁波なら問題なし」と片付けられません。Endress+Hauserの連続レベル計測の解説は、非接触レーダーでアンテナ上の結露が影響しうると述べています。日中と夜間の温度差、CIPや蒸気洗浄の直後、冷却工程を候補条件に入れます。アンテナの材質・形状・保護、洗浄方法は製品ごとに違うため、メーカーに適合確認を依頼します。
攪拌翼や内部配管の反射は、エコー曲線を見て液面の反射と区別します。Emersonの機器紹介では複数エコーを追跡して内部物の偽エコーを抑える機能が示されています。しかし信号処理があるから設置位置の検討を省けるわけではありません。良い位置に据えてから、空槽に近い状態と運転時の記録を取り、条件が変わっても計器が同じ物理的な液面を追うか確認します。
レベル値をPLC・SCADAへ渡すときの設計
計器の精度と「工場で使う値」の不確かさを分ける
カタログに書かれた計器精度と、運転員が画面で見る液位のずれは同じものではありません。前者は指定された試験条件で計器自体を評価した値です。後者には、基準点をどこに取ったか、タンク寸法が図面と一致するか、ノズルが傾いていないか、液面が波立つか、PLCのスケーリングとフィルタが正しいかが加わります。液位を体積へ換算するなら、タンク形状表の誤差も重なります。したがって「計器精度が高いから在庫量も同じ精度になる」という説明は避けます。どの誤差要因が支配的かを現場で見つけることが、機種の数字を比べるより先です。
受入試験では、何を基準値とするかを事前に決めます。手尺、既設計器、既知量の投入など、候補ごとに独立性と限界があります。手尺なら読み取る人と基準位置が変わるだけで差が出る可能性があり、既設計器との比較なら既設側にもずれがあるかもしれません。試験記録には基準方法、同時刻の測定値、液面の状態、計器設定を書き、差が出たときに原因を追える形にします。数値の合否基準はこの記事で一律に決めず、在庫表示か制御か、許容する業務上の影響から案件ごとに合意します。
「表示が一瞬合った」だけでは継続測定の合格になりません。低・中・高の複数点で、上昇時と下降時の両方向を見ます。泡ができる工程では泡のない状態とある状態を分け、攪拌槽では停止時と運転時を分けます。各状態で、表示のずれに加えて値の途切れ、飛び、過度の遅れがないかを記録します。試験のために通常と異なる低速運転だけを行うと、実操業で問題が表面化するおそれがあります。通常運転で試せない条件は未確認として残し、初回の実操業時に確認する担当と方法を決めます。
判定に迷ったときは、計器をすぐに交換する前に測定のつながりを順に切り分けます。まずタンクの実液位と基準点、次にエコー曲線と計器の距離値、最後に4–20 mA信号、PLCの換算値、SCADA表示を同時刻で並べます。計器側が正しくてもPLCの範囲設定が逆なら画面は誤りますし、画面が正しくても液位から体積への換算表が古ければ在庫は誤ります。この切り分けをSAT手順に書いておけば、計器メーカーと制御盤担当の間で原因調査が止まることを防げます。
測ることと使えることは別の作業です。計器からPLCへ4–20 mAの値を渡すなら、電流の下限・上限がどの物理値に対応するか、ケーブル断線や計器異常のときPLCが何を表示するか、通信で診断を取るかを決めます。SiemensのSITRANS LR110取扱説明書には4–20 mA/HARTと故障電流の設定例が記されています。これは「すべてのレーダーレベル計がその設定を持つ」という意味ではなく、候補機ごとに出力と異常時動作を確認すべき根拠です。
現場タグ、工学単位、測定基準点、タンクの有効高さ、表示する体積換算のルールを合わせます。レーダーが直接測る距離と、運転員が欲しい液位や体積の関係を図にしておけば、試運転時に「表示は逆方向に動く」「底の残液をゼロと誤認する」といった問題を防ぎやすくなります。不規則形状のタンクでは、液位から体積への換算テーブルも別途必要です。
トレンド保存の周期は用途から決めます。原料在庫の残量を1日単位で確認する用途と、充填・排出の切替を監視する用途では必要な時間解像度が違います。センサーの瞬時値、PLCのフィルタ、SCADAの保存周期、ダッシュボードの集約値を分けて仕様に書きます。既存工場でのセンサーデータ取得全体を設計するなら、当社の工場IoTセンサー選定ガイドで周期の決め方も確認できます。
アラームには「値がしきい値を超えた」だけでなく、計器が値を返せない、通信が切れた、エコーの信頼度が落ちたという状態を含めて検討します。運転員が必要とするのは、数字が出ない理由と、誰が次に何をするかです。ネットワークや保存先の設計を含めた費用の整理には、工場IoT導入ガイドも参照してください。レベル計の見積に計器本体だけを載せても、情報を使う仕組みの費用は見えません。
見積依頼書で価格比較を成立させる
選定候補に同じタンク条件票を渡し、同じ受入試験を求めます。メーカーごとに異なる想定を放置すると、安い見積は「簡単な条件だけ」を含み、高い見積は「難しい運転状態や工事」を含むだけかもしれません。比較表には機器、接続部品、設計、配線、取付工事、設定、試運転、教育、予備品、保守を行として並べ、対象外事項も明示します。現地通貨の参考価格や仮のROIを、実見積や現場実績のように見せないことが重要です。
RFPには少なくとも次を入れます。
- タンク番号、用途、液体、図面、ノズル位置、内部物、通常と最悪の運転条件。
- 測定したい液位範囲と、上部・下部の測れない区間をどう扱うか。
- 必要な出力、電源、PLC/SCADA接続、異常時電流または診断の扱い。
- 付着・結露・泡・攪拌の条件と、メーカーが提案する確認方法。
- 校正・設定・試験の記録、言語、引渡し図面、教育の範囲。
- FAT/SATの判定基準と、結果が未達だった場合の調整・再試験手順。
ここでいう許容誤差や欠測時間には、共通の正解値を置きません。タンクの用途、制御の目的、別の保護装置の有無から、買い手が現場の許容範囲を決めます。たとえば在庫表示では誤差より継続性を重く見る場合があり、充填停止に使う値では反応の遅れが重要な場合があります。双方を「高精度」の一語でまとめると、比較できない仕様書になります。
見積の質問を「機種名」から「条件付きの証拠」に変える
「80 GHzのレーダー計器はいくらですか」では、アンテナや取付方法が決まらず、正式な費用も出せません。代わりに「添付タンクの充填・攪拌・洗浄条件で、液面エコーが安定する据付案と代替案を示してください」と依頼します。候補の周波数と機種をメーカーが提案できる余地を残しつつ、選定責任の境界を明確にできます。既設ノズルを利用する案と新設案の両方を出してもらえば、工事費と測定リスクを同じ表で比較できます。
FAT・SATで確認したいこと
比較表は「合否」「条件付き」「未確認」を分ける
見積を並べたとき、仕様書の行ごとに単純な丸とバツだけを付けると、重要な条件差が隠れます。例えばA社は現場試験済みで「泡のある通常運転で液面を追跡できた」、B社は資料上は泡対応だが実タンクでは未確認、C社は泡が消える洗浄停止時だけ測れる、という三つは同じ丸印にしてはいけません。条件、確認方法、証拠の保存場所、残る課題を一行ずつ書きます。将来の設備改造で条件が変わったときにも、どの前提の上で機種を選んだのか追えます。
工程に必要な値を取り続けられるかを重視するなら、受入の対象に「測定値の安定性」だけでなく「値を信用できない状態を検知できるか」も加えます。液位が実際には上がっているのに同じ値で固まる故障は、画面上の数字だけを見ても分かりにくいからです。計器の診断信号、PLCの断線検知、運転条件に対する変化率チェック、別の警報装置との照合など、どの層で何を検知するかを設計図に書きます。ただし一つの計器の診断機能を、安全上独立した保護装置の代わりとして扱うかどうかは別の設計判断です。
また、比較表には試験できなかった条件を残します。試験当日に泡が発生しなかった、満液運転が許可されなかった、雨季の結露を再現できなかった、という事情は珍しくありません。「未確認」は失格を意味しませんが、合格とも違います。運転開始後に再確認する日、担当者、データの保存先、結果が悪かった場合の対処を決めておけば、調達の終了時にリスクが行方不明になりません。契約や注文書にその作業範囲を含めるかも、購入前に確認します。
二社の提示価格が離れている場合、計器本体だけを比べず、ノズル改造、足場、配管停止、制御盤入力の追加、エンジニアの現地立会い、運転員教育、初期トレンド確認が含まれているかを見ます。安い案にこれらが含まれないなら、安いのは測定方式ではなく見積範囲かもしれません。逆に既存の端子と配線が使えるなら、過大な一式工事は削れます。価格比較の前に、工事と受入まで含めた境界を揃えることが実務上の近道です。
FATは出荷前に、型式、出力、設定、表示、PLC模擬信号、設定ファイル、図面との一致を確認する機会です。実液や実タンクの泡まで完全再現できるとは限らないため、FAT合格を現地測定の合格と同一視しません。必要ならメーカーのテスト環境でエコー処理の説明を受け、設定変更の記録方法を決めます。
SATは現場で据え付けた状態の確認です。タンク基準点から計器までの寸法を測り、既知の液位または別計測と表示値を照合します。低液位、中間液位、高液位の複数点を取り、可能なら充填・排出・攪拌・洗浄前後を含めます。空槽の確認が危険または運転上難しい場合は、代替方法を事前に合意します。受入記録には単に「OK」と書かず、日時、運転状態、参考測定、計器値、エコー曲線、設定版数、担当者を残します。

エコー曲線は納品資料に含める
エコー曲線は「今見えている反射が、液面・ノズル・内部物のどれか」を考える材料です。据付直後の正常な曲線があれば、後日付着やレイアウト変更で測定が悪くなったとき比較できます。偽エコー抑制の設定を行った場合は、設定前後と、どの運転条件で登録したかも残します。無人で自動調整できる機器でも、現場の受入基準まで自動で決まるわけではありません。
SATで一度良い値が出ても、季節・配合・清掃・生産量が変われば条件も変わります。最初の数週間は代表的な運転状態のトレンドと欠測回数を記録し、運転員が違和感を報告できる窓口を作ります。再設定を行う際は、変更前後の値と理由を残し、アラームしきい値を無断で変えないことです。機器の安定性の確認と、工程として使える値かの確認を分けて扱います。
タイ工場での調達・保守引継ぎ
増設予定と交換計画も図面に残す
タンクを1基だけ計測する計画でも、後から増設される隣接タンク、配管の変更、屋根上の通路変更によって、点検動線や配線経路は変わります。機器位置を決める際には、将来の増設スペースとケーブルの取り回しを簡単なレイアウト図に残します。予備入力点やタグの命名方針も先に決めておくと、二台目以降で別の表記やスケーリングが混ざりにくくなります。ただし「将来使うかもしれない」機能をすべて初回に買う必要はありません。今回の測定に不可欠な項目と、拡張時に追加できる項目を見積表で分けます。
計器が故障したときの交換手順も設計の一部です。新品を付ければ自動的に同じ値が出るとは限りません。基準点、測定範囲、偽エコー設定、出力スケーリング、警報の扱いを、機種とソフトウェア版数に合わせて復元する必要があります。設定バックアップと直近の正常エコー曲線を設備台帳に保存し、交換後に現地の基準液位で照合する手順を記します。これにより、普段は見えにくい「交換した翌日から値が少しずれている」という問題を発見しやすくなります。
タイ工場では、設備の設計者、ローカル施工会社、保全班、日系本社、メーカーの担当が異なる言語と文書でやり取りすることがあります。そこでタンク番号、計器タグ、図面版数、端子番号、測定基準点を共通の識別子にします。翻訳だけでは「高液位」が警報設定なのか機械的な満液位置なのか伝わりません。図面上の寸法と、PLC上のタグ名を一致させるほうが、誤解を減らせます。
引継ぎ資料は長いマニュアルを渡して終わりにしません。保全部門には、正常時の表示とエコー曲線、異常時の確認順序、アンテナの点検方法、交換時の設定復元、校正・点検履歴の保存先を示します。運転部門には、信頼できない値が表示されたときの扱い、手動確認の条件、連絡先を示します。多言語の短い運用表を作る場合も、数値とタグの正本は一つに保ちます。
予備品とサポート条件も見積比較に入れます。計器の交換リードタイム、現地での設定支援、タンクを止めずに交換できるか、旧計器からの設定移行方法は、故障が起きてからでは決めにくい項目です。正式な保守契約が不要な小規模案件でも、誰がメーカーへ問い合わせるかは決めておくべきです。
レーダーレベル計 選定のよくある質問
80 GHzレーダーレベル計なら、どのタンクでも精度が上がりますか?
いいえ。狭いビームが障害物を避けやすくする場合がありますが、周波数だけで精度や測定成功を保証しません。媒体の誘電率、泡、結露、アンテナ、ノズル、据付位置、運転状態を合わせて評価します。Endress+Hauserも80 GHzが適する場合と、別周波数や別原理を検討すべき場合を区別しています。
非接触レベル計の取り付けは既設ノズルをそのまま使えますか?
候補にはできますが、ノズル寸法とビーム経路を確認するまで決められません。内部物や充填流への向き、近距離側の測定範囲、メーカーの取付条件を照合します。既設ノズル利用案と新設案を同じ見積に載せ、工事費と試験リスクを比較すると判断しやすくなります。
ガイド波レーダーとの比較では何を重視しますか?
非接触側はビーム経路とアンテナの状態、ガイド波側はプローブの接触、付着、機械的干渉と清掃性を見ます。泡や乱流、界面という条件だけで決めず、欲しい値が実液面か泡面か、タンク内にプローブを安全に置けるかを確認します。
泡があるタンクで液位は測れますか?
泡の性質と機種によります。軽い泡の下の実液面を測れる場合も、密な泡の上面を測ってしまう場合もあります。メーカーに媒体と泡の条件を渡し、最も泡立つ運転で実測試験を計画してください。「泡対応」とだけ書かれた宣伝文句で受入判定はできません。
レベル計のRFPやFAT/SATは小さな案件でも必要ですか?
大部の文書である必要はありませんが、条件票、判定基準、確認記録は必要です。計器1台でも、取付位置とPLCのスケーリングが違えば使えません。試験できない条件は「未確認」と明記し、いつどう確認するかを決めます。
まとめ
レーダーレベル計の選定は、製品カタログから周波数を選ぶ作業ではありません。用途、媒体、タンク形状、内部物、泡・結露・攪拌、取付位置、出力、保守方法を同じ条件票にまとめ、候補機を同じ受入基準で比較する作業です。80 GHzの狭いビームが有利なタンクもあれば、別周波数やガイド波を検討すべきタンクもあります。図面上のビーム経路と現地のエコー曲線をつなぎ、FATで機器設定を、SATで実運転の液位を検証します。
タイ工場のタンク条件がまだ整理できていない段階でも、現場図面と用途をもとに候補方式や接続範囲を一緒に整理できます。既設PLCへの取込み、保全引継ぎまで含めて検討したい場合は、TOMAS TECHへのお問い合わせをご利用ください。
参考情報
- Endress+Hauser, Continuous level measurement in liquids — 選定チェックリストと方式比較。
- Endress+Hauser, Is 80 GHz radar level measurement right for your process? — 80 GHzの適用と限界。
- Endress+Hauser, Frequency and antenna selection affects accuracy measurement — 周波数単独では精度が決まらない点。
- Endress+Hauser, Guided radar level measurement — ガイド波の原理と適用。
- Emerson, Rosemount 1208A Reference Manual — 泡・乱流・内部障害物についての記載。
- Emerson, Smart Echo Supervision — 偽エコー処理の例。
- VEGA, 80 GHz radar in sulfur melting tanks — 狭ビームを使った個別事例。
- Siemens, SITRANS LR110 Operating Instructions — 出力と故障時動作の機種例。