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2026.10.12

近接センサ 選定|検出距離・材質補正・配線とタイ工場のRFP

近接センサ 選定|検出距離・材質補正・配線とタイ工場のRFP

「カタログの検出距離どおりに付けたのに、アルミのワークだと反応しない」「欧州製の装置の PNP 入力に、日本で使い慣れた NPN のセンサを付けてしまった」「2線式に替えたら出力が切れなくなった」。近接センサ 選定について、タイの日系工場の生産技術・保全の方から、こうした相談をよくいただきます。

この記事の主張は次のとおりです。近接センサの選定は「カタログの検出距離」ではなく、「実ワークの材質・大きさ・取付条件で補正した、安全側の距離」で決まります。補正係数・応答周波数・相互干渉の値はメーカーと型式ごとに違い、どれも測定条件付きの値です。だから採用型式のデータシートで確かめ、その根拠を RFP(見積依頼書)に書かせ、受入試験(FAT/SAT)で実ワークを使って確認します。 具体的には次の7点です。

  1. カタログの検出距離は、厚さ1 mm の鉄板(標準検出物体)での値です。Omron は安定して使える「設定距離」を定格検出距離の約70〜80%と定義し、欧州系のデータシートは「保証動作距離 Sa」という別の書き方をしています。
  2. 材質によって検出距離は大きく縮みます。Contrinex の一製品の値で計算すると、銅は鋼の約18%の距離しか出ません。しかも係数はメーカーで違い、本記事の試算ではステンレスの目安が 4.48 mm と 5.44 mm に分かれます。
  3. シールド形と非シールド形では、検出距離も周囲金属への配慮も違います。並べて付けるなら相互干渉の間隔も要ります。
  4. 応答周波数は測定条件付きのカタログ値です。必要な検出回数と比べるときは、条件の違いを踏まえます。
  5. 出力方式は PLC の入力ユニットに合わせます。DC2線式は漏れ電流と残留電圧、3線式は NPN/PNP の整合を確認します。
  6. IP 等級・切削油・溶接・ノイズ・締付トルク・ケーブルといった環境と取付の条件が、寿命と誤動作を左右します。
  7. 以上を RFP の項目にして、FAT/SAT で実ワーク・実取付で確かめます。

なお、本記事は特定製品の推奨やランキングではありません。製品の機能や性能はメーカーの公開資料に基づく「メーカーの説明・主張」で、数値には社名とシリーズを付けています。後半のモデル試算は説明のために置いた仮の数字で、実在する装置のデータではありません。価格・金額は扱いません。

近接センサとは:誘導形・静電容量形・磁気形の違い

近接センサは、検出物体に触れずに「近くにあるか」を検出するセンサです。Omron の技術ガイドは、検出方式を3つに分けています。電磁誘導によって金属の検出物体に生じる渦電流を使う方式(誘導形)、静電容量の変化を使う方式(静電容量形)、磁石とリードスイッチを使う方式(磁気形)です。Keyence も「高周波発振形(電磁誘導)」「磁気形」「静電容量形」の3つに大別しています。

Omron は、JIS C 8201-5-2 が近接センサを定義しており、それが IEC 60947-5-2 の定義に整合していると説明しています。

方式検出の原理(メーカーの説明)検出できるもの周囲で注意するもの
誘導形コイルの交流磁界で金属に渦電流を生じさせ、そのインピーダンス変化や発振の減衰を検出(Omron、Keyence)金属(鉄・アルミ・真鍮・銅など)周囲の金属
静電容量形検出物体とセンサの間の静電容量の変化を検出(Omron)金属に加え、樹脂・液体・粉体など。誘電率による周囲のあらゆる物体
磁気形磁石とリードスイッチ(Omron)磁石—

方式の選び方について、Pepperl+Fuchs(以下 P+F)の総合カタログは、対象が金属なら誘導形、プラスチック・紙・液体・粒体・粉体なら静電容量形、磁石を含むなら磁気形を勧めています。治具や自動機でワークの在荷やクランプの位置を確かめる用途の多くは金属が相手なので、本記事は誘導形を中心に説明します。治具そのものの設計・製作の進め方は治具の設計・製作の記事で扱っています。

誘導形の中にも種類があります。Omron は、アルミを検出する方式(周波数の位相成分を検出)、全金属形、パルス応答形(パルスで渦電流を発生させ、その時間変化を検出)を挙げています。Keyence は非鉄金属形について、アルミや銅が近づくと発振周波数が上がり、鉄系金属では下がる性質を使うと説明し、SUS304 は中間の性質を持つと注記しています。

Omron は近接センサの特長として、非接触なので摩耗しないこと、接点がないため長寿命であること(磁石式は対象外)、水や油のある場所でも使えること、色の影響をほとんど受けないこと、応答が速いことを挙げています。一方で、周囲温度・周囲の物体・他のセンサの影響を受けるとも書いています。この「影響を受ける」側の条件を一つずつ潰していくのが、近接センサの選定です。

検出距離の用語:定格検出距離・設定距離・Sn/Sr/Sa・標準検出物体

近接センサの選定で最初に押さえたいのは、カタログの「検出距離」が何を意味するかです。メーカーの用語を整理します。

Omron の用語

Omron の技術ガイドは次のように定義しています。

用語Omron の定義
標準検出物体基本性能を測る基準となる、材質・形状・寸法を規定した検出物体
検出距離標準検出物体を規定の方法で動かしたとき、基準面から動作(復帰)するまでの距離
設定距離温度や電圧の影響を含めて安定して使える、基準面からの距離。定格検出距離の約70〜80%
応差動作する距離と復帰する距離の差

Omron は取付上の注意として、温度・電圧で検出距離が変わるため、設定距離に基づいて取り付けることを推奨しています。

実例として Omron E2E NEXT(DC3線式)の仕様を見ると、同じ M18 のシールド形でも、シリーズによって距離と標準検出物体の大きさが違います。

E2E NEXT のシリーズ(シールド形・M18)型式検出距離設定距離標準検出物体(鉄)応答周波数(平均値)
BASIC Single distanceE2E-X5□185 mm ±10%0〜4 mm18×18×1 mm600 Hz
BASIC Double distanceE2E-X8□188 mm ±10%0〜6.4 mm24×24×1 mm500 Hz
PREMIUM Triple distanceE2E-X12□1812 mm ±10%0〜9.6 mm36×36×1 mm500 Hz
PREMIUM Quadruple distanceE2E-X14□1814 mm ±10%0〜10.6 mm42×42×1 mm350 Hz

設定距離を検出距離で割ると、BASIC の2機種は 4÷5 と 6.4÷8 でいずれも80.0%、PREMIUM Triple は 9.6÷12 で80.0%、PREMIUM Quadruple は 10.6÷14 で約75.7%です。いずれも Omron の定義「約70〜80%」の範囲に入っています。検出距離が長いシリーズほど、標準検出物体も大きくなっている点に注意してください。

欧州系データシートの書き方(Sn・Sr・Sa)

欧州系のメーカー資料では、Sn・Sr・Su・Sa という記号が使われます。P+F の2012年版総合カタログは、EN 60947-5-2 の定義として次のように説明しています。

  • 定格動作距離 sn:製造公差や電圧・温度などの外部影響を考えない「呼び」の値
  • 実動作距離 sr:周囲温度 23±5°C、規定の電圧と取付条件で測った、個々のセンサの値
  • 使用動作距離 su:温度と電圧の範囲を広げた条件で測った値
  • 保証動作距離 sa:規定条件のもとで動作が保証される距離

Contrinex のデータシート(DW-Ax-50x-065)にも「0.9Sn ≤ Sr ≤ 1.1Sn」「Sa ≤ (0.81 x Sn)」と書かれ、データは IEC 60947-5-2 に従い、電源 20〜30 VDC、周囲温度 23°C±5°C で測ったものと記されています。

ここで注意したいのは、規格本文との関係です。IEC 60947-5-2 は2019年10月18日に第4版(Ed. 4.0)が発行され、IEC のカタログページは改訂点の一つに検出範囲と動作距離に関する仕様の変更を挙げています。本記事では規格本文を確認していないため、上の記号と数値の関係は「P+F や Contrinex の資料がそう説明している」ものとして扱います。

Omron の設定距離と欧州系の Sa は、呼び方も定義の出所も違います。同じものとして読み替えないでください。共通しているのは、定格の検出距離(Sn)そのままの位置では設計しないという一点です。

なお、Contrinex のこの製品は、検出物体が実動作距離の 0.8倍以内にあると LED が点灯し、0.8倍を超えて実動作距離以内のときは点滅する仕様です。余裕の少ない領域にあることを点滅で知らせる設計で、立ち上げ時の距離調整に使えます。

標準検出物体の大きさ:P+F の決め方と Omron の値が一致する

P+F のカタログは、標準測定板を厚さ1 mm の正方形の鋼板とし、一辺を「検出面の内接円径」と「3×sn」の大きい方にすると説明しています。これを Omron E2E NEXT BASIC Double distance シールド形に当てはめてみます(内接円径を M ねじ径で近似したのは本稿の仮定です)。

型式(Omron)ねじ径検出距離3×検出距離大きい方Omron の標準検出物体
E2E-X2□8M82 mm6 mm8 mm8×8×1 mm
E2E-X4□12M124 mm12 mm12 mm12×12×1 mm
E2E-X8□18M188 mm24 mm24 mm24×24×1 mm
E2E-X15□30M3015 mm45 mm45 mm45×45×1 mm

4機種すべてで一致しました。つまりカタログの検出距離は、この大きさの、厚さ1 mm の鉄板での値です。M18・8 mm の機種なら 24 mm 角の鉄板です。ボルトの頭や細い爪のように、これより小さいワークでは検出距離が短くなります(Omron、P+F)。P+F は、大きい物体では動作距離がわずかしか伸びない一方、小さい物体では大きく減ると説明し、標準測定板と大きさが違う場合は動作距離を検証するよう勧めています。

シールド形と非シールド形の違い、周囲金属の影響

近接センサには、シールド形(フラッシュ取付形)と非シールド形があります。

Omron の定義では、シールド形は磁束がセンサの前方に集中し、コイルの側面が金属で覆われているため、金属に埋め込んで取り付けられます。非シールド形は磁束が前方に広く広がり、コイル側面が金属で覆われていないため、周囲の金属の影響を受けやすくなります。Keyence も同様に、シールド形は金属に埋め込んで使える(EM シリーズは例外)、非シールド形は検出距離が長い代わりに取付位置に注意が要る、と説明しています。

項目シールド形非シールド形
構造コイル側面を金属で覆い、磁束を前方に集中(Omron)側面を覆わず、磁束が前方に広がる(Omron)
取付金属に埋め込める周囲に空きが要る。寸法は各データシートで確認
検出距離短い長い
距離の例(Omron E2E NEXT BASIC Double distance)M12:4 mm、M18:8 mmM12:8 mm、M18:16 mm

P+F のカタログは、フラッシュ取付形は周囲の空きが不要で機械的保護と耐ノイズに優れる一方、自社製品では動作距離が非フラッシュ形の約60%になると説明しています。これは P+F の製品についての説明です。Omron E2E NEXT の同サイズの比較では、シールド形の距離は非シールド形の50%(8 mm と 16 mm)です。比率もメーカーと製品で違うので、一般値として覚えるのではなく、採用候補の型式どうしで比べてください。

非シールド形について P+F は、周囲金属の影響を避けるため、センサの周りに空きを設けるよう図示しています。その具体的な寸法は、各センサの技術データで確認する必要があります。

周囲金属が引き起こすこと

Omron の注意事項は、検出物体以外の金属が検出面の近くにあると、見かけの動作距離が伸びる、温度特性が悪くなる、復帰しなくなる、といった影響が出ると書いています。特に、検出面に向かい合う金属面との距離は、検出距離の短縮などに影響します。

Omron は機種ごとの周囲金属の寸法表をカタログに載せており、その値は付属ナットを使った場合の値で、ナットの材質を変えると周囲金属の影響も変わるとしています。治具のブラケットを鉄から別の材料に変えた、ナットを手持ちのものに替えた、といった小さな変更でも、検出の状態が変わりうるということです。

静電容量形の場合は、Omron によれば周囲の「あらゆる物体」の影響に注意が要ります。金属の治具だけでなく、樹脂のカバーや配線、作業者の手も対象になります。

近接センサ選定の手順

ここまでの用語を踏まえ、近接センサ選定の手順を8段階に整理しました。

近接センサ 選定|検出距離・材質補正・配線とタイ工場のRFP - figure 2

上の図のとおり、①検出物体(材質・大きさ・めっき)を決める、②検出方式を選ぶ、③シールド形か非シールド形か、取付スペースとあわせて決める、④材質で距離を補正する、⑤応答周波数を確認する、⑥出力と配線(2線式/3線式、NPN/PNP、IO-Link)を決める、⑦環境(IP、切削油、溶接)を確認する、⑧RFP に書き、FAT/SAT で確かめる、の順です。

この順番には理由があります。距離の計算は「何を検出するか」が決まらないとできず、出力方式は PLC 側の入力ユニットが決まらないと選べません。逆に、型式を先に決めて後から材質や配線を合わせると、「アルミで反応しない」「PNP 入力に NPN を付けた」という手戻りが起きます。

各段階で確認することを表にまとめます。

段階確認すること主な根拠
1 検出物体材質、めっきの有無と厚さ、板厚、大きさ(標準検出物体と比べる)、進入方向(正面か横か)Omron、P+F
2 検出方式金属なら誘導形、樹脂・液体・粉体なら静電容量形、磁石なら磁気形P+F、Omron
3 取付シールド/非シールド、周囲金属、向かい合う金属、隣のセンサとの間隔Omron、P+F
4 距離補正設定距離または Sa を基準に、採用型式のデータシートの係数・特性図で材質補正Omron、P+F、Contrinex
5 応答必要な検出回数(Hz)とカタログの応答周波数、その測定条件Omron、P+F
6 出力2線式の漏れ電流・残留電圧、3線式の NPN/PNP、NO/NC、IO-Link の対応形式Omron、P+F
7 環境IP 等級(規格名まで)、切削油、溶接のスパッタと磁界、ノイズ、ケーブルOmron、P+F、Balluff、ifm
8 RFP・試験上記の根拠を文書で出させ、実ワークで確認—

横方向から検出物体が入る場合は、軸方向とは違う動作距離になります。P+F は軸方向のずれに応じた応答曲線として、Omron は「水平方向の検出距離と検出領域」の図として説明しています。搬送ラインのように横から通過するワークでは、この図を見て取付位置を決めます。

材質による検出距離の補正

誘導形の近接センサでは、検出物体の材質で検出距離が大きく変わります。Omron の注意事項は、検出距離は検出物体の材質によって大きく変わり、一般にアルミのような非磁性金属では短くなる、と書いています。

材質の影響は「補正係数」で表されます。ifm の説明では、材質別の検出距離=補正係数×公称の検出距離です。Contrinex のデータシートも、アルミでの動作距離を「Sn × CFAl」と書いています。

ここで、Contrinex の DW-Ax-50x-065(Ø6.5、定格動作距離 Sn=3 mm)のデータシートに載っている係数だけを使って、材質別の距離を計算してみます。

近接センサ 選定|検出距離・材質補正・配線とタイ工場のRFP - figure 1

上の図はモデル試算で、Contrinex DW-Ax-50x-065 の Sn 3 mm に同社データシートの補正係数を掛けた値(Sn×CF)です。鋼 3.00 mm に対して、ステンレス(V2A)2.01 mm、真鍮 1.05 mm、アルミ 0.78 mm、銅 0.54 mm まで下がります。

材質Contrinex の補正係数Sn×CF(mm)さらに ×0.81(mm、本稿の仮定)
鋼(FE 360)13.002.43
ステンレス(V2A)0.672.011.63
真鍮0.351.050.85
アルミ0.260.780.63
銅0.180.540.44

右端の列は、Sn×CF にさらに 0.81 を掛けた値です。0.81 は同じデータシートにある「Sa ≤ 0.81×Sn」の比を借りたものです。ただし、データシート上の Sa は標準検出物体(鋼)についての値で、材質補正後の距離に 0.81 を掛けるのは本稿の仮定です。Contrinex がこの計算方法を定めているわけではありません。

読み方は単純です。同じセンサでも、銅のワークでは鋼の約18%(0.54÷3.00)の距離しか出ません。右端の列(×0.81)で比べると、鋼なら 2.43 mm に置けた位置関係でも、銅なら 0.44 mm まで寄せないと検出しない計算になります。ワークのばらつきや振動を考えると、余裕はかなり小さくなります。非鉄のワークが多いなら、後で説明する全金属形(補正係数1)や非鉄金属形を検討する根拠になります。

Contrinex のデータシートには、埋込取付の場合は取付台の補正係数をさらに掛ける(Sn, Al=Sn×CFAl×CFemb, Al)とも書かれています。この製品の取付台の係数の数値はデータシート上に見当たらなかったため、上の表には入れていません。取付条件でも距離が変わりうる、という点は覚えておいてください。

補正係数はメーカーで違う:ifm と P+F の値で比べる

前の章の係数は、Contrinex の一製品の値です。ほかのメーカーの公表値と並べると、値は揃っていません。

材質ifm 標準センサP+F 代表値(2012年カタログ)autosenContrinex DW-Ax-50x-065
鋼(基準)111.001
ステンレス0.70.850.60〜1.000.67
真鍮0.50.40.35〜0.500.35
アルミ0.40.40.30〜0.450.26
銅0.30.30.25〜0.450.18

P+F は自社のカタログで、補正係数は鋼 FE 360(St37)に対する比であり、ハウジングとシールドの材質によって型式ごとに違うので、各データシートの値を使うように、と書いています。メーカー自身が「この表をそのまま使わないで」と言っているわけです。

この違いが設計にどれだけ効くかを、モデル試算で示します。前提は、Omron E2E-X8□18(M18 シールド形、検出距離 8 mm、設定距離 6.4 mm)です。ただし補正係数は Omron のものではなく、仮に ifm と P+F の公表値を当てはめます(Omron の材質別の特性は本記事では取得していません)。

近接センサ 選定|検出距離・材質補正・配線とタイ工場のRFP - figure 3

上の図は、設定距離 6.4 mm に ifm と P+F の係数をそれぞれ掛けた値です。鋼は両社とも 6.40 mm、ステンレスは ifm 4.48 mm と P+F 5.44 mm、真鍮は 3.20 mm と 2.56 mm、アルミと銅は両社同じで 2.56 mm と 1.92 mm です。

材質ifm 係数8 mm×係数6.4 mm×係数P+F 係数8 mm×係数6.4 mm×係数
鋼18.006.4018.006.40
ステンレス0.75.604.480.856.805.44
真鍮0.54.003.200.43.202.56
アルミ0.43.202.560.43.202.56
銅0.32.401.920.32.401.92

ステンレスだけで、設定距離の目安が 4.48 mm と 5.44 mm に分かれ、差は 0.96 mm です。真鍮は逆に ifm の方が長くなります。どちらの係数表を使ったかで、取付位置が 1 mm 近く変わることになります。

ステンレスは種類による差も大きい材料です。autosen の表がステンレスに 0.60〜1.00 という幅を持たせていること、Keyence が SUS304 を鉄と非鉄の中間の性質と注記していることからも、一つの係数で扱いにくいことがわかります。

結論は、一般の係数表で設計しないことです。採用する型式のデータシートに載っている係数や材質別の特性図で確かめ、それでも不安が残るなら実ワークで距離を測ります。Omron の注意事項のページも、材質別の係数を数値では示さず、カタログのエンジニアリングデータ(特性図)を見るよう案内しています。

薄い・小さい・めっきのワークと、Factor 1/全金属形

材質のほかに、ワークの厚さ・大きさ・めっきも検出距離を変えます。

厚さと大きさ

Omron の注意事項によると、ワークが標準検出物体より小さいと、一般に検出距離は短くなります。標準検出物体以上の大きさで設計し、同等以下なら十分な余裕をとるよう勧めています。

厚さについては、鉄やニッケルなどの鉄系金属は 1 mm 以上の厚さが必要です。一方、非磁性金属は皮膜(めっき)の厚さが 0.01 mm 以下なら、磁性体並みの検出距離が得られるとしています(パルス応答形の E2V などは特性が異なります)。蒸着膜のように極めて薄く導電性のないものは検出できません。

めっきの影響

Omron は「めっきの影響(代表例)」として、めっきなしの検出距離を100としたときの値を参考値で示しています。

めっきの種類・厚さ母材が鋼の場合母材が真鍮の場合
めっきなし100100
Zn 5〜15 μm90〜12095〜105
Cd 5〜15 μm100〜11095〜105
Ag 5〜15 μm60〜9085〜100
Cu 10〜20 μm70〜9595〜105
Cu 5〜15 μm—95〜105
Cu(5〜10 μm)+Ni(10〜20 μm)70〜95—
Cu(5〜10 μm)+Ni(10 μm)+Cr(0.3 μm)75〜95—

鋼に銀めっき(Ag)を施すと、検出距離がめっきなしの60〜90%になる例があります。外観のために後からめっき仕様を変えた部品で、検出が不安定になることがある、ということです。図面の表面処理欄も、センサ選定の入力情報になります。

Factor 1(補正係数1)/全金属形

非鉄のワークが多い、鉄と非鉄が混在する、という場合の選択肢が、材質による距離の差が小さい(補正係数1の)センサです。各社の製品群と、メーカーの説明を並べます。

メーカー・製品群メーカーの説明
ifm「Kplus」すべての金属に対して一つの標準化された検出範囲。ステンレス・真鍮・アルミ・銅の係数はすべて1。電磁界耐性、溶接用の Anti-spatter coating、使用温度 -40〜85°C、IP 68/IP 69K まで(いずれも ifm の製品訴求)
P+F「Reduction factor 1」すべての金属をほぼ同じ動作距離で検出。最大動作距離 2〜75 mm のラインアップ、電磁界耐性(2012年カタログ時点の記載)
Balluff「Factor 1」BES05NC(M18)鉄・非鉄を同じ距離で検出。フラッシュ取付で定格動作距離 8 mm、検出面とハウジングはステンレス 1.4404(コーティング付)、PNP NO、10〜30 V DC、IP68
Omron方式の分類として「全金属形」「アルミ検出形」がある
Keyenceアルミ検出モデル(ED シリーズ。鉄も検出可、特性図で確認)

Balluff の同じ資料には、鉄だけを検出する BES05K8 と、非鉄だけを検出する BES05K9 も載っています。Balluff は、アルミと鋼が混在するアセンブリで材質を確かめるポカヨケ用途を挙げています。「正しい材質の部品が付いているか」を近接センサで判定するという使い方です。

Factor 1 にも弱点があります。販売会社の autosen は、2つの空芯コイルを使う構造のため、小さな物体が横から通過すると二重のパルスが出ることがあると説明しています。小物が横切る用途に使うなら、事前に現物で確認しておくべき点です。

応答周波数とヒステリシス:必要な検出回数と比べる

回転体のドグやギアの歯を数える、高速で流れるワークを数える、といった用途では、応答周波数が効きます。

応答周波数の定義と測定条件

Omron は応答周波数を、標準検出物体を繰り返し近づけたときに1秒間に出力できる検出の回数と定義しています。E2E NEXT の仕様表の注記によれば、応答周波数は平均値で、標準検出物体を「標準検出物体の2倍の間隔」で並べ、検出距離の1/2の距離で測っています。P+F も同様に、辺 a の測定板を間隔 2a で並べ、Sn/2 の距離で測る図を示しています。

つまり、カタログの応答周波数は「標準サイズの物体を、物体幅の2倍の間隔で、Sn の半分の距離で通した」ときの値です。実際のドグが小さい、間隔が狭い、距離が遠い、という条件では、カタログ値どおりに出ない可能性があります。

製品の値には幅があります。Omron E2E NEXT(DC3線式)では、サイズが大きく検出距離が長いほど応答周波数が低い傾向です。BASIC Double distance シールド形は M8 の 1,500 Hz から M30 の 250 Hz まで、非シールド形の M30 は 100 Hz です。Contrinex DW-Ax-50x-065 は 1000 Hz 以下です。

モデル試算:回転検出で何 Hz 必要か

仮に、回転円板に検出用のドグを等間隔に12個付け、1,500 r/min で回す場合を考えます(ドグ数と回転数は本稿の仮定です)。センサは Omron E2E-X8□18(応答周波数 500 Hz)とします。

項目計算結果
必要な検出回数12 個 × 1,500 r/min ÷ 60300 Hz
カタログ値に対する比300 Hz ÷ 500 Hz0.60
同じセンサ・12ドグでの理論上の上限回転数500 Hz × 60 ÷ 12 個2,500 r/min

検算すると、1,500 r/min は毎秒25回転で、25×12=300 Hz です。2,500 r/min なら毎秒約41.7回転で、×12=500 Hz になります。

搬送ワークの例も置いておきます。搬送速度 60 m/min(毎秒 1 m)、ワークのピッチ 50 mm(いずれも仮定)なら、必要な検出回数は 1 ÷ 0.05=20 Hz で、応答周波数に対して十分低い値です。

注意してほしいのは、この比較だけで可否を判断しないことです。E2E-X8□18 の 500 Hz は、24×24×1 mm の標準検出物体を物体の2倍の間隔で並べ、検出距離の1/2の距離で通したときの平均値です。ドグがそれより小さい、間隔が狭い、距離が遠い場合は条件が違います。また、0.60 という比を「これ以下なら合格」とする基準をメーカーが示しているわけではありません。回転数を数える用途で、そもそも近接センサが適切かどうかは、ロータリーエンコーダの選定記事とあわせて検討してください。

ヒステリシス(応差)

近接センサには応差があり、出力が ON になる位置と OFF になる位置が違います。停止位置で検出物体がわずかに振動しても、出力がばたつかないための仕組みです。

製品応差
Omron E2E NEXT(多くの機種)検出距離の15%以下
Omron E2E NEXT Single distance検出距離の10%以下
Contrinex DW-Ax-50x-065実動作距離の3〜15%

応差がある分、位置を細かく判定する用途には限界があります。Omron は、高い精度が必要なら分離アンプ形を使うよう勧めています。ロータリーインデックステーブルの割出し位置の確認のように、「止まった位置が正しいか」を見る用途では、応差の分だけ判定に幅が出ることを前提に、ドグの形状と取付位置を決めます。

出力方式:DC2線式の漏れ電流と残留電圧

近接センサの出力方式で、トラブルが多いのが DC2線式です。

2線式の仕組み

2線式は、電源線と信号線を兼ねています。P+F の説明では、2線式は負荷と直列に接続し、OFF のときにも小さな漏れ電流が流れ、ON のときには小さな電圧降下が生じます。Omron は、電源線だけを配線すると内部素子が壊れるおそれがあるので、必ず負荷を入れるよう注意しています。Keyence は、2線式は配線が簡単で NPN・PNP どちらの回路にも使えると説明しています。

Omron E2E NEXT DC2線式(Standard model)の仕様は次のとおりです。

項目Omron E2E NEXT DC2線式の値
漏れ電流0.8 mA 以下
残留電圧有極性 3 V 以下、無極性 5 V 以下(負荷電流 100 mA、ケーブル長 2 m)
負荷電流3〜100 mA
電源電圧12〜24 VDC

漏れ電流で負荷が OFF にならない

Omron の技術ガイドは、2線式では出力が OFF のときでも最大 0.8 mA の電流が負荷に流れるので、この電流で負荷が動作しないことを確認するよう書いています。判定の式は次のとおりです(Omron の注意事項)。

(漏れ電流)×(負荷の入力インピーダンス)<(負荷の復帰電圧)

モデル試算として、漏れ電流を E2E NEXT DC2線式の最大値 0.8 mA とし、負荷の入力インピーダンスを 5.6 kΩ、復帰電圧を 5 V と仮定します(特定の PLC の仕様ではありません)。

項目計算結果
漏れ電流による負荷側の電圧0.8 mA × 5.6 kΩ4.48 V
判定4.48 V と 5 V の比較4.48 V<5 V で判定上は OFF
余裕5 V − 4.48 V0.52 V

判定上は OFF になりますが、余裕は 0.52 V しかありません。負荷の入力インピーダンスがもう少し大きければ、判定式を満たさなくなります。Omron は、一般に電圧が高いほど漏れ電流は大きく、リミットスイッチやマイクロスイッチから置き換えるときに注意が要ると書いています。

余裕が足りない場合、Omron は負荷にブリーダ抵抗を並列に入れ、上の式を満たすよう設計することを勧めています。目安は、12 VDC なら 15 kΩ 以下・450 mW 以上、24 VDC なら 30 kΩ 以下・0.1 W 以上です。もう一つの方法は3線式を選ぶことで、P+F は3線式の漏れ電流を無視できるとしています。

残留電圧で負荷が ON にならない

ON のときも、センサ内部に電圧が残ります。電源 24 V、残留電圧 3 V(E2E NEXT DC2線式・有極性の最大値)とすると、負荷にかかる電圧は 24 − 3=21 V です。実際の電圧の配分は負荷電流やケーブル長で変わりますが、リレーなどの負荷の動作電圧がこれより高いと ON しません。Omron も、リレー負荷の接続例で DC2線式の残留電圧 3 V に注意するよう書いています。

AC2線式については、Omron はセンサ電流が少なくとも 10 mA になるようブリーダ抵抗を入れるよう勧めています(100 VAC で 10 kΩ 以下・3 W(5 W)以上、200 VAC で 20 kΩ 以下・10 W(20 W)以上)。AC の半波整流を使うタイマなどの電子機器を負荷にすると、動作が不安定になることもあります。

3線式 NPN/PNP と PLC 入力、NO/NC

3線式は、電源と負荷の接続が分かれています。P+F によれば、過負荷保護・短絡保護・逆接保護が付いており、漏れ電流は無視できます。Omron E2E NEXT の3線式も、電源逆接保護、サージ吸収、出力短絡保護、出力逆接保護を備えています。

NPN と PNP の違い

P+F の説明では、負荷を出力と 0 V の間につなぐのが PNP(switched high)、負荷を出力と +UB の間につなぐのが NPN(switched low)です。センサの出力形式と、PLC 入力ユニットの仕様が合っていないと、入力が入りません。

項目NPN 出力PNP 出力
負荷のつなぎ方(P+F)出力と +UB の間出力と 0 V の間
出力の動作(P+F)switched lowswitched high
Omron の説明汎用のトランジスタ出力で、PLC やカウンタに直接接続できる主に欧州など海外向けの機械に組み込まれる

地域の使い分けについて一次資料で確認できたのは、上の Omron の説明だけです。タイの工場で NPN と PNP がどの程度使われているかを示す資料はありません。タイの日系工場では、日本から持ち込んだ装置と欧州製の装置が同じラインに並ぶことがあり、装置ごとに入力ユニットの仕様が違うことがあります。選ぶ基準は「どちらが多いか」ではなく、その装置の PLC 入力ユニットに合わせることです。予備品の型式を装置ごとに管理し、「同じ M18 だから」と NPN と PNP を取り違えない仕組みにしておきます。PLC の入力の基本はPLC の基礎の記事で解説しています。

NO と NC

Omron の定義では、NO は検出領域に物体があるときに出力が ON、NC は物体がないときに出力が ON になります。NO/NC を切り替えられる機種もあります。どちらを使うかは、PLC プログラムの論理と、異常時の扱いをあわせて決めます。

電源の投入と遮断の順番

Omron は、電源投入後 100 ms 以内に検出可能になるので、センサの電源を先に入れる設計にすること、電源を切るときに出力パルスが出ることがあるので負荷側の電源を先に切ることを注意しています。P+F は、電源投入から使用可能になるまでの時間を最大 300 ms と記載しています(P+F 製品の値)。この時間はメーカーと製品で違うので、PLC プログラムで電源投入直後の入力を無視する時間は、採用型式の値で決めます。

直列(AND)や並列(OR)の接続も可能ですが、Omron は機種によってはリレーを介する必要があり、誤パルスや漏れ電流の影響で使えない場合があるとしています。

IO-Link 対応の近接センサで何が取れるか

IO-Link に対応した近接センサでは、ON/OFF の出力に加えて、センサの状態や設定をやり取りできます。

メーカー・製品IO-Link で扱えるもの(メーカーの説明)
Omron E2E NEXTIO-Link Ver 1.1、COM2(38.4 kbps)/COM3(230.4 kbps)、最小サイクルタイム COM2 2.3 ms/COM3 0.4 ms。NO/NC 切替、自己診断、近づきすぎの判定距離の選択、タイマ、不安定出力、モニタ出力、稼働時間の読出し、センサ内部温度の読出しなど
ifm の誘導形センサ周期データとして減衰の現在値、スイッチング出力、デバイス状態。スイッチポイントのティーチ、スイッチング回数カウンタ、稼働時間カウンタ、電源投入回数カウンタ、LED 点滅による位置確認など
Contrinex DW-Ax-50x-065IO-Link 1.1、7-bit のプロセスデータ、COM2(38.4 kBaud)、最小サイクルタイム 10.4 ms

ifm は用途例として、距離の連続監視、チェーンの伸びの検出、軸のアンバランス、材質の判別を挙げています。Omron は、IO-Link マスタを通じて HMI から故障箇所と内容を早く把握でき、MTTR(平均修復時間)を短くでき、状態監視が予知保全に役立つと訴求しています(メーカーの主張)。

出力形式の制約に注意

見落としやすいのは、IO-Link に対応する出力形式が限られている製品がある点です。Omron E2E NEXT の仕様表には、NC タイプの PNP 出力と、すべての NPN 出力は IO-Link に対応しないと注記されています。Contrinex DW-Ax-50x-065 も、型式表を見る限り IO-Link の表記があるのは PNP NO 型だけです。

このため、NPN 標準で揃えてきた既存設備に IO-Link を入れる場合、出力形式の見直しが伴うことがあります。すべての製品がそうだとは言えませんが、採用候補の型式で対応形式を確かめておくべき論点です。IO-Link を安全機器まで広げる場合の考え方は、IO-Link Safety の導入記事で扱っています。

環境:IP 等級・切削油・溶接・ノイズ

IP 等級と切削油

Omron E2E NEXT の仕様表は、プリワイヤ形とプリワイヤコネクタ形の保護構造を「IEC 60529:IP67、ISO 20653(旧規格 DIN 40050 PART9):IP69K、JIS C 0920 附属書1:IP67G」と書き、さらに Omron 独自の耐油部品評価基準に合格としています(切削油は JIS K 2241:2000 規定のもの、温度 35°C 以下)。IP67 と IP69K は別の規格に基づく表記なので、RFP では規格名まで書かせるのが確実です。

切削油については、Omron の製品ページは、新しい PVC の配合でケーブルの膨潤・劣化・ひび割れを防ぎ、切削油の侵入を最大2年防ぐと訴求しています。ただし仕様表の注記では、この「2年」は製品設計と評価結果の中央値(typical value)であり、出荷から平均2年で性能低下が見込まれると明記されています。保証値ではなく、交換計画の目安として読むべき数字です。プリワイヤ形は、ケーブルの被覆を剥いた部分では保護等級を満たさないとも書かれています。切削油が大量にかかる工程向けには、Omron は耐油形の E2ER/E2ERZ を案内しています。

Omron の IP69K の試験条件は、製品ページによれば 8,000〜10,000 kPa の圧力、80°C の熱水、各角度30秒です。P+F の2012年カタログでは、製品により IP65・IP67・IP68(EN 60529)があり、衝撃試験 30 G・11 ms、振動試験 10〜55 Hz・振幅 1 mm(IEC 60068-2-6)と記載されています。

切粉の付着は別問題

Omron は誘導形について、汚れ・油・水の影響をほとんど受けずに検出できると書いています。一方で、点検項目には「金属粉の付着・堆積」を挙げています。油や水には強くても、金属の切粉が検出面に溜まれば、それ自体が検出物体になりえます。切削加工の近くでは、点検と清掃の周期を保全計画に入れておきます。

溶接環境:スパッタと溶接磁界

溶接ラインは、近接センサにとって厳しい環境です。Balluff は、溶接環境の誘導形センサはワーク投入時の衝撃とスパッタによる侵食で早期に故障しやすいと説明しています。

メーカー溶接環境向けの対策(メーカーの説明・主張)
P+F強い磁界への耐性と機械的な堅牢性を持つ weld-immune センサ。架橋 PPS の検出面でスパッタから保護、ハウジングは PTFE コーティングの真鍮
Balluffステンレスの検出面(スパッタの焼き抜けと衝撃に強いと主張)、改良コーティング、Factor 1 による溶接磁界への耐性、シリコーンの溶接スパッタ耐性ケーブル
ifmKplus に溶接用の Anti-spatter coating。電磁界耐性で、電気ブレーキの近くでも誤動作しないと主張

Balluff は Factor 1 品を「本質的に溶接磁界に強い(inherently weld-field immune)」と説明していますが、これはメーカーの主張です。溶接電流や距離の条件によって結果は変わりうるので、溶接セルでは実機の溶接条件で確認します。ifm の磁気センサには、溶接エリア向けの干渉フィルタを IO-Link で有効/無効にできる機能もあります。

ノイズ対策

Omron の注意事項は、ノイズの種類ごとに対策を挙げています。

ノイズの種類Omron が挙げる対策
コモンモードノイズ(インバータノイズ)インバータモータを接地(100 Ω 以下)。ノイズ源と電源 0 V 側をコンデンサ(フィルムコンデンサ 0.22 μF、630 V)で接地。センサと金属取付板の間に樹脂やゴムなどの絶縁物を入れる
放射ノイズセンサとノイズ源(スイッチング電源など)の間に銅のシールド板を入れる、または距離を離す
電源ラインのノイズ電源ラインにコンデンサ、ノイズフィルタ(フェライトコア、絶縁トランス)、バリスタ
配線からの誘導高圧線・動力線と同じ配管やダクトに入れない。別系統、単独の金属管、シールドケーブルを使う
サージモータや溶接機など大きなサージ源の近くでは、サージ源側にサージアブソーバを入れる

DC 電源には絶縁トランスを使い、単巻トランスは使わないようにとも書かれています。

取付:ねじと締付トルク、ケーブル、相互干渉

締付トルク

Omron は、振動で緩まないようカタログの締付トルクを守ること、取付時にハンマーでたたくなど過大な衝撃を与えないこと(防水性の低下や破損のおそれ)、機種によっては歯付き座金が必要なことを注意しています。E2E NEXT の付属品は締付ナットと歯付き座金です。

許容締付トルクは、ハウジングの材質で大きく変わります。P+F の2012年カタログの表から、列の対応を確認できた行を抜き出します。

ねじステンレス真鍮PBTPPS
M18×130.0 N·m30.0 N·m1.5 N·m5 N·m
M30×1.530.0 N·m30.0 N·m3.0 N·m10 N·m

同じ M18 でも、金属ハウジングの 30 N·m に対して樹脂(PBT)ハウジングは 1.5 N·m で、一桁以上違います。金属ハウジングの感覚で樹脂ハウジングを締めると、破損のおそれがあります。ねじのない小径品では、Contrinex DW-Ax-50x-065(Ø6.5)は M5 ねじで固定する場合の最大締付トルクを 0.3 Nm としています。必ず型式ごとのデータシートの値を使い、組立作業標準にも書いておきます。

ケーブル

Omron の注意事項から、ケーブルの扱いを整理します。

  • 内蔵アンプ形は、標準ケーブルで最大 200 m まで延長できる(一部機種は例外)
  • 曲げ半径はケーブル外径の3倍以上(同軸・シールド・ロボットケーブルは5倍以上)
  • 引張は、外径 4 mm 未満で 30 N 以下、4 mm 以上で 50 N 以下。シールド・同軸ケーブルには張力をかけない
  • 0°C 以下では塩ビケーブルが硬くなり、曲げると断線のおそれがある
  • ケーブル端の絶縁部は Omron の社内検査用で保証対象外。切断して処理してから使う

可動部に沿わせるケーブルは、曲げ半径と固定方法を設計図に入れておきます。トグルクランプのクランプ確認のように、センサが可動部の近くに付く治具では、ケーブルの逃げが不足しがちです。

相互干渉の取付間隔

近接センサを並べて取り付けると、隣のセンサの交流磁界の影響で出力が不安定になることがあります。P+F の2012年カタログは、並べる場合の中心間距離 F の目安を、フラッシュ形でハウジング径の2倍以上、非フラッシュ形で4倍以上としています。M18(ハウジング径 18 mm)に当てはめると次のとおりです。

M18 を並べる場合(P+F の目安)計算中心間距離
フラッシュ形2 × 18 mm36 mm 以上
非フラッシュ形4 × 18 mm72 mm 以上

これは P+F 製品の目安です。Omron 製品の場合は、各機種のカタログにある相互干渉の表に従います。間隔がとれない場合、Omron は発振周波数の違う機種を交互に並べる方法を、P+F は発振周波数をずらした品(受注対応)を使う方法を挙げています。

よくあるトラブルと対策

メーカー資料に書かれている原因と対策を、症状別にまとめます。

症状原因(メーカーの説明)対策・確認出典
出力が不安定近くに並べたセンサどうしの相互干渉周波数の違う機種を交互に並べる。同じ周波数なら最小間隔を確保Omron、P+F
見かけの検出距離が伸びる/復帰しない/温度で変わる周囲金属、特に検出面に向かい合う金属機種ごとの周囲金属の表に従う。ナットの材質を変えると影響が変わる点に注意Omron
負荷が OFF にならない2線式の漏れ電流ブリーダ抵抗で判定式を満たす、または3線式にするOmron
負荷が ON にならない2線式の残留電圧負荷の動作電圧を確認Omron
防水性の低下・破損ハンマーでたたく、許容締付トルクを超える許容締付トルクを守る。歯付き座金の要否を確認Omron
振動で検出が不安定振動・衝撃のある環境検出距離に余裕を持たせ、緩みを防ぐOmron
断線・接触不良低温でのケーブルの曲げ、過大な曲げや引張曲げ半径と張力の制限を守るOmron
誤動作動力線と同じダクトでの誘導別系統・金属管・シールドケーブルOmron
溶接セルでの早期故障ワーク投入時の衝撃とスパッタによる侵食ステンレス検出面・コーティング・Factor 1 品(メーカーの提案)Balluff
小物が横切ると二重パルスFactor 1(二重コイル)の構造小物が横切る用途では事前に確認autosen
ケーブルの劣化・油の侵入切削油によるケーブルの膨潤・劣化・ひび割れ耐油ケーブル品・耐油コネクタ品Omron

保守の点検項目として、Omron は、検出物体とセンサの取付のずれ・緩み・変形、配線の緩み・接触不良・断線、金属粉の付着・堆積、使用温度や周囲環境の異常を挙げています。

近接センサの不具合は、設備が長時間止まる故障ではなく、短い停止として現れることがあります。「ワーク有り」の信号が一瞬切れてシーケンスが待ちになる、といった停止は、可用率の数字には表れにくくなります。そうした停止を記録し、原因を設備単位で追う方法はチョコ停対策の記事で解説しています。センサの交換で済ませず、上の表のどの原因に当たるかを記録しておくと、同じ停止を繰り返さずに済みます。

光電センサとの使い分け

近接センサと並んでよく使われる検知部品が、光電センサです。使い分けの考え方を、本記事で扱った近接センサの性質から整理します。

近接センサの誘導形は金属だけを検出し、Omron によれば汚れ・油・水の影響をほとんど受けず、色の影響もほぼ受けません。Keyence も、金属だけを検出するため粉塵や油の付着の影響を受けないと説明しています。その代わり、本記事で見てきたとおり、検出距離はワークの材質と大きさで大きく変わります。また検出距離そのものが短く、本記事で引いた Omron E2E NEXT(DC3線式)の仕様では、M8 シールド形(BASIC Single distance)の 1.5 mm から M30 非シールド形(BASIC Double distance)の 30 mm までです。

検出したいもの・条件近接センサで考える選択肢近接センサ以外も比べる場面
鉄のワーク・ドグ・クランプ部品誘導形(標準品)—
アルミ・銅・真鍮、鉄と非鉄の混在誘導形の全金属形・非鉄形・Factor 1 品必要な距離が補正後の値に収まらないとき
樹脂・液体・粉体静電容量形(周囲のあらゆる物体の影響に注意)静電容量形の距離や周囲条件が合わないとき
磁石を含むもの磁気形—
油・水・汚れのある場所の金属誘導形(Omron は影響をほとんど受けないと説明。金属の切粉は別問題)—

検出物体が金属でない、あるいは近接センサの検出距離では届かない位置から見たい、という場合は、光電センサが比較の対象になります。光電センサの方式の選び方と受入試験は光電センサの選定記事で解説しています。近接センサと光電センサのどちらを使うかは、検出物体の材質と、検出位置までの距離、周囲の環境(切削油、粉塵)で決まります。

タイの自動化投資の動向と、なぜ今か

タイでは自動化・ロボット関連の投資申請が続いています。BOI の数値はいずれも投資奨励の申請額で、実際の投資額や認可額ではありません。

指標値範囲・時点出典
BOI 投資奨励申請(全体)約1.47兆バーツ、1,299件、前年同期比+37%2026年1〜6月、申請ベースBOI プレスリリース No.117/2569
うち機械・自動化・ロボット部門約131億バーツ、82件同上同上
Smart and Sustainable Industry 施策(機械更新・デジタル化・自動化/ロボット導入)132件、約172億バーツ同上同上
日本からの FDI 申請約328億バーツ、123件同上同上
BOI 投資奨励申請(全体)1.87兆バーツ、3,370件2025年通年、申請ベースBOI プレスリリース No.124/2569
世界の産業用ロボット新規設置603,307台(+11%)世界、2025年IFR World Robotics 2026
アジアの新規設置457,315台(+14%、世界の新規設置の76%)アジア、2025年同上

BOI は2025年通年の実績を公表したプレスリリース(No.124/2569)で、戦略分野の一つに「Automation and Robotics」を挙げています。IFR によれば世界の産業用ロボットの2025年の稼働台数は 5,079,078台(+9%)で、2026年の世界の新規設置は 655,000台と予測されています。IFR の Executive Summary には、タイ単独の台数は記載されていません。

なぜ今、近接センサの選定を見直すのか

ロボットや自動化設備が増えると、ワークの在荷、原点、クランプの確認といった、近接センサを使う点数も増えます。ところが近接センサは「標準部品」として装置メーカーに任され、どの材質のワークに、どの距離で、どの出力形式で付けたかの根拠が工場側に残らないことがあります。日本製と欧州製の装置が混在する工場では、NPN と PNP、2線式と3線式の取り違えも起きます。新しい設備の RFP を書く段階で、センサの選定根拠を文書で受け取るようにしておけば、立ち上げ後の誤動作の調査や、予備品の管理が楽になります。

RFP に書く項目

近接センサを使う装置やユニットを発注する際に、RFP に書いておきたい項目を整理しました。中心にあるのは「どのワークに対して、どの条件の値で選んだか」を文書で出してもらうことです。

No.項目書く内容の例
1検出物体材質、めっきの有無と厚さ、板厚、大きさ(標準検出物体との比較)、進入方向(軸方向/横方向)
2設計距離の基準定格検出距離ではなく、設定距離(Omron)または Sa(欧州系データシート)を基準にしたか
3材質補正の根拠採用型式のデータシートの係数または特性図。一般の係数表ではないこと
4検出方式誘導形/静電容量形/磁気形、全金属形・非鉄形・Factor 1 の採用有無と理由
5取付条件シールド/非シールド、周囲金属・向かい合う金属・相互干渉の寸法(機種ごとの表に基づく)、許容締付トルク
6応答必要な検出回数(Hz)の計算と、カタログ応答周波数の測定条件との違いの説明
7出力と配線DC2線式なら漏れ電流・残留電圧と PLC 入力の照合、3線式なら NPN/PNP と入力ユニットの整合、NO/NC
8IO-Link使う場合は対応する出力形式と、取得するデータ(減衰値・距離値・稼働時間・内部温度・不安定出力など)
9環境IP 等級(規格名まで)、切削油の種類と耐油評価の条件、溶接(スパッタ・磁界)、温度範囲、ノイズ源
10電源シーケンス電源投入後に検出可能になるまでの時間(採用型式の値)と、PLC 側の処理
11ケーブル種類(耐油・溶接用など)、曲げ半径、固定方法、コネクタの有無
12保守点検項目、予備品の型式一覧(出力形式まで)、タイ国内での供給とサポート

特に3の「材質補正の根拠」と5の「取付条件」は、装置メーカーによって出せる詳しさが違います。最初から RFP に書いておけば、見積の段階で比べられます。

受入試験(FAT/SAT)の確認項目

受入試験では「反応した」ことだけでなく、余裕のある状態で反応しているかを、実ワークと実取付で確かめます。合否の数値基準は、採用型式のデータシートの値と自社の基準で決めて、事前に RFP と試験計画に書いておきます。

確認項目試験の方法合否基準の決め方
実ワークでの検出距離実際の材質・めっき・大きさのワークで、動作する距離と復帰する距離を測るデータシートの補正後の値と、自社で決めた余裕
取付位置の余裕取付距離と、実測の動作距離との差を記録する。LED の表示で余裕を示す機種なら、その状態も確認する自社で決めた余裕
横方向の進入搬送ワークが横から通る場合、実際の通過位置で検出を確認する仕様どおりか
応答実際の回転数・搬送速度で取りこぼしがないか、カウント値を照合する取りこぼしゼロなど自社で決める
周囲金属・相互干渉全センサを取り付けた状態で、隣のセンサやブラケットの影響で出力が不安定にならないか確認する不安定な出力がないこと
出力と配線2線式は OFF 時に負荷が確実に OFF するか、ON 時に確実に ON するか。3線式は NPN/PNP と入力ユニットの整合仕様どおりか
電源の投入・遮断電源投入直後と遮断時に誤った入力が出ないか仕様どおりか
締付と配線締付トルク、歯付き座金、ケーブルの曲げ半径と固定データシートの値
環境切削油・溶接・ノイズ源の近くで、実稼働の条件で運転する誤動作がないこと

FAT(工場出荷前試験)は装置メーカーの工場で、SAT(現地受入試験)はタイの自社工場で行います。ワークのロットやめっきの仕様、周囲の溶接機やインバータの有無は現地で変わるため、検出距離と誤動作の確認は SAT でも繰り返すのが確実です。

よくある質問

近接センサの選定で最初に確認することは?

検出物体です。材質(鉄か非鉄か、ステンレスの種類)、めっきの有無と厚さ、板厚、大きさを確認します。カタログの検出距離は厚さ1 mm の鉄板(標準検出物体)での値で、材質と大きさが違えば距離が変わるため、検出物体が決まらないと型式を選べません。

近接センサの検出距離はカタログ値どおりに使える?

そのままでは使いません。Omron は温度・電圧の影響を含めて安定して使える「設定距離」を定格検出距離の約70〜80%と定義し、設定距離に基づく取付を推奨しています。欧州系のデータシートには保証動作距離 Sa が書かれています。さらに材質・大きさ・取付条件で補正します。

アルミやステンレスは検出できる?

検出できますが、距離は短くなります。Contrinex DW-Ax-50x-065 のデータシートの係数では、アルミは鋼の0.26倍、ステンレス(V2A)は0.67倍です。係数はメーカーと型式で違うので、採用型式のデータシートで確認します。非鉄が多いなら、全金属形や Factor 1 のセンサも検討できます。

シールド形と非シールド形の違いは?

シールド形はコイルの側面が金属で覆われ、金属に埋め込んで取り付けられますが、検出距離は短くなります。非シールド形は距離が長い代わりに周囲金属の影響を受けやすく、周りに空きが要ります。Omron E2E NEXT の M18 では、シールド形 8 mm、非シールド形 16 mm です。

2線式と3線式はどちらを選ぶ?

配線の簡単さなら2線式、負荷側の余裕を重視するなら3線式です。2線式は OFF でも漏れ電流(Omron E2E NEXT DC2線式で 0.8 mA 以下)が流れ、ON でも残留電圧が残るので、PLC 入力や負荷の仕様と照合が要ります。P+F は3線式の漏れ電流を無視できるとしています。

NPN と PNP の違いは?タイの工場ではどちら?

P+F の説明では、NPN は負荷を出力と +UB の間に、PNP は出力と 0 V の間につなぎます。Omron は PNP 出力を主に欧州など海外向けの機械に組み込まれるものと説明しています。タイの工場での比率を示す資料はないため、装置ごとの PLC 入力ユニットに合わせて選びます。

近接センサの費用は?

型式、数量、ケーブルかコネクタか、IO-Link 対応か、耐油・溶接用などの耐環境仕様で変わるため、本記事では金額を扱いません。比較する際は、検出物体・距離の基準・出力形式・環境条件を RFP で固定してから見積を取ると、条件の違う見積を並べて比べる失敗を避けられます。

まとめ

  • 近接センサの選定は、カタログの検出距離ではなく、実ワークの材質・大きさ・取付条件で補正した安全側の距離で決まる
  • カタログの検出距離は厚さ1 mm の鉄板(標準検出物体)での値。Omron は設定距離(定格の約70〜80%)、欧州系データシートは Sa という別の書き方をする。どちらも同一視しない
  • 材質で距離は大きく縮む。Contrinex の一製品の係数では、銅は鋼の約18%。係数はメーカーで違い、ステンレスの目安は ifm と P+F の値で 4.48 mm と 5.44 mm に分かれる(本稿の試算)
  • 一般の係数表で設計せず、採用型式のデータシートの係数・特性図で確かめる。非鉄が多いなら全金属形・Factor 1 品も候補
  • シールド形と非シールド形で距離と周囲金属の扱いが違う。並べるなら相互干渉の間隔を確保する
  • 応答周波数は測定条件付きの値。必要な検出回数と比べるときは条件の違いを踏まえ、現物で確かめる
  • DC2線式は漏れ電流と残留電圧を PLC 入力・負荷と照合する。3線式は NPN/PNP を入力ユニットに合わせる。IO-Link は対応出力形式を確認する
  • IP 等級は規格名まで、切削油・溶接・ノイズ・締付トルク・ケーブルの条件を RFP に書き、FAT/SAT で実ワーク・実取付で確かめる

TOMAS TECH では、タイの日系製造業向けに、自動機・治具・搬送装置の制御設計と電気設計を支援しています。既存設備で起きているセンサ誤動作の原因調査や、センサの仕様整理、RFP の作成といった段階からでもご相談いただけます。お気軽にお問い合わせページからご連絡ください。

参考情報