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2026.08.09

生成AIコンサルティング2026|4つの型と費用5層の見分け方

生成AIコンサルティング2026|4つの型と費用5層の見分け方

「生成AI コンサルティングを頼むべきか」という問いから検討を始めると、まず間違いなく比較できない提案書が集まる。この言葉は中身のまったく違う4つの契約を1語で指しているからだ。診断だけを買う契約、線引きだけを買う契約、定着まで付き合ってもらう契約、動くものごと買う契約。成果物も期間も費用も、失敗の仕方も違う。本記事では正しい問いを「自分たちは何を買う契約を結ぼうとしているのか」に置き換え、タイの日系製造業の実数値で5年の損得まで詰める。

なぜ2026年に「生成AI コンサルティング」の相談が増えているのか

2026年に入ってから、タイ拠点の管理職から寄せられる相談の質が変わった。2024年から2025年にかけての相談は「生成AIとは何か」「うちでも使えるのか」という探索的なものが中心だった。2026年の相談はそうではない。「本社から今年中に業務適用しろと指示が来ている」「昨年PoCをやったが本番に上がらないまま止まっている」「使ってよい範囲を決めろと言われたが誰も決められない」という、すでに走り出した後の詰まりに関するものが大半を占める。

この変化には数字の裏付けがある。相談が増えているのは関心が高まったからではなく、導入が一段階進んだ結果として新しい種類の行き詰まりが一斉に発生しているからだ。順に見ていく。

導入率は上がった。止まっているのはその先である

Deloitte Thailand Digital Transformation Survey 2026(2026年8月報道)によると、タイ企業のAI実装率は 61% に達した。前年の 47% から大きく伸びている。過半数の企業が何らかの形でAIを業務に入れているという意味で、これは「検討フェーズは終わった」ことを示す数字である。

問題はその内訳だ。同じ調査で、全社展開まで到達した企業は 19% にとどまり、残る 81% は実験・パイロット段階で停滞している。つまり導入率61%という数字の実体は、「試してはいるが業務に組み込めていない」企業の集合である。この81%という数字が意味するのは、失敗の原因がツール選定ではないということだ。ツールが悪ければ導入率そのものが上がらない。上がったうえで止まっているのだから、詰まっているのは導入の後段——業務側の整備、定着、運用の部分にある。

障壁の内訳も同じ方向を指している。最大の障壁として挙がったのは技術人材・スキル不足で 71%、使えるユースケースを特定できないと答えた企業が 40% である。ユースケースを特定できないというのは、技術の問題ではなく自社業務の解像度の問題だ。そして成果側を見ると、AIが新規収益につながったと答えた企業は 9% にすぎない一方、コスト削減を実現した企業は 50% に達する。この非対称は重要で、生成AIは「売上を作る道具」としてはまだほとんど機能しておらず、「既存業務の時間を削る道具」としてなら半数が成果を出しているということである。稟議書で新規収益を約束する設計にした瞬間、9%の側に賭けることになる。

もう1つ、Deloitteの調査で見落とされがちな数字がある。AIを事業主導ではなくIT部門の責任として扱っている企業が約 70% ある。生成AIの成否は業務プロセスを変えられるかどうかで決まるのに、業務を変える権限を持たない部署に主管を置いている。この構造を放置したままコンサルティング契約を結ぶと、契約の相手はIT部門になり、成果物はIT部門で完結する報告書になる。

タイ拠点で起きているのは「本社は進んだ、現地は置いていかれた」

タイ拠点固有の事情として、本社と現地の進度差がある。日本本社は2024年から2025年にかけて全社ライセンスを契約し、社内規程を整備し、部門ごとの活用事例を集める段階まで来ている。一方タイ拠点では、個人が無償版を使って英文メールを直す程度の利用にとどまっているケースが圧倒的に多い。

ここで起きるのが「本社契約の水平展開」という発想である。本社が結んだ生成AIコンサルティング契約をタイにも適用すれば早い、という考え方だ。結論から言えば、これは効かない。理由は4つあり、後段で詳述するが、要点だけ先に置く。現場の言語がタイ語であること、業務プロセスが本社と違うこと、文書が紙と現地サーバに散っていること、そして制度が違うこと。この4つはいずれも「本社で作った成果物をそのまま持ってきても使えない」という形で効いてくる。

タイの中小企業側の動きも参考になる。UOB Business Outlook Study 2026(2026年6月)では、回答した 265 名のタイSME経営者のうち 7割超 がすでにAIを導入しており、導入企業のうち 58% がコスト削減を、44% が生産性向上を実感したと答えている。ローカル企業は待っていない。日系拠点が「本社の方針待ち」で1年止まる間に、同じ工業団地のタイ企業は見積回答の速度で差をつけてくる。

市場の数字は「支出」であって「成果」ではない

市場予測の数字は提案書でよく引かれるが、読み方を間違えると判断を誤る。Gartnerは2026年の世界AI支出を 2.59兆ドル、成長率 47% と予測している(2026年5月19日プレスリリース)。世界IT支出全体は 6.15兆ドル に達し、ITサービスは 1.866兆ドル、成長率 8.7% の見通しである(2026年2月報道)。生成AIモデルへの支出成長率は 80.8% と突出している。

これらはすべて「支出」の数字である。「成果」の数字ではない。市場が伸びていることは、自社の投資が回収できることを何ひとつ保証しない。むしろ支出が急増している局面では、供給側の人材が薄まり、経験の浅いコンサルタントが高い単価で現場に入ってくる確率が上がる。

成果側の数字として最も冷静なのはMIT Project NANDA(2025年7月)の調査で、生成AIパイロットの 95% がP&Lに測定可能な影響を出していないと報告している。Deloitteの81%が「本番に上がらない」を示す数字だとすれば、MITの95%は「本番に上がっても損益に効いていない」を示す数字である。この2つを並べると、生成AI投資の実態が見える。始めた企業のうち本番に届くのが2割弱、そのうち損益に効くのがさらに一部。提案書に市場成長率を書く会社ではなく、この2つの数字を前提に設計を組み立てる会社を選ぶべきである。

生成AIコンサルティングは4つの型に分かれる

ここが本記事の中核である。見積依頼の段階で「生成AIの導入を支援してほしい」と投げると、返ってくる提案書は横に並べても比較できない。A社は4週間で 400,000 バーツの診断を提案し、B社は9ヶ月で 3,000,000 バーツの実装を提案する。両方とも「生成AIコンサルティング」の見積である。安いほうを選べば診断書だけが手元に残り、高いほうを選べば動くものは手に入るが対象業務の選定を誤っている可能性が残る。

契約を先に4つの型に分解し、自社が今どれを買うべきかを決めてから見積を依頼する。それだけで提案書は比較可能になる。

何を買う契約か主な成果物期間費用の目安(バーツ)
型A アセスメント型現状診断と対象業務の選定業務棚卸し表、ユースケース評価、優先順位4〜6週150,000〜400,000
型B ガバナンス型使ってよい範囲の線引き利用規程、審査フロー、ログ方針、教育資料6〜10週250,000〜600,000
型C 伴走型定着するまでの運用支援評価データ、月次改善、社内推進役の育成6〜12ヶ月60,000〜150,000/月
型D 実装込み型動くものと運用実装、連携、テスト、引き継ぎ3〜9ヶ月800,000〜3,000,000
生成AIコンサルティング2026|4つの型と費用5層の見分け方 - figure 1

型A アセスメント型 — 何から手を付けるか決める契約

型Aで買うのは判断材料である。業務を棚卸しし、生成AIが効く業務と効かない業務を選り分け、優先順位を付けて返す。期間は4〜6週、費用は 150,000〜400,000 バーツが目安になる。

型Aが有効なのは、Deloitteが指摘した「使えるユースケースを特定できない」 40% の側にいる企業である。社内で候補がいくつも出てしまい、どれから手を付けるか決められない状態は、意思決定の問題であって技術の問題ではない。外部の目で優先順位を付けてもらう価値がある。

一方、型Aの典型的な失敗は「診断書で終わる」ことだ。棚卸し表とユースケース評価が納品され、報告会が開かれ、そこで止まる。これを避けるには、契約時に成果物の定義へ「次の90日で着手する業務を1つに絞り込んだ結論」を明示的に含めることだ。候補を5つ並べた優先順位表ではなく、1つに絞った結論を求める。絞れない診断は診断ではない。

型B ガバナンス型 — 使ってよい範囲を決める契約

型Bで買うのはルールである。生成AIの利用規程、入力してよい情報とよくない情報の線引き、例外を通す審査フロー、ログの取得方針、従業員向けの教育資料。期間は6〜10週、費用は 250,000〜600,000 バーツが目安になる。

タイ拠点で型Bの需要が高いのは、本社の利用規程がそのまま使えないからだ。本社規程は日本の個人情報保護法と本社のIT環境を前提に書かれている。タイではPDPAが効き、業務で扱う文書の多くがタイ語で、現場が使う端末の管理状況も本社とは違う。翻訳しただけの規程は、現場から見ると「何をしてよいか読み取れない文書」になり、結果として誰も読まないまま個人の判断で使われる。

型B単独で契約する場合の注意点は、規程だけ先に作ると現場が萎縮することである。禁止事項の一覧が配られ、使ってよい範囲が曖昧なまま残ると、安全側に倒れて誰も使わなくなる。規程は使わせるために作るものだ。実務では、生成AI利用規程の作り方で整理したように、禁止の列挙ではなく「この業務ではここまでやってよい」という許可の記述を先に置く構成が機能する。

型C 伴走型 — 定着するまで付き合ってもらう契約

型Cで買うのは時間である。月額 60,000〜150,000 バーツで6〜12ヶ月、評価データの整備、月次の精度確認と改善、社内推進役の育成に付き合ってもらう。

Deloitteの 81% が実験段階で止まっているという事実、MITの 95% が損益に効いていないという事実は、どちらも「入れた後」に発生している。したがって定着に効く契約は型Cである。にもかかわらず型Cは稟議が最も通りにくい。成果物が「実装」や「規程」のような形のあるものではなく、月次の改善という継続的な活動だからだ。

型Cを稟議に通すには、月次の成果物を具体的に定義する必要がある。評価データの問題数、精度の測定結果、改善したプロンプトの本数、社内推進役が単独でできるようになった作業の範囲。この4つを月次レポートの必須項目として契約に書く。「伴走します」という記述だけで契約すると、月次の定例会が近況報告の場に変質し、半年後に何が変わったか説明できなくなる。

型D 実装込み型 — 動くものごと買う契約

型Dで買うのは動くシステムである。実装、既存システムとの連携、テスト、引き継ぎまで含めて3〜9ヶ月、費用は 800,000〜3,000,000 バーツと幅が大きい。

この幅の広さ自体が判断材料になる。800,000 バーツと 3,000,000 バーツの差は、多くの場合「既存システムとどこまで連携するか」で決まる。生成AIツール単体を設定して社内文書を検索できるようにするだけなら下限側に寄る。基幹システムやPLMから仕様情報を引き、過去見積のデータベースを参照し、回答の下書きを既存の見積フォーマットに流し込むところまでやると上限側に寄る。見積の内訳で連携先システムの本数が明示されていない提案書は、後から追加費用が出る。

型Dを選ぶ前に確認すべきは、対象業務が本当に1つに絞れているかである。絞れないまま型Dに入ると、後述するシナリオAの経路をたどる。

コンサル会社・AI開発会社・SIerの分界はどこか

4つの型は、供給側の会社の種類ともおおまかに対応する。戦略系・業務系のコンサル会社は型Aと型Bを得意とし、型Dの実装は外部に出す。AI開発会社は型Dが本業で、型Aの診断は簡易的なものにとどまることが多い。SIerは型Dのうち既存システム連携の比重が高い案件に強く、型Cの運用まで受けられる会社が多い。

どこに頼むかを先に決めるのではなく、どの型を買うかを先に決める。型が決まれば適した供給側は自然に絞れる。会社の種類ごとの見極め方はAI開発会社の選び方で詳しく整理しているので、相見積もりの前に目を通しておくとよい。

費用を5層に分解する

費用の話を「1社いくら」で比べても意味がない。同じ金額でも中身の配分が違えば、成果はまったく別のものになる。ここでは12ヶ月の契約費用を5つの層に分解し、対象業務を広げた場合(シナリオA)と1業務に絞った場合(シナリオB)を並べる。

モデル企業はタイ・チョンブリの日系機械部品メーカーとする。タイ拠点の従業員 320 名、日本人駐在 6 名。本社は生成AIを全社導入済みだが、現地は個人が無償版を使う程度。社内人時単価は 450 バーツ/時。対象業務は引合対応(見積回答)で、月間引合 180 件、1件あたり社内の情報収集・過去見積検索・仕様確認に平均 95 分かかり、うち文書検索と転記が 40 分を占める。

まず、5業務に同時着手するシナリオAである。

内容費用構成比
第1層 アセスメント現状診断、業務棚卸し、ユースケース選定280,00010.0%
第2層 業務側の整備対象業務の文書・データ・用語の整備820,00029.3%
第3層 実装とPoCツール設定、既存システム連携、評価640,00022.9%
第4層 教育と定着研修、プロンプト整備、運用ルール、規程480,00017.1%
第5層 運用と改善月次の評価と改善、ガバナンス運用580,00020.7%
合計2,800,000100%

2年目以降の年間運用費(第5層相当)は 580,000 バーツである。

次に、引合対応の1業務だけに絞るシナリオB。

内容費用構成比
第1層 アセスメント対象業務を1つに絞る診断120,00012.0%
第2層 業務側の整備過去見積と仕様書の整理、用語統一280,00028.0%
第3層 実装とPoC検索と下書き生成、評価データ30問220,00022.0%
第4層 教育と定着営業技術5名への実務研修、運用ルール160,00016.0%
第5層 運用と改善月次の精度確認と改善220,00022.0%
合計1,000,000100%
生成AIコンサルティング2026|4つの型と費用5層の見分け方 - figure 2

2年目以降の年間運用費(第5層相当)は 220,000 バーツ。

2つの表を並べて最初に気づくべきは、構成比がほとんど変わらないことである。総額は 2,800,000 バーツと 1,000,000 バーツで大きな開きがあるのに、各層の構成比は2ポイント以内に収まっている。これが意味するのは、規模を変えても費用の「かたち」は変わらないということだ。つまり総額の大小は、やることの質ではなく、対象業務の本数で決まっている。

第2層が最大になる理由

両シナリオとも、最大の層は第2層「業務側の整備」である。シナリオAで 29.3%、シナリオBで 28.0% を占める。実装(第3層)よりも大きい。

多くの稟議書はここを見落とす。生成AI導入の費用と聞くとツールのライセンス費と実装費を想像するが、実際に最も金がかかるのは、生成AIに読ませる自社文書を読める状態にする作業である。引合対応の例で言えば、過去見積が担当者ごとのフォルダに分散し、ファイル名の命名規則がなく、同じ部品が図面上とERP上で違う呼び方をされている。この状態で検索させても、返ってくるのは的外れな過去見積である。

第2層はコンサルタントが単独では終わらせられない層でもある。どの用語とどの用語が同じものを指すかを判定できるのは社内の人間だけだからだ。したがって第2層の見積が総額の1割程度しか計上されていない提案書は、この作業を発注側が無償でやる前提になっている。契約前に、第2層で発注側が投入する工数を人日で確認しておく。ここを曖昧にしたまま契約すると、プロジェクトの中盤で現場の残業が増え、生成AI導入そのものへの反感が生まれる。

日本の相場をタイにそのまま持ち込まない

参考として、日本国内の生成AIコンサルティングの費用相場を挙げる。月額顧問型が 100,000〜300,000円/月、プロジェクト型が 500,000〜2,000,000円、PoCが 400,000〜10,000,000円という水準である。

この数字はバーツへ換算しないでほしい。換算した瞬間に判断を誤る。理由は3つある。第1に、タイでの実施には日本にはないタスクが加わる。タイ語文書の扱い、現地スタッフ向けのタイ語での研修、日タイ両言語での用語統一。第2に、逆に日本より薄く済む部分もある。拠点の規模が小さく対象部門数が限られるため、全社横断の合意形成コストは小さい。第3に、供給側の構成が違う。タイでは日本語・タイ語・英語の3言語で製造現場の業務を理解できる人材が限られており、その希少性が単価に乗る。

したがって日本の相場は「日本本社と費用感を議論するときの共通言語」としてのみ使う。タイでの予算そのものは、上の5層モデルで組む。本社に説明する際は、「日本の相場に対して安い/高い」ではなく、「5層のうちどこにいくら使うか」で説明したほうが通りやすい。

稟議書にどう書くか

稟議書で費用を1行の総額として書くと、決裁者は総額の大小だけで判断する。5層で書くと、議論が「どの層を削るか」に移る。この違いは大きい。

推奨する書き方は、第1層から第5層までの金額と、各層で何が手に入るかを1行ずつ書き、そのうえで「第2層は自社工数を含む」ことを明記する形式である。そして初年度の便益は立ち上げ期間があるため満額では立たないことを先に書く。後述するモデルでは初年度の便益を 50% として 324,436 バーツで計算している。初年度から満額の便益を書いた稟議書は、1年後に説明できなくなる。

ROIの立て方そのものについてはAI導入の効果測定とROI設計に測定指標の設計手順をまとめてある。稟議を書く前に測定方法を決めておくのが順序である。

契約の大きさは成果と関係がない

ここが本記事で最も伝えたい部分である。シナリオAとシナリオBを5年で並べると、符号が逆転する。

項目シナリオA(全社一括)シナリオB(絞り込み)
初期(12ヶ月契約)2,800,0001,000,000
2〜5年目の運用(年額 × 4年)2,320,000880,000
5年総費用5,120,0001,880,000
5年総便益(初年度50%)2,919,9242,919,924
5年ROI-43.0%+55.3%
回収年数回収しない約2.6年

5年総便益が両シナリオで同じ 2,919,924 バーツになっている点に注目してほしい。誤植ではない。この記事のモデルでは、5業務に同時着手しても、1業務に絞っても、5年間で得られる便益は同額になる。理由は後述する。

結果として、5年ROIはシナリオAが -43.0%、シナリオBが +55.3% となる。プラスとマイナスが入れ替わる。シナリオAは5年かけても回収しない。シナリオBは約 2.6 年で回収する。

自社に不利な結論も含めて正直に書くと、TOMAS TECHのような供給側にとって望ましいのは金額の大きいシナリオAである。それでもシナリオAを勧めない。5年後に回収していない案件は、次の契約につながらないからだ。

便益3本柱の作り方

便益の内訳を開く。3本柱で構成し、それぞれに効果実現率 70% を掛ける。掛ける前と後の両方を示す。

便益算出実現率適用前実現率70%適用後
労務削減文書検索と転記が 40分 → 16分(1件 24分削減)。180件 × 24分 = 4,320分 = 72時間/月。72 × 450 = 32,400/月388,800272,160
失注回避年間引合 2,160 件、平均受注単価 158,000、粗利率 18% → 1件あたり粗利 28,440。回答遅延起因の失注 42 件のうち 14 件を回収398,160278,712
立ち上がり短縮新任の立ち上がり 6ヶ月 → 4ヶ月。年 2 名 × 2ヶ月 × 月あたり生産性差 35,000140,00098,000
年間合計648,872

3本柱の設計思想を説明する。

労務削減は最も測りやすいが、最も過大に見積もられやすい。1件95分の作業のうち、生成AIが効くのは文書検索と転記の 40 分だけである。仕様の妥当性判断も、原価の見立ても、客先の事情を踏まえた条件設定も残る。だから95分が半分になるとは書かない。40分が 16 分になる、つまり1件 24 分の削減とする。月 180 件で 4,320 分、72 時間。人時単価 450 バーツを掛けて月 32,400 バーツ、年 388,800 バーツになる。ここに実現率70%を掛けて 272,160 バーツ。この「削減対象を作業の一部に限定する」規律が、稟議の信頼性を決める。

失注回避は金額が大きく出るぶん、根拠を厳しく置く必要がある。年間引合 2,160 件、平均受注単価 158,000 バーツ、粗利率 18% で1件あたりの粗利は 28,440 バーツ。回答遅延を理由に失った案件が年 42 件あるとして、そのうち 14 件、つまり3分の1だけを回収対象とする。全部取り返せるとは書かない。回答が速くなっても、価格で負ける案件と技術要件で負ける案件は残るからだ。結果 398,160 バーツ、実現率適用後で 278,712 バーツ。

立ち上がり短縮は最も見落とされる便益である。新任の営業技術が独力で見積を回せるようになるまで 6 ヶ月かかっていたものが、過去見積を自然文で検索できることで 4 ヶ月に縮む。年 2 名の採用、短縮 2 ヶ月、月あたりの生産性差 35,000 バーツで年 140,000 バーツ、実現率適用後 98,000 バーツ。タイ拠点は人の入れ替わりが日本本社より速い。この便益は年を追うごとに効いてくる。

3本合計で年間 648,872 バーツ。初年度は立ち上げ期間があるため50%とし 324,436 バーツで計算する。実現率70%という係数は保守的に見えるかもしれないが、MITの 95% という数字を前提に置けば、むしろ楽観的な部類である。

なぜ広げても便益が増えないのか

5業務に同時着手したシナリオAでも、便益が1業務分の 2,919,924 バーツにとどまる理由を説明する。ここが本記事の要である。

対象業務を5つに広げると、5つとも同じ段階を通る必要がある。文書とデータの整備、用語の統一、評価データの作成、現場への研修、運用ルールの合意。このうち費用で買えるのは前半だけである。後半の「現場が実際に使い続ける」部分は、業務ごとに担当部署が違い、それぞれの部署が自分たちの都合で動く。

12ヶ月の契約期間に、5つの部署が並行して業務のやり方を変えることは起きない。実際に起きるのは、最も切迫している1部署だけが本気で取り組み、残りの4部署は研修に出席して、月次会議で「まだ試している段階です」と報告する状態である。これがDeloitteの言う 81% の実態であり、MITの 95% の実態でもある。パイロットは走っている。ただし損益には効いていない。

結果として、5業務に広げたときに増えるのは費用だけになる。第2層の整備費用は5業務分かかり、第3層の実装も5業務分かかり、第5層の運用費も5業務分の年 580,000 バーツになる。しかし定着するのは1業務なので、便益は1業務分しか立たない。5年で見れば費用だけが 5,120,000 バーツまで膨らみ、便益は 2,919,924 バーツで止まる。差し引き ROI -43.0% である。

この構造を理解すると、提案書の読み方が変わる。「全社横断で5つの業務に一括適用」という提案は、規模が大きいから良いのではない。定着させる力が5倍必要になるという意味であり、その5倍を誰が供給するのかが書かれていなければ、費用だけが5倍になる提案である。PoCが本番に上がらない構造についてはAIエージェント導入がPoC止まりになる理由でも同じ論点を扱っている。

タイ拠点で本社主導の契約が効かない4つの理由

本社が結んだ生成AIコンサルティング契約を、そのままタイ拠点に展開する。合理的に見えるこの判断が機能しない理由を4つに分けて説明する。

理由1 現場の言語がタイ語である

タイ拠点で見積回答に関わる文書——図面の注記、社内の仕様確認メモ、購買との調整記録、過去のクレーム対応記録——の大半はタイ語で書かれている。日本人駐在 6 名に対して従業員 320 名という構成では、日本語で書かれた文書は駐在員が関わった部分だけである。

本社の生成AI活用設計は、社内文書が日本語で統一されていることを前提にしている。プロンプトのテンプレートも、評価の基準も、研修資料も日本語である。これをタイに持ち込むと、翻訳したテンプレートで日本語の設計思想を回すことになり、タイ語文書の検索精度が上がらない。

対処は、評価データをタイ語で作ることである。後述するフェーズ1で作る 30 問の評価データは、実際に現場が使う言語で、実際に現場が投げる聞き方で作る。ここを日本語で作って後からタイ語に翻訳すると、翻訳された「きれいなタイ語」で評価が通り、現場が実際に使う口語のタイ語では通らない、という状態になる。

理由2 業務プロセスが本社と違う

同じ「引合対応」でも、本社とタイ拠点では手順が違う。本社は営業と技術と原価管理が分業しており、それぞれのシステムに情報が入っている。タイ拠点では営業技術の少人数が見積の全工程を担い、原価は表計算で管理し、判断の一部は駐在員の経験に依存している。

本社で「原価管理システムから自動で引く」設計になっている部分が、タイでは「担当者が過去の似た案件を思い出して表計算を開く」工程になっている。この差を埋めずに本社設計を持ち込むと、連携先のシステムが存在しないという理由で実装が止まる。

したがってタイ拠点では、業務プロセスの現況を先に棚卸しする型Aの工程を省略できない。本社が診断済みだから不要、という判断が最も危険である。

理由3 文書が紙と現地サーバに散っている

タイの製造拠点では、承認済みの図面や検査記録が紙で保管されていることがまだ多い。電子化されている文書も、部門ごとのファイルサーバ、個人のPC、共有ドライブ、チャットの添付ファイルに分散している。

生成AIに社内文書を検索させるには、対象文書がどこにあるかを確定させ、アクセス権を整理し、重複と旧版を取り除く必要がある。この作業が第2層「業務側の整備」であり、シナリオBでも 280,000 バーツ、総額の 28.0% を占める。本社ではSharePointに集約済みでこの作業がほぼ不要だったとしても、タイでは丸ごと発生する。

本社契約の水平展開が費用面で成り立たないのは、主にこの層の見積が欠けるからである。本社の単価表をそのまま使うと、タイで最も金と工数がかかる層が計上されない。

理由4 制度が違う — タイのAI法は成立していない

生成AIコンサルティング2026|4つの型と費用5層の見分け方 - figure 3

ここは誤情報が出回っているので、はっきり書く。タイのAI法は2026年8月時点で成立していない。 ETDA(電子取引開発機構)が Draft Principles of AI Law を精緻化している段階であり、成立までは2〜3年かかる見込みである。これはBaker & McKenzie「Thailand: 2026 AI Regulatory Landscape for Businesses」(2026年3月)の整理に基づく。

インターネット上には「タイAI法が2026年3月1日に施行された」と書いた二次記事が複数存在する。これは 2026年3月に施行されたベトナムのAI法との取り違え である。ベトナムは施行済み、タイは草案段階。この2つを混同したまま社内規程を作ると、存在しない義務に対応するための工数を使い、実際に効いている規制を見落とすことになる。

タイで現に効いているのはPDPA(個人情報保護法)と、金融・医療などの分野別規制である。したがって生成AIの社内規程は、AI法対応ではなくPDPA対応を土台に組む。具体的には、生成AIに入力してよい個人データの範囲、外部サービスへのデータ送信に関する同意の扱い、ログの保管期間と開示請求への対応。この3点を先に決めれば、将来AI法が成立したときの追加対応も上に載せられる。

提案書に「タイAI法対応」という項目が入っている場合は、根拠条文を確認してほしい。示せなければ、その会社はタイの制度を調べていない。制度対応を含む規程整備の進め方は生成AI利用規程の作り方にまとめてある。

契約前に必ず確認する10の質問

見積依頼と提案書の読み合わせの段階で、以下の 10 問をそのまま投げる。答えられない項目がある会社を排除するのではなく、答えの中身で比較するために使う。

質問1 この契約は4つの型のどれですか。 型A・B・C・Dのどれに当たるか、複合なら各型の比率を金額で示してもらう。ここで曖昧な回答が返る提案書は、後で成果物の解釈が食い違う。

質問2 対象業務はいくつですか。 1つに絞れているか、複数なら定着させる順序と、それぞれの定着判定基準が示されているか。

質問3 第2層の業務側整備に、発注側の工数は何人日必要ですか。 人日で答えられない提案書は、この工数を無償で当てにしている。

質問4 評価データは何問作りますか。誰が作りますか。 評価の設計が契約に入っていない案件は、成果を測れないまま終わる。

質問5 タイ語の業務文書をどう扱いますか。 翻訳して扱うのか、タイ語のまま扱うのか。翻訳するなら誰が品質を確認するのか。

質問6 既存システムとの連携は何本ですか。 連携先の名前と本数を明示してもらう。追加費用の最大の発生源である。

質問7 12ヶ月目に何が手元に残りますか。 動くもの、規程、育った人。この3つのうちどれが残るのかを言語化してもらう。

質問8 内製化の引き継ぎはどの範囲ですか。 運用の何をこちらでできるようにするのか。出口設計は契約時に決める。

質問9 タイの制度対応はどの法令に基づきますか。 PDPAと答えるのが正解である。「タイAI法」と答えたら根拠を確認する。

質問10 この契約で回収できないケースはどういう場合ですか。 自社に不利な条件を提示できる会社は、リスクを把握している。回収できないケースが「ない」と答える会社は信用しない。

よくある失敗パターン6つ

失敗1 型を決めずに相見積もりを取る。 診断だけの見積と実装込みの見積が並び、金額の差だけで判断してしまう。最も頻度が高い失敗である。

失敗2 本社契約をそのまま水平展開する。 前章の4つの理由により、第2層の費用が計上されないまま契約が始まり、途中で追加予算の稟議が必要になる。

失敗3 対象業務を絞らない。 5業務に広げても定着は1業務。増えるのは費用だけで、5年ROIは -43.0% になる。

失敗4 評価データを作らずに始める。 精度が良いか悪いかを議論する共通の物差しがないため、月次会議が印象論になる。3ヶ月後に「なんとなく使えない」で止まる。

失敗5 IT部門を主管にする。 Deloitteが指摘した約 70% の企業がこの構造にある。業務を変える権限のない部署が主管になると、成果物はIT部門で完結する。

失敗6 初年度から満額の便益で稟議を書く。 立ち上げ期間を織り込まず年 648,872 バーツで書くと、1年目の実績が 324,436 バーツ相当にとどまった時点で「効果が出ていない」と判断され、2年目の予算が切られる。最も惜しい失敗である。

90日で立ち上げる進め方

シナリオBの経路を、最初の 90 日に落とす。この期間で目指すのは全社展開ではない。1業務で「動いていて、測れていて、現場が使い続けている」状態を作ることである。

フェーズ0(第1〜2週)対象業務を1つに決める

候補を並べ、1つに絞る。絞り込みの基準は3つ。件数が多いこと、作業時間の内訳が測れること、成果が金額で言えること。引合対応を選んだのは、月 180 件という件数があり、1件 95 分のうち 40 分が文書検索と転記だと分解でき、失注が粗利 28,440 バーツで換算できるからである。

この2週間で、対象業務の現況を時間の内訳まで測る。測っていない業務は改善しても改善したことを証明できない。

フェーズ1(第3〜6週)評価データ30問を先に作る

実装より先に評価データを作る。30 問である。実際に営業技術が投げる質問を、実際の言い回しで 30 問集め、それぞれに「正しい回答はこれ」という模範解答を社内で確定させる。

順序を逆にしてはいけない。先に実装すると、その実装が出す答えを基準に評価が作られ、評価が形骸化する。先に評価を作ると、実装の良し悪しが客観的に判定できる。この30問は、ツールを乗り換えるときにもそのまま使える資産になる。

このフェーズが最もつらい。模範解答を確定させる過程で、社内で答えが割れる質問が必ず出るからだ。ただしその「答えが割れる」こと自体が、生成AI以前の問題として拾えた成果である。

フェーズ2(第7〜10週)実装と運用ルール

対象文書を投入し、検索と下書き生成を動かす。同時に運用ルールを決める。誰が使ってよいか、何を入力してはいけないか、生成された下書きを誰が承認するか。PDPAを土台にした線引きをここで確定させる。

実装と運用ルールを同じフェーズに置くのは意図的である。ルールを先に作ると使われないものになり、後から作ると事故が起きてから作ることになる。動くものを見ながらルールを決めるのが最も速い。

フェーズ3(第11〜13週)限定公開と改善の回転

営業技術 5 名に限定して公開する。全社公開はしない。5名に絞る理由は、毎日使ってもらい、うまくいかなかった事例を即座に回収するためである。全社に配ると、使われなかった理由が回収できない。

この3週間で、30問の評価データを再測定し、改善したプロンプトと追加した文書を記録する。90日目に報告するのは「導入しました」ではなく、「30問の評価で正答が何問に増え、1件あたりの作業時間が何分縮んだか」である。ここまで来て初めて、2つ目の業務に広げる判断材料が揃う。

出口設計 — 内製化にどう引き継ぐか

生成AIコンサルティング契約で最も設計されないのが出口である。契約が終わった後、誰が運用するのか。ここを決めずに始めると、契約終了と同時に運用が止まるか、または終わらせられずに月額が続く。

引き継ぐべきものは4つある。評価データの更新作業、対象文書の追加と旧版の除去、プロンプトと運用ルールの改訂、そして精度が落ちたときの一次切り分け。この4つを社内で回せるようになれば、外部契約は縮小できる。

引き継ぎ先は、IT部門ではなく対象業務の部署に置く。理由は単純で、評価データの模範解答を判定できるのは業務を知っている人だけだからである。IT部門が担うのはアクセス権とログの管理までとし、精度の管理は業務側が持つ。前述したDeloitteの約 70% という数字——AIをIT部門の責任として扱っている企業の割合——は、この配置を誤っている企業がそれだけ多いことを示している。

出口の時期は契約時に決める。型Cの伴走契約なら、6〜12ヶ月のうち後半3ヶ月を「社内推進役が主担当、外部は確認のみ」の期間として契約に書き込む。この記述がない伴走契約は、期限のない月額契約に変質しやすい。内製化の段取りと、外部支援をどこまで残すかの判断軸はAI内製化支援の進め方で整理している。

正直に言えば、出口設計を明記すると供給側の売上は減る。それでも書くべきである。出口のない契約は、3年目に「何に払っているのか分からない」という理由で唐突に打ち切られる。段階的に縮小する設計のほうが、結果として関係は長く続く。

生成AIコンサルティングに関するよくある質問

生成AIコンサルティングの費用はいくらですか

買う型によって桁が変わる。型A(アセスメント)が 150,000〜400,000 バーツ、型B(ガバナンス)が 250,000〜600,000 バーツ、型C(伴走)が月 60,000〜150,000 バーツ、型D(実装込み)が 800,000〜3,000,000 バーツである。日本国内の相場は月額顧問型 100,000〜300,000円/月、プロジェクト型 500,000〜2,000,000円、PoC 400,000〜10,000,000円だが、これをバーツに換算してタイの予算にしてはいけない。タイではタイ語文書の整備という日本にない工程が加わり、逆に拠点規模が小さいぶん合意形成の工数は小さい。5層モデルで積み上げるのが正しい。

AI PoC はどこまでやれば十分ですか

評価データ 30 問で正答率を測り、対象業務の作業時間が実測で縮んだことを確認できた時点で十分である。逆に言えば、それが確認できていないPoCは、何ヶ月やっても十分にならない。MIT Project NANDA(2025年7月)が生成AIパイロットの 95% はP&Lに測定可能な影響を出していないと報告しているのは、多くのPoCが「動いた」ところで止まり、時間や金額で測る段階に進んでいないからである。PoCの合格条件を契約時に数値で書いておくこと。

オーダーメイドAIと既製ツール、どちらを先に検討すべきですか

既製ツールが先である。理由は、対象業務が本当に絞れているかを検証するのに既製ツールで足りるからだ。既製ツールで評価データ30問の正答が伸びない場合、原因はツールではなく第2層の文書整備にあることが多い。その状態でオーダーメイドの開発に進むと、整備されていない文書を高価な仕組みで検索することになる。オーダーメイドが必要になるのは、既存システムとの連携本数が増えたときと、業務固有の判断ロジックを組み込む必要が出たときである。

生成AIを導入した企業の事例はどう読めばよいですか

3点を確認する。第1に、対象業務が何本か。5業務同時と書いてある事例は、定着したのがそのうち何本かを確認する。第2に、便益に効果実現率が掛かっているか。本記事では 70% を掛け、初年度は 50% としている。掛けていない事例の数字は上限値である。第3に、費用に業務側整備(第2層)が含まれているか。ここが含まれない事例の総額は、実際にかかる金額の7割程度しか表していない。

コンサル会社とAI開発会社は何が違いますか

得意な型が違う。コンサル会社は型Aと型Bが本業で、対象業務の選定とルール整備に強い。AI開発会社は型Dが本業で、動くものを作ることに強い。SIerは型Dのうち既存システム連携の比重が高い案件と、型Cの運用支援を合わせて受けられる会社が多い。会社の種類で選ぶのではなく、自社が今どの型を買うべきかを決めてから、その型を本業にしている会社に依頼する。

タイのAI法に対応する必要はありますか

2026年8月時点で対応すべきタイのAI法は存在しない。ETDAが Draft Principles of AI Law を精緻化している段階で、成立まで2〜3年の見込みである(Baker & McKenzie, 2026年3月)。「タイAI法が2026年3月1日に施行された」とする記事があるが、これは2026年3月に施行されたベトナムのAI法との取り違えである。タイで現に効いているのはPDPAと分野別規制なので、社内規程はPDPAを土台に作る。

まとめ

生成AIコンサルティングを検討する際、最初に決めるべきは依頼先ではなく、買う契約の型である。型A(診断)、型B(線引き)、型C(定着)、型D(実装)は、成果物も期間も費用も失敗の仕方も違う。型を決めずに相見積もりを取ると、比較できない提案書が並ぶ。

費用は5層で分解する。最大の層は実装ではなく第2層の業務側整備で、シナリオAで 29.3%、シナリオBで 28.0% を占める。ここに発注側の工数が何人日必要かを契約前に確定させる。

そして最も重要な結論は、契約の大きさは成果と関係がないことである。5業務に同時着手する 2,800,000 バーツの契約も、1業務に絞る 1,000,000 バーツの契約も、5年便益は同じ 2,919,924 バーツになる。定着するのは結局1業務だからだ。結果、5年ROIは絞り込み型が +55.3%、全社一括型が -43.0% と符号ごと逆転し、全社一括型は5年かけても回収しない。

タイ拠点では、本社が結んだ契約がそのままでは効かない。現場の言語がタイ語であること、業務プロセスが本社と違うこと、文書が紙と現地サーバに散っていること、制度が違うこと。制度については、タイのAI法が未成立であることを正しく把握し、PDPAを土台に規程を組むのが順序である。

最初の 90 日でやることは1つ。対象業務を1つに決め、評価データ 30 問を先に作り、営業技術 5 名で回して測る。それだけである。

TOMAS TECHはタイの日系製造業向けに、PEGASUS生産管理・エネルギー管理システムとFA・制御・IoTの導入を手がけており、その延長で生成AI活用の対象業務選定から評価設計、現地での定着までを支援している。まだ型を決めかねている段階でも、自社の業務でどの層に費用がかかるのかを一緒に整理するところから相談を受けている。5層モデルのどこが自社に当てはまるかを確認したい、あるいは受け取った提案書の読み方を第三者の目で見てほしい、といった相談でも構わない。問い合わせは https://tomastc.com/contact/ から受け付けている。

参考情報