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2026.10.26

工場の電力監視に使うCT変流器の選定|電力計との適合・負担VA・FAT/SAT

工場の電力監視に使うCT変流器の選定|電力計との適合・負担VA・FAT/SAT

工場の電力監視でCT変流器を選ぶとき、「主幹が何Aだから同じ定格のCTを買う」だけでは足りません。電力計が受ける二次信号、実際の低負荷電流、CTから計器までの往復配線、盤内の取り付け寸法、そして安全に交換できる端子まで一つの測定回路として設計します。ここを曖昧にしたまま調達すると、表示値は出ているのに夜間の小さい電力がずれる、三相の一相だけ負値になる、計器交換時にCT二次側を安全に扱えない、といった問題が残ります。本稿はタイ工場で電力計とCTを新規導入・増設する設備、保全、調達担当者に向け、見積依頼書からFAT・SATまで使える選定手順を示します。

最初に測定目的と測定点を決める

CTの選定は、機器のカタログを開く前に「何を判断するための電流か」を書くところから始まります。受電点の月間kWhと請求額を突き合わせたいのか、コンプレッサーの待機電力を見たいのか、ライン別原単位を計算したいのかでは、必要な低負荷精度も時間分解能も異なります。受電点では通常運転の大電流と停電復帰時の変動を含め、設備枝回路では停止・待機・立ち上げ時の小電流を含めて、実測の範囲を取ります。契約値や遮断器の銘板は上限を考える材料ですが、普段流れる電流の代用ではありません。

測定点表には少なくとも盤名、回路名、単線結線図番号、電源方式、相数、測定目的、通常の最小・最大電流、ピーク電流とその継続時間、導体形状、盤内余裕、計器までの配線長、既設計器や通信口を記録します。電力量だけでよければ既設計器のパルスや通信を活用できる場合もあります。新設CTが本当に必要かは、工場の電力監視システム全体の設計と電力量計データ収集の実務を併せて検討すると判断しやすくなります。本稿は、その中でもCTと電力計を組み合わせる点に絞ります。

設計入力現地で確かめること選定への影響
測定目的請求照合、ピーク監視、設備別原単位のどれか必要な精度と低負荷域
電流範囲停止・待機・通常・ピークの実測一次定格と精度クラス
回路と導体単相・三相、ケーブル外径、母線寸法CT個数、窓寸法、取付方法
盤内条件停電可否、作業空間、温度、端子位置一体型か分割型か、施工手順
計器と配線入力仕様、相配置、往復距離、線径二次側適合、負担VA、極性確認
工場の電力監視に使うCT変流器の選定|電力計との適合・負担VA・FAT/SAT - figure 1

変流比は「大きければ安心」ではない

CTの一次定格は、遮断器のフレーム電流をそのまま写すのではなく、現実の運転範囲と将来計画で選びます。例えば通常40〜180Aの回路に、拡張を見込んで極端に大きな一次定格を採ると、待機時の40Aが定格に対してごく小さい割合になります。CTの精度は一般に電流域と負担条件を伴って規定されるため、定格点の等級を低負荷時まで自動で外挿してはいけません。ABBの低圧CT資料はIEC 61869-2に沿う誤差限界を定格電流の割合別に示し、通常クラスとSクラスで低電流側の規定点が異なることを示しています。測定対象が低負荷域に長く滞在するなら、その域で必要な誤差を仕様書に明記し、候補製品のデータシートで確認します。

変流比の例を考えます。実測ピークが約430Aで、将来増設時に500A近くになる見込みなら、500/5Aや500/1Aを候補にできます。ただし「500Aを超えた瞬間に必ず計測不能」という意味ではありません。過電流時の挙動や測定上限は製品によって違い、連続許容電流や過電流係数、計器入力範囲を個別に確認します。逆に実測ピークが150Aの設備で600A一次を一律採用すると、待機30Aは定格の5%です。その電流での精度が必要なら、5%点の規定があるか、より適切な比率を選べるかを確認します。例示値は設計手順を示すもので、現場の測定値の代わりにはなりません。

CTを三相回路に用いる場合、必要個数と配置は電力計が対応する結線方式、電圧入力、三相三線・三相四線の構成に合わせます。「三相だから常にCT三個」という見積仕様にしてはいけません。実装する計器のマニュアルに適合する結線図をRFPに添付し、どの相にどのCTを置くか、電圧検出点をどこに取るかを相番号で示します。計器設定のCT比や電源方式が実配線とずれると表示値はもっともらしく見えても正しくありません。Schneider Electricの計器FAQも、CT比、VT比、系統種別、周波数、極性と配線図の確認を不正確な読値への基本確認項目に挙げています。

1A・5Aと特殊出力は電力計の入力から決める

二次定格の1Aと5Aは価格だけで選べません。まず候補電力計がどの入力を受けられるかを照合します。電流入力1A専用の計器へ5A CTをそのまま接続することも、電圧出力型CTの信号を電流入力へつなぐことも、製品仕様の確認なしに行ってはいけません。分割型センサーの中には1A・5Aの電流出力と異なる電圧出力型もあり、負担の扱い、端子、延長可能な配線長、開放時の安全条件が異なります。型式の似た製品を混ぜず、CTメーカーと計器メーカー双方の適合表または明示された入力仕様を根拠に発注します。

電流出力型CTでは配線抵抗が負担となります。同じ往復線抵抗なら、抵抗による見かけの電力は I²R で変わるため、定格1Aと5Aの比較では5A側の配線損失は25倍です。Schneider Electricも、負担不足時は計器負担と二次配線損失を合計して検討し、1A二次または太い線を選ぶ方法を示しています。これは「1Aが常に優れている」という結論ではありません。配線長が短く既存計器が5A専用なら5Aが合理的な場合もあります。回路全体の互換性と実際の負担で決めます。

負担VAを往復配線で計算する

電流出力型CTの概算では、二次回路の総負担を「計器入力負担VA+配線損失VA+直列に入る端子・試験ブロック等の影響」として整理します。配線だけの損失は、定格二次電流を I_s、CTから計器までの往復導体と接続部の合計抵抗を R_loop として I_s²×R_loop です。CTと計器の距離が片道20mなら、往復導体は原則40mです。線材温度や接続抵抗を含む設計値は、使用する線種と実施工条件から確認します。片道距離のみを40mとして二倍し忘れれば負担を過小評価します。

説明用の仮定として、往復抵抗0.40Ω、計器入力0.30VA、端子などの追加分をここでは0とします。5A二次の配線損失は5²×0.40=10VA、合計10.30VAです。同じ配線で1A二次なら1²×0.40=0.40VA、合計0.70VAです。この数値は実機の抵抗や計器仕様ではなく算術例です。候補CTの「精度クラスを保証する定格負担VA」が前者より小さければ、線径、配線経路、二次定格またはCT仕様を見直します。Schneider ElectricはCTの精度クラスについて、計器VAとケーブルVAの合計がそのクラスの最大VA内にあることを確認するよう説明しています。逆に、実負担がデータシートの適用範囲より極端に小さい場合の精度も、その製品の保証条件を読む必要があります。

仮定した条件5A二次1A二次
往復配線抵抗0.40Ω0.40Ω
配線損失 I²R10.00VA0.40VA
仮の計器入力負担0.30VA0.30VA
仮の合計負担10.30VA0.70VA
工場の電力監視に使うCT変流器の選定|電力計との適合・負担VA・FAT/SAT - figure 2

この表をそのまま購入仕様に転記しないでください。線径・片道距離・計器入力VA・端子仕様が決まれば現場固有の再計算が必要です。またCTの負担VAと、通信ゲートウェイや電力計の消費電力Wは別物です。混同すると、CTは過負担なのにシステム全体の電源容量には余裕がある、という見落としが起こります。

精度はCT単体ではなく測定チェーンで受け入れる

「Class 0.5のCTを買えばkWhが0.5%以内」と書く仕様は不正確です。CTは電流の比率誤差と位相誤差を持ち、電力計にも電力・電力量の誤差があります。電圧入力、負荷力率、結線、設定、時間積算、通信値の丸めにも条件があります。最終的な計測結果を判断するなら、測定範囲と運転条件を定め、CTと計器を組み合わせた許容差または照合手順を決めます。異なる精度表記を単純に足して「システム精度」と断言せず、調達時にメーカーの保証範囲を確認します。

低負荷側を見たい用途では、少なくとも停機・待機、通常運転、ピーク時それぞれで電流がCT一次定格の何%かを計算します。例えば待機時が定格の1%なら、通常のクラス表だけでその点の精度を保証できると決めつけず、Sクラス等の低電流域を含むメーカー資料を確認します。ABBのIEC 61869-2に基づく資料には通常クラスの例で5%、20%、100%、120%など、Sクラスの例では1%も含む試験点が示されています。したがって「待機30Aを定格600A CTで測る」場合は5%点の条件を、「待機5Aを定格500A CTで測る」場合は1%点の条件を、採用する型式に照らして確認するのが筋です。計器側が低電流でどこまで精度を保証するかも別に見ます。

請求額の公式検針との照合を用途にするなら、構内の管理用サブメーターと取引用計量を同じものとして扱わないことも重要です。契約または法令上の計量要求、封印、検定、許容誤差などは設置国と契約条件によって変わります。ここでは一般の工場内監視向けの選定を扱います。請求・精算に使う計量器の要件は電力会社、計量担当者、製品認証書で別途確認してください。

分割型CTか貫通型CTか

既設盤では停電可能時間と導体の抜き差し可否が分割型を選ぶ理由になり、盤新設なら貫通型が施工しやすい場合があります。ただし「分割型なら無停電で誰でも取り付けられる」という理解は危険です。活線近接作業、盤カバー、絶縁距離、配線変更、計器の電圧入力接続の要否は現地の有資格者が評価します。分割型は閉じ合わせ面、ラッチ、導体の位置、取付方向が読値に影響し得るため、機器固有の施工書と受入検査を必須にします。貫通型は盤の組立段階で導体を通す余地があるか、交換時に導体を外せるかを検討します。

機械的な寸法は見落としやすい項目です。一次導体の外径だけでなく、母線の幅・厚み・絶縁被覆、隣接相までの距離、CTを閉じるための指の入る空間、固定具、ケーブルの曲げ半径を盤図面と現地写真で確認します。Schneider ElectricのCT選定資料も、一次電流範囲、一次導体に適合する窓寸法、用途、選定後の精度と負担を順に確認するよう示しています。発注後に「窓は通るが盤内でラッチを開閉できない」と分かるのは、CTの価格より施工費に大きく効きます。

極性・相の取り違えを図面で防ぐ

三相計測では、CTの一次側の向きと二次端子、電力計の相対応を一緒に確認します。電源側を示すH1等の極性表示がある製品では、その表示と計器入力の極性をメーカーの結線図に従って合わせます。表記はメーカーごとに異なるため、RFPでは「A相の電源側から見たCTの向き」「二次端子から電力計I1への線番」まで結線図で示し、現地の盤番号と相番号に紐づけます。計器のCT比設定だけ正しくても、電圧A相と電流B相を組み合わせれば電力値は狂います。

Schneider Electricの設置情報は、一次側極性の方向、二次側端子の対応、締結、分割型の確実な閉鎖を確認し、設置後は相ごとの値と電力の符号を見るよう求めています。エネルギー計の診断画面で反転を検出できる型式もありますが、その機能の有無と判定条件は計器ごとです。電流表示が正でも、電力または力率の符号・相角が不自然なら極性や相の取り違えを疑います。負荷が変動する工場で異なる時刻の値を比較すると判断を誤るため、FAT・SATの照合値には時刻と運転条件を添えます。

CT二次側の安全を仕様に含める

電流出力型CTの二次回路は、一次側に電流が流れる状態で開放してはいけません。Schneider Electricは、開放した二次端子に危険な高電圧が生じ得るとして、設置・整備時に短絡ブロックを使い、二次側を短絡するか計器などの負担につなぐよう明示しています。計器交換のために端子を抜く前に、適切な短絡端子で安全な状態にする手順を、発注仕様と施工手順書の両方に入れます。一般の端子台を「たぶん短絡できる」と見なさず、CT用の短絡機能と表示を確認します。

この安全記述は現場作業の代行指示ではありません。盤内作業は停電・隔離・検電を含む現地の安全手順と製品マニュアルに従い、訓練を受けた有資格者が実施します。無停電でのCT施工、短絡操作、極性修正を記事の手順だけで実行しないでください。また電圧出力型CTなどは内部抵抗を持つ設計で扱いが異なる場合があり、電流出力型の短絡操作を機械的に転用せず、型式固有の説明書を確認します。

CT短絡端子の配置は保守性にも関わります。計器やゲートウェイが故障したときに、盤の奥へ腕を入れず安全に回路を切り替えられる位置を指定します。試験端子と端子台の線番、注意表示、二次回路図を盤内に残すこと、CTと計器の銘板写真を保管することもRFPに入れます。これは初回工事だけでなく、数年後の計器更新時の作業品質を守るためです。

RFPに記載するCT・電力量計の比較条件

見積先ごとに機器の型式や点数だけを比べると、配線、盤工事、停止時間、試験が見積外になりがちです。以下の表を測定点ごとに埋め、各候補に同じ条件で回答を求めます。未測定の値は推定値として印を付け、現地調査後の確定責任者を決めます。

RFP項目記入・要求する内容
測定目的と範囲盤・回路・相、必要なkW/kWh/力率、最小~最大電流、ピーク時間
CT仕様一次/二次定格、精度クラスと適用電流域、定格負担VA、形状、窓寸法、製品資料
計器適合1A/5A/専用センサー入力、結線方式、入力負担VA、CT比設定、通信レジスタ
二次配線片道距離と往復抵抗、線種・線径、経路、短絡端子、合計負担計算書
施工停電計画、盤の改造、接近性、相表示、端子線番、安全手順、図面更新
検証FAT/SAT項目、基準計器、負荷条件、許容差、是正と再試験、成果物
保守CT/計器の交換方法、予備品、校正・設定バックアップ、担当分界

見積比較では機器単価と合計初期費だけでなく、同等の測定点数、同等の受入範囲、同等の工事条件かを揃えます。安い候補がCT単体価格だけで、もう一方が短絡端子、ケーブル、盤加工、試験を含むなら比較になりません。少なくともCT・計器・施工・試験・設定・図書・停止対応を列に分けて回答させます。ソフトウェアやクラウドの費用は電力量計の調達費と分離し、データ保持期間と通信トラブル時の復旧条件を確認します。

現地調査で見積条件を確定する

見積依頼の前に盤を調査できない場合でも、契約直後の現地調査を単なる寸法確認で終わらせないことが大切です。調査票には、単線結線図と盤ラベルの一致、既設のCT・計器・試験端子の有無、各相の導体形状、盤扉を開けたときの作業空間、増設端子の場所、二次配線の経路、通信線の引き込み位置、停電可能な日時と所要時間を記録します。写真には盤全体、CT設置候補位置、計器周辺、銘板を含め、機密情報の扱いは現地規則に従います。調査時点で電流を測る場合は、通常負荷とピーク負荷の時間帯を確認し、一瞬の読値を「最大値」として固定しません。

調査結果によって、分割型から貫通型への変更、CT比率の修正、計器の設置場所の変更が必要になることがあります。この変更をどちらの費用負担にするか、どの条件を満たせば仕様変更として扱うかを見積書に明記します。とくに二次配線の長さが当初より伸びる場合は、負担VA計算も更新します。施工業者が線径だけ変えて図面に反映しない状態を避けるため、改訂した計算書、結線図、部品表をセットで承認します。

さらに、計測点の優先順位も現地調査で確定します。全盤を一度に計測する計画でも、受電点、空調・圧縮空気などの大きな補機、製造ラインの代表設備の順に目的を説明できるか確認します。各点について「この値を見た担当者は次に何をするか」を一文で書けなければ、CTを追加する理由が弱い可能性があります。逆に、月末の請求差を追う受電点と、深夜停止中の無駄を発見する枝回路では、同じ電力計を使っても許容する低電流域と記録周期が変わります。調達数量を決める前に利用者と検証し、不要な点数を減らすことが、計測の質と保守性の両方を高めます。

盤の施工計画では、CTだけでなく電圧検出回路、計器電源、通信線も一緒に見ます。計器に必要な電圧信号をどこから安全に取り出すか、盤内で保護機器や端子をどこに置くか、既設制御線と新しい通信線をどう区別するかは、測定値の正しさと後日の保守に直結します。工事図面には作業前の状態、工事後の状態、回路ごとの停電範囲を残し、設備側の停止許容時間と照合します。短い停止窓に対して現地で初めて端子位置を探す計画は、工程上のリスクが高くなります。

試運転後の受入記録も、図面、測定値、画面キャプチャを別々の場所に置かず、測定点IDで結びつけます。例えば表示された相電流の写真だけでは、どのCT比率とどの運転条件で撮ったかが分かりません。計器設定のエクスポート、試験時刻、設備状態、基準値、判定者を同じ記録に残せば、後日データが不自然になったときに配線変更・設定変更・設備負荷の変化を切り分けられます。ここまでを納品対象にすれば、設備の引き渡し後にデータ利用者が測定の意味を読み解けます。

FATでは「仕様どおり作ったか」を見る

FAT(工場受入試験)は現場の実電流を再現できないことが多いため、盤や計器を現地搬入する前に確認できる項目へ集中します。CT型式、変流比、二次定格、精度・負担資料、端子の線番、相の結線、短絡ブロック、計器のCT比設定、通信先とレジスタの対応を、図面と現物で照合します。試験用電流源や信号注入を使う場合は、その方法が実CTを含む試験か計器単体の試験かを記録します。「表示画面に数字が出た」だけではCTの比率・極性・負担を検証したことになりません。

FAT合格記録には、機器シリアル番号、図面版、計器設定の書き出し、適用した試験器とその校正状態、各相の注入値・表示値・判定、未完項目、是正責任を残します。許容差は製品が保証する精度と試験方法に合わせて事前に合意し、都合のよい固定値を後付けしません。CT二次開放を意図的に作る試験は安全上許容しません。作動確認のために安全回路を迂回する設計も避けます。

受入判定表は「表示値」だけでなく原因を切り分けられる形にする

FATとSATで使う受入判定表には、試験番号、対象の測定点ID、試験時の結線方式、設定したCT一次・二次比、試験電流または運転負荷、期待する電力の向き、読み取った値、合否、差異の処置を一行ずつ残します。三相の計器なら、相別電流だけでなく、同じ相の電圧入力と電流入力が対応していることを確認する欄を設けます。電流が正しく見えても、相の組み合わせが違えば有効電力や力率が不自然になるためです。Schneider Electricの電力計FAQは、不正確な読値を調べる際、CT比・VT比・系統種別・周波数・結線・極性を確認するよう案内しています。したがって、結果が外れた場合にどの設定を確認したかも記録しておけば、単なる再試験の繰り返しを避けられます。

試験条件は、少なくとも低負荷、代表的な通常負荷、可能な範囲の高負荷を区別します。低負荷の試験では、実際の電流が候補CTの定格の何%か、計器がその入力域でどの性能を保証するかを併記します。たとえば待機負荷を管理する計測点について通常負荷の一点だけで合格とすると、導入目的に対する受入判定が空白になります。ABBの低圧CT資料が示す電流域別の誤差表を、選んだ型式の保証条件と照合し、必要ならメーカーに当該電流域の成績書または仕様根拠を求めます。これは現場ごとの目標を機器のクラス表示へ置き換えないためです。

比較用の計器を使う場合は、基準器自身の校正期限と測定範囲を確認し、測定開始・終了時刻、同じ期間の電力量増分、運転設備を併記します。受電点の値と枝回路の合計を比較するなら、測定境界が一致するか、途中に未計測の負荷が無いかを先に確認します。合格基準を満たさない時にすぐ設定を変えるのではなく、相の取り違え、CTの向き、二次線の端子、比率設定、通信側の単位と桁を順に切り分けます。修正したら変更前後の設定、担当者、再試験結果を残します。こうしておくと、試運転後に値が変わった際も、その変化が設備の省エネなのか、測定条件の変更なのかを追跡できます。

SATでは実負荷と通信まで通して確認する

SAT(現地受入試験)では、まず施工図と現物の一致、CTの向き、分割型の閉鎖状態、配線終端、短絡端子の状態、計器設定、電圧・電流の相対応を確認します。続いて実負荷で相別電流と電圧、力率、電力の符号、合計kW、積算kWhの増分を観察します。別の基準計器や既存系統との比較では、測定点、期間、負荷状態、時刻同期を揃えます。主幹と複数枝回路の合計が一致しない場合、未計測回路や補機負荷、測定時刻のずれを先に確かめ、すぐにCT不良と断定しません。

正常運転だけでなく、設備停止・待機、低負荷、負荷立ち上がりなど、記事冒頭で定義した用途に重要な条件を試験します。待機電力を管理するために採用したCTなら、通常運転時だけ一致しても受入目的を満たしません。受入基準には「対象の電流範囲で表示・積算が成立する」「相の符号が意図どおり」「通信レジスタとダッシュボードの単位・桁が一致する」「通信断の記録と復旧ができる」など、判断可能な文で書きます。許容誤差値そのものは機器保証とプロジェクト目的に合わせて決め、根拠を合意書に残します。

工場の電力監視に使うCT変流器の選定|電力計との適合・負担VA・FAT/SAT - figure 3

SATで問題が出た場合の切り分け順は、表示値ゼロならCTの閉鎖・端子・計器入力、相だけ負値なら向き・二次極性・相対応、全相が一定倍率でずれるならCT比・電圧比・単位設定、負荷が小さいときだけ差が大きいならCT比率と低負荷域の保証、配線負担を確認する、というものです。ただし断線や端子変更を要する作業は安全手順と有資格者の管理下で行います。現地で設定だけを変えて数字を合わせると、原因を覆い隠す可能性があります。

導入後も測定点の台帳を残す

受入後には測定点ID、盤・回路、CTの型式と変流比、二次定格、精度クラス、負担計算、計器型式と設定、通信アドレス、図面版、SAT結果、問い合わせ先を一枚の台帳にまとめます。現場では回路変更、設備移設、CT交換、ゲートウェイ更新が起こります。台帳がなければ、データが急に変わったときに省エネ効果と設定変更を見分けられません。特にCT比の設定変更は過去データとの連続性を壊すため、変更日時と旧値・新値を記録します。

電力監視の成果はメーターを設置した日ではなく、信頼できる測定値で行動を決められるようになった時に生まれます。CT選定を設備担当だけに閉じず、データ利用者が必要とする最小負荷、集計単位、アラーム条件を調達時に結びつけます。データ収集経路の設計は電力量計データ収集の実務も参照してください。

よくある質問

工場の電力監視でCT変流器は何Aを選べばよいですか?

遮断器の定格だけでは決められません。通常時・待機時・ピーク時の電流、将来増設、CTが保証する精度の電流範囲、電力計入力を合わせて候補を選びます。大きい一次定格へ一律に寄せると低負荷域が保証範囲外になる可能性があります。現地の実測電流と製品データシートを照合してください。

電力監視の変流器は1Aと5Aのどちらがよいですか?

まず電力計の入力仕様に適合する方を選びます。長い配線で同じ抵抗なら1Aの配線損失は5Aより小さく、I²Rの計算上は25分の1です。ただし計器が5A専用、または特殊な電圧出力CTを使う場合は別設計です。計器・CT・配線を一組で見積もります。

CTの負担VAにケーブルは含まれますか?

CTの定格負担と比較する総負担には、計器入力に加え、二次回路の配線損失を含めて評価します。CTから計器までの片道だけでなく往復の抵抗を使います。端子や接続部の影響、実際の線径、温度条件も必要に応じて見込みます。

CT二次側を開放したまま計器を外してよいですか?

電流出力型CTで一次側に電流が流れている場合、開放してはいけません。危険な電圧が生じ得ます。現地の安全手順と製品説明書に従い、有資格者が適切な短絡端子・隔離方法を用いて作業します。電圧出力型など製品固有の方式は取扱説明書を確認してください。

FATとSATでは何を分けて確認しますか?

FATでは搬入前の型式、変流比、端子・図面、計器設定、信号試験を確認します。SATでは現地施工後の極性と相、実負荷下の表示・積算、低負荷域、通信データを確認します。双方の試験範囲と合否条件をRFPの時点で合意します。

まとめ

工場の電力監視用CTは、一次定格だけでなく、電力計入力、低負荷精度、配線を含む負担VA、盤内施工、極性、二次側の安全、FAT/SATまで一続きで選定します。測定点表と結線図を先に整え、候補品を同じ条件で比較すれば、導入後に「数字はあるが信頼できない」状態を避けやすくなります。特に、実測の最小電流と二次配線の往復抵抗は、見積時に抜けやすい二つの値です。

CTと電力量計の更新を検討中で、測定点の切り分けやRFPの条件整理が必要な段階でも、TOMAS TECHにご相談ください。現地盤と既存のデータ経路を確認し、使う目的に合う測定範囲と受入条件の整理から対応できます。

参考情報