防爆協働ロボットの塗装導入を検討するタイ工場では、「ロボット本体が防爆対応」という説明だけで発注を決められません。塗料・溶剤、スプレーガン、換気、接地、ワーク搬送、作業者の立入りを一つの塗装セルとして評価する必要があります。ファナックは2026年9月30日〜10月2日の塗料・塗装設備展で、CRX-10iA/L Paintを使った多品種少量向けの展示を案内しました。本稿はこの機種を例に、タイ工場が見積依頼前に確定すべき条件、協働運転の安全境界、検収の証拠を整理します。一般的な塗装ロボット導入の全体像は塗装ロボット自動化の記事を先にご覧ください。
まず決めること:防爆協働ロボットで何を塗るのか
選定の出発点はロボットの型番ではなく、対象ワークと塗装工程の境界です。ワークの最大外形・質量・材質、塗装面、塗料の種類、溶剤、乾燥条件、要求膜厚、外観基準、日当たりの品種切替回数を一覧にします。「小物を多品種で塗る」という一文では、ガン姿勢もロボットの届く範囲も判断できません。平板、箱形、曲面、奥まった穴を含む代表ワークを選び、最難部位のガン角度と距離まで仕様化します。
次に、自動化する区間を決めます。着荷・治具固定・色替え・吹付・フラッシュ・乾燥搬送・検査のうち、ロボットが担うのはどこか。塗装だけをロボット化しても、色替え洗浄や治具への固定がボトルネックなら期待する能力は出ません。逆に、短い反復軌道を安定して再現したいだけなら、複雑な画像認識や搬送統合を最初から要求する必要はありません。工程範囲を絞ることで、塗装装置メーカー、ロボットSIer、工場の設備担当の責任分界が見えます。
ファナックの2026年展示案内は、通常の新型塗装ロボットによる部品塗装と協働ロボットによる着脱という構成と、防爆協働ロボットによる多品種少量生産塗装という構成を別項目で示しています。この違いは調達時にも重要です。両方を「協働ロボット塗装」と一括りにすると、塗装するロボット自身の防爆要件と、ブース外で着脱するロボットの要件を混同します。提案書には、各ロボットが置かれる場所と行う動作を図示してもらいましょう。ファナック展示案内。
CRX-10iA/L Paintで確認できる仕様と、見積で確認する仕様
ファナック日本の製品ページによると、CRX-10iA/L Paintは可搬質量10 kg、リーチ1,418 mm、6軸、位置繰返し精度±0.04 mm、本体質量47 kgです。床置、天吊、傾斜設置が挙げられ、IECEx/ATEX適合とダイレクトティーチが説明されています。これらは初期スクリーニングに有用ですが、ワークの全面を所定のガン姿勢で塗れることまで保証する数字ではありません。リーチはフランジ先端までの幾何条件であり、ガン、ホース、治具、ブース壁と干渉しない有効作業領域は別に検証します。製品仕様。
「10 kgを持てる」も、塗装ガン、ブラケット、ホースの張力、ケーブル配索、追加センサーを含む条件で読み替える必要があります。腕が届いても、手首姿勢が塗装面に対して不適切なら、均一な膜厚をつくれません。逆に繰返し精度の値が小さくても、ワーク位置決めがばらつけばガンと表面の距離は変わります。ロボットのカタログ値とセル全体の塗装品質を同じものとして扱わないことが肝心です。
見積依頼では、ロボット本体の正確な型式、コントローラ、適用するソフトウェア、教示端末、ケーブル、防爆制御ユニット、ガンやアトマイザ、ホース、バルブ、塗料供給、接地部品を部品表で示してもらいます。防爆証明の対象範囲は機器ごとに異なる可能性があります。ロボット本体の説明文を周辺機器一式の認証と読み替えず、各機器の銘板・証明書・設置条件を確認する設計です。メーカーへの確認事項には、タイ向けに供給される構成と現行の認証文書を含めてください。
ファナックの製品カタログは、コントローラを非危険場所に設置する条件を記載しています。したがってレイアウトには、ブース内のロボットだけでなく、ブース外の制御盤、防爆制御ユニット、配線の貫通部まで含めます。同カタログのIP67の記述ではJ1配線ボックスが除外されるため、「本体IP67」という短い説明を全構成部品へ広げないようにします。最終の適合は供給される構成のカタログと証明書で再照合してください。CRX-10iA/L Paintカタログ-02.pdf)。

「防爆対応」と「タイ工場で使える」は別の判断
塗装ブース内には可燃性蒸気やミストが発生し得ます。ロボットを選ぶ前に、工場側で使用塗料のSDS、溶剤組成、温度、換気、噴霧量、清掃方法、異常時の漏えいを整理し、危険場所の区分を有資格者と決める必要があります。提案会社にブース図だけ渡して「防爆ロボットで安全に」と依頼しても、区域の境界や必要な機器保護の条件が確定しません。区域区分の根拠文書と機器の証明範囲を一対一で照合することが発注前の要点です。
IECExやATEXへの適合というメーカー表現は、タイ国内の設置許可、保険条件、顧客監査要件への自動的な適合を意味しません。適用法規、所轄当局、工場の保険者、顧客要求をタイ側の専門家と確認してください。ここで必要なのは抽象的な「国際規格対応」ではなく、製品の現行証明書、マーキング、適用区域、ガスグループ、温度クラス、据付条件、付属品の範囲です。この記事では個別工場の危険区域を推定しません。
IECEx自体も、国・地域によって追加の国内承認が必要になる場合があると案内しています。タイ側の受け入れ条件はメーカーや海外事例から推測せず、所轄と契約条件に照らして確認します。IECEx FAQ。
また、ロボットが防爆対応でも塗装セルが完成するわけではありません。スプレーガン、静電高電圧機器、塗料供給ポンプ、電磁弁、位置検出センサー、照明、カメラ、配線、排気ファン、フィルタ、接地の各設計が必要です。特に「ロボットは認証済みだから普通のセンサーを近くに置いてよい」という解釈は危険です。機器を置く区域を図面上で明示し、その区域に必要な仕様を機器ごとに照合します。米国OSHAのスプレー塗装規定は換気と静電装置の連動などを具体的に扱いますが、米国法をそのままタイの法令と見なしてはいけません。設計上の論点を洗い出す一次資料として参照できます。OSHA 1910.107。
協働ロボットなら柵やブースが不要なのか
答えはセルのリスクアセスメント次第です。協働ロボットの接触停止機能は、ロボット腕と人の接触リスクを減らすための一要素です。溶剤蒸気の吸入、塗料ミストの付着、静電高電圧、スプレーガン先端、治具とワークの挟み込み、滑りやすい床、保守中の残圧まで消すものではありません。ファナックの製品ページに「安全柵なし」の表現があっても、その文章だけで個別ラインの無柵運転を承認しないでください。
塗装中に人がブース内へ入らない運用なら、着荷場所と塗装場所の境界、開口部、扉、排気、運転許可のインターロックを設計します。教示や清掃のために人が入るなら、吹付停止、塗料供給遮断、残圧解放、静電電源停止、換気継続、ロボット速度と運転モード、再起動手順を場面ごとに定義します。安全策は「柵を付けるか外すか」の二択ではありません。工程と作業モードに応じて、物理的隔離、検知、停止、手順を組み合わせます。
ISO 10218-2:2025は産業用ロボットのアプリケーションとセルの統合、据付、運用等を対象にしています。ただし同規格の公開スコープは、爆発の可能性がある環境に固有の危険を対象外と明記します。したがって、ISO 10218-2に沿ったロボットセル設計に加え、防爆・塗装工程の危険を別途評価しなければなりません。規格を一つ挙げれば全安全課題が閉じるという説明は受け入れないようにします。ISO 10218-2:2025。
協働ロボットを初めて導入する担当者は、協働ロボット導入の基本的な検討手順も確認してください。本稿で扱うのは、その手順を可燃性雰囲気とスプレー塗装へ適用するときに追加される条件です。安全の議論をロボット単体の接触機能で終わらせず、塗料・空気・電気・人の動きが交わる場所ごとに具体化します。
教示レスに近づけるには、何を標準化するか
2026年展示案内は「教示レス型多品種少量生産塗装システム」と表現します。これは展示コンセプトの説明であり、あらゆる新規ワークが設定なしで良品になるという保証ではありません。実際の段取り時間を減らすには、ワークの把持位置、座標原点、塗装面の分類、ガンの目標距離、送り速度、重ね幅、色替えルール、検査基準を共通化する必要があります。教示レスをうたう提案には、何を自動生成し、何を作業者が入力し、何を熟練者が承認するかを書いてもらいます。
ダイレクトティーチではアームを手で動かして軌道を記録できます。初回の軌道作成や小変更には便利ですが、手でなぞった結果がそのまま膜厚、光沢、タレ、塗り残しの基準を満たすとは限りません。教示後のオフセット、ガンの起動・停止タイミング、ワーク回転との同期、遮蔽部位への回り込みを確認します。複数品種のレシピを登録するなら、レシピ名だけではなく、対象治具と塗料、ガン設定、検査記録を結びつけます。
PoCでは「最短で成功するサンプル」だけを塗らないことです。代表形状のほか、最も奥まった面、色替え頻度の高い品種、治具誤差が出やすいワークを含めます。初回教示、二回目以降の再呼出し、レシピ編集権限、復旧の手順まで測れば、多品種少量ラインの現実に近づきます。評価条件の写真、ワーク図面、作業動画を後の検収にも再利用できる形式で保存しましょう。
ブース・ガン・ロボットのインターフェースを先に決める
塗装セルで最も見落とされやすいのは装置間の信号です。ロボットが塗装開始を要求する条件に、排気運転、風量または差圧の確認、扉閉、接地確認、塗料供給準備、ガン状態、治具固定を含めます。異常時は、どの信号が最初に止まり、吹付をいつ遮断し、排気をどれだけ継続するかを設計図と試験表で一致させます。「ロボット側で停止する」だけでは、噴霧と換気の安全な順序が不明です。
プロセス配管の責任分界も同様です。塗料タンクからポンプ、調圧、流量計、色替えバルブ、ガンまで、誰が供給し、誰が洗浄し、誰が漏えいを検知しますか。ホースがアームの姿勢によって擦れる、ガン重量が変わる、塗料がワークに跳ね返るなど、現場では単一装置の試験で見えない問題が出ます。3Dデータやブース図面にホースの取り回しと保守空間を含めて、干渉を確認します。
電気・制御のインターフェース表には、信号名、送受信元、通常状態、異常時状態、応答時間、復帰条件、試験方法を載せます。可能なら安全関連の信号と、生産管理用の信号を区別します。生産管理側に流すのは、ワークID、レシピID、開始終了時刻、結果、停止理由などです。危険停止の機能を単なるネットワーク上の「稼働ステータス」で代用しないことが重要です。トレーサビリティを追加する場合も、安全制御の成立を先に確認します。

見積比較を公平にするRFPの書き方
塗装ロボットのRFPは機種の比較表だけにしません。まず現状のブース図、風量測定、危険場所区分、塗料SDS、ワーク図面、サンプル、必要品質、稼働時間、現場のユーティリティを添付します。秘密情報を伏せた概略だけで概算を取る段階と、現地調査を経た確定見積の段階を分けると、後から「前提が違う」という争いを減らせます。サプライヤーには前提と除外事項を表で返してもらいます。
| RFP項目 | 工場が提示する情報 | 提案者に求める回答 |
|---|---|---|
| 対象ワーク | 図面、最大・最小形状、代表サンプル | 到達性、治具案、未対応面 |
| 塗装品質 | 膜厚、外観、再塗装基準、測定法 | ガン・軌道・検査方法 |
| 危険場所 | 区分図、塗料SDS、換気条件 | 機器ごとの認証・設置条件 |
| 運用 | 品種切替、清掃、教示、保守 | レシピ、権限、段取り時間の測定法 |
| 制御 | 既存ブースと供給設備の信号一覧 | インターロックと責任分界 |
| 検収 | 代表品種、試験環境、合否基準 | FAT/SAT手順、記録様式 |
同じ条件で複数案を比べるには、スコープ差を見える化します。A社はロボットとプログラムのみ、B社はブース改造と換気制御込みなら、価格の単純比較は成立しません。機器費、据付、ブース改造、配管、制御、試運転、教育、初期予備品、年次保守を明細化し、タイ現地対応の担当者と一次対応時間も明記します。価格は必ず現地見積で確認し、本稿では市場相場を仮定しません。
見積審査で高く評価すべきは、提案者が未確定事項を正直に書いているかです。「防爆済み」「安全柵不要」「教示レス」といった短い標語より、条件付きの適合表、除外範囲、追加調査の計画を示す提案の方が検証しやすくなります。現地設置許可や顧客監査に必要な文書を誰が作り、誰が承認するかも契約前に決めましょう。
防爆証明の適合表は一機器一行で作る
提案者から受け取る証明書の束を、表紙の枚数だけで評価しないでください。機器名、メーカー、型式、シリアルまたはロット、設置位置、危険場所区分、銘板マーキング、証明書番号と改訂、指定の付属品、使用温度、配線方法、検査担当を一行にまとめます。ロボットアームだけでなく、塗装ガン、バルブ、センサー、照明、ケーブル貫通部、接地部品も対象です。該当しない機器には「ブース外の非危険場所に置く」と明記し、その位置をレイアウト図と一致させます。
証明書の有無だけでなく、供給される現物との一致が重要です。見積時には仮の型式で、納入時には後継品へ変わることがあります。その場合は同等品という口頭説明では済ませず、変更部品の証明範囲と図面への影響を再確認します。FAT前に設計版、SAT前に現物版の適合表を更新し、差分と承認者を残せば、施工後の監査や修理で部品を交換するときにも使えます。
リスクアセスメントの対象を工程ごとに分ける
リスクアセスメントでは、通常生産、段取り替え、手動教示、清掃、詰まり除去、保守、停電復帰を別の作業として扱います。通常生産で人がブースに入らなくても、清掃員がガンの近くへ手を伸ばすなら別の危険が現れます。作業者の立ち位置、想定する誤操作、接触するエネルギー源を場面ごとに記録し、それぞれに低減策と残留リスクを結びつけます。
ロボット軸の停止だけでは十分でない場面があります。塗料ラインの残圧、電源を切った後も続く排気の必要性、静電高電圧の放電、回転治具の慣性、密閉容器内の溶剤蒸気があるためです。設備の再起動条件とロックアウト手順を、現場で実際に操作する順番に落とします。安全関連部品の変更やレシピ変更時に再評価する条件も残しておきます。
リスク表には、危険源、起こり得る傷害、運転モード、既存の防護、追加策、検証方法、担当者、完了日を持たせると実行に移せます。規格名だけが並ぶ表や、全項目が「教育で対応」になっている表では設計の妥当性を追えません。顧客のEHS担当、塗装工程担当、ロボットSIer、ブースメーカー、タイの適合担当が同じ図面を見てレビューする機会を設けてください。
PoCで塗装品質と切替作業を測る
PoCの合格条件は「ロボットが一周動いた」ではありません。代表ワークに対し、膜厚の測定位置、測定器、試料数、合格範囲、外観欠陥の判定方法を事前に決めます。品質を検証するため、直後だけでなく乾燥や硬化後に検査が必要な塗料もあります。テスト品は手直ししたものと区別し、条件を変更したらレシピ番号を更新します。
多品種少量の価値は段取り作業に現れます。品種AからBへの切替で、治具交換、色替え洗浄、レシピ選択、試し吹き、初品確認に何分かかったかをそれぞれ測ります。「教示時間」だけを抜き出すと、本当の停止時間を見誤ります。初回作成と再生産時の切替は別に測り、担当者が変わっても再現できるか確認します。数字を提案書に載せるなら、ワーク、塗料、作業者、測定区間を必ず併記します。
塗料使用量や再塗装率は、現在の手作業とロボット条件を同じ測定基準で比較します。塗料の粘度、ガン、気温、排気、サンプル形状が違う試験結果を、導入後の節約率として転用してはいけません。計測値が少ない初期PoCでは、達成値の断定より変動幅と要因を記録する方が、後の設備調整に役立ちます。PoCの目的は購買決裁用の一つの数字を作ることではなく、セル設計の未知を減らすことです。
FATとSATで何を受け取るか
FAT(工場出荷前試験)では、設備が提案どおり組み上がり、代表ワークの軌道、信号、停止、レシピを再現できるかを確認します。ただし供給側のテストブースとタイ工場の排気・塗料・ユーティリティが異なれば、FAT合格を現地の塗装品質合格と同一視できません。サプライヤーの設備で実施した項目と、現地でしか検証できない項目を分けた表を作ります。
SAT(現地受入試験)では、実ブースの排気、塗料供給、扉、接地、治具、搬送と結合した状態で試験します。通常の運転だけでなく、排気低下、扉開、塗料圧低下、ガン異常、停電と復帰、非常停止からの再開などの異常模擬を計画します。試験は安全な方法で有資格者の管理下で行い、異常を実際に危険状態まで進めて確認することは避けます。各試験の期待動作とログ、再試験結果を残します。
引渡し資料には、危険場所区分の根拠、各機器の証明と銘板、構成部品表、配線・配管図、インターロック表、リスクアセスメント、FAT/SAT記録、レシピとバックアップ手順、保守部品表、教育記録を含めます。運転開始後に「証明書は代理店にある」「設定値は担当者しか知らない」とならないよう、ファイル形式と保管者まで合意します。タイ語または英語の現場用手順と、日本語または英語の管理者向け設計資料を分ける場合も、版番号を一致させます。
検収で不合格になった項目は、単に「調整後に合格」と書き換えず、最初の測定値、原因、変更した設定、再試験条件と再測定値を一連の履歴として残します。たとえば膜厚が基準から外れた場合、ガン距離だけを変えたのか、塗料の粘度や排気条件も変わったのかを分けて記録します。安全インターロックの試験で不一致が出たなら、ソフトウェア変更の版番号、影響を受ける他の停止条件、再確認した信号を明示します。これにより、引渡し後に品種を追加する担当者が「何を変更すると再検証が必要か」を判断できます。未完了項目は担当者と期限を付けた是正リストに残し、重大な安全項目が閉じる前に量産へ移らない運用を契約時から合意しておきます。

タイ工場の導入計画:現地確認から立上げまで
最初の現地調査では、ブースの実寸だけでなく、搬入経路、天井高、保守スペース、排気ダクト、塗料保管場所、電源、圧縮空気、ネットワーク、消防設備を確認します。図面と現物が違う場合にどちらを正とするか、変更管理の方法も決めます。既存ブースを改造するなら、稼働停止期間と仮設工程への影響を計画に入れます。
次に、代表ワークで到達性と工程時間の机上確認を行い、危険場所区分と設備配置の案を重ねます。この段階でロボット型式を確定できない場合は、候補を残して必要な追加測定を明示します。ロボットが届くかという幾何条件と、所定の膜厚が出るかという工程条件を同じ「可否」欄にまとめないことです。どの条件が未確認かを色分けした検討表が、後の発注判断を助けます。
発注前には、現地法規と保険・顧客要求の確認、責任分界、受入基準、変更時の価格ルールを契約書と技術仕様書に反映します。設計変更が生じたら、塗料やガンの変更が防爆評価、品質、清掃方法、教育へ波及するかを確認します。立上げ後は、ワークごとのレシピと品質記録、異常停止、保守作業のログを保管し、次の品種追加に使います。
発注前の意思決定ゲートを三つにする
第一のゲートは、工程条件の確定です。代表ワーク、塗料SDS、品質基準、品種切替頻度が欠けていれば、仕様比較を確定しません。第二のゲートは、安全条件の確定です。危険場所区分、換気の現状、進入・清掃・保守の運用が整理できていなければ、据付の可否を判断しません。第三のゲートは、検証可能性です。サプライヤーが到達性、認証範囲、インターロック、品質、段取り時間を何で証明するかを合意して初めて、価格と納期の評価へ進みます。この順序なら、後から高額なブース改造が見つかるリスクを減らせます。
各ゲートで「未確定」を許すことは、判断を先送りすることと同じではありません。未確定事項に担当者、必要な測定、期限、発注に与える影響を付けます。例えば実測風量が未入手なら、測定の責任者と方法を記録し、風量が設計条件を満たさない場合の改造案を見積の選択肢として持たせます。塗料の変更が予定されているなら、現在品と候補品のSDSを分け、証明の再照合が必要になる条件を明示します。
運転開始後の品種追加を契約範囲に入れる
多品種少量で成果を出すには、最初の数品種を動かして終わりにしないことです。新しいワークが来たとき、工場が単独で治具を設計しレシピを登録できるのか、SIerの立会いが必要なのかを決めます。品種追加の承認者、変更履歴、バックアップ方法、教育対象を契約と運用手順に残します。特にガン姿勢の変更がブース壁やホースへ新たに接近する場合、単純なレシピ更新として扱わず、干渉と安全条件を再確認します。
稼働後の評価指標は、単なるロボット稼働率より、良品数、初品確認時間、品種切替時間、塗料使用量、手直し件数、異常停止の原因といった工程指標が適しています。ただし、数値目標は工場の現状測定から設定し、この記事の一般論を保証値にしません。データを取る負担が大きい場合は、まず三つほどの指標に絞り、測定者と記録場所を決めてから広げます。
よくある質問:防爆協働ロボット 塗装 導入
CRX-10iA/L Paintなら塗装ブース内の安全柵は不要ですか?
メーカーは協働機能を説明していますが、個別セルで柵や立入制御が不要かはリスクアセスメントで決めます。吹付中の作業者立入り、静電高電圧、換気、治具との挟まれ、保守時の残圧を含めて評価します。「協働」の表示だけで塗装工程全体を無柵にしないでください。
IECEx/ATEX適合ならタイでそのまま設置できますか?
そのようには判断できません。証明書の適用型式と範囲、現場の区域区分、周辺機器、据付条件を照合し、タイ国内の法規、所轄、保険者、顧客の要求を現地専門家と確認してください。IECEx/ATEXという名称だけをタイでの法的承認と同一視しません。
教示レスなら全品種の塗装プログラムを自動作成できますか?
展示の「教示レス型」はシステムコンセプトです。供給者に、必要なワーク図面、位置決め、レシピ入力、軌道生成、初品承認の範囲を説明してもらってください。品種追加時に誰が何分で何を行うかを代表ワークで測れば、実際の運用能力を評価できます。
塗装ロボットのRFPに最初に添付する資料は何ですか?
ワーク図面とサンプル、品質基準、塗料SDS、ブース図面、現状の換気条件、危険場所区分、現場ユーティリティ、既存制御信号の一覧です。未確定の資料は未確定と明記し、現地調査を見積範囲に含めます。サプライヤーには認証文書、責任分界、FAT/SAT案を返答させます。
一般の塗装ロボットとどのように比較しますか?
高い生産量の単一品種、頻繁な品種切替、ブース内での手動教示など、工程の条件で比べます。防爆協働機の利点を評価する際も、到達性、ガン・ホースの適合、色替え、清掃、検査、保守を同じ条件で比較してください。ロボット本体の価格や軸速度だけの比較では十分ではありません。
まとめ:最初の発注書より先に、設計の証拠を揃える
防爆協働ロボットの塗装導入で重要なのは、CRX-10iA/L Paintの仕様を入口に、実ブースでの適合を一つずつ確かめることです。多品種少量を狙うなら、品種切替とレシピ管理を試し、安全面では協働機能と防爆・換気・塗装工程の評価を分けます。RFPに代表ワーク、区域区分、インターフェース、検収条件を添えれば、提案の差を比較しやすくなります。メーカー仕様や規格の名称から、タイ工場の設置可否を推測せず、現場の条件と証明文書で判断してください。
タイ工場で塗装セルの更新や多品種少量の自動化を検討中なら、ワーク図面や既存ブースの情報を整理する段階からTOMAS TECHへご相談ください。導入可否を即断する前に、工程範囲と必要な確認資料を一緒に洗い出せます。