タイの工場で箱詰め自動化ロボットの導入を検討すると、比較表はたいていロボット本体の可搬質量とサイクルタイムから始まります。しかし稼働後にラインが止まる場所は、そのロボットではありません。上流の段ボールと、投入直前のワークの並び方です。本記事では、箱詰めを製函・投入・封函の3工程に分解したうえで、どこに投資すると止まらなくなり、どこに投資しても止まったままなのかを、タイ拠点の人件費で検算しながら整理します。
箱詰め自動化ロボットを入れても、止まる場所が変わるだけのことがある
ライン端の自動化を検討している工場で、最初に共有される資料はほぼ例外なくロボットの仕様書です。可搬質量、リーチ、繰り返し位置決め精度、そして「毎分◯個」のサイクルタイム。この4つを他社と並べた比較表が作られ、稟議はその表を根拠に上がります。
ところが導入から数か月後に現場で聞く話は、ロボットの速度についてではありません。「箱が真っ直ぐ立たない日がある」「ワークが向きを揃えて流れてこないので、結局人が並べ直している」「朝一番の1時間は給紙で止まる」。止まっている場所が、比較表に載っていた場所とずれています。
これは珍しい失敗ではなく、構造的に起こることです。比較表に載るのはロボット本体だけで、その前後にある工程は「既存設備」「客先手配」として見積の外に置かれることが多いためです。見積の外に置かれた工程は設計もされません。設計されていない工程が、稼働後の律速になります。
本記事が扱う範囲を先に明確にしておきます。ここで言う箱詰めとは、製品を段ボール箱に詰めて封をするところまでです。詰め終わった箱をパレットに積む工程は下流の別ラインであり、設備構成も投資額のレンジも変わります。パレタイジング側の費用構造とBOIの扱いについてはパレタイジングロボットの価格と投資回収にまとめてありますので、そちらを併せてご覧ください。この2つを1つの案件として扱うと、見積のレンジが広がりすぎて比較ができなくなります。
「箱詰め」は1台の機械ではない — 製函・投入・封函の3工程に分解する
箱詰めという言葉は、実際には少なくとも3つの独立した工程を指しています。発注の単位を決める前に、この3つを分けて紙に書くところから始めてください。
| 工程 | やること | 主な設備 | 止まると何が起きるか |
|---|---|---|---|
| 製函 | 平らな段ボールブランクを開いて底を折り、テープまたは糊で固定して箱の形に立てる | 製函機(ケースイレクター) | 下流が全部空転する。人が手で立てて追いつかせることになる |
| 投入 | 製品を所定の数・所定の向きで箱に入れる | ケースパッカー、多関節ロボット、サイドプッシュ機 | 箱が滞留する。ここだけ速くしても前後が追いつかない |
| 封函 | 上フラップを閉じてテープまたは糊で封をする | 封函機(ケースシーラー) | 封がずれた箱が下流に流れ、パレタイズや輸送で問題になる |

3工程に分けると、発注のやり方が変わります。多くの引き合いでは「箱詰めを自動化したい」という一括りの依頼が出され、SIerはそれを一式のライン見積に変換します。しかし現実の工場では、3工程が同じ切迫度で困っているとは限りません。製函だけが人手で追いつかない工場もあれば、投入は人でよいが封函の品質がばらつく工場もあります。
3工程に分けた時点で、次の問いが立てられるようになります。いま人が何人、どの工程に張り付いているか。そのうち、置き換えたい人はどの工程にいるか。 この2問に数字で答えられないうちは、どのメーカーのどの機種を選んでも判断の根拠がありません。
そしてもう1つ、3工程に分けたときに初めて見えるものがあります。3工程は直列に繋がっているため、ラインの実力は3つのうち一番遅い工程で決まるという制約です。真ん中の投入工程だけを50函/分に上げても、製函が3函/分なら、ラインは3函/分のままです。この点は後段で数字を使って詳しく検算します。
止まるのは真ん中ではなく両端である
ここからが本記事の中心的な主張です。3工程のうち、発注者が最も熱心に比較するのは真ん中の投入工程です。ロボットが動く工程なので、動画映えもしますし、仕様も比較しやすい。一方で、実際にラインを止めるのは両端です。
上流側の断層は段ボールの品質です。自動製函機は、平らなブランクを吸盤で1枚引き抜き、決まった角度で折り、決まった位置で貼るという動作を繰り返します。この動作は、ブランクの寸法・折り目の入り方・糊の量・紙の硬さがすべて設計どおりであることを前提にしています。手で立てるときは人が微調整で吸収していた誤差を、機械は吸収しません。
もう一方の断層は、投入工程の直前にある供給の整列状態です。ロボットは、ワークが「どこに」「どの向きで」あるかを知らなければ掴めません。人はコンベヤ上でどう流れてきても手を伸ばして向きを直しますが、ロボットは決められた位置と姿勢でしか把持できません。ビジョンを付ければばら積みからでも取れますが、それは別の投資であり、サイクルタイムも変わります。
自動製函機のトラブルについて、Combi社は自社ブログで、詰まりの主な原因は機械ではなく段ボール側にあると整理しています。同社の担当者は、包装の自動化は使う段ボールの品質に対する要求を一段引き上げる、と説明しています。手作業なら通っていた段ボールが、自動機では通らなくなるということです。
Lantech社は、手作業の製函は平均で3函/分、自動製函機は最大で30函/分で安定すると示しています。同時に、手で立てた箱は歪みや非直角になりやすく、それが下流のケースパッカー・ロボット投入機・封函機で詰まりの原因になるとも述べています。つまり上流の箱の品質が、下流の設備の停止として現れるという因果です。
この因果関係が、投資の順番を決めます。真ん中に高速なロボットを置いても、片側から歪んだ箱が来て、もう片側から不揃いなワークが来るのであれば、増えるのは停止回数と復帰作業だけです。逆に、両端を整えてから真ん中を自動化すると、真ん中は比較的安いグレードで足りることがあります。
上流の断層1 — 段ボールの品質が自動化の可否を決める
段ボールは購買部門が価格で決めていることが多い資材です。自動化を決めた瞬間から、この決め方を変える必要があります。
自動製函機が止まる5つの段ボール要因
Combi社が挙げている要因を、発注側が確認できる形に整理すると次のようになります。
| 要因 | 何が起きるか | 発注側が確認すること |
|---|---|---|
| 糊のはみ出し | ブランク製造時に糊を付けすぎると内面が貼り付き、吸盤で引いても開かない | サプライヤの糊塗布量の管理値と、はみ出しの検査基準 |
| 罫線の深さ不足 | スコアが浅いと折りが不正になり、箱が直角に立たない | 罫線深さの規格値と、ロットごとの実測記録の有無 |
| 糊代の斜行 | 糊代が斜めに貼られていると、製函機で歪んだまま立つ | 貼り合わせの直角度の許容値 |
| 再生紙の使用 | 再生紙は繊維が短くなり、同一仕様でもバージンパルプ品より弱い | 原紙の再生比率と、その変更を通知する取り決めがあるか |
| 水濡れ・高湿度 | 輸送中や保管中に吸湿すると給紙不良が起きる | 輸送形態、倉庫の保管条件、入荷から使用までの日数 |

タイの工場で特に効くのは湿度と原紙の切り替え
上の5つのうち、タイの工場で実際に効いてくるのは後ろの2つです。
雨季を含めて年間を通じて湿度が高く、原材料倉庫が空調されていない工場は珍しくありません。段ボールブランクは吸湿すると腰が抜け、吸盤で引き抜くときに1枚ずつ剥がれずに複数枚が持ち上がる、あるいは折り位置で腰折れするといった不具合を起こします。人が立てているうちは「今日は柔らかいな」で済んでいた差が、自動機では給紙エラーとして表面化します。
原紙の切り替えも同様です。段ボールサプライヤは、同じ品番・同じ仕様書のまま原紙の調達先や再生比率を変えることがあります。手作業ならほぼ気づきませんが、自動製函機では立ち上がりの角度が変わり、下流の投入位置がずれます。
明日決められること
段ボールについて発注側が決めるべきことは、次の4点です。
第1に、段ボールの受入仕様書を、自動機を前提に書き直すこと。寸法公差だけでなく、罫線深さ、貼り合わせの直角度、糊のはみ出し許容、原紙の再生比率、含水率の管理範囲を明記します。ここに数値が入っていない仕様書は、自動化後は仕様書として機能しません。
第2に、原紙・再生比率を変更する際は事前通知を義務づけること。契約書または取引基本条件に1行加えるだけで、原因不明の停止が1つ減ります。
第3に、保管条件を決めること。入荷後の保管場所、床からの離隔、積み高さ、先入れ先出しのルール、そして「入荷から何日以内に使い切るか」の上限を決めます。空調投資をしなくても、置き場所と回転を変えるだけで給紙不良が減ることがあります。
第4に、設備の受入検収に、自社が実際に使う段ボールを使うこと。メーカーの工場で立会検収をするとき、メーカー手配のきれいな段ボールで試験して合格させると、現地で立ち上がりません。自社のブランクを、できれば雨季のロットを含めて複数ロット送り、それで連続運転させてください。この1点で立ち上げ期間が変わります。
上流の断層2 — 供給側が整列していなければロボットは掴めない
もう一方の断層は、箱に入れる製品そのものの供給です。
「整列」の3段階
供給状態は、次の3段階のどこにあるかで必要な投資がまったく変わります。
| 段階 | 供給の状態 | 必要になる設備 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 上流工程から一定の位置・姿勢で1列に流れてくる | 位置決めストッパと簡単な整列ガイド | 低い |
| 第2段階 | 向きは揃っているが位置がばらつく、または複数列で流れてくる | 整列コンベヤ、ラインアップ装置、位置補正用のビジョン | 中程度 |
| 第3段階 | 容器やコンテナにばら積みで供給される | ばら供給装置、フレキシブルフィーダ、3Dビジョン | 高い |

見積が割れる最大の理由がここにあります。同じ「箱詰め自動化」の引き合いでも、SIerが第1段階を前提に読んだ見積と、第3段階を前提に読んだ見積では、同じ金額になるほうが不自然です。発注側が供給状態を書かないまま相見積を取ると、安い見積が優秀に見えてしまいます。見積の読み方についてはロボットSIerの選び方と見積が割れる理由で詳しく扱っています。
ボウルフィーダとフレキシブルフィーダの分岐点
第3段階のばら供給に対する解は、大きく2つに分かれます。
FeedAll社の整理によれば、ボウルフィーダは品種ごとに専用のボウル・治具・段取りが必要になります。一方、ビジョン式のフレキシブルフィーダは複数品種を同時に扱うことができ、切替はタッチパネルで品種プロファイルを選ぶだけで済みます。ロボットが取り残したワークは循環させて再供給されます。
この違いは、カタログ上は「対応品種数」という1行の差にしか見えません。しかし工場の実務では、切替のたびに人がボウルと治具を物理的に交換して調整し直すか、オペレーターがタッチパネルで品種プロファイルを選ぶだけか、という日々の差になります。前者の所要時間は自社の段取り記録から実測してください。
分岐点は品種数ではなく、1日あたりの切替回数です。品種が10種類あっても月に1回しか切り替えないならボウルフィーダで足ります。品種が3種類でも1日に4回切り替えるなら、ボウルフィーダの段取り時間が自動化の効果を食い潰します。発注前に、直近3か月の生産実績から1日あたりの切替回数を数えてください。この数字が、供給側の構成をほぼ決めます。
ビジョンを使う場合の費用の考え方と、ばら積みからの取り出しがどこまで実用になるかについては、ロボットビジョン導入の費用と投資回収に整理しています。
ロボットハンドの選定は「製品形状」ではなく「供給状態」から決まる
ハンドの選定を「製品が何か」から始めると、ほぼ確実に選び直しになります。同じ製品でも、供給状態が違えば必要なハンドが違うためです。
供給状態がハンドを決める
供給が第1段階、つまり一定の位置と姿勢で1列に流れてくる場合、ハンドは単純な吸着パッドまたは平行チャックで足ります。しかも複数個を同時に掴めるため、1回の動作で1函分をまとめて投入できます。サイクルタイムはロボットの動作回数で決まるので、同時把持数を増やせるかどうかが速度を決めます。
供給が第3段階、つまりばら積みの場合、ワークの姿勢が毎回違うので同時把持ができません。1個ずつ取って、姿勢を直して、並べてから投入することになります。同じロボット、同じ製品でも、必要な台数もサイクルタイムも変わります。
決める順序
ハンドは次の順序で決めてください。
第1に、供給状態を第1・第2・第3段階のどれにするかを決めます。これは供給装置への投資判断であり、ハンドの前提です。
第2に、その供給状態で1回に何個掴むかを決めます。ここで必要なサイクルタイムが決まります。
第3に、把持方式を決めます。吸着は平面がある剛体に向き、通気性のある紙器や柔らかい袋には向きません。平行チャックは形状が安定していれば確実ですが、隣接するワークとの隙間が必要です。挟み込みや掬い上げは不定形品に使えますが、位置決め精度が落ちます。
第4に、品種展開を決めます。全品種を1つのハンドで扱えるのか、品種群ごとにハンドを分けるのか、ツールチェンジャで自動交換するのか。ここが費用に効きます。ハンドを品種群ごとに分ければ、その本数だけ設計費と治具費が積み上がり、さらに保管場所と交換の段取りが増えます。見積を取るときは、ハンドの費用を1本あたりの単価と本数に分けて出させてください。
よくある失敗
ハンドの試作を「製品サンプルを送って作ってもらう」形で進めると、供給状態の前提がSIer任せになります。SIerは通常、最も条件のよい第1段階を暗黙の前提に置きます。結果として、試作段階では問題なく掴めたのに、現地で実際の供給に繋いだ途端に取りこぼしが多発する、という展開になります。サンプルを送るときは、そのサンプルがどう流れてくるかの動画を必ず一緒に送ってください。
袋詰め・不定形品はどこから難しくなるか
箱に入れる中身が箱物ではなく袋物である場合、難易度は段階的に上がります。どこから難しくなるのかを、条件で切り分けておきます。
| 条件 | 難易度への影響 | 対応の方向 |
|---|---|---|
| 中身が固形で袋が張っている | 剛体に近く扱いやすい | 吸着で対応できる場合が多い |
| 中身が粉体や粒体で流動する | 掴んだ瞬間に重心が動き、姿勢が崩れる | 掬い上げ方式、または袋を寝かせたまま押し込む方式 |
| 袋の充填率が低くシール部の余りが大きい | 吸着面が確保できず、余ったフィルムが引っかかる | 平坦化コンベヤで形を整えてから供給 |
| 袋を立てて箱に詰める必要がある | 自立しないため、投入後に倒れて次が入らない | 箱側にガイドを入れる、または複数袋を一括投入 |
| 袋の表面が滑りやすいフィルム | 搬送中に位置がずれ、整列が維持できない | 搬送速度の見直し、ガイド追加、姿勢検出の追加 |
袋詰めの難しさは、袋そのものではなく姿勢が保てるかどうかに集約されます。逆に言えば、姿勢を保つ仕掛けを供給側に作れば、ハンドは単純なもので足ります。ここでも投資すべきは真ん中ではなく上流です。
なお、袋物を扱う工場で最も費用対効果が高い変更は、多くの場合ロボットの選定ではなく袋の仕様の見直しです。充填率を上げてシール部の余りを減らす、フィルムの滑り性を変える、といった包材側の変更で、必要な設備のグレードが1段下がることがあります。包材の変更は品質保証部門との調整が要りますが、設備投資より安く、リードタイムも短い選択肢です。
費用を5層に分解する
見積を比較する前に、費用を層で分けます。層で分けないと、安い見積が「安い」のか「範囲が狭い」のかを判別できません。
5つの層
| 層 | 内容 | 見積で落ちやすいか |
|---|---|---|
| 第1層 | 上流の段ボール対策。受入仕様の変更、サプライヤ選定、保管条件の整備 | ほぼ必ず範囲外。発注側の仕事として残される |
| 第2層 | 供給・整列。整列コンベヤ、フィーダ、ばら供給装置、位置補正のビジョン | 供給状態の前提が書かれていないと安い側に振れる |
| 第3層 | 主機。製函機、ケースパッカーまたはロボット、封函機 | ここだけは必ず載る。カタログ価格が存在する |
| 第4層 | ハンド・治具。把持ツール、品種別治具、ツールチェンジャ | 品種数の前提で大きく動く |
| 第5層 | 据付・安全・立上げ。安全柵、インタロック、リスクアセスメント、搬入据付、試運転、操作教育、現地サポート | 現地据付とサポートの条件が曖昧なまま契約されがち |
一次情報の価格は第3層にしか付いていない
ここが重要です。公開されている価格情報は、そのほとんどが第3層の主機に対するものです。
HIJ Packing Machine社は、ケースパッキング機の価格帯を12,000米ドルの半自動封函機から85,000米ドルのサイドプッシュ式全自動ケースパッカーまでとしています。1米ドル=約32バーツで換算すると、384,000バーツから2,720,000バーツです。
一方、SIerであるMotion Controls Robotics社は、約20函/分を想定したロボット式ケースパッキングラインを150,000米ドルから300,000米ドル超と示しています。同じ換算で4,800,000バーツから9,600,000バーツです。同社はあわせて、手動段取りの製函機を35,000米ドルから65,000米ドル超、自動ランダム製函機を150,000米ドル超、ライン端一式では750,000米ドル以上になることもある、としています。下流のパレタイジングラインは200,000米ドルから400,000米ドル超です。
出典が異なるため厳密に同一構成の比較ではありませんが、オーダー感として意味のある差が読み取れます。全自動ケースパッカー1台の85,000米ドルに対し、ラインとしての価格は150,000米ドルから300,000米ドル超。ケースパッカー1台以外が投資額のおよそ43%から72%を占めるという計算になります。この43%から72%の中身は、同じ第3層に属する製函機と封函機、第2層の供給・整列、第4層のハンド・治具、第5層の据付・安全・立上げです。手動段取りの製函機だけでも35,000米ドルから65,000米ドル超ですから、この差額のうち相当部分は第3層の残り2台で埋まります。第1層の段ボール対策はSIerの見積範囲に入らないため、この差額にも含まれていません。発注側の費用として別に積む必要があります。
つまり、ケースパッカー1台のカタログ価格を根拠に稟議を作ると、実際の投資額のおよそ3割から6割しか計上していないことになります。逆に、SIerの一式見積が高く見えるとき、その差額の多くは利益ではなく、両端と据付です。
品種対応が主機の価格を跳ね上げる
製函機の価格差は、この構造を最もはっきり示しています。手動段取りの製函機が35,000米ドルから65,000米ドル超であるのに対し、自動ランダム製函機は150,000米ドル超です。倍率にすると、およそ2.3倍から4.3倍になります。
差額を払っているのは速度ではなく、箱サイズを人が触らずに切り替える能力です。1日に何回箱サイズが変わるかを数えていないまま「将来の多品種化に備えて」ランダム機を選ぶと、この差額が回収されないまま資産に残ります。
速度は「函/分」ではなく一番遅い工程の函/分で決まる
カタログに載る速度は、その機械が単独で理想条件で出せる値です。ラインの速度はそうなりません。
各工程の速度レンジ
製函の2行はLantech社、それ以外の3行はHIJ Packing Machine社が示している値です。
| 工程・方式 | 速度 | 出典 |
|---|---|---|
| 手作業の製函 | 平均3函/分 | Lantech |
| 自動製函機 | 最大30函/分で安定 | Lantech |
| 半自動のケースパッキング機 | 15〜25函/分 | HIJ Packing Machine |
| 製函・投入・封函の一体型 | 30〜50函/分 | HIJ Packing Machine |
| サーボ駆動のサイドプッシュ式 | 40〜60函/分 | HIJ Packing Machine |
自動製函機は手作業のおよそ10倍です。この10倍という差が、ライン全体でどう効くかを見ます。
律速の計算
サーボ駆動のサイドプッシュ式を50函/分で導入し、製函は当面手作業で毎分3函のまま残したとします。このときラインの出力は3函/分です。パッカーの能力に対する利用率は、3を50で割って6%です。50函/分の設備を6%で回しているという状態になります。
同じ投資額を、まず自動製函機に向けたらどうなるか。製函が30函/分に上がると、律速は次に遅い工程へ移ります。仮に投入が手作業で追いつかないなら、そこが新しい律速です。律速は消えるのではなく移動します。移動先を先に予測しておくことが、段階投資の設計です。
実効速度をどう見積もるか
カタログ値をそのまま日産に換算しないでください。1日に実際に流れる函数は、次の考え方で出します。
まず1日の運転時間から、品種切替に要した停止時間を差し引いて、正味の運転分数を出します。次にその運転分数に、律速工程のカタログ速度と稼働率と良品率を掛けます。これが実際に出荷できる1日の函数です。ここでの稼働率は、品種切替をすでに差し引いているため、切替以外の停止だけを対象にします。二重に引かないでください。稼働率、良品率、切替時間の3つは、他社の平均値を借りても意味がありません。自社の現行ラインで1週間実測してください。この3つの実測値がないまま設備の函/分だけで比較すると、導入後に「カタログどおり出ない」という議論になります。
タイ工場での回収をどう組み立てるか
ここから、タイ拠点の人件費で回収を検算します。以下はすべて本記事の試算であり、前提を変えれば結論は変わります。前提はすべて明示します。
前提
バンコク近郊の工場を想定します。バンコク都の最低賃金は、ジェトロによれば2025年7月1日施行で日額400バーツです。改定前は372バーツで、この改定の対象はおよそ70万人とされています。
作業者1人あたりの実負担は、最低賃金そのものではありません。社会保険、時間外割増、賞与、通勤手当、食堂補助などを含めます。本記事では割増率を40%と置きます。したがって実負担は日額560バーツです。
稼働は月26日、1直8時間の2交代とします。1人あたりの年間人件費は、560バーツに26日と12か月を掛けて174,720バーツです。
ライン端の製函・投入・封函には、2交代で1直3人、合計6人が張り付いているとします。内訳は1直あたり製函1人、投入2人で、封函は投入担当が兼務しているとします。6人分の年間人件費は1,048,320バーツです。
現状のライン実効速度は、律速である手作業の製函に合わせて3函/分とします。ここから月産を計算すると、およそ75,000函です。3函/分に60分、8時間、2交代、26日を掛けると74,880函になります。この工場は、現状の設備能力と受注量がほぼ釣り合っている状態だとします。したがって本試算では増産による効果を分子に入れません。作った分が売れるかどうかは設備ではなく需要で決まるためです。
為替は1米ドル=約32バーツで換算します。
削減できる人数と、削減できない人数
6人全員が消えるという前提を置いてはいけません。自動化後も残る作業があります。
| 残る作業 | 理由 |
|---|---|
| 段ボールブランクの補充 | マガジンへの補給は自動化範囲外に置かれることが多い |
| テープ・糊の補充と交換 | 消耗品の残量管理は人が見る |
| パレット交換と完成箱の払い出し | パレタイジングまで含めない構成では人が残る |
| 異常復帰 | 詰まり、給紙不良、ワーク落下への対応 |
| 品質確認 | 封の状態、内容物の員数、ラベルの確認 |
本試算では、6人のうち4人を削減し、1直1人ずつ計2人が残ると置きます。年間の削減額は、174,720バーツに4人を掛けて698,880バーツです。
投資額と回収年数
投資額は前掲のSIer概算のレンジを採ります。ロボット式ケースパッキングラインの150,000米ドルから300,000米ドル超に対し、best側を150,000米ドル、worst側を300,000米ドルとします。バーツ換算で4,800,000バーツと9,600,000バーツです。
保守・消耗品・電力などの年間費用は、投資額の年5%と置きます。best側で240,000バーツ、worst側で480,000バーツです。
| 項目 | best | worst |
|---|---|---|
| 投資額 | 4,800,000バーツ | 9,600,000バーツ |
| 年間の人件費削減 | 698,880バーツ | 698,880バーツ |
| 年間の保守等費用 | 240,000バーツ | 480,000バーツ |
| 年間の純便益 | 458,880バーツ | 218,880バーツ |
| 回収年数 | 10.5年 | 43.9年 |
計算は次のとおりです。best側は、698,880から240,000を引いて458,880バーツ。4,800,000を458,880で割って10.5年です。worst側は、698,880から480,000を引いて218,880バーツ。9,600,000を218,880で割って43.9年です。
なお、この投資額は約20函/分を想定したSIer概算です。本試算の工場は現状3函/分、月産74,880函ですから、20函/分のラインは能力として大きく過剰です。過剰な能力を買っていること自体が、回収年数を長くしている一因です。実務では、必要な函/分を先に決め、その速度に見合った構成で見積を取り直すことになります。
人件費の削減だけを分子に置くと、タイでは回収しません。 これが本試算の結論です。日額400バーツという水準では、ライン端4人分の年間人件費が698,880バーツにしかならず、数百万バーツの設備投資に対して分子が小さすぎます。
メーカーが説明する「85%削減」「1〜2年回収」をどう読むか
HIJ Packing Machine社は、全自動化によりライン端の労務を最大85%削減でき、中量産では1〜2年で回収すると説明しています。これはメーカー側の説明であり、記事としての断定ではありません。重要なのは、この数字が成立する前提は何かを逆算することです。
まず85%について。本試算の6人に85%を掛けると5.1人です。しかし本試算で削減できるのは4人、割合にすると約67%でした。差の1.1人は、段ボール補充・パレット交換・異常復帰として残した人です。85%を実現するには、ブランクの自動供給、パレタイジングとの直結、異常の自動復帰までスコープに入れる必要があります。それはより広い範囲の投資であり、85,000米ドルの機械1台の話ではありません。
次に1〜2年回収について。全自動ケースパッカーの85,000米ドル、すなわち2,720,000バーツを1年で回収するには、年間2,720,000バーツの削減が要ります。本試算の1人あたり174,720バーツで割ると約15.6人分です。2年回収なら年間1,360,000バーツ、約7.8人分になります。これは保守費用を含めない粗い逆算であり、保守を差し引けば必要人数はさらに増えます。
つまりメーカーの説明が成立するのは、ライン端に常時8人から16人が張り付いている規模の工場か、人件費水準がタイの数倍である国です。タイで1直3人のラインに当てはめる数字ではありません。この逆算を稟議の前にやっておくと、提案書の回収年数をそのまま社内に持ち込まずに済みます。
参考までに、機械単体の2,720,000バーツに対して4人削減が成立すると仮定すれば、保守5%の136,000バーツを引いた純便益は562,880バーツとなり、回収は4.8年になります。ただしこの前提は成立しません。機械単体の価格には第1層・第2層・第4層・第5層が含まれておらず、供給と製函が手作業のまま残るからです。機械の価格とラインの効果を組み合わせた計算は、まさに両端を見落とした計算です。
感応度は「稼働率に依存する効果」だけに掛ける
回収の感応度を見るとき、稼働率を落としたケースを作ることがあります。ここで係数を全効果に一律で掛けてはいけません。
人件費の削減額698,880バーツは、稼働率に依存しません。作業者はシフトに張り付いており、ラインが止まっている時間も賃金は発生しています。その4人を配置転換すれば、ラインの稼働率が0.9であろうと0.7であろうと、消える人件費は同じです。
一方、増産による売上増、残業の削減、スクラップの削減は、稼働率に比例します。稼働率が0.9から0.7に下がれば、0.7を0.9で割った約0.78倍になります。
| 効果 | 稼働率への依存 | 稼働率0.9→0.7での扱い |
|---|---|---|
| 人件費削減 698,880バーツ | 依存しない | 698,880バーツのまま |
| 増産・残業削減・スクラップ削減 | 依存する | 約0.78倍 |
誤って人件費削減にも0.78を掛けると、698,880バーツが545,126バーツになります。保守240,000バーツを引いた純便益は305,126バーツ、回収年数は4,800,000を305,126で割って15.7年です。正しくは10.5年ですから、5.2年も長く見積もることになります。慎重に見たつもりが、投資判断を誤らせる方向に働きます。
分子に足すのか、分母を下げるのか
人件費だけで回収しない以上、回収させるには分子を足すか分母を下げるかしかありません。現実的な選択肢は4つです。
第1に、対象人数を増やす。3交代化する、複数ラインで1台のロボットを共用する、あるいは箱詰めとパレタイジングを、案件は分けたまま1つの投資判断として束ねる。パレタイジングまで含めた場合の構成はパレタイジングロボットの価格と投資回収を参照してください。
第2に、スコープを絞る。ライン一式ではなく、律速である製函だけを自動化する。手動段取りの製函機は35,000米ドルから65,000米ドル超、すなわち1,120,000バーツから2,080,000バーツです。ライン一式のbest側4,800,000バーツと比べると、分母は4分の1から半分以下になります。ただし分子も同時に縮みます。本試算の内訳では製函に張り付いているのは1直1人、2交代で2人です。しかも段ボールブランクの補充と詰まり復帰は残るため、削減できるのは2人には届きません。分母が下がれば自動的に回収が近づくわけではないので、絞った範囲の分母と分子を両方入れ替えて計算し直してから決めてください。
第3に、停止時間と品質を自社実測で分子に足す。手で立てた箱の歪みが下流の詰まりを起こしているのであれば、その停止時間には金額が付きます。ただし削減幅の一次情報がないため、本記事の試算にはこの効果を入れていません。入れる場合は自社の実測値を使ってください。他社の平均値を借りると、分子だけが都合よく膨らみます。
第4に、投資奨励措置で分母を下げる。これは次節で触れます。
なお、ライン端の外側、つまり完成した箱を工場内でどう動かすかまで含めて設計すると、投資の対象範囲が変わります。構内搬送との接続については工場内物流の改善は3層で進むにまとめています。
BOIと投資の分母
タイには、自動化・ロボット導入に対する投資奨励措置があります。適用されれば、前節で見た分母が下がり、回収年数の計算が変わります。
本記事では告示番号や要件の詳細には踏み込みません。制度は改定されるうえ、適用可否は事業内容と申請時期によって変わるためです。一次情報はジェトロがまとめているタイのBOI関連法令・告示一覧から確認できます。適用の可否と手続きの実務については、パレタイジングロボットの価格と投資回収でより詳しく扱っています。
実務上の要点だけ書いておきます。制度の適用可否を確認するのは、設備の仕様を固める前です。適用要件によって、対象となる設備の範囲や導入時期に条件が付くことがあります。仕様と契約を先に固めてから確認すると、条件に合わせた変更ができません。
品種切替 — 自動化して増える段取りがある
自動化すると段取りが減る、という前提は半分しか正しくありません。減る段取りもありますが、自動化して初めて発生する段取りがあります。
| 自動化後に発生する段取り | 内容 |
|---|---|
| 箱サイズの切替 | 手動段取り機ではガイド幅・折り位置を人が調整する。ランダム機なら自動 |
| ハンドの交換 | 品種群ごとにハンドを分けている場合、物理的な交換と原点確認が要る |
| ロボットプログラムの切替 | 投入パターン、段数、置き位置の変更 |
| 供給側の品種切替 | ボウルフィーダなら専用ボウルと治具の物理交換、フレキシブルフィーダならタッチパネルでの品種プロファイル選択 |
| 供給側ガイドの幅調整 | 整列コンベヤのガイド、ストッパ位置 |
| 初品確認 | 切替後の1函目を人が開けて員数と向きを確認する |
手作業のラインでは、これらの多くは「作業者が持ち方を変える」だけで済んでいました。自動化すると、機械の段取りとして時間が計上されます。1回15分の段取りが1日4回あれば1時間、月26日で26時間です。この26時間は、自動化前には存在しなかった停止時間です。
したがって、品種切替が多い工場では次の順序で考えてください。まず直近3か月の生産実績から、1日あたりの切替回数を数えます。次に、切替回数が多い品種の組み合わせを特定します。そのうえで、切替の多い組み合わせだけを1つのハンド・1つの箱サイズに寄せられないかを検討します。設備で解くより、生産計画と包材の統合で解くほうが安く済むことがあります。設備を選ぶのはその後です。
発注前に紙で決める9項目
見積を取る前に、次の9項目を自社で書いてください。この9項目が埋まっていない状態で相見積を取ると、各社が別々の前提で見積もるため、金額の比較が成立しません。
| # | 決めること | 決め方の指針 |
|---|---|---|
| ① | 対象範囲は製函・投入・封函のどれか | 3工程を分けて書き、それぞれ「今回やる・次回・やらない」を明記する |
| ② | 供給状態は第1・第2・第3段階のどれか | 実際の供給を動画で撮り、見積依頼に添付する |
| ③ | 対象品種と構成比 | 上位品種で数量の何割を占めるかを出す。全品種対応は最後に検討する |
| ④ | 1日あたりの品種切替回数 | 直近3か月の実績から数える。フィーダとハンドの構成がここで決まる |
| ⑤ | 律速工程と目標函/分 | 現状の実効速度を実測し、どこを何函/分にするかを1行で書く |
| ⑥ | 段ボールの受入仕様 | 罫線深さ、直角度、糊のはみ出し、再生比率、含水率の管理範囲を数値で書く |
| ⑦ | 削減する人数と残す人数 | 残す人が担当する作業を名指しで書く。ここを曖昧にすると効果が水増しされる |
| ⑧ | 検収条件 | 自社の段ボールと自社のワークで、何時間の連続運転をもって合格とするかを書く |
| ⑨ | 現地サポートの条件 | 立会・教育・部品在庫・応答時間。タイ国内に対応拠点があるかを確認する |
このうち最も飛ばされやすいのが⑧です。検収条件を書かずに契約すると、立ち上げ期のトラブルがすべて「現地の運用の問題」として整理されます。自社の段ボール、自社のワーク、自社の切替回数で連続運転させる条件を、契約書に入れてください。
よくある質問(FAQ)
箱詰め自動化ロボットの費用はどれくらいですか?
公開されている価格情報では、機械単体で12,000米ドルから85,000米ドル、1米ドル=約32バーツ換算で384,000バーツから2,720,000バーツです。ただし下限の12,000米ドルは半自動の封函機であり、上限の85,000米ドルがサイドプッシュ式の全自動ケースパッカーです。同じレンジの中に別物が入っている点に注意してください。ただしこれは主機のみの価格です。SIerによる約20函/分のロボット式ケースパッキングラインの概算は150,000米ドルから300,000米ドル超、4,800,000バーツから9,600,000バーツです。ケースパッカー1台以外が、製函機と封函機を含めておよそ43%から72%を占めます。ライン端一式では750,000米ドル以上になることもあります。
製函機だけ先に入れられますか?
入れられますし、多くの工場ではそれが合理的です。手作業の製函は平均3函/分、自動製函機は最大30函/分で安定します。製函が律速になっている工場では、ここを直すだけでライン全体の出力が変わります。手動段取りの製函機は35,000米ドルから65,000米ドル超で、ライン一式に比べて分母が大きく下がります。ただし製函に張り付いている人数しか削減できないため、分子も同時に縮む点を忘れないでください。ただし律速は消えるのではなく次の工程へ移動しますので、移動先を先に想定しておいてください。
袋詰めの自動化は箱詰めより難しいですか?
条件によります。中身が固形で袋が張っていれば剛体に近く扱えますが、粉体や粒体で流動する場合は掴んだ瞬間に重心が動き、姿勢が崩れます。充填率が低くシール部の余りが大きい袋も、吸着面が確保しにくく難易度が上がります。難しさは袋そのものではなく姿勢が保てるかどうかに集約されるため、供給側で姿勢を整える仕掛けを作れば、ハンドは単純なもので足りることが多くあります。袋の充填率やフィルム仕様の見直しが、設備投資より安い解決策になる場合もあります。
協働ロボットで箱詰めはできますか?
できる場合とできない場合があります。判断はロボットの種類ではなく、必要なサイクルタイムと供給状態から決まります。協働ロボットは安全柵を省略できる可能性がある一方、人と共存するために動作速度に制限がかかります。したがって、目標の函/分が高いほど不利になり、あるところで速度制限そのものが律速になります。まず前節の⑤、律速工程と目標函/分を数字で決め、候補機種のリスクアセスメント後の実効速度をメーカーに出させてください。カタログの最高速度ではなく、安全機能を有効にした状態の速度で比較すれば、協働ロボットで足りるかどうかは自動的に決まります。
段ボールは変えないといけませんか?
品番を変える必要はありませんが、受入仕様の管理項目は増やす必要があります。自動製函機の詰まりの主な原因は機械ではなく段ボール側であり、糊のはみ出し、罫線の深さ不足、糊代の斜行、再生紙による強度低下、水濡れや高湿度による給紙不良が挙げられています。包装の自動化は段ボールの品質に対する要求を一段引き上げる、というのがCombi社の説明です。まずは罫線深さ、貼り合わせの直角度、糊のはみ出し許容、原紙の再生比率、含水率の管理範囲を仕様書に数値で書き、原紙変更時の事前通知を取り決めるところから始めてください。
パレットに積むところまで一緒に自動化すべきですか?
投資の分子を大きくできるという意味では有利ですが、案件としては分けて設計してください。箱詰めとパレタイジングでは設備構成が異なり、SIer概算でもパレタイジングラインは単独で200,000米ドルから400,000米ドル超と、箱詰めラインとは別建てで示されています。ライン端一式にまとめると750,000米ドル以上になることもあります。まず箱詰め側の律速と供給状態を確定させ、そのうえで下流を接続する順序が現実的です。
まとめ
箱詰めの自動化は、1台の機械を買う話ではなく、製函・投入・封函という3工程の連鎖を設計する話です。発注者はロボットが動く真ん中の工程を比較しますが、ラインが止まるのは両端です。
上流の断層は段ボールの品質です。糊のはみ出し、罫線の深さ不足、糊代の斜行、再生紙による強度低下、水濡れや高湿度が、自動製函機の詰まりを生みます。手で立てた箱の歪みは、下流のケースパッカーや封函機の停止として現れます。手作業の製函は平均3函/分、自動製函機は最大30函/分です。
もう一方の断層は供給の整列状態です。整列済みの1列供給か、位置がばらつくか、ばら積みか。この3段階のどこにあるかで、必要な設備もハンドも投資額も変わります。ボウルフィーダとフレキシブルフィーダの分岐点は品種数ではなく、1日あたりの切替回数です。
費用は5層に分かれます。公開価格が付いているのは第3層の主機だけで、全自動ケースパッカー単体の85,000米ドルに対し、ラインは150,000米ドルから300,000米ドル超。ケースパッカー1台以外が、製函機と封函機を含めておよそ43%から72%を占めます。速度についても、50函/分のパッカーの前に3函/分の手作業製函があれば、ラインは3函/分、パッカーの利用率は6%です。
タイでの回収については、本記事の試算では厳しい結果になりました。バンコク都の最低賃金400バーツ/日に法定福利等40%を上乗せした560バーツ/日、月26日、2交代3人の6人体制を前提に、4人を削減した場合の年間削減額は698,880バーツです。投資4,800,000バーツから9,600,000バーツ、保守を年5%として、回収は10.5年から43.9年になります。人件費だけを分子に置くと回収しません。
メーカーが説明する85%削減と1〜2年回収は、逆算するとライン端に常時8人から16人が張り付いている規模、または人件費水準がタイの数倍の国を前提としています。感応度を見るときは、稼働率に依存しない人件費削減にまで係数を掛けないでください。誤って一律0.78を掛けると回収が10.5年から15.7年に伸び、5.2年も長く見積もることになります。
したがって、明日決めるべきことは設備の機種ではありません。3工程のうちどこが律速かを実測すること、供給状態が第1・第2・第3段階のどれかを動画で確定させること、段ボールの受入仕様に数値を入れること、そして1日あたりの品種切替回数を数えること。この4つが埋まってから見積を取れば、各社の金額が同じ土俵に乗ります。
どの工程から自動化すべきかがまだ決まっていない段階でも、律速の実測と供給状態の切り分けだけを一緒に確認する、という関わり方で構いません。TOMAS TECHはタイの日系製造業向けに、現場の実測、工程設計、SIer選定の技術的助言、立ち上げまでを一貫してお手伝いしています。段ボールの受入仕様を見直すだけで停止が減るケースもありますので、設備投資を前提にしないご相談でもお問い合わせからお気軽にお声がけください。
参考情報
- Most Troubles with Automated Box Forming Aren’t the Machine, It’s the Corrugated — Combi Packaging Systems 自動製函機の詰まりの主因が段ボール側にあること、糊のはみ出し・罫線深さ不足・糊代の斜行・再生紙の強度低下・水濡れと高湿度
- Packaging Line Downtime and the Case Erector — Lantech 手作業の製函は平均3函/分、自動製函機は最大30函/分、手で立てた箱の歪みが下流の詰まりを招くこと
- Manual vs. Automated Case Erecting — Lantech 手作業の製函と自動製函の使い分け
- Case Packing Machines — HIJ Packing Machine 12,000米ドルから85,000米ドルの価格帯、15〜25函/分・30〜50函/分・40〜60函/分の速度帯、メーカーによる85%削減と1〜2年回収の説明
- How Much Is a Pick, Pack, Pal Robot Cell Going to Cost — Motion Controls Robotics 約20函/分想定でのロボット式ケースパッキングライン150,000〜300,000米ドル超、パレタイジングライン200,000〜400,000米ドル超、手動段取り製函機35,000〜65,000米ドル超、自動ランダム製函機150,000米ドル超、ライン端一式750,000米ドル以上
- Flexible Feeding Systems — FeedAll ボウルフィーダの品種別治具と段取り、ビジョン式フレキシブルフィーダの品種プロファイル切替と循環再供給
- タイの最低賃金引き上げに関するビジネス短信 — ジェトロ バンコク都の最低賃金は日額400バーツ、改定前372バーツ、2025年7月1日施行、対象は約70万人
- タイのBOI関連法令・告示一覧 — ジェトロ タイの投資奨励制度に関する一次情報の所在
- タイ食品市場環境実態調査 2026年3月 — ジェトロ 食品分野で箱詰め自動化を検討する際にタイ市場の状況を確認するための背景資料