AI外観検査を導入するとき、モデルの精度だけを先に議論すると、量産ラインで使える画像が得られないことがあります。照明は欠陥を「見える情報」に変える装置です。本稿では、反射ワークの撮像、ドーム照明と同軸照明の比較、サンプル試験、FAT・SATの受入条件まで、照明選定を導入工程に結び付けて整理します。タイの工場で既存ラインに後付けする場合も、考え方は同じです。最初にワークと欠陥を定義し、光学系を試し、現場条件で再現できるかを確認します。
なぜAI外観検査では照明選定が先なのか
カメラが受け取るのは、物体そのものではなく、光源から出てワークで反射・透過・散乱し、レンズを通った光です。欠陥と正常部の違いが画像に現れなければ、学習データを増やしても判定の根拠を安定して得ることは難しくなります。逆に、照明で背景を抑え、見たい変化を強調できれば、モデルが扱う課題を明確にできます。これは「AIを使わない」という意味ではありません。AIに渡す観測条件を設計するという意味です。
KEYENCEの照明選定ガイドは、反射・透過などの照明方法、形状と大きさ、波長の順で検討する手順を示しています。Baslerの技術解説も、暗すぎる画像ではノイズが、明るすぎる画像では白飛びが問題となり、照明方式によって見える特徴が変わると説明しています。どちらも「明るければよい」という選び方を勧めていません。
照明の検討を後回しにすると、撮像した正常品と不良品の差が小さいまま、しきい値やAIモデルの調整で問題を吸収しようとしがちです。しかし、季節や時間帯で変わる外光、品種ごとの表面仕上げ、ワークのわずかな傾きによるハイライト移動は、撮像条件が固定されていないことを表します。まず光学的に欠陥を見せる条件を決め、その条件を機械設計、トリガー、運用手順まで保つことが重要です。
最初に決めるのは「何を不良とするか」
照明器具のカタログを開く前に、欠陥名だけでなく、判定対象の場所、最小サイズ、深さや色の差、許容する外観ばらつき、検査しない領域を記述します。同じ「傷」でも、研磨面の浅い線傷、樹脂成形品の擦れ、透明フィルムの折れは光の返り方が違います。良品限界サンプルと不良限界サンプルを現物で集め、品質部門と判定をすり合わせます。良品の模様を誤って不良とみなさないためのサンプルも必要です。
一つの画像で全欠陥を無理に見ようとする必要はありません。表面の微細傷と外形欠けでは最適な照明が異なることがあります。検査項目を分けて複数の撮像条件を使う方が、品質の説明と保守が簡単になる場合があります。ただし撮像回数が増えるとタクト、配線、トリガー、データ保存量に影響するため、ライン側の制約と併せて判断します。
外観検査の照明の選び方:光の当て方を先に比較する
主な方式は正面からの明視野、浅い角度からの暗視野、多方向からの拡散光、背面からの透過光です。方式名は「器具の形」だけでは決まりません。同じバー照明でも位置と角度を変えれば、背景を明るくする使い方と傷だけを光らせる使い方があります。Baslerの解説では、浅い角度の暗視野は傷やエッジを明るく見せ、透過光は輪郭を示す一方で表面の情報を失うと整理されています。
| 観察したい情報 | 最初に試す方式 | 期待する見え方 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| 平坦な金属面の微小な傷 | 低角度暗視野、方向を変えたバー照明 | 傷からの散乱だけが明るい | 傷の方向で見え方が変わる |
| 鏡面に近い平面の刻印・汚れ | 同軸照明、拡散同軸照明 | 面の明るさを整え、異常の差を出す | 傾きや段差で暗部ができる |
| 曲面や凹凸のある反射ワーク | ドーム照明 | 多方向からの光で局所反射を抑える | 微細な凹凸の陰影まで消すことがある |
| 穴、輪郭、寸法の確認 | バックライト | シルエットを安定させる | 表面傷は原則として別の撮像が必要 |
| 色差、印刷の違い | 波長を比較した照明と適切なカメラ | 対象と背景のコントラストを変える | 色判定が要件なら単色画像だけでは不足し得る |
この表は機種を決める答えではなく、試験順を作るための出発点です。実際のワークでは材質、曲率、コーティング、背景色、作動距離が重なります。同一サンプルを複数の方式で撮り、見たい欠陥が周囲より安定して識別できるかを比較します。

明視野と暗視野を切り替えると、傷の意味が変わる
明視野では、平滑な面からカメラへ戻る反射を利用します。暗視野では、正常面からの正反射がカメラに入らないよう低角度で照射し、傷や端面から散乱した光を拾います。暗視野を使うと傷が明るい線として見えやすくなりますが、表面テクスチャも一緒に強調される場合があります。採用前に、欠陥と良品模様の双方を比較することが必要です。
傷の向きが一定しない場合、片側のバー照明だけでは光らない方向が残ることがあります。反対側や直交方向からも照射して画像を比較し、必要なら順次点灯して複数画像を取得します。複数照明を同時に点灯すると、それぞれのコントラストが混ざって欠陥が埋もれることもあります。照明の数を増やす前に、どの方向の光が何を見せるのかを記録します。
ドーム照明と同軸照明の比較:反射ワークでの判断
同軸照明は、ビームスプリッターなどを用いてカメラの光軸に沿って光を当てます。平坦で反射性のある面に向く選択肢です。ワークが傾いたり、面に段差や曲率があったりすると、戻り光の分布が大きく変わります。ドーム照明は広い方向から拡散光を与え、曲面や凹凸のある反射ワークのまぶしい局所反射を抑える候補です。KEYENCEのガイドとA3の照明技術解説はいずれも、それぞれの方式が異なる表面条件に適することを示しています。
「反射するからドーム」と即決すると、浅い傷の陰影まで均してしまうことがあります。「平面だから同軸」と即決すると、搬送時の傾きで明暗が揺れるかもしれません。比較では、欠陥の見え方だけでなく、良品の位置・角度・個体差に対する背景の安定性を見ます。照明を交換できる治具を用意して、同一ロット・同一ワークの画像を記録すると比較しやすくなります。
偏光フィルターも反射を抑える候補ですが、光量が下がり、欠陥の信号も弱まることがあります。偏光を入れる前後で露光やゲインを無秩序に変えると公平に比較できません。画像条件と検査目標を固定した上で、どの情報が増減したかを確認します。偏光だけで透明体の内部欠陥が見えるといった一般化は避け、対象材で試験します。

照明の波長・カメラ・レンズを一体で決める
照明の色は見た目の演出ではなく、材質と欠陥の反射差を変える設計変数です。モノクロカメラでも、照明波長を変えると赤・青・黒などの対象の輝度関係が変わります。印刷色を「色として」判定するならカラーカメラと白色照明を含む評価が必要ですが、特定色の有無だけなら単色光とモノクロカメラでコントラストを作れる場合があります。Baslerの技術解説は、波長と表面の吸収・反射によって画像のコントラストが変わる例を示しています。
一方、波長だけを変えても、カメラの感度、レンズの透過、フィルター、照明出力、露光時間が合っていなければ比較は成立しません。サンプル試験では、使用するカメラとレンズの候補を明記し、各画像の照明方式、色、距離、角度、露光、ゲイン、絞り、焦点を保存します。後日「赤色が良かった」とだけ残しても再現できません。
画素分解能は入口であり、検出保証ではない
撮影視野と画素数から、物体上の1画素が何mmに当たるかを概算できます。説明用の計算例として、搬送方向の視野を80 mm、画像幅を2,048画素とすると、80÷2,048≒0.039 mm/画素です。幅0.20 mmの傷は単純な幾何学上で約5画素に相当します。ただし、この計算は検出率を示しません。レンズの解像性能、ピント、ブレ、傷のコントラスト、画素配列、圧縮、判定方法が結果を変えます。
寸法や分解能を先に決める理由は、後から照明を強くしても、そもそも画像上で表現できない欠陥を復元できないためです。必要な欠陥を実サンプルで撮り、複数位置の画像で確認します。カメラの仕様比較には、センサーの感度やノイズの測定条件をそろえて見る視点も必要です。EMVA 1288の標準資料は、マシンビジョン用カメラの特性記述を比較可能にするための枠組みを提供しています。EMVA 1288は特定の照明配置を推奨する規格ではありません。
露光・ストロボ・搬送速度を同時に見る
動くワークでは、露光中に進んだ距離が画像上のブレにつながります。説明用の計算例として、搬送速度300 mm/秒、露光100 µsなら、露光中の移動は300×0.0001=0.03 mmです。上記の0.039 mm/画素の条件では約0.77画素に相当します。実機ではトリガー遅延、振動、光源の応答、センサーの露光方式もあるため、この値だけで可否は決められません。
短い露光に合わせて照明をストロボ駆動する場合は、照明コントローラーとカメラの同期条件、許容デューティー、発熱、ケーブル長、保全時の設定復元を確認します。OMRONの技術資料も高速移動体でのストロボとブレの関係を扱っています。使用する光源の定格は製品仕様書で個別に確認し、例示値を設備の設定値として流用しないでください。
導入前のサンプル試験をどう設計するか
最初の試験は「良く見える1枚」を探す作業ではなく、どの条件で見えなくなるかを探す作業です。正常品だけ、最も目立つ不良だけで判断すると、量産移行後に境界品や別ロットで問題が出ます。品質、製造、保全、設備担当が同じサンプル台帳を見られるようにします。
- 検査項目ごとに良品限界、不良限界、難しい正常模様を集め、品質部門がラベルを確認します。
- 表面処理、色、ロット、成形条件、汚れ、位置ずれなど、実際に起こる変動をサンプル表に記録します。
- 候補照明を一度に一条件ずつ変え、元画像を保存します。画像加工済みの結果だけを残しません。
- 画像の各領域で欠陥と背景が識別できるかを見ます。四隅、端面、反射が集中する位置も含めます。
- 候補を絞った後、モデルの学習・評価データを分離し、ロットや日付が偏らないようにします。
- 寿命や汚れ、照明位置のずれを想定した再現試験を計画します。最終的な受入条件は双方で合意します。
画像の評価では、単に明るさの平均を比較するより、対象欠陥と良品模様の差、飽和画素、暗部、ピント、位置によるばらつきを見ます。画像を8ビット表示に変換した見た目だけで判定せず、必要なら元の階調データも保持します。現場で再取得できるよう、ワーク固定方法と撮影治具の図面を残すことも重要です。
「AIで吸収する」範囲を限定する
AIモデルは、許容される個体差や背景変化に対して有用です。ただし、未知の照明反射、季節的な外光、撮像位置の大幅な変化を無制限に吸収できるわけではありません。学習時に見た光学条件と量産時の条件が異なれば、同じ欠陥の画像特徴も変わります。モデルの追加学習に入る前に、照明が規定位置にあるか、光量と露光が基準内か、レンズが汚れていないかを点検する運用にします。
反対に、照明を過度に固定して工程の通常変動を排除すると、本番で条件が少しずれただけで判定が不安定になります。試験で変動の許容範囲を決め、その範囲内でモデルを評価することが現実的です。どの変動を「設備調整」、どれを「学習データ追加」で扱うか、責任分界を明確にします。
FAT・SATで照明条件を受け入れる方法
FAT(工場出荷前受入試験)とSAT(現地受入試験)は、ここではプロジェクトで定める検証段階を指します。特定の共通規格に一律の数値があるという意味ではありません。受入値は欠陥の重大度、ラインのリスク、サンプルの入手可能性を踏まえ、発注側と設備側で事前に合意します。「AIの精度が高い」という一行だけでは、照明による再現性を確認できません。
| 段階 | 確認する条件 | 記録する証跡 | 判断の例 |
|---|---|---|---|
| 事前試験 | 欠陥定義、候補光学系、代表サンプル | 元画像、条件表、ワーク台帳 | 次の候補に進む方式を合意 |
| FAT | 照明位置、露光、トリガー、全サンプルの撮像と判定 | 設定バックアップ、画像、判定ログ、治具図 | 合意した試験項目を満たす |
| SAT | 現地の架台、搬送、外光、振動、電源、保全動線 | 現場画像、再現試験、変更記録 | 現場条件でも同じ評価手順を満たす |
| 引渡し後 | 清掃、交換、照度・画像の定期確認 | 基準画像、点検記録、変更履歴 | 逸脱時の復旧手順が使える |
FATでは、機械とカメラの相対位置、照明の角度と距離、遮光カバーの状態を図面と写真で固定します。良品・不良品の判定だけでなく、照明が消えた、トリガーが欠けた、画像が飽和したといった異常時にラインがどう動くかを確認します。画像から判定までの時間、PLCへの結果出力、品種切替時の設定も対象です。
SATでは、試験室と現場の違いを評価します。天井灯、窓、反射する安全カバー、周辺設備の点滅、搬送の揺れは画像に影響し得ます。Teledyne DALSAの入門資料は、変動する環境光を検査の光源として頼らず、管理された照明条件を作る必要性を説明しています。タイの工場を含め、現場ごとに設備と周辺光を確認し、一般的な気候イメージだけで条件を決めないことが大切です。

受入条件の書き方:結果と画像条件を分ける
受入条件は、品質結果だけでなく、その結果が得られる撮像条件を併記します。例えば「指定した限界サンプル群を所定のタクトで撮像し、合意した判定表に従って評価する」と書き、対象サンプル、繰り返し回数、評価指標、例外処理を別紙で明示します。数値のしきい値は現物とリスク評価から決めます。一般記事の数値を流用しないでください。
撮像条件には、照明型式と位置、光量設定、波長、ストロボ条件、カメラ・レンズ・絞り、露光・ゲイン、遮光の構造、治具位置を含めます。条件が変わったときは「モデルだけ再学習する」のではなく、元画像を比較し、変更前後の評価サンプルで再試験します。設定のバックアップ先、復元担当、承認者まで決めれば、引渡し後の再現性が高まります。
見積・発注前に確認する費用と責任範囲
照明選定の費用は照明器具の単価だけでは決まりません。試験用サンプルの準備、交換可能なブラケット、遮光、コントローラー、トリガー配線、安全対策、画像保存、PLC連携、FAT・SAT、交換部品、作業者への引継ぎが含まれます。量産中の停止時間をどの工程で確保するかも費用と日程に関わります。現場の工事範囲を曖昧にしたままカメラと照明だけ発注すると、後で調整の責任が分かれます。
見積依頼書には、ワーク図面、表面材質、検査面、欠陥写真、最小検出対象、ライン速度、品種数、据付スペース、既存PLC・ネットワークの仕様を添えます。画像や現物の社外持ち出しに制限がある場合は、試験方法を早めに相談します。ベンダーには「推奨照明1種類」だけでなく、候補を比較した理由と、不採用案で見えなかった欠陥を説明してもらうと、導入判断がしやすくなります。
仕様書では、照明装置の交換後に同じ画像条件へ戻せることも重視します。物理的な位置決め、設定ファイル、基準ワーク、定期点検画像を一組にします。寿命について一般論の年数を約束させるより、使用する型式の定格、駆動条件、交換可否と供給計画を確認します。これらは初期費用だけでなく、運用中の停止リスクに関わります。
現場で照明条件が崩れたときの切り分け
量産開始後に誤判定が増えたら、最初に元画像を基準画像と並べて比較します。画像全体が暗いのか、片側だけ暗いのか、特定品種だけ反射が違うのかで、調べる場所が変わります。画像全体の変化なら照明電源や露光設定、部分的な変化なら照明・カメラ位置やレンズの汚れ、品種固有ならワーク表面と段取り条件を確認します。判定スコアだけを追っても原因が光学系にあるかを区別できません。
作業者が清掃や交換を行った後は、基準ワークを撮影し、位置、明るさ、欠陥の見え方を確認してから検査を再開します。清掃に使う資材、レンズと照明カバーの扱い、再調整を許可する担当者を作業標準に書きます。照明を一時的に強くして問題を隠すと、別の位置が白飛びする可能性があります。基準から外れたときの停止・再検査・品質部門への連絡も決めておきます。
画像と判定ログには品種、時刻、設定版、照明状態、対象ワークの識別子をひも付けます。問題が出た範囲を後から追跡できれば、全ロットを一律に再検査するかどうかを、記録に基づいて検討できます。保存期間とアクセス権は、顧客要求や社内の品質ルールに合わせて定めます。これらは画像認識アルゴリズムの性能とは別ですが、AI外観検査を品質保証の工程として使うために欠かせません。
提案比較でベンダーに同じ条件を渡す
複数社の提案を比較するときは、同じ境界サンプル、同じ検査面、同じ搬送条件を渡します。各社が別々のサンプルや評価指標を使うと、照明方式の優劣ではなく試験条件の違いを比較することになります。守秘上、現物を渡せないなら、現地での撮像時間と評価手順をそろえます。取得した元画像、照明配置図、失敗例、提案する保守方法を同じ書式で提出してもらうと、導入後の責任分界を含めて評価できます。
納入仕様に欠陥サンプルの一覧だけでなく、良品の許容ばらつきも添えます。検出できた不良数だけが良くても、正常な製品を大量に止める構成では実用になりません。検査を止めたときの手動判定、モデル更新前後の比較、品種追加時の再試験範囲まで合意しておくと、導入後の変更管理が明確になります。
試験レポートに残すべき最低限の情報
試験のレポートは「見える・見えない」の写真集で終わらせず、次に同じ条件を作れる記録にします。対象ワークの型式、ロット、表面仕上げ、検査面、欠陥位置、照明器具とコントローラーの型式、取付位置、カメラとレンズ、照明波長、露光、ゲイン、絞り、ワークからレンズまでの距離を一つの条件表にまとめます。撮影日時や周辺照明の状態も残します。試験した照明方式を採用しなかった理由は、採用案の説明と同じくらい重要です。たとえば「同軸照明では平面中央は安定したが、端部の反りで背景輝度が変わった」と書けば、将来の再検討に使えます。
各画像には良品か不良品かのラベルだけでなく、品質部門が何を根拠に判定したかをひも付けます。不良の中にも明らかなものと境界に近いものがあります。撮像試験で明らかな不良だけが見えた場合、その方式を量産採用と判断するのは早計です。一方、境界サンプルが定義されていないなら、照明を変え続ける前に品質基準を確定させるべきです。画像の問題と判定基準の問題を切り分けるためです。
さらに、試験で使った画像を学習用と評価用に分ける際、同一ワークの連写を両方に混ぜないようにします。ほぼ同じ背景や傷が両方に入ると、未知のワークで使えるかを評価しにくくなります。別ロット、別日、可能なら別の生産条件を評価用に確保し、導入後も同じ分離の考え方で性能を監視します。照明の改善効果をモデルの変更と同時に測ると原因が分からなくなるため、比較時は変更点を一つずつ記録します。
量産で使う判定条件を決める会議では、最も難しいサンプルの画像を中心に見ます。簡単な不良が鮮明に写ることは必要ですが、それだけでは工程を任せられません。良品限界と不良限界が近い部位で、光の当て方を変えたときに差が広がるのか、あるいは両方が同じように変化するのかを確認します。判断が割れたサンプルは無理にどちらかへ入れず、品質基準の再確認対象として管理します。画像の曖昧さをAIの曖昧さと混同しないためです。
また、検査対象が複数の品種に広がる場合、代表品種だけで照明配置を固定しないことが大切です。品種ごとの高さ、色、表面粗さ、搬送時の姿勢が変わると、同じ光源でも背景が変わります。品種別レシピで光量や露光を切り替えるなら、切替信号と実際に読み込まれた設定が一致するかをFAT・SATの両方で試験します。人が操作して品種を選ぶ構成なら、選択ミスをどう検知し、誤った判定を後から追えるかまで確認します。設備の使いやすさと誤操作への備えは、モデルの評価指標と同じように導入判断の一部です。
サンプルが少ない場合でも、足りない事実を推測で埋めないことが重要です。境界品が入手できなければ、試験で確認した欠陥範囲と未確認の範囲を明記します。代替サンプルや人工傷を使う場合は、量産で生じる傷と形状や反射が同じとは限りません。人工傷は光学系の比較には役立っても、量産品の検出性能を保証する根拠にはできません。実不良が得られた後に追加評価を行う条件を、見積や受入計画へ入れておきます。
導入後の改善では、誤検出画像と見逃し画像を単に蓄積するだけでなく、照明の状態と欠陥定義のどちらに原因があるかを毎回記録します。照明の角度を修正した日、保護窓を交換した日、製品の表面処理を変更した日などを画像ログと照合します。原因が装置条件なら、過去画像をすべて学習データへ追加する前に撮像を正常な状態へ戻すべきです。原因が判定基準なら、品質部門の承認を得てラベルと評価セットを改訂します。こうした変更履歴を残すことで、初期導入の成績と量産後の成績を同じ物差しで比較できます。
複数照明・複数カメラはいつ必要か
一つの方式で全検査項目の画像が安定しないときは、別の光源や撮像方向を追加する選択肢があります。例えば、輪郭はバックライト、表面傷は暗視野、印字は拡散光という組合せです。ただし、全方式を最初から盛り込むと調整点と故障点が増えます。項目ごとに「追加した画像が、合意した品質判定に何を加えるか」を確認してから構成を増やします。
カメラが一台でも、照明を順次点灯して撮る方法はあります。ワーク停止中に複数回撮るのか、搬送中に位置補正して撮るのかで必要な制御が変わります。ラインのタクト、トリガー精度、画像の紐付けを満たせるかを試験で確かめます。反射ワークの難しさをハードウェアの台数だけで解決しようとせず、欠陥の種類と受入条件から逆算します。
よくある質問
外観検査の照明は何色を選べばよいですか?
対象材と背景の反射・吸収、判定したい情報で決めます。色そのものが検査対象なら、白色照明とカラーカメラを含めて評価します。形状や特定色の有無が対象なら、単色照明とモノクロカメラが有効な場合もあります。実サンプルを同じ撮像条件で比較し、波長を変えたときの欠陥と正常模様の差を見てください。
ドーム照明と同軸照明はどちらが反射ワークに向きますか?
鏡面に近い平面では同軸照明、曲面や凹凸を持つ反射ワークではドーム照明が候補になります。ただし、見たい欠陥が浅い傷なら、拡散光では傷のコントラストが弱くなることがあります。ワークの傾きと良品ばらつきを含むサンプルで比較し、必要なら暗視野も加えます。
AIを使えば照明のばらつきを補正できますか?
許容範囲の変動を学習・評価に含めることはできますが、白飛びや完全な影で消えた情報はモデルに渡りません。まず照明位置、遮光、露光、清掃を管理します。その上で現実のばらつきをデータセットに含め、未使用のロットや日付で評価します。
照明のFAT・SATでは何を確認しますか?
FATでは装置の設定と代表サンプルの撮像・判定を、SATでは据付後の外光、振動、搬送、保全条件を加えた再現性を確認します。合否値は欠陥の重要度と現場条件に合わせて事前合意し、設定、元画像、判定ログを残します。FATに合格しただけで現地も自動的に合格とはしません。
照明を選ぶ前にAIモデルを試してもよいですか?
探索として試すことはできます。ただし試験画像の取得条件を記録し、モデルの成績だけで照明を確定しないことが重要です。まず欠陥が視認でき、良品の変動で見え方が崩れにくい構成に絞ってから、モデル比較に進みます。
まとめ:導入判断は「欠陥が見える条件を現場で保てるか」
AI外観検査の照明選定では、欠陥定義、光の方向と波長、カメラ・レンズ・露光、サンプル試験、FAT・SATを一続きで扱います。平面の反射には同軸、曲面の反射にはドーム、浅い傷には暗視野、輪郭にはバックライトが候補になりますが、最終判断は実ワークと現場変動で行います。良く見える1枚だけでなく、誰が再現しても同じ撮像条件へ戻せる仕様を残すことが、運用できる検査につながります。
反射ワークの撮像条件や、既存ラインへの後付けで検討中なら、ワーク写真と検査したい欠陥を添えてTOMAS TECHへご相談ください。候補照明の比較やFAT・SATの条件整理の段階から相談できます。
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