AGV 自動充電システム 選定で見落としやすいのは、充電器の定格電力よりも、車両が「いつ、どこで、何分止まり、次の搬送要求までに何Wh戻せるか」です。タイの工場では搬送経路、設備の受け渡し、交替勤務、床工事、電源工事が同時に制約になります。接点式と非接触式のカタログを並べる前に、運行ログからエネルギー収支と充電待ちを可視化し、供給者に同じ条件で提案してもらうことが必要です。本稿は、AGV・AMRの充電方式とステーション数を選ぶための実務手順、RFP項目、FAT/SAT受入試験を整理します。車両本体や経路設計の一般論は、既存のAGV導入ガイドとAGVレイアウト設計に譲り、ここでは充電設備と運行制御の境界に集中します。
最初に決めるのは方式ではなく「止まる場所」と必要エネルギー
OMRON Roboticsが2026年9月に公開した解説は、専用ドックへの往復と、既存の工程停止中に電力を補う機会充電を区別しています。同社はコンベヤ受け渡し、材料引渡し、設備の投入・排出、バッファなどを候補に挙げています。ただし、同じ解説は従来のドックが適する現場もあると明記します。したがって「非接触なら必ず稼働率が上がる」という一般化は避けるべきです。停止の頻度・長さ・再現性、停車位置の精度、電池の受入電力が揃って初めて機会充電が成立します。OMRONの原文は製品紹介を含むメーカーの見解であり、個別工場での成果を保証するものではありません。
まず一週間以上の代表的な運行から、車両ID、仕事ID、積載量、走行区間、停止開始・終了、停止理由、充電開始・終了、電池残量、アラームを同じ時刻軸で保存します。高負荷日、交替直後、休憩時間、材料欠品時、ライン停止時も分けます。平均一日だけでは、同時に充電要求が集中する時間帯を見落とします。運行ログがまだない新規案件なら、工程表とレイアウトから仮説を作り、試験導入時に実測へ置き換える条件を契約に入れます。
充電候補地点は、次の五つで採点します。①車両が既に止まるか、追加の回り道が要るか。②停車時間の分布はどれほど安定しているか。③その場所での位置ずれ・荷姿・床の段差は充電器の許容範囲に入るか。④停車中に人、台車、フォークリフト、保全員の通路を塞がないか。⑤電源、配線、清掃、保守のためのアクセスを確保できるか。毎回立ち寄る受け渡し点でも、停止が短すぎれば電力はほとんど戻りません。反対に長い待機があっても、次の仕事の優先度が高く途中離脱が頻繁なら期待量は下がります。
エネルギー収支はWhで閉じる
車両ごとに一日または一シフトの消費量を E_use、外部から補える量を E_charge、開始時と終了時の蓄電量差を ΔE とすれば、概念上は ΔE = E_charge − E_use です。必要なのは平均だけでなく、最悪の連続作業区間で最低残量を下回らないことです。車両の表示SOCは推定値であり、温度、電池劣化、積載、走行速度、床状態で実際の使用可能容量は変わります。供給者から電池の使用可能容量、推奨SOC帯、充電電流・電力の制限、温度によるディレーティング、BMSと充電器の通信条件を取り寄せます。
仮の計算例として、ある車両が工程待ちに一回6分、同じ場所へ一シフト8回止まり、車両側が充電中に正味1.5 kWを受け入れられるなら、理想的な加算は 1.5 kW × 6/60 h × 8 = 1.2 kWh です。これは説明用の仮定であり、どのメーカーの実測値でもありません。位置合わせ、充電開始遅延、高SOCでの電流低下、通信停止を含めると、実際の受入量は小さくなる可能性があります。RFPでは「定格出力」ではなく、代表SOC帯・温度・停車時間における車両側実測Whと、その測定方法を要求します。
接点式・非接触式・手動交換を同じ表で比較する

| 比較点 | 接点式ドック | 非接触式の機会充電 | 手動プラグ/電池交換 |
|---|---|---|---|
| 主な適用 | まとまった停車時間があり、専用区画を確保できる | 工程中に反復する停止があり、対応車両・床設備を組める | 台数が少ない、運行時間が短い、または既設を段階更新する |
| 現場で確認すること | 接点位置、汚れ、摩耗、復帰動作、清掃 | 送受電部の位置許容差、床施工、異物・周辺設備への影響 | 作業者の時間、誤接続、運搬、保管と交換手順 |
| 運行制御 | ドックへの回送、予約、退出 | 既存停止への組込み、短時間受電、予約 | 人の作業計画と運行再開確認 |
| 実装上の注意 | 接点保守とドック待ちを見込む | 車両適合性、受電電力、工事費を個別に確認 | 労務・安全・運用漏れを管理する |
MiRはMiR Charge 48VをAMR向けの自動充電ステーションとして紹介しています。OMRONのLDシリーズ仕様表にも車両とドッキングステーションの仕様・適用条件が分けて記載されています。両例は「自動充電」という言葉が単一方式を意味しないことを示します。車両、電池、充電器、ソフトウェアの組合せが認証・保証範囲にあるかを、機種と版まで確認してください。別メーカーの部品を組み合わせるときは、端子形状だけでなく充電プロファイル、BMS通信、異常時の遮断、保証責任を明記します。
接点式では車両とドックの機械的な案内が重要です。公称停止精度だけを使わず、床の摩耗、荷重、車輪状態、地図更新、混雑時の接近角度を考慮して、最悪条件で接点が正しく当たり、離脱できるかを試します。OMRONのLD仕様は単体停止とフリート停止で異なる繰返し値を示し、誘導方法によっても値が変わります。これは特定のAGVにそのまま転用する数字ではなく、「位置決め条件を仕様に結び付けるべき」という実例です。
非接触式では受電位置だけでなく、床側ユニットの工法、清掃、異物検知、ケーブル経路、熱、EMC、既存設備との距離を評価します。OMRONは床埋込、上床、床上プラットフォームといった配置の違いを説明しています。Wiferionの製品資料ダウンロードは仕様確認の入口になりますが、ブランド名だけで互換性を判断せず、選定機種の現行データシートと施工条件を供給者から受け取るべきです。非接触なら保守ゼロという表現も避けます。接点摩耗は減らせても、床側装置、冷却、通信、位置合わせ、異物管理の点検は残ります。
充電待ちを「台数÷充電器数」だけで決めない
AGV 充電待ちはピークの到着時刻と滞在時間で決まります。10台に2台の充電器があるから「5台に1台」で十分とはいえません。昼休み、交替直後、ライン停止からの再開時には要求が同時に発生します。専用ドックへ戻る片道時間、ドック前の待機位置、満充電前の離脱可否も実効容量に効きます。フリート管理ソフトが充電予約、優先度、交通管理、運行タスクへの復帰をどう扱うかを確認します。OMRONのFleet Management Softwareはそのような連携を検討する一次資料の一つですが、実際に導入する版の機能確認が必要です。
候補ごとに時間帯別の需要を並べ、最低SOCへ達する前に充電を始められるかを離散イベントで検証すると、平均稼働率だけより判断しやすくなります。現場で使える簡易な方法は、15分または30分の時間枠ごとに「到着する車両」「占有中の充電器」「離脱する車両」「未処理搬送」を表にすることです。待ち列が連続して伸びる場合、充電器を増やす以外にも、充電開始しきい値、停車位置、運行優先度、工程バッファの変更を比較します。上流の搬送需要が多すぎる場合、充電器を追加してもボトルネックは解消しません。
充電ステーション数と配置を決める三段階

第一段階は、専用ドックだけの基準案を作ることです。走行距離、片道回送時間、待ち列、必要電力、設備と床工事、保全動線を見積もります。これは非接触案の比較対象であり、必ずしも最終案ではありません。車両メーカーの許容SOC帯を守り、ピーク搬送要求を失わないことを判定軸にします。
第二段階は、工程内に既存停止がある地点だけで機会充電案を作ることです。毎回の停止を全て充電に使えるとは仮定せず、位置合わせ成功率、実際の受電電力、停止時間分布、車両のSOC、工程の変化を入れます。OMRONの記事がいう「一つの長い充電停止を、複数の短い充電機会へ置き換える」という発想を、工場の実データで検証します。受け渡し点が品質検査や手作業で変動するなら、そのばらつきを試験条件に入れます。
第三段階は混合案です。短い工程停止ではSOCを補い、長い休憩または低需要帯に専用ドックで必要量を確保します。混合案は機器と制御が増えるので、費用だけでなく故障時の運用も複雑になります。片方が故障しても搬送を継続できるか、どのタスクを優先して止めるか、予備の充電場所へどう誘導するかを決めておきます。
三案の比較では、投資額だけを横並びにしないでください。AGVの価格・費用ガイドで扱う車両費に加え、充電器本体、床・電気工事、通信、制御連携、予備部品、保守、停止時の損失、電池交換費を同じ期間で集計します。電気料金と契約電力への影響は、タイの対象工場の契約条件と実際の負荷曲線で計算します。本稿では汎用の回収年数や市場価格を置きません。方式間の差はサイト条件に大きく依存するからです。
RFPへ渡す配置図には設備以外も描く
図面には充電ステーション、電源盤、保護装置、ケーブル、ネットワーク機器だけでなく、車両の接近・退出方向、停止時の車両外形、荷姿、作業者通路、避難動線、フォークリフト交差、消防・保全アクセス、清掃範囲を示します。床埋込なら切削・防水・養生・段差、床上なら転倒や通行障害も確認します。停電やネットワーク障害時の車両がどこで止まるかを図上で追うと、通常運転だけでは見えない制約が見つかります。
「充電器一式」の発注では境界が曖昧です。工場側が用意する分電盤、遮断器、接地、受電容量、LAN/Wi-Fi、工事停止時間と、供給者が用意する送電部、受電部、保護、PLC信号、フリート設定、試験器具を責任分界表にします。特に既設AGVへ後付けする場合、車体改造が保証や安全評価に与える影響を発注前に確認します。
RFPで必須にしたい12の回答項目
- 対象の構成:車両型式、電池化学系、BMS、充電器型式、ソフトウェア版、適用地域、メーカーが保証する組合せ。
- 運行条件:車両台数、積載と搬送数の分布、稼働時間、休止時間、ピークの定義、将来増設の条件。
- エネルギー根拠:実測または保守的仮定に基づくWh/搬送、Wh/時間、使用可能容量、温度・経年の扱い。
- 充電性能:代表SOCと温度別の車両側受入電力、充電開始遅延、短い停止での実受電Wh。
- 位置合わせ:進入方向、停止・角度許容差、誤接触または位置ずれ時の挙動、繰返し試験。
- ステーション数:ピーク時待ち列と最低SOCの計算、車両増設時の余裕、単一故障時の代替。
- 運行制御:予約、優先度、低SOC時の仕事割当、途中離脱、手動介入、復旧手順。
- 電気・床・通信:最大同時電力、保護と接地、配線・施工図、通信方式、オフライン動作。
- 安全・環境:リスクアセスメント、適用規格、温湿度、清掃薬剤、液体、粉塵、EMCの条件。
- 保全:点検周期、消耗品、交換作業時間、故障診断、予備部品、リモート支援の範囲。
- 受入試験:FATとSATの条件、測定器、ログ、合否しきい値、不合格時の再試験負担。
- 引渡し:設定バックアップ、図面、ソフト版、保守手順、タイ語・英語など現場で使う言語の教育。
項目を入れるだけでは足りません。各社が異なる前提の「稼働率99%」を提示しても比較不能です。同じ運行トレース、積載、温度、電池劣化仮定、停止時間、故障想定を渡し、回答を「計算方法」「入力値」「出力値」「除外範囲」に分けて受け取ります。工場側がまだ測定できない項目は、供給者に仮定値を明記させ、試験導入後の再見積条件にします。
購買と現場が同じ評価表を見る
技術点と価格点を別々に採点すると、肝心の不足要件が価格で相殺されることがあります。まず必須条件をゲートにします。例えば対象車両との保証された適合、工場の電源容量内での運転、適用する安全評価、障害時の安全停止、測定可能な受入ログです。ゲートを通った案だけ、総所有費用、搬送維持能力、施工期間、保守性、拡張性を比較します。重みは工場側が事前に公開し、見積後に恣意的に変えないようにします。
供給者のデモ動画を採点の代わりにしないでください。動画は特定の条件で成功したことしか示しません。工場の代表ワーク、走行距離、停止時間、温湿度、床を使った試験の方が選定に役立ちます。特に既設車両を複数メーカーで運用する場合、混在フリートの充電予約を誰のソフトが指揮するかを明記します。車両側と上位システムの両方が低SOC判断を持つと、指示が競合する場合があります。
安全規格は適用範囲を分けて読む
ISO 3691-4:2023は、無人産業車両とそのシステムの安全要求と検証を扱う発行済み国際規格です。AGV・AMRを含む運行システムのリスク評価を考える際の重要な参照先ですが、同規格のページは動力源の要求事項は対象外と明示します。このため「ISO 3691-4適合だから充電器と電池まで安全」とは言えません。2026年に見える改訂のDISは草案段階であり、発行済み2023版と混同しないでください。
IEC 62485-3:2014は駆動用電池とその設置に関する安全要求を扱い、AGVも適用例に含みます。電池・充電設備の安全を検討する入口になりますが、具体的な充電器単体の全ての認証を代替するわけではありません。対象国の電気設備法規、工場の消防・労働安全要求、電池化学系のメーカー指示、車両メーカーの条件を併せて確認します。規格名だけをRFPに列挙するのでなく、誰がどの危険源を評価し、どの試験記録を引き渡すかを求めます。
危険源には感電・短絡・過熱・電池異常だけでなく、充電位置への誤進入、停止中の通行阻害、再発進、保全作業中の通電、液体侵入、停電後復帰があります。FATで電気保護を確認し、SATで実際の床・動線・避難経路を確認します。安全機能の合否は供給者の表示灯だけでなく、測定器とログ、現場のリスクアセスメントに結び付けます。
FAT/SATで「充電できる」を運用可能に変える

FATは出荷前に制御・機器の仕様を検証する場、SATは工場に据え付けた構成で運用条件を検証する場として分けます。単にドックへ入って充電ランプが点灯するだけでは、充電待ち、位置ずれ、連続運転、障害復帰は証明できません。RFP時点で次のマトリクスを合意し、測定器、ログの粒度、合否を決めます。
| 試験群 | FATでの確認 | SATでの確認 | 残す証跡 |
|---|---|---|---|
| 接続・互換性 | 対象車両・BMS・充電器・版の組合せ | 実車全台・設定バックアップ | 型式、版、通信ログ |
| 充電性能 | SOC・温度別の電力と開始遅延 | 実停止時間で受入Whを測定 | 電力量計、SOC、時刻ログ |
| 位置合わせ | 許容範囲の中心と端で反復 | 床・荷姿・交通を含む進入試験 | 停止位置、成功率、失敗動画 |
| ピーク運行 | 仮想または試験フリートで予約・待ち列 | 代表負荷で搬送未処理と最低SOC | タスク、待ち列、SOC推移 |
| 異常復帰 | 電源・通信・接点/異物検知異常 | 停電、ネットワーク断、再起動 | アラーム、遮断、復帰手順 |
| 保全 | 点検・交換・清掃の手順 | 現場保全員による再現 | 手順書、所要時間、教育記録 |
数値しきい値は機種・工程によって異なるため、ここでは一律の「合格率」を提示しません。例えば「ピーク2時間の搬送未処理が発注者合意の上限以下」「最低SOCが電池メーカーの下限以上」「予定停車一回あたり受入Whが提案値の合意範囲内」といった、現場で測定できる形にします。合否境界に近い場合は複数回試験し、平均だけでなく最低値や分布を残します。試験の前提が変われば、合格とした数値をそのまま他工場に移さないでください。
失敗試験を先に設計する
通常運転よりも、失敗した後の状態が重要です。低SOCの車両に高優先度の仕事を割り当てたとき、予約した充電器が故障したとき、充電中に緊急搬送が入ったとき、通信が切れたまま電源が戻ったとき、保全員が充電器を隔離したとき、それぞれ安全停止・代替ドック・タスク再割当・手動復帰がどう働くかを試します。復旧中の車両が通路に残るなら、その処置も作業手順に書きます。
充電のログには、車両ID、充電器ID、要求時刻、到着、位置合わせ、通電開始・終了、受入Wh、SOC、温度、遮断理由、仕事への復帰時刻を入れます。設備側とフリート側の時計を同期させ、同じイベントIDで追えるようにします。エネルギー収支が合わない場合、計測位置(系統側か電池側か)と効率を混同していないかを確認します。実測データを残せば、導入後に充電開始しきい値や予約ロジックを改善できます。
FAT/SATの不合格を「現場調整」で無期限に延ばさないため、原因を機器、車両、施工、通信、運行ロジック、試験条件へ分類します。修正担当、再試験範囲、再試験期限、未解決時の運用制限を記録します。たとえば接点清掃で一時的に復帰した場合は、汚れが再発する環境条件と清掃周期を確定するまで恒久対策とはしません。非接触式で位置ずれが起きた場合は、床側ユニットだけでなく車両の停車基準と地図・誘導設定を確認します。
充電待ちのシミュレーションを発注者が再計算できる形にする
充電器数の提案は、専用ソフトが出した一つの結論だけを受け取らず、入力データと計算ロジックを検査できる形で求めます。まず搬送要求を「発生時刻、出発地、到着地、ワーク重量、優先度、許容納期」の行として用意します。次に車両別に「初期SOC、使用可能容量、走行速度、積載時消費、停止中消費、充電許容電力」を与えます。最後に各ステーションの位置、同時収容台数、充電開始に必要な位置合わせ時間、故障・保守停止を加えます。供給者が与えた推定値と工場の実測値は別列にし、どの値を変えれば結果が変わるかを追えるようにします。
シミュレーションの時間刻みを粗くしすぎると、数分の工程停止を利用した機会充電を正しく表せません。一方、細かいモデルでも初期条件が現場から外れていれば精度は上がりません。モデルの目的は未来のすべてを予言することではなく、代替案が同じ負荷に耐えるかを比較することです。少なくとも通常日、最大搬送日、充電器一台故障、交替時の同時帰還、ライン停止後の一斉再開というシナリオを並べます。各シナリオで、タスクの遅延件数、最低SOC、待ち時間の中央値と長い側の値、充電器占有率、回送距離を出します。平均だけを示すレポートはピーク運用を判断できません。
結果の妥当性は小規模な現場試験で校正します。例えば一台の車両を選び、軽積載と重積載で同じ経路を反復し、走行前後のSOCだけでなく電池側のエネルギーまたは電流・電圧のログを保存します。次に短い停止と長い停止の両方で、位置合わせ開始から通電までの遅延と実受電Whを測ります。シミュレーションとの差が大きければ、車両消費、充電曲線、停車時間、通信のどこが原因かを分けて修正します。校正に使ったデータを同じまま合格評価に使うと、モデルが過度に都合よく見えるため、別日または別シフトの留保データで再確認します。
感度分析も有効です。想定より搬送要求が増える、電池容量が下がる、充電器の開始遅延が長くなる、停車時間が短くなるという変化を一つずつ与え、最初に失敗する条件を探します。「最大何台まで増やせるか」だけでなく、「どの仮定が崩れると搬送遅延が急増するか」を知ることが投資判断に役立ちます。失敗点が電源容量なら電気工事、待ち列なら配置または台数、短い停止での受電不足なら方式または運行変更へ対策を分けられます。
責任分界をインターフェース単位で明文化する
充電が始まらないとき、車両、BMS、充電器、フリート管理、工場ネットワークのどこに原因があるか現場ではすぐに分かりません。RFPの責任分界表には、電源供給点、送受電部、車両側配線、BMSの充電許可、フリートからの充電予約、タスク復帰までを時系列で描きます。各インターフェースについて仕様書の版、信号一覧、タイムアウト、異常コード、ログの所有者、一次対応者、最終解決責任者を指定します。複数供給者が関わる場合は、統合試験の取りまとめ役を一者に決めます。
工場が担う準備も曖昧にしないでください。受電容量の増強、分電盤の空き、接地、床の強度と平坦性、清掃方法、Wi-Fiの電波設計、サイバーセキュリティ審査、工事中の生産停止時間は、調達後に判明すると日程を大きく変えます。予備ステーションへの配線だけ先に施工する場合、その回路の保護と図面管理をどうするかも決めます。供給者の引渡し物には、単線結線図、施工図、設定ファイル、バックアップ、部品表、保守手順、異常コード表、教育記録を含めます。現地の保全担当が読める言語と、将来ソフトを更新した際の互換性確認手順も指定します。
契約上の性能保証は、設備単体の「充電成功率」だけにしない方がよいでしょう。電源供給や通信が工場側の責任である一方、予約ロジックが供給者側の責任である場合、同じ停止でも原因によって対応が変わります。合意した運行シナリオを満たすか、対象外の事象は何か、ログによりどう判定するかを先に決めれば、受入時の解釈違いが減ります。外部システムの変更で再調整が必要になった場合の費用と責任も、その境界に紐付けておきます。
導入後に追うべきKPIと見直し条件
公開後の評価は「充電器稼働率」一つでは足りません。充電器が常に埋まっていれば設備を使い切っているように見えても、車両が待って搬送を逃している可能性があります。週次に、車両別の最低SOC、充電要求から通電開始までの時間、受入Wh/停止、充電のための回送距離、充電器別の占有時間、充電失敗率、低SOCによるタスク延期、保全停止時間を見ます。月次には電池の容量変化、接点・送受電部の状態、費用を見直します。
運行開始後に工程タクトや搬送先が変われば、当初の充電計画は古くなります。車両増設、勤務時間の延長、電池交換、フリートソフト更新、床改修、受け渡し位置の変更を、再シミュレーションとSATの再実施条件にしておきます。「増設可能」と書かれた提案でも、分電盤、回路、通信、予約ロジックに余裕がなければ増設できません。初期導入時に将来の電源容量と空き位置を確認すると、後の工事停止を減らせます。
現場の運用手順は、充電器故障時、夜間・休日の問い合わせ先、手動充電への切替、保守中の隔離、消耗品交換、停電後の再開を含めます。KPIの目標値は供給者の宣伝値ではなく、工場の搬送サービス水準から逆算します。例えば要求された時間内にワークを届けられなかった件数と、そのうち充電が直接原因だった件数を分けます。充電が原因でない遅延まで設備の責任に含めると改善点を誤ります。
運用開始から最初の四週間は、導入前のシミュレーションと実測を週ごとに照合すると改善が早まります。差が出た車両や工程だけを追うのではなく、実際には充電へ向かわなかった車両も記録してください。充電器が空いているのにSOCが下がるなら、予約しきい値、タスクの優先度、位置決め失敗を疑えます。逆に充電器が埋まり続けるなら、ピーク時の需要、充電曲線、車両の離脱条件を再評価します。変更の前後で同じ指標を比較し、改善した搬送件数と増えた電力・保守費を一緒に報告します。
FAQ:AGV 自動充電システム 選定でよくある質問
AGV 充電ステーションは車両何台に1台必要ですか?
固定比率はありません。車両の電池容量、実消費Wh、運行時間、充電電力、停止時間、同時充電要求、ドック回送距離で変わります。ピーク時の待ち列と最低SOCを時刻付きで検証し、単一故障時の余裕も加えます。各社には同じ運行トレースで必要台数を提示してもらいます。
接点式と非接触式の充電はどちらを選ぶべきですか?
専用ドックでまとまった時間を確保でき、床工事を抑えたいなら接点式が候補です。工程内に反復する停止があり、対応車両・床設備・電源を整えられるなら非接触式の機会充電を検討できます。混合案もあります。方式名ではなく、車両側に実際に戻るWh、待ち時間、工事・保守を比較します。
AGV 充電待ちはソフトウェアで解消できますか?
予約、優先度、低SOCしきい値、タスク割当を改善すれば待ちが減る場合があります。ただし同時需要が設備容量を超える場合、制御だけでは解消しません。充電器増設、配置、運行計画、電池容量などと合わせて評価します。
AGV 充電のFAT/SATで最も重要な試験は何ですか?
一つだけ選ぶなら、実運行のピークを再現し、最低SOC、待ち列、搬送未処理、実受電Whを同時に測る試験です。その上で位置ずれ、電源・通信断、充電器故障からの安全な復帰を個別に確認します。安全試験や電池条件は対象機器の適用規格とメーカー指示に従います。
ISO 3691-4:2023は充電器の安全認証ですか?
いいえ。同規格は無人産業車両とそのシステムの安全要求・検証を扱い、動力源の要求は対象外です。電池・充電設備はIEC 62485-3:2014など適用範囲の合う規格、現地法規、メーカー指示を別に確認します。2026年のDIS草案を発行済み規格として扱わないでください。
まとめ:充電器ではなく搬送サービスを受け入れる
AGV 自動充電システム 選定では、①実際に止まる地点と停車時間を把握し、②車両側のWhでエネルギー収支を閉じ、③ピークの充電待ちと最低SOCをシミュレーションし、④接点式・非接触式・混合案を同じ条件で比較し、⑤FAT/SATで故障時を含めて確認します。充電器単体の定格や宣伝上の稼働率より、工場が必要な搬送を継続できる証拠を発注条件にしてください。
タイ工場で既設AGVの充電待ちや新規AMRのステーション数を検討している段階なら、運行ログとレイアウトをもとに必要な比較条件を一緒に整理できます。TOMAS TECHへのお問い合わせから現状と検討範囲をお知らせください。
参照した一次資料
- OMRON Robotics, Turning AMR Stops into Charging Opportunities, 2026-09-30 — 工程停止と機会充電、専用ドックとの比較。メーカー見解。
- OMRON Industrial Automation, LD Series Specifications, updated 2026-05-11 — 停止精度、車両・ドック仕様の機種別確認。
- OMRON Robotics, FLOW Core Software — フリート管理機能の製品情報。
- Mobile Industrial Robots, MiR Charge 48V — 自動充電ステーションの製品情報。
- Wiferion, Download Center — 非接触充電製品資料の取得先。
- ISO, ISO 3691-4:2023 — 無人産業車両とシステムの安全要求。動力源は対象外。
- IEC, IEC 62485-3:2014 — 駆動用電池と設置の安全要求。