自動機のエアシリンダや電磁弁が不安定になると、現場ではまず供給圧力を確認します。しかし、圧力計が正常でも、配管内の粒子や油ミスト、ドレンが弁や工具へ届いている場合があります。逆に、きれいな空気を求めて細かいフィルタを何段も追加し、必要な流量で圧力が落ちることもあります。空圧ラインフィルタの選定は「何ミクロンを付けるか」だけでは決まりません。必要な空気品質、実際の流量、運転圧力、上流の乾燥状態、保守方法、検収する位置を同時に設計する必要があります。
この記事は、タイの工場で自動機やロボット周辺の空圧回路を新設・改造する設備担当者と購買担当者向けです。フィルタ本体の比較から、RFPに書く仕様、FATとSATで残す測定記録までを一つの手順に整理します。対象は一般的な工業用圧縮空気です。製品接触空気、医療・医薬、呼吸用空気などは別途の用途固有要件と専門的な検証が必要です。採用するクラスや交換周期をこの記事だけで一律に定めることはしません。
まず「どこで、何を守るか」を確定する
同じ工場の圧縮空気でも、コンプレッサ出口、ドライヤ出口、主管、分岐、装置入口、電磁弁直前、エアブロー出口では、配管由来の粒子や凝縮水の入り方が変わります。フィルタをどこに置くかと、清浄度をどこで要求・測定するかを別々に指定してください。主管で品質を測った結果を、長い支管の末端にそのまま当てはめることはできません。ISO 8573-1:2010は、圧縮空気の粒子、水、油について清浄度クラスを定め、指定または測定する場所に依存しないと説明しています。これは「どこで測っても同じ結果」という意味ではありません。要求書では対象設備と採取点を明示する必要があります。
保護対象も分けます。一般のエアシリンダ、精密な電磁弁、真空発生器、エアブロー、計測器では、問題となる異物と停止時の影響が違います。例えば、エアブローがワークに向く場合は製品への混入を検討し、単に駆動部だけへ供給するラインなら機器メーカーの空気品質指定を確認します。装置全体に一つの高性能フィルタを付ける案と、必要な分岐だけで末端処理する案を比べると、配管の追加汚染、保守箇所、圧力損失を見積もりやすくなります。
現状調査では、空気がどこから来て、どこで乾燥・貯留され、どの材質の配管を通り、どこで分岐するかを図にします。故障履歴があれば、弁固着、シリンダ速度低下、フィルタの急な詰まり、ドレン排出不良、製品汚染を区別します。外観の濁りだけで粒子・水・油のどれが原因かを断定せず、採取位置と測定方法を決めて確認します。見積段階で「現状不明」として残す場合も、誰がいつ測るかを明記します。
粒子・水・油は異なる課題
フィルタは一種類で全ての汚染物を処理するわけではありません。粒子用の一般的なフィルタは配管のさびや粉じんなどを対象とし、油エアロゾルや細かな液滴には用途に合うコアレッシング型などを検討します。油蒸気は油エアロゾルと同じではなく、必要なら別の処理技術を評価します。Festoはフィルタの選定要素として必要な清浄度、運転条件、汚染物の種類、保守と交換を挙げています。Parkerの資料も粒子、液体油、油エアロゾル、油蒸気、水蒸気、凝縮水を分けて扱っています。
水についてはドレンと水蒸気を分けます。フィルタのボウルに溜まる液体水を排出しても、空気中の水蒸気まで乾燥させたことにはなりません。上流ドライヤが十分に機能しているか、低温部分や長い支管で再凝縮が起きないかを確認します。ドライヤ出口だけが良好でも、末端で液体水が出るなら、ライン全体の温度と配管経路に原因があるかもしれません。空圧フィルタをドライヤの代用品として扱うと、交換エレメントやドレン機構に想定外の負荷が掛かります。
油については、コンプレッサの方式だけで要求品質を決めません。吸気や配管、既設の潤滑系統、作業工程からの混入も考慮します。目的が電磁弁の保護なのか、ワークへ向くエアの清浄化なのかを先に定め、測る汚染物と測定点を決めます。油が見えないことと、要求クラスを満たすことは同じではありません。フィルタのカタログ上の除去性能と、配管末端で得られる清浄度も同じ指標ではないため、保証範囲を分けて記載します。

ISO 8573-1は要求の言語、機種選定は別作業
ISO 8573-1:2010は粒子、水、油の清浄度クラスを示す規格です。発注時には、対象汚染物ごとの要求クラスと、どの地点でその要求を満たすかを指定します。規格番号だけを書いて「ISO対応フィルタ」を求めても、用途に必要なクラスと測定点が未定なら比較できません。規格がフィルタの型番を選んでくれるわけでもありません。要求クラスは機器メーカーの指示、製品品質要件、過去の不具合、現状の測定から決めます。必要以上の清浄度を求めると、設備費と運転費の両方が増える可能性があります。
見積書には「フィルタ単体の公称ろ過精度」と「ライン末端で求める空気品質」を別欄にします。あるエレメントの粒子に関する値から、油エアロゾルや水の要求を満たすと推定しないようにします。メーカー資料の値には試験条件があり、流量・圧力・入口汚染負荷が異なれば実装時の結果も変わり得ます。ISOクラスを用いる場合、測定方法と採取条件、受入判定方法も契約に入れます。専門測定が必要な場合は、校正や採取手順を含めて誰が手配するかを決めます。
現場で「フィルタがあるから清浄」と判断することも避けます。パッキン不良、バイパス、エレメントの寿命、ドレン不良、下流配管のさびなどで、装置入口の品質は変化します。設備の稼働を妨げない場所に測定ポートを設け、交換後や異常時に同じ位置で比較できるようにします。採取点の位置だけでなく、運転状態と採取時刻を記録しておくと、初期検収と後日の調査が結び付きます。
実流量と圧力損失を同じ条件で読む
フィルタの接続口径が配管と同じでも、その装置のピーク流量に十分とは限りません。空圧回路ではシリンダが同時に動く瞬間や、エアブローが開く瞬間に消費が増えます。平均流量だけで選ぶと、動作中の装置入口圧力が落ち、シリンダの速度や把持力が変わる可能性があります。対象分岐の常用流量、同時動作時のピーク流量、入口圧力、許容できる下流圧力をセットで整理します。必要なら流量計と圧力計のログを取り、推測だけで設計値を作らないようにします。
SMCの選定ガイドは、特定のAF型フィルタについて、入口圧力と流量から圧力損失を読む曲線を掲載しています。したがって候補品ごとにメーカーの曲線または選定ツールを使い、同じ流量・入口圧力条件で比べるのが筋です。資料中の代表値を、別の型式や別のフィルタ段数に移してはいけません。複数段を直列にするなら、各段の圧力損失と配管・継手の損失を合わせて下流側の余裕を確認します。レギュレータがある場合は、フィルタ上流の圧力ではなく、負荷時に必要な機器入口圧力で判定します。
エレメントは汚れを捕集するにつれて抵抗が変化します。Festoは粒子蓄積によりフィルタの圧力損失が増えると説明しています。新品時だけで下流圧力を満たす設計だと、使用期間中に余裕が消える恐れがあります。サプライヤーには新品時の圧力損失に加え、交換判定に使う条件と、許容できる運転範囲を示してもらいます。ただし、差圧が小さいことは空気品質の証明ではありません。この点は交換判断で特に重要です。

上流ドライヤとドレンを一緒に設計する
フィルタの役割を決めるには、上流の乾燥・冷却・貯留と配管を見なければなりません。ドライヤの種類と設定、ドレン排出、貯気槽の状態、配管の最低温度を確認します。湿った空気が下流で冷えれば、分岐の先で液体水が生じます。装置入口のフィルタを追加する前に、上流側の異常や故障を放置していないか調べます。上流不良を末端エレメントの頻繁な交換で補う構成は、運転費と停止リスクを見えにくくします。
ドレン排出方式には現場での取り扱いが必要です。手動排出なら点検の担当と頻度、自動排出なら作動条件、排出先、保守スペースを決めます。ボウルに溜まった液体の処理は、周囲設備や作業者に影響しない方法にします。選定表にはボウル材質、薬品や油との適合、見やすさ、ガードの有無も記します。タイの工場では高温多湿の外気や空調の効いた室内など温度条件が混在するため、設置点ごとの実際の条件を確認します。地域名だけで必要なドライヤ能力を決めることはできません。
SMCの空気調質ガイドは、圧縮空気が配管を通る間に温度低下で凝縮水が生じ得ること、フィルタが水分や異物の侵入を抑える位置付けであることを示しています。ここから導ける実務は、ドライヤ出口、配管末端、装置入口を一枚の系統図でつなぐことです。上流処理と末端フィルタの境界を明確にし、どこでドレンを排出し、どこで清浄度を検証するかを表にします。
エレメント交換は差圧だけで決めない
差圧計は詰まりによる圧力損失を把握する手段です。しかし、フィルタの出口空気が要求品質を満たしているかを単独で示すものではありません。Parkerは自社フィルタの資料で、差圧計はエレメントの交換時期や空気品質の指標ではなく、早期閉塞の兆候を示すものだと明記しています。エレメント材に損傷があれば、差圧が低くても汚染物が下流へ通過し得ます。緑色の表示だけを根拠に交換を延ばす運用は避けます。
交換条件は採用した型式のメーカー指示、使用時間や暦期間、実際の差圧、上流負荷、要求品質の測定を組み合わせて定義します。すべてを一律に置くのではなく、製品と用途に応じて管理表を作ります。交換後はエレメント型番、交換日、差圧、ドレンの状態、漏れ、下流設備の状態を記録します。予備エレメントの在庫や納期が長い場合は、調達単位と交換作業に必要な停止時間も契約前に確認します。
交換性は機種選定の重要な要素です。ボウルを外すスペース、遮断弁と残圧排出、安全に手が届く位置、誤装着を防ぐ向き、使用済みエレメントの処理方法を図面で確認します。カタログで同じ性能なら、現場で短時間に安全に交換できる構成を優先する理由があります。差圧計が見やすくても、エレメント交換のために機械カバーを大きく外す必要があるなら、保守計画にその作業を反映します。
フィルタとレギュレータの役割を混同しない
フィルタは汚染物の除去を担い、レギュレータは設定圧力の制御を担います。FRLユニットとして一体化されていても、両方の性能を個別に選定する必要があります。フィルタの圧力損失が大きい場合、レギュレータの設定値を上げるだけで根本対策になるとは限りません。負荷時の入口・出口圧力と流量を測り、フィルタ、レギュレータ、配管それぞれの損失を分けて調べます。圧力の選定と動作側の要件は空圧レギュレータ選定の記事を参照してください。
下流のアクチュエータが必要とする圧力・流量も決め手です。シリンダの推力や速度は、供給圧力だけでなく配管や弁、負荷条件にも影響されます。フィルタの追加によって負荷時の圧力が変わるなら、動作時間や把持条件を再確認します。シリンダ側の設計条件はエアシリンダ選定の記事と合わせて整理すると、フィルタだけを大きくしたり小さくしたりする判断を避けられます。
比較表では購入価格と運転費を分ける
候補品は、必要な空気品質への適合、運転圧力・温度・流量、各条件での圧力損失、接続寸法、ドレン方式、ボウルとシール材質、エレメント交換性、予備品の現地調達性で比べます。粒子を取る段と油エアロゾルを取る段を直列にする場合、段の順序と上流ドライヤの状態も含めて比較します。フィルタ本体の初期費用だけでなく、交換エレメント、停止時間、差圧によるエネルギー面の影響を別欄にします。
Donaldsonはフィルタ性能とエネルギー消費の関係を説明し、圧力損失と保守が運転費に影響することを示しています。ただし、メーカーのケーススタディにある節約額をそのまま別工場の効果と見なしてはいけません。自社の稼働時間、流量、圧力、交換頻度に沿って比較します。圧力損失の小ささだけを優先すると、必要な空気品質を満たさない恐れもあります。品質と圧力損失を同じ運転条件で示した見積を求めます。
| 比較項目 | サプライヤーへの質問 | 受け取る証拠 |
|---|---|---|
| 要求品質 | どの採取点で粒子・水・油の条件を満たすか | 要求表、試験・測定方法 |
| 実流量 | 常用と同時動作ピークで通せるか | 型式別流量・圧力損失曲線 |
| 上流条件 | ドライヤとドレンの前提は何か | 系統図、入口条件 |
| 保守 | いつ、誰がエレメントを交換するか | 手順書、予備品と納期 |
| 検収 | FAT/SATでどこをどう測るか | 記録様式、合否条件 |
RFPに入れる入力データ
RFPには、対象の自動機と空圧機器の型式、設備入口の常用・ピーク流量、入口圧力と温度、上流ドライヤと既設フィルタ、配管系統図、汚染物の現状測定、必要な粒子・水・油の品質、測定点を記載します。現状が不明なら、まず現地調査と測定をスコープに含めます。交換時に止められる範囲、保守スペース、ドレンの排出先、必要な予備品、稼働時間も添えます。フィルタを置ける長さだけで決めず、点検と交換に必要な空間も確保します。
回答には採用する段構成、型番、各エレメントの目的、流量・圧力損失の根拠、入口品質と出口品質の前提、ドレン構成、交換時期の根拠、予備品、施工と検収方法を求めます。カタログの最大流量だけを書いた回答は、入口圧力と許容圧力損失を追加確認します。型式を代替する場合は、同等の「接続口径」だけで認めず、品質・流量・圧力損失・材質・保守の条件を再評価します。サプライヤー間で条件が違えば、価格を比べる前に差異表を作ります。
FATで確認すること
FATでは、型番と組立方向、段の順序、ドレン方式、計器の位置、エレメントの識別、ボウルのアクセスを図面と照合します。可能なら契約で定めた流量・入口圧力条件で、フィルタ前後と装置入口の圧力を測ります。エア回路を代表動作させ、同時動作のピークで必要な下流圧力が維持されるかを確認します。FAT設備が本番上流空気を再現できない場合は、その限界を記録し、実地で再確認する項目をSATに移します。
清浄度の確認は要求クラスと測定点に合わせます。差圧計が緑を示すことだけで品質合格としません。必要な測定器、採取時間、校正、採取時の流量・圧力を決め、受入基準と結果を残します。ドレン排出を実演し、逆接続、漏れ、排出先、ボウルの脱着、交換エレメントの識別を確認します。エレメントを外す作業では空気を安全に遮断し残圧を抜く手順を優先します。

SATで現場条件を確かめる
SATでは、工場の実際のコンプレッサ、ドライヤ、貯気槽、分岐配管、複数装置の同時運転下で確認します。入口圧力、流量、フィルタ差圧、装置入口圧力を、通常運転とピークの両方で記録します。FATの供給条件と違う場合、同じ結果になると決めつけません。排水が実際の運転周期で処理できるか、ボウルに異常な水が溜まらないか、漏れや振動がないか、点検者が安全にアクセスできるかを確認します。
要求が清浄度クラスであれば、契約で定めた装置側の採取点で測定します。コンプレッサ室での測定だけで、装置入口の品質を検収しないようにします。初期結果だけでなく、後日の比較のため、採取点の写真、運転条件、計器、測定記録を保管します。引渡し後はメーカー指定の交換条件、差圧の傾向、ドレン量、下流機器の不具合を定期点検に入れます。頻繁な詰まりが起きた場合は、エレメント交換だけでなく上流汚染やドライヤ、配管の状態を調べます。
見積比較で見落としやすい五つの境界
第一は「供給側と装置側」の境界です。コンプレッサ室の共通フィルタを更新する提案と、装置入口の末端フィルタを追加する提案では、守れる範囲が違います。共通フィルタを通過した後も、貯気槽や配管の内面、工事で残った異物、分岐の低所に溜まる液体が影響し得ます。いずれか一方を自動的に正解とせず、異物が発生する位置と品質を求める位置を照らし合わせます。装置側にフィルタを置くなら、その前後に必要な遮断・測定・交換スペースまで施工範囲に含めます。
第二は「常用とピーク」の境界です。見積にある定格流量は、採用機種・入口圧力・許容圧力損失という条件と一緒に読みます。短時間だけ大量のエアを使う装置でも、その瞬間の圧力低下がクランプの保持やシリンダの動作時間に影響するならピーク条件が重要です。一方、瞬間値を不必要に大きく見積もると、接続や保守が過大になり得ます。実機の稼働データ、シリンダの同時動作表、エアブローの開時間を用いて、設計に使う流量の根拠を残します。
第三は「初期性能と運転中」の境界です。新品エレメントでの圧力損失と、汚れが蓄積した状態の圧力損失は異なります。交換の判断を差圧だけに寄せると、エレメントの劣化やシール不良を見落とす恐れがあります。逆に、圧力が安定しているという理由で異常なドレン量を放置すると、下流設備で別の問題が起きます。初期値、点検方法、メーカー推奨交換、必要に応じた空気品質測定を組み合わせ、誰が結果を見て何をするかまで決めます。
第四は「ろ過性能と製品品質」の境界です。カタログは部品単体を特定条件で評価していますが、工場の受入れは配管、継手、ドレン、流量変動を含むシステムの結果です。要求がワークに吹き付ける空気の品質であれば、ワークの近くで何を測るかまで検討します。必要な品質が装置メーカーや製品の品質管理文書で指定されている場合は、それを優先してRFPへ転記します。どの測定方法が適切か判断できない場合は、測定の専門事業者を含めて計画します。
第五は「本体価格と復旧コスト」の境界です。フィルタ本体が安くても、交換エレメントが現地で手に入らない、ボウルを外すために配管を切る、残圧排出が面倒という構成では停止が長くなります。交換のために必要な作業者数、工具、停止範囲、再起動時の確認を見積比較へ入れます。予備品の保管寿命や型番変更時の代替承認方法も確認します。採用後に部品表と現物の型番が一致するよう、SATの引渡し資料に写真を添えると保守担当へ引き継ぎやすくなります。
現場で使う簡易チェックシート
以下は型番を決める前の確認用です。空欄のまま発注せず、未測定なら現地調査の作業として見積へ入れてください。
| 確認欄 | 記入する内容 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 対象設備・用途 | 駆動、エアブロー、計測など | 必要な清浄度が異なるため |
| 品質を求める点 | 装置入口、工具直前など | 受入れの場所を固定するため |
| 汚染物と要求 | 粒子、水、油の各条件 | フィルタ段構成を決めるため |
| 入口条件 | 圧力、温度、上流処理 | メーカー性能の前提を合わせるため |
| 流量 | 常用と同時動作ピーク | 負荷時の圧力損失を見るため |
| ドレン | 発生量、排出方式、排出先 | 運転と保守の障害を防ぐため |
| 交換 | 周期の根拠、部品、アクセス | 品質と稼働を維持するため |
| 検収 | FAT/SATの測定点と合否 | 引渡し後も判定を再現するため |
この表で最初に埋めるべきなのは、採用したいフィルタの型番ではなく、守る設備と評価する点です。測定点が後から変わると、要求品質と保証範囲も変わります。発注前に装置メーカー、空圧設備担当、品質担当、施工会社が同じ図面を見て確認することで、施工後に「そこまでの品質を保証するとは聞いていない」という食い違いを減らせます。
合否条件を数値の羅列で終わらせない
FAT/SATの判定表では、目標値を記入する欄だけでなく、試験時の状態を残す欄を設けます。たとえば装置入口圧力を測るなら、対象の電磁弁が何台開いていたか、シリンダがどの順で動いたか、エアブローが同時に使われたかを記録します。フィルタ前後の圧力を測った時刻と装置入口圧力の時刻がずれていれば、瞬間的な圧力損失を比較できません。同時刻のログにするか、再現可能な代表運転を定めます。
清浄度の合否を決める場合も、単に「測定値が良い」では曖昧です。契約で定めた地点から、定めた方法で採取し、どの運転状態で評価するかを事前に合意します。測定器の方式や校正、サンプル採取時間が変われば比較が難しくなるため、結果と一緒に条件を保存します。フィルタの性能を証明したいのか、下流設備が受け取る空気品質を証明したいのかも分けておきます。前者を確認しても、後者を自動的に保証したことにはなりません。
SATで不合格になったときの切り分け手順も決めます。入口側で要求品質に達していなければ、上流処理を調べる必要があります。フィルタ直後は合格で装置入口が不合格なら、下流配管や接続部を調べます。流量不足ならフィルタの型番だけでなく、弁、レギュレータ、配管の径と経路を確認します。ここまで決めておくと、サプライヤーと工場の担当範囲が明確になり、立ち上げ時の手戻りを減らせます。
既設ラインの改造なら、交換前後を同じ方法で測る
既設のフィルタを「よく詰まる」という理由で大型化する場合、交換前の状態を残さないと改善を評価できません。対象分岐の系統図、フィルタ型番、エレメントの使用開始日、差圧の推移、ドレンの状態、装置入口圧力、停止や品質不良の発生日時を集めます。複数の装置が同じ主管を使う場合は、問題が特定の分岐だけで起きるのか、共通して起きるのかを確認します。主管由来の問題なら末端フィルタの増設だけでは対策が不足し、特定装置だけなら装置内の配管や使い方を調べる必要があります。
改造後は同じ測定点、同じ代表動作、可能な範囲で近い上流条件で比較します。改造前後でコンプレッサ設定や生産品目も変わった場合、フィルタだけの効果とは断定できません。少なくとも変更点を一覧にして、圧力、ドレン、故障頻度などの観察結果とともに記録します。交換後すぐの圧力損失が小さくても、数週間で急増するなら、上流からの汚染負荷やドレン不良を再調査します。逆に差圧が突然小さくなった場合も、単純に改善とせず、バイパスやエレメント破損がないか確認します。
現場の担当者には、差圧計の読み取りだけでなく、いつ排水するか、ボウルをどの状態で開けるか、交換後に何を確認するかを引き継ぎます。点検票には「異常なし」のチェック欄だけでなく、差圧の実測値、ドレンの量や色、漏れ、下流装置の症状を書ける欄を置きます。気付いた異常が履歴として残れば、次の設備増設で必要なフィルタ容量や上流処理を検討しやすくなります。
よくある質問
Q1. どのフィルタでも細かい公称ろ過精度を選べば安心ですか?
いいえ。対象の汚染物、流量、入口条件、圧力損失、保守を合わせて見ます。粒子用の値だけで水や油の品質は保証されません。要求品質を測る位置も決めてください。
Q2. ISO 8573-1のクラスだけ指定すれば十分ですか?
粒子・水・油の各要求と測定点、運転条件、測定方法が必要です。規格は要求を表す共通言語ですが、採用機種や配管設計まで自動で決めるものではありません。
Q3. 差圧計が緑ならエレメント交換は不要ですか?
差圧は主に流れの抵抗や閉塞の兆候を示します。Parkerの製品資料も空気品質の指標ではないとしています。メーカーの交換指示と、必要な品質確認を別に守ってください。
Q4. ドレンが多ければフィルタを増やせばよいですか?
まず上流ドライヤ、貯気槽、配管の温度変化、既設ドレンを調べます。液体水を末端で捕集することと、水蒸気を適切に乾燥させることは別です。
Q5. 見積を比較する最低限の条件は?
同じ要求品質と採取点、同じ常用・ピーク流量、入口圧力、上流空気の状態、許容する下流圧力、交換条件で比較します。欠けた条件は「未確認」として質問します。
TOMAS TECHへの相談
TOMAS TECHでは、タイ工場の自動機・空圧ラインについて、装置側の空気品質要求、実流量、配管経路、交換方法を整理し、比較可能なRFPとFAT/SAT項目に落とし込む支援を行います。お問い合わせ時には、設備名、空圧回路図、コンプレッサとドライヤの構成、困っている症状、フィルタ型番、分かる範囲の流量と圧力をご共有ください。現状値がない場合は測定計画から相談できます。お問い合わせはこちら。
参考情報
以下は一次資料です。引用した製品固有の説明を、別型式の保証値として扱わないでください。