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2026.10.18

4–20 mA信号アイソレータの選定|PLC入力・ループ電圧・FAT/SAT

4–20 mA信号アイソレータの選定|PLC入力・ループ電圧・FAT/SAT

工場の4–20 mA信号にノイズや値飛びが出ると、PLC入力カードやセンサーを交換したくなります。しかし、現場計器と制御盤が異なる接地電位を持つ、二つの装置が同じ電流ループへ給電する、既設回路に機器を追加して電圧余裕が不足する、といった配線条件が原因なら部品交換だけでは再発します。4–20 mA信号アイソレータの選定では「絶縁できるか」と同じ重みで、入力と出力のactive/passive、電源の取り方、ループ負荷、必要なHART通信、故障時の出力を確認します。本稿はタイ工場のOT・IoTデータ収集を想定し、見積仕様とFAT/SATの証拠まで整理します。

信号アイソレータを入れる前に、回路を一枚に描く

4–20 mAは計測値を電流で伝える方式で、フィールドの伝送器とPLCなどの受信側を一つのループとして見ます。Analog Devicesは、遠隔センサーからPLCへデータを送る工業用途で広く使われる方式と説明しています。ただし「4–20 mAだからノイズに強い」と考えて配線、接地、負荷を省略できるわけではありません。信号アイソレータは電気的な直結を断って信号を伝える部品ですが、追加した時点で給電と出力の組合せが変わります。

まず現場計器の型式、2線式か4線式か、どちらがループに電力を供給するか、PLCアナログ入力が電源を供給するactive入力か電流を受けるpassive入力かを図面に書きます。供給電源、ヒューズ、端子台、ケーブル長、シールドの接続、接地、追加の表示器やレコーダーも含めます。Phoenix Contactの技術資料は、active入力とpassive入力、入力側または出力側のループ給電など、見かけの「4–20 mA信号」が複数の回路構成を持つことを図示しています。型式名の「isolator」だけを見て挿入場所を決めることはできません。

図面に記す項目発注前に確認すること抜けた場合の典型的な問題
伝送器2線式/4線式、必要電圧、active/passive給電不足または二重給電
PLC入力active/passive、入力抵抗、レンジ、診断入力が読めない、換算がずれる
アイソレータ入出力の電源方式、絶縁境界、負荷上限接続してもループが成立しない
配線ケーブル、端子、シールド、接地接地ループや保全時の誤接続
通信HARTが必要か、どこからアクセスするかアナログ値は読めても診断が失われる

どんな問題を解くために絶縁するのか

現場計器と制御盤が異なる接地系を持つ場合、意図しない帰路ができると信号が乱れる可能性があります。Phoenix Contactはアナログ信号のグラウンドループを説明し、ガルバニック絶縁を回路に入れると補償電流の経路を切れると説明しています。ただし、どのノイズも絶縁で消えるという意味ではありません。ケーブル近くのインバーター配線、シールドの施工、電源リップル、伝送器そのものの故障、PLCのレンジ設定も切り分ける必要があります。

絶縁を導入する前後で、現場計器の端子での電流、PLC側の電流または換算値、供給電圧、接地間の状態、異常の発生時刻を記録します。異常がモータ起動時だけならその時間帯の電源と信号を同時に見ます。計器側は正常でPLC側だけ乱れるなら配線経路や入力に注目します。両側が同時に乱れるならセンサーのプロセス条件も確認します。原因を特定せず「とりあえず絶縁器」を入れると、故障が残ったまま見えにくくなることがあります。

絶縁境界と安全機能を混同しない

製品資料に「2-way isolation」「3-way isolation」とあっても、現場計器とPLCの間でどこが電気的に分離されるかは構成図で確認します。一般には入力と出力の2系統分離か、入力・出力・補助電源の3系統分離を指しますが、製品ごとの電源方式と試験条件に従って判断します。Phoenix Contactは2-wayのループ給電品と3-wayの補助電源品を別製品として掲載しています。3-wayの数字が大きいから無条件に優れているわけではありません。

ガルバニック絶縁は計測信号の分離です。それだけで設備の安全停止、危険場所での本質安全、避雷・サージ対策、過電流保護を実現するとは言えません。危険場所に計器があるなら、その区域に適用する認証済みバリア、設置条件、配線分離を別に確認します。一般用の信号アイソレータを、防爆用の絶縁バリアとして代用してはいけません。安全関連のループなら安全機能全体の要求から部品認証と故障時挙動を判断します。

4–20 mA信号アイソレータの選定|PLC入力・ループ電圧・FAT/SAT - figure 1

active/passiveと電源方式を組み合わせで選ぶ

activeとpassiveは「良い/悪い」の分類ではなく、どちらがループへエネルギーを供給するかという接続条件です。2線式伝送器は同じ二本の線で給電と信号伝送を行うことが多く、PLC入力や中継器が給電する構成があります。4線式伝送器では別電源を持ち、信号出力がactiveの場合があります。受信側にもactive入力とpassive入力があります。Phoenix Contactの技術説明には、active伝送器をpassiveアイソレータ入力へ接続し、active出力からpassive受信器へ渡す例などが示されています。

見積で要求するのは、カタログ上の「4–20 mA対応」だけではありません。入力側が伝送器へ給電するか、出力側がPLC入力の給電を受けるか、補助電源24 V DCが必要か、断線時にどの側がどう出力するかを、端子番号付きの結線図で示してもらいます。受注側が現場計器とPLC入力の型式を知らないなら、適合判定は未了です。発注者は既設の結線図と入力カードの取扱説明書を渡し、適合する品番を選ばせます。

ループ給電品を選ぶときの注意

ループ給電型は外部電源を省ける場合がありますが、動作に必要な電圧をループから使います。Phoenix Contactの出力側ループ給電製品は、PLC側のactive入力が給電する構成で動作することを示します。同じシリーズ名でも入力側ループ給電品や補助電源品があるため、販売名だけでは判断できません。アイソレータの電圧降下、伝送器の最低電圧、PLC入力の抵抗、ケーブル抵抗を、最大電流時の条件で足し合わせます。

さらに、多チャンネルを一つの電源から給電する場合は各ループの電圧だけでなく、電源の総電流、起動時、ヒューズと共通端子の容量も確認します。あるチャンネルの断線が他のチャンネルの測定に影響しないか、共通電源の故障時に何が記録されるかも設計対象です。単一チャンネルの試験結果を盤全体へ無条件に展開しません。

ループ電圧の余裕を数値で確認する

計算は「供給電圧 ≥ 伝送器の最低動作電圧 + 受信抵抗の電圧降下 + アイソレータの必要電圧 + 配線などの電圧降下」という形で整理します。ここで使う値は、同じ電流条件・温度条件の各製品仕様から取ります。出力側と入力側が電気的に分かれたアイソレータでは、両側を別ループとして計算します。一つの24 V電源から全てが直列につながると仮定してはいけません。

説明用の仮定値として、電気的に分離された入力側と出力側を別々に計算します。入力側は現場用24.0 V DC電源、2線式伝送器の最低動作電圧12.0 V、アイソレータ入力負荷100 Ω、入力側の配線・保護素子の降下1.0 Vとします。20 mA = 0.020 Aなら入力負荷の降下は0.020 A × 100 Ω = 2.0 V、入力側余裕は24.0 − 12.0 − 2.0 − 1.0 = 9.0 Vです。独立した出力側は制御盤用24.0 V DC電源、仮定した出力ループ給電型アイソレータの最低必要電圧8.0 V、受動型PLC入力250 Ω、出力側の配線・保護素子の降下1.0 Vとします。PLC入力の降下は0.020 A × 250 Ω = 5.0 V、出力側余裕は24.0 − 8.0 − 5.0 − 1.0 = 10.0 Vです。PLC入力抵抗は入力側ループに加えません。この2ループと8.0 Vは計算方法を示す仮定で、特定製品の接続・保証値ではありません。補助電源を使う3-way型なら、その製品の入力・出力・補助電源の端子図と負荷条件で別に計算します。実設計では最大電流や異常時電流、電源の下限、周囲温度、カードの実抵抗を用いて再計算します。

この例でアイソレータをもう一台直列に追加すれば、同じ値を仮定する限り残余はさらに減ります。しかし実際のアイソレータは入力・出力が分離され、単純な直列追加とならない製品もあります。設計レビューでは電源を持つ側ごとにループを描き、式の各電圧降下が図のどの部品に対応するか印を付けます。値が仕様範囲内でも、余裕が小さければ電源変動や配線延長に弱いので、合否の安全余裕は設備条件に基づいて決めます。

4–20 mA信号アイソレータの選定|PLC入力・ループ電圧・FAT/SAT - figure 2

精度、応答、HARTは製品ごとに確認する

信号アイソレータを通した測定値には、伝送器、アイソレータ、PLC入力それぞれの誤差が入ります。「アイソレータ精度0.1%」と表示されていても、その値がスパン、読み値、上限値のどれを基準にするか、調整済みか、何°Cでの値かを確認します。Phoenix Contactの製品ページには最大伝送誤差と温度係数が個別に載っています。比較表へ型式ごとの条件を転記し、システム全体の許容誤差に収まるかを見るべきです。異なる定義の数字を足し算して「総誤差」と断定しません。

応答速度も重要です。遅い温度監視なら数十ミリ秒の差が実務に影響しないかもしれませんが、高速に変化する圧力やインターロック用の信号なら別です。製品によってステップ応答時間や周波数特性が異なります。信号フィルタを強くかければ値飛びが減る一方で、実変化への追従が遅れる可能性があります。何を記録し、何を警報に使い、必要な時間応答はどれくらいかを先に指定します。

HARTを使う場合、4–20 mAのアナログ値が読めることとHART通信が通ることは別の試験です。Phoenix ContactはHART-transparentと明記した製品を掲載しています。これは全アイソレータが通信を透過するという意味ではありません。現場のハンドヘルド機器、PLC/資産管理システムのアクセス地点、配線、入出力カードの対応を確認し、FAT/SATで実際に通信して診断値を読めるか検証します。HARTが不要なら対応品を義務化せず、必要条件と費用を比べます。

故障時の出力をデータ収集の仕様に含める

伝送器の断線、電源喪失、入力レンジ外、アイソレータ自身の故障、PLC入力異常では、記録すべき意味が違います。アイソレータが0 mA、保持値、上限側などどの出力になるかは型式と設定に依存します。PLC/MES側で「測定値0」と「無効な測定」を混同すると、品質記録や設備アラームの判定を誤ります。検出できる故障、検出できない故障、アラームに変換する条件を設計表に分けます。標準や製品資料の数値範囲を、すべての伝送器へ一律に当てはめません。

盤内実装・保全性を比較する

DINレール幅だけで品番を決めると、配線作業空間、通風、端子交換、表示LEDの見やすさが不足することがあります。Weidmüllerの製品ページは狭幅の3-way絶縁アンプを示し、Phoenix Contactの製品ページはループ給電型や補助電源型の幅、端子方式を示します。盤面での総幅、隣接機器の温度、電源分配、予備チャンネル、端子番号の読める余白を含めて設計します。タイ工場の盤内温度は設置場所で違うため、実測・設計条件を使い、国名から決めません。

交換時には、旧品と新品の入力/出力のactive/passive、絶縁境界、レンジ、端子配置、HART透過、故障出力が同じか確認します。メーカーの後継品番でも接続条件が変わる可能性があるため、販売上の「互換」だけで試験を省きません。DIPスイッチ設定やソフトウェア設定は写真または設定ファイルで残し、現場の実測結果と紐付けます。予備品を持つ場合、保管期限や現地調達の納期も確認します。

シールドと接地はアイソレータの外で設計する

絶縁器を入れても、シールドや計器筐体を介して別の接地経路が残る場合があります。シールド端末と保護接地は設備全体の設計とメーカーの配線指示に従います。「シールドは必ず片側だけ」「必ず両側」という一文を全設備に適用しません。配線を変更する前後で接地と信号の状態を確認し、盤内の図面に実際の接続点を反映します。雷サージや大きな過渡現象が懸念される場合は、サージ保護と配線分離も別途検討します。

RFPに必要な入出力・試験条件

購買依頼には「4–20 mAアイソレータ、適宜」という記載を避けます。伝送器とPLCの型式、給電方式、ループ電圧の計算、絶縁境界、必要誤差、応答時間、HART要否、故障出力、盤内環境、適用認証、検査条件を提出します。候補メーカーまたはSIerには、結線図、設定表、部品表、製品データシート、FAT/SAT計画の回答を求めます。

RFP項目発注側が渡す条件受注側の回答・証拠
信号源と受信器伝送器・PLCカード型式、2/4線、active/passive端子番号入りの結線図
電源と負荷最低供給電圧、抵抗、線長、電源余裕入力・出力各ループの電圧計算
絶縁どの境界を分離したいか、適用環境絶縁方式と定格・試験条件
性能許容誤差、温度範囲、応答、HART製品仕様と照合表
故障断線・失電時の記録、警報故障注入テスト表
保全端子、DIP設定、予備品、現地調達設定票と交換手順
受入FAT/SAT条件と測定点実測ログ、合否基準

候補Aが安価でもループ電圧が不足し、補助電源や盤改造が必要なら総額は逆転し得ます。候補Bが高機能でも、HARTも高速応答も不要なら過剰かもしれません。部品単価に加え、電源、端子、工事、停止時間、試験、予備品まで同じ範囲で比較します。導入による収益効果は「ノイズが消えるはず」という推測ではなく、現在の欠測回数、再測定工数、品質保留時間から見積もります。

データの意味を守るための実装判断

スケーリングを伝送器・PLC・履歴画面で揃える

4 mAと20 mAがそれぞれ何の物理量を表すかは、伝送器のレンジ設定から決まります。アイソレータに信号変換機能がある場合、入力レンジと出力レンジが同じとは限りません。PLCでも工学単位への換算を行い、履歴画面で別の換算が入ると、現場値とトレンドがずれます。たとえば「4 mA=0、20 mA=100」という説明用の設定なら、12 mAはスパンの(12−4)/(20−4)=0.5、つまり50です。ただし単位が°Cなのかbarなのか、ゼロがゲージ圧か絶対圧かによって意味は変わります。全システムで同じレンジと単位を版管理し、FATで4、12、20 mAの3点を照合します。

信号を二つのPLCへ分岐して監視したい場合も、単純に二つの受信抵抗を直列に入れるとループ負荷が増えます。二出力に分離する専用製品や別のデータ配信方法を検討し、双方の受信器が故障したときの影響を確認します。WeidmüllerのACT20M-AI-2AO-S(注文番号1176020000)は独立した2出力を持つ例で、メーカー資料では出力はactive、接続先の受信器はpassiveと指定されています。1176010000は1出力の別モデルです。導入可否は受信側のactive/passiveと電源・負荷条件で決めます。監視先を増やすたびに現場計器へ新しい電気負荷を背負わせる設計にしないことが重要です。

警報・品質記録では「無効」を独立した状態にする

PLCやMESへデータを送ると、電流値だけでなく品質フラグが必要になります。伝送器が断線した瞬間、最後の正常値を表示する設計も、アラーム側の値を表示する設計もあり得ます。しかし履歴に通常の測定点として保存すると、後から「工程は本当にその値だったのか」を判断できません。時刻、測定値、品質状態、欠測の原因、復旧時刻を分けて保持します。品質上重要な測定なら、欠測期間に作られたロットをどう扱うかを業務側と先に決めます。

アラームしきい値の見直しでは、アイソレータの追加前後で信号の応答遅れやフィルタが変わる可能性を考えます。短いスパイクを除く設定が有効な場合もありますが、本当に検出すべき短時間の異常まで消してはいけません。設備の制御用、監視用、品質判定用を同じ測定点で兼ねる場合は、各用途の時間要件を整理します。制御の遅れが許容できるか、MESに必要なサンプリング周期と時計が合っているかは、単体の4–20 mA精度とは別の受入項目です。

型式変更時はバックアップと変更管理を結び付ける

既設盤の改造では、交換前の配線図、PLCレンジ、アラーム条件、HART設定、履歴タグを保存します。新しいアイソレータを仮配線で試して良好だったとしても、本配線へ移す時に端子番号や極性が変わることがあります。変更作業票には停止開始、隔離、無電圧確認、部品交換、配線確認、通電、電流注入、PLC/MES照合、運転復帰の順序を記し、責任者と戻し方を決めます。複数チャンネルを同時に替える場合は、隣の計器を取り違えないようタグ番号と端子を一点ずつ照合します。

FAT合格後に現場でケーブルやPLCカードが変わるなら、前提が変わっています。変更点を図面に記し、影響を受ける試験だけを再実施します。すべてを無条件に再試験するのではなく、変更した部品が入力側か出力側か、給電条件とHART経路に影響するかを見て判断します。変更履歴が残れば、数か月後のノイズ再発時にも、いつ・どこを変えたかから診断を始められます。

現地調達と予備品は性能要件の一部

タイで複数工場へ展開するなら、同じ品番をどの拠点で買えるか、現地で技術文書を入手できるか、故障時の交換に何日かかるかを確認します。盤内の6 mm幅が魅力でも、特殊な端子台を入手できず停止が長引けば運用コストが増えます。代替品を事前登録する場合は、電源方式、絶縁構成、入力負荷、出力負荷、故障出力、応答、HARTを一致条件として列挙します。外形やレンジが似ているだけで代替承認しません。

初期導入では予備チャンネルの容量も考えます。ただし空きチャンネルを使うからといって、別の計器の配線を同じ端子へまとめてはいけません。入力単位のトレーサビリティを保ち、図面、タグ、PLC変数、MES履歴の対応を揃えます。この対応表は不良解析や計器校正時にも使えるため、納品物に含めます。

FATは4 mA・中間・20 mAと故障を同じ表で確認する

FATでは校正済みの電流源または適切なシミュレータを用い、入力に4 mA、中間値、20 mAを与えて、アイソレータ出力とPLC換算値を記録します。数値だけでなく、各点の電流源の設定、使用した計器の識別、PLCレンジ、温度、供給電圧を残します。必要な場合は上昇側と下降側の両方向、応答時間、起動時の過渡を確認します。合否はシステム要求から定め、メーカーの単体精度だけをそのまま合格基準にしません。

次にループを開放し、伝送器電源を落とし、アイソレータ補助電源を落とすなど、リスク評価と試験手順で許される故障を別々に注入します。PLCとMESが「値を保持している」のか「無効・断線を記録している」のかを確認します。HARTが要求なら実際に資産管理端末から通信してパラメータと診断を読みます。FATで現地の長い配線や異なる接地を再現できない部分は、未検証と明記してSATへ引き継ぎます。

4–20 mA信号アイソレータの選定|PLC入力・ループ電圧・FAT/SAT - figure 3

SATは現地のケーブル・接地・ノイズ条件で再検証する

SATでは、実際のケーブル長、シールド終端、盤電源、インバーターや大型負荷の動作条件で同じ試験を繰り返します。4 mA・中間・20 mAの読み値、再起動後の値、伝送器が現場プロセスを測っているときの値を分けて記録します。現場で校正源をつなぐ場合はプロセス制御に影響するため、隔離手順と運転許可を守ります。制御対象を誤って動かす恐れがある場合、運転中の故障注入をしません。

現地でノイズが減っても、センサー値の意味を確認します。PLCのスケーリングが4–20 mAに合わせて更新されているか、トレンド時刻が一致するか、断線が欠測として記録されるか、アラーム閾値が元の工程条件を保つかを照合します。正常値だけを見て「通信OK」とすると、品質トレースで必要な異常履歴が欠ける可能性があります。設備保全へ端子図と設定票を渡し、変更後の基準波形・ログを残します。

トラブル時の診断順序

症状先に確認すること安易に決めつけないこと
0 mAまたは値なし給電、断線、active/passive、端子極性すぐに伝送器故障としない
4 mA近辺で頭打ち伝送器最低電圧、ループ電圧余裕、負荷すぐにPLCレンジだけを変えない
値が周期的に揺れる大型負荷の時刻、配線・シールド、入力設定絶縁だけで全ノイズを消せるとしない
アナログ値は出るがHART不可型式の透過仕様、アクセス点、カード4–20 mA対応をHART対応と読まない
交換後に換算がずれるレンジ、DIP設定、active/passive、校正後継品を無試験で互換扱いしない

異常調査では一度に複数の配線と設定を変えず、変更前後の電流と電圧を同じ測定点で比較します。伝送器側が正しい電流を出しているか、アイソレータの入力が受けているか、出力が所定値か、PLCで換算した値が正しいかを順番にたどります。途中のどこで差が生まれるかが分かれば、交換対象を絞れます。これはセンサー選定やPLC通信の総論とは異なる、4–20 mAループ一つの調達・受入問題です。

典型的な導入パターンを仕様へ落とす

既設センサーの値飛びを調べる改造案件

たとえば、長いケーブルで接続された圧力伝送器の値が、特定のモータ起動時にだけ跳ねるとします。調査の順番は、症状が起きる時刻をトレンドから特定し、現場計器の端子とPLC入力で同時に電流を測り、供給電圧と接地・シールドの現状を確認することです。ここで現場端子の電流が安定し、盤側だけ乱れるなら配線経路、端子、受信器側へ範囲を絞れます。両側で同じ乱れが出るならセンサーや実際の圧力変動も候補に残します。絶縁が必要と判断したら、元の正常時・異常時の波形を保存し、改造後に同じ運転条件で比較します。

改造の見積には、アイソレータ一台の価格だけでなく、盤内電源や端子、配線変更、運転停止、電流注入、PLCレンジの確認、トレンド比較を含めます。「ノイズがゼロになる」と約束するのではなく、再現できた異常パターンについて、どの測定点の差を合格条件にするか決めます。現地のモータ運転をFATで再現できないなら、SATでの判定を必須にします。既設設備では運転を止められる時間も制約なので、戻し手順まで準備してから施工します。

新設ラインの多点データ収集案件

新設ラインで温度、圧力、流量など多数の伝送器をPLCへ集める場合、まず信号一覧表を作ります。各行にタグ、測定単位、4 mAと20 mAの意味、計器の2/4線式、給電元、必要な精度・応答、HART要否、断線時の扱い、校正方法を入れます。同じ「4–20 mA入力」でも、active出力の4線式伝送器と、PLC側から給電する2線式伝送器は結線が異なります。信号一覧表から入力カードとアイソレータの型式を選び、チャンネル別のループ電圧を計算します。

さらに、MESへ渡すタグ名、時刻、品質状態、ロットや設備IDとの対応を決めます。PLCだけで値が合っても、MES側でタグを取り違えればトレーサビリティは成立しません。FATで各チャンネルへ既知電流を一つずつ注入し、現場タグ、PLC変数、画面表示、履歴レコードが同じ対象を示すことを確認します。SATでは現場の伝送器を使って配線・接地・プロセス条件を含めて再確認します。多点案件ほど、単体の絶縁性能より、この対応関係の検証が欠落しやすい点に注意します。

品質判定へ使う信号は運用側も試験する

計測値が製品の合否やロット保留の条件になるなら、アイソレータの出力異常を単に設備アラームで終わらせません。欠測期間の開始・終了を記録し、その期間に処理したワークを特定できるようにします。復旧後の一つの正常値だけで欠測中の製品を自動的に合格へ戻さないなど、品質部門と例外処理を決めます。これらは4–20 mA信号アイソレータのカタログには書かれていない、データ収集システムとしての受入条件です。

既存の記事とどう使い分けるか

温度の測定方式や保護管そのものを決める場合は工場の温度センサー選定を参照してください。信号のデジタル変換や異なる産業用プロトコル間の連携を検討するなら産業用プロトコルゲートウェイ選定が関連します。本稿はアナログ電流ループの電気的分離、給電、データ品質と受入証拠に絞ります。

よくある質問

4–20 mA信号アイソレータはすべて同じように接続できますか?

できません。入力と出力のactive/passive、ループ給電の位置、補助電源の有無、2-wayまたは3-wayの分離範囲が品番で異なります。伝送器とPLCカードの型式を確定し、端子番号入り結線図とループ電圧計算で確認します。

2-wayより3-way絶縁の方が必ず安全ですか?

いいえ。分離する回路数の表現であり、安全機能の達成や危険場所適合を意味しません。必要な絶縁境界、定格、認証、電源方式を用途に合わせて選びます。

アイソレータを追加すればHART通信は保たれますか?

品番に依存します。必要ならHART-transparentと明記された候補を選び、現場のアクセス地点から実際に通信できるかFAT/SATで試験します。アナログ値が読めるだけでは確認になりません。

ループ電圧は24 Vなら足りますか?

24 Vという電源公称値だけでは分かりません。電源の最低値、伝送器最低電圧、入力抵抗、アイソレータ必要電圧、配線降下を最大電流条件で計算し、入力側と出力側のループを別々に評価します。

まとめ

4–20 mA信号アイソレータは、ノイズ対策だけを目的に型式を決める部品ではありません。現場計器からPLC入力までの給電と電流の経路を描き、active/passive、絶縁境界、ループ電圧、精度・応答、HART、故障時の出力を一つの仕様にします。FATでは既知電流と故障を注入して出力と記録を確認し、SATでは現地の長い配線、接地、運転時ノイズで同じ判断を再確認します。

タイ工場で既設の計測値が不安定、または新しいOTデータ収集盤の仕様書を作る段階でも、伝送器・PLCカード・電源・配線図があれば改善点を整理できます。TOMAS TECHへのお問い合わせから、現状のループ構成と困っている測定条件をご相談ください。

参考情報