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2026.10.07

産学連携 タイ|チュラロンコン大学工学部とのMoUで何をするのか

MoU signing ceremony between the Faculty of Engineering, Chulalongkorn University and TOMAS TECH

2026年10月7日、当社はチュラロンコン大学工学部と、同学部の学士課程「コンピュータ工学・デジタルテクノロジー専攻(CEDT)」に関する産学連携の覚書(MoU)を締結しました。本記事では、調印の事実をお伝えするだけでなく、システムインテグレーターである当社がなぜ大学と組むのか、産学連携を実際に機能させるには何が要るのかを、現場で感じてきたことにもとづいて整理します。タイで人材育成や産学連携をご検討中の企業のご担当者さまの参考になれば幸いです。

産学連携 タイ|チュラロンコン大学工学部とのMoUで何をするのか - 覚書への調印

結論:不足しているのは「書ける人」ではなく「課題を定義できる人」

タイの製造業・物流業でAI・IoT・自動化の導入を支援していると、技術そのものが障害になることは実はあまり多くありません。障害になるのは、現場で何が起きているのかを観察し、関係者から話を聞き、どこを自動化すれば効果が出るのかを見極め、既存設備や基幹システムと矛盾なくつなぐ――この一連の判断を担える人がいないことです。

コードを書ける人材は、タイでも着実に増えています。ところが、仕様書に書かれていない制約を現場から拾い上げ、技術に落とし込める技術者となると、依然として希少です。当社がIT・AI・OT・FAの4領域を横断して支援してきたなかで、最も価値を生んできたのもこの部分でした。

本協定で当社が関わろうとしているのは、まさにこの能力の育成です。チュラロンコン大学工学部コンピュータ工学科による本件の発表でも、学生を「単なるプログラマー」から「産業現場の課題を解決できるソリューション志向のコンピュータエンジニア」へ育てることが協力の狙いとして述べられています。

締結の概要

項目内容
締結日2026年10月7日(水)
相手方チュラロンコン大学工学部(Faculty of Engineering, Chulalongkorn University)
対象課程工学士課程 コンピュータ工学・デジタルテクノロジー専攻(CEDT)
大学側締結者コンピュータ工学科長 Asst. Prof. Dr. Attawith Sudsang(工学部長の代理として出席)
当社側締結者代表取締役社長 野崎 涼
立会人CEDTカリキュラム長 Asst. Prof. Dr. Narongdech Keeratipranon/当社 総務部マネージャー Kanthida Wannasiwaporn
期間調印日より5年間(両者の書面による合意により延長可能)
産学連携 タイ|チュラロンコン大学工学部とのMoUで何をするのか - 両者出席者による記念撮影

CEDTは「Higher Education Sandbox」の課程である

本協定を理解するうえで欠かせないのが、CEDTがタイの高等教育サンドボックス(Higher Education Sandbox)のもとで運営されている課程だという点です。これは、従来の高等教育基準の枠組みから外れた教育課程の運営を制度として認める特例枠で、産業界のニーズに直結したカリキュラム設計を可能にするものです。

実務上、この違いは大きく効いてきます。通常、企業が大学と関わる接点は、講演依頼・インターンシップの受け入れ・卒業生の採用といった「でき上がったカリキュラムの外側」に限られがちです。サンドボックス課程では、企業がカリキュラムの設計段階から関与し、実際の産業課題を教材として持ち込み、学生の評価そのものにも加わることができます。

つまり、大学と企業がそれぞれの持ち場で分断されるのではなく、ひとつの育成サイクルを一緒に回す構造になっています。当社が本協定に意義を感じたのは、この構造の部分です。

当社が担う役割

協定にもとづき、当社は主に次の領域で協力してまいります。

Capstone Projectへの共同指導

CEDTでは、3年次に複数科目の知識を統合して成果物をつくる総合プロジェクト(Capstone Project)が必修として位置づけられています。当社はここに、実際の産業現場で起きている課題をテーマとして提供し、当社の技術者が共同アドバイザーとして学生の開発を支援します。

教材としてきれいに整理された課題ではなく、制約と矛盾を含んだ現実の課題を扱うことに意味があると考えています。要件が途中で変わる、現場の運用が仕様と違う、データが想定どおりに揃わない――こうした事態は実務では日常ですが、学生のうちに経験できる機会はほとんどありません。

インターンシップとCo-op(協同教育)

1〜3年次の学生を第3学期のインターンシップで、4年次の学生をCo-op(協同教育)で受け入れます。受け入れにあたっては当社社員を指導担当として割り当て、カリキュラムが定める基準と期間にもとづいて学生を評価します。

現場の技術者による講義

当社の技術者が、特別講師・ゲストスピーカーとしてカリキュラム内の科目に登壇します。スマート物流、IoTによる設備・工程の可視化、生産トレーサビリティ、帳票のペーパーレス化、生成AIの業務活用、搬送の自動化といった、当社が実際に手がけている領域の実務を扱います。

カリキュラムへのフィードバックとJob Fairへの参加

技術動向と産業界のニーズの変化を踏まえ、カリキュラムおよび教育内容の改善に向けた提言を行います。あわせて、学科が主催するJob Fairにも継続的に参加します。

産学連携 タイ|チュラロンコン大学工学部とのMoUで何をするのか - 記念品の贈呈

産学連携を機能させるために必要だと考えていること

ここからは、協定の内容を離れて、当社が実務の経験から考えている点を記します。産学連携は「締結して終わり」になりやすい取り組みでもあるためです。

第一に、提供するテーマを選ぶ責任は企業側にあります。 学生に渡す課題は、小さすぎれば学びにならず、大きすぎれば終わりません。かつ、期間内に成果が出る見込みがあり、失敗しても事業に影響しない範囲である必要があります。この線引きは、現場を知っている企業側にしかできません。

第二に、指導担当を「本業の片手間」にしないことです。 共同アドバイザーや指導担当は、名前を出すだけでは機能しません。学生がつまずくのは技術そのものよりも、課題の切り分け方や関係者への確認の仕方であることが多く、そこに時間を使える体制を組めるかどうかが成否を分けます。

第三に、評価に加わる以上、評価軸を言語化しておくことです。 当社社員が評価委員として発表審査に加わる場面では、「動いたかどうか」だけでなく、課題の定義が妥当か、制約を踏まえた設計になっているか、運用に乗る形になっているかを見ることになります。企業として何を良しとするのかを事前に整理しておかなければ、評価は印象論に流れます。

第四に、成果を学生に返すことです。 プロジェクトの成果が企業内でどう扱われたのか、実際に使われたのか使われなかったのか、使われなかったとすれば何が足りなかったのか。ここを返さないと、学生にとっては提出して終わりの課題になってしまいます。

今後について

当社は本協定にもとづき、2026年度よりCapstone Projectのテーマ提供、インターンシップ・Co-opでの学生受け入れ、講義への技術者派遣を順次開始してまいります。

タイに拠点を置く日系企業として、タイの高等教育と産業をつなぐ役割の一端を担えることを光栄に思っています。と同時に、これは当社自身にとっての人材育成でもあります。インターンシップやCapstone Projectを通じて当社の仕事を知った学生が、将来の同僚となる可能性もあると考えています。

タイでの人材育成、産学連携、あるいは製造・物流現場のDXについてご相談がありましたら、TOMAS TECHのお問い合わせページよりお気軽にお問い合わせください。

参考リンク