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2026.10.07

受変電設備の状態監視導入|部分放電・温度監視とタイ工場のRFP

受変電設備の状態監視導入|部分放電・温度監視とタイ工場のRFP

「受変電設備は、年に一度の停電点検と外部業者のサーモ点検で済ませている。ところが最近、本社や保険会社、顧客の監査から『状態監視はしているか』と聞かれるようになった」。タイの日系工場の設備保全や電気の担当の方から、こうした相談が増えています。受変電設備の状態監視の導入で大切なのは、センサを何点付けるかではありません。「劣化の兆候が測れるようになってから故障するまでの時間の中で、誰が気づき、設備を止めるかどうかを誰が判断するかを決めておくこと」です。そのために決めることは5つあります。①設備の棚卸しと重要度、②劣化モードと監視方式の対応、③定期点検と連続監視の分担、④データの行き先と判断の体制、⑤受入試験です。

最初にお断りです。本記事の数値のうち、出典を示していないもの(モデル工場の盤の数、劣化ごとの兆候から故障までの期間、センサの点数など)は、説明のために置いた本記事の仮定です。業界の平均値でも調査値でもありません。無線温度センサの仕様はメーカーの公称値で、第三者が検証した値ではありません。また、米国の規格 NFPA 70B の2026年版について書く内容は、NFPA が公開している改訂の審議資料によるもので、最終的に発行された版の文言とは限りません。登場する製品やベンダーは、いずれも TOMAS TECH のものではなく、他社のものです。

なぜ今、受変電設備の状態監視が問われるのか

NFPA 70B が「推奨」から「標準」になり、2026年版が現行に

電気設備の保守について、米国の民間の規格団体 NFPA(全米防火協会)が定める NFPA 70B があります。業界メディアの Reliable Media の解説によれば、NFPA 70B は2023年版(2023年1月16日発効)で、それまでの「電気設備保守の推奨規範(Recommended Practice)」から「電気設備保守の標準(Standard)」として出し直されました。NFPA の文書の決まりでは、推奨規範は「should」を使う強制力のない書き方で、標準は「shall」を使う強制的な規定を含み、採用されることを前提にした形式で書かれます。同じ解説は、その後2026年版が2023年版に取って代わり現行版になったこと、ただし施設に適用される版は所管の当局や契約、保険会社がどの版を参照するか次第で、最新版とは限らないことにも触れています。

書籍の販売業者の商品説明は、2026年版(全216ページ)の主な更新として、保守の間隔を決めるための P–F 曲線法の導入、機器の修理が先送りされないよう期限を定める新しい要件、点検や試験の表の詳細化、移行スイッチ(transfer switch)の新しい章の追加などを挙げています。

NFPA が公開している2026年版の改訂審議資料によれば、受変電設備の状態監視に関係する論点として、次のような内容が示されています(いずれも審議中の文言で、最終版の文言とは限りません)。

  • 赤外線サーモグラフィの間隔:保守の間隔の表で、「すべての機器」の赤外線サーモグラフィは、機器の状態が1・2なら12か月、状態が悪い3なら6か月とされています。これはメーカーの推奨が示されていない場合などに超えてはいけない間隔として扱われています。赤外線の教育機関の解説も、2023年版について同じ趣旨(少なくとも12か月ごと、状態3は少なくとも6か月ごと)を説明しています。
  • 連続監視の通知が機器の状態の判定に入る:機器を状態1〜3に分ける条件の中に、「連続監視システムからの未対応の通知がないこと」(状態1)、「前回の評価以降に連続監視システムからの通知があったこと」(状態2)、「連続監視システムからの有効または未対応の通知があること」(状態3の条件の一つ)が組み込まれています。
  • 常設の連続温度監視で赤外線点検の要件を満たせる:常設の連続温度測定デバイスは、赤外線点検の要件を満たすものとして認める、という改訂が示されました。委員会は、これを赤外線サーモグラフィと同じ結果を出す代替の技術と説明しています。これは「認める」という許容で、設置を求めるものではありません。附属書では、カバーを外さずに見通しを得られる赤外線ウィンドウ(IRウィンドウ)にも触れています。
  • 保守を考慮した設計の選択肢:附属書で、作業者を充電部にさらさずに点検できる赤外線ウィンドウ、重要な端末部の温度センサ、中電圧機器の超音波センサ、重要なケーブルと機器の部分放電監視、常設の状態監視デバイスなどが、設計の選択肢として並べられています。
  • 点検間隔は P–F 間隔の半分以下:P–F 曲線法で最大の保守間隔を決めることを認める改訂と、附属書で「故障を防ぐには、時間基準の予防保全の間隔を P–F 間隔の半分以下にする必要がある」という説明が示されています。
  • OT サイバーセキュリティ:電気保守プログラム(EMP)に含めるべき要素として、ネットワークにつながる機器の運用技術(OT)サイバーセキュリティを加える改訂が、審議資料で示されています。
  • オンラインの部分放電:試験の表では、変圧器の中・高電圧の巻線の「オンライン部分放電」や、1000 V を超える電力ケーブルの「部分放電」などが試験項目として位置づけられています。これは機器と保守プログラムに応じて選ぶ項目で、すべての機器に必須という意味ではありません。

2025年3月、英国の変電所火災が示した「測っていたのに防げなかった」

2025年3月、英国ロンドン西部の North Hyde 変電所で火災が起き、ヒースロー空港が閉鎖されました。AP 通信の報道によれば、英国の国家エネルギーシステム運用者(NESO)の報告は、変圧器の一つの重大な故障について、ブッシング(絶縁碍管)への水分の侵入が短絡を起こし、油に着火した可能性が最も高いとしました。同じ変電所では、2018年の油の試料で水分の上昇が見つかっていたものの、ブッシングの交換は行われていなかったと報じられています。規制当局の Ofgem は、変電所を保有する送電会社 National Grid Electricity Transmission の免許条件の違反の有無について、調査を始めました。

これは送電会社の変電所の事例で、工場の受変電設備の事例ではありません。それでも、報道によれば兆候は測られていたのに、それが判断と処置につながらなかったという点は、工場で状態監視を考えるときにも、そのまま当てはまる教訓です。

中電圧スイッチギヤと部分放電の規格も改訂が続く

規格の世界でも動きが続いています。1 kV を超え 52 kV 以下の固体絶縁スイッチギヤの規格 IEC 62271-201 は、第3版が2026年7月22日に発行され、金属閉鎖形スイッチギヤの規格 IEC 62271-200(第3版2021年、追補1が2024年)との整合などが図られました。部分放電の電荷ベースの測定の規格 IEC 60270 は、第4版が2025年6月5日に発行されています。電磁波と音響による部分放電の測定を扱う技術仕様書 IEC TS 62478 は、2016年版が現行で、第2版の開発が進められています。なお、スイッチギヤの規格 IEC 62271-200 や 62271-201 は、状態監視そのものを求める規格ではありません。

タイ工場にとっての意味

NFPA 70B は米国の民間規格で、タイの法令ではありません。タイの工場に自動的に適用されるものでもありません。ただ、グローバルの本社の保守基準や、保険会社のリスク調査、顧客の監査が、参照する基準の一つとして持ち出す可能性はあります。そのとき「状態監視は入れていないが、点検の間隔をこう決めている」と説明できるか、「監視はしているが、警報が出たら誰が何をするかが決まっていない」となるかで、評価は大きく変わると考えられます。受変電設備の状態監視は、こうした説明の材料をつくる取り組みでもあります。

受変電設備の状態監視とは:定期点検との違い

受変電設備の状態監視導入|部分放電・温度監視とタイ工場のRFP - figure 1

P–F 曲線で考える

状態監視を考えるときの基本の道具が、P–F 曲線です。設備の状態は、使っているうちに少しずつ悪くなります。NFPA の審議資料の附属書は、潜在故障(P 点)を「機器が劣化し始めたことを検出できる時点」、機能故障(F 点)を「使用限界に達し動作しなくなった時点」としています。P 点から F 点までの時間が「P–F 間隔」です。

P–F 間隔の中で兆候をつかめれば、計画的に停電を組んで処置できます。つかめなければ、ある日突然、受変電設備が止まり、工場全体が止まります。定期点検も連続監視も、目的は同じで、P–F 間隔の中で兆候をつかむことです。違うのは、つかめる確率と、つかんでから処置までにどれだけ時間が残るかです。

「半分ルール」の意味

審議資料の附属書が示す「時間基準の点検間隔は P–F 間隔の半分以下」という考え方は、こう理解できます。点検間隔が P–F 間隔と同じだと、運が悪ければ、点検の直後に兆候が出て、次の点検は F 点の直前になります。見つけても、処置の準備をする時間がほとんど残りません。点検間隔を P–F 間隔の半分以下にすれば、P–F 間隔の中で少なくとも2回の点検の機会があり、兆候を見つけた時点で、F 点まで少なくとも P–F 間隔の半分の時間が残る、という余裕が生まれます。

3つの測り方:オフライン、オンライン定期、オンライン連続

部分放電の測定を例に、測り方を3つに分けておきます。米国の試験会社 American Electrical Testing 社の技術者らが2016年の NETA PowerTest で発表した論文(EA Technology 社のサイトに掲載)によれば、次のとおりです。

  • オフライン試験:機器を止めて、高電圧の交流を直接かける試験です。通常は工場試験や受入試験として行います。
  • オンラインの定期測定:運転したまま、ハンドヘルドの音響(超音波)や電磁波の検出器で、定期的に測ります。
  • オンラインの連続監視:センサ、データ収集器、監視装置、解析器で、絶縁の状態のデータを常に集め、解析し、報告します。

同じ論文は、連続監視システムは「万能ではない(not fool proof)」と書いています。蛍光灯や周りの機器の運転、建設作業などの外部のノイズが、部分放電に似た信号として記録されることがあり、データには専門的な解析と解釈が必要だからです。連続監視を入れれば人の判断が要らなくなるわけではなく、むしろ判断の体制を決めることが前提になります。

予知保全の一つの形として

受変電設備の状態監視は、回転機の振動監視などと同じく、予知保全の一つの形です。予知保全全体の進め方や PoC の組み立て方は「予知保全 導入事例|タイ工場の90日PoC・RFP実践ガイド」で整理しています。受変電設備ならではの難しさは、点検のための停電の範囲が広く、生産への影響が大きいことと、故障すると工場全体が止まり、火災やアークの危険も伴うことです。

劣化モードと監視方式の対応

方式を選ぶ前に、「どの設備の、どんな劣化を見たいのか」を決めます。代表的な対応を表にまとめます。

対象主な劣化モード兆候主な監視方式
高圧盤のケーブル接続部・母線接続部・遮断器の接点締結の緩み、接触の劣化接続部の温度上昇赤外線サーモグラフィ(定期)、IRウィンドウ、常設の温度センサ(連続)
高圧盤の内部の絶縁物ボイドなどの内部の欠陥、表面の汚損やトラッキング部分放電TEV、超音波、UHF(定期または連続)
高圧ケーブルと終端部固体絶縁の劣化部分放電HFCT(接地線にクランプ)
油入変圧器の内部局部的な過熱、放電、絶縁紙の劣化油中のガス油の分析(定期)、オンライン DGA(連続)
変圧器の運転状態過負荷、冷却の不良油温、巻線の温度既設の温度計の信号の取り込み
受電点の電気の品質瞬時電圧低下などの系統側の事象電圧の変動電圧・電力品質の監視

最後の行は、受変電設備の劣化ではなく、系統側から来る事象です。状態監視とは目的が違いますが、同じ受変電室にセンサを置くので、まとめて計画すると効率的です。瞬時電圧低下の記録の仕方は「電圧 監視 システム|タイ工場の瞬低・停止を証拠化」をご覧ください。

この表で大事なのは、一つの方式ですべては見えないということです。温度センサは接続部の過熱には強いものの、絶縁の劣化は見えません。部分放電の監視は絶縁の劣化を見ますが、接続部の緩みは見えません。変圧器の内部は、外からの温度や部分放電の測定ではつかみにくく、油の中のガスを見ることになります。

部分放電の監視方式:TEV・超音波・HFCT・UHF の違い

受変電設備の状態監視導入|部分放電・温度監視とタイ工場のRFP - figure 2

部分放電とは

部分放電は、絶縁物の一部だけで起きる小さな放電です。前述の NETA の論文は、部分放電を、固体絶縁の中のボイドなどで起きる「内部の部分放電」と、絶縁物の表面で起きる「表面の部分放電」の2つに分けています。表面の部分放電は、絶縁物の欠陥、汚損、高い湿度で特に起きやすいとされます。部分放電は、それ自体ですぐに故障するわけではありませんが、一般に、絶縁の劣化が進んでいる兆候とされます。

4つの方式

方式何を捉えるか主な対象特徴注意点
TEV(過渡大地電圧)盤の外箱の表面に現れる電磁パルス金属閉鎖形スイッチギヤの内部の部分放電、表面トラッキングカバーを外さず、充電部に触れずに測れる固体絶縁ケーブルの問題には感度が不十分
超音波(音響)放電が出す音表面の部分放電、コロナ位置の特定に役立つ周りの音の影響を受ける
HFCT(高周波電流)接地線を流れるパルス電流ケーブルと終端部接地線にクランプして取り付けられる取付の位置と停電の要否を確認する
UHF(極超短波)300 MHz〜3 GHz の電磁波GIS、変圧器、ケーブル外来ノイズに強い見かけの電荷(pC)への校正ができない

TEV:NETA の論文によれば、スイッチギヤの中の部分放電が出す電磁パルスの一部は、外箱の内面に現れ、継ぎ目から外面に回り込みます。論文は、この現象が1970年代に発見され、TEV と名付けられたとしています。TEV は、パネルのカバーを外さず、充電導体にもつながずに検出できるので、運転したままの部分放電の検出に便利です。スイッチギヤの中の部分放電や、内部の部品の表面のトラッキングを見つけるのに役立つ一方、固体絶縁のケーブル系の問題を見つけるには感度が足りないとされています。

超音波:表面の部分放電やコロナは音を出します。同じ論文は、位置を特定するには音響(超音波)の検出が有効としています。扉の隙間や換気口の近くで測ることが多いとされます(本記事の考え方)。

HFCT:部分放電の電流パルスは、機器の接地線に HFCT(高周波変流器)をクランプして測れます。ケーブルと終端部の監視に使われます。

UHF:オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の研究者による2019年のレビュー論文によれば、部分放電のパルスは非常に速く立ち上がるため、300 MHz〜3 GHz の UHF 帯の成分をもつ電磁波を出します。UHF 法は1988年にガス絶縁開閉装置(GIS)向けに開発され、その後、電力用の変圧器(1997年)やケーブル(1998年)に応用されました。外来の電磁干渉に強く、変電所の中の低い周波数の雑音を避けられるのが利点です。一方で、従来の電気的な手法と比べて、適切な校正の方法がないことが課題とされています。

校正ではなく「感度確認」

UHF 法では、IEC 60270 のような見かけの電荷(pC)への校正ができません。ドイツのシュトゥットガルト大学の研究者らの論文は、GIS の UHF 測定について、CIGRE が推奨する2段階の「感度確認(sensitivity check)」で品質を確かめると説明しています。まず試験室で、基準となる欠陥の信号と同じようなスペクトルを出すパルスを決め、次に現地で同じパルスを注入して、隣のセンサで検出できるかを確かめます。これは GIS の手順で、空気絶縁のスイッチギヤにそのまま当てはまるものではありませんが、受入試験で「センサが現地で本当に部分放電を拾えるか」を確かめるという考え方は、方式を問わず参考になります。

オンラインで使える方式

前述のレビュー論文は、各手法がオンライン監視に使えるかを整理しています。IEC 60270 の方法(結合コンデンサを使う電流パルスの測定)はオンライン監視には向かない一方、音響法、HFCT、TEV、VHF/UHF のアンテナ、DGA はオンライン監視に使えるとしています。IEC 60270 は主に試験室や工場の試験で使う測定の規格で、オンライン監視の規格ではない、という位置づけを押さえておくと、仕様書の読み違いを防げます。

33 kV スイッチギヤでの導入事例から学ぶこと

前述の NETA の論文は、米国で 33 kV で運転する金属閉鎖形スイッチギヤ2基(既設の屋外14面と新設の屋内30面)に、連続の部分放電監視を入れた一事例を報告しています(システムは EA Technology 社製)。工場の受変電設備を考えるうえで、参考になる点がいくつもあります。

  • 構成:ホストの PC(ハブ)、データ収集器(ノード)、センサ(TEV、超音波マイク、温湿度、ケーブル用の高周波 CT、ノイズ除去用の外部アンテナ)、SCADA へのインタフェース(ハブから警報を接点で出力)。
  • 設計の制約:既設の盤はフィーダ単位の停電しかできず、全停電はできない。メーカーの保証を無効にしない。絶縁の定格を下げない。
  • 警報の考え方:TEV、超音波、ケーブルの部分放電のそれぞれに警報を設定し、一定時間以上続いた場合だけ有効な警報とする「alarm span」で、外部の要因による誤報を抑えた。設定の値は、メーカーの推奨と協議して決めた(その値は当該の設備と製品のもので、一般的な目安ではありません)。
  • ネットワーク:オーナーの IT 部門は、セキュリティ上の理由で、ハブを社内 LAN につなぐことを認めなかった。そのため無線ルータとリモートアクセスのソフトで遠隔監視した。
  • 見つかったもの:湿度の影響が疑われる超音波の値の上昇(警報の値には届いていない)をきっかけに点検したところ、33 kV の絶縁導体に擦れていた絶縁のバリア板からのコロナが見つかった。別の件では、超音波の警報から約3か月後に所内変圧器の区画で発煙し、高圧側のヒューズ管の内部のトラッキングが原因だった。

この事例から読み取れるのは、警報の値に届かなくても傾向を見ることに意味があること、そして警報が出ても、止めるかどうかの判断に迷う時間が生まれ得ることです。後者は、警報を受けてから誰が何をするかを事前に決めておく理由そのものです。

高圧盤の温度監視:サーモグラフィ・IRウィンドウ・無線センサ

接続部の締結の緩みや接触の劣化は、温度の上昇として現れます。高圧盤の温度の見方には、大きく3つあります。

赤外線サーモグラフィ(定期)

外部の業者に頼んで、定期的に赤外線カメラで撮る方法です。NFPA の審議資料は、点検の前に、点検する機器への見通しを確保するため、必要なカバーを外すこと、注目する部位と基準となる部位の温度差を記録することを示しています。高圧盤のカバーを開けるには、安全の手順と作業の資格が必要で、運転中に開けられない盤も少なくありません。その結果、「サーモ点検はしているが、肝心のケーブル接続部は見えていない」ということが起こり得ます。

IRウィンドウ

盤の扉や側板に赤外線を通す窓を付け、カバーを外さずに中を撮る方法です。NFPA の審議資料の附属書も、赤外線ウィンドウはカバーやパネルを外さずに見通しを得られる、と触れています。窓の位置と視野で、見える部位が決まるので、どの接続部を見たいかを先に決めてから付けます。点検そのものは定期のままです。

常設の温度センサ(連続)

接続部に温度センサを常設し、連続で監視する方法です。高電圧の部位に配線を引き回すのは難しいため、無線のセンサが使われます。

例として、IntelliSAW 社(ALTANOVA グループ)のデータシートによれば、同社の SAW(弾性表面波)温度センサは、母線、遮断器のアームや接点、ケーブルなどの発熱点を連続で監視する用途向けで、無線で、電源を必要としない(パッシブ)方式です。メーカーの公称値として、測定範囲は −25〜+155°C、精度は ±2°C(0〜80°C)、±4°C(全範囲)、1設備あたり最大12チャネル、20年以上の運用寿命を見込むとしています。同じデータシートは、同じ設備の中で周波数帯を重複させないよう注意すること、地域の無線規制を守るのはシステムインテグレータと設置者の責任であることも明記しています。これは一社の製品の仕様で、SAW センサ一般の値ではありません。

ASEAN の中でも、ベトナムの科学技術誌に、SAW の原理による無線温度センサを使ったパッシブな熱監視システムを、スイッチギヤ、断路器、ケーブル接続部、リングメインユニットなどに適用する研究例もあります。

どれを選ぶか

前述のとおり、NFPA の2026年版の改訂審議では、常設の連続温度監視で赤外線点検の要件を満たせる方向が示されました(許容であり、設置を求めるものではありません)。選び方の目安は、次のように整理できます。

  • 盤の数が少なく、停電を組みやすい → 定期のサーモグラフィと、必要に応じて IRウィンドウ
  • 運転中にカバーを開けられない盤が多い → IRウィンドウ
  • 重要度の高い盤で、接続部の過熱が数か月以下で進むと見込まれる → 常設の温度センサ

3つは対立するものではなく、組み合わせて使えます。たとえば、全盤の定期のサーモグラフィは続けたまま、受電と主要なフィーダの盤にだけ常設のセンサを付ける、といった形です。

変圧器のオンライン監視:DGA と規格

油の中のガスで内部を見る

油入変圧器の内部で、局部的な過熱や放電、絶縁紙の劣化が起きると、油が分解してガスが生まれ、油に溶けます。このガスを分析するのが DGA(溶存ガス分析)です。定期的に油を採って分析する方法と、変圧器に分析装置を常設するオンライン DGA があります。

解釈の基準となる規格

DGA の解釈には、主に2つの基準が使われます。

  • IEEE C57.104-2019:鉱油入変圧器で発生するガスの解釈についての、現行版(Active)のガイドです(2019年11月発行)。DGA の目的と適用、品質の確認と限界、解釈とノルム、故障の種類の特定、事例などを扱います。2024年5月22日に改訂のプロジェクトが承認され、改訂の作業が進んでいます。強制力のある規格ではありません。
  • IEC 60599:2022:運転中の鉱油入の電気機器について、溶存ガスと遊離ガスの分析を解釈するためのガイダンスです(第4版、2022年5月25日発行)。変圧器のほか、リアクトル、ブッシング、開閉装置、油入ケーブルの情報も含みます。結果はあくまで指針で、適切な工学的判断を伴う必要があるとしています。

絶対値より、その変圧器の傾向

IEEE C57.104 の改訂作業部会のメンバーによる解説によれば、2019年版のノルムは、18の提供元から集めたデータをもとに、変圧器313,076台、DGA の報告1,391,436件(約31万台、約139万件)のデータセットから作られました。1978年の初版のノルムは、1970年代のある一地域の結果をもとにしたもので、約40年ほぼ変わっていなかったとされます。2019年版は、連続した試料の間の変化量や変化率の表も加えています。

ここから読み取れるのは、その変圧器自身の傾向(どれだけ、どれだけの速さで変わったか)を見ることが大切という考え方です。オンライン DGA の価値は、定期の分析では見えない変化の速さを捉えられることにあります。逆に、変化がゆっくりで、定期の油の分析で十分に傾向を追える変圧器もあります。North Hyde の事例でも、兆候自体は油の試料でつかまれていました。必要なのは、測ることと同じくらい、測った結果を処置の判断につなげる仕組みです。

油温・巻線温度の取り込み

多くの変圧器には、油温計や巻線温度計が既に付いています。新しいセンサを足す前に、こうした既設の信号を監視のシステムに取り込むだけでも、過負荷や冷却の不良の傾向を追えるようになります。受変電設備の電力量や負荷のデータの集め方は「電力量計 データ収集|15分値を信頼できるRFPと受入設計」が参考になります。負荷のデータと温度を並べて見ると、温度の上昇が負荷によるものか、設備の異常によるものかを切り分けやすくなります。

P–F 間隔で点検と連続監視を分担する(モデル工場Sの試算・仮定モデル)

ここからは、定期点検と連続監視をどう分担するかを、仮定のモデル工場で試算します。以下の数値は、すべて本記事の仮定に基づく説明用の値です。

前提(モデル工場S)

  • タイ中部の日系の部品工場。受電用の高圧スイッチギヤが12面、変圧器が3台(本記事の仮定)
  • 劣化のモードごとに、兆候が測れるようになってから故障するまでの P–F 間隔を、24か月、12か月、6か月、3か月、1か月と置く(本記事の仮定)
  • 劣化の始まる時期は一様にランダムで、点検は一瞬で終わり、兆候が出ていれば必ず見つかると仮定する。このとき、兆候をつかめる確率は「点検が P–F の窓に入る確率」で、P–F 間隔 ÷ 点検間隔(上限は100%)になる

P–F 間隔の例として、本記事の仮定では、短いものに接続部の緩みによる過熱の進行や表面の放電の進行を、長いものに変圧器のゆっくりした劣化を想定しています。実際の P–F 間隔は、設備と環境によって大きく異なり、本記事の値は説明のための仮定です。

ステップ1:P–F の半分ルールで必要な点検間隔

「点検間隔は P–F 間隔の半分以下」という考え方に従うと、必要な点検間隔と年間の点検回数は次のとおりです。

P–F 間隔(仮定)必要な点検間隔(÷2)年間点検回数
24か月12か月1回
12か月6か月2回
6か月3か月4回
3か月1.5か月8回
1か月0.5か月(約2週間)24回

計算は、点検間隔が 24÷2=12、12÷2=6、6÷2=3、3÷2=1.5、1÷2=0.5 か月、年間の回数が 12÷12=1、12÷6=2、12÷3=4、12÷1.5=8、12÷0.5=24 回です。

ステップ2:12か月ごと・6か月ごとの点検で兆候をつかめる確率

次に、今の点検の頻度で、兆候をどれだけつかめるかを見ます。

P–F 間隔(仮定)12か月ごと6か月ごと
24か月100%100%
12か月100%100%
6か月50%100%
3か月25%50%
1か月約8.3%約16.7%

計算は、6÷12=50%、3÷12=25%、1÷12=0.0833…で約8.3%、3÷6=50%、1÷6=0.1666…で約16.7% です。P–F 間隔が点検間隔以上なら、少なくとも1回は点検が窓に入るので100%(上限)になります。

この表には、読み方の注意があります。12か月の P–F を12か月ごとの点検で見る場合、確率は100%ですが、窓に入る点検は1回だけです。運が悪ければ、見つけたのが F 点の直前で、停電の計画や部品の手配をする余裕がありません。「半分ルール」を満たすのは、12か月ごとの点検なら P–F が24か月以上の劣化、6か月ごとの点検なら12か月以上の劣化だけです。表の100%は「見つけられる」ことを示すだけで、「間に合う」ことまでは保証しません。

一方、P–F が3か月の劣化は、12か月ごとの点検では25%、6か月ごとでも50%しかつかめません。P–F が1か月の劣化は、12か月ごとで約8.3%、6か月ごとでも約16.7%です。

ステップ3:12面と変圧器3台のセンサの点数(仮定の構成)

P–F の短い劣化を連続監視で埋めるとして、モデル工場Sのセンサの構成を仮に置きます。

  • 温度:各盤のケーブル接続部に3相×1か所=3点で、12面×3=36点。母線の接続部に盤ごと3点を加えると12×3=36点で、合計72点
  • 部分放電:各盤に TEV 1点と超音波1点の2点で、12×2=24点。ケーブル用の HFCT は、受電と主要なフィーダの4回路だけ(本記事の仮定)で4点。部分放電の合計は24+4=28点
  • 変圧器:オンライン DGA は最も重要な1台だけ(本記事の仮定)。油温と巻線の温度は3台とも、既設の信号を取り込む(既設信号の取り込みは下の点数に含めない)
  • 合計:温度72点+部分放電28点=100点と、オンライン DGA 1台

ステップ4:半分ルールを点検で満たそうとすると

P–F が3か月の劣化を点検で拾うには、ステップ1のとおり年8回の点検が必要です。停電を伴う点検を年8回に増やすのは、受変電設備では停電の制約からまず現実的ではありません。この部分は、停電の要らないオンラインの定期測定(ハンドヘルドの TEV や超音波の検出器)か、連続監視で埋めることになります。

この試算の読み方

この試算から言えるのは、次の3点です。

  1. P–F が長い劣化は、今の定期点検で十分に拾える可能性がある。 変圧器のゆっくりした劣化(本記事の仮定)は、定期の油の分析と点検で傾向を追えるかもしれません。すべてを連続監視にする必要はありません。
  2. P–F が数か月以下の劣化は、点検を増やすより連続監視の方が現実的。 停電の制約がある受変電設備では、とくにそう言えます。
  3. 100点のセンサを付けても、警報を受けて誰が何をするかが決まっていなければ意味がない。 点数を決めるより先に、判断と処置の流れを設計する必要があります。

データの行き先と判断体制:SCADA・ヒストリアン・IEC 61850・OTセキュリティ

受変電設備の状態監視導入|部分放電・温度監視とタイ工場のRFP - figure 3

データの流れ

状態監視のデータは、センサからゲートウェイ(またはデータ収集器)を経て、SCADA やヒストリアンに入り、警報として担当者に届きます。この流れのどこで何を決めるかが、導入の成否を分けます。

  • センサとゲートウェイ:センサの種類と点数、ゲートウェイとの通信、ゲートウェイの電源。
  • SCADA:リアルタイムの表示と警報。前述の33 kV の事例のように、警報を接点で SCADA に出すだけの簡素な形もあります。
  • ヒストリアン:傾向を長期間保存し、警報の値に届かない変化を追うためのものです。部分放電や温度は、傾向を見て初めて意味が分かることが多く、ヒストリアンの設計が重要です。ヒストリアンの選び方は「産業用ヒストリアン導入|選定比較とタイ工場のRFP・受入試験」で詳しく扱っています。
  • 時刻:複数のセンサの警報や、保護継電器の動作の記録を並べて原因を探るには、時刻がそろっている必要があります。時刻同期の考え方は「工場の時刻同期導入|PTPとNTPの選び方とタイ工場の受入試験」をご覧ください。

IEC 61850 で何を出すか

電力の分野では、通信の規格 IEC 61850 が使われます。IEC 61850 を状態監視、診断、解析に使うための技術報告書として IEC TR 61850-90-3:2016 があり、センサのネットワークとの通信や、資産管理のシステムへの情報の受け渡しを扱っています。

IEC 61850 の専門家 Karlheinz Schwarz 氏の2010年の講演資料によれば、IEC 61850-7-4 の監視用の論理ノードには、部分放電の監視と診断の SPDC、温度監視の STMP、液体の絶縁媒体の監視の SIML などがあります(最新の版での名称の変更の有無は確認していません)。同氏の2026年8月のブログは、STMP が温度の値や温度の変化率の警報などのデータを持つ例を示しています。RFP に「IEC 61850 対応」とだけ書くと、受け取る側によって解釈がばらつきます。どの論理ノード(SPDC、STMP、SIML など)で、どのデータを出すかまで書いておくと、比べやすい提案が集まります。

警報 → 誰が → 何をする

いちばん大事なのは、警報の後の流れです。少なくとも次の3段階を決めておきます。

段階内容決めておくこと
注意警報の値には届かないが、傾向が変わった誰が週次などで傾向を見るか、どこまで変わったら次の段階に上げるか
警報警報の値を一定時間以上超えた一次受けの担当者、何分以内に誰に連絡するか、現場の確認の方法
緊急警報が続く、または複数のセンサで同時に出る負荷を移すか、停電するかを誰が決めるか、外部の専門家への依頼の手順

警報の値と「一定時間以上」の時間は、製品と設備によって違うため、メーカーの推奨と専門家の意見をもとに、試運転の期間に調整します。誤報の扱いと閾値の決め方は「異常検知 設備PoCの進め方|タイ工場90日受入基準」の考え方が応用できます。

部分放電のデータの解釈には専門的な知識が必要です。社内に判断できる人がいない場合は、データを外部の解析の専門家に送り、定期的に報告を受ける契約を、導入と同時に結んでおくのが現実的です。

OT セキュリティ

前述のとおり、NFPA 70B の2026年版の改訂審議では、電気保守プログラムの要素に OT サイバーセキュリティを加える改訂が可決されています。33 kV の事例でも、IT 部門が監視のハブを社内 LAN につなぐことを認めませんでした。監視のシステムを工場のネットワークにつなぐなら、ネットワークの分離、遠隔アクセスの方法、ソフトの更新の手順、アカウントの管理を、IT 部門と事前に合意しておきます。後から「つなげない」と分かると、遠隔監視の設計をやり直すことになります。

タイ・ASEAN固有の論点

系統の停電統計は、構内の設備の故障リスクを表さない

タイの地方配電公社(PEA)の2024年の年次報告書(AI 翻訳による英訳版)によれば、2024年の SAIFI(需要家1軒あたりの年間の停電回数)は1.17回で2023年より0.29回少なく、SAIDI(需要家1軒あたりの年間の停電時間)は21.03分で2023年より6.55分短くなりました。差から逆算すると、2023年は SAIFI が 1.17+0.29=1.46回、SAIDI が 21.03+6.55=27.58分です(本記事の計算)。

ただし、PEA のサステナビリティのページは、SAIFI と SAIDI について、深南部の3県を除外していること、重大な事故、不可抗力、災害、発電源の重大な停止による事象を除外していることを注記しています(年次報告書の数値に同じ条件が適用されているかは確認できていません)。少なくとも PEA がサステナビリティのページで公表する指標は、大きな事象を除いた平均値として扱われており、個別の工場の受電のリスクを表すものではありません。

さらに大事なのは、系統の停電と、構内の受変電設備の故障は別物だということです。系統がどれだけ安定していても、自社の高圧盤のケーブル接続部が過熱が進めば、工場が止まることがあります。構内の設備の健全性は、自社で見るしかありません。

法令:点検・保守と記録は求められるが、頻度は省令本文に書かれていない

タイの労働省の電気に関する労働安全衛生の省令(2015年、仏暦2558年)は、使用者に対し、電気系統と電気機器の点検と保守を行い、登録者などが点検の結果の記録を作成・認証して、安全監督官が確認できるようにすることを求めています。その基準、方法、条件は局長の告示によるとされています。また、技師などが認証した構内の電気回路図の保管も求めています。

ただし、この省令の本文には、点検の頻度は書かれていません。頻度については、所管の当局の告示や、保険、本社の基準を確認する必要があります(本記事の考え方)。また、この省令は部分放電や温度のオンライン監視を求めるものではありません。タイの電気設備の法定点検の全体像は「電気設備の法定点検|タイ工場の二重規制と経過措置ガイド2026」で整理しています。状態監視は法定点検を置き換えるものではなく、法定点検の間を埋めるものとして位置づけるのが自然です。

環境:高温多湿、粉じん、塩害、小動物

タイの工場の受変電室は、高温多湿の気候、粉じん、沿岸部の塩害、小動物の侵入といった環境にさらされることがあります。前述の NETA の論文は、表面の部分放電は絶縁物の汚損や高い湿度で特に起きやすいと書いています。33 kV の事例でも、湿度の影響が疑われる超音波の値の上昇が、点検のきっかけになりました。部分放電の監視では、温湿度も一緒に記録しておくと、値の変化が設備の劣化によるものか、環境によるものかを切り分けやすくなります。受変電室の空調、換気、隙間の封止の状態も、監視の計画と合わせて見直す価値があります。

無線センサの周波数

無線の温度センサやゲートウェイは、特定の周波数帯の電波を使います。タイで使えるかどうかは、国家放送通信委員会(NBTC)の規制の確認が必要です。前述のメーカーのデータシートも、地域の無線規制を守るのはシステムインテグレータと設置者の責任としています。RFP には、タイ国内の無線の認証を取得済みであることを条件として書いておきます。

運用:24時間の一次受け、外部の専門家、3言語の手順書

運用の面では、次の点を導入の前に決めておくのが現実的です(本記事の考え方)。

  • 24時間の一次受け:夜間や休日に警報が出たとき、誰が受けるか。保全の当直か、守衛か、外部の監視サービスか。
  • 外部の解析の専門家:部分放電のデータを誰が解釈するか。契約の範囲と、報告の頻度と、緊急時の対応の時間。
  • 3言語の手順書:タイ人の技術者、日本人の管理者、外部の業者が同じ手順書を読めるよう、タイ語、日本語、英語で用意する。
  • 停電作業の計画:センサの取付や処置のための停電を、フィーダ単位で組めるか。全停電が必要な作業は、長期休暇などに合わせて計画する。

受変電設備の状態監視のRFPに書く12項目

設備メーカーやシステム会社に見積もりを依頼する際、受変電設備の状態監視について最低限書いておきたい項目です。

  1. 対象設備の一覧と重要度:盤、変圧器、ケーブルごとに、止まると何が止まるか、定格、製造年、停電できる単位
  2. 監視したい劣化モードと方式:接続部の過熱には温度、絶縁の劣化には部分放電(TEV、超音波、HFCT、UHF)、変圧器の内部には DGA、というように、劣化モードと方式の対応を書く
  3. 点検との分担の考え方:P–F 間隔の想定と、定期点検で拾う範囲、連続監視で埋める範囲
  4. センサの仕様と取付:測定範囲と精度(メーカーの条件を含めて)、取付の位置、取付に必要な停電の範囲、メーカーの保証と絶縁の定格を損なわないこと
  5. 無線の認証と周波数:タイ国内の無線の認証を取得済みであること、同じ設備の中で周波数が重ならない設計
  6. ノイズ対策と誤報の抑制:外部のノイズの除去の方法(外部アンテナなど)、一定時間以上の継続で警報とする機能、温湿度の同時記録
  7. データの出力:SCADA への接点出力、Modbus や OPC UA、IEC 61850 で出す場合の論理ノード(SPDC、STMP、SIML など)とデータの一覧
  8. ヒストリアンと時刻:傾向の保存の期間と分解能、タイムスタンプの付け方と時刻同期の方式
  9. 警報と判断の体制:注意、警報、緊急の段階の定義、通知の先と方法、警報の値の初期設定と調整の手順
  10. 解析と報告:外部の専門家による解析の範囲、定期の報告の頻度と形式、緊急時の対応の時間
  11. OT セキュリティ:ネットワークの分離、遠隔アクセスの方法、アカウントの管理、ソフトの更新の手順(自社の IT 部門の承認を前提に)
  12. FAT/SAT と保守:次の節の試験項目と合格基準の決め方、タイ国内の保守の窓口、故障時の対応の時間、タイ語・日本語・英語の文書と教育

特に大事なのは1・6・9です。1を書かないと、提案のセンサの点数と配置が比べられません。6を書かないと、運用を始めてから誤報が続き、誰も警報を見なくなる恐れがあります。9を書かないと、本記事の背骨である「誰が気づき、設備を止めるかどうかを誰が判断するか」が決まらないまま、センサだけが付くことになります。

状態監視のFAT/SATで確認すること

工場出荷前の試験(FAT)と、据付後の現地での試験(SAT)では、カタログの仕様ではなく、「自社の受変電室で、センサが本当に兆候を拾えるか」「警報が正しい人に届くか」「誤報が許容できる範囲か」を確かめます。

試験項目方法合格基準の決め方主な段階
センサとチャネルの対応各センサの信号を一つずつ変化させ、画面とヒストリアンのタグが正しい盤と相に対応しているか確認する全点で取り違えがないことFAT・SAT
温度センサの指示基準の温度計と比べる。現地では運転中の値を、IRウィンドウなどの別の方法と比べるメーカーの公称の精度の範囲に収まることFAT・SAT
部分放電センサの感度確認校正パルスなどの模擬信号を注入し、センサと測定系で検出できるか確認する。UHF は校正でなく感度確認として行う決めた模擬信号を検出できることFAT・SAT
バックグラウンドのノイズ運転中の受変電室で一定期間測り、ノイズの水準を記録する記録が残り、警報の初期値を決める根拠になることSAT
ノイズ環境での誤報試験近くの照明、インバータ、無線機などを動かし、誤報が出ないか確認する一定時間以上の継続の判定などで、誤報が許容の範囲であることSAT
警報の伝達模擬の警報を出し、SCADA、メール、電話などで決めた担当者に届くか確認する決めた時間内に届き、記録が残ることFAT・SAT
データの出力SCADA への接点、Modbus、OPC UA、IEC 61850 の論理ノードのデータを確認するRFP のデータの一覧どおりであることFAT・SAT
時刻警報とイベントのタイムスタンプを、基準の時刻と比べる決めた誤差の範囲であることSAT
通信の断と復帰ゲートウェイの電源や通信を切り、警報と、復帰後のデータの欠損の扱いを確認する断が警報になり、欠損の区間が識別できることFAT・SAT
無線の干渉隣り合う盤のセンサが、互いに干渉しないか確認する全点で安定して読めることSAT
停電範囲の確認取付と保守に必要な停電の範囲が、事前の計画どおりか確認する計画外の停電がないことSAT
判断の手順の訓練模擬の警報から、一次受け、現場の確認、停止の判断までを机上または実地で通す手順書どおりに、決めた時間内に判断まで進めることSAT

合格基準の数値は、設備と製品によって違うので、RFP の段階で決めておきます。部分放電の警報の値は、SAT のバックグラウンドの測定と、運転開始後の試運転の期間を経て調整するのが現実的と考えられます。最後の「判断の手順の訓練」は試験の項目として珍しいかもしれませんが、本記事の背骨そのものです。受入の時点で一度通しておく価値は大きいと考えられます。

受変電設備の状態監視導入の90日計画

0〜30日:設備の棚卸しと重要度づけ

  • 受変電設備(高圧盤、変圧器、ケーブル)を一覧にし、それぞれが止まると何が止まるかを整理する
  • 過去の点検記録、サーモ点検の報告、故障の履歴を集める
  • 停電できる単位(フィーダ単位か、全停電か)と、次の停電の機会を確認する
  • 本社、保険会社、顧客から求められている基準を確認する

31〜60日:劣化モードと方式、点検との分担の設計

  • 重要度の高い設備から、劣化モードと監視方式の対応を決める
  • 本記事の仮定モデルを自社の設備に置き換え、P–F 間隔の想定から、定期点検で拾う範囲と連続監視で埋める範囲を決める
  • ハンドヘルドの TEV や超音波で、主要な盤のオンラインの定期測定を試し、現状とノイズの水準を把握する
  • データの行き先(SCADA、ヒストリアン)と、IT 部門とのネットワークの方針を決める

61〜90日:判断の体制と RFP

  • 注意、警報、緊急の段階と、一次受け、判断する人、外部の専門家の役割を決める
  • RFP の12項目を書き、FAT/SAT の項目と合格基準の決め方を決める
  • タイ語・日本語・英語の手順書の骨子を作る

90日の終わりに手元にそろえておきたい成果物は、①設備の一覧と重要度、②劣化モードと方式の対応表、③点検と連続監視の分担の考え方、④データの流れとネットワークの方針、⑤警報と判断の体制、⑥RFP と FAT/SAT の基準、の6点です。

よくある質問

受変電設備の状態監視とは?定期点検と何が違う?

受変電設備の状態監視は、高圧盤、変圧器、ケーブルなどの劣化の兆候(温度、部分放電、油中のガスなど)を測り、故障の前に処置するための取り組みです。定期点検は決まった間隔で状態を見るのに対し、状態監視には運転中の定期測定と連続監視があります。P–F 間隔(兆候が測れるようになってから故障するまで)が点検間隔に比べて短い劣化は、定期点検では見逃しやすくなります。本記事の仮定モデルでは、P–F が3か月の劣化を12か月ごとの点検でつかめる確率は25%でした。

部分放電の監視方式(TEV・超音波・HFCT・UHF)はどう選ぶ?

見たい設備と劣化で選びます。金属閉鎖形の高圧盤の内部の部分放電には TEV、表面の放電やコロナと位置の特定には超音波、ケーブルと終端部には接地線にクランプする HFCT、GIS などには UHF が使われます。TEV は固体絶縁のケーブルの問題には感度が足りないとされ、UHF は見かけの電荷への校正ができないため現地での感度確認が必要です。一つの方式ですべては見えないので、組み合わせるのが一般的です。

高圧盤の温度監視は無線センサとサーモグラフィのどちらがよい?

どちらか一方ではなく、組み合わせを考えます。盤の数が少なく停電を組みやすければ定期のサーモグラフィ、運転中にカバーを開けられない盤が多ければ IRウィンドウ、重要度が高く過熱が短期間で進むと見込まれる盤には常設の温度センサ、という目安があります。無線センサをタイで使う場合は、NBTC の規制の確認が必要です。

変圧器のオンライン監視(DGA)は必要?

変圧器の重要度と、劣化の進み方によります。変化がゆっくりで、定期の油の分析で傾向を追える変圧器もあります。一方、止まると工場全体が止まる変圧器や、変化の速さを捉えたい変圧器では、オンライン DGA が候補になります。解釈には IEEE C57.104-2019 や IEC 60599:2022 が使われ、絶対値よりその変圧器自身の傾向を見ることが大切です。まずは既設の油温計や巻線温度計の信号を取り込むことから始める方法もあります。

NFPA 70B はタイの工場にも関係ある?

NFPA 70B は米国の民間規格で、タイの法令ではなく、タイの工場に自動的に適用されるものではありません。ただ、グローバルの本社の保守基準や、保険会社、顧客の監査が参照する基準の一つになり得ます。2026年版の改訂審議資料によれば、P–F 曲線法、常設の連続温度監視で赤外線点検の要件を満たせること、OT サイバーセキュリティなどが示されています(最終版の文言とは限りません)。タイの法令上の点検は、労働省の省令や関連の告示などで確認します。

受変電設備の状態監視の導入費用は?

費用は、対象の設備の数、センサの種類と点数、取付に必要な停電と工事、ゲートウェイと通信、SCADA やヒストリアンとの統合、外部の専門家による解析の契約、保守の範囲によって大きく変わります。本記事の仮定モデルでは、高圧盤12面と変圧器3台で、温度72点、部分放電28点の計100点と、オンライン DGA 1台という構成を置きましたが、すべての盤に同じ密度で付ける必要はありません。重要度と P–F 間隔から、連続監視が必要な範囲を絞り込むことが、費用を考える出発点になります。

まとめ

  • 受変電設備の状態監視の価値は、センサの数ではなく、劣化の兆候から故障までの間に、誰が気づき、設備を止めるかどうかを誰が判断するかを決めておくことにある。
  • NFPA 70B の2026年版の改訂審議資料は、「点検間隔は P–F 間隔の半分以下」という考え方や、常設の連続温度監視で赤外線点検の要件を満たせることを示している。米国の民間規格でタイの法令ではないが、本社や保険会社、顧客の監査が参照し得る。
  • 劣化モードと方式を対応させる。接続部の過熱には温度、絶縁の劣化には部分放電(TEV、超音波、HFCT、UHF)、変圧器の内部には DGA。一つの方式ですべては見えない。
  • 本記事の仮定モデルでは、P–F が3か月の劣化を12か月ごとの点検でつかめる確率は25%、6か月ごとでも50%。P–F が3か月の劣化について半分ルールを点検で満たすには年8回が必要で、停電の制約から連続監視やオンラインの定期測定で埋めるのが現実的。
  • データはヒストリアンで傾向を見て、警報の後の流れ(注意、警報、緊急)と判断する人を決める。IEC 61850 で出すなら論理ノードまで指定し、OT セキュリティは IT 部門と事前に合意する。
  • タイでは、系統の停電統計は構内の設備の故障リスクを表さず、労働省の省令は点検の頻度を本文に書いていない。無線の周波数は NBTC の規制の確認が必要。
  • 受入では、センサの対応、感度確認、ノイズ環境での誤報、警報の伝達、判断の手順の訓練を、自社の受変電室で確かめる。

TOMAS TECH では、タイの日系工場を対象に、受変電設備の状態監視のデータを SCADA やヒストリアンに統合し、傾向のダッシュボードや警報の流れを設計する側からご支援しています。受変電設備の棚卸しや、どの盤にどの方式を付けるかの整理、データの行き先と警報の体制の検討、RFP の作成、FAT/SAT の立会いといった検討の段階からご相談いただけます。「まだ機器を選ぶ段階ではないが、受変電設備の監視をどう考えればよいか整理したい」という段階でも構いませんので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

参考情報