タイにおけるカーボンニュートラルの取り組み状況│具体例を用いて紹介

02-Aug-2023  02-Aug-2023

地球温暖化という環境問題は、現在の社会において深刻な懸念事項となっています。特に製造業はエネルギー消費や排出量の面で大きな影響を持っており持続可能な未来を築くためには積極的な取り組みが求められています。
タイ政府もCO2排出量の多い、エネルギー、輸送、産業の3部門を対象としたカーボン税の導入を「EUのカーボン国境調節メカニズム(CBAM) 」も睨んで年内にも結論を出すと発表するなどカーボンニュートラルへの関心が高まっています。
本記事では、タイにおけるカーボンニュートラルの取り組みの状況について、解説をいたします。

 カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラル(Carbon Neutral)とは、ある特定な活動や事業の過程における二酸化炭素(CO2)やその他の温室効果ガスの排出量を削減し、残りの排出量を相殺することで、純粋なゼロ排出を達成する状態を指します。
一般的に、カーボンニュートラルを達成するために以下のステップが取られます。

排出量削減:
活動や事業による二酸化炭素や温室効果ガスの排出を可能な限り削減するための取り組みを行います。例えば、省エネルギーの導入、再生可能エネルギーの使用、エネルギー効率の改善などが挙げられます。

カーボンオフセット:
排出を完全にゼロにすることが難しい場合、残りの排出量を相殺するための取り組みとしてカーボンオフセットを行います。これは、植林プロジェクトの支援や再生可能エネルギーの普及、廃棄物処理プロジェクトなどに投資することで、二酸化炭素吸収や温室効果ガスの削減を行うことを意味します。

カーボンニュートラルの概念は、地球温暖化や気候変動への対策として重要な考え方であり、企業や個人が持続可能な社会への貢献を促す取り組みとして広く認識されています。また、国や国際機関によってもカーボンニュートラルを達成するための目標や規制が設定されるなど、世界的な動きも進んでいます。

 タイにおけるカーボンニュートラル達成への4つの施策

タイは国連気候変動枠組み条約での国別排出削減貢献(NDC)として2050年までにカーボンニュートラルと、2063年までのGHGネットゼロ、輸入燃料費用の削減を掲げています。タイ政府は「国家エネルギー計画への政策的方向性」として、4つの政策を掲げています。

出典: ASEANにおけるカーボンニュートラルの現状


出典: タイにおけるカーボンニュートラルに向けたエネルギー政策

    RE>50% with ESS (再生エネルギー発電比率を50%以上)

再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然のエネルギー源から得られるエネルギーのことを指します。RE>50%は、そのうち再生可能エネルギーが総エネルギーの50%以上を占めることを表しています。

また、ESSはエネルギーの貯蔵システムを指します。再生可能エネルギーは気候条件によって発電量が変動するため、その発電量を貯蔵しておくことが重要です。ESSは再生可能エネルギーの発電量を貯蔵し、需要が増えた際に供給することで、安定した電力供給を実現します。

つまり、「RE>50% with ESS」とは、再生可能エネルギーの導入比率が50%を超え、さらにエネルギー貯蔵システム(ESS)も活用されている状況を指しています。持続可能なエネルギー政策や環境保護への取り組みの進展を示す重要な指標としています。

    EV 30@30 (30年までにEVの生産台数を全体の30%の75万台)

電気自動車(Electric Vehicle)の普及率が30%に達することを目指す政策です。
この目標は、環境保護と持続可能な交通システムの構築を促進し、化石燃料に依存しないクリーンな移動手段の普及を推進することを狙っています。
EV 30@30の取り組みによって、大気汚染や温室効果ガスの排出削減、エネルギーの持続可能な利用など、様々な環境へのプラスの影響が期待されます。さらに、電気自動車の普及が進むことで、エネルギーの効率的な利用やエネルギーインフラの改善にも寄与することが期待されています。

    EE>30% (エネルギー効率性を30%以上改善)

エネルギー効率は、入力されたエネルギーに対して有用な出力を得る割合を表す指標であり、高いエネルギー効率は少ないエネルギーで同等の仕事や機能を達成できることを示します。

EE>30%は、特定の製品やシステムが30%以上のエネルギー効率を持つことを目指す取り組みや規制を指します。例えば、自動車の燃費が1リットルのガソリンで30キロメートル以上走行することを目指すなど、様々な分野でエネルギー効率の向上が重要視されています。

    4D1E

Digitalzation(デジタル化) エネルギーを管理するデジタルシステムの採用
Decarbonization(脱炭素化) エネルギー分野の二酸化炭素(CO2)抑制
Decentralization(分散化) 発電・インフラの分散
De-Regulation(脱標準化) エネルギー関連規制の現代化
Electrifcation(電化) 化石燃料の代わりに電気を利用
4D1Eとは、4つの”D”、1つの”E”のキーワードを複合させた取り組みです。具体的な取り組み例としては、以下の通りです。

・ビッグデータによる需給調整で実現する分散型エネルギー資源
・予防保全、状態監視保全、予知停止など、データに基づく資産戦略
・スマートグリッドとスマートパイプによる自動制御で、ネットワークの耐障害性、安全性、効率性を向上させることが可能
・カスタマージャーニーの分析、セグメンテーション、パーソナライズされたコミュニケーションによって管理される顧客相互作用
・分散型エネルギー資源とマーケットプレイスをサポートするプラットフォーム

出典:タイにおけるカーボンニュートラルに向けたエネルギー政策

 カーボンニュートラル達成への具体的な取り組み

    東部に脱炭素のモデル工業団地

日本とタイが協力して脱炭素のモデル工業団地を開発する。タイ国トヨタ自動車(TMT)を含む日系4社などが参画し、東部ラヨーン県で二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル(炭素中立)工業団地」を計画している。2025年の開業に向けて、年内に第1次の事業実施可能性調査(FS)を取りまとめ、タイ政府に提言している。
プロジェクトに参画するのは、日本側からTMT、豊田通商(タイランド)、大阪ガス、関西電力の4社、タイ側からは工業団地公団(IEAT)、PTT、PTTの石油化学子会社PTTグローバル・ケミカル(PTTGC)、産業用ガス大手の米系バンコク・インダストリアル・ガス(BIG)が参画している。
大量の電力を消費する工業団地の脱炭素化に向けた動きはこれからも世界的に加速するとみられる。マプタプットのカーボンニュートラル工業団地における取り組みは、タイ国内のほか、インドネシアやベトナムといった他の東南アジア諸国の工業団地の脱炭素化に向けたモデルケースになると考えられている。

出典:アジア経済ニュース

    CPとトヨタ、タイでのカーボンニュートラルに向けた協業

トヨタ自動車とセブンイレブンなどを運営するタイ最大の企業であるCP(Charoen Pokphand Group)が、タイにおけるカーボンニュートラルの実現に向けた協力をしていくと合意をしました。
具体的な取り組みとしては、次の3つを掲げています。

1.家畜の糞尿から生まれるバイオガスを活用した水素製造(経済特区での実施を中心に検討)
2.上記の水素を活用した配送トラックのFCEV化(走行距離や積載重量などに応じ、BEVやFCEVなど様々なソリューションを提供)
3.コネクティッド技術を活用した最適配送ルート提案等による物流効率化

出典:TOYOTA Webサイト

 まとめ

タイはカーボンニュートラル達成に向けて、国内外の協力を取り入れつつ、持続可能なエネルギーと環境政策の推進に注力しています。しかし、経済成長とエネルギー需要の増加も課題であり、より効果的な対策を講じる必要があります。国際的な取り組みとしても、パリ協定の目標に沿った取り組みが重要となっています。

 

 

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